第1実施形態の製本システム1を図1〜図6を参照して説明する。
本実施形態の製本システム1は、図1に示すように、印刷装置2と製本装置3を備えており、印刷装置2で用紙に印刷して複数枚の印刷物を作成し、これら複数枚の印刷物を製本装置3で冊子(本)にするためのシステムである。本発明は、この製本システム1中、特に製本装置3において、複数枚の本文用紙を重ねた本文用紙束の背面に接着剤を塗布するための接着剤塗布装置40等に係るものである。
なお、図1及び図2を参照した説明では方向乃至位置を示すために上、下、左、右の語を使用する。これは図1中に示す凡例の矢印の通りユーザーが図1に示す製本システム1を図示の通りに見た場合の上、下、左、右に一致する。また、図1を見た場合の紙面の手前側を前(前方)又は正面と称し、紙面の後側を後(後方)又は背面と称する。
印刷装置2は、製本装置3で冊子を作製するための表紙用紙P1および本文用紙(中紙とも呼ぶ)P2に印刷を行う装置である。
印刷装置2は、図1に示すように、印刷装置筐体4(以下、単に筐体4とも呼ぶ)を備えている。筐体4内には、印刷部5が設けられている。印刷部5は表紙用紙P1及び本文用紙P2に印刷を行う装置である。印刷部5は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のインクをそれぞれ吐出する4個のライン型のインクジェツトヘッド6A〜6Dを備えている。また、筐体4内には、表紙用紙P1および本文用紙P2を搬送するためのループ状の印刷搬送路7が印刷部5を囲むように設けられている。図示はしないが、この印刷搬送路7に沿って、表紙用紙P1および本文用紙P2を搬送する複数の搬送用のローラが配置されている。
筐体4の左側部には、表紙用紙P1を印刷部5側(印刷搬送路7側)へ給紙する表紙用紙給紙部8が設けられている。表紙用紙給紙部8は、複数の表紙用紙P1を積載する給紙トレイ9と、給紙トレイ9に積載された表紙用紙P1を印刷部5側へ送り出す給紙ローラ10と、給紙トレイ9と印刷搬送路7との間に設けられた給紙搬送路11と、給紙搬送路11に沿って配置された複数のローラ(図示せず)を備えており、表紙用紙P1を印刷部5側へ搬送することができる。
筐体4内における印刷部5の下側には、本文用紙P2を印刷部5側(印刷搬送路7側)へ給紙する本文用紙給紙部12が設けられている。本文用紙給紙部12は、複数の本文用紙P2を積載する給紙トレイ13と、給紙トレイ13に積載された本文用紙P2を印刷部5側へ送り出す給紙ローラ14と、給紙トレイ13と印刷搬送路7との間に設けられた給紙搬送路15と、給紙搬送路15に沿って配置された複数のローラ(図示せず)を備えており、本文用紙P2を印刷部5側へ搬送することができる。
印刷搬送路7の左側上部には、表紙用紙P1および本文用紙P2を一時的に収容するスイッチバック部16が設けられている。また、筐体4内の左部からスイッチバック部16内にかけて、スイッチバック搬送路17が設けられている。スイッチバック搬送路17は、両面印刷時において、表紙用紙P1および本文用紙P2を表裏反転させて印刷部5側へ搬送するための経路である。スイッチバック搬送路17の基端側(右端側)には、印刷搬送路7に接続、遮断可能とされたフリッパ(図示せず)が切替自在に設けられている。
筐体4内の右側部には、印刷搬送路7から送り出された表紙用紙P1および本文用紙P2を製本装置3側(右方向)へ搬送するための連絡搬送路18が設けられている。連絡搬送路18の基端側(左端側)は、印刷搬送路7に接続、遮断可能とされたフリッパ(図示せず)が切替自在に設けられている。
筐体4の上部には、操作入力部19が設けられている。操作入力部19は、ユーザーの入力操作を受け付けるものである。操作入力部19は、ユーザーが各種の入力操作を行うための操作ボタン、タッチパネル等を備えている他、図2に示すように、表示部が設けられており、ユーザーが入力した事項や制御に必要な事項、さらに装置側からユーザーに報知したい事項(警報、注意その他)等を表示できるようになっている。
印刷装置2は、印刷制御部20を備えている。印刷制御部20は、CPU、RAM、ROM等を備えており、印刷装置2の各部の動作を統合的に制御して印刷を実行させる手段である。
製本装置3は、印刷装置2で印刷された表紙用紙P1および本文用紙P2に所定の製本処理を施して冊子を作製する装置であり、前述したように、本文用紙束の背面に接着剤を塗布するための接着剤塗布装置40等を含んでいる。
製本装置3は、製本装置筐体31(以下、単に筐体31とも呼ぶ)を備えている。筐体31内には、印刷装置2の連絡搬送路18から送り出された印刷済みの表紙用紙P1および本文用紙P2を右方向へ搬送するための導入搬送路32が設けられている。導入搬送路32の基端部(左端部)は、連絡搬送路18の先端部(右端部)に接続されている。また、図示はしないが、表紙用紙P1および本文用紙P2を搬送する複数のローラが入搬送路32に沿って配置されている。
筐体31内の右側上部には、印刷済みの本文用紙P2を整合して本文用紙束(単に用紙束とも呼ぶ)PSを形成するための整合部33が設けられている。整合部33は、複数の本文用紙P2を積載する整合トレイ34を備えている。整合トレイ34は、例えば水平な軸心周りに回転することにより、積載した用紙束PSを下方に向けて送り出し可能になっている。また、筐体31内の上部には、導入搬送路32から送り出された印刷済みの表紙用紙P1および本文用紙P2を整合部33側へ搬送等するための上部製本搬送路35が設けられている。上部製本搬送路35の基端部(左端部)は、導入搬送路32の先端部(右端部)に接続、遮断可能とされたフリッパ(図示せず)が切替自在に設けられている。
筐体31の上部中央には、印刷済みの表紙用紙P1を一時的に待機させるストックトレイ36が設けられている。ストックトレイ36の基端部(左端部)は、フリッパ(図示せず)により上部製本搬送路35に接続、遮断可能になっている。また、ストックトレイ36の適宜位置には、印刷済みの表紙用紙P1をストックトレイ36から上部製本搬送路35側へ送り出すローラ(図示せず)が設けられている。上部製本搬送路35に沿った位置には、表紙用紙P1および本文用紙P2を搬送する複数のローラ(図示せず)が配置されている。このうち、上部製本搬送路35に沿ってストックトレイ36の左側に配置された複数のローラは、印刷済みの表紙用紙P1の搬送方向を反転させて搬送できるようになっている。
筐体31内におけるストックトレイ36の左側には、断裁部37が設けられている。断裁部37は、上部製本搬送路35を間にして表紙用紙P1を挟むように断裁するカッタ38を備えており、印刷済みの表紙用紙P1を用紙束PSの厚みに応じた寸法になるように断裁することができる。
筐体31内の中央部には、接着部39が設けられている。この接着部39は、整合部33の整合トレイ34から送り出された用紙束PSを受け取り、この用紙束PSの背面PSaと、背面PSaに近接した側面PSbの縁部にホットメルト接着剤(以下、単に接着剤又は糊とも呼ぶ。)を塗布し、さらにこの用紙束PSの背面PSaを、断裁部37から送り出された印刷済みの表紙用紙P1の中央部分に付き当てて接着し、用紙束PSを表紙用紙P1でくるんで冊子状に仕上げるくるみ製本(「くるみ綴じ」とも呼ぶ。)を実行する装置である。
図1に示すように、接着部39は、接着剤の塗布手段である接着剤塗布装置40を備えている。接着剤塗布装置40は、用紙束PSの背面PSaと、背面PSaに隣接した側面PSbの縁部に接着剤Gを塗布する装置である。
図1及び図2に示すように、接着剤塗布装置40は、重ねられた複数枚の本文用紙からなる用紙束PSを保持するとともに所望の位置に搬送して位置決めするための保持手段として、開閉可能な一対のクランパ41A,41Bを備えている。クランパ41A,41Bは、重ねられた複数枚の本文用紙からなる用紙束PSを整合部33から受け取り、これを表裏両面又は一対の側面から挟むことにより、背面を下に向けた状態で保持することができる。なお、図1と図2に示すクランパ41A,41Bの形状は互いに異なるように示されているが、いずれの形状であってもよい。これら各図に示された各形状は本実施例中で適用可能なバリエーションを示すものである。なお、この一対のクランパ41A,41Bは後述するように移動可能とされており、保持した用紙束PSの背面PSaを次に説明する塗布手段としての塗布ローラ47に対して任意に位置決めすることができる。
図1に示すように、接着剤塗布装置40は、整合トレイ34の左下側にホットメルト接着剤Gを収容する接着剤収容部46を備えている。図1〜図3に示すように、接着剤収容部46は、前後方向(紙面垂直方向)を長手方向とする直方体状の容器であり、その上面は開放されており、内部には長手方向に沿って塗布ローラ47が配置されている。塗布ローラ47は、用紙束PSの背面PSaと側面PSbの一部にホットメルト接着剤Gを塗布するための塗布手段である。
塗布ローラ47は、前後方向(図1及び図2の紙面垂直方向)に延びる長尺状の略円柱形の部材であり、接着剤収容部46の内側において回転軸48に回転可能に支持されている。この回転軸48は、クランパ41A,41Bに保持された用紙束の天地方向(図1及び図2の紙面垂直方向)と平行であり、また接着剤収容部46内に収納されたホットメルト接着剤Gの表面とも略平行である。
図3及び図4に示すように、塗布ローラ47は、回転軸48と平行な方向についての長さが回転方向の位相によって異なる塗布面100を備えている。ここで、回転軸48を中心として回動する塗布ローラ47における位相とは、塗布ローラ47の回転方向について基準位置を設定した場合、当該基準位置から回転方向に沿って計測した回転角度で示される量であり、塗布ローラ47の周面における特定位置を示すために用いられる。また、塗布面100とは、用紙束PSの背面PSaに接触し、これに接着剤を塗布するための面であり、その長さとは回転軸48の方向に関する長さを意味する。従って、塗布ローラ47は、回転軸48の方向に関する塗布面100の長さが回転方向の位置によって異なっている。以下、この回転軸48の方向に関する塗布面100の長さを「塗布長さ」と称する。
以下、位相によって塗布長さが異なる塗布ローラ47の構造について説明する。
図3及び図4に示すように、塗布ローラ47は、回転軸48を中心として回転する円筒状(ローラ状)の基部101と、この基部101の円周状の外周面に設けられた塗布部102を有している。基部101と塗布部102は別部材を組み立てたものでもよいし、単一の円筒形の材料から削りだしてもよく、製法や内部構造及び部品の数等の詳細は問わない。
塗布部102は、塗布ローラ47の基部101の外周面よりも外径が大きく、外方に突出している。この突出している塗布部102の外周面が前記塗布面100であり、本実施形態では、この塗布面100は回転方向に360°連続している。このため、回転軸48と平行な方向に関する塗布部102の二つの端縁103a,103bは、基部101の外周面との間で段差を構成しており、回転軸48と平行な方向に関する塗布部102の二つの端縁103a,103bの間隔が前記塗布長さとなっている。
図4に示すように、回転軸48と平行な方向に関する塗布部102の二つの端縁103a,103bは、塗布ローラ47の軸方向の中央を垂直に通過する平面を仮想すると、当該平面に関して対称な形状の螺旋形となっている。すなわち、これら二つの端縁103a,103bは、塗布長さが最も大きい位置から、塗布長さが最も小さい位置まで、位相にして360度、すなわち塗布ローラ47を一周するように、軸方向に対して傾斜するように曲線的に連続しており、塗布長さが最も大きい部分と最も小さい部分は回転軸48に平行な第3の端縁103cで連続している。
従って、塗布ローラ47の塗布面100に用紙束PSの背面PSaを接触させて接着剤の塗布を行う際には、背面PSaの天地方向の長さよりもやや短い塗布長さの塗布面100が背面PSaに対向するように塗布ローラ47の位相を設定する。実際には、用紙束PSは、クランパ41A,41Bによって背面PSaを下に向けた状態で保持され、塗布ローラ47の頂部に背面PSaを当接させて塗布を行うため、背面PSaの天地方向の長さよりもやや短い塗布長さの塗布面100が塗布ローラ47の頂部(最も高い位置)にくるような位相に塗布ローラ47の回転方向の位置を設定する。
そして、ホットメルト接着剤Gが付着した塗布ローラ47の塗布面100に、用紙束PSの背面PSaを接触させれば、用紙束PSの背面PSaに接着剤を塗布することができる。塗布ローラ47は、塗布動作として、設定した位相を中心として塗布ローラ47を適当な所定角度(塗布長さが大きく変わらない程度の角度)だけ往復して回転させる動作を行えばよい。なお、前述したように、塗布ローラ47の塗布面100の塗布長さは周方向に連続的に変化しているので、用紙束PSの本文用紙(中紙)P2の種類又はサイズに応じて塗布ローラ47の位相を決めれば、どのようなサイズの用紙を用いた場合であっても、用紙束PSの背面PSaに対し、その両端部を除いて接着剤を塗布することができる。
図3に示すように、塗布ローラ47の回転軸48の一端には塗布ローラ駆動モータMRが連結されている。塗布ローラ駆動モータMRの駆動を制御することにより、用紙束PSの背面PSaの長さよりも小さい塗布長さの塗布面100が当該背面PSaと対向するように、塗布ローラ47の位相を設定することができ、また上述したように、その位相を中心とした正逆両方向に塗布ローラ47を往復回転させて当該背面PSaに接着剤を塗布することができる。また、塗布ローラ47の回転軸48の他端には、ロータリーエンコーダ等の位相検出センサ105が設けられており、塗布ローラ47の位相を検出することができる。後述する制御部としての製本制御部63は、位相検出センサ105からの信号及びジョブ情報又は操作入力部19から入力された情報等に基づいて塗布ローラ駆動モータMRを駆動し、塗布ローラ47を所望の位相に設定して必要な塗布動作を実行させる。
図2に示すように、接着剤収容部46の開口部には糊切りブレード70が設けられている。糊切りブレード70は板状の部材であり、接着剤収容部46の内部で斜め下方に向けて配置されている。そして、接着剤収容部46内にある接着剤Gの表面に近接した塗布ローラ47の周面と、糊切りブレード70の先端部との間には、所定寸法の隙間が設けられている。従って、塗布ローラ47のうち接着剤Gの表面よりも上にある部分が糊切りブレード70から離れるような方向(図中時計回り方向)に塗布ローラ47が回転すれば、糊切りブレード70は、回転する塗布ローラ47の周面に付着して汲み上げられる接着剤Gの一部をかき取り、糊切りブレード70と塗布ローラ47の間隔に対応する所定の厚さで接着剤Gの層を塗布ローラ47の周面に形成することができる。
接着剤塗布装置40は、図2に示すように、クランパ41A,41Bを開閉させるクランパ開閉モータMCと、用紙束PSを挟んだ一対のクランパ41A,41Bの間隔を検知して厚さ信号を出力する厚さセンサ71を有している。また、接着剤塗布装置40は、クランパ41A,41Bを左右方向に移動させる移動手段としてのクランパ横移動モータMH1と、クランパ41A,41Bを前後方向に移動させる移動手段としてのクランパ前後移動モータMH2と、クランパ41A,41Bを上下方向に移動させる移動手段としてのクランパ縦移動モータMVを備えている。さらに、図2中には示さないが、必要に応じてクランパ41A,41Bを左右方向に揺動させるクランパ揺動モータを備えていてもよい。
図2に示すように、クランパ開閉モータMCは製本制御部63に接続されており、製本制御部63の制御により、用紙束PSの把持と解放を任意に行えるようになっている。また、塗布ローラ駆動モータMRも製本制御部63に接続されており、設定製本制御部63の制御により、塗布ローラ47の位相を用紙束PSの背面PSaの長さに合わせて任意に設定し、また当該位相を中心とした往復回動によって接着剤の塗布を行えるようになっている。また、クランパ41A,41Bを移動させることで塗布ローラ47に対して用紙束PSの位置決めを行なうための移動手段である3つのモータ、すなわちクランパ横移動モータMH1と、クランパ前後移動モータMH2と、クランパ縦移動モータMVも、製本制御部63に接続されており、製本制御部63の制御によりクランパ41A,41Bを移動させて任意の位置に移動させることができるようになっている。また、厚さセンサ71も製本制御部63に接続されており、製本制御部63は厚さセンサ71から送られる厚さ信号を受けてクランパ41A,41Bが保持する本文用紙束の厚さを検知し、上記各モータの制御に用いることができるようになっている。
製本制御部63は、所定の受け取り位置に設定したクランパ41A,41Bに整合部33の整合トレイ34から用紙束PSが入ったところで、クランパ開閉モータMCを適宜のタイミングで制御してクランパ41A,41Bを閉じ、用紙束PSを背面が下向きとなるようにクランパ41A,41Bに保持させる。また、製本制御部63は、厚さセンサ71から送られる厚さ信号により、クランパ41A,41Bが保持した本文用紙束の厚さを検知し、これを考慮して塗布時における塗布ローラ駆動モータMRの回転量(回転角度)を適当な値に設定する。これは、本文用紙束の背面に塗布すべき接着剤Gの必要量は本文用紙束の厚さに比例して増大し、また塗布ローラ47によって背面に供給できる接着剤Gの量は塗布ローラ47の回転量に比例するからである。さらにまた、製本制御部63は、クランパ41A,41Bの移動手段であるクランパ横移動モータMH1と、クランパ前後移動モータMH2と、クランパ縦移動モータMVを制御することにより、クランパ41A,41Bが保持している用紙束PSの背面PSaを、塗布ローラ47の周面に対して位置決めする。
図1に示すように、接着部39は折り曲げ部50を備えている。折り曲げ部50は、前記接着剤塗布装置40によって背面にホットメルト接着剤Gが塗布された用紙束PSを表示用紙P1に接着し、この表示用紙P1を折り曲げて用紙束PSをくるむ工程を実行する装置である。
折り曲げ部50は、接着剤収容部46の左側に設けられている。折り曲げ部50は、一対の背折りプレート51A,51Bと、背折りプレート51A,51Bの下側に設けられた突き当てプレート52を備えている。背折りプレート51A,51Bは、互いに接近、離間するように、突き当てプレート52上で左右方向に移動可能になっている。背折りプレート51A,51Bは、互いに対向する押圧面51a,51bを有している。押圧面51a,51bは、略水平な突き当てプレート52の上面に略直交する鉛直面である。突き当てプレート52は、左右方向に移動可能になっている。ホットメルト接着剤Gが塗布済みの用紙束PSの背面PSaが表紙用紙P1を介して突き当てプレート52に当接した状態で、左右から背折りプレート51A,51Bの押圧面51a,51bが表紙用紙P1を介して用紙束PSを押圧することで、表紙用紙P1が折り曲げられるようになっている。
また、図示はしないが、折り曲げ部50は、背折りプレート51A,51Bを左右方向に移動させる背折りプレート移動モータと、突き当てプレート52を左右方向に移動させる突き当てプレート移動モータを備えている。
筐体31内において、上部製本搬送路35の下側には、上部製本搬送路35から送り出された印刷済みの表紙用紙P1を折り曲げ部50へ搬送するための下部製本搬送路55が設けられている。下部製本搬送路55の基端部(左端部)は、フリッパ(図示せず)により上部製本搬送路35の基端部(左端部)に接続、遮断可能とされている。下部製本搬送路55に沿った位置には、表紙用紙P1を折り曲げ部50側へ搬送する複数のローラ(図示せず)が配置されている。
筐体31内には用紙の搬送部56が構成されている。搬送部56は、導入搬送路32、上部製本搬送路35、下部製本搬送路55、およびこれらに沿って配置されたローラ、表紙用紙P1をストックトレイ36から上部製本搬送路35側へ送り出すローラ、そして各ローラを駆動させる図示しないモータ等によって構成されている。
筐体31内における折り曲げ部50の下側には、折り曲げ部50から落下する完成した冊子Bを案内して下方の所定位置に導くガイド部材57、58が設けられている。
ガイド部材57、58の下側には、折り曲げ部50から落下した冊子Bを筐体31外に排出するための排出部59が設けられている。排出部59は、折り曲げ部50から落下した冊子Bを受け取り、冊子Bを左側へ搬送して下方に落下させる搬送コンベア60を備えている。また、排出部59は、搬送コンベア60の下側に設けられた排出コンベア61を備えている。排出コンベア61は、搬送コンベア60から落下した冊子Bを受け取り、冊子Bを右側へ搬送して筐体31外に送り出す装置である。排出コンベア61の下流側には、排出コンベア61から送り出された冊子Bを受け取る受取台62が設けられている。
製本装置3は、以上説明した製本装置3の各部の動作を制御して製本処理を実行させる制御部として、製本制御部63を備えている。すなわち、製本制御部63は、前述したようにクランパ41A,41Bによる用紙束PSの保持や、接着剤Gの塗布時における用紙束PSの背面PSaを塗布ローラ47に対して位置決めする動作、塗布ローラ47の位相の設定、さらに塗布ローラ47の往復動作等を制御することにより、用紙束の背面に接着剤Gを塗布する塗布動作を最適な状態で実行するとともに、これらを含めた本装置による製本処理を全体として統括的に制御することができる。
次に、以上説明した製本システム1の製本装置3の動作において、用紙束PSの背面PSaに塗布ローラ47で接着剤Gを塗布する際の接着剤塗布装置40の制御又は動作等を図5及び図6を参照して説明する。
まず、ユーザーは、印刷装置2の操作入力部19に設けたフォーム情報入力キーの操作により、印刷情報と製本情報を入力する。次に操作入力部19の図示しないスタートボタンを押すと、製本システム1の印刷動作及び製本動作が開始される。以下の説明では、印刷装置2が必要な印刷を行い、印刷済みの表紙用紙P1及び本文用紙P2を製本装置3に送り込んだ後で、製本装置3において行なわれる製本動作中、用紙束PSの背面PSaに塗布ローラ47が接着剤Gを塗布する動作を中心に説明する。
製本制御部63は、クランパ開閉モータMCを駆動してクランパ41A,41Bを閉止方向に駆動し、整合部33から受け取った用紙束PSをクランパ41A,41Bで保持する。厚さセンサ71はクランパ41A,41Bの間隔(すなわち用紙束PSの厚さ)を検知して厚さ信号を製本制御部63に送る。製本制御部63は、厚さセンサ71から送られる厚さ信号を受けてクランパ41A,41Bが保持している本文用紙束の厚さを知得し、知得した厚さの用紙束PSに必要な量の接着剤Gを背面PSaに塗布できるように、塗布工程における塗布ローラ駆動モータMRの回転量(回転角度)を制御する。
さらに製本制御部63は、プログラムに従い、与えられた印刷情報及び製本情報に応じて塗布ローラ駆動モータMRを適宜に制御し、用紙束PSの背面PSaの天地方向の長さに適した塗布長さの塗布面100が頂部にくるように、塗布ローラ47の位相を設定する。また、製本制御部63は、印刷情報及び製本情報と、知得した用紙束PSの厚さ情報に応じて、クランパ横移動モータMH1と、クランパ前後移動モータMH2と、クランパ縦移動モータMVを適宜に制御し、用紙束PSを塗布ローラ47に対して位置決めし、背面PSaを塗布面100に接触させる。そして、設定された位相を中心として前後の両方向の所定角度範囲で塗布ローラ47が往復して回動するように、塗布ローラ駆動モータMRを駆動して糊の塗布を行なう。
図5及び図6は、塗布ローラ47で用紙束PSの背面PSaに接着剤を塗布する状態を示しているが、図示の便宜上、用紙束PSの背面PSaと塗布ローラ47の塗布面100との間に隙間を設けて示している。これらの図では、塗布対象である用紙束PSの背面PSaの天地方向の長さは、図5の方が相対的に大きく、図6の方が相対的に小さい。従って、図5では、相対的に長い背面PSaに対応して、塗布長さが相対的に大きい塗布面100が当該背面PSaと対向するような位相に塗布ローラ47が設定されている。これに対し、図6では、相対的に短い背面PSaに対応して、塗布長さが相対的に小さい塗布面100が当該背面PSaに対向するような位相に塗布ローラ47が設定されている。何れの場合も、塗布ローラ47の塗布面100の長さは、これに接触する用紙束PSの背面PSa天地方向の長さよりもやや小さい。そして、塗布ローラ47の位相の設定は、塗布ローラ駆動モータMRを適宜の回転量だけ駆動して塗布ローラ47を回動させることによって行うことができる。いずれの場合も、必要な位相に設定された塗布ローラ47の塗布面100に、その塗布長さよりも天地方向の長さがやや大きい背面PSaが当接し、その後、適当な小さい角度で塗布ローラ47を両方向に往復して回動させることによって、天地方向の両端部を除く用紙束PSの背面PSaに接着剤が塗布される。
図5及び図6では、本実施形態において対応しうる用紙サイズのうち、相対的に大きいものと、相対的に小さいものを用いた場合をそれぞれ例示した。しかし、図5の例よりも大きいサイズの用紙束PSの場合には、塗布ローラ47を塗布長さがさらに大きい位相に設定すればよいし、図6の例よりも小さいサイズの用紙束PSの場合には、塗布ローラ47を塗布長さがさらに小さい位相に設定すればよい。また、図5と図6の中間のサイズの用紙を用いて製本を行う場合には、当該用紙を用いた用紙束PSの背面PSaの天地方向の寸法よりもやや小さい塗布長さの塗布面100が頂部にくるように、塗布ローラ47の位相を図5と図6の中間の中間の値に設定すればよい。塗布面100の塗布長さは連続的に変化しているので、用紙束PSの背面PSaの寸法のバリエーションに合わせて塗布ローラ47の位相を任意に設定し、背面PSaに対する接着剤の塗布長さを調整することができる。
このように、本実施形態によれば、冊子サイズ(天地方向の長さ)に対応し、冊子の背面PSaの天地方向の両端に未塗布の部分が残るように接着剤を塗布することができる。このため、接着部39の折り曲げ部50において、背面PSaに接着剤が塗布された用紙束PSを表示用紙P1に接着し、この表示用紙P1を折り曲げて用紙束PSをくるむ工程を実行した際には、冊子の背面PSaの天地方向の両端から余分な接着剤が外にはみ出す不都合は未然に防止される。また、このように冊子サイズ(天地方向の長さ)に対応した長さ(又は領域)だけに接着剤の塗布を行うので、冊子の背面PSaの天地方向の両端から余分な接着剤を掻き取る工程を省略できるし、接着剤を掻き取る工程を行った場合に生じる糸引きを未然に防止することができる。なお、背面PSaの天地方向の両端部には接着剤が塗布されないが、この領域には、背面PSaの中程の塗布領域から製本工程で接着剤が押し出されて供給されるので、当該両端部は表紙用紙P1に確実に接着される。
次に、第2及び第3実施形態の接着剤塗布装置を図7及び図8を参照してそれぞれ説明する。
これらの接着剤塗布装置も、第1実施形態と同様、製本システム1の一部を構成する製本装置3に設けられている。ここでは、接着剤塗布装置40に設けられた塗布手段である塗布ローラ47a,47bの構造について説明し、その他の部分については第1実施形態と同様であるものとしてその説明を省略する。
図7に示す塗布ローラでは、回転軸48と平行な方向に関する塗布部102aの二つの端縁103a,103dは、塗布ローラ47の軸方向の中央を垂直に通過する平面を仮想すると、一方の端縁103aは螺旋形となっている。すなわち、軸方向の長さが最も長い部分と最も短い部分を円周に沿って曲線的に連続させた形状になっている。しかし、他方の端縁103dは直円筒形である。すなわち、回転方向のいずれの位置においても軸方向の長さが同一、すなわち円筒又は円柱を軸線に垂直な切断面で切断したような形状となっている。
図8に示す塗布ローラでは、回転軸48と平行な方向に関する塗布部102の二つの端縁103e,103fは、塗布ローラ47の軸方向の中央を垂直に通過する平面を仮想すると、第1実施形態と同様に対称形である。しかしながら、第1実施形態では、両端縁103a,103bとも螺旋形であったが、本実施形態では両端縁103e,103fとも階段状である。すなわち、軸方向の長さが最も長い略矩形の部分と、最も短い略矩形の部分を円周に沿って階段状に連続させた形状になっている。図8では、軸方向の長さが異なる3つの略矩形の部分が現れているが、実際には4以上の部分で構成されている。もちろん、軸方向の長さが異なる略矩形の部分の数は任意であるし、また各部分が矩形であると述べたが、これは、当該各部において基部101に垂直な半径方向から見て矩形状であることを意味し、塗布面100が円周状である点は第1及び第2実施形態と同じである。
第2及び第3実施形態によっても、第1実施形態と同様、種々の冊子サイズ(天地方向の長さ)に対応した長さの領域、すなわち当該サイズよりもやや短く、背面PSaの天地方向の両端に未塗布の領域が残るような長さの領域だけに接着剤を塗布することができる。
次に、第4及び第5実施形態の接着剤塗布装置を図9及び図10を参照してそれぞれ説明する。
これらの接着剤塗布装置も、第1実施形態と同様、製本システムの一部を構成する製本装置に設けられている。ここでは、接着剤塗布装置に設けられた塗布手段である塗布ローラの構造について説明し、その他の部分については第1実施形態と同様であるものとしてその説明を省略する。
図9に示す塗布ローラ47cは、回転軸48を中心として回転する円筒状(ローラ状)の基部101と、この基部101の円周状の外周面に設けられた塗布部102cを有している。第1実施形態では、塗布部102の塗布面100は円周状であり、所定位相に設定した基部101を往復回動させることで用紙束PSの背面PSaに接着剤を塗布していたが、本実施形態では、塗布部102cは実質的に平板状であり、その平坦な外表面が塗布面100aとされている。本実施形態では回転方向について90°間隔の位相で4個の塗布部102cが設けられている。図9は回転軸48と平行な視線で表しているので、各塗布部102cは同一形状に見えるが、実際には、回転軸48と平行な方向、すなわち図9の紙面に垂直な方向についての長さは各々異なっている。そして、用紙束PSの背面PSaに接着剤を塗布する際には、用紙束PSの背面PSaの天地方向の長さに適した塗布長さの塗布部102cが頂部にくるように、基部101を所望の位相に設定する。そして、用紙束PSを各移動手段で移動させ、塗布ローラ47cの頂部にある塗布部102cの塗布面100aに背面PSaを適当な圧力を以て当接させる。これによって、天地方向の両端を除く背面PSaの必要な塗布領域に必要な量の接着剤を塗布することができる。本実施形態では、接着剤の塗布工程において塗布ローラ47cを往復して回動させる必要はない。
なお、ローラ状の基部101と板状の塗布部102cは別部材を組み立てたものでもよいし、単一の材料から削りだしてもよく、製法や内部構造及び部品の数等の詳細は問わない。
図10に示す塗布ローラ47dは、回転軸48を中心として回転する角筒状の基部101aと、この基部101aの4つの平坦な外面にそれぞれ設けられた4つの塗布部102dを有している。各塗布部102dは平板状であり、その平坦な外表面が塗布面100aとされている。本実施形態では回転方向について90°間隔の位相で4個の塗布部102dが設けられている。図10は回転軸48と平行な視線で表しているので、各塗布部102dは同一形状に見えるが、実際には、回転軸48と平行な方向、すなわち図10の紙面に垂直な方向についての長さは各々異なっている。そして、用紙束PSの背面PSaに接着剤を塗布する際には、用紙束PSの背面PSaの天地方向の長さに適した塗布長さの塗布部102dが頂部にくるように、基部101aを所望の位相に設定する。そして、用紙束PSを各移動手段で移動させ、塗布ローラ47dの頂部にある塗布部102dの塗布面100aに背面PSaを適当な圧力を以て当接させる。これによって、天地方向の両端を除く背面PSaの必要な塗布領域に必要な量の接着剤を塗布することができる。本実施形態では、接着剤の塗布工程において塗布ローラ47dを往復して回動させる必要はない。
なお、ローラ状の基部101と板状の塗布部102は別部材を組み立てたものでもよいし、単一の材料から削りだしてもよく、製法や内部構造及び部品の数等の詳細は問わない。
以上説明した各実施形態は、いずれも製本システム中の製本装置に設けられた接着剤塗布装置に係るものであった。しかしながら、本発明は製本システムや製本装置の一構成要素として組み込まれることを前提としたものではなく、用紙束の背面に接着剤を塗布する単独の装置としても機能するものであることは言うまでもない。
また、以上説明した各実施形態は、いずれも製本制御部63が、得られた印刷情報及び製本情報に応じて用紙束PSの背面PSaの天地方向の長さに適した塗布長さの塗布面100が頂部にくるように、塗布ローラ47の位相を設定するものであった。しかしながら、位相の設定は必ずしも製本制御部63が実行しなくても良い。例えば、製本処理開始前にユーザが手動にて塗布ローラ47を回転させ、背面PSaの天地方向の長さに適した塗布長さの塗布面100が頂部にくるように設定するようにしても良い。