以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態のガソリンエンジンとモータジェネレータを駆動源とするハイブリッド車両50の制御装置の概略構成図である。
車両50にはエンジン1及びモータジェネレータ51を有している。これらエンジン1及びモータジェネレータ51は車両50の駆動源である。エンジン1の出力軸とモータジェネレータ51とは電磁クラッチ52を介して連結されている。ここで、電磁クラッチ52は電磁ソレノイド53に通電してないとき切断されている。電磁クラッチ52が切断されているとき、エンジン1とモータジェネレータ51は、連結されていない。一方、電磁ソレノイド53に通電したとき電磁クラッチ52が接続状態となる。電磁クラッチ52が接続状態となったとき、エンジン1とモータジェネレータ51が連結される。モータジェネレータ51にはバッテリ54が電気的に接続されている。
エンジン1はガソリンエンジン(以下、単に「エンジン」ともいう。)である。エンジン1には、吸気通路4、排気通路11を備える。上記の吸気通路4は、吸気管4a、吸気コレクタ4b、吸気マニホールド4cで構成される。
吸気コレクタ4bのすぐ上流の吸気管4aにはアクセルペダルの踏込量に応動する電子制御のスロットル装置を備える。スロットル装置は、スロットルバルブ5と、スロットルバルブ5を駆動するモータ(回転電機)6により構成されている。吸入空気は吸気管4aを経てスロットルバルブ5によって調量される。調量された空気は吸気コレクタ4bに蓄えられ、この吸気コレクタ4bから吸気マニホールド4cを介して各気筒のシリンダ7(燃焼室)に分配供給される。実施形態は電子制御のスロットル装置の場合であるが、スロットルバルブとアクセルペダルとがワイヤーにより連結されたものであってよい。
燃料噴射弁8が吸気マニホールド4cに、点火プラグ9がシリンダ7に直接臨んでそれぞれ設けられ、燃料噴射弁8から燃料が吸気マニホールド4c(吸気ポート)に噴射される。噴射された燃料は、スロットルバルブ5によって調量された空気と混合してガスとなり、このガスを点火プラグ9で着火して燃焼させる。燃焼するガスはピストン10を押し下げる仕事をした後、排気通路11に排出される。燃料噴射弁8を設ける位置は吸気マニホールドに限らない。シリンダ7に直接臨ませて燃料噴射弁を設けるものであってよい。
排気通路11は、各気筒のシリンダ7からの排気が流入する排気マニホールド11a、この排気マニホールド11aの集合部に接続される排気管11bで構成される。排気中にはHC、CO、NOxの有害三成分を含むので、これらを全て浄化するため排気マニホールド11aの集合部にマニホールド触媒12を、それよりも下流の排気管11bにメイン触媒13を備えている。メイン触媒13は例えば車両の床下に設けられる。これら各触媒12,13は例えば三元触媒で構成される。排気管11bの末端にはマフラー19を備えている。
エンジン1には、さらにターボ過給機21を備える。ターボ過給機21は、排気管11bに設けられるタービン22と、吸気管4aに設けられるコンプレッサ23と、これらタービン22,コンプレッサ23を接続する軸24とで構成される。上記のタービン22は排気管11bを流れる排気のエネルギにより回転し、タービン22と同軸のコンプレッサ23を駆動する。コンプレッサ23はエアクリーナ18を介して吸入される空気を圧縮する。圧縮されて大気圧を超える加圧空気は、吸気コレクタ4bへと送られる。ターボ過給機21を働かせることで、目標過給圧を得ることができる。
ターボ過給機21には、タービン22をバイパスするバイパス通路24と、このバイパス通路24を開閉する常閉のウェイストゲートバルブ25を備える。ウェイストゲートバルブ25はモータ(回転電機)26により駆動する。例えば、過給圧センサ45により検出される実過給圧が目標過給圧より高くなったときには、モータ26を駆動することによりウェイストゲートバルブ25を開いてタービン22に流入する排気の一部を、タービン22をバイパスさせて流す。これによって、タービン回転速度がウェイストゲートバルブ25を開く前より低下し、タービン22と同軸のコンプレッサ回転速度も低下する。コンプレッサ回転速度が低下すると実過給圧が低下してゆき目標過給圧と一致する。実過給圧が目標過給圧と一致するタイミングでウェイストゲートバルブ25の開度を保持させる。
コンプレッサ23下流側の吸気管4aには、インタークーラ25を備える。インタークーラ25はコンプレッサ23により圧縮された空気を冷却するためのものである。コンプレッサ23による空気圧縮によって温度上昇した空気がインタークーラ25によって冷却されることで、過給効率を高めることができる。
さて、ターボ過給機21を備えているガソリンエンジン1においても、過給域においてノッキングの抑制のため、大量のEGR(排気再循環)を行いたい要求がある。この要求に応えるため、本実施形態では、新たにロープレッシャループEGR装置14を設ける。ロープレッシャループEGR装置14は、EGR通路15、EGR通路15に介装されるEGRクーラ16、EGR通路15を開閉するEGR弁17(例えばバタフライ弁)、EGR弁17を駆動するモータ(回転電機)18で構成される。
上記のEGR通路15は、タービン22下流の排気管、具体的にはマニホールド触媒12とメイン触媒13の間の排気管11bから分岐され、コンプレッサ23上流の吸気管4aに合流している。このように、EGR通路15がタービン22下流の排気管11bとコンプレッサ23上流の吸気管4aとを連通する場合には、タービン下流の排気管圧力とコンプレッサ上流の吸気管圧力との差圧でガス(排気の一部)がEGR弁17を流れることになる。タービン下流の排気管圧力とコンプレッサ上流の吸気管圧力との差圧は例えば1kPa程度ときわめて小さいので、ロープレッシャループEGR(以下「LP−EGR」という。)装置と呼ばれる。以下では、LP−EGR装置のEGR弁を「LP−EGR弁」という。また、LP−EGR弁17を開いてLP−EGRを行う運転領域を「LP−EGR領域」、LP−EGR弁を全閉に保持する運転領域を「非LP−EGR領域」という。LP−EGR装置そのものはディーゼルエンジンにおいて公知であるが、本実施形態では、ターボ過給機21を備えるガソリンエンジン1に対して新たにLP−EGR装置14を採用している。
上記のEGRクーラ16はLP−EGR弁17上流のEGR通路15に設けられる。EGRクーラ16はEGR通路15を流れるガス(排気の一部)が一定の温度になるまで冷却するものである。このため、LP−EGR領域では一定温度まで冷却されたガスがLP−EGR弁17を流れる。
ここで、ターボ過給機21を備えるガソリンエンジン1にLP−EGR装置14を新たに採用した理由を説明する。ターボ過給機を備えないガソリンエンジンに適用され、比較的高温の排気の一部を吸気コレクタ4bに流入させるEGR装置がある。このEGR装置では、排気通路11と吸気コレクタ4bの間の比較的大きな差圧(負圧)でLP−EGR弁をガスが流れるので、ハイプレッシャループEGR(以下「HP−EGR」という。)装置と呼ばれる。
ターボ過給機を備えるガソリンエンジンにHP−EGR装置を適用することを考える。まず、過給していないときには吸気コレクタ4bに大気圧より低い圧力(負圧)が発達し、排気圧との差圧が大きくなるので、LP−EGR弁を開けばガス(EGRガス)を吸気コレクタ4bに吸い込ませることができる。しかしながら、ターボ過給機による過給の開始で吸気コレクタ4bの圧力は、負圧から大気圧へ、大気圧からさらに大気圧を超える圧力へと高くなっていく。吸気コクレタ4bの圧力が大気圧を超える圧力へと高くなると、排気圧との差圧が小さくなってしまう。吸気コレクタ4bにおいて大気圧を超える圧力とは過給圧のことであり、過給圧が高くなるほど、排気圧との差圧がさらに小さくなる。排気圧との差圧が小さくなると、特に大量のEGRガスを吸気コレクタ4bに吸い込ませることができなくなる。
一方、LP−EGR装置では、タービン下流の相対的に低い排気管圧力とコンプレッサ上流の吸気管圧力との微小な差圧(1kPa程度)でガス(EGRガス)がLP−EGR弁17を流れるので、過給圧の影響を受けることがない。つまり、ターボ過給機21を備えるガソリンエンジン1にLP−EGR装置14を追加した構成とすることで、ターボ過給機21による過給中にあっても大量のEGRガスを吸気通路に導入できることとなった。
さらに説明すると、図2に本実施形態の過給域とLP−EGR領域とを重ねて示す。図2において、吸気コレクタ4bの圧力が大気圧となる場合を破線のラインで示している。本実施形態では、吸気コレクタ4bの圧力が大気圧より高くなる領域(破線より上の領域)が過給域、吸気コレクタ4bの圧力が大気圧以下となる領域(破線より下の領域)が非過給域である。一方、LP−EGR領域は全体としてほぼ等脚台形状であり、本実施形態では過給域の中にLP−EGR領域が大きく生じている。
このため、本実施形態では、運転領域が次のように4つの領域に区分される。
〈1〉過給域かつLP−EGR領域(B−C−D−Eで囲まれた領域)
〈2〉過給域かつ非LP−EGR領域(ハッチングで示す領域)
〈3〉非過給域かつLP−EGR領域(A−B−E−Fで囲まれた領域)
〈4〉非過給域かつ非LP−EGR領域
ここで、図2において等脚台形の角をA,C,D,Fとし、等脚台形と破線が交わる点をB,Eとしている。また、破線の両端をG,Jとし、G−H−Iのラインを全負荷時のラインとしている。なお、LP−EGR領域は、全体としてほぼ等脚台形状である場合に限られるものでない。エンジン、ターボ過給機、LP−EGR装置14の仕様が異なれば、LP−EGR領域の形状が違ったものとなり得る。
図1に示したように、本実施形態ではさらに、コンプレッサ23をバイパスするバイパス通路31を備える。バイパス通路31には、モータ(回転電機)33により駆動されるリサーキュレーションバルブ32が設けられている。このバルブ32は、車両減速のためスロットルバルブ5が閉じられた際に、スロットルバルブ5からコンプレッサ23までの吸気管4aに閉じ込められた加圧空気をコンプレッサ23上流側に再循環(リサーキュレーション)させるためのものである。一方、車両減速時以外の運転域でターボ過給機21により過給が行われている場合には、バルブ32が基本的に全閉保持され、コンプレッサ23の上流側の空気(EGRガスを含む)の全てがコンプレッサ23に導かれる。
ここで、リサーキュレーションバルブ32が必要となる理由はディーゼルエンジンとガソリンエンジンとでスロットルバルブの扱いが異なることによるものである。すなわち、ディーゼルエンジンでは、スロットルバルブは常時開かれており、必要な場合に限って閉じられる。一方、ガソリンエンジンでは、スロットルバルブ5は、吸気コレクタ4bのすぐ上流に設けられ、アクセルペダルの踏込量に応動してその開度が変化する。
このような違いにより、ガソリンエンジンでは、ターボ過給機21により過給をしている状態から車両を減速させるためにアクセルペダルを戻すと、これに応動してスロットルバルブ開度が一定量、ステップ的に小さくなる。このスロットルバルブ開度の急な減少でスロットルバルブ5からコンプレッサ23までの吸気管4a内に存在する加圧空気の行き場がなくなる。その上、車両減速時からのコンプレッサ23の稼働によって、スロットルバルブ5からコンプレッサ23までの吸気管4aの圧力がさらに上昇する。すると、コンプレッサ下流で圧力の高くなった空気はコンプレッサ23に向かって逆流する。そして、逆流する加圧空気がコンプレッサ23を通過して上流に逃れる際にコンプレッサ23から音(騒音)が発生する。このような車両減速時に発生する騒音は車両室内の静粛性に影響する。そこで、過給域からの車両減速時にはバルブ32を全閉状態から開状態へと切換え、コンプレッサ上流の加圧空気を、コンプレッサ23をバイパスしてコンプレッサ上流に解放(リサーキュレーション)することで、車両減速時の騒音の発生を防止するのである。
次に、LP−EGR装置14を用いてLP−EGR制御を行う場合のEGR比を「EGR比」というとすると、燃焼室内のEGR比の目標値(この目標値を以下「目標EGR比という。)のマップ特性は図3に示したようになっている。すなわち、図3のように、全体としてほぼ等脚台形状のLP−EGR領域を大きく2つに分け、高負荷側の領域で0.1、低負荷側の領域で0.2としている。
高負荷側の領域で低負荷側の領域より目標EGR比を小さくしている理由は次の通りである。すなわち、高負荷側においてもターボ過給機により新気をシリンダ7に押し込めることができれば、高負荷側でも低負荷側と同じに目標EGR比を0.2にすることができる。しかしながら、実際にはターボ過給機により新気をシリンダ7に押し込むにしても、押し込むことのできる新気量には限界がある。一方、高負荷側では低負荷側より大きなエンジントルクを発生させる必要がある。そこで、高負荷側では低負荷側よりノッキングが生じない範囲で目標EGR比を小さくし、その小さくした分だけシリンダ7内での燃焼状態をよくすることで、低負荷側よりも大きなエンジントルクが得られるようにするのである。なお、図3では、目標EGR比を2段階で設定しているが、目標EGR比を2段階に設定する場合に限定されるものでない。目標EGR比を3段階以上に、あるいは連続的に目標EGR比を変化させるものであってよい。
次に、上記目標EGR比が得られるようにLP−EGR弁開度を定める必要がある。ここで、本実施形態ではEGR比は次式で定義される値である。
EGR比=LP−EGR弁流量/(新気量+LP−EGR弁流量)
…(1)
(1)式の新気量はエアフローメータ42により検出される空気量のこと、(1)式のLP−EGR弁流量はLP−EGR弁17を流れるガス量のことである。LP−EGR弁流量は、LP−EGR弁前後差圧と、LP−EGR弁開口面積Segrとで定まる。
この場合に、LP−EGR領域での燃焼室7へのEGRガスの導入によってNOxの発生が抑制されるものの、EGRガスを導入していない状態に比較すれば、燃焼状態が悪くなることは否めない。そこで、エンジンコントローラ41では、LP−EGR領域で基本点火時期ADV0を目標EGR比に応じて設定している。例えば、目標EGR比が大きくなるほど基本点火時期ADV0が進角側となるようにしている。この場合、燃焼室7に目標EGR比のEGRガスが導入されている状態でも、MBT(Minimum advance for Best Torque)が得られるように基本点火時期ADV0を設定する。このため定常時のLP−EGR領域では、NOxの発生を抑制しつつ基本点火時期ADV0によって良好な燃費が得られることとなる。一方、非LP−EGR領域(つまり燃焼室7にEGRガスを導入していない状態)においても、MBTが得られるようにエンジンコントローラ41がエンジンの運転条件に応じて基本点火時期ADV0を設定している。
また、エンジンコントローラ41では、非LP−EGR領域でのノッキング対策のため、ノックセンサ47からの信号に基づいて点火時期をフィードバック制御している。例えば、ノックセンサ47からのノック信号の平均値と予め定めたスライスレベルS/Lを比較する。そして、ノック信号の平均値がスライスレベルS/Lを超えるとノッキングが生じていると判断し、点火時期を一定値ΔEだけステップ的に遅角する。これによって、ノッキングを回避する。ノックセンサ47からのノック信号の平均値と予め定めたスライスレベルとの比較は一定時間毎に行い、ノック信号の平均値がスライスレベルS/L以下になれば、ノッキングが生じていないと判断し、点火時期を今度は一定値ΔFだけ進角する。ここで、一定値ΔFは上記の一定値ΔEより小さな値としておく。このように、ノックキングが生じたら一定値だけステップ的に遅角し、その後にノッキングが生じていなければ点火時期を徐々に進角させる。そして、ノッキングが生じたら再び一定値ΔEだけステップ的に点火時期を遅角する、という操作を繰り返す。これによって、ノッキングを回避しつつ、できるだけ点火時期が基本点火時期ADV0に保持されるようにする。
さて、アクセルペダルを踏み込んでハイブリッド車両50を加速し、この加速によってエンジンの運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行したとする。この移行タイミングでLP−EGR弁17が応答良く開かれたとしても、非LP−EGR領域からLP−EGR領域への移行タイミングで直ぐにEGRガスが燃焼室7に導入されることはない。これは、移行タイミングで直ぐに目標EGR比が得られるようにLP−EGR弁17を開いたとしても、移行タイミングから実際にEGRガスが燃焼室7に導入されるまでに時間がかかる(応答遅れがある)ためである。つまり、移行タイミングから実際にEGRガスが燃焼室7に導入されるまで、燃焼室内のEGR比の実際値(この実際値を以下「実EGR比」という。)が目標EGR比を外れて小さくなる。
上記のように実EGR比が目標EGR比を外れて小さくなっている過渡的期間では、基本点火時期ADV0が進角のしすぎとなってノッキングが発生する。このノッキングはノックセンサ47により検出される。すると、ノックセンサ47により検出されるノッキングの発生を受けて点火時期のフィードバック量FBが算出され、このフィードバック量FBで点火時期がリタードされる。点火時期がリタードされると、その分エンジントルクが低下するので、非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速初期に実エンジントルクが目標エンジントルクを下回って加速感が不足することとになり、望みの加速感が得られなくなる。
一方、アクセルペダルを戻してハイブリッド車両50を減速し、この減速によってエンジンの運転点がLP−EGR領域から非LP−EGR領域へと移行するときにも、同様の問題が生じる。すなわち、LP−EGR領域から非LP−EGR領域への移行タイミングで直ぐにEGR燃焼室7へのEGRガスの導入が終了することはない。これは、移行タイミングで直ぐにLP−EGR弁17を全閉状態に切換えたとしても、移行タイミングから実際に燃焼室7へのEGRガスの導入が終了するまでに時間がかかる(応答遅れがある)ためである。つまり、移行タイミングから実際に燃焼室7へのEGRガスの導入が終了するまでは実EGR比が目標EGR比を外れて大きくなる。上記のように実EGR比が目標EGR比を外れて大きくなっている過渡的期間では、新気量を減らすことができないため、実エンジントルクが目標エンジントルクを上回って減速されないこととなり、望みの減速感が得られない。
このようにガソリンエンジンでは非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時にはエンジントルクが不足して目標エンジントルクが得られない。また、LP−EGR領域から非LP−EGR領域へと移行する減速時にはエンジントルクが過剰となって目標エンジントルクが得られないという問題が生じる。
加速時についてさらに図4を参照して説明する。図4はt1のタイミングでアクセルペダルを一定量踏み込んで加速を行った場合にエンジンの運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行するときにエンジントルクがどのように変化するのかを示している。図4において実線は、LP−EGR装置を備えないエンジンの場合である。ただし、本実施形態のようにLP−EGR装置を備えるエンジンの場合と比較するため、同性能のエンジンとしている。LP−EGR装置を備えないエンジンの場合、EGRガスの影響を受けることがないので、t1のタイミングからエンジントルクが素早く立ち上がっており、加速初期から目標エンジントルク(望みの加速感)が得られることとなる。
一方、図4において破線はt1のタイミングでアクセルペダルを一定量踏み込んで加速を行った場合に非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと運転点が移行するエンジンの場合である。このエンジンの場合、LP−EGR領域ではEGRガス量の分だけ燃焼室7内の新気量が減り、エンジントルクが減るので、EGRガス量の分だけ圧縮比を上げた設定とすることがある。圧縮比を上げると、ノックが発生しやすくなるので、圧縮比の上昇分だけ基本点火時期ADV0をリタードさせた設定とすることになる。それでも、上記のように実EGR比が目標EGR比を外れて小さくなっている過渡的期間では、基本点火時期ADV0が進角のしすぎとなってノッキングが発生する。このノッキングはノックセンサ47により検出され、点火時期がリタードされる。点火時期がリタードされると、その分エンジントルクが低下するので、特に加速初期において実エンジントルクが目標エンジントルクより低下する(実線よりも大きく乖離している)。加速初期に実際のエンジントルクが目標エンジントルクを下回って加速感が不足することとなり、望みの加速感が得られなくなる。
図4において一点鎖線は破線の特性のエンジンを改良したものである。すなわち、破線の特性のエンジンに対して目標EGR比よりも少しだけ小さいEGR比とすると共に、過給圧が高まる側にウェイストゲートバルブ25を閉じ側に制御した改良エンジンの場合である。このようにエンジンを改良したとしても、それでも加速初期にはエンジントルクが破線と同様に低下している。このように、エンジンに対して改良を加えるだけでは加速初期のエンジントルクの一時的な低下を解消できないことがわかる。
この問題に対して、HP−EGR装置を備えているエンジン及びモータジェネレータを駆動源とするハイブリッド車両を前提として次のような比較例が開示されている。すなわち、この比較例では、過渡時にLP−EGR弁の開度変更速度やスロットル弁の開度変更速度が所定値より大きいとき、モータジェネレータによるアシストトルクまたは回生トルクを増加させることによってエンジントルク要求変化量を減少させている。
しかしながら、本実施形態のようにLP−EGR装置14を備えるエンジン1の場合には、HP−EGR装置を備えるエンジンと相違して、LP−EGR弁17の開度変更速度やスロットルバルブ5の開度変更速度がエンジントルクに与える影響は小さい。このため、LP−EGR装置14を備えるエンジン1の場合には、LP−EGR弁17の開度変更速度やスロットルバルブ5の開度変更速度に応じてアシストトルク量を決定してもエンジントルクに与える効果が小さい。
そこで本発明の第1実施形態では、モータコントローラ55がハイブリッド車両50の加速時であって目標EGR比の増加を伴う加速時にモータジェネレータ51により、吸気管のボリュームに応じて、エンジン1が発生するエンジントルクをアシストする。また、モータコントローラ55がハイブリッド車両50の減速時であって目標EGR比の減少を伴う減速時に吸気管のボリュームに応じて、エンジン1が発生するエンジントルクでモータジェネレータ51を発電させて電力回生する。エンジンの改良には限界があるので、トルクアシスト・電力回生手段(55)を用い、目標EGR比の増加を伴う加速時には、モータジェネレータ51により、エンジントルクをアシストすることで、加速初期から目標エンジントルクが得られるようにするのである。また、トルクアシスト・電力回生手段(55)を用い、目標EGR比の減少を伴う減速時には、エンジントルクでモータジェネレータ51を発電させて電力回生することで、減速初期から目標エンジントルクが得られるようにする。ここで、上記の「吸気管ボリューム」とは、エンジン1の有する吸気管ボリュームであってLP−EGR弁17の取り付け位置から燃焼室7入口までの吸気管ボリュームのことである。以下、エンジン1の有する吸気管ボリュームであってLP−EGR弁17の取り付け位置から燃焼室7入口までの吸気管のボリュームを、単に「エンジン1の有する吸気管ボリューム」ともいう。
ハイブリッド車両50の過渡時(加速時と減速時)にモータジェネレータ51により、エンジン1の有する吸気管ボリュームに応じてエンジントルクをアシストしたり発電させて電力回生する理由は、次の通りである。すなわち、LP−EGR装置14を備えるエンジン1では、運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時に生じるEGRガスの導入開始遅れがHP−EGR装置を備えるエンジンよりも格段に大きい。また、運転点がLP−EGR領域から非LP−EGR領域へと移行する減速時に生じるEGRガスの導入停止遅れがHP−EGR装置を備えるエンジンよりも格段に大きい。つまり、運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時に生じるEGRガスの導入開始遅れに大きく影響するのはエンジン1の有する吸気管ボリュームである。また、運転点がLP−EGR領域から非LP−EGR領域へと移行する減速時に生じるEGRガスの導入停止遅れに大きく影響するのもエンジン1の有する吸気管ボリュームである。吸気管ボリュームが大きくなるエンジンの場合ほど、運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時に生じるEGRガスの導入開始遅れが大きくなる。また、吸気管ボリュームが大きくなるエンジンの場合ほど、運転点がLP−EGR領域から非LP−EGR領域へと移行する減速時に生じるEGRガスの導入停止遅れが大きくなる。そこで、モータジェネレータ51により、エンジン1の有する吸気管ボリュームに応じてエンジントルクをアシストしたり発電させて電力回生することとしたものである。
これによって、非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時にはEGRガスの燃焼室7への導入開始遅れに伴って発生するエンジントルクの立ち上がり遅れをなくし加速初期からスムーズな加速を行わせることができる。一方、LP−EGR領域から非LP−EGR領域へと移行する減速時にはEGRガスの燃焼室7への導入停止遅れが生じる間のエンジントルクの過剰をなくしてスムーズな減速を行わせることができる。
これについてさらに図5を参照して説明する。図5の上段は加速によって運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する場合に、エンジン1の有する吸気管ボリュームの相違でエンジントルクの立ち上がりがどのように変化するのかをモデルで示している。参考のため、LP−EGR装置を備えないエンジンの場合にどうなるかを図5の上段に実線で示している。また、図5の下段はエンジン1の有する吸気管ボリュームの相違でモータジェネレータ51によるアシストトルク量がどのように変化するのかをモデルで示している。ここでは、簡単化のため、図5の上段に示すエンジントルクの変化、図5の下段に示すアシストトルク量の変化とも、吸気管ボリュームを大、中、小の3つのエンジンの場合に分けて示している。
図5の上段に破線で示したように、運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時に、エンジン1の有する吸気管ボリュームが小、中、大と大きくなるほどエンジントルクの立ち上がりが遅れることとなる。これは、吸気管ボリュームが大きいエンジンであるほどEGRガスの燃焼室7への導入開始遅れが大きくなるためである。こうした小、中、大の吸気管ボリュームに応じたエンジントルクの立ち上がりに合わせて、図5の下段に破線で示したように、モータジェネレータ51によるアシストトルクをエンジントルクに加えることで、加速初期のエンジントルクの立ち上がり遅れを補わせる。その際、吸気管ボリュームが小、中、大と大きくなるエンジンほどエンジントルクの立ち上がりが遅れることに合わせる。すなわち、吸気管ボリュームが小、中、大と大きくなるエンジンほどモータジェネレータ51によるアシストトルク量を小、中、大と増加させる。これによって、吸気管ボリュームが小、中、大と相違するいずれのエンジンの場合にも、実線のエンジントルクと同じように、エンジントルクとアシストトルクを合わせた合計のトルクが加速初期から立ち上がるようにする。
なお、本実施形態では、運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時及び運転点がLP−EGR領域から非LP−EGR領域へと移行する減速時を主に扱うが、この場合に限られるものでない。例えば、図3と相違して、LP−EGR領域内で高負荷側ほど目標EGR比が大きくなるように設定されているとする。このとき、LP−EGR領域内で加速によって目標EGR比が小さい側から大きい側に移行する場合には、EGRガスの燃焼室7への増量遅れよって実EGR比が目標EGR比を外れて小さくなる。これによってノッキングが生じれば、点火時期がリタードされるので、目標エンジントルクが得られないという問題が生じる。従って、LP−EGR領域内で高負荷側ほど目標EGR比が大きくなるように設定されている場合に、LP−EGR領域内で加速によってEGR比が小さい側から大きい側に移行するときにも本発明の対象となる。
また、図3と相違して、LP−EGR領域内で低負荷側ほど目標EGR比が小さくなるように設定されているとする。このとき、LP−EGR領域内で減速によって目標EGR比が大きい側から小さい側に移行する場合には、EGRガスの減量遅れよって実EGR比が目標EGR比を外れて大きくなる。このEGRガスの減量遅れに伴って、実際のエンジントルクが目標エンジントルクを上回り、目標エンジントルクが得られないという問題が生じる。従って、LP−EGR領域内で低負荷側ほど目標EGR比が小さくなるように設定されている場合に、LP−EGR領域内で減速によって目標EGR比が大きい側から小さい側に移行するときにも本発明の対象となる。
図1に示したように、燃料噴射弁8及び点火プラグ9に加えて、LP−EGR弁17、ウェイストゲートバルブ25、リサーキュレーションバルブ32を制御するため、エンジンコントローラ41を備える。エンジンコントローラ41はマイクロプロセッサ、ROM及びRAM等の周辺機器を備えたコンピュータユニットとして構成されている。エンジンコントローラ41には、エアフローメータ42、アクセルセンサ43、クランク角センサ44、O2濃度センサ45、排気温度センサ46、ノックセンサ47からの信号が入力する。ここで、エアフローメータ42は吸気管4a内に流入する空気量(新気量)を検出する。アクセルセンサ43はアクセルペダルの踏込量(アクセル開度)及びその変化量を検出する。クランク角センサ44はエンジン回転速度を検出する。O2濃度センサ45は、コンプレッサ23下流から燃焼室7入口までの吸気管のO2濃度を検出する。排気温度センサ46は、排気温度Texhを検出する。ノックセンサ47は燃焼室7内に生じるノッキングを検出する。
エンジンコントローラ41では、LP−EGR領域でエンジンの負荷と回転速度Neから定まるエンジンの運転点と、目標EGR比に応じて、MBTの得られる基本点火時期ADV0を算出する。また、非LP−EGR領域では、エンジンの負荷と回転速度Neから定まるエンジンの運転点に応じて、MBTの得られる基本点火時期ADV0を算出する。そして、非LP−EGR領域でノッキングが生じたときには、点火時期をフィードバック制御することによってノッキングを回避する。
また、エンジンコントローラ41では、LP−EGR領域で実EGR比を推定し、目標EGR比と実EGR比の差分である差分EGR比ΔRを算出する。そして、実EGR比が目標EGR比と一致するように差分EGR比ΔRに応じた差分EGR比補正量HOS1(第1点火時期補正量)を算出し、この差分EGR比補正量HOS1で基本点火時期ADV0を補正する。これは、運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時には、移行後しばらく実EGR比が目標EGR比より小さくなるので、これに対処するためである。すなわち、LP−EGR領域への移行後にしばらくの間、実EGR比が目標EGR比より小さいときには、その差の分だけ燃焼室7内での作動ガスの燃焼状態が良くなってノッキングが生じ勝ちとなるので、これを避けるためである。なお、エンジンの制御上は、LP−EGR領域内で実EGR比が目標EGR比より大きくなる場合が考え得る。この場合には、その差の分だけ燃焼室7内での作動ガスの燃焼状態が悪くなってエンジンが不安定となるので、これを避けるため、差分EGR比補正量HOS1で点火時期を補正する。
また、エンジンコントローラ41では、排気温度センサ46により検出した排気温度Texhが予め定めた設定温度Tsetより外れたときに、設定温度Tsetからの差の温度に応じた排気温度補正量HOS2(第2点火時期補正量)を算出する。そして、この排気温度補正量HOS2で基本点火時期ADV0を補正する。これは、運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する同じ加速時にあっても、排気温度Texhが設定温度Tsetと相違するときには、燃焼室7に導入されるEGRガス量が変化するので、これに対処するためである。すなわち、LP−EGR領域へと移行する同じ加速時にあっても、排気温度Texhが設定温度Tsetより低いときには排気圧が低下し、LP−EGR弁17を通過するEGRガス量(従って燃焼室7に導入されるEGRガス量)が減る。燃焼室7に導入されるEGRガス量が減ると、ノッキングが発生する可能性があるので、これを避けるためである。なお、エンジンの制御上は、LP−EGR領域へと移行する同じ加速時にあっても、LP−EGR領域内で排気温度Texhが設定温度Tsetより高い場合が考え得る。この場合には、排気圧が上昇し、LP−EGR弁17を通過するEGRガス量(従って燃焼室7に導入されるEGRガス量)が増え燃焼が不安定となるので、これを避けるため、排気温度補正量HOS2で点火時期を補正する。
また、モータジェネレータ51及び電磁クラッチ52を制御するため、モータコントローラ55を備える。モータコントローラ55もマイクロプロセッサ、ROM及びRAM等の周辺機器を備えたコンピュータユニットとして構成されている。モータコントローラ55とエンジンコントローラ41とはCAN通信装置56を介して接続されている。モータコントローラ54では、電磁クラッチ52のON、OFF及びモータジェネレータ51の発生するアシストトルク量を制御する。
モータコントローラ55及びエンジンコントローラ41で行われる制御を、以下のフローチャートを参照して説明する。
まず図6,図8のフローチャートは、モータコントローラ55がモータジェネレータ51に与えるアシストトルク量指令値Tastや電力回生量指令値Tkisを算出すると共に、電磁クラッチ52のON、OFFを制御するためのものである。このうち図6のフローは運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時のアシストトルク量指令値を算出するためのものである。一方、図8のフローは運転点がLP−EGR領域から非LP−EGR領域へと移行する減速時の電力回生量指令値を算出するためのものである。図6,図8のフローは一定時間毎(たとえば10ms毎)に実行する。
図6のフローから説明する。ステップ1ではエンジンの運転点が図2に示すLP−EGR領域にあるか否かをみる。運転点がLP−EGR領域にあるときにはステップ2に進む。ステップ2では加速フラグ(エンジンの始動時にゼロに初期設定済み)=1であるか否かをみる。ここでは、加速フラグ=0であるとしてステップ3に進む。
ステップ3ではアクセルセンサ43により検出されるアクセル開度APOに基づいて、所定時間当たりのアクセル開度変化量(以下、単に「アクセル開度変化量」という。)ΔAPOを算出する。アクセル開度APOはエンジンコントローラ41からCAN通信装置56を介してモータコントローラ55に送られている。
例えば、今回のアクセル開度から所定時間前のアクセル開度を差し引くことで、つまり次式によりアクセル開度変化量ΔAPOを算出する。
ΔAPO=APO−APOz …(2)
ただし、APOz:所定時間前のアクセル開度、
(1)式のΔAPOは加速時に正の値となり減速時に負の値となる。
ステップ4ではアクセル開度変化量の絶対値|ΔAPO|と所定値Aを比較する。所定値Aは、過渡時(加速時及び減速時)であるか否かを判定するための値で予め設定しておく。アクセル開度変化量の絶対値|ΔAPO|が所定値Aを超えているときには過渡時であると判断し、ステップ5に進む。
ステップ5ではアクセル開度変化量ΔAPOとゼロを比較する。アクセル開度変化量ΔAPOがゼロをこえている、つまりアクセル開度変化量ΔAPOが正であるときには加速時であると判断し、ステップ6に進んで加速フラグ=1とする。言い換えると、ステップ1,4,5より加速によって今回LP−EGR領域にいる、つまり加速により運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域に移行したと判断する。
ステップ7ではタイマを起動する(タイマ値t1=0)。このタイマは加速により運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域に移行したタイミングからの経過時間を計測するためのものである。
ステップ8では、アクセル開度変化ΔAPO量から図7を内容とするテーブルを検索することにより、アシストトルク量[Nm]を算出し、このアシストトルク量をステップ9でアシストトルク量指令値Tast[Nm]に入れる。図7に示したように、アシストトルク量はアクセル開度変化量ΔAPO(加速の程度)が大きくなるほど大きくなる値である。また、吸気管ボリュームが相対的に大きいエンジンの場合のアシストトルク量は、吸気管ボリュームが相対的に小さいエンジンの場合のアシストトルク量より大きくなる値である。
図7は、本来吸気管ボリュームが相違する各種のエンジンを網羅するものである。ここでは簡略化のため、吸気管ボリュームを大、中、小の3つのエンジンの場合に分けて示している。このため、直線特性は3つだけである。エンジンの仕様が決まれば吸気管ボリュームが一義的に定まるので、エンジンの仕様が決まれば、図7の特性は1つの直線だけの特性となる。
ここで、アクセル開度変化量ΔAPO(加速の程度)が大きくなるほどアシストトルク量を大きくした理由は次の通りである。すなわち、同一の吸気管ボリュームを有するエンジンにおいて、加速の程度が相違してもその相違する加速の程度に応じた加速感を得るためである。
ステップ10では、加速により非LP−EGR領域からLP−EGR領域に移行したタイミングよりモータジェネレータ51の発生するトルクでエンジントルクをアシストさせるため、電磁クラッチONフラグ=1とする。これによって電磁クラッチ52が接続されエンジン1とモータジェネレータ51が連結される。
今回にステップ6で加速フラグ=1としたことで、次回よりステップ2からステップ11以降に進む。ステップ11ではタイマ値t1と所定値Bを比較する。所定値Bはモータジェネレータ51によるトルクアシスト処理(モータジェネレータ51によりアシストトルクをエンジントルクに付加する処理)の終期を定めるための値で、予め定めておく。タイマ値t1が所定値B未満であるときには、まだ、モータジェネレータ51によるトルクアシスト処理が必要であると判断し、ステップ12に進む。ステップ12では、アシストトルク量指令値の前回値である「Tast(前回)」の値をそのまま今回のアシストトルク量指令値Tastに移すことによって、アシストトルク量を維持する。このときもステップ10の操作を実行する。ステップ11でタイマ値t1が所定値B未満である限りステップ12,10の操作を繰り返し実行する。
やがて、ステップ11でタイマ値t1が所定値B以上になると、モータジェネレータ51によるトルクアシスト処理の終期になったと判断する。このときにはステップ13に進み、加速フラグ=0とする。これによって、次回に非LP−EGR領域からLP−EGR領域に移行する加速時に備える。ステップ14,15では、アシストトルク量指令値Tastにゼロを入れ、電磁クラッチONフラグ=0とする。これによって電磁クラッチ52が非接続とされエンジン1とモータジェネレータ51の連結が解かれる。
一方、ステップ1で運転点がLP−EGR領域にないとき、ステップ4でアクセル開度変化量の絶対値|ΔAPO|が所定値A以下であるとき(定常時)、ステップ5でアクセル開度変化量ΔAPOが正でないときにはトルクアシスト処理は不要であると判断する。このときにはステップ16,17に進み、アシストトルク量指令値Tastにゼロを入れ、電磁クラッチONフラグ=0とする。
モータコントローラ55に備えている図示しないフローでは、電磁クラッチONフラグ=0のとき、電磁クラッチ52への電流は遮断されており、電磁クラッチ52は切断状態にある。電磁クラッチONフラグ=1になると、電磁ソレノイドバルブに53に電流を流して電磁クラッチ52を接続し、モータジェネレータ51とエンジン1を連結する。また、モータコントローラ55に備えている図示しないフローでは、アシストトルク量指令値Tastを電流値に変換してモータジェネレータ51のステータに流し、これによってモータジェネレータ51にアシストトルク量指令値Tastのアシストトルクを発生させる。
次に、図8のフローを説明する。ステップ21ではエンジンの運転点が図2に示す非LP−EGR領域にあるか否かをみる。運転点が非LP−EGR領域にあるときにはステップ22に進む。ステップ22では減速フラグ(エンジンの始動時にゼロに初期設定済み)=1であるか否かをみる。ここでは、減速フラグ=0であるとしてステップ23に進む。
ステップ23ではアクセルセンサ43により検出されるアクセル開度APOに基づいて、アクセル開度変化量ΔAPOを算出する。アクセル開度APOはエンジンコントローラ41からCAN通信装置56を介してモータコントローラ55に送られている。
ステップ24ではアクセル開度変化量の絶対値|ΔAPO|と所定値Cを比較する。所定値Cは、過渡時(加速時及び減速時)であるか否かを判定するための値で予め設定しておく。所定値Cは図6のステップ4の所定値Aと同じ値であってよい。アクセル開度変化量の絶対値|ΔAPO|が所定値Cを超えているときには過渡時であると判断し、ステップ25に進む。
ステップ25ではアクセル開度変化量ΔAPOとゼロを比較する。アクセル開度変化量ΔAPOがゼロを下回っている、つまりアクセル開度変化量ΔAPOが負であるときには減速時であると判断し、ステップ26に進んで減速フラグ=1とする。言い換えると、ステップ21,24,25より減速によって今回非LP−EGR領域にいる、つまり減速により運転点がLP−EGR領域から非LP−EGR領域に移行したと判断する。
ステップ27ではタイマを起動する(タイマ値t2=0)。このタイマは減速により運転点がLP−EGR領域から非LP−EGR領域に移行したタイミングからの経過時間を計測するためのものである。
ステップ28では、アクセル開度変化量の絶対値|ΔAPO|から図9を内容とするテーブルを検索することにより、電力回生量[kW]を算出し、この電力回生量をステップ29で電力回生量指令値Tkis[kW]に入れる。図9に示したように、電力回生量はアクセル開度変化量の絶対値|ΔAPO|(減速の程度)が大きくなるほど大きくなる値である。また、吸気管ボリュームが相対的に大きいエンジンの場合の電力回生量は、吸気管ボリュームが相対的に小さいエンジンの場合の電力回生量より大きくなる値である。
図9は、本来吸気管ボリュームが相違する各種のエンジンを網羅するものである。ここでは簡略化のため、吸気管ボリュームを大、中、小の3つのエンジンの場合に分けて示している。このため、直線特性は3つだけである。エンジンの仕様が決まれば吸気管ボリュームが一義的に定まるので、エンジンの仕様が決まれば、図9の特性は1つの直線だけの特性となる。
ここで、アクセル開度変化量の絶対値|ΔAPO|(減速の程度)が大きくなるほど電力回生量を大きくした理由は次の通りである。すなわち、同一の吸気管ボリュームを有するエンジンにおいて、減速の程度が相違してもその相違する減速の程度に応じた減速感を得るためである。吸気管ボリュームに応じた電力回生量は最適な減速感が得られるように適合により定める。
ステップ30では、減速によりLP−EGR領域から非LP−EGR領域に移行したタイミングよりモータジェネレータ51の発電に用いるトルク分だけエンジントルクを減じるため、電磁クラッチONフラグ=1とする。これによって電磁ソレノイドバルブ53に通電され、電磁クラッチ52が接続されエンジン1とモータジェネレータ51が連結されるため、モータジェネレータ51が発電する(エンジントルクの一部を回生する)。発電によりモータジェネレータ51に生じる電流(電力)はバッテリ54に蓄えられる。
今回にステップ26で減速フラグ=1としたことで、次回よりステップ22からステップ31以降に進む。ステップ31ではタイマ値t2と所定値Dを比較する。所定値Dはモータジェネレータ51による電力回生処理(モータジェネレータ51によりエンジントルクの一部を電力回生する処理)の終期を定めるための値で、予め定めておく。タイマ値t2が所定値D未満であるときには、まだ、モータジェネレータ51による電力回生処理が必要であると判断し、ステップ32に進む。ステップ32では、電力回生量指令値の前回値である「Tkis(前回)」の値をそのまま今回の電力回生量指令値Tkisに移すことによって、電力回生量を維持する。このときもステップ30の操作を実行する。ステップ31でタイマ値t2が所定値D未満である限りステップ32,30の操作を繰り返し実行する。
やがて、ステップ31でタイマ値t2が所定値D以上になると、モータジェネレータ51による電力回生処理の終期になったと判断する。このときにはステップ33に進み、減速フラグ=0とする。これによって、次回に減速によりLP−EGR領域から非LP−EGR領域に移行する減速時に備える。ステップ34,35では、電力回生量指令値Tkisにゼロを入れ、電磁クラッチONフラグ=0とする。これによって電磁クラッチ52が非接続とされエンジン1とモータジェネレータ51の連結が解かれる。
一方、ステップ21で運転点が非LP−EGR領域にないとき、ステップ24でアクセル開度変化量の絶対値が所定値C以下であるとき(定常時)、ステップ25でアクセル開度変化量ΔAPOが正でないときには電力回生処理は不要であると判断する。このときにはステップ36,37に進み、電力回生量指令値Tkisにゼロを入れ、電磁クラッチONフラグ=0とする。
モータコントローラ55に備えている図示しないフローでは、電磁クラッチONフラグ=0のとき、電磁クラッチ52への電流は遮断されており、電磁クラッチ52は切断状態にある。電磁クラッチONフラグ=1になると、電磁クラッチ52に電流を流して、モータジェネレータ51とエンジン1を接続する。また、モータコントローラ55に備えている図示しないフローでは、電力回生量指令値Tkisをモータジェネレータ51に指令し、これによって電力回生量指令値の分だけモータジェネレター51を発電させる。
次に、図10のフローチャートは、エンジンコントローラ41が点火時期指令値ADVを算出するためのものである。図10のフローは一定時間毎(たとえば10ms毎)に図6,図8のフローとは独立に実行する。
ステップ41では、ノックセンサ47からのノック信号の平均値と予め定めたスライスレベルS/Lを比較する。ノック信号の平均値がライスレベルS/Lを超えるとノッキングが生じていると判断し、点火時期のフィードバック量の前回値である「FB(前回)」に一定値ΔEを加算した値をフィードバック量FBとする。フィードバック量FBは点火時期を遅角させるための補正量である。ここでは、一定値ΔEの分だけ点火時期を遅角することによって、ノッキングを回避する。
この点火時期の遅角によって次回にはステップ41でノックセンサ47からのノック信号の平均値がとスライスレベルS/L以下となる。このときにはノッキングが生じていないと判断し、ステップ43に進む。
ステップ43では点火時期のフィードバック量の前回値である「FB(前回)」から一定値ΔFを減算した値をフィードバック量FBとする。フィードバック量FBは点火時期を遅角させるための補正量であるから、ステップ43での操作は、前回の点火時期指令値より一定値ΔFの分だけ点火時期を進角することを意味する。ここで、一定値ΔFは上記の一定値ΔEより小さな値としておく。
ステップ41〜43での操作により、ノッキングが生じたら点火時期をステップ的に一定値ΔEだけ遅角し、その後にノッキングが生じていなければ点火時期を一定値ΔFずつ徐々に進角させる。そして、ノッキングが生じたら再び点火時期をステップ的に一定値ΔEだけ遅角する、という操作を繰り返す。これによって、ノッキングを回避しつつ、できるだけ点火時期が基本点火時期ADV0に保持されるようにする。
ステップ44ではエンジンの運転点が図2に示すLP−EGR領域にあるか否かをみる。運転点が非LP−EGR領域にあるときにはステップ45,46に進む。
ステップ45,46は運転点が非LP−EGR領域にあるときの点火時期指令値ADVを算出する部分である。まずステップ45では、エンジンの負荷と回転速度から定まる運転点に応じてMBTが得られる基本点火時期ADV0[°BTDC]を算出する。
ステップ46では、基本点火時期ADVからフィードバック量FBを減算した値を点火時期指令値ADV[°BTDC]として、つまり次式により点火時期指令値ADVを算出する。これは次の理由からである。すなわち、点火時期指令値ADVは圧縮上死点から進角側に計測した値[°BTDC]であるので、フィードバック量FBで点火時期を遅角するにはADV0から差し引く必要があるためである。
ADV=ADV0−FB …(3)
一方、ステップ44でエンジンの運転点がLP−EGR領域にあるときにはステップ47以降に進む。
ステップ47〜52は運転点がLP−EGR領域にあるときの点火時期指令値ADVを算出する部分である。まずステップ47では、運転点がLP−EGR領域にあるときにも、MBTが得られるように基本点火時期ADV0[°BTDC]を算出する。ただし、LP−EGR領域では、EGRガスが燃焼室7に導入されるので、そのEGRガス分を考慮する必要がある。そこで、LP−EGR領域は運転点的には同一の領域にあるとみなし、目標EGR比から、図11を内容とするテーブルを検索することにより、EGRガスが燃焼室7に導入されている状態でもMBTが得られるように基本点火時期ADV0を算出する。図11に示したように、基本点火時期ADV0は目標EGR比が大きくなるほど進角側に大きくなる値である。これは次の理由による。すなわち、目標EGR比が大きくなるほど燃焼状態が悪くなる。そこで、基本点火時期ADV0を進角側に設定することで、悪くなった燃焼を安定させるためである。
ステップ48では、コンプレッサ23下流から燃焼室7入口までの吸気管(以下、単に「吸気管」という。)のO2濃度から、図12を内容とするテーブルを検索することにより、実EGR比を算出する。図12に示したように、実EGR比は、吸気管のO2濃度が小さくなるほど大きくなる値である。上記吸気管のO2濃度は吸気コレクタ4bに設けたO2濃度センサ45により検出する。
ステップ49では、目標EGR比と実EGR比の差を差分EGR比ΔRとして、つまり次式により差分EGR比ΔRを算出する。
ΔR=目標EGR比−実EGR比 …(4)
ステップ50では、この差分EGR比ΔRから、図13を内容とするテーブルを検索することにより、差分EGR比補正量HOS1[°]を算出する。図13に示したように差分EGR比補正量HOS1は差分EGR比ΔRが正の場合にΔRが大きくなるほど負の値で小さくなり、差分EGR比ΔRが負の場合にΔRが負の値で大きくなるほど正の値で大きくなる値である。
差分EGR比補正量HOS1はこの値が正の場合に点火時期を進角側に補正し、この値が負の場合に点火時期を遅角側に補正する値である。差分EGR比ΔRが正の場合に差分EGR比補正量HOS1を負の値で与える(つまり点火時期を遅角側に補正する)のは次の理由による。すなわち、運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時には、LP−EGR領域に移行後しばらく実EGR比が目標EGR比より小さくなってしまう。実EGR比が目標EGR比より小さいとき(差分EGR比ΔRが正のとき)には、その差の分(ΔR)だけ燃焼室7内での作動ガスの燃焼状態が良くなってノッキングが生じ勝ちとなる。そこで、このときには基本点火時期ADV0よりも点火時期を遅角側に補正することでノッキングの発生を抑制するためである。
一方、実EGR比が目標EGR比より大きいとき(差分EGR比ΔRが負のとき)に差分EGR比補正量HOS1を正の値で与える(つまり点火時期を進角側に補正する)のは次の理由による。すなわち、実EGR比が目標EGR比より大きいときには、ΔRの分だけ燃焼室7内での作動ガスの燃焼状態が悪くなってエンジンが不安定となる。そこで、このときには基本点火時期ADV0よりも点火時期を進角側に補正することで作動ガスの燃焼を安定させるためである。
図13において差分EGR比ΔRが所定値aから所定値bの間で差分EGR比補正量HOS1をゼロにしている。これはヒステリシスである。
ステップ51では、排気温度センサ46により検出される排気温度Texhから、図14を内容とするテーブルを検索することにより、排気温度補正量HOS2[°]を算出する。図14に示したように排気温度補正量HOS2は、排気温度Texhが設定温度Tsetより高いとき正の値となり、排気温度Texhが設定温度Tsetより低いとき負の値となる値である。排気温度補正量HOS2が正の値であるときにはこの補正量HOS2によって点火時期が進角され、また、排気温度補正量HOS2が負の値であるときにはこの補正量HOS2によって点火時期が遅角される。ここで、設定温度Tsetとは、基本点火時期ADV0を設定したときのLP−EGR弁17部の排気温度のことである。
本実施形態では、排気温度センサ46の取り付け位置をLP−EGR弁17の直ぐ下流としているが、この取り付け位置に限られるものでない。また、本実施形態では、排気温度センサ46により排気温度を検出しているが、排気温度を推定する場合であってよい。
排気温度Texhが設定温度Tsetより低いときに点火時期を遅角させる理由は、次の通りである。すなわち、運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する同じ加速時にあっても、排気温度Texhが設定温度Tsetより低いときには燃焼室7に導入されるEGRガス量が減る。燃焼室7に導入されるEGRガス量が減ると、ノッキングが発生する可能性がある。そこでノッキングを回避するには点火時期を遅角させる必要があるためである。
排気温度Texhが設定温度Tsetより高いときに点火時期を進角させる理由は、次の通りである。すなわち、LP−EGR領域へと移行する同じ加速時にあっても、排気温度Texhが設定温度Tsetより高いときには、燃焼室7に導入されるEGRガス量が増え燃焼が不安定となる。そこで燃焼を安定させるには点火時期を進角させる必要があるためである。
ステップ52では、この排気温度補正量HOS2及び差分EGR比補正量HOS1を基本点火時期ADV0に加算しADV0からFBを減算した値を点火時期指令値ADV[°BTDC]として、つまり次式により点火時期指令値ADVを算出する。
ADV=ADV0+HOS1+HOS2−FB …(5)
エンジンコントローラ41に備えている図示しないフローでは、このようにして算出した点火時期指令値ADVを点火装置のパワートランジスタに出力する。パワートランジスタは、点火コイルの一次側に設けられており、点火時期指令値ADVのタイミングで1次電流を遮断することで、点火プラグ9により火花点火が行われる。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態では、エンジン1とモータジェネレータ51を駆動源とするハイブリッド車両50の制御装置おいて、電磁クラッチ52(連結断接手段)と、LP−EGR装置14と、トルクアシスト手段(55)とを備える。上記電磁クラッチ52はエンジン1とモータジェネレータ51との連結を断接する。上記LP−EGR装置14は予め定まっているLP−EGR領域でLP−EGR弁17を開いてEGRガスを燃焼室7に供給する。上記トルクアシスト手段(55)は加速によりエンジンの運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する場合(目標EGR比の増加を伴う加速時)に、電磁クラッチ52に指示して、モータジェネレータ51とエンジン1とを連結する。そして、モータジェネレータ51により、エンジン1の有する吸気管ボリュームであってLP−EGR弁17より燃焼室7入口までの吸気管ボリュームに応じて、エンジン1が発生するエンジントルクをアシストする。また、減速によりエンジンの運転点がLP−EGR領域から非LP−EGR領域へと移行する場合(目標EGR比の減少を伴う減速時)に、電磁クラッチ52に指示して、モータジェネレータ51とエンジン1とを連結する。そして、LP−EGR弁17より燃焼室7入口までの吸気管ボリュームに応じて、エンジン1が発生するエンジントルクでモータジェネレータ51を発電させて電力回生する。本実施形態によれば、EGRガスの導入遅れに伴ってエンジントルクの立ち上がりが遅れる加速時には、そのトルクの立ち上がり遅れをなくしてスムーズな加速を行わせることができる。また、EGRガスの停止遅れに伴ってエンジントルクが過剰となる減速時には、そのトルク過剰をなくして、スムーズな減速を行わせることができる。
本実施形態では、エンジンはガソリンエンジンであり、基本点火時期算出手段(41)と、点火時期フィードバック制御手段(41)とを備えている。上記基本点火時期算出手段(41)はLP−EGR領域で目標EGR比に応じて基本点火時期ADV0を算出する。上記点火時期フィードバック制御手段(41)は加速によりエンジンの運転点がLP−EGR領域に移行する場合においてノッキングが生じたときに基本点火時期ADV0よりも点火時期を遅角側にフィードバック制御する。このように、点火時期のフィードバック制御でノッキングを回避してはいる。しかしながら、エンジンの運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時にEGRガスの燃焼室7への導入が遅れる間は実際のEGR比が目標EGR比より小さくなり、ノッキングが生じ勝ちとなる。すると、ノックを回避するための点火時期のフィードバック制御が行われるため、点火時期が遅角される。この結果、加速初期に実際のエンジントルクが目標エンジントルクを下回って加速感が不足することとなり、望みの加速感が得られなくなる。この場合に、本実施形態ではエンジンの運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時にモータジェネレータ51によりエンジントルクをアシストする。これによって、ノッキングを回避しつつ、EGRガスの導入遅れに伴って発生する加速初期のエンジントルクの立ち上がり遅れをなくしてスムーズな加速を行わせることができる。
本実施形態では、モータジェネレータ51によるアシストトルク量またはモータジェネレータ51の電力回生量は吸気管ボリュームが大きいほど大きい値である。これによって、吸気管ボリュームが相違するエンジンでも、スムーズな加速と減速を行わせることができる。
本実施形態では、モータジェネレータ51によるアシストトルク量またはモータジェネレータ51の電力回生量はアクセル開度変化量に応じた値でもある。これによって、同一の吸気管ボリュームを有するエンジンにおいて加速や減速の程度が相違しても、その相違する加速や減速の程度に応じた加速感や減速感を得ることができる。
本実施形態では、実LP−EGR比推定手段(41)と、差分EGR比算出手段(41)と、第1点火時期補正量算出手段(41)と、第1点火時期補正手段(41)とを備える。上記実LP−EGR比推定手段(41)はエンジンの運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する場合に、移行後のLP−EGR領域で実EGR比を推定する。上記差分EGR比算出手段(41)は目標EGR比と推定した実EGR比の差分EGR比ΔR(差分)を算出する。上記第1点火時期補正量算出手段(41)は推定した実EGR比が目標EGR比と一致するように差分EGR比ΔRに応じた差分EGR比補正量HOS1(第1点火時期補正量)を算出する。上記第1点火時期補正手段(41)は差分EGR比補正量HOS1で基本点火時期ADV0を補正する。これによって、運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時に、移行後しばらく実EGR比が目標EGR比より小さいときのノッキングの発生を抑制することができる。
本実施形態では、排気温度センサ46(排気温度検出手段)と、第2点火時期補正量算出手段(41)と、第2点火時期補正手段(41)とを備える。上記排気温度センサ46は排気温度Texhを検出する。上記第2点火時期補正量算出手段(41)は排気温度Texhが予め定めた設定温度Tsetより外れたときに、設定温度Tsetからの差の温度に応じた排気温度補正量HOS2(第2点火時期補正量)を算出する。上記第2点火時期補正手段(41)は排気温度補正量HOS2で基本点火時期ADV0を補正する。これによって、運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する同じ加速時にあっても、排気温度が設定温度より低く燃焼室7に流入する実EGRガス量が減るときに発生しがちなノッキングを抑制できる。
実施形態では、ガソリンエンジンにLP−EGR装置を適用する場合で説明したが、この場合に限られるものでなく、ディーゼルエンジンにLP−EGR装置を適用する場合にも本発明の適用がある。ディーゼルエンジンでは、DPF(Diesel Particulate Filter)を含んだ排気後処理装置を排気管に備える。排気後処理装置には各種のタイプがあるが、例えば排気管の上流側より、酸化触媒、DPF、NOxトラップ触媒がこの順で設けられる。これ以外にも様々なタイプの排気後処理装置が設けられるが、いずれにせよDPFを必ず含んでいるので、DPFの下流をLP−EGR装置におけるEGRガスの取出し口としてLP−EGR装置を設けてやればよい。
LP−EGR装置を備えるディーゼルエンジンでは、加速により運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する場合に、EGRガスが実際に燃焼室に流入するまでにエンジントルクの立ち上がり遅れがある。この場合に、EGRガスの燃焼室への供給が遅れる間は実EGR比が目標EGR比より小さくなり、NOxが増加したりノッキングが生じたりする。このNOxの増加やノッキングの発生を抑制するため、燃料噴射量を減量すれば実際のエンジントルクが目標エンジントルクを下回ることとなり、望みの加速感が得られなくなる。そこで、運転点が非LP−EGR領域からLP−EGR領域へと移行する加速時にモータジェネレータにより、吸気管ボリュームに応じて、エンジンが発生するエンジントルクをアシストすることで、望みの加速感が得られる。
同様に、減速により運転点がLP−EGR領域から非LP−EGR領域へと移行する場合に、燃焼室へのEGRガスの流入が停止するまでに応答遅れがある。EGRガスの燃焼室への流入が停止しない間は新気量を減らすことができないため、実際のエンジントルクが目標エンジントルクを上回って、望みの減速感が得られなくなる。そこで、運転点がLP−EGR領域から非LP−EGR領域へと移行する減速時には、吸気管ボリュームに応じて、エンジンが発生するエンジントルクでモータジェネレータ51を発電させて電力回生することで、望みの減速感が得られる。