以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態のガソリンエンジンの制御装置の概略構成図である。
エンジン1はガソリンエンジン(以下、単に「エンジン」ともいう。)で、図示しない車両に搭載されている。エンジン1には、吸気通路4、排気通路11を備える。上記の吸気通路4は、吸気管4a、吸気コレクタ4b、吸気マニホールド4cで構成される。
吸気コレクタ4bのすぐ上流の吸気管4aにはアクセルペダルの踏込量(以下「アクセル開度」という。)に応動する電子制御のスロットル装置を備える。スロットル装置は、スロットルバルブ5と、スロットルバルブ5を駆動するスロットルモータ(回転電機)6により構成されている。吸入空気は吸気管4aを経てスロットルバルブ5によって調量される。調量された空気は吸気コレクタ4bに蓄えられ、この吸気コレクタ4bから吸気マニホールド4cを介して各気筒のシリンダ7(燃焼室)に分配供給される。実施形態は電子制御のスロットル装置の場合であるが、スロットルバルブとアクセルペダルとがワイヤーにより連結されたものであってよい。
燃料噴射弁8が吸気マニホールド4cに、点火プラグ9がシリンダ7に直接臨んでそれぞれ設けられ、燃料噴射弁8から燃料が吸気マニホールド4c(吸気ポート)に噴射される。噴射された燃料は、スロットルバルブ5によって調量された空気と混合してガスとなり、このガスを点火プラグ9で着火して燃焼させる。燃焼するガスはピストン10を押し下げる仕事をした後、排気通路11に排出される。燃料噴射弁8を設ける位置は吸気マニホールドに限らない。シリンダ7に直接臨ませて燃料噴射弁を設けるものであってよい。
排気通路11は、各気筒のシリンダ7からの排気が流入する排気マニホールド11a、この排気マニホールド11aの集合部に接続される排気管11bで構成される。排気中にはHC、CO、NOxの有害三成分を含むので、これらを全て浄化するため排気マニホールド11aの集合部にマニホールド触媒12を、それよりも下流の排気管11bにメイン触媒13を備えている。メイン触媒13は例えば車両の床下に設けられる。これら各触媒12,13は例えば三元触媒で構成される。排気管11bの末端にはマフラー19を備えている。
エンジン1には、さらにターボ過給機21を備える。ターボ過給機21は、排気管11bに設けられるタービン22と、吸気管4aに設けられるコンプレッサ23と、これらタービン22,コンプレッサ23を接続する軸24とで構成される。上記のタービン22は排気管11bを流れる排気のエネルギにより回転し、タービン22と同軸のコンプレッサ23を駆動する。コンプレッサ23はエアクリーナ18を介して吸入される空気を圧縮する。圧縮されて大気圧を超える加圧空気は、吸気コレクタ4bへと送られる。ターボ過給機21を働かせることで、目標過給圧を得ることができる。
ターボ過給機21には、タービン22をバイパスするバイパス通路24(第2バイパス通路)と、このバイパス通路24を開閉する常閉のウェイストゲートバルブ25を備える。ウェイストゲートバルブ25はモータ(回転電機)26により駆動する。例えば、過給圧センサ45により検出される実過給圧が要求過給圧より高くなったときには、モータ26でウェイストゲートバルブ開度を大きくなる側に制御することにより、タービン22をバイパスさせて流す排気量を増やす。これによって、ウェイストゲートバルブ開度を大きくなる側に制御する前よりタービン回転速度が低下し、タービン22と同軸のコンプレッサ回転速度も低下する。コンプレッサ回転速度が低下すると実過給圧が低下してゆき要求過給圧と一致する。実過給圧が要求過給圧と一致するタイミングでウェイストゲートバルブ開度を保持させる。
コンプレッサ23下流側の吸気管4aには、インタークーラ25を備える。インタークーラ25はコンプレッサ23により圧縮された空気を冷却するためのものである。コンプレッサ23による空気圧縮によって温度上昇した空気がインタークーラ25によって冷却されることで、過給効率を高めることができる。
さて、ターボ過給機21を備えているガソリンエンジン1においても、過給域においてノッキングの抑制のため、大量のEGR(排気再循環)を行いたい要求がある。この要求に応えるため、本実施形態では、新たにロープレッシャループEGR装置14を設ける。ロープレッシャループEGR装置14は、EGR通路15、EGR通路15に介装されるEGRクーラ16、EGR通路15を開閉するEGR弁17(例えばバタフライ弁)、EGR弁17を駆動するモータ(回転電機)18で構成される。
上記のEGR通路15は、タービン22下流の排気管、具体的にはマニホールド触媒12とメイン触媒13の間の排気管11bから分岐され、コンプレッサ23上流の吸気管4aに合流している。このように、EGR通路15がタービン22下流の排気管11bとコンプレッサ23上流の吸気管4aとを連通する場合には、タービン下流の排気管圧力とコンプレッサ上流の吸気管圧力との差圧でガス(排気の一部)がEGR弁17を流れることになる。タービン下流の排気管圧力とコンプレッサ上流の吸気管圧力との差圧は例えば1kPa程度ときわめて小さいので、ロープレッシャループEGR(以下「LP−EGR」という。)装置と呼ばれる。以下では、LP−EGR装置のEGR弁を「LP−EGR弁」という。また、LP−EGR弁17を開いてLP−EGRを行う運転領域を「LP−EGR領域」、LP−EGR弁を全閉に保持する運転領域を「非LP−EGR領域」という。LP−EGR装置そのものはディーゼルエンジンにおいて公知であるが、本実施形態では、ターボ過給機21を備えるガソリンエンジン1に対して新たにLP−EGR装置14を採用している。
上記のEGRクーラ16はLP−EGR弁17上流のEGR通路15に設けられる。EGRクーラ16はEGR通路15を流れるガス(排気の一部)が一定の温度になるまで冷却するものである。このため、LP−EGR領域では一定温度まで冷却されたガスがLP−EGR弁17を流れる。
ここで、ターボ過給機21を備えるガソリンエンジン1にLP−EGR装置14を新たに採用した理由を説明する。ターボ過給機を備えないガソリンエンジンに適用され、比較的高温の排気の一部を吸気コレクタ4bに流入させるEGR装置がある。このEGR装置では、排気通路11と吸気コレクタ4bの間の比較的大きな差圧(負圧)でEGR弁をガスが流れるので、ハイプレッシャループEGR(以下「HP−EGR」という。)装置と呼ばれる。
ターボ過給機を備えるガソリンエンジンにHP−EGR装置を適用することを考える。まず、過給していないときには吸気コレクタ4bに大気圧より低い圧力(負圧)が発達し、排気圧との差圧が大きくなるので、EGR弁を開けばガス(EGRガス)を吸気コレクタ4bに吸い込ませることができる。しかしながら、ターボ過給機による過給の開始で吸気コレクタ4bの圧力は、負圧から大気圧へ、大気圧からさらに大気圧を超える圧力へと高くなっていく。吸気コクレタ4bの圧力が大気圧を超える圧力へと高くなると、排気圧との差圧が小さくなってしまう。吸気コレクタ4bにおいて大気圧を超える圧力とは過給圧のことであり、過給圧が高くなるほど、排気圧との差圧がさらに小さくなる。排気圧との差圧が小さくなると、特に大量のEGRガスを吸気コレクタ4bに吸い込ませることができなくなる。
一方、LP−EGR装置では、タービン下流の相対的に低い排気圧とコンプレッサ上流の吸気圧との微小な差圧(1kPa程度)でガス(EGRガス)がLP−EGR弁17を流れるので、過給圧の影響を受けることがない。つまり、ターボ過給機21を備えるガソリンエンジン1にLP−EGR装置14を追加した構成とすることで、ターボ過給機21による過給中にあっても大量のEGRガスを吸気管に導入できることとなった。
さらに説明すると、図2に本実施形態の過給域とLP−EGR領域とを重ねて示す。図2において、吸気コレクタ4bの圧力が大気圧となる場合を破線のラインで示している。本実施形態では、吸気コレクタ4bの圧力が大気圧より高くなる領域(破線より上の領域)が過給域、吸気コレクタ4bの圧力が大気圧以下となる領域(破線より下の領域)が非過給域である。一方、LP−EGR領域が過給域と前記非過給域とにまたがって設定されている。すなわち、LP−EGR領域は全体としてほぼ等脚台形状であり、本実施形態では過給域の中にLP−EGR領域が大きく生じている。
このため、本実施形態では、運転領域が次のように4つの領域に区分される。
〈1〉過給域かつLP−EGR領域(B−C−D−Eで囲まれた領域)
〈2〉過給域かつ非LP−EGR領域(ハッチングで示す領域)
〈3〉非過給域かつLP−EGR領域(A−B−E−Fで囲まれた領域)
〈4〉非過給域かつ非LP−EGR領域
ここで、図2において等脚台形の角をA,C,D,Fとし、等脚台形と破線が交わる点をB,Eとしている。また、破線の両端をG,Jとし、G−H−Iのラインを全負荷時のラインとしている。なお、LP−EGR領域は、全体としてほぼ等脚台形状である場合に限られるものでない。エンジン、ターボ過給機、LP−EGR装置14の仕様が異なれば、LP−EGR領域の形状が違ったものとなり得る。
図1に示したように、本実施形態ではさらに、コンプレッサ23をバイパスするバイパス通路31(第1バイパス通路)を備える。バイパス通路31には、モータ(回転電機)33により駆動されるリサーキュレーションバルブ32が設けられている。このバルブ32は、車両減速のためスロットルバルブ5が閉じられた際に、スロットルバルブ5からコンプレッサ23までの吸気管4aに閉じ込められた加圧空気をコンプレッサ23上流側に再循環(リサーキュレーション)させるためのものである。一方、車両減速時以外の運転域でターボ過給機21により過給が行われている場合には、バルブ32が基本的に全閉保持され、コンプレッサ23の上流側の空気(EGRガスを含む)の全てがコンプレッサ23に導かれる。
ここで、リサーキュレーションバルブ32が必要となる理由はディーゼルエンジンとガソリンエンジンとでスロットルバルブの扱いが異なることによるものである。すなわち、ディーゼルエンジンでは、スロットルバルブは常時開かれており、必要な場合に限って閉じられる。一方、ガソリンエンジンでは、スロットルバルブ5は、吸気コレクタ4bのすぐ上流に設けられ、アクセルペダルの踏込量に応動してその開度が変化する。
このような違いにより、ガソリンエンジンでは、ターボ過給機21により過給をしている状態から車両を減速させるためにアクセルペダルを戻すと、これに応動してスロットルバルブ開度が一定量、ステップ的に小さくなる。このスロットルバルブ開度の急な減少でスロットルバルブ5からコンプレッサ23までの吸気管4a内に存在する加圧空気の行き場がなくなる。その上、車両減速時からのコンプレッサ23の稼働によって、スロットルバルブ5からコンプレッサ23までの吸気管4aの圧力がさらに上昇する。すると、コンプレッサ下流で圧力の高くなった空気はコンプレッサ23に向かって逆流する。そして、逆流する加圧空気がコンプレッサ23を通過して上流に逃れる際にコンプレッサ23から音(騒音)が発生する。このような車両減速時に発生する騒音は車両室内の静粛性に影響する。そこで、過給域からの車両減速時にはモータ33でリサーキュレーションバルブ開度を大きくなる側に制御することにより、コンプレッサ上流の加圧空気を、コンプレッサ23をバイパスしてコンプレッサ上流に解放(リサーキュレーション)する。これによって、車両減速時にコンプレッサ23からの騒音の発生を防止するのである。
次に、LP−EGR装置14を用いてLP−EGR制御を行う場合のEGR率を「LP−EGR率」というとすると、目標LP−EGR率のマップ特性は図3に示したようになっている。すなわち、図3のように、全体としてほぼ等脚台形状のLP−EGR領域を大きく2つに分け、高負荷側の領域で10%、低負荷側の領域で20%としている。
高負荷側の領域で低負荷側の領域より目標LP−EGR率を小さくしている理由は次の通りである。すなわち、高負荷側においてもターボ過給機により新気をシリンダ7に押し込めることができれば、高負荷側でも低負荷側と同じに目標LP−EGR率を20%にすることができる。しかしながら、実際にはターボ過給機により新気をシリンダ7に押し込むにしても、押し込むことのできる新気量には限界がある。一方、高負荷側では低負荷側より大きなエンジントルクを発生させる必要がある。そこで、高負荷側では低負荷側よりノッキングが生じない範囲で目標LP−EGR率を小さくし、その小さくした分だけシリンダ7内での燃焼状態をよくすることで、低負荷側よりも大きなエンジントルクが得られるようにするのである。なお、図3では、目標LP−EGR率を2段階で設定しているが、目標LP−EGR率を2段階に設定する場合に限定されるものでない。目標LP−EGR率を3段階以上に、あるいは連続的に目標LP−EGR率を変化させるものであってよい。
過給域かつLP−EGR領域での運転には高速道路での走行が含まれる。高速道路を定常で走行しているときには要求エンジントルクが得られるように要求過給圧が設定されているので、走行中の加速感に不足は生じない。これについて説明すると、定常走行中にEGRガスをシリンダ7に導入したとき、ERGガスを導入する分だけ新気の量が減る。EGRガスを導入していないときと同じエンジントルクを出力させるためには、EGRガスがシリンダ7に入った分だけ余計に新気をシリンダ7に導入してやることが必要となる。
この事情はターボ過給機付きガソリンエンジンであろうと、NAエンジン(自然吸気ガソリンエンジン)であろうと変わりない。NAエンジンでは、スロットルバルブをEGRガスの導入分だけ余計に開くことで、同じ要求エンジントルクが得られるようにしている。一方、ターボ過給機付きガソリンエンジンの場合には、EGRガスをシリンダ7に導入することで、減ってしまった新気(空気)を入れる手段としては、ターボ過給機21しかない。このため、EGRガスの導入によって実エンジントルクが要求エンジントルクより低下する分だけ、ターボ過給機21に余計に仕事をさせることで、新気をシリンダ7に多く取り込んでやる必要がある。この場合、制御パラメータは要求過給圧である。そこで、ターボ過給機付きガソリンエンジンにおいては、目標LP−EGR率の分だけ要求過給圧が高くなる側に補正してやることで、ERGガスをシリンダ7に導入していても、要求エンジントルクが得られるようにしている。このように、要求過給圧を算出する際に、目標LP−EGR率を織り込んでいるので、EGRガスをシリンダ7に導入していても、ドライバがエンジントルクの不足を感じることはないのである。
さて、ターボ過給機21とLP−EGR装置14を備えるガソリンエンジンを搭載した車両で高速道路を走行する場合を考える。この場合に、一定のアクセルペダル踏込量で車速を一定に維持するドライバもいれば、アクセルペダルを離したり再び踏み込んだりして一定の車速を維持しようとするドライバもいる。後者においては、一定車速で走行中にアクセルペダルを戻し、これによって車両が減速されるためアクセルペダルを踏み込んで再加速し、減速前の車速に戻す。減速前の車速に戻ったので、再びアクセルペダルを戻し、これによって車両が減速されるためアクセルペダルを踏み込んで再加速し、減速前の車速に戻す。こうした操作がドライバによって高速道路の走行中に繰り返し実行される。このとき、ターボ過給機21とLP−EGR装置14を備えるエンジンでは、過給域かつLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速直後の再加速時にエンジントルクの発生が遅れて減速直後の再加速性が悪くなるという問題がある。以下、減速直後の再加速時を、単に「減速再加速時」ともいう。そこで、本発明の第1実施形態は、過給域かつLP−EGR領域(過給域と重なるLP−EGR領域)から非LP−EGR領域への減速直後の再加速時に応答よくエンジントルクを発生させる。これによって、高速道路の走行中に、アクセルペダルを離したり再び踏み込んだりして一定の車速を維持しようとするドライバの場合に対処する。
これについて図4,図5のタイミングチャートを参照して具体的に説明する。図4は、過給域かつLP−EGR領域のうち非過給域に相対的に近い側の領域から非LP−EGR領域への減速再加速時に、車速VSP及び各パラメータがどのように変化するのかを示したモデル図である。また、図5は、過給域かつLP−EGR領域のうち非過給域より相対的に離れる側の領域から非LP−EGR領域への減速再加速時に、車速VSP及び各パラメータがどのように変化するのかを示したモデル図である。
ここで、図4と図5の違いを図6で先に説明しておくと、図6に示したように本実施形態では過給域かつLP−EGR領域を、非過給域に相対的に近い側の領域R1と非過給域より相対的に離れる側の領域R2とに分割している。図4は非過給域に相対的に近い側の領域R1(この領域を以下「第1領域」という。)から非LP−EGR領域へと減速しその直後に再加速する場合である。一方、図5は非過給域より相対的に離れる側の領域R2(この領域を以下「第2領域」という。)から非LP−EGR領域へと減速する場合である。そして、上記のように高速道路の走行中に、アクセルペダルを離したり再び踏み込んだりして一定の車速を維持しようとする場合を、図4にモデル図として記載している。
上記の各パラメータとは、図4,図5において上からスロットルバルブ開度TVO、LP−EGR弁開度、コレクタ部EGR率、実過給圧、スロットルバルブ前圧力、リサーキュレーションバルブ開度、ウェイストゲートバルブ開度である。ここで、図4,図5ではLP−EGR弁開度を「LP−EGR/V開度」で、スロットルバルブ前圧力を「TH/V前圧力」で、リサーキュレーションバルブ開度を「R/V開度」で、ウェイストゲートバルブ開度を「W/Gバルブ開度」で略記している。上記の「スロットルバルブ前圧力」とは、スロットルバルブ5より上流側でコンプレッサ23より下流側の吸気管の圧力のことであるとする。ここで、リサーキュレーションバルブ開度がゼロのときリサーキュレーションバルブ32が全閉位置にあり、リサーキュレーションバルブ開度が所定値(正の値)のときにはリサーキュレーションバルブ32が開かれている。同様に、ウェイストゲートバルブ開度がゼロのときウェイストゲートバルブ25が全閉位置にあり。ウェイストゲートバルブ開度が所定値(正の値)のときにはウェイストゲートバルブ25が開かれている。
まず、図4に示した第1領域R1から非LP−EGR領域への減速再加速時から説明する。図4において、比較例の場合を一点鎖線で、本実施形態の場合を実線で示している。比較例の場合を先に説明し、その後に第1実施形態に言及する。一定車速VSP1での走行中にt1のタイミングでドライバがアクセルペダルから脚を離したとすると、アクセル開度の減少に応じ、スロットルバルブ5が閉じられ、車速VSPが一定車速VSP1から低下していく(図4第1段目の一点鎖線参照)。これによって、スロットルバルブ開度TVOが所定値TVO1から所定値TVO2へとステップ的に小さくなる(図4第2段目の一点鎖線参照)。
実過給圧は減速前に所定値Bst1であったものが、スロットルバルブ開度TVOの減少を受け、t1のタイミングより大気圧のラインを横切って低下し、t2のタイミングで所定値Bst2に落ち着く(図4第5段目の一点鎖線参照)。ここでの「大気圧」は相対圧で、低地でも高地でも大気圧である。とりあえずは低地で考えている。
また、t1の減速開始タイミングでリサーキュレーションバルブ32及びウェイストゲートバルブ25を開く。つまり、リサーキュレーションバルブ開度をゼロから所定値RV1へと切換え、ウェイストゲートバルブ開度をゼロから所定値WG1へと切換える(図4第7段目、第8段目の一点鎖線参照)。
第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時にリサーキュレーションバルブ開度を大きくする側に制御する理由を前述したが、この理由の他にもう一つ理由がある。このもう一つの理由は次の通りである。すなわち、第1領域R1から非LP−EGR領域への減速のため、スロットルバルブ開度を所定値TVO1から所定値TVO2へとステップ的に切換えると、吸気コレクタ4b内の圧力が大きな負圧(大気圧より低い圧力)へと発達する。一方、リサーキュレーションバルブ開度をゼロに維持すれば、減速からも働くコンプレッサ23によって、スロットルバルブ前圧力が適正値を超えて高くなることがある。ここで、適正値とは、大気圧よりは高いが逆流を引き起こすほどでない圧力のことである(後述する)。この場合には、吸気コレクタ4bの圧力との差圧がNAエンジンの場合より大きくなる。スロットルバルブ前後差圧がNAエンジンの場合より大きくなると、その差圧に応じた力が意図しない力としてスロットルバルブ5に作用し、スロットルバルブ5の機能に支障を生じかねない。そこで、減速のためスロットルバルブ5を閉じるときには、サーキュレーションバルブ開度をゼロから所定値RV1へと切換え、スロットルバルブ前圧力を上流側に逃すことで、スロットルバルブ前後差圧をNAエンジンの場合と同等となるまで低下させるのである。このように、スロットル前圧力を大気圧まで低下させた後には、リサーキュレーションバルブ開度を所定値RV1にしておく理由がなくなる。このため、スロットル前圧力を大気圧まで低下させた直後のt3のタイミングでリサーキュレーションバルブ開度をゼロに戻す(図4第7段目の一点鎖線参照)。
t1でのリサーキュレーションバルブ開度及びウェイストゲートバルブ開度の変化を受けて、スロットルバルブ前圧力がt1より一気に低下しt2のタイミングで大気圧に落ち着く(図4第6段目の一点鎖線参照)。比較例では、減速時にスロットルバルブ前圧力が大気圧に落ち着くように、つまりNAエンジンと同じになるように、所定値RV1を定めている。
t1の減速開始タイミングで必ずしも第1領域R1から非LP−EGR領域へと移行するものでないが、ここでは説明の便宜上、t1の減速開始タイミングで第1領域R1から非LP−EGR領域へと移行したとする。このとき、LP−EGR弁開度がt1の減速開始タイミングで所定値Eg1からゼロに切換わる(図4第3段目の一点鎖線参照)。
コレクタ部EGR率は、LP−EGR弁開度がt1の減速開始タイミングでゼロへと切換わる前には所定値RT1の状態にある。コレクタ部EGR率は、LP−EGR弁開度がt1でゼロへと切換わった後には所定値RT1から応答遅れをもって変化する。ここでは、コレクタ部EGR率の応答遅れを一次遅れで近似すると、コレクタ部EGR率はt1の減速開始タイミングから曲線的に変化し、t8のタイミングでやっとゼロに落ち着く(図4第4段目の一点鎖線参照)。
t1でLP−EGR弁開度が即座にゼロに切換えられるけれども、LP−EGR装置ではスロットルバルブ5のはるか上流にLP−EGR弁17が存在している。このため、スロットルバルブ5が閉じた瞬間にLP−EGR弁開度をゼロにしたとしても、LP−EGR弁17の直ぐ下流からシリンダ7直前までの吸気管にEGRガスが残留することとなる。この残留するEGRガスはt8のタイミングまでシリンダ7に流入し続ける。
一方、減速開始直後のt5のタイミングでドライバがアクセルペダルを踏み込んで再加速しようとした場合には、ターボ過給機21を働かせるため、ウェイストゲートバルブ開度がt5のタイミングでゼロに戻される(図4第8段目の一点鎖線参照)。
しかしながら、アクセルペダルを踏み込むことでスロットルバルブ開度が所定値TVO2から減速前の所定値TVO1に戻っても、実過給圧はなかなか立ち上がってこない(図4第5段目の一点鎖線参照)。なぜなら、第1領域R1で例えば10%の目標LP−EGR率が設定されていたとすると、シリンダ7に流入するガスのうち新気の量は90%しかないので、その分だけエンジントルクが不足する。つまり、90%のエンジントルクしか得られないということになる。これによってタービン22に流入する排気エネルギーも90%になりタービン回転速度の上昇が遅れ、実過給の立ち上がりが遅れるためである。
このように、比較例では、ドライバが車両を一定車速VSP1となるまで再加速しようとしたときに、EGRガスをシリンダ7に導入していないときと同じように過給を行わせることができない。新気の絶対量が少ないために、エンジントルクが上がってこない結果、第1領域R1から非LP−EGR領域への減速前の車速へと立ち上がるのが遅れるという問題があるのである。このため、減速再加速後に直ぐに減速再加速前と同じ車速となって欲しいのに、直ぐには減速前の車速に追いつかず、再加速タイミング(t5)から暫く後のt10のタイミングになって減速前の車速に追いつくこととなる(図4最上段の一点鎖線参照)。減速再加速のたびに減速前の車速への復帰が遅れるのでは、一定車速VSP1での高速走行を行うことができない。
ここで、減速前の車速への復帰が遅れる原因は、減速時に、リサーキュレーションバルブ開度及びウェイストゲートバルブ開度を一律にゼロから所定値へと切換えることで、スロットルバルブ前圧力を大気圧にまで一気に低下させているところにある。そこで、本発明者が検討してみたところ、高速道路での走行中にアクセルペダルを離したり再び踏み込んだりして一定の車速を維持しようとする場合には、2つのバルブ32及び25の開度をゼロに保持したとしても、問題ないことが新たに判明している。すなわち、2つのバルブ32及び25の開度をゼロに保持したとしても、スロットルバルブ前圧力を大気圧よりは高いが逆流を引き起こすほどでない圧力(以下「適正値」という。)に維持できることが判明したのである。これは、エンジン排気量のサイズに対して、応答性を高めるため比較的小型のターボ過給機を採用しているためと考えられる。減速時に、スロットルバルブ前圧力を適正値に維持できれば、減速再加速時にスロットルバルブ前に大気圧より高い圧力の新気があるわけだから、このスロットルバルブ前の大気圧より高い圧力の新気を使って、高いエンジントルクを得ることができる。
2つのバルブ32及び25の開度をゼロに維持したとしても、スロットルバルブ前圧力を適正値に維持できる場合とは、第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時である。
そこで本発明の第1実施形態では、第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時に、2つのバルブ32及び25の開度をゼロに制御する(図4第7段目、第8段目の実線参照)。2つのバルブ32及び25を開けることなく全閉位置に保持することによって、t1の減速開始タイミングからもスロットルバルブ前圧力が適正値に維持される(図4第6段目の実線参照)。これは、第1領域R1ではスロットルバルブ前圧力がもともと大気圧に近いので、2つのバルブ32及び25の開度をゼロに維持しても、スロットルバルブ前圧力が適正値に維持されるためである。
このように、t1の減速開始タイミングからもスロットルバルブ前圧力を適正値に維持しておくことで、再加速要求があるt5のタイミングより実過給圧(エンジントルク)がすぐに立ち上がる(図4第5段目の実線参照)。これによって、シリンダ上流の吸気管に残留するEGRガスが減速開始より暫くの間シリンダに流れこんでいる状態であっても、EGRガスをシリンダに導入していないときと同じように、減速前の車速へと遅れなく加速することがきる(図4最上段の実線参照)。
なお、図4はリサーキュレーションバルブ開度をゼロに維持する場合であるが、この場合に限られない。本実施形態では、リサーキュレーションバルブ32が単なるON−OFFバルブではなく、モータ33駆動であるため、リサーキュレーションバルブ開度を段階的にあるいは連続的に制御することが可能である。このため例えば、リサーキュレーションバルブ32が閉じ側に制御される(少しはバルブ32が開いている)ようにリサーキュレーションバルブ開度を所定値に維持することによって、スロットルバルブ前圧力を適正値に維持するようにしてもかまわない。要は、スロットルバルブ前圧力が適正値に維持されるようにリサーキュレーションバルブ開度を定めればよい。
次に、図5を説明すると、図5において本実施形態の場合を実線で示している。図4では第1領域R1から非LP−EGR領域への減速再加速時を扱ったが、図5は図4とは異なる他の態様を扱うものである。つまり、図4は第1領域R1から非LP−EGR領域への減速再加速時の変化であったのに対して、図5は第2領域R2から非LP−EGR領域への減速のままで再加速しない場合の変化を示している。ただし、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時にも再加速が行われることがあり得るので、後述するように図4と同様の考え方を適用している。なお、図4では高速道路の走行中における減速再加速を扱ったが、図5は高速道路の走行中における減速を必ずしも扱うものでない。
さて、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時といっても、LP−EGRが行われる場合と行われない場合がある。LP−EGRが行われる場合とはエンジンの暖機完了後である。一方、LP−EGRが行われない場合とは、エンジンの暖機完了前である。エンジンの暖機完了前にLP−EGRを行わない理由は次の通りである。すなわち、エンジンの暖機完了前にEGRガスをシリンダ7に導入すると、シリンダ7内での燃焼が安定しないといった問題や凝縮水が発生するといった問題が生じる。そこで、エンジンの暖機完了前にはEGRガスを導入しないことでこれらの問題を避けるためである。
図5に限っては、エンジンの暖機完了後における第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時と、エンジンの暖機完了前における第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時を区別する。すなわち、エンジンの暖機完了後における第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時を、「LP−EGRありからの減速時」ともいい、この場合を実線で示している。また、エンジンの暖機完了前における第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時を「LP−EGRなしからの減速時」といい、この場合を一定鎖線で重ねて示している。
なお、図5においても、t11の減速開始タイミングで必ずしも第2領域R2から非LP−EGR領域へと移行するものでないが、ここでは説明の便宜上、t11の減速開始タイミングで第2領域R2から非LP−EGR領域へと移行したとする。これによって、LP−EGR弁開度がt11の減速開始タイミングで所定値Eg2からゼロに切換わる(図5第3段目の実線参照)。
第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時(LP−EGRありからの減速時)について説明する。第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時と第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時との違いは、タービン仕事の違いにある。すなわち、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時に、2つのバルブ32及び25の開度をゼロに維持したとき、スロットルバルブ前圧力が逆流を引き起こすほどの圧力へと上昇してしまうことが判明している。これはタービン22の行う仕事量が第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時よりも大きいためであると思われる。このため、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時に、スロットルバルブ前圧力を適正値に維持するにはタービン仕事を即座に減らす必要がある。
そこで、本実施形態では、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時に、リサーキュレーションバルブ開度をゼロに維持したまま、ウェイストゲートバルブ開度を所定値(正の値)へと制御することによってスロットルバルブ前圧力を適正値に維持する。
詳述すると、図5においてt11の減速開始タイミングでアクセルペダルが戻され、スロットルバルブ開度が所定値TVO3より所定値TVO2へとステップ的に小さくなったとする。
コレクタ部EGR率は、LP−EGR弁開度がt11の減速開始タイミングでゼロに切換わる前には所定値RT2の状態にある。コレクタ部EGR率は、LP−EGR弁開度がt11でゼロに切換わった後には所定値RT2から応答遅れをもって変化する。ここでは、コレクタ部EGR率の応答遅れを一次遅れで近似すると、コレクタ部EGR率はt11の減速開始タイミングから曲線的に変化し、t15のタイミングでやっとゼロに落ち着く(図5第4段目の実線参照)。
t11でEGR弁開度が即座にゼロに切換えられるけれども、LP−EGR装置ではスロットルバルブ5のはるか上流にLP−EGR弁17が存在している。このため、スロットルバルブ5が閉じた瞬間にLP−EGR弁17を全閉にしたとしても、LP−EGR弁17の直ぐ下流からシリンダ7直前までの吸気管にEGRガスが残留することとなる。この残留するEGRガスはt15のタイミングまでシリンダ7に流入し続ける。
この場合に、図4の比較例のようにt11の減速開始タイミングで2つのバルブ開度を所定値へと切換えたのでは、減速開始直後のt11からt15までの期間中に再加速しようとした場合に、実過給圧がなかなか立ち上がってこないという問題が生じる。
そこで、本実施形態では、第2領域R2から非LP−EGR領域への切換時にリサーキュレーションバルブ開度をゼロに維持したまま、ウェイストゲートバルブ25開度を開き側に制御し、ゼロより所定値WG2に切換える(図5第8段目の実線参照)。本実施形態では、ウェイストゲートバルブ25が単なるON−OFFバルブではなく、モータ26駆動であるため、ウェイストゲートバルブ開度を段階的にあるいは連続的に制御することが可能である。このため、ウェイストゲートバルブ開度を所定値WG2へと切換えることで、タービン22をバイパスして排気の一部が流れ、タービン仕事が減る。その分コンプレッサ23による空気圧縮の程度がウェイストゲートバルブ開度をゼロのままとしている場合より低下する。これによって、スロットルバルブ前圧力が跳ね上がらず適正値に維持されることとなる。第2領域R2のほうが第1領域R1よりもタービン22に流入する排気のエネルギが大きい分だけタービン仕事も大きい。そのタービン仕事が大きい分だけ、ウェイストゲートバルブ開度を制御してタービン仕事を低下させることで、タービン仕事を第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時と同様とするのである。上記の所定値WG2は、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時にスロットルバルブ前圧力が適正値に維持されるように定めればよい。
ウェイストゲートバルブ開度を所定値WG2へと切換えた状態を維持するのは、t15までの期間中に再加速が行われる場合に備えるためであるから、t15のタイミングまでである。これは、t15までの期間中に再加速が行われるときに、実過給圧がなかなか立ち上がってこないという問題が生じるので、この問題に対処するためである。
図5ではt11からt15までの期間でウェイストゲートバルブ開度を所定値WG2(一定)としているが、これに限られるものでない。理想としては、スロットルバルブ前圧力は適正値で一定に維持されるか、適正値より徐々に低下するように制御することがエンジン制御としては自然である。そこで、スロットルバルブ前圧力が適正値で一定に維持されるか、適正値より徐々に低下するようにウェイストゲートバルブ開度を可変に制御することであってよい。
t15のタイミング以降には2つのバルブ32及び25の開度をゼロから所定値へと切換える。すなわち、t15のタイミングでリサーキュレーションバルブ開度をゼロから所定値RV2へと切換え、t15より一定期間が経過するt16のタイミングになるとリサーキュレーションバルブ開度をゼロに戻す(図4第7段目の実線参照)。一方、t15のタイミングでウェイストゲートバルブ開度を所定値WG2からさらに大きい所定値WG1へと切換える(図4第8段目の実線参照)。このようにt15のタイミングで2つのバルブ32及び25の開度を所定値へと切換えるのは、次の理由からである。すなわち、シリンダ7の上流に残留するEGRガスがt15のタイミングでなくなれば、スロットルバルブ前圧力を適正値に維持させておく必要がない、つまり通常のターボ過給機付きガソリンエンジンと同じ扱いでよいためである。減速を終了するt17のタイミングになると、ウェイストゲートバルブ開度をゼロに戻す。
次に、LP−EGRなしからの減速時の説明に移る。この場合には、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時でありながらEGRガスがシリンダ7に流入することがない。つまり、EGR弁開度及びコレクタ部EGR率はゼロのままであるので(図5第3段目、第4段目の一点鎖線参照)、減速直後の再加速時にエンジントルクの発生が遅れて減速直後の再加速性が悪くなるという問題が生じ得ない。また、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時であっても、EGRガスを導入しないエンジンの暖機完了前にリサーキュレーションバルブ32が閉じていると、減速後も仕事をするターボ過給機21によって、スロットルバルブ前圧力が適正値を超えて上昇する。すると、コンプレッサ23からスロットルバルブ5までの間の吸気管4aに存在する加圧空気の行き場がなくなり、当該加圧空気がコンプレッサ23の羽根の部分の部分を乗り越えて逆流するときに音が発生する。
このため、LP−EGRなしからの減速時の扱いは図4に示した比較例での扱いと同じでよいこととなる。すなわち、t11の減速開始タイミングで2つのバルブ32及び25の開度をゼロから所定値RV2,WG1へと切換える(図5第7段目、第8段目の一点鎖線参照)。このように、本実施形態では、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時であっても、EGRガスを導入しないエンジンの暖機完了前には2つのバルブ32及び25を開く。これによって、エンジンの暖機完了前にはスロットルバルブ前圧力が適正値を超えて上昇する場合にコンプレッサ23で生じる音を抑制することができる。
なお、図5では、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時であっても、EGRガスを導入しないエンジンの暖機完了前には2つのバルブ32及び25を開く場合を一点鎖線で示したが、この場合に限られるものでない。第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時であっても、EGRガスを導入しないエンジンの暖機完了前には2つのバルブ32及び25を開くことであってよい。
2つのバルブ32及び25の開度の変化を受けて、スロットルバルブ前圧力がt11のタイミングより一気に低下しt12のタイミングで大気圧に落ち着く(図5第6段目の一点鎖線参照)。
なお、LP−EGRなしからの減速時とLP−EGRありからの減速時とで、減速する前のスロットルバルブ開度及び実過給圧を相違させている。すなわち、LP−EGRなしからの減速時には減速前のスロットルバルブ開度をLP−EGRありからの減速時の所定値TVO3よりも小さな所定値TVO4としている(図5第2段目参照)。また、減速前の実過給圧をLP−EGRありからの減速時の所定値Bst3よりも小さな所定値Bst5としている(図5第5段目参照)。これは、LP−EGRありからの減速時にはEGRガスがシリンダ7に流入する分だけ余計にスロットルバルブ開度を増大し、かつ余計に実過給圧を高くすることで、EGRガスがシリンダ7に流入しない場合と同じ要求エンジントルクが得られるようにするためである。これで図4,図5の説明を終了する。
図1に示したように、燃料噴射弁8及び点火プラグ9に加えて、LP−EGR弁17、ウェイストゲートバルブ25、リサーキュレーションバルブ32の各開度を制御するため、エンジンコントローラ41を備える。エンジンコントローラ41はマイクロプロセッサ、ROM及びRAM等の周辺機器を備えたコンピュータユニットとして構成されている。エンジンコントローラ41には、エアフローメータ42、アクセルセンサ43、クランク角センサ44、過給圧センサ45、圧力センサ46からの信号が入力する。ここで、エアフローメータ42は吸気管4a内に流入する空気量(質量流量)を検出する。アクセルセンサ43はアクセルペダルの踏込量(アクセル開度)及びその変化量を検出する。クランク角センサ44はエンジン回転速度を検出する。過給圧センサ45は吸気コレクタ4bの圧力(実過給圧)を検出する。圧力センサ46はスロットルバルブ前圧力を検出する。
エンジンコントローラ41で実行されるこの制御を以下のフローチャートを参照して説明する。まず図7A,図7Bのフローはリサーキュレーションバルブ開度指令値、ウェイストゲートバルブ開度指令値及びスロットルバルブ開度指令値を算出するためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。なお、図7A,図7Bのフローでは、リサーキュレーションバルブを「R/V」で、ウェイストゲートバルブを「W/Gバルブ」で、スロットルバルブを「TH/V」で略記する。
ステップ1では減速フラグをみる。減速フラグはエンジンの始動時にゼロに初期設定されている。ここでは、減速フラグ=0であるとしてステップ2に進む。
ステップ2では、過給域かつLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速時であるか否かをみる。過給域かつLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速時であるときにはステップ3に進んで減速フラグ=1とする。減速フラグは減速開始タイミングでゼロから1に切換わり、後述するように残留するEGRガスが全てなくなるタイミングで1からゼロに切換わるフラグである。
上記過給域かつLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速時であるか否かの判定は、次のようにすればよい。すなわち、過給域かつLP−EGR領域にあったタイミングから非LP−EGR領域に移ったタイミングまでの時間を計測し、この計測した時間が予め定めた閾値以下のときに、過給域かつLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速時であると判定する。計測した時間が予め定めた閾値を超えているときには、過給域かつLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速時であると判定しない。
ステップ4ではリサーキュレーションバルブ開度指令値にゼロを入れる(リサーキュレーションバルブ32を全閉位置に保持する)。これによって、スロットル前圧力が適正値に維持される。
ステップ5では、さらに第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時であるか、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時であるかをみる。第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時であるときにはステップ6,7に進んでR1減速フラグ=1とし、ウェイストゲートバルブ開度指令値にゼロを入れる(ウェイストゲートバルブ25を全閉位置に保持する)。
一方、ステップ5で第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時であるときにはステップ8,9に進んでR2減速フラグ=1とし、ウェイストゲートバルブ開度指令値に所定値を入れる(ウェイストゲートバルブ25を所定開度まで開く)。
ステップ3での減速フラグ=1より、次回以降はステップ1からステップ10以降に進む。
ステップ10では、圧力センサ46により検出されるスロットルバルブ前圧力と所定値AAを比較する。所定値AAは実過給圧が大気圧になるときのスロットル前圧力で、予め設けておく(図4,図5第6段目参照)。所定値AAはこの場合に限らず、実過給圧が大気圧になるときのスロットル前圧力に余裕代を加算した値であってよい。スロットルチャンバ前圧力が所定値AAを超えているときには過給域にあると判断し、ステップ11に進む。
ステップ11ではLP−EGR弁17からシリンダ7までの間にEGRガスが残留しているか否かをEGRガス残留フラグによって判定する。過給域かつLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速時には、LP−EGR弁開度がゼロに切換えられるのであるが、EGRガスの輸送遅れで、しばらくはシリンダ7にEGRガスが遅れて入り、その分だけエンジントルクが不足する。そこでステップ11ではEGRガスの輸送遅れでエンジントルクが不足するか否かを判定するわけである。
ここで、EGRガス残留フラグの設定については、図8のフローにより説明する。図8のフローはコレクタ部EGR率に基づいて残留ガスが存在するか否かを判定するためのもので、図8のフローとは独立に一定時間毎(10ms毎)に実行する。
ステップ31ではエンジンの負荷と回転速度から定まる運転点が図2に示した過給域にあるか否かをみる。運転点が図2に示した過給域にないときにはそのまま今回の処理を終了する。
ステップ31で運転点が図2に示した過給域にあるときにはステップ32に進み、エンジンの負荷とエンジン回転速度Neから図9を内容とするマップを検索することにより、LP−EGR弁前後差圧を算出する。図9にはLP−EGR弁前後差圧の内容を示していないが、エンジンの負荷とエンジン回転速度Neを相違させてLP−EGR弁前後差圧を計測し、その計測データをマップにしてもたせておけばよい。
ステップ33では、LP−EGR弁開度から図10を内容とするテーブルを検索することにより、LP−EGR弁開口面積を算出する。ここで、LP−EGR弁開度を制御するのはエンジンコントローラ41であるため、LP−EGR弁開度はエンジンコントローラ41が知っている。
ステップ34では、LP−EGR弁開口面積とLP−EGR弁前後差圧に比例させてLP−EGR弁流量Qegrを、つまり次式によりLP−EGR弁流量Qegrを算出する。
Qegr=C×LP−EGR弁開口面積×LP−EGR弁前後差圧…(1)
ただし、C:比例定数、
ステップ35ではLP−EGR弁流量Qegrとエアフローメータ42により検出される吸入空気量Qaとから、次式によりEGR通路15の吸気管4aへの合流部(以下「EGR通路合流部」という。)のEGR率RATEegr1[%]を算出する。
RATEegr1=Qegr/(Qegr+Qa)×100 …(2)
ここではEGR率[%]で扱っているが、EGR比[無名数]で扱ってよい。
ステップ36では、このEGR通路合流部EGR率RATEegr1に対し一次遅れの処理を行って、つまり次式によりコレクタ部EGR率RATEegr2[%]を算出する。
RATEegr2=RATEegr2-1×(1−K)+RATEegr1×K
…(3)
ただし、K:加重平均係数、
RATEegr2-1:RATEegr2の前回値、
(3)式は漸化式である。(3)式の加重平均係数Kは、EGR通路合流部からシリンダ7までの吸気管容積に応じた値で、適合により予め定めておく。
ステップ37では、コレクタ部EGR率RATEegr2とゼロ[%]を比較する。コレクタ部EGR率RATEegr2がゼロを超えていれば、LP−EGR弁17からシリンダ7までの間にEGRガスが残留していると判断し、ステップ38に進んでEGRガス残留フラグ=1とする。ステップ37でコレクタ部EGR率RATEegr2がゼロ以下になると、LP−EGR弁17からシリンダ7までの間にEGRガスが残留していないと判断し、ステップ39に進んでEGRガス残留フラグ=0とする。
このようにして設定したEGRガス残留フラグの値はメモリに記憶させておく。
図7Aのフローに戻り、ステップ11でEGRガス残留フラグ=1であるときには、LP−EGR弁17からシリンダ7までの間にEGRガスが残留していると判断する。このときにはリサーキュレーションバルブ開度をゼロとするためステップ12に進み、リサーキュレーションバルブ開度指令値にゼロを入れる。これは、過給域かつLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速直後の再加速に備えて、リサーキュレーションバルブ32を全閉保持しておくことで、スロットルバルブ前圧力を適正値に維持しておくためである。これによって、減速直後に再加速が行われたときには、適正値のスロットルバルブ前圧力の空気が吸気コレクタ4bに即座に流入してシリンダ7に流入する新気の量が増大し、実過給圧が早期に要求過給圧へと立ち上がることとなる。
ステップ13ではR1減速フラグ=1であるか否かをみる。R1減速フラグ=1であるときには第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時であると判断し、ステップ14に進んでウェイストゲートバルブ開度指令値にゼロを入れる。
ステップ13でR1減速フラグ=1でないときには第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時であると判断し、ステップ15に進んでウェイストゲートバルブ開度指令値に所定値(正の値)を入れる。所定値は、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時にスロットルバルブ前圧力が適正値に維持されるように、予め定めておく。
ステップ11でEGRガス残留フラグ=1である間、ステップ12〜15の操作を繰り返す。過給域かつLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速時にLP−EGR弁開度をゼロに切換えたあと、所定の時間が経過すると、LP−EGR弁17からシリンダ7までの間のEGRガスが全てシリンダ7に流入する。LP−EGR弁17からシリンダ7までの間のEGRガスが全てシリンダ7に流入したタイミングでEGRガス残留フラグ=0になる。
ステップ11でEGRガス残留フラグ=0になると、LP−EGR弁17からシリンダ7までの間にEGRガスが残留していないと判断する。このときには本実施形態の制御は不要となるため、ステップ16〜18の後処理に進む。ステップ16では次回の過給域かつLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速時に備えるため、減速フラグ=0とする。ステップ17,18ではリサーキュレーションバルブ開度指令値にゼロを、ウェイストゲートバルブ開度指令値にゼロを入れる。
ステップ19では、スロットルバルブ開度指令値に最小値を入れる。最小値は過給域かつLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速時のスロットルバルブ開度で、予め設定しておく。
一方、図7Aのステップ2で過給域かつLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速時でなかったときには図7Bのステップ20以降に進む。図7Bのステップ20〜28は主に定常時や加速時のスロットルバルブ開度指令値及びウェイストゲートバルブ開度指令値を、過給域と非過給域とに分けて算出する部分である。ここで、ステップ21、25はスロットルバルブ5のフェールセーフ処理部分であるので、先にステップ20,22,23,24,25,26,27を説明する。
ステップ20では、図7Aのステップ10と同様に、圧力センサ46により検出されるスロットルバルブ前圧力と所定値AAを比較する。スロットルチャンバ前圧力が所定値AAを超えているときには過給域にあると判断してステップ22,23,24に進む。スロットルチャンバ前圧力が所定値AA以下であるときには非過給域にあると判断してステップ26,27,28に進む。
ステップ22,23,24は過給域での処理である。ステップ22ではターボ過給機21を作動させるためリサーキュレーションバルブ開度指令値にゼロを入れる(リサーキュレーションバルブ32を全閉状態とする)。ステップ23,34では、ウェイストゲートバルブ開度指令値に要求ウェイストゲートバルブ開度を入れ、スロットルバルブ開度指令値に最大値を入れる。ここで、最大値はスロットルバルブ5が全開状態となるときのスロットルバルブ開度である。これによって、過給域ではスロットルバルブ5を全開状態としたまま、要求ウェイストゲートバルブ開度によって(つまりウェイストゲートバルブ開度を制御することによって)エンジントルクを制御する。上記の要求ウェイストゲートバルブ開度の算出については図11のフローにより後述する。
ステップ26,27,28は非過給域での処理である。ステップ26ではターボ過給機21を作動させるためリサーキュレーションバルブ開度指令値にゼロを入れる。ステップ27,28では、ウェイストゲートバルブ開度指令値にゼロを入れ(ウェイストゲートバルブ25を全閉状態とする)、スロットルバルブ開度指令値に要求スロットルバルブ開度を入れる。これによって、非過給域ではウェイストゲートバルブ25を全閉状態としたまま要求スロットルバルブ開度によって(つまりスロットルバルブ開度を制御することによって)エンジントルクを制御する。上記の要求スロットルバルブ開度の算出については図11のフローにより後述する。
説明を飛ばした図7Bのステップ21,25はスロットルバルブ5のフェールセーフ処理を行う部分である。ステップ21ではスロットルバルブ前後差圧と所定値XXを比較する。ここで、スロットルバルブ前後差圧は、圧力センサ46により検出されるスロットルバルブ前圧力から過給圧センサ45により検出される実過給圧を差し引くことで求めることができる。スロットルバルブ前後差圧が所定値XXを超えている場合には、スロットルバルブ5に相対的に強い圧力が作用してスロットルバルブ5に損傷(ダメッジ)を与える可能性があると判断する。この場合にはステップ25に進みリサーキュレーションバルブ開度指令値に所定値(正の値)を入れる(リサーキュレーションバルブ32を開く)。定常時や加速時にも、リサーキュレーションバルブ32を開いてスロットルバルブ前圧力を上流側に逃すことで、スロットルバルブ前後差圧が所定値XX以下となるようにし、スロットルバルブ5に損傷が生じないように保護するわけである。上記の所定値XXは予め定めておく。
一方、スロットルバルブ前後差圧が所定値XX以下の場合には、スロットルバルブ5に損傷を与える可能性が低いと判断し、ステップ22に進んでリサーキュレーションバルブ開度指令値にゼロを入れる(リサーキュレーションバルブ32を全閉状態とする)。
図7Aのステップ29では、上記のように算出したリサーキュレーションバルブ開度指令値、ウェイストゲートバルブ開度指令値、スロットルバルブ開度指令値の3つの各指令値をレジスタに出力する。図示しないフローでは、リサーキュレーションバルブ32のアクチュエータであるモータ33に算出したリサーキュレーションバルブ開度指令値を出力する。また、図示しないフローでは、ウェイストゲートバルブ25のアクチュエータであるモータ26に算出したウェイストゲートバルブ開度指令値を出力する。また、図示しないフローでは、スロットルバルブ5のアクチュエータであるスロットルモータ6に算出したスロットルバルブ開度指令値を出力する。これで図7A,図7Bのフローの説明を終了する。
図11のフローは要求スロットルバルブ開度及び要求ウェイストゲートバルブ開度を算出するためのもので、図7A,図7Bのフローと並列的に一定時間毎(10ms毎)に実行する。
ステップ41ではアクセルセンサ43により検出されるアクセル開度APOから図12を内容とするテーブルを検索することにより、要求エンジントルクを算出する。図12に示したように要求エンジントルクはアクセル開度APOに比例して大きくなる値である。
ステップ42では要求エンジントルクとエンジン回転速度Neから、図13を内容とするマップを検索することにより、要求空気量を算出する。図13には要求空気量の内容を示していないが、エンジン回転速度Neを相違させても要求エンジントルクが得られるように要求空気量のマップを作成しておけばよい。
ステップ43では要求空気量とエンジン回転速度Neから図14を内容とするマップを検索することにより、基本要求過給圧を算出する。基本要求過給圧は、EGRガスをシリンダ7に導入していない状態でエンジン回転速度Neを相違させても要求空気量が得られる過給圧である。図14に示したように基本要求過給圧はNeが一定の条件で要求空気量が大きくなるほど高くなり、要求空気量が一定の条件でNeが高くなるほど高くなる値である。
ステップ44ではエンジンの負荷とエンジン回転速度Neから定まる運転点がLP−EGR領域にあるか否かをみる。LP−EGR領域にある場合にはステップ45に進み、基本要求過給圧を目標EGR率で増大補正した値を要求過給圧として、つまり次式により要求過給圧を算出する。
要求過給圧=基本要求過給圧×(1+目標EGR率) …(4)
EGRガスをシリンダ7に導入していない状態では要求空気量が得られても、EGRガスがシリンダ7に導入されるときには、EGRガスの導入分だけ実際の空気量が要求空気量から不足することとなる。そこで、EGRガスの導入分(つまり目標EGR率の分)だけ基本要求過給圧を増大補正した値を要求過給圧とすることで、EGRガスがシリンダ7に導入されるときでもEGRガスをシリンダ7に導入していない状態と同じ要求空気量が得られるようにする。
一方、ステップ44で非LP−EGR領域にある場合にはステップ46に進み基本要求過給圧をそのまま要求過給圧に入れる。
ステップ47〜50はスロットルバルブ開度によってエンジントルクを制御するのか、ウェイストゲートバルブ開度によってエンジントルクを制御するのかを切り分ける部分である。すなわち、図15に示したように、非過給域をスロットルバルブ開度によるエンジントルク制御域、過給域をウェイストゲートバルブ開度によるエンジントルク制御域としている。非過給域では、NAエンジンと同じにスロットルバルブ5を全開位置まで使ってエンジントルクを制御し、過給域に入るとスロットルバルブ5を全開位置に保持したまま、今度はウェイストゲートバルブ開度を使ってエンジントルクを制御する。非過給域ではスロットルバルブ開度の制御によって要求エンジントルクが、過給域ではウェイストゲートバルブ開度の制御によって要求エンジントルクが得られるわけである。
具体的には、ステップ47で圧力センサ46により検出されるスロットルバルブ前圧力と所定値AAを比較することにより、スロットルバルブ前圧力が所定値AA以下であるときは非過給域にあると判定する。また、スロットルバルブ前圧力が所定値AAを超えているときには過給域であると判定する。
ステップ47で非過給域であると判断したときにはスロットルバルブ開度によりエンジントルクを制御するためステップ48に進み、要求過給圧から図16を内容とするテーブルを検索することにより、要求スロットルバルブ開口面積を算出する。図16に示したように、要求スロットルバルブ開口面積は要求過給圧に比例して大きくなる値である。
ステップ49では要求スロットルバルブ開口面積から図17を内容とするテーブルを検索することにより、要求スロットルバルブ開度を算出する。
一方、ステップ47で過給域であると判断したときにはウェイストゲートバルブ開度によりエンジントルクを制御するためステップ50に進み、要求過給圧から図18を内容とするテーブルを検索することにより、要求ウェイストゲートバルブ開度を算出する。図18に示したように、要求ウェイストゲートバルブ開度は要求過給圧が大きくなるほど小さくなる値である。
このようにして算出した要求ウェイストゲートバルブ開度及び要求スロットルバルブバルブ開度はメモリに記憶しておく。そして、このメモリから図7Bのステップ23で要求ウェイストゲートバルブ開度が、このメモリから図7Bのステップ28で要求スロットルバルブ開度が読み出されて用いられる。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
過給域と重なるLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速時にはLP−EGR弁17を全閉状態に切換えても、LP−EGR弁17からシリンダ7までに残留するEGRガスが遅れてシリンダ7に流入する。残留するEGRガスが全てシリンダ7に流入するタイミングまでは、EGRガスが流入する分だけ、ERガスが流入せず新気だけがシリンダ7に流入する場合に比べて新気量が不足する。このため、過給域と重なるLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速直後の再加速時にシリンダ7内での燃焼状態が悪くなり、排気エネルギの増加が望めないため実過給圧の立ち上がり遅れが生じる。これによって過給域と重なるLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速再加速時に望みの加速感が得られない。一方、本実施形態によれば、過給域と重なるLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速時にリサーキュレーションバルブ32を全閉位置に制御するので、スロットルバルブ前圧力が適正値に維持される。スロットルバルブ前圧力が適正値に維持されると、減速直後の再加速時にスロットルバルブ5を開くことで、適正値に維持されたスロットルバルブ前圧力の空気がシリンダ7に流れ込む。適正値に維持されたスロットルバルブ前圧力の空気がシリンダ7に流れ込むと、過給域と重なるLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速再加速時に実過給圧の立ち上がり遅れが短縮される。これによって過給域と重なるLP−EGR領域から非LP−EGR領域への減速直後の再加速時のレスポンスの悪化を防止できる。
本実施形態では、タービン22をバイパスするバイパス通路24(第2バイパス通路)と、バイパス通路24を開閉するウェイストゲートバルブ25とを備えている。また、過給域かつLP−EGR領域を非LP−EGR領域に相対的に近い側の領域である第1領域と、前記非LP−EGR領域より相対的に離れる側の領域である第2領域に分割している。そして、第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時には、ウェイストゲートバルブ25及びリサーキュレーションバルブ32を全閉位置に制御する。第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時には、リサーキュレーションバルブ32を全閉位置にしたまま、ウェイストゲートバルブ25を開く側に制御する。これによって、第1領域R1から非LP−EGR領域への減速直後に再加速が行われる場合に加えて、第2領域R2から非LP−EGR領域への減速直後に再加速が行われる場合であっても、減速直後の再加速時のレスポンスの悪化を防止できる。
第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時であっても、EGRガスを導入しないエンジンの暖機完了前にリサーキュレーションバルブ32が閉じていると、減速後も仕事をするターボ過給機21によって、スロットルバルブ前圧力が適正値を超えて上昇する。すると、コンプレッサ23からスロットルバルブ5までの間の吸気管4aに存在する加圧空気の行き場がなくなり、当該加圧空気がコンプレッサ23の羽根の部分の部分を乗り越えて逆流するときに音が発生する。一方、本実施形態では、第2領域R2(過給域と重なるLP−EGR領域のうち非LP−EGR領域より相対的に離れる側の領域)から非LP−EGR領域への減速時であっても、EGRガスを導入しないエンジンの暖機完了前には2つのバルブ32及び25を開く。これによって、エンジンの暖機完了前にはスロットルバルブ前圧力が適正値を超えて上昇する場合にコンプレッサ23で生じる音を抑制することができる。
本実施形態第では、第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時が、高速道路を走行中にアクセルペダルを戻しその直後にアクセルペダルを踏み込んで一定車速を維持する場合にアクセルペダルを戻したときである。これによって高速道路を走行中にアクセルペダルを離したり再び踏み込んだりして一定の車速を維持しようとするドライバの場合であっても、減速直後の再加速時のレスポンスの悪化を防止できる。
EGRガスがLP−EGR弁17からシリンダ7までの間の吸気管4aに存在していなければ、新気のみの制御と同等にすることが可能である。本実施形態では、LP−EGR弁17からシリンダ7までに残留するEGRガスが全てシリンダ7に流入したことを判定したとき、リサーキュレーションバルブ32を開く。これによって、LP−EGR弁17からシリンダ7までに残留するEGRガスが全てシリンダ7に流入した後においても続けてリサーキュレーションバルブ32を閉じておくことによりコンプレッサ23で生じる音を抑制することができる。
本実施形態では、過給域と重なるLP−EGR領域で領域から非LP−EGR領域への減速直後の再加速時のスロットルバルブ開度を、要求エンジントルクと目標EGR率とに基づいて算出する。これによって、リサーキュレーションバルブ32を閉じることによってスロットルバルブ前圧力が適正値を維持している状態かつEGRガスがシリンダ7に導入されている状態からの再加速時であっても、要求エンジントルクを得ることができる。
実施形態では、図4に示したように第1領域R1から非LP−EGR領域への減速時に2つのバルブ32及び25の開度をゼロに保持した。また、図5に示したように第2領域R2から非LP−EGR領域への減速時にリサーキュレーションバルブ開度をゼロに保持しつつ、ウェイストゲートバルブ開度を開き側に制御した。本発明はこの場合に限定されるものでない。これは、エンジン排気量のサイズに対して、どの程度の容量のターボ過給機を採用するかによって、2つのバルブ32及び25の開度制御方法が異なってくるためである。例えば、スロットルバルブ前圧力が適正値を超えて高すぎると判断したときに、2つのバルブ32及び25の開度をゼロから所定値へと切換えることによって、スロットルバルブ前圧力を適正値へと戻すようにしてもかまわない。
実施形態では、算出したコレクタ部EGR率に基づいてLP−EGR弁17からシリンダ7までに残留するEGRガスが全てシリンダ7に流入したことを判定したとき、リサーキュレーションバルブ開度をゼロから所定値へと切換える場合で説明した。本発明はこの場合に限られない。例えば、実EGR率センサによりコレクタ部EGR率を検出する。
この検出したコレクタ部EGR率に基づいてLP−EGR弁17からシリンダ7までに残留するEGRガスが全てシリンダ7に流入したことを検出したとき、リサーキュレーションバルブ開度をゼロから所定値へと切換える場合であってよい。上記の実EGR率センサでは、ガス中の酸素濃度に基づいて実EGR率を求めるようにしており、公知である。