JP6298816B2 - 不均一触媒反応による、水素化糖の少なくとも1種の分子内脱水生成物を含む組成物の合成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水素化糖の少なくとも1種の分子内脱水生成物を含む組成物を調製するための新規な方法であって、固体3価金属リン酸塩触媒の存在下に水素化糖を脱水するステップを含む、方法に関する。
水素化糖の分子内脱水生成物は、「再生可能資源」に分類される天然産物から得ることができる、いわゆる「バイオマス由来物質」に属する。
本発明における「水素化糖」という表現は、炭水化物が水素化された形態、すなわちカルボニル基(アルデヒドまたはケトン、還元糖)が1級または2級ヒドロキシル基(したがってアルコール)に還元されている糖アルコール(ポリオール、多価アルコール、ポリアルコールまたはグリシトールとも称される)を意味するものと理解される。水素化糖の例としては、特に:(i)例えば、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトール等のヘキシトール、(ii)例えば、アラビトール、リビトール、キシリトール等のペンチトール、(iii)例えば、エリスリトールやトレイトール等のテトリトールが挙げられる。
「分子内脱水生成物」という表現は、1または2以上のステップにおいて、任意の方法で、上述したような水素化糖の元の内部構造から1個または2個以上の水分子を除去することにより生成する任意の生成物を意味するものと理解される。これは、有利には、ヘキシトールの分子内脱水生成物すなわちイソヘキシド、特に、イソソルビド(1,4−3,6−ジアンヒドロソルビトール)、イソイジド(1,4−3,6−ジアンヒドロイジトール)、イソマンニド等の「ジアンヒドロヘキシトール」である。
本発明に関する「3価金属リン酸塩」という表現は、リン酸ホウ素、リン酸アルミニウム、リン酸鉄、リン酸ランタンおよびリン酸セリウムからなる群から選択される3価金属のリン酸塩(金属(III)リン酸塩)を意味する。
本発明における「固体触媒」という表現は、様々な非晶性および/または結晶性状態で存在する水に不溶な物質と理解すべきである。
本発明における「収率」という表現は:
収率=(得られた生成物の質量)/(理論上の生成物の質量)=(得られた生成物のモル数)/(理論上の生成物のモル数)
と理解すべきである。
得られた生成物の質量とは、合成された質量である。これは得られた生成物の重量を測定することにより求められる。理論上の生成物の質量とは、収率100%に相当する生成物の質量である。したがってこれは、反応体の質量から求めなければならない。
転化率(%)は、触媒の効率/活性の指標である。これは、反応器に添加された出発物質の量(装入モル量)から生成物混合物中に認められた出発物質の量を差し引いた値(排出モル量)を出発物質の量(装入モル量)で除して100を乗ずることにより求められる。
選択性は、触媒が、ある反応をある特定の生成物(得られる生成物)が得られる方向に導く性質の指標である。本発明に関する「選択性」という表現は:
選択性=収率/転化率
と理解すべきである。
この式において、選択性、収率および転化率は、モル量を基準として求められる。一例を挙げると、特定の反応において、物質Aの90%が転化した(消費された)が、そのうち80%しか所望の物質Bに転化せず、20%が望ましくない副生成物となった場合、Aの転化率は90%であり、Bに対する選択性は80%であり、物質Bの収率は72%(=90%×80%)である。
現時点において、二重に脱水素化された糖の中で、最も多くの用途が開発されているかまたは少なくとも用途が想定されているのがイソソルビドである。特にこれらは、多くの医薬用化合物の生成、食品または化粧品の調製、プラスチックおよびポリマーの製造またはポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリアミドの製造に関わっている。
糖アルコール基質を脱水して分子内脱水生成物を得るためには、一般に酸性媒体が使用される。分子内脱水生成物を製造するための幾つかのプロセスが知られている。商業化されたプロセスはいずれも、高濃度の均一酸および有機溶媒の使用を含んでいる。
水素化糖の分子内脱水の現行のプロセスは液相中で行われ、留出物の冷却器および受器を取り付けた標準的な回分式反応器を、例えば、二重ジャケット内のオイルで加熱することによって行われる。標準的な条件は、温和な温度(例えば、100〜200℃)および減圧(例えば、20〜400ミリバール)下である。硫酸HSO(1重量%)等の液体触媒が一般に使用される。
この方法により高水準の転化率が達成されるが、腐食性を示し再使用できないHSO等のブレンステッド酸均一触媒を使用することが必要である。したがって、使い切りの触媒および耐腐食性材料が必要となることがこの方法の主な欠点である。他の大きな欠点は、均一酸を塩基で中和することにより大量の塩が生成し、この塩の廃棄に費用がかかることにある。
別法として、水素化糖の水溶液を不均一触媒上で反応させることによって分子内脱水生成物を製造することができる。触媒が固体の性質を有するため、反応混合物からの除去および回収が容易になり、したがって、溶媒および環境に悪影響を及ぼす化学物質の使用が低減される。さらに、塩を除去するために費用のかかる後処理の手続きを行わなくて済む。
Goodwinら(Carbohydrates Res.79:133−141,1980)は、高濃度の腐食性均一酸に替えて酸性陽イオン交換樹脂を使用することを含む方法を開示しているが、イソソルビド合成の収率は低い。
米国特許第7420067号明細書には、固体酸触媒の存在下において約150℃〜約350℃の温度および高圧(約9バール〜約140バール)下で分子内脱水生成物を得る合成の収率が良好(約50%)であることが記載されている。使用された固体触媒は酸性イオン交換樹脂および酸性ゼオライト粉末からなる群から選択される無機イオン交換材料である。しかしながら、これらの固体触媒は、イオン交換樹脂の場合は温度に対する安定性が低く、ゼオライトの場合は非常に高価であるという欠点を有する。さらに、ゼオライト系触媒は、ポリマーおよびコークスが形成されると細孔が閉塞されると共に酸部位が覆われるため、早く失活する傾向にある。
金属(IV)リン酸塩等の他の固体触媒も、ジオールからの単環式および二環式エーテルを形成する選択的触媒反応において良好な性能を示すことができる(Qallaf FAら,J Mol Catal A:Chem 152:187,2000)。
中国特許出願第101492457号明細書および中国特許出願第101492458号明細書に記載されているように、HPOで改質された金属(IV)酸化物およびリン酸スズ、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン等の金属(IV)オルトリン酸塩を用いて気相中でソルビトールからイソソルビドへと選択的脱水を行う試験が既に実施されている。これらの4価金属リン酸塩を触媒として使用すると、ソルビトールからのイソソルビドの調製において良好な選択性および良好な収率が達成される。しかしながら、4価のリン酸塩の調製には、エネルギーを消費する一連の工程(例えば、か焼、長時間の還流、水熱処理)が後段で必要となるので費用が嵩むという欠点がある。それ以上に、一部には毒性を有するもの(リン酸スズ等)もある。他の欠点は、ZrやTi等の金属が高価なことにある。
米国特許第7420067号明細書 中国特許出願第101492457号明細書 中国特許出願第101492458号明細書
Goodwinら,Carbohydrates Res.79:133−141,1980 Qallaf FAら,J Mol Catal A:Chem 152:187,2000
本発明の目的は、水素化糖の分子内脱水生成物を製造するための、簡素かつ低コストで環境に優しく持続可能なプロセスを開発することにある。これは、3価金属リン酸塩(金属(III)リン酸塩)を触媒として使用して実施される特殊な方法により達成された。
本発明は、水素化糖の少なくとも1種の分子内脱水生成物を含む組成物を調製するための新規な方法であって、固体3価金属リン酸塩触媒の存在下に水素化糖を脱水するステップを含むことを特徴とする方法に関する。具体的には、本発明は、ジアンヒドロヘキシトールの組成物を調製するための新規な方法に関する。
本発明によるプロセスは、少なくとも1種の水素化糖を使用することと、モノアンヒドロ−および/またはジアンヒドロ糖アルコールならびに水を含む反応生成物を生成するために、触媒としての金属(III)リン酸塩の存在下に、この少なくとも1種の水素化糖の脱水を行うこととに関する。
本発明において、原料として使用される水素化糖としては、特に、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトール、ペンチトールまたはテトリトールを、水溶液または粉末の形態で使用することができる。これらの水素化糖の混合物を使用することも可能である。この種の水素化糖は任意の周知の方法で得ることができ、通常は、これに続いて、得られた反応粗生成物が少なくとも1つの技法で精製される。
水素化糖が水溶液形態で使用される場合、水溶液は、好ましくは、40重量%〜98重量%の水素化糖を含む。水素化糖が粉末形態で使用される場合、粉末は、好ましくは、98重量%を超え、より好ましくは99重量%を超える水素化糖を含む。
水素化糖の脱水は、3価金属リン酸塩触媒(単独で使用するかまたは他の3価金属リン酸塩触媒と併用して)の存在下に実施される。
3価金属リン酸塩触媒は、リン酸ホウ素(BPO)、リン酸アルミニウム(A1PO)、リン酸鉄(FePO)、リン酸ランタン(LaPO)およびリン酸セリウム(CePO)からなる群から選択される。これらの金属(III)リン酸塩触媒は、TiやZrを含有する触媒よりも安価な触媒である。これらは金属三酸化物をHPOと単に混合するだけで容易に調製される。さらに、不均一触媒を使用することの利点は、例えば、再生できることや塩が生成しないことにあり、水素化糖を脱水するための代替的な固体酸触媒が提案される。
好ましくは、本プロセスに使用される触媒の量は、水素化糖の量の0.5〜15重量%、より好ましくは、1〜7重量%、よりさらに好ましくは1〜3重量%の範囲にある。
供給業者より提供された金属リン酸塩は、そのまま使用するか、あるいは、か焼することができ、酸および/または水蒸気で処理するなどの後処理によって改質することさえできる。触媒のか焼には、例えば、200℃で12時間、400℃で8時間および600℃で12時間といった様々なか焼手順を用いることができる。触媒の好ましい形態は、か焼を施していないものである。
本発明においては、反応(すなわち脱水ステップ)を、回分方式または連続方式のいずれかで行うことができる。
本発明においては、反応を液相中または気相中または超臨界相中で実施することができる。液相反応の場合は、圧力計を備えたステンレス鋼製オートクレーブや撹拌槽型反応器(STR)等のオートクレーブ型反応器;ループ式反応器;カスケード式反応器;連続STRからなる群から選択される反応器を使用することができる。どの反応器を用いるかに関わらず、反応は回分式または連続式で実施することができる。
さらに、反応を、液相中または気相中または超臨界相中で、連続流通式固定床管型反応器;多管式反応器;プレート式反応器;非常に短い滞留時間を可能にする、固定床の短い反応器;ライザー型反応器;流動床反応器;または固定床反応器もしくは流動床反応器内で連続再生を行う流動床反応器を用いて実施することができる。
本発明の好ましい変形形態においては、脱水は、水素化糖、3価金属リン酸塩触媒および磁気撹拌子を含むステンレス鋼製オートクレーブ内で行われる。
好ましくは、撹拌は、400rpm〜1500rpmの範囲、より好ましくは700rpm〜1200rpmの範囲内で行われる。
好ましい実施形態においては、オートクレーブは圧力計を備える。
本発明の調製プロセスは、好ましくはオートクレーブ型の反応器で自己発生圧力下に行われる。自生圧力の場合、圧力は反応温度と共に上昇する。220〜290℃の範囲においては、反応器内の自生圧力は1〜40barの間にある。
この系は、加熱を行う前に非反応性ガス、好ましくは窒素ガスまたはアルゴンガスまたはメタンガスを用いて人為的に加圧することができ、あるいは反応中に減圧することができる。
特定の変形形態によれば、オートクレーブには、1回または2回以上、好ましくは3回、非反応性ガス、好ましくは窒素ガスまたはアルゴンガスをフラッシュする。
他の好ましい変形形態によれば、オートクレーブは脱水反応を開始する際に、例えば、約10〜15秒間減圧される。好ましくは、オートクレーブは、オートクレーブから水蒸気が放出されなくなるまで減圧される。
一変形形態によれば、本プロセスは1〜40バールの圧力下に実施され、より好ましくは、圧力は20バールに設定される。
反応温度への加熱は温度制御装置を備えた電気ヒーターで行うことができる。好ましくは、本発明の調製プロセスは、150℃〜290℃、好ましくは200℃〜270℃、より好ましくは200℃〜250℃の温度で実施される。
特定の変形形態によれば、本プロセスは2ステップで行われる。第1ステップにおいては、温度をより低い値、好ましくは200℃未満、より好ましくは190℃未満、例えば180℃に設定し、第2ステップにおいては、温度はより高い値、好ましくは200℃超、より好ましくは240℃超、例えば250℃超に設定する。
本発明によれば、脱水プロセスは0.5〜24時間、好ましくは2〜8時間、より好ましくは2時間行われる。所与の反応時間が経過した後、加熱器具を取り除き、オートクレーブを室温に(例えば、氷浴に浸けることにより)冷却する。
以下の実施例を用いて本発明の詳細を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
以下に記載する全ての実施例に関し、反応混合物は従来法によりガスクロマトグラフィー(GC)によって分析する。結果を表1に示す。
実施例1
ソルビトール粉末(100%)を45.5g、リン酸ホウ素を0.46gおよび磁気撹拌子を75ml容のステンレス鋼製オートクレーブ(ガラス内挿管なし)に装入した。オートクレーブを密閉し、加熱器具に接続した。220℃で撹拌しながら(1100rpm)自己発生圧下に反応を実施した。2時間後に反応を停止した。加熱器具を取り除き、オートクレーブを氷浴に浸けて室温に冷却した。反応混合物をポリアミドシリンジフィルターを用いて濾過し、GCで分析した。
実施例2〜6は、実施例1とは異なる反応温度および反応時間を用いたことを除いて、実施例1と同一手順に従い実施した。
実施例7は、反応を2ステップで行ったことを除いて実施例1の手順に従い実施した。第1ステップは温度を180℃に設定して2時間実施し、その後、温度を250℃に昇温してこの温度をさらに2時間維持した。
実施例8
ソルビトール粉末(100%)32.3g、リン酸ホウ素0.32gおよび磁気撹拌子を75ml容のステンレス鋼製オートクレーブ(ガラス内挿管なし)に装入した。オートクレーブを密閉し、加熱器具に接続した。200℃で撹拌しながら(1100rpm)自己発生圧下に反応を実施した。8時間後に反応を停止した。加熱器具を取り除き、オートクレーブを氷浴に浸けて室温に冷却した。反応混合物をポリアミドシリンジフィルターを用いて濾過し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
実施例9および10は、実施例8と異なる反応温度および反応時間を用いたことを除いて実施例8と同一手順で実施した。
実施例11
ソルビトール粉末(100%)32.3g、リン酸ランタン0.32gおよび磁気撹拌子を75ml容のステンレス鋼製オートクレーブ(ガラス内挿管なし)に装入した。オートクレーブを密閉し、加熱器具に接続した。250℃で撹拌しながら(1100rpm)自己発生圧下に反応を実施した。2時間後に反応を停止した。加熱器具を取り除き、オートクレーブを氷浴に浸けて室温に冷却した。反応混合物をポリアミドシリンジフィルターを用いて濾過し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
実施例12は、触媒としてリン酸セリウムを使用したことを除いて実施例11と同一手順で実施した。
比較例1は、触媒として4価のリン酸塩(リン酸ジルコニウム)を使用して実施例11と同一手順で実施した。
比較例2は、触媒として4価のリン酸塩(リン酸チタン)を使用して実施例3と同一手順で実施した。
Figure 0006298816

Claims (17)

  1. ソルビトールの分子内脱水生成物を含む組成物を調製するための方法であって、固体3価金属リン酸塩触媒の存在下にソルビトールを脱水する少なくとも1のステップを含む、方法。
  2. 前記固体3価金属リン酸塩触媒が、リン酸ホウ素、リン酸アルミニウム、リン酸鉄、リン酸ランタンおよびリン酸セリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記触媒が、か焼されていない、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記脱水ステップが、150℃〜290℃の温度で実施される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記脱水ステップが:
    a.温度がより低い値に設定される第1ステップおよび
    b.温度がより高い値に設定される第2ステップの2ステップで実施される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記脱水ステップが自生圧力下に実施される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記脱水ステップが、1〜40バールに設定された圧力下に実施される、請求項6に記載の方法。
  8. ソルビトールが水溶液形態にある、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. ソルビトールが粉末形態にある、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記脱水ステップが、0.5〜24時間実施される、請求項1〜9のいずれか一項に記
    載の方法。
  11. 前記脱水ステップがオートクレーブ内で行われる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. ソルビトールの前記脱水ステップを行う前に、前記オートクレーブを、非反応性ガスで1回以上フラッシュする、請求項11に記載の方法。
  13. 前記脱水ステップの開始時点において、加熱を行う前に、非反応性ガスで前記オートクレーブが人為的に加圧される、請求項11または12に記載の方法。
  14. 圧ステップが、約10〜15秒間行われる、請求項13に記載の方法。
  15. 前記減圧ステップが、前記オートクレーブから水蒸気が排出されなくなるまで行われる、請求項14に記載の方法。
  16. 前記脱水ステップが、回分方式または連続方式のいずれかで実施される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記脱水ステップが、液相中または気相中または超臨界相中のいずれかで実施される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
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