以下、図面を参照しながら各実施形態について説明する。以下の説明において、略又は実質的に同一の機能及び構成要素については、同一符号を付し、説明を省略するか、又は、必要に応じて説明を行う。
[第1の実施形態]
本実施形態においては、例えば携帯端末と会社の固定電話機の両方を所有する利用者が、携帯端末を用いて相手先に発信を行う場合に、会社の電話番号を用いて相手先に発信可能とするV字発信システムについて説明する。
図1は、本実施形態に係るV字発信システム1Aの構成の一例を示すブロック図である。
V字発信システム1Aは、PBX2と、ユーザ端末4と、CTI(Computer Telephony Integration)装置6とを備える。ユーザ端末4とCTI装置6とは、ネットワークN経由で通信可能に接続されている。また、CTI装置6とPBX2とは、通信可能に接続されている。
ネットワークNは、例えばインターネット、イントラネットなどを含む広域通信網でもよく、又は、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)、その他の規格に準拠する近距離無線通信などでもよい。
PBX2は、例えば構内交換機(Private Branch eXchange)である。PBX2は、内線電話番号などの交換機情報を記憶しており、発信元電話機からの着信が発生すると、交換機情報に基づいて発信元電話機と構内の固定電話機又は携帯端末との間での通話を可能とする機能を有している。本実施形態においては、PBX2は、例えば利用者U0の所属する会社などに備えられた構内交換機であるとして説明する。
PBX2は、例えばAPI(Application Programming Interface)を備える。例えばCTI装置6などの外部装置は、このAPIを用いてPBX2へ指令を送信する。PBX2は、受信した指令にしたがって動作する。また、PBX2は、所定のインタフェースにしたがって、例えばCTI装置6などの外部装置へ指令を送信してもよい。指令は、例えばコマンドなどである。なお、PBX2の種別、機能は特に限定されない。
PBX2は、設定データS1を含む。設定データS1は、PBX2の配下に接続(収容)される電話機の内線番号と、PBX2に割り当てられる外線番号を示すPBX電話番号とが関連付けられる。設定データS1の詳細については、図5を用いて後述する。
また、PBX2は、PBX2の配下に接続される電話機を経由する呼を検知し、例えば呼の発信、着信、応答(受話)、保留などの動作が行われる際に、各動作が行われたことを示すイベントを発行する。PBX2は、上記のような各動作が行われるごとに、各動作に対応するイベントを発行する。また、本実施形態においては、CTI装置6が当該イベントを受信する。
ユーザ端末4は、例えばスマートデバイス、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット型端末などを含む情報処理装置である。ユーザ端末4は、ネットワークNを経由して例えばCTI装置6などの外部装置と通信する機能を備える。
ユーザ端末4は公衆回線網に接続可能な通話装置を含む。すなわち、ユーザ端末4は、スマートフォン、携帯電話、通話機能を有するPDA(Personal Data Assistance)などでもよい。なお、ユーザ端末4は、PBX2配下の電話機、すなわち内線電話機として利用可能であってもよい。ユーザ端末4は、利用者U0により操作される。
CTI装置6は、例えば、PBX2に外付けとなる情報処理装置である。CTI装置6は、CTIエンジンを含むサーバ装置であり、通信インタフェースを介してPBX2、及びユーザ端末4と通信可能である。
CTI装置6は、例えば、ユーザ端末4及びPBX2から指令などを受信し、受信した指令などに基づいてPBX2を制御することにより、着信呼に対する各種の動作を実行する。
CTI装置6は、例えばPBX2から通知されたコールイベントにしたがって、構内電話機T0からユーザ端末4への着信呼及び応答の有無を検出可能である。
CTI装置6は、CTI装置6に指令を送信する利用者U0及び利用者U0に紐づくユーザ端末4を識別可能であることが好ましい。例えば、CTI装置6は、利用者ID及びパスワードなどの識別データを用いて、利用者U0を認証することにより、利用者U0及びユーザ端末4を識別する。
構内電話機T0は、電話回線又はネットワークによりPBX2の配下に接続された内線電話機又は通話機能を有する装置である。PBX2の配下に接続される内線電話機は、複数存在してもよい。本実施形態においては、構内電話機T0は、利用者U0が例えば利用者U0のオフィスなどで用いる固定電話機であるとして説明する。
発信先電話機T1は、利用者U0がユーザ端末4を用いて発信する際の発信先となる電話機又は通話機能を有する装置である。発信先電話機T1は、公衆回線網に接続された外線電話機でもよく、又は、PBX2の配下に接続された内線電話機でもよい。発信先電話機T1は、例えば利用者U1により操作される。
利用者U0が本実施形態に係るV字発信を利用する際、利用者U0は、ユーザ端末4を用いてCTI装置6へ当該V字発信を行う旨の指令(以下、V字発信指令と呼ぶ)を送信する。CTI装置6は、ユーザ端末4からの指令に基づき、V字発信を実行するために必要な情報を含む指令を生成し、当該指令をPBX2に対して送信する。PBX2は、CTI装置6からの指令に基づき、構内電話機T0と発信元であるユーザ端末4とを通話可能に接続する(以下、第1の呼とする)。次に、ユーザ端末4が第1の呼に応答した場合に、PBX2は、CTI装置6からの指令に基づき、構内電話機T0と発信先である発信先電話機T1とを通話可能に接続する(以下、第2の呼とする)。さらに、PBX2は、第1の呼と第2の呼とをマージすることにより、発信元であるユーザ端末4と発信先電話機T1とを通話可能な状態とする。
なお、本実施形態において、利用者U0は、ユーザ端末4を用いてCTI装置6へV字発信指令の送信、並びに、構内電話機T0及び発信先電話機T1との通話の双方を行えるものとする。しかしながら、利用者U0は、例えば通話をユーザ端末4でない電話機で行うとしてもよい。より具体的には、利用者U0は、例えばユーザ端末4を用いてCTI装置6に対してV字発信を行い、利用者U0に紐づく別の電話機で構内電話機T0からの着信及び発信先電話機T1との通話を行ってもよい。この場合、ユーザ端末4は通話装置を含まなくてもよい。
図2は、本実施形態に係るユーザ端末4の一例を示すブロック図である。
ユーザ端末4は、第1の不揮発性メモリ4a、プロセッサ4b、第1の揮発性メモリ4c、通信装置4d、表示装置4e、入力装置4f、及び通話装置4gなどを備える。これらの各装置は、バスにより相互に接続されている。
第1の不揮発性メモリ4aは、例えばハードディスク、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどにより構成され、第1の揮発性メモリ4cとともに記憶領域を構成する。
第1の不揮発性メモリ4aは、各種ソフトウェア、例えば、オペレーティングシステム(OS)、ブラウザ、メーラー、及び各種アプリケーションプログラムなどを格納している。第1の不揮発性メモリ4aは、プログラムP1を格納する。
プロセッサ4bは、各種ソフトウェア(プログラム)を実行し、ユーザ端末4全体を制御する。プロセッサ4bは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Microprocessor Unit)、DSP(Digital Signal Processing)などである。
プロセッサ4bは、例えば、第1の不揮発性メモリ4aに格納され、又は、第1の不揮発性メモリ4aから第1の揮発性メモリ4cに展開されたプログラムP1を実行することにより、例えば、制御部41として機能する。
制御部41は、通信装置4dを経由して、CTI装置6との間で指令などを送受信するための処理を実行する。また、制御部41は、表示装置4e、入力装置4fなどを用いてユーザインタフェースを生成し、当該ユーザインタフェースを制御するのための処理を実行する。
メインメモリとしての第1の揮発性メモリ4cは、例えばRAM(Random Access Mem
ory)により構成され、ワークエリアなどとして使用される。ワークエリアは、プロセッサ4bが各種ソフトウェアを実行する時に使用される。
通信装置4dは、ネットワークNを経由したCTI装置6との通信を制御する。通信装置4dは、例えば無線LANなどの無線通信機能、又は、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信機能を備えてもよい。
表示装置4eは、プロセッサ4bが実行するプログラムP1及び各種アプリケーションプログラムのユーザインタフェースを表示する。
入力装置4fは、例えば、スクリーンキーボード又はタッチセンサなどを含む。また、入力装置4fは、キーボード又はマウスなどを含んでいてもよい。
通話装置4gは、ユーザ端末4により通話するための装置であり、図示せぬマイクロホン及びスピーカなどを含む。
図3は、本実施形態に係るCTI装置6の一例を示すブロック図である。
CTI装置6は、第2の不揮発性メモリ6a、プロセッサ6b、第2の揮発性メモリ6c、及び通信装置6dなどを備える。これらの装置は、バスにより相互に接続されている。
第2の不揮発性メモリ6aは、第1の不揮発性メモリ4aと同様に、例えばハードディスク、SSD、フラッシュメモリなどにより構成され、各種ソフトウェアやデータを格納する。各種ソフトウェアは、オペレーティングシステム(OS)、データ管理プログラム、及び各種アプリケーションプログラムなどを含む。第2の不揮発性メモリ6aは、プログラムP2、利用者データDを格納する。
利用者データDには、例えば、CTI装置6を利用する利用者U0に関する情報などが含まれる。ここで、図4は、本実施形態に係る利用者データDの一例を示す図である。
利用者データDにおいては、例えば、利用者ID E1、パスワードE2、利用者U0の電話番号E3、内線番号E4などが関連付けられる。
利用者ID E1は、CTI装置6を利用する利用者を識別するための情報である。利用者ID E1は、例えば、数値、文字列などである。
パスワードE2は、利用者を識別するために用いられる情報である。後述する利用者識別部61aは、例えば利用者ID E1及びパスワードE2を用いて、利用者の認証を行う。
電話番号E3は、利用者ID E1に対応する利用者に紐づけられる電話番号である。電話番号E3は、ユーザ端末4の電話番号である。なお、ユーザ端末4が通話装置4gを含まない場合は、当該利用者が利用可能な電話機の電話番号でもよい。また、以下では、1つの利用者ID E1に対して1つの電話番号E3が関連付けられるとして説明するが、例えば、1つの利用者ID E1に対して、複数の電話番号E3が関連付けられてもよい。
内線番号E4は、利用者ID E1に対応する利用者が利用するPBX2配下の電話機の内線番号である。内線番号E4は、本実施形態に係るV字発信が実行される際に発信元となる電話番号を示す。図1の例では、内線番号E4は、PBX2により利用者U0に割り当てられている構内電話機T0の内線番号である。
なお、電話番号E3及び内線番号E4との対応は1対1でなくてもよい。例えば、複数の電話番号E3に1つの内線番号E4が関連付けられていてもよい。
図3のプロセッサ6bは、各種ソフトウェア(プログラム)を実行し、CTI装置6全体を制御する。プロセッサ6bは、例えば、CPU、MPU、DSPなどである。
プロセッサ6bは、例えば、第2の不揮発性メモリ6aに格納され、又は、第2の不揮発性メモリ6aから第2の揮発性メモリ6cに展開されたプログラムP2を実行することにより、例えば、利用者識別部61a、検知部61b、指令生成部61c、指令送信部61dとして機能する。
利用者識別部61aは、例えばユーザ端末4からネットワークNを経由してCTI装置6にアクセスされた場合に、利用者U0に対し、例えば利用者ID及びパスワードの入力を促す。利用者識別部61aは、ユーザ端末4を経由して利用者U0が入力した利用者ID及びパスワードを受信し、第2の不揮発性メモリ6aから利用者データDを読み出し、受信した利用者ID及びパスワードと利用者データDに記憶されている利用者ID E1及びパスワードE2とを照合することにより、利用者U0の認証を行う。利用者識別部61aは、認証成功した場合に、ユーザ端末4からCTI装置6へのアクセスを許可し、認証失敗した場合に、当該アクセスを不許可とする。
検知部61bは、通信装置6dを経由してユーザ端末4、PBX2などが送信する指令、イベントなどを受信及び検知する。より具体的には、例えば、検知部61bは、ユーザ端末4よりV字発信指令を受信する。また、検知部61bは、PBX2より通知されるコールイベントを検知する。
指令生成部61cは、CTI装置6からPBX2へ送信される各種指令を生成する。例えば、指令生成部61cは、検知部61bがV字発信指令を受信した場合に、第2の不揮発性メモリ6aより利用者データD読み出し、読み出した利用者データDからV字発信指令を送信した利用者IDをキーとして内線番号E4及び電話番号E3を検索し、内線番号E4に対応する構内電話機T0から電話番号E3への発信指令を生成する。
また、指令生成部61cは、例えば、検知部61bがユーザ端末4が第1の呼に応答したことを示すコールイベントを検知した場合に、構内電話機T0から電話番号E3へ発信済の呼を発信先電話機T1へ転送する旨の指令を生成する。
指令送信部61dは、指令生成部61cによって作成された指令を、通信装置6d経由でPBX2へ送信する。
第2の揮発性メモリ6cは、第1の揮発性メモリ4cと同様に、プロセッサ6bのワークエリアなどとして使用される。
通信装置6dは、通信装置4dと同様に、ネットワークNを経由したユーザ端末4との通信を制御する。また、通信装置6dは、PBX2との通信を制御する。
その他、CTI装置6は、表示装置及び入力装置などを備えてもよい。
図5は、本実施形態に係るPBX2の設定データS1の一例を示す図である。
設定データS1においては、上述のように、PBX2の配下に接続される電話機の内線番号F1と、PBX電話番号F2とが関連付けられる。
PBX電話番号F2は、より具体的には、PBX2の配下に接続される電話機からPBX2を経由して公衆回線網に発信される場合に、発信元を示す外線番号となる。例えば、図1に示す構内電話機T0の内線番号が「2000」である場合、構内電話機T0から外線電話がかけられる際に発信先に通知される電話番号は、「03−0000−0000」となる。
また、図5に示すように、2つ以上の内線電話番号が1つのPBX電話番号F2と対応していてもよい。
図6は、本実施形態に係るV字発信動作の一例を示すシーケンスチャートである。より具体的には、図6は、利用者U0が、電話番号「090−0000−0000」のユーザ端末4を用いて電話番号「03−9999−9999」の発信先電話機T1へ発信を行う際の、V字発信システム1Aに含まれるPBX2、ユーザ端末4、CTI装置6、構内電話機T0、発信先電話機T1の動作を例示する。図6において、構内電話機T0の内線番号は「2000」であるとする。
ステップS101において、CTI装置6の利用者識別部61aは、ユーザ端末4を認証する。利用者識別部61aは、例えば上述のように、ユーザ端末4に入力された利用者ID及びパスワードと利用者データDに記憶されている利用者ID E1及びパスワードE2とを照合することにより、ユーザ端末4を認証する。
ステップS102において、ユーザ端末4は、CTI装置6に対し、V字発信指令を送信する。このV字発信指令には、例えば、V字発信を行うことをCTI装置6が識別可能なデータ、発信先電話機T1の電話番号などが含まれる。
ステップS103において、CTI装置6の検知部61bは、V字発信指令を受信し、当該V字発信指令が認証済のユーザ端末4からであることを識別する。次に、指令生成部61cは、利用者データDを参照することにより、ユーザ端末4に対応する利用者ID E1が「001」であると識別し、V字発信の発信元の内線番号E4を「2000」であると決定する。さらに、指令生成部61cは、発信元の電話番号を「2000」、発信先の電話番号を利用者ID E1に対応する電話番号E3(「090−0000−0000」)とする発信指令を生成する。指令送信部61dは、当該発信指令をPBX2へ送信する。
ステップS104において、PBX2は、CTI装置6より当該発信指令を受信し、発信元の電話番号「2000」に対応する構内電話機T0からユーザ端末4の電話番号「090−0000−0000」へ発信させる。ここで、構内電話機T0から発信される呼は、PBX2を経由して公衆回線に接続されるため、ユーザ端末4に通知される発信元の電話番号はPBX2の電話番号となる。すなわち、発信元の電話番号は、図5に示す内線番号F1とPBX電話番号F2との対応関係より、「03−0000−0000」となる。
ステップS105において、利用者U0は、ステップS104で発信され、ユーザ端末4に着信した呼に対して応答(受話)する。また、PBX2は、当該呼が応答されたことを検知する。
ステップS106において、PBX2は、CTI装置6に対し、当該呼が応答されたことを示すコールイベントを送信する。
ステップS107において、CTI装置6の検知部61bは、PBX2より受信したコールイベントに基づき、受話検知を行う。
ステップS108において、CTI装置6の指令生成部61cは、PBX2に対しステップS104で発信された呼を発信先電話機の電話番号「03−9999−9999」へ転送する旨の転送指令を生成する。指令送信部61dは、当該転送指令を送信する。
ステップS109において、PBX2は、CTI装置6より当該転送指令を受信し、ステップS104において発信済の呼を、構内電話機T0から発信先電話機の電話番号「03−9999−9999」へ転送する。ここで、ステップS104の場合と同様に、発信先電話機T1に通知される発信元の電話番号は、PBX2の電話番号「03−0000−0000」となる。転送された当該呼の着信を受けた発信先電話機T1は、鳴動する。
ステップS110において、PBX2は、ステップS104において構内電話機T0からユーザ端末4へ発信された呼と、ステップS109において構内電話機T0から発信先電話機T1へ転送された呼をマージする。
ステップS111において、利用者U1は、発信先電話機T1に着信した呼に対して応答(受話)する。これにより、ユーザ端末4と発信先電話機T1との間で通話が成立する。
なお、発信先電話機T1がPBX2の配下に接続された内線電話機である場合は、発信元の電話番号は、構内電話機T0の内線番号「2000」となる。
また、CTI装置6は、ステップS107において所定の期間受話検知を行わない場合に、自動的にV字発信をキャンセルしてもよい。より具体的には、例えば、ステップS103においてCTI装置6からPBX2へ発信指令が送信された後所定期間内に、検知部61bがPBX2より当該呼が応答されたことを示すコールイベントを受信しない場合に、指令生成部61cは、PBX2に対し、構内電話機T0からユーザ端末4及び/又は発信先電話機T1に発信された呼をキャンセルする指令を生成してもよい。これにより、構内電話機T0に割り当てられた電話回線が、不応答のV字発信のために長期間占有されることを防ぐことができる。
以上説明した本実施形態において、V字発信が行われる際には、CTI装置6はPBX2に対して、まず構内電話機T0からユーザ端末4へ発信する旨の指令を送信する。次に、CTI装置6は、構内電話機T0からユーザ端末4へ発信された第1の呼がユーザ端末4において受話されたことを検知した後に、第1の呼の転送により構内電話機T0から発信先電話機T1へ第2の呼を発信する。さらに、CTI装置6は、第1の呼及び第2の呼をマージし、ユーザ端末4と発信先電話機T1とを通話可能な状態とする。これにより、発信先電話機T1に通知される電話番号はPBX2の外線電話番号となり、利用者U0はユーザ端末4の電話番号を利用者U1に知られないため、利用者U0の利便性を向上させることができる。
本実施形態においては、CTI装置6はV字発信指令の送信元となるユーザ端末4及び利用者IDを識別し、利用者IDに対応する利用者データDに基づき適切な発信元内線(内線番号E4)及び発信元電話番号(PBX電話番号F2)を選択する。これにより、利用者U0は発信元電話番号を意識することがなくなるため、利用者U0の利便性が向上する。また、利用者U1が通知された発信元電話番号に掛け直す際にも、利用者U0の個人の電話番号E3ではなく、PBX電話番号F2(例えば、利用者U0の会社の電話番号)に発信可能であるため、利用者U1の利便性を向上させることができる。
また、CTI装置6はPBX2よりコールイベントを受信し、当該コールイベントにより第1の呼の受話検知を行う。これにより、適切なタイミングで第2の呼の発信を行うことができる。さらに、CTI装置6は、例えば所定の期間受話検知が行われない場合に、V字発信をキャンセルすることができる。
[第2の実施形態]
本実施形態においては、第1の実施形態に係るV字発信システム1Aの変形例について説明する。
図7は、第2の実施形態に係るV字発信システム1Bの一例を示すブロック図である。
図7において、PBX2、ユーザ端末4、CTI装置6、発信先電話機T1はV字発信システム1Aと同等である。また、ユーザ端末4は利用者U0により操作され、発信先電話機T1は利用者U1に操作されるものとする。
本実施形態に係るPBX2は、仮想内線Vを備える。ここで、仮想内線とは、PBX2において内線データとして通常の内線と同様に定義・管理されているが、PBX2配下の物理的な電話機(通信装置などのデバイス)に関連付けられていない内線である。仮想内線は、物理的な電話機と関連付けられない場合であっても通常の内線と同様な電話機に近い高機能を持つことも可能である。また、仮想内線は、必ずしもPBX2内でデータのみで定義される必要はなく、PBX2内部に備えられたプログラムを包括した形式で定義されていてもよい。したがって、PBX2配下の電話機を利用する利用者は、仮想内線の存在を意識することはない。また、仮想内線Vは、仮想内線番号を有する。
本実施形態に係るV字発信システム1Bにおいては、V字発信システム1Aの構内電話機T0が仮想内線Vに代替される。すなわち、V字発信が行われる際には、CTI装置6はPBX2に対して、まず仮想内線Vからユーザ端末4へ発信する旨の指令を送信する。次に、CTI装置6は、仮想内線Vからユーザ端末4へ発信された第1の呼がユーザ端末4において受話されたことを検知した後に、第1の呼の転送により仮想内線Vから発信先電話機T1へ第2の呼を発信する。さらに、CTI装置6は、第1の呼及び第2の呼をマージし、ユーザ端末4と発信先電話機T1とを通話可能な状態とする。
本実施形態に係るPBX2は、呼を任意の仮想内線番号にキューイングする機能、及び、キューイングした呼をデキューする機能を備えていてもよい。このキューイング及びデキューは、例えばAPI(Application Programming Interface)により外部公開され、CTI装置6などはAPIを介して当該機能を利用可能である。ここで、キューイングとは、仮想内線番号に紐づけられるキューに呼を格納することを指し、デキューとは、キューに格納された呼の宛先を任意の電話番号へ変更し、当該呼をキューから削除することを指す。キューイングは、例えば、先入れ先出しのメモリを用いて実現されてもよい。
上述のようにPBX2がキューイング及びデキューを利用可能である場合、CTI装置6の指令生成部61cは、例えばステップS104(図1参照)の第1の呼の発信後に、PBX2に対して第1の呼をキューイングする指令を生成してもよい。また、指令生成部61cは、例えばステップS108において、PBX2に対し、転送指令に代えて第1の呼を発信先電話機T1の電話番号「03−9999−9999」へデキューする指令を生成してもよい。
以上説明した本実施形態において、PBX2は仮想内線Vを備える。これにより、例えば、利用者U0がPBX2配下に接続される構内電話機T0を持たない場合でも、V字発信を利用することができるため、利用者U0の利便性が向上する。
また、1つの仮想内線Vに複数の利用者U0を割り当てることにより、利用者U0ごとに構内電話機T0を割り当てる場合と比較して、利用者U0及び内線番号の管理(すなわち、利用者データDの管理)が容易になる。
さらに、V字発信の際に仮想内線Vが用いられることにより、利用者U0が構内電話機T0の前にいないにもかかわらず構内電話機T0が動作することがなくなるため、例えばオフィス内の環境改善につながる。
本実施形態においては、CTI装置6は、仮想内線Vを用いて呼をキューイング及びデキューする指令をPBX2へ送信する。すなわち、本実施形態においては、第1の実施形態において説明したように構内電話機T0から発信先電話機T1への転送指令に代えて、仮想内線Vから発信先電話機T1へのデキュー指令が用いられる。
本実施形態において、利用者U0は、構内電話機T0と仮想内線Vを併用してもよい。これにより、V字発信に用いられる回線と内線電話に用いられる電話機とを分離することができるため、利用者U0の利便性が向上する。
なお、本V字発信システム1Bに用いられるPBX2の機種により、PBX2の備えるAPIが異なる。すなわち、PBX2の機種により、CTI装置6とPBX2との間で実行される処理、及び、処理を実現するための指令、コマンドなどが変化する。
[第3の実施形態]
本実施形態においては、第1の実施形態に係るV字発信システム1Aの変形例について説明する。
第1の実施形態においては、図5に示すように内線番号F1とPBX電話番号F2とを対応付けることにより、利用者U0ごとに発信元とするPBX電話番号(すなわち、外線番号)を選択可能とした。
しかしながら、PBX2の機種によっては、図5に示すような内線番号F1とPBX電話番号F2との対応付けを柔軟に行うことができない場合がある。
また、PBX2では、一般的に発信先電話番号に「0」が付与されている場合に外線発信であると判別する。ここで、複数の地域にまたがる事業所間で共通のPBX2が用いられる場合(すなわち、集中管理型のPBX2を用いる場合)、ユーザ端末4側で上述のように「0」を付与して発信を行うと、内線番号F1とPBX電話番号F2との対応付けにかかわらず、発信先電話機T1に大代表番号が通知される場合がある。この大代表番号は、本社の電話番号であることが多いため、例えば利用者U0の事業所が存在する地域が福岡(市外局番:092)であるにもかかわらず、発信先電話機T1には本社の所在地である東京(市外局番:03)の電話番号が通知されてしまう。
そこで、本実施形態においては、利用者U0の所属地域に対応して発信先に適切な電話番号を通知可能な、より利便性の高いV字発信システムについて説明する。
本実施形態においては、CTI装置6からPBX2へ発信指令を送信する際に、所定のプレフィックス(接頭番号)を付与することにより、電話番号の発番を制御可能とする。
図8は、本実施形態に係る利用者データDの一例を示す図である。
本実施形態に係る利用者データDにおいては、第1の実施形態で説明した利用者データDに含まれる利用者ID E1、パスワードE2、利用者U0の電話番号E3、内線番号E4に加え、プレフィックスE5が関連付けられる。
プレフィックスE5は、利用者U0の所属する地域ごとにPBX電話番号F2を制御するための記号及び/又は文字列である。より具体的には、例えば、プレフィックスE5=「0」は大代表番号に対応し、「#10」は東京に対応し、「#20」は大阪に対応し、「#30」は福岡に対応する。このように、地域ごとにプレフィックスE5を設定可能であることがこのましい。
本実施形態に係る利用者データDにおいては、利用者ID E1ごとにプレフィックスE5があらかじめ設定され、利用者ID E1と関連付けられる。
なお、本実施形態においては、内線番号E4は設定されなくてもよい。
図9は、本実施形態に係るPBX2の設定データS2の一例を示す図である。
設定データS2は、第1の実施形態で説明した設定データS1に相当する。設定データS2においては、発信先電話番号に付与されるプレフィックスF3と、PBX電話番号F2とが関連付けられる。
本実施形態において、PBX2は、発信先電話番号に付与されるプレフィックスF3を識別し、設定データS2を参照することにより、プレフィックスF3に対応する電話番号を発信元の外線電話番号とする。
図9において、例えば、PBX2は、プレフィックスF3が「0」であると識別した場合、PBX電話番号F2を「03−0000−0000」とする。例えば、PBX2は、プレフィックスF3が「#20」であると識別した場合、PBX電話番号F2を「06−0006−0006」とする。
図10は、本実施形態に係る発信処理の一例を示すフローチャートである。図10は、図6を用いて説明したV字発信動作におけるステップS102乃至ステップS104の処理に相当する。
ステップS301において、ユーザ端末4は、CTI装置6に対し、発信先を「03−9999−9999」とするV字発信指令を送信する。
ステップS302において、CTI装置6は、ユーザ端末4からV字発信指令を受信し、外線発信であるか否かを判定する。より具体的には、CTI装置6は、例えば、発信先電話番号の一桁目が「0」であるか否かにより当該発信が外線発信であるか否かを判定してもよい。また、CTI装置6は、例えば、第2の不揮発性メモリ6aに市外局番のリストなどを格納しておき、当該リストと発信先電話番号の冒頭数桁とを比較し、一致した場合に、当該発信が外線発信であると判定してもよい。なお、CTI装置6は、上述以外の方法で外線発信であるか否かを判定してもよい。
ステップS302において外線発信でない(すなわち、内線発信である)と判定された場合、PBX2は、ステップS303において、構内電話機T0の内線番号「2000」を発信元電話番号とし、ステップS306において、構内電話機T0からユーザ端末4へ発信を行う。
一方、ステップS302において外線発信であると判定された場合、ステップS304において、CTI装置6の指令生成部61cは、当該V字発信指令を送信した利用者ID E1に対応するプレフィックスE5を付加し、PBX2へ発信指令を送信する。例えば、プレフィックスE5が「#10」である場合、発信指令に含まれる発信先電話番号は、「#10−03−9999−9999」となる。
ステップS305において、PBX2は、発信指令に含まれる発信先電話番号よりプレフィックスF3を識別し、設定データS2に基づいて発信元電話番号を選択する。例えば、PBX2は、プレフィックスE5=「#10」であると認識し、設定データS2を参照することにより、発信元電話番号として発信先電話機に通知されるPBX電話番号F2を「03−1111−1111」と選択する。さらに、PBX2は、ステップS306において、発信先電話番号からプレフィックスを除去し、構内電話機T0からユーザ端末4へ発信を行う。
以上説明した本実施形態においては、CTI装置6は、V字発信指令の送信元となるユーザ端末4及び利用者IDを識別し、利用者IDに対応する利用者データDに基づき発信先電話番号にプレフィックスを付与する。PBX2は当該プレフィックスを識別し、適切な発信元電話番号(PBX電話番号F2)を選択する。これにより、利用者U0は所属地域にかかわらず発信元電話番号を意識することがなくなるため、利用者U0の利便性が向上する。
なお、本実施形態においては、CTI装置6が発信先電話番号にプレフィックスを付加するとして説明したが、ユーザ端末4からCTI装置6へV字発信指令(ステップS102参照)が送信される際に、例えば利用者U0の所望するプレフィックスが発信先電話番号に付加されてもよい。これにより、利用者U0は、例えば出張などで一時的に所属地域が変わる場合でも、発信元電話番号を柔軟に変更可能となり、利用者U0の利便性が向上する。
なお、本実施形態においても、第2の実施形態で説明したV字発信システム1Bの構成と同様に、構内電話機T0に代えて仮想内線Vを用いることができる。これにより、利用者U0がPBX2配下に接続される電話機を持たない場合でも、V字発信を利用することができるため、利用者U0の利便性が向上する。
また、本実施形態においては、PBX2の設定データにおいて、内線番号F1とプレフィックスF3の両方を用いてPBX電話番号F2の設定が行われてもよい。例えば、PBX2は、プレフィックスF3を判定して市外局番を決定し、さらに内線番号F1を判定して当該市外局番に属する複数の電話番号の中から1の電話番号を選択可能であるとしてもよい。これにより、利用者U0は、PBX電話番号F2をさらに細かく選択可能となるため、利用者U0の利便性が向上する。
なお、本願発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削減してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組合せてもよい。