JP6298244B2 - 表面修飾金属酸化物粒子材料、分散液、シリコーン樹脂組成物、シリコーン樹脂複合体、光半導体発光装置、照明器具及び液晶画像装置 - Google Patents
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Description
特に、光半導体発光素子の一種である発光ダイオード(LED)の封止材料としては、有機変性シリコーン樹脂、フェニル(又はメチルフェニル)シリコーン樹脂(例えば、特許文献2参照)、ジメチルシリコーン樹脂(例えば、特許文献3参照)等がある。
また、シリコーン樹脂に無機粒子を分散させた場合、通常の表面処理剤では耐熱性が低いために、高温時に粒子凝集が発生(粒子分散性が低下)したり表面処理剤自体の着色が発生したりすることで、透過率が低下するために、耐熱性に問題が生じる場合もあった。
さらに、LEDからの光取出し効率の低いジメチルシリコーン樹脂で封止した場合、電球構造の密閉性を上げたり、LEDパッケージの光反射板に耐食性の高い金メッキを施したり等しても、輝度が低く、コストが高いという問題があった。
すなわち、本発明は下記の通りである。
[2] 上記[1]に記載の表面修飾金属酸化物粒子材料を含む分散液。
[3] 上記[1]に記載の表面修飾金属酸化物粒子材料と、フェニルシリコーン樹脂形成成分及びメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分から選択される1種以上を含有するシリコーン樹脂形成成分とを含み、該シリコーン樹脂形成成分がハイドロジェン基を有し、前記金属酸化物粒子が5質量%以上含有されてなるシリコーン樹脂組成物。
[4] 上記[3]に記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させてなるシリコーン樹脂複合体。
[5] 半導体発光素子が封止材により封止されてなる光半導体発光装置であって、
前記封止材が[4]に記載のシリコーン樹脂複合体からなり、当該封止材からなる封止層の厚さが50μm以上である光半導体発光装置。
[6] 上記[5]に記載の光半導体発光装置を備えてなる照明器具。
[7] 上記[5]に記載の光半導体発光装置を備えてなる液晶画像装置。
[1.表面修飾金属酸化物粒子材料]
本発明における表面修飾金属酸化物粒子材料は、特定粒子径の金属酸化物粒子に対し、少なくともフェニル基及びアルケニル基を有する表面修飾材料によって表面修飾されてなる。
(金属酸化物粒子)
金属酸化物粒子の種類は特に限定はないが、封止材等の透明性を保持する観点からナノメートルサイズの粒子径を得ることができる種類が好ましく、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム等が挙げられる。また、封止材等の屈折率を高めることにより、当該封止材を用いた光半導体発光装置からの光取出効率を向上させて高輝度化することを考慮する場合には、金属酸化物粒子の屈折率は1.5以上であることが好ましく、1.7以上であることがより好ましく、1.9以上であることがさらに好ましい。このような金属酸化物粒子としては、酸化チタンや酸化ジルコニウム(ジルコニア)が好ましく、特にジルコニアが好ましい。
なお、本明細書において、「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と表現する場合は、特にことわらない限り「X以上Y以下」を意味する。
平均一次粒子径は、4nm〜8nmであることが好ましく、4nm〜6nmであることがより好ましい。
金属酸化物粒子の表面修飾に用いられる表面修飾材料は、少なくともフェニル基とアルケニル基とを含有している。当該表面修飾材料は、1つの材料中にフェニル基とアルケニル基との両方を含有するものでもよく、フェニル基を含有する表面修飾材料とアルケニル基を含有する表面修飾材料との両方を併用したものでもよい。
また、シリコーン樹脂複合体や組成物中で表面修飾金属酸化物粒子材料を均一に分散安定化させる目的で、その他の構造を有する表面修飾材料を併用してもよい。
さらに、耐熱性に優れる表面修飾材料を用いることによって、高温時に粒子凝集が発生(粒子分散性が低下)したり表面処理剤自体の着色が発生したりすることに起因する透過率の低下を抑えることができ、よってマトリックスシリコーン樹脂の耐熱性を損なうことなく、ガスの透過性を抑えることができる。なおここで、耐熱性に優れるとは、熱負荷試験(150℃、1000時間)後において表面修飾構造に変化のないこと(すなわち樹脂組成物中での表面修飾金属酸化物粒子材料の分散性に変化のないこと)を意味する。
これらの中で、耐熱性にも優れるという観点からは、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、アルコキシ片末端フェニルシリコーン、アルコキシ片末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有フェニルシリコーンレジン樹脂、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジン樹脂が好ましい。
これらの中で、耐熱性にも優れるという観点からは、ビニルトリメトキシシラン、アルコキシ片末端ビニル片末端ジメチルシリコーン、式(3)の炭化水素鎖が分岐した構造や分岐した炭化水素鎖上にアルケニル基を含有した構造の材料が好ましい。
上記ハイドロジェン基を有する表面修飾材料としては、例えばトリエトキシシラン、ジメチルエトキシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメチルクロロシラン、エチルジクロロシラン等が挙げられる。
ところで、マトリックスシリコーン樹脂形成成分の硬化は、後述のように、付加硬化型が選択されることが好ましい。この付加硬化とは、シリコーン樹脂形成成分中のシロキサンポリマーに配されたハイドロジェン基と、同じくシロキサンポリマー中のアルケニル基(またはアルキニル基)とが、白金族金属系触媒による付加反応(ヒドロシリル化反応)により重合することで硬化するものである。従って、マトリックスシリコーン樹脂形成成分は、少なくともハイドロジェン基を含有するシリコーン樹脂形成成分と、アルケニル基(またはアルキニル基)を含有するシリコーン樹脂形成成分とを含有している。
そこで、金属酸化物粒子表面にアルケニル基だけでなくハイドロジェン基も修飾担持させることにより、金属酸化物粒子表面のアルケニル基とマトリックスシリコーン樹脂形成成分中のハイドロジェン基が架橋反応できるだけでなく、金属酸化物粒子表面のハイドロジェン基とマトリックスシリコーン樹脂形成成分中のアルケニル基(またはアルキニル基)も架橋反応できるので、金属酸化物粒子とマトリックスシリコーン樹脂との一体化をより図ることができる。
上記表面修飾量は、10〜30質量%であることがより好ましい。
なお、上記表面修飾量は、150℃乾燥後の表面修飾金属酸化物粒子を750℃で熱処理し、熱処理後の質量減少量を表面修飾材料の質量として算出したものである。
本発明の分散液は、前記本発明の表面修飾金属酸化物粒子材料を分散媒に分散させたものである。本発明の分散液によれば、本発明の表面修飾金属酸化物粒子材料を分散媒中に分散してなることとしたので、これとマトリックスシリコーン樹脂形成成分とを組み合わせる際に、表面修飾金属酸化物粒子材料をマトリックスシリコーン樹脂形成成分中に均一かつ良好な分散状態で分散させることができ、よって成形性、加工性に優れ、また透明性に優れたシリコーン樹脂組成物、さらにこれを硬化させたシリコーン樹脂複合体を得ることができる。
分散剤や表面処理剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、オルガノアルコキシシランやオルガノクロロシランなどのシランカップリング剤、ポリエチレンイミン系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤、ポリアリルアミン系高分子分散剤等の高分子分散剤が好適に用いられ、これらの分散剤や表面処理剤は複合微粒子の粒子径や目的とする分散媒の種類により適宜選択すればよく、上記分散剤の1種又は2種以上を混合して用いても良い。水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシセルロース、ポリアクリル酸等を用いることができる。
分散液中の配合量としては、分散剤等(固形分量)の総量が、粒子材料に対して1〜15質量%の範囲であることが好ましく、2〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
本発明のシリコーン樹脂組成物は、少なくとも前述の本発明の表面修飾金属酸化物粒子材料と、フェニルシリコーン樹脂形成成分及びメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分から選択される1種以上を含有するシリコーン樹脂形成成分とを含んでなり、該シリコーン樹脂形成成分がハイドロジェン基を有する組成物である。
なおここで「樹脂組成物」とは、流動性を有することで特定の形状を有さず、一度変形すると元の形状には戻らない不可逆的な変形性を有するものであって、後述の透明な樹脂複合体の原料となるものである。この樹脂組成物の状態としては、例えば、液状やチクソトロピー性を有するゲル状の状態にあるものを示すことができる。また、「樹脂形成成分」とは、後述の樹脂複合体における樹脂成分を形成するための成分であり、通常は樹脂成分のモノマー、オリゴマーやプレポリマーであって液状のものが含まれる。
シリコーン樹脂形成成分は、フェニルシリコーン樹脂形成成分及びメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分から選択される1種以上を含有する。
フェニルシリコーン樹脂形成成分としては、シロキサンポリマーにフェニル基を配したものが挙げられる。メチルフェニルシリコーン樹脂形成成分としては、シロキサンポリマーにフェニル基とメチル基(アルキル基)を配したものが挙げられる。また、その他にフェニル基を配したシロキサン構造とエポキシ基や他の炭化水素を組み合わせた変性シリコーン樹脂がある。構造としては直鎖状のほかに、二次元構造の鎖状のものや三次元網状構造のレジン、かご型構造などがある。
フェニルシリコーン樹脂形成成分及びメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい(以下、フェニルシリコーン樹脂形成成分、メチルフェニルシリコーン樹脂形成成分及び両成分を組み合わせたものをまとめて「(メチル)フェニルシリコーン樹脂形成成分」ということがある)。また、上記のような各種構造を有するものを組み合わせてもよく、さらに上記のような変性シリコーン樹脂を加えてもよい。
ここで、上記シリコーン樹脂形成成分には、(メチル)フェニルシリコーン樹脂形成成分以外に他のシリコーン樹脂形成成分が含まれていてもよい。すなわち、本発明におけるシリコーン樹脂形成成分がハイドロジェン基を有するとは、(メチル)フェニルシリコーン樹脂形成成分中にハイドロジェン基が含まれていてもよいこと、その他のシリコーン樹脂形成成分中にハイドロジェン基が含まれていてもよいこと(このシリコーン樹脂形成成分を「ハイドロジェンシリコーン樹脂形成成分」ということがある)、さらにはこれらの両者にハイドロジェン基が含まれていてもよいことを意味する。
なお、成形性や作業性の点等からシリコーン樹脂組成物を低粘度化したい場合には、(メチル)フェニルシリコーン樹脂形成成分やハイドロジェンシリコーン樹脂形成成分と相溶性を有し、かつ表面修飾金属酸化物粒子の分散性を阻害しないような有機溶媒を加えてもよい。このような有機溶媒としては、例えば前記分散液に用いられる分散媒を挙げることができる。
縮合硬化型シリコーン組成物は、少なくとも分子鎖末端が水酸基又は加水分解性基で封鎖されたシリコーン樹脂形成成分とケイ素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に3個以上含有するシラン化合物とアミノキシ基、アミノ基、ケトオキシム基等を含有する縮合触媒とを含有してなる組成物であり、上記水酸基又は加水分解性基と加水分解可能な基とが脱水等の縮合反応を起こして結合することでシリコーン樹脂形成成分とシラン化合物とが重合して硬化するものである。なお、前述の通り、これらのシリコーン樹脂形成成分中にはフェニル基やメチル基(アルキル基)が配されている。
一方、本発明においては、シリコーン樹脂形成成分のハイドロジェン基と表面修飾材料のアルケニル基とを架橋反応により一体化させて、表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂との相分離を防ぎ、表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂とを近接させてガスの透過性を抑えることを可能としている。ここで、この架橋反応と、前記付加硬化型の付加反応(ヒドロシリル化反応)とは、その反応基や反応状態から理解できるように同一の反応である。従って、マトリックスシリコーン樹脂形成成分や反応触媒として付加硬化型のものを選択すれば、表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂との架橋による一体化と、マトリックスシリコーン樹脂自体の硬化とを、同時にかつ単一の反応方法で行えるので好ましい。また、付加硬化型であれば重合時に水等の副生成物が発生しないため、副生成物が混在することによる影響や副生成物の除去が不要となることも好ましい。
さらに、前述のように、アルケニル基とハイドロジェン基の双方を修飾担持させた金属酸化物粒子を用いれば、金属酸化物粒子表面のアルケニル基とマトリックスシリコーン樹脂形成成分中のハイドロジェン基との架橋反応だけでなく、金属酸化物粒子表面のハイドロジェン基とマトリックスシリコーン樹脂形成成分中のアルケニル基(またはアルキニル基)も架橋反応できるので、金属酸化物粒子とマトリックスシリコーン樹脂との一体化をより図ることができる。
上記いずれかの方法により両者を混合することで、本発明のシリコーン樹脂組成物が得られる。なお、本発明のシリコーン樹脂組成物は、上記混合過程で用いる有機溶剤等を含むものであってもよい。
本発明のシリコーン樹脂複合体は、上記本発明のシリコーン樹脂組成物中のマトリックスシリコーン樹脂形成成分を付加反応や縮合反応等により重合硬化させるとともに、金属酸化物粒子の表面修飾材料とマトリックスシリコーン樹脂形成成分とを架橋反応により結合して表面修飾金属酸化物粒子とマトリックスシリコーン樹脂とを一体化させることにより得られる。
ここで、「樹脂複合体」は特定の形状を有するが、この「所定の形状を有する」とは、樹脂複合体が液状、ゲル状等の不可逆的な変形性を有しておらず、使用の目的や方法に合わせた一定の形状を維持することができることを示すものである。すなわち、通常のほとんど変形しない固体状の他、ゴム状等の弾性変形性(形状復元性)を有するものを含むものであり、形状自体が特定の形状であることを示すものではない。
この際、使用するシリコーン樹脂組成物の粘度が高く成形性が悪い場合には、予め、有機溶媒等を添加し撹拌・混合して粘度を低下させ、成形や充填に適した粘度となるように調整しておいてもよい。
一方、使用するシリコーン樹脂組成物の粘度が低い場合には、予め、マトリックスシリコーン樹脂形成成分の一部や、マトリックスシリコーン樹脂形成成分と表面修飾材料の一部とを重合や架橋させておくことで粘度を高め、成形や充填に適した粘度となるように調整しておくことができる。また、シリコーン樹脂組成物が有機溶媒を含む場合には、この有機溶媒の一部あるいは全部を揮発させる等で除去することで、粘度を高めることもできる。さらに、上記シリコーン樹脂組成物をマスターバッチとして他の樹脂に混合して用いてもよい。
なお、この成形体または充填物に有機溶媒が残留する場合には、予めこの有機溶媒を揮発除去しておくことが好ましい。
これにより、この成形体または充填物は、金型や容器から外した後、外力を加えても、一定の形状を維持できる状態、すなわちシリコーン樹脂複合体が得られる。
なお、シリコーン樹脂複合体は、用途において問題が無ければ、必ずしも金型や容器から外す必要はない。例えば、後述の光半導体発光装置では、装置自体が容器を形成した形である。
また、光路長0.5mmとした場合の波長450nmにおける透過率は、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。透過率がこの範囲であれば、例えばシリコーン樹脂複合体を光学部品として用いた場合に、構成部材として光透過損失の低下を抑制することができる。
なお、上記シリコーン樹脂複合体の屈折率は公知の方法を用いて測定すればよいが、例えば、アルミニウム基板上に形成した複合体(1mm厚)を用い、プリズムカプラーによって室温で波長594nmの値を測定することによって求められる。透過率の測定方法については後述する。
本発明の光半導体発光装置は、半導体発光素子が封止材により封止されてなり、該封止材が本発明のシリコーン樹脂複合体からなり、その封止材からなる封止層の厚さが50μm以上となっている。封止層の厚さが50μm未満だとガス透過性を十分に低く抑えることができない。封止層の厚さは、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましい。
本発明の光半導体発光装置は、上記のように封止層のガスバリア性に優れるため、例えば発光ダイオード(LED)パッケージ内に設けられる銀メッキ反射板の劣化を抑制でき、発光ダイオードパッケージからの放射光の輝度を高く保ちつつその低下を少なくすることができるので、これを備えた照明器具や液晶画像装置として有効に利用することができる。
本発明に係る第1の態様(発光装置10)は、図1に示すように、反射カップ12の凹部12Aに発光素子14が配置され、発光素子14に接して凹部を埋め込むように、本発明のシリコーン樹脂複合体からなる封止材により構成された第1の封止層16が形成されてなる。
かかる装置によれば、発光素子14から出射された光は封止材との境界面を通過した後、封止材内を通り、直接に、あるいは反射カップ12の壁面で反射されて外部に取り出される。
本発明の光半導体発光装置においては、封止材の屈折率を高めることにより、発光層と封止材間、あるいはサファイア基板と封止材間において全反射する発光光量を低減させ、光の取り出し効率を高めることができる。この点からは、封止材の屈折率は1.54より高いことが好ましく、1.56以上であることがより好ましく、1.58以上であればさらに好ましく、1.6以上であれば最も好ましい。また、光路長0.5mmとした場合の波長450nmにおける透過率は40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
組成の異なる第2封止層18の材料としては、メチルシリコーン、変性シリコーン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂又は樹脂複合体が挙げられる。第2の封止層18の屈折率は、第1の封止層16と第2の封止層18との界面反射をより少なくするとともに、第2の封止層18と外部の界面反射をもより少なくするために、第1の封止層16の屈折率以下かつ1(大気の屈折率)以上であることが好ましい。また、第2の封止層18の屈折率を調整する目的で、第2の封止層中に本発明に係る表面修飾金属酸化物粒子を含有してもよい。
特に、コスト面で蛍光体の使用量を削減する場合や発光素子近傍に蛍光体を集中的に配置して光変換効率を高める場合を考慮すると、第2の態様における第1の封止層に蛍光体を含有させることが好ましい。蛍光体は、第1の封止層の質量に対して5〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。なお、第2の封止層にも蛍光体を含有させることができる。
このような、発光素子と蛍光体とを組み合わせた光半導体発光装置としては、白色発光ダイオード(例えば、紫外または青色発光ダイオードと蛍光体粒子とを組み合わせて白色光を出射する発光ダイオード)を例示することができる。
(金属酸化物粒子の平均一次粒子径)
金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、X線回折ピークの半値幅から計算によって得られるシェラー径とした。これは、一次粒子径がナノメートルサイズであれば、1粒子が複数個の結晶子で構成される可能性が低くなることで、平均一次粒子径とシェラー径とが実質的に同一となるからである。
シリコーン樹脂複合体の透過率は、ガラス基材上に形成した実施例の複合体(0.5mm厚)を用い、分光光度計(積分球)を用いて測定した。シリコーン樹脂単体(比較例1)に対する波長450nmにおける透過率低減量が10%未満を「○」とし、10%以上を「×」とした。
シリコーン樹脂複合体の耐熱性は、上記0.5mm厚の複合体(硬化体)に対し、電気炉にて150℃で500時間負荷を施した後、分光光度計(積分球)を用いて透過率を測定することにより評価した。熱負荷後の波長450nmにおける透過率が、初期値(熱負荷前)に比べて30%以上低下したものを「×」とし、低下量が30%未満であれば「○」とした。
シリコーン樹脂複合体のガス透過性は、下記のようにして評価した。
まず、銀メッキ反射板を有するLEDパッケージにシリコーン樹脂組成物を封止し、シリコーン樹脂組成物を150℃で3時間加熱処理して硬化させ、実施例の複合体を得た。該パッケージを500mlの耐圧ガラス容器に0.3gの硫黄粉末とともに密封し、80℃に保持した。銀メッキ反射板の経時外観変化(硫黄ガスによる銀メッキの腐食(黒化変色))を目視で観察し、金属酸化物粒子を含有していないシリコーン樹脂(比較例1)より変色が遅く、同等の黒化を呈するのに要した時間が1.5倍以上のものをガス透過性が低いとして「○」とし、シリコーン樹脂よりは変色が遅いものの同等の黒化を呈する時間が1.5倍未満のものは「△」、シリコーン樹脂と同等に変色したものやより速く変色したものを「×」とした。
シリコーン樹脂複合体からなる封止層の厚さは、上記パッケージの断面をSEMで観察して測定した。
(ジルコニア粒子の作製)
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩溶液に、28%アンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調製した。
次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えた。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、ジルコニウム塩溶液中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して30質量%であった。
次いで、この固形物を自動乳鉢で粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、500℃にて1時間焼成した。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した後、乾燥器にて乾燥させ、平均一次粒子径4nmのジルコニア粒子を得た。
次いで、ジルコニア粒子10gに、トルエン82g、メトキシ基含有フェニルシリコーンレジン(信越化学工業社製、KR217)5gを加えて、混合し、ビーズミルで6時間、表面修飾処理を行った後、ビーズを除去した。次いで、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM1003)を3g添加し、130℃にて6時間環流下で表面修飾及び分散処理を行うことにより、フェニル基を有する表面修飾材料及びアルケニル基であるビニル基を有する表面修飾材料により表面修飾されたジルコニア粒子の透明分散液を調製した。
上記ジルコニア粒子の透明分散液50gを、フェニルシリコーン樹脂として商品名:OE−6520(東レ・ダウコーニング社製、屈折率1.54、A液/B液配合比=1/1)7.6g(A液3.8g、B液3.8g)を加え、撹拌した後、減圧乾燥によりトルエンを除去し、表面修飾ジルコニア粒子とフェニルシリコーン樹脂と反応触媒とを含有したシリコーン樹脂組成物(ジルコニア粒子含有量:30質量%)を得た。
なお、OE−6520については、NMR分析によりSi−H結合の存在を確認しており、シリコーン樹脂形成成分中にハイドロジェン基が含まれていることがわかっている。従って、OE−6520はジルコニア粒子を表面修飾しているビニルトリメトキシシランのビニル基(アルケニル基)と架橋反応することで一体化することができる。
また、OE−6520については、NMR分析によりアルケニル基であるC=C二重結合(ビニル基)が存在すること、また発光分析により白金が存在することを確認している。すなわち、OE−6520は付加反応(ヒドロシリル化反応)により重合硬化する、付加硬化型のシリコーン樹脂である。したがってOE−6520は、白金を触媒として、ジルコニア粒子表面修飾材料中のビニル基とOE−6520中のハイドロジェン基とが架橋反応により結合するとともに、OE−6520中のビニル基とハイドロジェン基とが付加反応することにより、ジルコニア粒子の分散状態を維持した状態でシリコーン樹脂形成成分が重合硬化すると判断できる。
上記シリコーン樹脂組成物を150℃で3時間加熱処理して硬化することで、シリコーン樹脂複合体を得た。
このシリコーン樹脂複合体を用いて既述の各種評価を行った。なお、ガス透過性の評価では、封止層の厚みを500μmとした。
(ジルコニア粒子の作製)
実施例1と同様にしてジルコニア粒子を作製した。
表面修飾材料A:(CH2=CH)(CH3)2SiO(SiO(C6H5)2)45Si(OC2H5)3の調製
窒素雰囲気下で60mlのテトラヒドロフラン(THF)溶媒中にジメチルビニルシラノール1.8gを溶解し、撹拌しながら温度0℃で、n−ヘキサンに溶解したn−ブチルリチウムを1.2g滴下して3時間反応させ、リチウムジメチルビニルシラノレートを得た(式(A)参照)。
得られた表面修飾材料は、1H−NMRによって構造を確認した。
次いで、ジルコニア粒子10gに、トルエン80g、メトキシ基含有フェニルシリコーンレジン(信越工業化学社製、KR217)5gを加えて、混合し、ビーズミルで6時間、表面修飾処理を行った後、ビーズを除去した。次いで、上記表面修飾材料Aを3g添加し、130℃にて6時間環流下で表面修飾及び分散処理を行うことにより、フェニル基を有する表面修飾材料及びフェニル基とアルケニル基(ビニル基)をともに有する表面修飾材料により表面修飾されたジルコニア粒子の透明分散液を調製した。
上記メトキシ基含有フェニルシリコーンレジンと、表面修飾材料Aにより表面修飾されたジルコニア粒子の透明分散液とを使用した以外は実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物、さらにシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
封止層の厚さを30μmとした以外は実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物、さらにシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
(チタニア粒子の作製)
四塩化チタン242.1gと、塩化スズ(IV)5水和物111.9gとを、5℃の純水1.5L(リットル)に投入し、撹拌して混合溶液を作製した。
次いで、この混合溶液を加温して温度を25℃に調整し、この混合溶液に濃度が10質量%の炭酸アンモニウム水溶液を加えてpHを1.5に調整し、その後、25℃にて24時間熟成した後、限外濾過法により過剰の塩化物イオンを取り除いた。
次いで、エバポレータを用いて、塩化物イオン除去後の混合溶液から水分を除去し、その後乾燥させ、酸化チタン粒子を作製した。得られた酸化チタン粒子の平均一次粒子径は4nmであった。
(シリカ粒子の作製)
メタノール80gに濃度24%アンモニア水20g、10N−NaOH0.8g、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(商品名:エマルゲン707、花王社製)4gを混合した。そこへ、メタノールにて希釈したテトラエチルシリケート(商品名:エチルシリケート28、コルコート社製)を4g滴下した。その混合液を20℃で1時間撹拌した。撹拌終了後、デカンテーションにより沈降物を分離し、メタノールへ再分散してデカンテーションする作業を繰り返し、残留イオンを除去した。
当該シリカ粒子を用いた以外は実施例1と同様にして表面修飾し、シリカ透明分散液を作製し、次いでシリコーン樹脂組成物、さらにシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
実施例1で用いたシリコーン樹脂(但し、金属酸化物粒子無添加)について、実施例1と同様な各種評価を行った。なお、シリコーン樹脂複合体の透過率、シリコーン樹脂複合体の耐熱性、シリコーン樹脂複合体のガス透過性、の3点については、金属酸化物粒子を含まない本比較例1の値を基準値とした。
ジルコニア粒子の作製における電気炉焼成温度を500℃から450℃にした以外は実施例1と同様にして平均一次粒子径が2nmのジルコニア粒子を作製した。当該ジルコニア粒子を用いた以外は実施例1と同様にしてシリコーン樹脂組成物、さらにシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
ジルコニア粒子の作製における電気炉焼成温度を500℃から600℃にした以外は実施例1と同様にして一次粒子径が15nmのジルコニア粒子を作製した。当該ジルコニア粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物、さらにシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
実施例1で使用した表面修飾材料を、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びイソプロピルトリメトキシシランそれぞれ6g及び2gに変更した以外は実施例1と同様にして表面修飾ジルコニア粒子を作製し、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物、さらにシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
以上の各実施例、比較例におけるシリコーン樹脂複合体の詳細及び評価結果をまとめて第1表、第2表に示す。
実施例1、参考例1、実施例4、5のシリコーン樹脂複合体のガス透過性については、基準となるシリコーン樹脂単体(比較例1)に比べて同等の黒化を呈するのに要した時間が1.5倍以上であり、ガス透過性の低下、すなわちガスバリア性の明確な向上が確認された。また、実施例3においてもガス透過性の低下が確認されたが、その程度は他の実施例に比べて低かった。これは、封止層厚さが30μmと薄いためと考えられる。
一方、比較例2についてはガス透過性が高く、十分なガスバリア性が得られなかった。これは、金属酸化物の粒子径が小さくシリコーン樹脂組成物の粘度が高いために作業性が悪く、封止自体を十分に行えなかったためと考えられる。
また、比較例3については光の透過率が低下していた。これは、金属酸化物の粒子径が大きいために光の散乱が生じているためと考えられる。
また、比較例4については光の透過率、耐熱性とも低下していた。これは、表面修飾材料に起因するものと考えられる。すなわち、光の透過率低下は、本例の表面修飾材料がアルケニル基を含まないためにマトリックスシリコーン樹脂形成成分との結合性がなく、さらにフェニル基を含まないためにマトリックスシリコーン樹脂形成成分との親和性が低いために、シリコーン樹脂複合体形成時(シリコーン樹脂組成物の硬化時)に金属酸化物粒子が凝集をおこしたためと考えられ、また耐熱性の低下は、本例の表面修飾材料がフェニル基等を有さず耐熱性が低いためと考えられる。
12:反射カップ
12A:凹部
14:発光素子
16:第1の封止層
18:第2の封止層
Claims (7)
- 平均一次粒子径が3nm以上10nm以下である金属酸化物粒子に対し、フェニル基を含有する表面修飾材料とアルケニル基を含有する表面修飾材料との両方を併用した表面修飾材料によって表面修飾を行った表面修飾金属酸化物粒子材料であって、
前記フェニル基を含有する表面修飾材料が、下記式(1)で示される構造の材料、下記式(2)で示される構造の材料、及びフェニル基とアルコキシ基とを含有するレジン構造(三次元網状構造)のシリコーン材料から選択される1種以上であり、
前記アルケニル基を含有する表面修飾材料が、下記式(3)で示される構造の材料、下記式(4)で示される構造の材料、式(3)の炭化水素鎖が分岐した構造や分岐した炭化水素鎖上にアルケニル基を含有した構造の材料、アクリル系シランカップリング剤、及び炭素−炭素不飽和結合含有脂肪酸から選択される1種以上であり、
ハイドロジェン基を有するフェニルシリコーン樹脂形成成分及びメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分から選択される1種以上をマトリックスシリコーン樹脂形成成分とするシリコーン樹脂組成物に用いられる表面修飾金属酸化物粒子材料。
(式(1)中、nは1〜3の整数である。Xはメトキシ基、エトキシ基、水酸基、ハロゲン原子、及びカルボキシ基から選択され、4−nが2以上の場合、全てのXが同一でもよく、又は異なっていてもよい。)
(式(2)中、aは1〜100の整数であり、bは0〜100の整数であり、cは1〜3の整数である。A、B、C、Dはフェニル基または炭素数1〜6のアルキル基から選択される1ないし2種以上であり、少なくともA、Bの内いずれかはフェニル基である。A、B、C、D全てがフェニル基であってもよい。また、Si・A・B・Oにより構成される部位と、Si・C・D・Oにより構成される部位の位置及び配列は任意であり、ランダムポリマー型である。Xはメトキシ基、エトキシ基、水酸基、ハロゲン原子、及びカルボキシ基から選択され、cが2以上の場合、全てのXが同一でもよく、又は異なっていてもよい。)
(式(3)中、nは0以上の整数であり、mは1〜3の整数である。Xはメトキシ基、エトキシ基、水酸基、ハロゲン原子、及びカルボキシ基から選択され、mが2以上の場合、全てのXが同一でもよく、又は異なっていてもよい。)
(式(4)中、nは1〜100の整数であり、mは1〜3の整数である。Xはメトキシ基、エトキシ基、水酸基、ハロゲン原子、及びカルボキシ基から選択され、mが2以上の場合、全てのXが同一でもよく、又は異なっていてもよい。) - 請求項1に記載の表面修飾金属酸化物粒子材料を含む分散液。
- 請求項1に記載の表面修飾金属酸化物粒子材料と、フェニルシリコーン樹脂形成成分及びメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分から選択される1種以上を含有するシリコーン樹脂形成成分とを含み、該シリコーン樹脂形成成分がハイドロジェン基を有し、前記表面修飾金属酸化物粒子が5質量%以上含有されてなるシリコーン樹脂組成物。
- 請求項3に記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させてなるシリコーン樹脂複合体。
- 半導体発光素子が封止材により封止されてなる光半導体発光装置であって、
前記封止材が請求項4に記載のシリコーン樹脂複合体からなり、当該封止材からなる封止層の厚さが50μm以上である光半導体発光装置。 - 請求項5に記載の光半導体発光装置を備えてなる照明器具。
- 請求項5に記載の光半導体発光装置を備えてなる液晶画像装置。
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