図1は、記録装置100(以下、単に「装置100」と称する場合がある。)の全体構成の例を説明するための模式図である。装置100は、被記録媒体としてロールシート(以下、本明細書中において、単に「シート」と称する場合がある。)を用いて、該ロールシートに片面印刷または両面印刷を行うことが可能な構成を採っている。装置100は、シートの一方の面への記録を行うための記録ヘッドを備えている。該記録ヘッドは、いわゆるフルライン型の構成を採っており、シートの幅方向の全域にわたって一度に記録を行うことが可能である。
ロールシートは、長尺シート(具体的には、搬送方向における長さが1ページ分の単位画像の長さよりも長いシート)であり、ロール状に巻きとられた状態で装置100の内部に設置される。
なお、単位画像とは、1ページ分の領域内に1又は複数の画像、文字、空白等が存在する場合においては、これら画像、文字、空白等を含む該1ページ分の領域を指す。即ち、単位画像とは、例えば、シートに複数のページを順に印刷する場合は、1ページ分の印刷物(記録が為された被記録媒体)上の画像、文字、空白等を指す。単位画像の長さ(搬送方向における長さ)は画像サイズによって異なり、例えば、L版サイズの写真については135mmであり、A4サイズについては297mmである。
図1に例示されるように、装置100は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッター部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソーター部11、排出部12、及び制御部13を備えている。シートは、ローラーやベルトで形成された搬送機構によって、図中の実線で示されたシート搬送経路に沿って搬送される。上述のシート供給部1、デカール部2等の各ユニットは、該シート搬送経路にそれぞれ配されている。
シート供給部1は、例えば、各々がシートを保持する2つのロールR1及びR2を備えており、これらの一方を駆動することにより、該一方からシート搬送経路にシートを供給する。ここでは、2つのロールR1及びR2を例示するが、ロールの数量は、これに限定されるものではなく、1つでもよいし、3つ以上でもよい。なお、本構成では、シートがロール状に巻きとられた状態で保持されるものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、シートは所定長ごとに折り返して積層された状態で保持されるものであってもよい。また、さらに、該所定長ごとにミシン目が設けられるものであってもよい。
なお、本明細書において、シート搬送経路の任意の位置において、シート供給部1に近い側を「上流」、その逆側を「下流」と称する。各ユニットには、適宜、1又は複数の搬送ローラーが設けられており、該ユニットで所定の処理が為されたシートは、順次、下流に搬送される。
デカール部2は、シート供給部1からのシートの反り(カール)を軽減させる。デカール部2は、例えば、シート供給部1からのシートに対して逆方向への反りを与えるように該シートを湾曲させてデカール力を作用させ、シート供給部1からのシートの反りを軽減させる。本構成では、1つの搬送ローラーに対して2つのピンチローラーを当てることにより、シートのカールを軽減させる。
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(シート搬送経路の進行方向に対する傾き)を矯正する。本構成では、シートの一方の端を基準として、該基準となる端にガイド部材(不図示)を当てながら該シートを搬送することにより、シートの斜行を矯正する。
プリント部4では、斜行矯正部3側から搬送されるシートに対して、上述のフルライン型の記録ヘッド14により記録を行う。これにより、該シート上に画像が形成される。
記録ヘッド14は、複数の記録素子列を備えており、本構成では、7つの記録素子列(不図示)を備えている。該7つの記録素子列の各々は、複数の記録素子が、搬送方向と交差する方向に配列されて形成されており、該7つの記録素子列は、搬送方向に沿って互いに平行に配されている。該7つの記録素子列は、例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、およびK(ブラック)の7色にそれぞれ対応している。装置100は、シートを搬送させながら各記録素子列の記録素子の個々を駆動し、対応する色のインク(記録剤)を、該記録素子の個々に対応するノズルを介して、シートに対して吐出することにより、シートへの記録を行う。
なお、記録素子列の数量は上記7つに限られるものではないし、また、上述の7色とは異なる他の色に対応する構成でもよい。また、ここでは、インクジェット方式により記録を行うものを例示するが、発熱素子を用いた方式、圧電素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式、その他の公知の記録方式のいずれの記録方式が用いられてもよい。
検査部5は、プリント部4からのシートを検査し、プリント部4での記録が適切に為されたかの判定を行う。検査は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサで構成されたスキャナを用いて、プリント部4でシートに形成された画像や検査パターンを光学的に読み取ることによって為される。これにより、例えば、記録ヘッド14の各記録素子列の状態、インクを吐出するノズルの状態、シートの搬送状態、形成された画像の位置等を検査し、画像が正しく形成されたか否かの判断を行う。
カッター部6は、検査部5からのシートを所定単位の長さに切断する。シートの切断は、例えば、センサ19がカットパターンを検知したことに応答して、オートカッター20(以下、単に「カッター20」と称する場合がある。)を駆動し、機械的に為されればよい。また、カッター部6の近傍にはゴミ箱17が設けられており、カッター部6で切り落とされた不要なシート片はゴミ箱17に収容される。また、カッター部6には、画像が形成されたシート(装置100から出力されるべきシート)と、切り落とされたシート片と、を振り分ける振り分け機構が設けられる。
印刷する画像サイズに応じて上記所定単位の長さは異なる。例えばL版サイズの写真では搬送方向の長さは135mm、A4サイズでは搬送方向の長さは297mmである。カッター部6は、片面印刷の場合にはページ単位でシートを切断するが、印刷ジョブの内容によっては切断しない場合もある。また、両面印刷の場合には、カッター部6は、シートの第1面(表面)への記録が完了し、第2面(裏面)への記録を開始する前には、該シートを所定単位(例えば、ページ単位)では切断せず、第1面(表面)への記録が完了した位置で該シートを切断する。その後、該シートには第2面への記録が開始され、カッター部6は、第2面への記録が完了したシートを、所定単位で切断する。
なお、所定単位としては、例えば、ページ単位の他、複数ページを含むインプレッション単位が挙げられる。
上記オートカッター20の他、装置100には、ユーザがシートの切断を手動で行うための手動カッター22(22a〜22d)が設けられてもよい。手動カッター22は、例えば、ジャムが発生してシート詰まりが生じた場合に、シートを切断して該シートをシート搬送経路から除去するために用いられ、ユーザの手動により操作される。デカール部2と斜行矯正部3との間には、手動カッター22aが配されている。情報記録部7と乾燥部8との間には、手動カッター22bが配されている。乾燥部8と反転部9及び排出搬送部10との間には、手動カッター22cが配されている。デカール部2と反転部9との間には、手動カッター22dが配されている。手動カッター22は、これらに限定されるものではなく、例えば、上記4ヶ所とは異なる位置に設けられてもよいし、数量もこれに限られるものではない。
情報記録部7は、シートにプリント情報(シリアル番号や日付等の固有情報)を記録する。カッター部6と情報記録部7との間には、例えば、カッター部6で切断されたシートの先端(下流の端部)を検知するエッジセンサ21が設けられる。情報記録部7は、例えば、エッジセンサ21による検知のタイミングに基づいて、該シートへのプリント情報の記録を行う。
乾燥部8は、記録済みのシートに対して乾燥処理を行い、付与されたインクを短時間で乾燥させる。具体的には、乾燥部8の内部では、シートのインク付与面に対して、例えば熱風が吹き当てられる。なお、乾燥処理の方式は熱風を用いた方式に限られるものではなく、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式や、その他の公知の乾燥方式が用いられうる。
なお、本明細書において、上述のシート供給部1から乾燥部8までのシート搬送経路を「第1経路」と称する。
反転部9は、両面印刷を行う場合には、第1面(表面)への記録が完了したシートの表裏反転を行う。具体的には、両面印刷を行う場合には、プリント部4で記録が為された連続シートは、カッター部6で所定単位では切断されず、反転部9は、該連続シートを一時的に巻き取って該連続シートの表裏反転を行う。その後、反転部9は、該連続シートを、その表裏が反転された状態で、デカール部2を介して再びプリント部4に供給する。
具体的には、反転部9は、連続シートを巻き取るための巻取回転体(ドラム)を備えており、第1面への記録が完了した連続シートは、該巻取回転体に一時的に巻き取られた後、該巻取回転体を逆回転させてデカール部2を介してプリント部4に搬送される。このとき、該連続シートは、巻き取られる前とは表裏が反転された状態でプリント部4に搬送され、プリント部4では第2面(裏面)への記録が為される。
なお、本明細書において、デカール部2を経由する乾燥部8からプリント部4までの経路を「第2経路」と称する。
排出搬送部10は、カッター部6で切断された後に乾燥部8での乾燥が完了したシートを、ソーター部11まで搬送する。このようにして得られた、装置100から出力されるべきシートは、「印刷物」とも称される。
ソーター部11は、印刷物を所定の基準に基づいて分類し、対応する排出部12から該シートを排出する。
なお、本明細書において、排出搬送部10からソーター部11までの経路を「第3経路」と称する。
第1経路と、第2経路及び第3経路との間には、第1経路を通過したシートを、第2経路及び第3経路の一方に選択的に搬送するため、可動フラッパを有する経路切り替え機構が設けられている。
斜行矯正部3とプリント部4との間には、マーク読取器18が配されている。マーク読取器18は、反転部9から搬送された連続シートの表面に記録された基準マークを光学的に読み取る。マーク読取器18は、例えば反射型光学センサであり、シートの表面を照明する光源(例えば白色LED)と、照明された面からの光をRGB成分ごとに検出するイメージセンサを有する。
図2は、上述の記録装置100の制御部13の構成例を説明するためのシステムブロック図である。制御部13は記録制御を行い、具体的には装置100の各ユニットの制御を行って装置100全体の動作を制御する。制御部13は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、ユニット制御部209、外部インターフェース(I/F)205、及び操作部15を有する。これらの各ユニットは、システムバス210で接続されており、各ユニット間では、適宜、データないし情報の授受が為される。
制御部13は、ホスト装置16(パーソナルコンピュータ等の汎用又は専用のコンピュータ、カメラ等の画像機器、その他の端末等)からの印刷ジョブを、外部I/F205を介して受け取り、該ジョブに基づいて装置100の各ユニットの制御を行う。また、操作部15は、ユーザインターフェースであり、ハードキーやタッチパネル等の入力部と、ディスプレイや音声発生器等の出力部とを含みうる。操作部15には、装置100の動作状態等、記録を行うのに必要な情報が表示され、又、ユーザは、必要な情報の設定を操作部15により行うことができる。
CPU201(中央演算処理部)は、装置100の各ユニットの動作を制御するための演算処理を行う。ROM202は、CPU201が実行するためのプログラムや装置100による記録動作に必要な固定データを格納する。RAM203は、CPU201の作業領域として用いられ、又、例えば記録する画像を示す記録データや該記録を行うのに必要な設定情報等、各データの一時格納領域として用いられる。HDD204(ハードディスク)は、上述のプログラムおよびデータを記憶し、該プログラムおよびデータはHDD204から読み出される。
画像処理部207は、設定された情報に基づいて画像処理を行い、例えば、入力された画像データについて、色空間(例えばYCbCr)から標準的なRGB色空間(例えばsRGB)への色変換を行い、出力用のデータを生成する。なお、この画像処理に際して、必要に応じて、解像度変換、画像解析、画像補正等が為されてもよい。このようにして得られたデータは、RAM203又はHDD204に格納される。
エンジン制御部208は、各ユニットを駆動するための駆動部の動作を制御し、例えば、CPU201からの制御コマンドに基づいて、プリント部4の記録ヘッド14の駆動制御を行う。また、エンジン制御部208は、例えば、装置100の内部の各ユニットの搬送機構の駆動制御を行う。
ユニット制御部209は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、検査部5、カッター部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソーター部11、排出部12の各ユニットの制御を行う。例えば、これらの各ユニットの動作は、CPU201からのコマンドに基づいて制御される。
なお、上述のユニットのうち破線で囲まれたもの(CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208およびユニット制御部209)を「主制御部13C」とする。主制御部13Cは、ホスト装置16からの印刷ジョブや、操作部15を介して入力されたユーザからの設定情報に基づいて、記録動作を制御するための処理を行う。なお、本構成では、印刷ジョブは、記録を行うための情報及び記録データを含む。
以上の処理は、その全てがソフトウェアによって為されてもよいし、一部または全部がハードウェアによって為されてもよい。
図3を参照しながら、記録装置100の動作モードの例として、片面印刷モードおよび両面印刷モードについて述べる。
図3(a)は、片面印刷モードにおける動作を説明する図である。図中において、シート搬送経路における太線は、シートを示している。シート供給部1は、シート搬送経路にシートを供給し、該シートは、デカール部2及び斜行矯正部3を経由してプリント部4へ搬送される。プリント部4は、該シートの第1面(表面)へ記録を行う。具体的には、プリント部4は、シートを搬送させながら、該シートに対して1ページ分ないし複数ページ分の単位画像を、順次、形成する。隣接する単位画像間には余白領域が設けられ、該余白領域には、例えばカットパターンが形成されうる。
プリント部4からのシートは、検査部5を通過し、カッター部6で、センサ19がカットパターンを検出したことに応答して、カッター20によって単位画像ごとに切断される。
情報記録部7は、カッター部6で切断されたシート(以下、「カットシート」と称する。)を受けて、必要に応じて、例えば第2面(裏面)に、プリント情報(シリアル番号や日付等の固有情報)を記録する。該カットシートは、乾燥部8に1枚ずつ搬送され、乾燥処理が為される。乾燥部8で乾燥処理が為されたカットシートは、その後、排出搬送部10およびソーター部11を経由して排出部12から排出され、積載されていく。
なお、カッター部6で切断されて、カッター部6より上流(プリント部4等の側)に残っているシートは、ロールR1又はR2を搬送方向とは逆方向になるように駆動して、シート供給部1に戻される。
以上のように、片面印刷モードでは、シートは、前述の第1経路と第3経路とを通過して処理され、第2経路は通過しない。
図3(b)は、両面印刷モードにおける動作を説明する図である。両面印刷モードでは、第1面(表面)への記録が完了した後、次いで第2面(裏面)への記録が為される。両面印刷モードは、主に、表面への記録が完了したシートを前述の第2経路(即ち反転部9側の経路)に搬送する点で、上述の片面印刷モードと異なる。第1面への記録を行う際には、カッター部6は、単位画像ごとのシートの切断を行わず、第1面への記録が完了した位置でシートの切断を行う。なお、カッター部6で切断されて、カッター部6より上流に残っているシートはシート供給部1に戻される。
反転部9は、第1面への記録が完了し、乾燥部8での乾燥処理が為されたシートを、巻取回転体を用いて一時的に巻き取る。その後、該シートは、乾燥部8からデカール部2を経由して再びプリント部4に搬送され、該シートの第2面への記録が為される。第2面への記録が完了したシートは、カッター部6で切断され、その後は、片面印刷モードと同様の手順で、順次、排出部12から排出される。
以上のように、両面印刷モードでは、シートは、前述の第1経路、第2経路、第1経路、第3経路の順に通過して処理される。
図4は、ソーター部11および排出部12を構成するトレイユニット301の例を説明するための模式図である。なお、図3では、ソーター部11および排出部12を簡略化して概念的に示している。トレイユニット301は、複数の積載トレイ302〜305と、シートの搬送路CPMAIN及びCPSUBと、シート搬送を行うための駆動部Udrvと、複数のセンサ306及び307と、を備えている。以下、「積載トレイ」を単に「トレイ」と称する。
ソーター入口in301を通過した印刷物は、搬送路CPMAIN及びCPSUBを通って、例えば、主制御部13Cにより決定されたトレイ302〜305のいずれかまで搬送され、該決定されたトレイ上に積載される。
トレイ302は、小サイズの印刷物を積載するためのトレイを複数備える小トレイ群である。トレイ303は、大サイズの印刷物を積載するためのトレイを複数備える大トレイ群である。トレイ302が使用不可の場合には、トレイ302の代わりにトレイ303に小サイズの印刷物を積載することも可能である。トレイ304は、上記大サイズの印刷物よりも更に大きいサイズの印刷物を積載するためのトレイである。トレイ303が使用不可の場合には、トレイ303の代わりにトレイ304に大サイズの印刷物を積載することも可能である。トレイ305は、不要となった印刷物(検査パターンが形成されたシート等)を廃棄するためのトレイである。
なお、トレイ302〜305は、ここでは上述の4種類を例示したが、これらに限られるものではなく、3種類以下でもよいし、5種類以上でもよい。
搬送路CPMAINは、「本線」とも称され、ソーター入口in301から、トレイ302等に搬送するための搬送路CPSUBまでの共通経路である。搬送路CPSUBは、「支線」とも称され、搬送路CPMAINからトレイ302等に至るまでの経路であり、各トレイ302等に対応して設けられている。搬送路CPMAINと各搬送路CPSUBとの間には切り替え部Uswが配されており、搬送されてきた印刷物は、切り替え部Uswによって、搬送路CPMAIN及びCPSUBの一方に導かれる。以下、搬送路CPMAINと搬送路CPSUBとをまとめて単に「搬送路CP」と示す場合がある。
駆動部Udrvは、例えば、搬送路CPの搬送機構を所定の単位(図中の破線で図示)で駆動し、搬送路CP上の印刷物の搬送を行う。駆動部Udrvは、本構成に限られるものではない。例えば、駆動部Udrvは、搬送路CPSUBごとに個別に搬送機構を駆動する構成でもよいし、搬送路CPMAINの隣接搬送路CPSUB間ごとに搬送機構を駆動する構成でもよい。
センサ306は、トレイユニット301内の搬送路CP上のいくつかの箇所に配されている。センサ306は、印刷物が搬送路CPを通過したか否か、又は、搬送路CP上に印刷物が有るか無いか、を検知する。搬送路CPsubに設けられるセンサ306により、トレイ302〜305の各トレイへ搬送された印刷物を検知する。また、センサ307は、トレイ302〜305の各トレイ(以下、各トレイ302等)に対応して配され、対応トレイ上に印刷物の有無を検知する。
図5は、CPU201がROM202又はHDD204に格納されたプログラムをRAM203にロードして実行する処理の流れであり、トレイ302等の上の印刷物の数量の計測方法を説明するためのフローチャートである。該数量の計測は、例えば、センサ306を用いて為される。
ステップS001(以下、単に「S001」と表記する。他のステップについても同様である。)では、センサ306により、対応する搬送路CPを印刷物が通過したか否かを検知する。印刷物が通過した場合はS002に進む。
S002では、上記センサ306の検知結果に基づいて、カウント値に1を加算する。すなわち、各トレイ302等に印刷物が出力されてトレイ302等の上の印刷物の数量が1枚増えたと判断する。
各トレイ302等には、積載することが可能な印刷物の数量の上限値が予め設定されている。積載することが可能な印刷物の数量の上限値は、各トレイ302等が全て同じ値が設定されていてもよいし、トレイ302等毎に設定されていてもよい。記録装置100は、トレイ302等の上に積載された印刷物の数量が該上限値を超えないように、ユーザに通知することが可能である。
上述した方法により、各トレイ302等に積層される枚数が特定される。
なお、ここでは、各トレイ302等の上の印刷物の検知をセンサ306により行う構成を例示したが、この構成に限られるものではなく、該検知は、例えば、各トレイ302等の排紙口に設けられた他のセンサによって為されてもよい。
以下、本明細書において、該計測を「カウント」と称し、該計測により計測された数量ないし計測値を「カウント値」と称する。また、各トレイ302等の積載可能な印刷物の数量の上限値を、「積載上限値」と称する。
図6を参照しながら、印刷動作中に印刷物がトレイから回収される第1の事例を述べる。図6は、記録装置100が、ホスト装置16から印刷ジョブJを受け、印刷ジョブJに基づいて、複数の印刷物p1〜p70を出力する様子を示す模式図である。即ち、印刷ジョブJは、70枚の印刷物p1〜p70のデータを含む。本実施形態では、印刷ジョブ毎に異なるトレイに排出され、1つの印刷ジョブの印刷物の枚数が1つのトレイの積載上限値を超える場合は、1つのジョブが複数のトレイに排出される。
ここで、印刷物p1〜p70は、トレイ302の少なくとも1つ(「トレイ3021」とする)に出力されるものとし、トレイ3021の積載上限値を50とする。
図6の(A)は、装置100が、印刷ジョブJを受けて印刷物p1〜p40までの記録を完了し、印刷物p1〜p40をトレイ3021に出力した状態を示している。印刷物p1〜p40は、トレイ3021上に、下側(トレイ3021側)からp1、p2、・・・と順に積載されている。ユーザu(又は、オペレータ)は、トレイ3021上の印刷物の数量がトレイ3021の積載上限値(50枚)に達する前に、上記積載された印刷物p1〜p40をトレイ3021から回収する。これに応答して、トレイ3021のカウント値は初期化(クリア)される(即ち、カウント値を0にする)。よって、装置100は、引き続き、残りの印刷物p41〜70をトレイ3021に出力することが可能である。
図6の(B)は、装置100が、残りの印刷物p41〜70の記録を完了し、印刷物p41〜70をトレイ3021に出力した状態を示している。ユーザuは、上記積載された印刷物p41〜p70をトレイ3021から回収する。
なお、ユーザuが、上記積載された印刷物p1〜p40を回収しなかった場合には、トレイ3021のカウント値は初期化されない。そのため、印刷物p1〜p50までがトレイ3021に出力され、残りの印刷物p51〜p70は、その後、他のトレイ(例えば、トレイ3022やトレイ3031等)に出力される。
本事例は、積載上限値よりも大きい数量の印刷物を出力する、という事例である。ユーザuは印刷物を2回にわけて回収しており、1回目の回収は印刷動作中に為され、このとき、トレイ3021のカウント値は初期化される。
なお、ユーザuは、各回で回収した印刷物をまとめることにより、積載上限値よりも大きい数量の印刷物を出力するための印刷ジョブに基づいて出力された印刷物を、適切に取得することができる。
次に、図7を参照しながら、印刷動作中に印刷物がトレイから回収される第2の事例を述べる。図7は、装置100が印刷ジョブJに基づいて複数の印刷物p1等を出力する様子を、図6と同様に示している。
本事例では、ユーザuは、トレイ3021に複数の印刷物p1等の一部が出力された後、印刷ジョブJに基づく複数の印刷物p1等の出力が完了する前に、該一部(ここでは、印刷物p1及びp2)を回収する。そして、ユーザuは、印刷物p1及びp2の出来栄えないし品質を確認する。
ユーザuが印刷物p1及びp2の出来栄えないし品質を確認している間、後続の印刷物p3以降は出力され、トレイ3021に積載される。その後、ユーザuは、印刷物p1及びp2を再びトレイ3021(例えば、印刷物p3の下)に戻す。
本事例は、ユーザuが、複数の印刷物の一部を品質等の確認のためにトレイ3021から一時的に回収しており、その後、該一部をトレイ3021に戻す、という事例である。ここで、ユーザuが印刷物の一部を一時的に回収した際に、トレイ3021のカウント値が初期化されると、トレイ3021には、積載上限値よりも大きい数量の印刷物が積載されてしまう。
そこで、本実施形態では、これら第1の事例および第2の事例において、トレイに排出される印刷物が積載上限値を超えることがないように、カウンタクリアを行う。
図8を参照しながら、カウント値の初期化制御の第1の参考例を説明する。
S101では、各トレイ302等に対応して配されたセンサ307が、対応トレイ上に印刷物が有るか無いかを検知する。センサ307が、対応トレイ上に印刷物が有る状態から無い状態になったことを検知した場合には、S102に進む。
S102では、ユーザuにより印刷物が対応トレイから回収されたと判断し、カウント値を初期化する。なお、S101で所定時間にわたって元の状態(該トレイ上に印刷物が有る状態)に戻らなかったときにS102に進むように制御されてもよい。
この参考例では、印刷物がトレイ302等から回収されたことに応答してカウント値の初期化が為されるため、該印刷物が再びトレイ302等に戻された場合には、前述のとおり、過積載状態のトレイ302等に後続の印刷物が出力される虞がある。
図9を参照しながら、カウント値の初期化方法の第2の参考例を説明する。
S201では、搬送路CPに対応して配されたセンサ306が、該搬送路CPを印刷物が通過したか否かを検知する。センサ306が、搬送路CPを印刷物が通過したことを検知した場合には、S202に進む。
S202では、S201で搬送路CPを通過した印刷物が各トレイ302等に出力される前に、センサ307が、対応トレイ上に印刷物が有るか無いかを検知する。ここで、該対応トレイ上に印刷物が無かった場合にはS203に進み、該対応トレイ上に印刷物が有った場合にはS204に進む。
S203では、対応トレイのカウント値を初期化し、S204に進む。
S204では、対応トレイのカウント値に1を加算する。
この参考例では、印刷物が搬送路CPを通過し、且つ、対応トレイ上に印刷物が無かった場合に、対応トレイのカウント値の初期化が為される。また、印刷物が搬送路CPを通過し、且つ、対応トレイ上に印刷物が有った場合には、対応トレイのカウント値の初期化は為されない。
よって、この参考例では、後続の印刷物がセンサ306を通過する前に、一時的に回収された印刷物が対応トレイに戻された場合には、過積載状態のトレイ302等に後続の印刷物が出力される事態は回避されうる。しかしながら、後続の印刷物がセンサ306を通過した後に、一時的に回収された印刷物が対応トレイに戻された場合には、過積載状態のトレイ302等に後続の印刷物が出力される虞がある。
ここで、図10を用いて、本実施形態のカウント値の初期化方法の第1の実施例を説明する。図10は、CPU201がROM202又はHDD204に格納されたプログラムをRAM203にロードして実行する処理の流れであり、カウント値の初期化方法の第1の実施例を説明するためのフローチャートである。
S301では、対応トレイ上に印刷物が有る状態から無い状態に変化したかを判定する。センサ307が、対応トレイ上に印刷物が有ると検知した後に、印刷物が無い状態になったことを検知した場合には、S302に進む。
S302では、対応トレイのカウント値と、所定のパラメータとを比較する。該パラメータは、カウント値の初期化を実行するためのパラメータである。以下、該パラメータを「閾値CTH」とする。閾値CTHは、積載上限値よりも小さい所定値であり、予め設定されている。閾値CTHは、ユーザuによって設定されてもよいし、装置に予め固定値が設定されていてもよいし、ユーザの過去のログ情報に基づいて設定されるようにしてもよい。ここで、対応トレイのカウント値とは、上述したセンサ306により検知された印刷物の数をカウントした値である。
S302で、カウント値が閾値CTHよりも大きかった場合にはS303に進み、一方、カウント値が閾値CTH以下の場合にはS304に進む。
S303では、対応トレイのカウント値を初期化する。
S304では、印刷ジョブに基づく印刷物の出力が完了したか(全ての印刷物が出力されたか)の判断を行う。印刷物の出力が完了した場合にはS303に進み、対応トレイのカウント値を初期化する。なお、印刷ジョブに基づく印刷物の数量がそもそも閾値CTHよりも小さい場合には、カウント値が閾値CTHに達する前に印刷物の出力が完了することになる。この場合には、カウント値と閾値CTHとの大小関係にかかわらず、カウント値が初期化される。該初期化は、ユーザu等によって印刷物が回収されたことに応答して為されてもよい。
この第1の実施例によると、記録装置100は、前述の第1の事例および第2の事例の双方に対応可能なカウント値の初期化制御を行うことができる。
ここで、入力された印刷ジョブに基づく印刷物の数量を60とし、対応トレイの積載上限値を50とし、閾値CTHを9として、以下、いくつかの事例(ケース1〜ケース6)について説明する。
ケース1は、対応トレイに5枚の印刷物が出力された時点で、該印刷物が対応トレイから一時的に回収された場合である。ケース1では、カウント値(5)が閾値CTH(9)より小さいため、カウント値の初期化は為されない。そのため、該印刷物が再び対応トレイに戻されても、該対応トレイには戻されたた5枚の印刷物を含めて計50枚の印刷物が出力され、その後、他のトレイに残りの10枚の印刷物が出力される。よって、ユーザuは、対応トレイに積載された50枚の印刷物と、他のトレイに出力された残りの10枚の印刷物と、の全60枚の印刷物を得る。
ケース2は、対応トレイに5枚の印刷物が出力された時点で、該印刷物が対応トレイから回収され、そのまま、該印刷物が再び対応トレイに戻されなかった場合である。ケース2では、ケース1と同様に、カウント値(5)が閾値CTH(9)より小さいため、カウント値の初期化は為されない。よって、該対応トレイには、引き続き、印刷物が50枚目まで出力され、その後、他のトレイに残りの10枚の印刷物が出力される。よって、ユーザuは、既に回収された5枚の印刷物と、対応トレイに積載された45枚の印刷物と、他のトレイに出力された残りの10枚の印刷物と、の全60枚の印刷物を得る。
ケース3は、対応トレイに20枚の印刷物が出力された時点で、該印刷物が対応トレイから回収され、そのまま、該印刷物が再び対応トレイに戻されなかった場合である。ケース3では、カウント値(20)が閾値CTH(9)より大きいため、カウント値が初期化される。しかし、対応トレイには、該回収された印刷物は戻されないため、該対応トレイに残りの40枚の印刷物が出力される。よって、ユーザuは、既に回収された20枚の印刷物と、対応トレイに積載された40枚の印刷物と、の全60枚の印刷物を得る。
ケース4は、対応トレイに5枚の印刷物が出力された時点で、該印刷物が対応トレイから回収され、その後、さらに5枚の印刷物が出力された時点で、該印刷物が対応トレイから回収され、そのまま、これらの印刷物が再び対応トレイに戻されなかった場合である。2回目の回収の際にはカウント値(10)が閾値CTH(9)より大きいため、カウント値が初期化される。しかし、対応トレイには、該回収された印刷物は戻されないため、該対応トレイに残りの50枚の印刷物が出力される。よって、ユーザuは、既に回収された10枚の印刷物と、対応トレイに積載された50枚の印刷物と、の全60枚の印刷物を得る。
本実施形態では、上述したケース1〜4では、トレイに積載上限値を超える数量の印刷物が積載されるのを抑制することができる。
ここで、閾値CTHの値が適切な値でない場合(ここでは、閾値CTHが9の場合)には、以下のケースのように、対応トレイ上に積載上限値を超える数量の印刷物が積載されることがある。
ケース5は、対応トレイに20枚の印刷物が出力された時点で、該印刷物が対応トレイから一時的に回収された場合である。ケース5では、カウント値(20)が閾値CTH(9)より大きいため、カウント値が初期化される。よって、仮に、ユーザuが該印刷物を再び対応トレイに戻したときには、該対応トレイ上には積載上限値を超える数量の印刷物が積載されることになる。
ケース6は、対応トレイに5枚の印刷物が出力された時点で、該印刷物が対応トレイから一時的に回収され、その後、さらに5枚の印刷物が出力された時点で、該印刷物が対応トレイから一時的に回収された場合である。ケース6では、2回目の回収の際にはカウント値(10)が閾値CTH(9)より大きいため、カウント値が初期化される。よって、仮に、回収された計10枚の印刷物をユーザuが再び対応トレイに戻したときには、該対応トレイ上には積載上限値を超える数量の印刷物が積載されることになる。
しかしながら、前述のとおり、閾値CTHはユーザu等によって予め設定されており、閾値CTHの値が適切な値でない場合には、閾値CTHを適切な値に設定又は変更すればよい。ここで、ユーザが印刷物の一部を積層トレイから回収して、戻す場合としては、例えば、ユーザuが印刷物の一部によりその出来栄えや品質を確認する場合が挙げられる。1つの印刷ジョブが複数部の印刷である場合、例えば、ユーザuは一部目の印刷物を確認する場合がある。このような使用方法が多い場合は、比較的多い枚数を取り出すこともあるため、閾値CTHを高めに設定すればよい(ケース5の場合は閾値CTHを20以上に設定する)。また、ケース6のように、ユーザが複数回確認をして、印刷物を戻すことが多い場合も、CTHを高めに設定すればよい(ケース6では、閾値CTHを10以上に設定する)。
図11は、閾値CTHの設定方法の例を説明するための図である。本実施形態では、ユーザuは、前述の操作部15(図1〜2参照)で、閾値CTHを設定することができるものとする。画面1001は、操作部15の表示手段の一例である。画面1001には、現在設定中の閾値CTHを示す部分1003と、閾値CTHを変更するための部分1004と、が表示されている。画面1001には、例えば、「カウント値の初期化用パラメータを設定してください」等のメッセージを表示して、ユーザの閾値CTHの設定を促す。ユーザuは、部分1004を操作して閾値CTHを変更することができる。この操作は、キーボード等による入力によって為されてもよいし、タッチパネル等による入力によって為されてもよい。決定ボタンが押下されると、閾値CTHが設定される。なお、画面1001は、所定のタイミングで(例えば、印刷実行前に)表示するようにしてもよいし、操作部15やホスト装置16から、閾値CTHを設定するユーザ指示を受信した場合に表示するようにしてもよい。
以上、本例によると、装置100は、前述の第1の事例および第2の事例の双方に対応可能なカウント値の初期化制御を行うことができる。
前述の第1の実施例では、ケース5およびケース6に対して、初期化を実行するための閾値CTHを変更する方法を例示したが、他の方法が為されてもよい。
第2の実施例では、記録装置100は、対応トレイのカウント値が初期化された後に該対応トレイに外部から印刷物が積載された場合には、実行中の印刷を中断する。これにより、対応トレイのカウント値の初期化が為された後にユーザu等が印刷物を対応トレイに戻した場合でも、過積載状態の対応トレイに印刷物が出力される事態を回避することができる。
例えば、装置100は、トレイ302等に外部から印刷物が積載されたことを検知するための検知手段と、該検知に応答して印刷物の出力を停止(又は中断)する停止手段と、をさらに備える。
上記検知手段は、例えば、トレイ302等の上の印刷物の数量の変化を検知するセンサ(レーザーセンサ等)でもよいし、トレイ302等の上の印刷物の重量の変化を検知するセンサ(感圧素子等)でもよい。また、トレイ302等に印刷物を積載するユーザの動作を検知するセンサ(赤外線センサ等)でもよい。
また、装置100は、停止手段に代わりに、又は、停止手段を備えると共に、アラームを発生する手段をさらに備えていてもよい。
前述の第1の実施例において、カウント値が初期化された場合であっても所定条件を満たす場合には、該カウント値の初期化が取り消されるように制御されてもよい。
第3の実施例では、印刷動作中にユーザuにより印刷物が回収されてカウント値が初期化された後、所定時間内に該印刷物が再びトレイ302等に戻された場合に、該カウント値の初期化が取り消される。
上記所定時間は、初期化を実行するための閾値CTHに基づいて定められればよい。前述のとおり、閾値CTHは、積載上限値よりも小さい所定値であり、ユーザu等によって予め設定される。上述の所定時間としては、例えば、閾値CTHに定数を乗じて得られる値を用いてもよい。所定時間が経過したか否かの判断は、例えばタイマー等の計測手段を用いて為されればよい。
これにより、印刷物を回収した際に、ユーザuの不測の理由によってカウント値が初期化された場合にも、過積載状態のトレイ302等に印刷物が出力される事態が回避されうる。なお、不測の理由としては、例えば、閾値CTHが他のユーザにより変更されていたことや、他のユーザに間違えて回収されること等が挙げられる。
カウント値の初期化の取り消しは、例えば、一旦回収された印刷物がトレイ302等に戻されたときのカウント値に、該回収された時点でのカウント値を加算することによって為されればよい。印刷物が回収された時点でのカウント値は、該回収された時点で、例えば前述のRAM203(図2参照)に保持されればよく、所定時間経過後に削除するようにすればよい。
ユーザuによりトレイ302等に外部から印刷物が積載されたことを検知するために、装置100は、例えば、前述の第2の実施例と同様の検知手段をさらに備えてもよい。
また、装置100は、印刷物を回収したユーザuを検知する他の検知手段をさらに備えてもよい。これにより、例えば、印刷物を回収したユーザuと印刷物をトレイ302等に積載するユーザとが同一か否かを検知することも可能である。装置100は、印刷物を回収したユーザuとは異なる他のユーザがトレイ302等に他の印刷物を積載した場合には、実行中の印刷を中断することができるようにしてもよいし、アラームを発生することができるようにしてもよい。
本発明は上述した例に限定されるものではない。以上の各例では、記録装置100が1つの印刷ジョブを受けた場合について述べたが、2以上の印刷ジョブを受けた場合についても同様である。例えば、表紙と中身とを同一のトレイ302等に出力し、商材として1つにまとめる場合、表紙と中身とには、用紙の大きさや種類が互いに異なるものが用いられ、互いに異なる印刷ジョブで管理されることがある。そのため、表紙と中身とを1つのトレイに出力する場合には、複数の印刷ジョブにより同一のトレイ302等に印刷物が出力されるようにしてもよい。また、1つの印刷ジョブで、複数の部数の印刷を行う場合(例えば、1部あたり30ページの印刷物を40部、出力する場合)についても同様である。このように、カウント値の初期化制御は、ジョブ数や部数にかかわらず適用可能である。
ここで、印刷ジョブに基づく印刷を実行する際のトレイの選択方法について説明する。図12は、CPU201がROM202又はHDD204に格納されたプログラムをRAM203にロードして実行する処理の流れであり、複数のトレイ302等から1つを選択する方法を説明するためのフローチャートである。前述のとおり(図1、2及び4参照)、トレイユニット301に搬送された印刷物は、例えば主制御部13Cにより決定されたトレイ302〜305のいずれかまで搬送され、該決定されたトレイ上に積載される。
S401では、センサ306及び307を用いて、各トレイ302等のうち使用可能なトレイが有るか判定する。使用可能なトレイが有った場合には、そのうちの1つを選択してS402に進み、使用可能なトレイが無かった場合にはS405に進む。
選択されるトレイは、各トレイ302等のうち、印刷物のサイズ等の所定の基準に基づいて使用が可能なものである。また、各トレイ302等には、予め優先度が設定されていてもよく、複数のトレイ302等が使用可能な場合には優先度が高いものから選択されるようにしてもよい。また、各トレイ302等のうち、そのカウント値が0のもの(又は、積載上限値に達していないもの)が優先的に選択されてもよい。
S402では、選択されたトレイに1枚の印刷物を出力してカウント値に1を加算すると共に、印刷ジョブに基づく印刷物の出力が完了したか(全ての印刷物が出力されたか)の判断を行う。印刷物の出力が完了していない場合にはS403に進む。
S403では、選択されたトレイのカウント値(S402で1が加算されたカウント値)が、その積載上限値に達したか否かの判断を行う。カウント値が積載上限値以上の場合にはS404に進み、カウント値が積載上限値よりも小さい場合にはS402に戻る。
S404では、選択されたトレイが使用不可になったものと判断して、他のトレイを新たに選択し、S402に戻る。
S405では、複数のトレイ302等の全てが使用不可(トレイフルエラー)であったものとして、いずれかのトレイが使用可能になるまで待機する。その後、いずれかのトレイが使用可能になった場合には、エラーを解除し、S401に戻る。
複数のトレイ302等から1つを選択する方法は、上述の方法に限られるものではなく、機能等に応じて、その一部が変更されてもよいし、他の方法であってもよい。
図13は、CPU201がROM202又はHDD204に格納されたプログラムをRAM203にロードして実行する処理の流れであり、カウント値が閾値CTHよりも大きくなった場合のユーザへの通知方法を説明するためのフローチャートである。前述のとおり、カウント値が閾値CTHよりも大きくなった後にトレイ302等から印刷物が回収された場合、該トレイ302等のカウント値が初期化される。
S501では、搬送路CPSUBに対応して配されたセンサ306が、該搬送路CPSUBを印刷物が通過したか否かを検知する。センサ306が、搬送路CPSUBを印刷物が通過したことを検知した場合には、S502に進む。
S502では、対応トレイのカウント値に1を加算して、S503に進む。
S503では、対応トレイのカウント値と閾値CTHとを比較する。カウント値が閾値CTHよりも大きい場合には終了し、小さい場合にはS504に進む。
S504では、対応トレイから印刷物が回収されても該対応トレイのカウント値が初期化されないことを、ユーザuに通知する。該通知は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示部にその旨を表示することによって為されてもよいし、LED等の点灯ないし点滅によって為されてもよい。
図14を参照しながら、記録装置100(の各トレイ302等)の状態をユーザに通知するための通知手段の例を述べる。装置100は所定の通知手段を備えており、該通知手段によって、印刷物の回収によりカウント値が初期化されることをユーザに通知する。ここでは、通知方法の1つの例として、LEDの点灯ないし点滅による表示方法の例を示している。
緑色のLED1301の点灯は、例えば、トレイ302等への印刷物の出力が完了した状態であることを示す。また、緑色のLED1301の点滅は、例えば、トレイ302等に印刷物を出力している途中の状態であることを示す。
赤色のLED1302の点灯は、例えば、トレイ302等の選択エラーが発生している状態であることを示す。また、赤色のLED1302の点滅は、例えば、ジャム等が生じたことによってトレイ302等に印刷物を出力できない状態であることを示す。
橙色のLED1303の点灯は、例えば、トレイ302等が実行中の印刷ジョブに基づく印刷物が出力される予定のトレイであることを示す。これにより、その時点でトレイ302等の上に印刷物が積載されていない場合でも、ユーザuは、その後、該トレイ302等に他のユーザの印刷物が出力されることを知ることができる。また、橙色のLED1303の点滅は、例えば、ユーザuがユーザインターフェース上で選択した印刷ジョブに対応するトレイであることを示す。これにより、ユーザuは、印刷ジョブが、トレイ302等のうちのいずれのトレイに割り当てられたかを確認することができる。
青色のLED1304の点灯は、例えば、割り込みジョブが実行されている状態であることを示す。なお、トレイから印刷物が取られるまで点灯は継続する。青色のLED1304の点滅は、例えば、トレイ302等から印刷部が回収されてもカウント値が初期化されない状態であることを示す。
よって、ユーザuは、青色のLED1304が点滅している間に、トレイ302等から印刷物を一時的に回収し、その品質等の確認を行った後に、該印刷物をトレイ302等に戻すことで、カウンタがクリアされないことを認識することができる。一方、ユーザuは、青色のLED1304が点滅していないときには、印刷物を回収することによってトレイ302等のカウント値が初期化されることを認識することができる。
上記2色〜4色のLEDの同時点滅(コンボ1305)による表示は、上記以外の通知を行う場合に用いるようにしてもよい。例えば、ユーザに印刷物を取り出すべきトレイを通知する場合に用いるようにしてもよい。また、ユーザuが、トレイ302等から該印刷物を回収すると、回収されたトレイに対応するLEDは消灯する。
LEDの点灯ないし点滅による表示方法は、上記例に限られるものではなく、各表示は他の状態を示してもよい。例えば、青色のLED1304の点滅は、例えば、トレイ302等から印刷部が回収されてもカウント値が初期化されない状態を示すのではなく、対応トレイから印刷物が回収されると対応トレイのカウント値が初期化されることを示すようにしてもよい。また、上記通知方法や通知手段に代わって、他の通知方法や他の通知手段の構成が採られてもよい。
前述のカウント制御およびカウント値の初期化制御は、主制御部13Cによって為されてもよいが、別途設けられた専用のユニットによって為されてもよい。また、上述の制御方法は、記録装置100の各ユニットの機能を実現するプログラム(ないしソフトウェア)が、ネットワークや記憶媒体を介して、コンピュータ(又はCPU、MPU等)によって読み出され、実行されることによって為されてもよい。また、プログラムは、1つのコンピュータで実行させても、複数のコンピュータを連動させて実行させるようにしてもよい。また、上記した処理の全てをソフトウェアで実現する必要はなく、処理の一部または全部をASIC等のハードウェアで実現するようにしてもよい。また、CPUも1つのCPUで全ての処理を行うものに限らず、複数のCPUが適宜連携をしながら処理を行うものとしてもよい。
以上では、インクジェット方式により記録剤を被記録媒体に対して吐出する記録装置(又は印刷装置)の構成を例示して本発明を述べたが、記録装置は上述したものに限定されるものではない。例えば、記録装置の概念には、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタの他、記録機能以外の機能(FAX機能、スキャナ機能等)を補助的に有するマルチファンクションプリンタも含まれる。また、本願発明は、記録を主目的とする装置のみならず、記録機能を補助的に備える装置や、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置にも適用可能である。
なお、「記録」とは、文字や図形等の有意の情報を形成する記録を含む他、有意無意を問わず、広義の記録を含みうる。例えば、「記録」は、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものでなくてもよく、被記録媒体上に画像、模様、パターン、構造物等を形成する記録や、媒体の加工を行う記録をも含みうる。
また、「記録剤」とは、「インク」の他、記録を行うのに用いられる消耗品を含みうる。「記録剤」は、例えば、被記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成に用いられるものの他、被記録媒体の加工やインクの処理(例えば、被記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供される液体をも含みうる。また、被記録媒体に直接インクを付与する構成でなくてもよく、例えば、中間転写体にインクを付与した後、そのインクを被記録媒体に転写することによって記録を行う構成を採ってもよい。また、複数の種類のインクを用いたカラー記録を行う構成でなくてもよく、1種類のインク(例えば黒色)を用いたモノクロ記録を行う構成でもよい。
また、「被記録媒体」は、一般的な記録装置で用いられる紙の他、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等、記録剤を受容可能なものも含みうる。