以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態について、共通する箇所には共通の符号を付して対応させることにより、重複する説明を省略する。また、各図は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
<第1実施形態>
本実施形態の3相回転電機の波巻き巻線は、コイル導体が波巻き構成となるように巻装されており、波巻き構成は、コイル導体がヘリカル状につながる2層のヘリカル巻シート状コイル3として構成されている。まず、ヘリカル巻シート状コイル3の構成について詳説する。図1は、1本のコイルユニット1aの巻装方法を示す模式図である。(a)は、C側視における第1層および第2層のコイル導体の層渡り状態を示している。(b)は、コイル導体が巻芯に巻装された状態を示しており、(c)は、(b)において、巻芯を取り除いた状態を示している。(d)は、紙面奥側(A側)のコイル導体の巻装状態(B側からの透視図)を示しており、(e)は、紙面手前側(B側)のコイル導体の巻装状態を示している。(f)は、D側視における第1層および第2層のコイル導体の層渡り状態を示している。
コイルユニット1aは、スロットS13の位置において、紙面手前側(B側)から紙面奥側(A側)の方向に巻装されている。そして、スロットS13、S18、S25、S30およびS37において、コイルユニット1aは、巻芯の短手方向(巻芯軸に垂直な方向)に直線状に延びるコイル辺部10aが形成されている。同図のB側からA側に向けてコイル導体が巻装されるときに形成されるコイル辺部10aを往き導体部11aと呼称し、A側からB側に向けて巻装されるときに形成されるコイル辺部10aを還り導体部12aと呼称する。往き導体部11aおよび還り導体部12aは、後述するステータコア7の各スロット73に交互に挿通される。
往き導体部11aおよび還り導体部12aの同一側端部は、コイル辺部10aと一体に形成されるコイル端部20aによって接続されている。巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に平行な線分であって、スロットS13およびS18を結ぶ線分を考えると、コイル端部20aは、当該線分の垂直二等分線上で巻き曲げられて、巻き曲げ部21aが形成されている。スロットS18およびS25を結ぶ線分の垂直二等分線上、スロットS25およびS30を結ぶ線分の垂直二等分線上、並びに、スロットS30およびS37を結ぶ線分の垂直二等分線上においても同様に、コイル端部20aは巻き曲げられており、巻き曲げ部21aがそれぞれ形成されている。
同図に示すように、往き導体部11aと、5スロットピッチ分のコイル端部20aと、還り導体部12aと、7スロットピッチ分のコイル端部20aとを有するコイル導体をコイル要素4aと呼称する。そして、コイル要素4aが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されて接続された状態のコイル導体をコイルユニット1aと呼称する。コイル要素4aは、短節巻部3SWおよび長節巻部3LWを有しており、コイルユニット1aは、短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されてコイル導体が巻装されている。
ここで、短節巻部3SWとは、コイル端部20aによって接続されるコイル辺部10a間(往き導体部11aおよび還り導体部12a間)のコイル辺ピッチが1磁極ピッチより短いコイル導体部分をいう。また、長節巻部3LWとは、コイル端部20aによって接続されるコイル辺部10a間(往き導体部11aおよび還り導体部12a間)のコイル辺ピッチが1磁極ピッチより長いコイル導体部分をいう。後述するように、本実施形態では、1磁極ピッチは6スロットピッチであり、短節巻部3SWのコイル辺ピッチは5スロットピッチに設定され、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは7スロットピッチに設定されている。
図2は、ヘリカル巻シート状コイル3の1相の単位コイル分を示す模式図である。図2(a)〜(f)は、図1(a)〜(f)にそれぞれ対応しており、図2に示すスロットSは、図1に示すスロットSに対応している。破線で示すコイルユニット1bは、実線で示すコイルユニット1aを、巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に1磁極ピッチ分、移動させたものである。よって、コイルユニット1bは、スロットS19の位置において、紙面手前側(B側)から紙面奥側(A側)の方向に巻装されており、スロットS12、S19、S24、S31およびS36において、コイル辺部10bが形成されている。
コイル辺部10aと同様に、コイル辺部10bは、往き導体部11bおよび還り導体部12bを有しており、往き導体部11bおよび還り導体部12bは、ステータコア7の各スロット73に交互に挿通される。また、コイル端部20aと同様に、往き導体部11bおよび還り導体部12bの同一側端部は、コイル辺部10bと一体に形成されるコイル端部20bによって接続されており、コイル端部20bには、巻き曲げ部21bが形成されている。
同図に示すように、7スロットピッチ分のコイル端部20bと、往き導体部11bと、5スロットピッチ分のコイル端部20bと、還り導体部12bとを有するコイル導体をコイル要素4bと呼称する。そして、コイル要素4bが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されて接続された状態のコイル導体をコイルユニット1bと呼称する。コイル要素4bは、短節巻部3SWおよび長節巻部3LWを有しており、コイルユニット1bは、短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されてコイル導体が巻装されている。コイルユニット1aおよびコイルユニット1bは、シート厚さ方向に対をなしている。
図3は、ヘリカル巻シート状コイル3の3相分を示す模式図である。図3(a)〜(f)は、図1(a)〜(f)および図2(a)〜(f)にそれぞれ対応しており、図3に示すスロットSは、図1および図2に示すスロットSに対応している。図4は、図3のIV−IV断面図を示している。本実施形態では、実線で示すコイル要素4aと破線で示すコイル要素4bとを一対として、一対のコイル要素4a、4bが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されている。
例えば、図4に示すように、スロットS13の第2層とスロットS18の第1層との間でコイル要素4aが形成され、これと対になるコイル要素4bは、スロットS12の第1層とスロットS19の第2層との間で形成されている。同様にして、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に1スロットピッチ進んだスロットS14の第2層と、スロットS19の第1層との間でコイル要素4aが形成され、これと対になるコイル要素4bは、スロットS13の第1層とスロットS20(図示略)の第2層との間で形成されている。同図に示すように、シート厚さ方向に隣接するコイル辺部10a、10bが密着するように加圧成形されると、コイル辺部10a、10bは、巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に2層に亘って整列する。
図1〜図3に示すように、紙面奥側(A側)に形成されるコイル辺部10aおよびコイル辺部10bを第1層と呼称し、紙面手前側(B側)に形成されるコイル辺部10aおよびコイル辺部10bを第2層と呼称する。図1〜図3の(a)および(f)は、第1層および第2層におけるコイル導体の層渡り状態を示している。これらの図では、層間を接続する部分が最短となるようにコイル導体の層渡り状態を模式的に図示している。なお、コイルユニット1a、1bがステータコア7に取り付けられた際には、巻芯の長手方向(巻芯軸方向)は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に相当する。
本実施形態では、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、U相(通電方向関係:順方向U1)、U相(通電方向関係:順方向U2)、W相(通電方向関係:逆方向W1)、W相(通電方向関係:逆方向W2)、V相(通電方向関係:順方向V1)、V相(通電方向関係:順方向V2)、U相(通電方向関係:逆方向U1)、U相(通電方向関係:逆方向U2)、W相(通電方向関係:順方向W1)、W相(通電方向関係:順方向W2)、V相(通電方向関係:逆方向V1)、V相(通電方向関係:逆方向V2)の順に巻線が形成されている。なお、図4では、相*を用いて通電方向が逆方向であることを示しており、以下同様に図示する。
同相のコイル辺部10aまたは10bが可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に2本隣接しており、同相コイルの巻線単位は4本からなる。後述するように、同相のコイルユニット1a、1b、1a、1bは、3相回転電機の駆動時に流れる電流方向が一致するように接続されており、12本の巻線単位からなる3相巻線が構成されている。なお、同図に示すように、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の隣接する各コイル辺部間は、ステータコア7のステータコア磁極72を収容可能に所定間隔1W離間されている。
図5は、3相回転電機の相構成を示す模式図である。本実施形態では、X1相(XはU、V、Wのいずれか。以下同じ。)のコイルユニット1aと、X1相のコイルユニット1bとが直列接続されて相単位コイル5X1が形成されている。また、X2相のコイルユニット1aと、X2相のコイルユニット1bとが直列接続されて相単位コイル5X2が形成されている。相単位コイル5X1、5X2は直列接続されて、相コイル6Xが形成されている。なお、本実施形態では、相コイル6Xの周方向長がステータの周方向長の自然数倍になるステータ周倍の波巻き構成になっている。また、同図では、X相端子を5TXで示し、中性点を5Nで示している。
図6は、ヘリカル巻シート状コイル3の接続状態を示す模式図である。同図は、シート厚さ方向視におけるシート両端部の巻線の接続状態を示している。(a)〜(c)は、順にU相、V相、W相の1相分の接続状態を示しており、(d)は、3相分の接続状態を示している。同図では、説明の便宜上、コイルユニット1aを実線で示し、コイルユニット1bを破線で示して区別しているが、実際は一体に形成されている。また、図中の数字*は、相端子5TXから中性点5Nまでの巻線の接続順を示している。以下、同図(a)に基づいてU相を例に説明するが、V相およびW相についても同様である。
相単位コイル5U1は、U相端子5TUを起点にして矢印F12方向に巻装された後(実線で示すU1相のコイルユニット1aに相当。1*〜7*)、コイル引回し点5RU1で巻き返されて矢印F11方向に巻装されており(破線で示すU1相のコイルユニット1bに相当。8*〜15*)、接続点5JU1に接続されている。相単位コイル5U2は、接続点5JU1を起点にして矢印F12方向に巻装された後(実線で示すU2相のコイルユニット1aに相当。16*〜22*)、コイル引回し点5RU2で巻き返されて矢印F11方向に巻装されており(破線で示すU2相のコイルユニット1bに相当。23*〜30*)、中性点5Nに接続されている。相単位コイル5U1および相単位コイル5U2は、直列接続されており、相コイル6Uが形成されている。
相単位コイル5U1、5U2は、反相端子5TU側(矢印F12方向側)のシート端部で巻線が引回されており、反相端子5TU側(矢印F12方向側)のシート端部に接続点を有しない。そのため、反相端子5TU側(矢印F12方向側)のシート端部でコイルユニット1a、1bを接続する場合と比べて、コイル端部20a、20bをコンパクトにすることができる。なお、巻線を引回す代わりに、反相端子5TU側(矢印F12方向側)のシート端部でコイルユニット1a、1bを接続することもできる。この場合は、コイルユニット1a、1bをそれぞれ巻装した後に互いの端部同士を接続することができるので、巻線を引回す場合と比べて、製作が容易である。
また、同図に示すように、本実施形態の波巻き巻線は、可動子磁極の移動方向の一端側(矢印F11方向側)に設けられる相端部5Tから巻き始められ、短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されて可動子磁極の移動方向の他端側(矢印F12方向側のシート端部)まで巻装されている。そして、可動子磁極の移動方向の他端側(矢印F12方向側のシート端部)の長節巻部3LWは、全節巻部3FWに接続されて巻き返されている。なお、相端部5Tとは、3相の各相端子5TU、5TV、5TWを引き出す部分をいう。
全節巻部3FWは長節巻部3LWに接続されて、短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されて可動子磁極の移動方向の一端側(矢印F11方向側のシート端部)まで巻装されている。なお、全節巻部3FWとは、コイル端部20aによって接続されるコイル辺部10a間のコイル辺ピッチが1磁極ピッチであるコイル導体部分をいう。コイル端部20bについても同様である。
本実施形態の波巻き巻線は、可動子磁極の移動方向の他端側(矢印F12方向側のシート端部)で、全節巻部3FWを介して可動子磁極の移動方向の一端側(矢印F11方向側)に巻き返される。これによって、短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されて波巻き構成が為される波巻き巻線において、可動子磁極の移動方向の一端側(矢印F11方向側)から他端側(矢印F12方向側)への巻装と、可動子磁極の移動方向の他端側(矢印F12方向側)から一端側(矢印F11方向側)への巻装とを併存させることができる。
図7は、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7のスロット73に装着された状態を示す部分断面図である。同図に示すように、ステータコア7は、ステータコア7の周方向に延在するステータコアヨーク71と、ステータコアヨーク71からステータコア7の軸芯方向に突出する複数のステータコア磁極72と、を有している。また、ステータコア磁極72、72の間には、ヘリカル巻シート状コイル3のコイル辺部10a、10b(往き導体部11a、11b、還り導体部12a、12b)を収容可能にスロット73が形成されており、コイル辺部10a、10bは、スロット73に収容されている。なお、同図では、説明の便宜上、4層分のコイル辺部10a(往き導体部11a、還り導体部12a、往き導体部11a、還り導体部12a)が記載されているが、スロット73は、巻き重ねられる周回分のコイル辺部10a、10bを収容することができる。
ステータコア磁極72の先端部721は、ステータコア7の周方向に幅広になっており、可動子8と対向している。可動子8は、同図に示す可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に回転可能に支持されている。本実施形態の波巻き巻線は、可動子8およびステータコア7がステータの径方向に同芯に配されるラジアル空隙型の円筒状回転電機として用いることができる。なお、同図では、1つのスロット73について図示しているが、スロット73は、ステータコア7の周方向に所定磁極数分、形成されており、コイル辺部10a(往き導体部11a、還り導体部12a)は、ステータコア7の各スロット73に交互に挿通されている。コイル辺部10b(往き導体部11b、還り導体部12b)についても同様である。
コイル端部20aは、スロット73の深さ方向(矢印H1方向)において異なる位置に配されるスロット底部側(矢印H11方向側)のコイル辺部10a(還り導体部12a)とスロット開口部側(矢印H12方向側)のコイル辺部10a(往き導体部11a)とを交互に接続して、スロット底部側(矢印H11方向側)のコイル辺部10a(還り導体部12a)とスロット開口部側(矢印H12方向側)のコイル辺部10a(往き導体部11a)とが、スロット73の深さ方向(矢印H1方向)の2層分を占有している。コイル端部20b、コイル辺部10b(往き導体部11b、還り導体部12b)についても同様である。
本実施形態では、2極12スロットを基本構成とする3相回転電機であり、毎極毎相スロット数は2である。つまり、本実施形態では、スロット73は、毎極毎相スロット数が整数である整数スロットである。また、スロット73は、単相スロット731と複相スロット732とを有している。ここで、単相スロット731とは、1つのスロット73内において3相のうちの単一相のコイル辺部10a、10bが収容されるスロットをいう。一方、複相スロット732とは、1つのスロット73内において3相のうちの複数相のコイル辺部10a、10bが収容されるスロットをいう。
図8は、スロット73の相配置を示す図である。破線で囲まれたスロット73は、複相スロット732を示しており、破線で囲まれていないスロット73は、単相スロット731を示している。同図に示すように、本実施形態では、単相スロット731と複相スロット732とが可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に交互に繰り返されており、単相スロット731と複相スロット732とが混在している。
また、同図では、U1相のコイルユニット1aの接続順を、反相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F12方向)に延びる矢印で示し、U1相のコイルユニット1bの接続順を、相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F11方向)に延びる矢印で示している。同図に示すように、図6の矢印A1方向側視に短節巻部3SWを有しており、同図の矢印A2方向側視に長節巻部3LWを有している。
ここで、毎極毎相スロット数から1を減じた数以下の自然数をピッチ規定量とする。本実施形態では、毎極毎相スロット数は2であるので、ピッチ規定量は、1スロットピッチにする。そして、短節巻部3SWのコイル辺ピッチは、毎極スロット数(本実施形態では6)から上記ピッチ規定量(1スロットピッチ)を減じた数に設定する。この場合、短節巻部3SWのコイル辺ピッチは、5スロットピッチにする。一方、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは、毎極スロット数(本実施形態では6)に上記ピッチ規定量(1スロットピッチ)を加えた数に設定する。この場合、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは、7スロットピッチにする。
本実施形態では、短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されて波巻き構成が為されており、単相スロット731と複相スロット732とが混在している。短節巻部3SWおよび長節巻部3LWが重塁することで、単相スロット731のみとなる全節巻部3FWのみの場合と比べて、電機子巻線の起磁力分布は正弦波に近づく。その結果、波巻き構成の電機子巻線を有する3相回転電機において、電機子巻線の起磁力分布における高調波成分を低減することができる。
一方、トルク定数は、巻線係数、磁束数および巻数を乗じて導出することができ、巻線係数は、短節巻係数および分布巻係数を乗じて導出することができる。本実施形態では、毎極毎相スロット数2から1を減じた数以下の自然数である1をピッチ規定量として、短節巻部3SWのコイル辺ピッチは、毎極スロット数6から上記ピッチ規定量(1スロットピッチ)を減じた数に設定され、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは、毎極スロット数6に上記ピッチ規定量(1スロットピッチ)を加えた数に設定されている。そのため、全節巻部3FWとのコイル辺ピッチ差が大きくなりすぎ、巻線係数が低下することによる出力トルクの低下を抑制することができる。よって、3相回転電機の高効率化、小型化および低コスト化を図ることができる。
また、本実施形態では、コイル端部20aは、スロット73の深さ方向(矢印H1方向)において異なる位置に配されるスロット底部側(矢印H11方向側)のコイル辺部10a(還り導体部12a)と、スロット開口部側(矢印H12方向側)のコイル辺部10a(往き導体部11a)とを接続する。これにより、コイル端部20aをコンパクトにしつつ、隣接するコイル端部20aとの干渉を回避することができる。これらのことは、コイル端部20bについても同様である。
さらに、図6に示すように、隣接するコイル端部20aは、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)、3相回転電機の軸方向(同図の紙面上において、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に直交する矢印G1方向)およびスロット73の深さ方向(同図の紙面に直交する矢印H1方向)の方向毎に略等距離になるように配されている。また、コイル端部20aは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)両端のコイル端部高さ5H11、5H12がそれぞれ略均一になるように形成されている。
そのため、コイル端部20a同士の重なりを3次元的に、きめ細かく回避することができ、コイル端部20aの占積率が向上してコイル端部20aの占有スペースを小さくすることができる。また、コイル端部20aを短くしてコンパクトにできるので、漏れリアクタンスを減少させることができる。これらのことは、コイル端部20bについても同様である。
なお、ヘリカル巻シート状コイル3は、2層のうちの一方の層(第2層)が他方の層(第1層)に対して、反相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F12方向)に、長節巻部3LWのコイル辺ピッチ分(7スロットピッチ分)、移動した状態に形成されている。そのため、ヘリカル巻シート状コイル3を備える3相回転電機において、単相スロット731と複相スロット732とを混在させることが容易であり、電機子巻線の起磁力分布における高調波成分を低減することができる。
次に、ヘリカル巻シート状コイル3の巻線(コイル導体ともいう)について説明する。巻線は、導体表面がエナメルなどの絶縁層で被覆されている。巻線の断面形状は、特に限定されるものではなく、任意の断面形状とすることができる。例えば、断面円形状の丸線、断面多角形状の角線などの種々の断面形状の巻線を用いることができる。また、複数のより細い巻線素線を組み合わせた並列細線でも良い。並列細線を用いる場合、単線の場合と比べて巻線に発生する渦電流損を低減させることができ、3相回転電機の効率が向上する。また、コイル成形に要する力を小さくすることができるので、成形性が向上してコイル製作が容易になる。
コイルユニット1a、1bは、例えば、巻芯に巻線をヘリカル状に巻装して成形することができる。巻線は、1本毎に巻芯に巻装しても複数本を同時に巻装しても良い。コイル辺ピッチを確保するために、巻芯にピンや溝等を設けて、ピンや溝をガイドにして巻装することもできる。そして、図3に示すように、すべての巻線を巻装後に巻芯を巻線から取り除き、一対のコイルユニット1a、1bを形成するコイル辺部10a、10bが紙面垂直方向に隣接して密着するように加圧成形する。加圧成形の際に巻線が損傷する場合を考慮して、加圧成形後に補修用の樹脂コーティング等を施しても良い。
次に、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7のスロット73に装着する方法の一例を説明する。まず、ヘリカル巻シート状コイル3を渦巻き状に巻き上げて、ステータコア7の内周側(図7に示すスロット開口部側(矢印H12方向側))に収容し、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3の外周側シートから巻きほどきながらステータコア7のスロット73に取り付ける。ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7のスロット73に装着後は、相端子5TXにおける接合および引き出し処理ならびに中性点5Nにおける接合を行う。そして、3相分の接合後に接合部を絶縁処理して、ワニスの含浸、樹脂モールド等によって巻線をステータコア7に固定する。
図9は、ヘリカル巻シート状コイル3を示す模式図である。(a)は、相端子5TX側からのコイル辺部方向視におけるヘリカル巻シート状コイル3を示し、(b)は、相端子5TX側からの3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)視におけるヘリカル巻シート状コイル3を示している。同図(a)では、2層のヘリカル巻シート状コイル3を模式的に示しており、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7のスロット73に装着されたときに、スロット底部側(矢印H11方向側)に配される層を実線で示し、スロット開口部側(矢印H12方向側)に配される層を破線で示している。なお、スロット底部側(矢印H11方向側)は、適宜、ステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)といい、スロット開口部側(矢印H12方向側)は、適宜、ステータコア7の内周側という。
本明細書では、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)のヘリカル巻シート状コイル3のシート端部であって、コイル導体を巻き始める部分をコイル導体巻始め部3Sとする。本実施形態では、コイル導体巻始め部3Sは、6本のコイル辺部を有している。同図では、コイル導体巻始め部3S側の2層の端部を白色丸印および白色三角印で示している。また、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)のヘリカル巻シート状コイル3のシート端部であって、コイル導体が巻き返される部分をコイル導体巻き返し部3Rとする。コイル導体巻き返し部3Rは、2磁極ピッチ分のコイル導体であり、本実施形態では17本のコイル辺部を有している。同図では、コイル導体巻き返し部3R側の2層の端部を黒色丸印および黒色三角印で示している。
同図(b)に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着したとき、ヘリカル巻シート状コイル3とステータコア7のスロット底部との間に隙間SP1が生じている。また、ヘリカル巻シート状コイル3のシート両端部において、シート間に隙間SP2、SP3が生じている。なお、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の径方向内周側に滑らかに乗り上げるように巻き重なり、ヘリカル巻シート状コイル3の外周側シートとステータコア7のスロット底部との間の隙間は、同図に示す隙間SP1で最大になる。
図10は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す模式図である。(a)は、シート側面方向視(同図(b)に示す矢印A1方向視)におけるコイル導体の層渡り状態を示している。(b)は、シート厚さ方向視におけるシート両端部の巻線の接続状態を示しており、図6(d)と同じである。(c)は、シート側面方向視(同図(b)に示す矢印A2方向視)におけるコイル導体の層渡り状態を示している。なお、同図(a)、(c)は、層間を接続する部分が最短となるようにコイル導体の層渡り状態を模式的に示している。また、同図(a)、(b)では、相端子5TXとの接続を併せて示している。なお、相内を接続する配策および相間を接続する配策は、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)およびスロット73の深さ方向(矢印H1方向)のうちの少なくとも一方向で、干渉回避を行うことができる。
同図(a)、(c)に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータの周方向長の4倍の波巻き構成になっている。説明の便宜上、2層のヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)から順に、第1層、第2層、...、第9層、第10層で表されている。これにより、ステータコア7のスロット73内で径方向に巻き重なる周回を区別している。
コイル導体は、第1層のコイル導体巻始め部3Sから巻き始められ、第2層の第1コイル辺部群3G1に巻き回されて、第1層の第2コイル辺部群3G2に巻き回されている。同図(a)に示すように、コイル導体巻始め部3Sは、U相端子5TUおよびV相端子5TVが引き出される2本のコイル辺部を含む6本のコイル辺部を有しており、6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されている。
第1コイル辺部群3G1は、コイル導体巻始め部3Sから巻き回された6本のコイル辺部を有しており、6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かって巻き回されている。また、第2コイル辺部群3G2は、第1コイル辺部群3G1から巻き回された6本のコイル辺部を有しており、6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かって巻き回されている。以降、同様にして、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、第2層、第1層、第2層、第1層と繰り返しながら、6本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されている。
ステータコア7の径方向において、第2層の第1コイル辺部群3G1と隣接する第1層のコイル辺部群を第3コイル辺部群3G3とする。第3コイル辺部群3G3は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)において、コイル導体巻始め部3Sおよび第2コイル辺部群3G2と隣接しており、W相端子5TWが引き出される1本のコイル辺部を含む6本のコイル辺部を有している。なお、同図では、ステータの周方向1周分のヘリカル巻シート状コイル3を太線の境界線L1で示し、起点をシート始め3H1、1周分の終点をシート1周終り3T1で示している。
本明細書では、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3において、コイル導体巻始め部3Sからコイル導体巻き返し部3Rに掛けてステータコア7の径方向内周側に乗り上げるように巻き重なる2磁極ピッチ分のコイル導体をシート乗り上げ部3Aとする。シート乗り上げ部3Aにおける隙間SP1〜SP3は、図9(b)に示す隙間SP1〜SP3に対応している。
また、図10では、コイル導体巻き返し部3Rにおける巻線(V2相)の引回し順序を数字*で示している。2*〜3*において、実線で示すV2相のコイルユニット1aから破線で示すV2相のコイルユニット1bにつなぎ替えられており、巻線が引き回されている層(以下、巻線の引き回しレーンという。)は、第10層から第9層に変更されている。巻線の引き回しレーンは、4*〜5*において、第9層から第10層に変更され、7*〜8*において、第10層から第9層に変更され、11*〜12*において、第9層から第10層に変更されている。このように、一旦、ステータコア7の外周側の隙間SP3上部へ巻線の引き回しレーンを変更し、コイル端部高さ方向のステータコア7近傍で、もとの引き回しレーンに戻されている。V2相以外の他の相についても同様である。
同図(a)に示すように、第2層の第1コイル辺部群3G1は、第1層のコイル導体巻始め部3Sに対して、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に7スロットピッチ分、移動している。そして、第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部と、第2コイル辺部群3G2の6本のコイル辺部との間において、同相のコイル辺部間のコイル辺ピッチは、5スロットピッチになっている。つまり、波巻き巻線は、矢印A1方向側に短節巻部3SWを有している。
一方、同図(c)に示すように、コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部と、第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部との間において、同相のコイル辺部間のコイル辺ピッチは、7スロットピッチになっている。つまり、波巻き巻線は、矢印A2方向側に長節巻部3LWを有している。なお、同図では、U1相のコイル辺部間のコイル辺ピッチを図示している。
本実施形態では、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、第1層、第2層、第1層、第2層と繰り返しながら、6本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されるので、波巻き巻線は、同図(b)に示す矢印A1方向側に短節巻部3SWを有し、矢印A2方向側に長節巻部3LWを有している。つまり、短節巻部3SWのコイル端部と長節巻部3LWのコイル端部とは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)両端に分離して配されている。
3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)一端側(矢印A1方向側)のコイル端部の高さをコイル端部高さ5H11とし、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)他端側(矢印A2方向側)のコイル端部の高さをコイル端部高さ5H12とする。図6に示すように、コイル端部高さ5H11は、U2相のコイルユニット1bの占有分と、W1相のコイルユニット1aの占有分と、W2相のコイルユニット1aの占有分と、W2相のコイルユニット1aの立ち上りの0.5スロットピッチ分と、を加算した高さになる。なお、立ち上り方向は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の一端側の相端部5T側視において、コイル辺部10aから3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)外方に離れていくコイル端部20aの方向をいう。コイル端部20bについても同様であり、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の他の位置においても同様である。
一方、コイル端部高さ5H12は、U1相のコイルユニット1aの占有分と、V1相のコイルユニット1bの占有分と、V2相のコイルユニット1bの占有分と、W2相のコイルユニット1aの占有分と、U1相のコイルユニット1aの立ち上りの0.5スロットピッチ分と、を加算した高さになる。可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の他の位置においても同様である。よって、コイル端部高さ5H11は、コイル端部高さ5H12と比べて低くなっている。
本実施形態では、相端部5Tおよび引き回し部分5DWは、短節巻部3SWのコイル端部側(図10に示す矢印A1方向側)に配されている。相端部5Tは、3相の各相端子5TU、5TV、5TWが引き出される部分であり、引き回し部分5DWは、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の一端側であって相端部5T側の短節巻部3SWおよび長節巻部3LWにおける引き回し部分をいう。
具体的には、引き回し部分5DWは、接続点5JU1近傍のU1相のコイルユニット1bおよびU2相のコイルユニット1aと、接続点5JV1近傍のV1相のコイルユニット1bおよびV2相のコイルユニット1aと、接続点5JW1近傍のW1相のコイルユニット1bおよびW2相のコイルユニット1aと、U2相のコイルユニット1b、V2相のコイルユニット1bおよびW2相のコイルユニット1bから中性点5Nに接続される部分と、が含まれる。
短節巻部3SWのコイル端部は、長節巻部3LWのコイル端部と比べて3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)のコイル端部高さが低い。本実施形態では、相端部5Tおよび引き回し部分5DWは、長節巻部3LWのコイル端部と比べてコイル端部高さが低い短節巻部3SWのコイル端部側(図10に示す矢印A1方向側)に配されているので、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)長の均衡を図ることができ、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。
また、図6および図10に示すように、全節巻部3FWのコイル端部高さは、短節巻部3SWのコイル端部高さ5H11に対して、コイル端部高さ5H2分、高くなっている。以下、図11を参照しつつ、詳細に説明する。図11は、短節巻部3SWおよび全節巻部3FWのコイル端部高さを説明する図である。(a)は、全節巻部3FWのコイル端部高さを変更する前の状態を示し、図6および図10に示す状態と同じである。(b)および(c)は、全節巻部3FWのコイル端部高さを短節巻部3SWのコイル端部高さ5H11と同じ高さに変更した状態を示している。
ここで、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の一端側の相端部5T側視において、コイル辺部10aから3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)外方に離れていくコイル端部20aの立ち上り方向(矢印J1方向)と、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)との為す角を立ち上り傾斜角とする。また、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の一端側の相端部5T側視において、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)外方からコイル辺部10aに向かうコイル端部20aの立下り方向(矢印K1方向)と、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)との為す角を立下り傾斜角とする。これらのことは、コイル端部20bについても同様である。
同図(a)では、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1は、短節巻部3SWの立ち上り傾斜角θUS1と同じ角度θ1に設定されており、全節巻部3FWの立下り傾斜角θDF1は、短節巻部3SWの立下り傾斜角θDS1と同じ角度θ1に設定されている。全節巻部3FWのコイル辺ピッチ(6スロットピッチ)は、短節巻部3SWのコイル辺ピッチ(5スロットピッチ)と比べて長い。そのため、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1が、短節巻部3SWの立ち上り傾斜角θUS1と同じ角度θ1に設定されていると、全節巻部3FWのコイル端部高さは、短節巻部3SWのコイル端部高さ5H11に対して、コイル端部高さ5H2分、高くなる。
同図(b)では、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1は、短節巻部3SWの立ち上り傾斜角θUS1と比べて小さい角度θ2に設定されており、全節巻部3FWの立下り傾斜角θDF1は、短節巻部3SWの立下り傾斜角θDS1と比べて小さい角度θ2に設定されている。これにより、全節巻部3FWのコイル端部高さを、短節巻部3SWのコイル端部高さ5H11と同じ高さにすることができる。
しかしながら、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1は、短節巻部3SWの立ち上り傾斜角θUS1と比べて小さい角度θ2に設定されているので、全節巻部3FWにおいて、隣接するコイル端部20a間の距離が短くなり、コイル端部20a間の絶縁の確保の観点から好ましくない。隣接するコイル端部20b間および隣接するコイル端部20a、20b間についても同様である。なお、同図では、説明の便宜上、全節巻部3FWのコイル端部20a、20bに積み重なる短節巻部3SWのコイル端部20a、20bは、記載が省略されている。
そこで、同図(c)では、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1は、短節巻部3SWの立ち上り傾斜角θUS1と同じ角度θ1に設定され、全節巻部3FWの立下り傾斜角θDF1は、短節巻部3SWの立下り傾斜角θDS1と比べて小さい角度θ3に設定されている。このとき、コイル引回し点5RU1は、相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F11方向)に、0.5スロットピッチ分、移動している。これにより、シート端部の全節巻部3FWを含めて、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)両端のコイル端部高さをそれぞれ略均一にすることができ、全節巻部3FWの隣接するコイル端部20a間の絶縁を確保することができる。隣接するコイル端部20b間および隣接するコイル端部20a、20b間についても同様である。
図12は、図10において、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1および立下り傾斜角θDF1が変更された状態を示す模式図である。同図は、図10に示す状態から、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1および立下り傾斜角θDF1が、図11(c)に示す角度に設定された状態を示している。これにより、シート端部の全節巻部3FWを含めて、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の一端側(矢印A1方向側)のコイル端部高さは、コイル端部高さ5H11で略均一化されている。なお、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の他端側(矢印A2方向側)のコイル端部高さは、コイル端部高さ5H12で略均一になっている。
また、同図(b)に示すように、矢印RC1で示される位置において、実線で示すU1相のコイルユニット1aから破線で示すU1相のコイルユニット1bにつなぎ替えられており、巻線の引き回しレーンは、第10層から第9層に変更されている。同図(a)の破線で囲まれる領域RC11で示すように、当該つなぎ替え部分の巻線の引き回しレーン間隔は、第8層から第7層に変更される巻線の引き回しレーン間隔と同じ間隔になっている。
一方、図10(a)および(b)に示すように、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1および立下り傾斜角θDF1が変更される前は、当該つなぎ替え部分の巻線の引き回しレーン間隔は、第8層から第7層に変更される巻線の引き回しレーン間隔と比べて、0.5スロットピッチ分、広くなっている。つまり、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1および立下り傾斜角θDF1が図11(c)に示す角度に設定されて、コイル引回し点5RU1が、相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F11方向)に、0.5スロットピッチ分、移動することにより、上記つなぎ替え部分の巻線の引き回しレーン間隔を、他の巻線の引き回しレーン間隔と同じ間隔にすることができる。
以上のことは、他のコイル引回し点5RU2、5RV1、5RV2、5RW1、5RW2についても同様であり、第4層から第3層に変更される巻線の引き回しレーン間隔や第6層から第5層に変更される巻線の引き回しレーン間隔に対しても同様である。
<参考形態>
本参考形態は、第1実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3の2層の移動量が異なり、相端部5Tおよび引き回し部分5DWが、長節巻部3LWのコイル端部20a、20b側に配されている点で第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図13は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す模式図である。図13(a)〜(c)は、図10(a)〜(c)にそれぞれ対応している。図13(a)に示すように、第2層の第1コイル辺部群3G1は、第1層のコイル導体巻始め部3Sに対して、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に5スロットピッチ分、移動している。そして、第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部と、第2コイル辺部群3G2の6本のコイル辺部との間において、同相のコイル辺部間のコイル辺ピッチは、7スロットピッチになっている。つまり、波巻き巻線は、矢印A1方向側に長節巻部3LWを有している。
一方、同図(c)に示すように、コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部と、第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部との間において、同相のコイル辺部間のコイル辺ピッチは、5スロットピッチになっている。つまり、波巻き巻線は、矢印A2方向側に短節巻部3SWを有している。なお、同図では、U1相のコイル辺部間のコイル辺ピッチを図示している。
可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、第1層、第2層、第1層、第2層と繰り返しながら、6本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されるので、波巻き巻線は、矢印A1方向側に長節巻部3LWを有し、矢印A2方向側に短節巻部3SWを有している。つまり、短節巻部3SWのコイル端部と長節巻部3LWのコイル端部とは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)両端に分離して配されている。
また、波巻き巻線は、矢印A1方向側に長節巻部3LWを有し、矢印A2方向側に短節巻部3SWを有しているので、矢印A1方向側のコイル端部の高さは、第1実施形態で既述のコイル端部高さ5H12に相当し、矢印A2方向側のコイル端部の高さは、コイル端部高さ5H11に相当する。さらに、同図に示すように、相端部5Tおよび引き回し部分5DWは、長節巻部3LWのコイル端部側(矢印A1方向側)に配されている。
波巻き巻線は、可動子磁極の移動方向の一端側(矢印F11方向側)に設けられる相端部5Tから巻き始められ、短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されて可動子磁極の移動方向の他端側(矢印F12方向側のシート端部)まで巻装されている。そして、可動子磁極の移動方向の他端側(矢印F12方向側のシート端部)の短節巻部3SWは、全節巻部3FWに接続されて巻き返されている。
全節巻部3FWは短節巻部3SWに接続されて、短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されて可動子磁極の移動方向の一端側(矢印F11方向側のシート端部)まで巻装されている。つまり、本参考形態の波巻き巻線は、可動子磁極の移動方向の他端側(矢印F12方向側のシート端部)で、全節巻部3FWを介して可動子磁極の移動方向の一端側(矢印F11方向側)に巻き返される。よって、本参考形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
図14は、スロット73の相配置を示す図である。図14は、図8に対応している。本参考形態においても、単相スロット731と複相スロット732とが可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に交互に繰り返されており、単相スロット731と複相スロット732とが混在している。なお、本参考形態では、図13の矢印A1方向側視に長節巻部3LWを有しており、同図の矢印A2方向側視に短節巻部3SWを有している。
本参考形態では、第1実施形態と同様に、短節巻部3SWのコイル辺ピッチは、5スロットピッチに設定され、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは、7スロットピッチに設定されている。よって、本参考形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。また、ヘリカル巻シート状コイル3は、2層のうちの一方の層(第2層)が他方の層(第1層)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、短節巻部3SWのコイル辺ピッチ(5スロットピッチ)分、移動した状態に形成されている。このとき、図13の矢印A1方向側視に長節巻部3LWを有しており、同図の矢印A2方向側視に短節巻部3SWを有している。
一方、第1実施形態では、ヘリカル巻シート状コイル3は、2層のうちの一方の層(第2層)が他方の層(第1層)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、長節巻部3LWのコイル辺ピッチ(7スロットピッチ)分、移動した状態に形成されている。このとき、図10の矢印A1方向側視に短節巻部3SWを有しており、同図の矢印A2方向側視に長節巻部3LWを有している。このように、短節巻部3SWのコイル辺ピッチ(5スロットピッチ)または長節巻部3LWのコイル辺ピッチ(7スロットピッチ)の選択により、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)両端に分離して配される短節巻部3SWのコイル端部20a、20bおよび長節巻部3LWのコイル端部20a、20bの形成状態を変更することができる。
図13に示すように、全節巻部3FWのコイル端部高さは、長節巻部3LWのコイル端部高さ5H12に対して、コイル端部高さ5H3分、低くなっている。図15は、長節巻部3LWおよび全節巻部3FWのコイル端部高さを説明する図である。(a)は、全節巻部3FWのコイル端部高さを変更する前の状態を示し、図13に示す状態と同じである。(b)および(c)は、全節巻部3FWのコイル端部高さを長節巻部3LWのコイル端部高さ5H12と同じ高さに変更した状態を示している。図15(a)〜(c)は、図11(a)〜(c)にそれぞれ対応している。
図15(a)では、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1は、長節巻部3LWの立ち上り傾斜角θUL1と同じ角度θ3に設定されており、全節巻部3FWの立下り傾斜角θDF1は、長節巻部3LWの立下り傾斜角θDL1と同じ角度θ3に設定されている。全節巻部3FWのコイル辺ピッチ(6スロットピッチ)は、長節巻部3LWのコイル辺ピッチ(7スロットピッチ)と比べて短い。そのため、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1が、長節巻部3LWの立ち上り傾斜角θUL1と同じ角度θ3に設定されていると、全節巻部3FWのコイル端部高さは、長節巻部3LWのコイル端部高さ5H12に対して、コイル端部高さ5H3分、低くなる。
また、同図に示す10*〜11*において、V2相のコイルユニット1bおよびU1相のコイルユニット1bは、同一スロット(9*〜10*間のスロット)から突出して、同一方向(10*から11*の方向)に引き回されている。そのため、コイル端部20b間の配策が交錯しており、絶縁を確保するという観点から好ましくない。なお、数字*は、図13に示す数字*に対応しており、図15では、その一部が記載されている。
同図(b)では、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1は、長節巻部3LWの立ち上り傾斜角θUL1(角度θ3)と比べて大きい角度θ2に設定されており、全節巻部3FWの立下り傾斜角θDF1は、長節巻部3LWの立下り傾斜角θDL1(角度θ3)と比べて大きい角度θ2に設定されている。角度θ2は、図11に示す角度θ2と同じ角度である。これにより、全節巻部3FWのコイル端部高さは、長節巻部3LWのコイル端部高さ5H12と同じ高さに変更されている。よって、シート端部の全節巻部3FWを含めて、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)両端のコイル端部高さをそれぞれ略均一にすることができる。
しかしながら、10*〜11*におけるV2相のコイルユニット1bおよびU1相のコイルユニット1bの引き回し状態は、同図(a)に示す状態と略同じ状態である。そこで、同図(c)では、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1は、長節巻部3LWの立ち上り傾斜角θUL1と同じ角度θ3に設定され、全節巻部3FWの立下り傾斜角θDF1は、長節巻部3LWの立下り傾斜角θDL1と比べて大きい角度θ1に設定されている。角度θ1は、図11に示す角度θ1と同じ角度である。
このとき、コイル引回し点5RU1は、反相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F12方向)に、0.5スロットピッチ分、移動している。これにより、シート端部の全節巻部3FWを含めて、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)両端のコイル端部高さをそれぞれ略均一にすることができ、10*〜11*における全節巻部3FWの隣接するコイル端部20b間の絶縁を向上させることができる。
図16は、図13において、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1および立下り傾斜角θDF1が変更された状態を示す模式図である。同図は、図13に示す状態から、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1および立下り傾斜角θDF1が、図15(c)に示す角度に設定された状態を示している。これにより、シート端部の全節巻部3FWを含めて、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の一端側(矢印A1方向側)のコイル端部高さは、コイル端部高さ5H12で略均一化されている。なお、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の他端側(矢印A2方向側)のコイル端部高さは、コイル端部高さ5H11で略均一になっている。
また、同図(b)に示すように、矢印RC1で示される位置において、実線で示すU1相のコイルユニット1aから破線で示すU1相のコイルユニット1bにつなぎ替えられており、巻線の引き回しレーンは、第10層から第9層に変更されている。同図(a)の破線で囲まれる領域RC11で示すように、当該つなぎ替え部分の巻線の引き回しレーン間隔は、第8層から第7層に変更される巻線の引き回しレーン間隔と同じ間隔になっている。
一方、図13(a)および(b)に示すように、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1および立下り傾斜角θDF1が変更される前は、当該つなぎ替え部分の巻線の引き回しレーン間隔は、第8層から第7層に変更される巻線の引き回しレーン間隔と比べて、0.5スロットピッチ分、狭くなっている。つまり、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1および立下り傾斜角θDF1が図15(c)に示す角度に設定されて、コイル引回し点5RU1が、反相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F12方向)に、0.5スロットピッチ分、移動することにより、上記つなぎ替え部分の巻線の引き回しレーン間隔を、他の巻線の引き回しレーン間隔と同じ間隔にすることができる。
以上のことは、他のコイル引回し点5RU2、5RV1、5RV2、5RW1、5RW2についても同様であり、第4層から第3層に変更される巻線の引き回しレーン間隔や第6層から第5層に変更される巻線の引き回しレーン間隔に対しても同様である。
図17は、コイル引回し点5RU1の可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の移動量を増加させた場合を説明する図である。同図は、図15(c)において、コイル引回し点5RU1を、反相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F12方向)に、さらに0.5スロットピッチ分、移動させた状態を示している。なお、同図では、コイル引回し点5RV1近傍のV1相のコイルユニット1a、1bを併せて図示している。
コイル引回し点5RU1を、反相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F12方向)に、さらに0.5スロットピッチ分、移動すると、コイル引回し点5RU1は、V1相のコイルユニット1aに積み重なるようになり、V1相のコイルユニット1aの占有分、コイル端部高さが高くなる。同図では、コイル端部高さ5H12に対する増加分を、コイル端部高さ5H4で示している。このとき、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1は、長節巻部3LWの立ち上り傾斜角θUL1と比べて大きい角度θ4に設定され、全節巻部3FWの立下り傾斜角θDF1は、長節巻部3LWの立下り傾斜角θDL1と比べて大きい角度θ5に設定されている。
なお、コイル引回し点5RU1が、反相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F12方向)に、さらに0.5スロットピッチ分、移動するので、既述のつなぎ替え部分の巻線の引き回しレーン間隔は、第8層から第7層に変更される巻線の引き回しレーン間隔と比べて、0.5スロットピッチ分、広くなる。また、他のコイル引回し点5RU2、5RV1、5RV2、5RW1、5RW2についても同様であり、第4層から第3層に変更される巻線の引き回しレーン間隔や第6層から第5層に変更される巻線の引き回しレーン間隔に対しても同様である。
以上により、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1および立下り傾斜角θDF1が、図15(c)に示す角度に設定されて、コイル引回し点5RU1が、反相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F12方向)に、0.5スロットピッチ分、移動していると好適である。他のコイル引回し点5RU2、5RV1、5RV2、5RW1、5RW2についても同様である。
<第2実施形態>
本実施形態では、2極18スロットを基本構成とする3相回転電機であり、毎極毎相スロット数が3である点で第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図18は、ヘリカル巻シート状コイル3の接続状態を示す模式図である。図18(a)〜(d)は、図6(a)〜(d)にそれぞれ対応している。図18(a)に示すように、相単位コイル5U1は、U相端子5TUを起点にして矢印F12方向に巻装された後(実線で示すU1相のコイルユニット1aに相当。1*〜6*)、コイル引回し点5RU1で巻き返されて矢印F11方向に巻装されており(破線で示すU1相のコイルユニット1bに相当。7*〜12*)、接続点5JU1に接続されている。相単位コイル5U2は、接続点5JU1を起点にして矢印F12方向に巻装された後(実線で示すU2相のコイルユニット1aに相当。13*〜17*)、コイル引回し点5RU2で巻き返されて矢印F11方向に巻装されており(破線で示すU2相のコイルユニット1bに相当。18*〜22*)、接続点5JU2に接続されている。
相単位コイル5U3は、接続点5JU2を起点にして矢印F12方向に巻装された後(実線で示すU3相のコイルユニット1aに相当。23*〜28*)、コイル引回し点5RU3で巻き返されて矢印F11方向に巻装されており(破線で示すU3相のコイルユニット1bに相当。29*〜32*)、中性点5Nに接続されている。相単位コイル5U1、相単位コイル5U2および相単位コイル5U3は、直列接続されており、相コイル6Uが形成されている。
本実施形態の波巻き巻線は、可動子磁極の移動方向の一端側(矢印F11方向側)に設けられる相端部5Tから巻き始められ、短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されて可動子磁極の移動方向の他端側(矢印F12方向側のシート端部)まで巻装されている。そして、可動子磁極の移動方向の他端側(矢印F12方向側のシート端部)の長節巻部3LWは、全節巻部3FWに接続されて巻き返されている。
全節巻部3FWは長節巻部3LWに接続されて、短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されて可動子磁極の移動方向の一端側(矢印F11方向側のシート端部)まで巻装されている。つまり、本実施形態の波巻き巻線は、可動子磁極の移動方向の他端側(矢印F12方向側のシート端部)で、全節巻部3FWを介して可動子磁極の移動方向の一端側(矢印F11方向側)に巻き返される。よって、本実施形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
図19は、スロット73の相配置を示す図である。図19は、図8に対応している。図19に示すように、本実施形態においても、単相スロット731と複相スロット732とが混在している。また、第1実施形態と同様に、図18の矢印A1方向側視に短節巻部3SWを有しており、同図の矢印A2方向側視に長節巻部3LWを有している。
本実施形態では、2極18スロットを基本構成とする3相回転電機であり、毎極毎相スロット数は3である。よって、ピッチ規定量は、1スロットピッチまたは2スロットピッチが考えられる。本実施形態では、ピッチ規定量は、1スロットピッチにする。そして、短節巻部3SWのコイル辺ピッチは、毎極スロット数(本実施形態では9)から上記ピッチ規定量(1スロットピッチ)を減じた数に設定する。この場合、短節巻部3SWのコイル辺ピッチは、8スロットピッチにする。一方、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは、毎極スロット数(本実施形態では9)に上記ピッチ規定量(1スロットピッチ)を加えた数に設定する。この場合、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは、10スロットピッチにする。
本実施形態においても、短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されて波巻き構成が為されており、単相スロット731と複相スロット732とが混在している。また、短節巻部3SWのコイル辺ピッチは、8スロットピッチに設定され、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは、10スロットピッチに設定されている。よって、本実施形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。なお、ヘリカル巻シート状コイル3は、2層のうちの一方の層(第2層)が他方の層(第1層)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、長節巻部3LWのコイル辺ピッチ(10スロットピッチ)分、移動した状態に形成されている。
図20は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す模式図である。(a)は、シート側面方向視(同図(b)に示す矢印A1方向視)におけるコイル導体の層渡り状態を示している。(b)は、シート厚さ方向視におけるシート両端部の巻線の接続状態を示しており、図18(d)と同じである。(c)は、シート側面方向視(同図(b)に示す矢印A2方向視)におけるコイル導体の層渡り状態を示している。なお、図20(a)〜(c)は、図12(a)〜(c)にそれぞれ対応している。
本実施形態では、コイル導体巻始め部3S、第1コイル辺部群3G1、第2コイル辺部群3G2および第3コイル辺部群3G3は、それぞれ9本のコイル辺部を有しており、コイル導体巻き返し部3Rは、26本のコイル辺部を有している。図20(a)に示すように、第2層の第1コイル辺部群3G1は、第1層のコイル導体巻始め部3Sに対して、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に10スロットピッチ分、移動している。そして、第1コイル辺部群3G1の9本のコイル辺部と、第2コイル辺部群3G2の9本のコイル辺部(一部図示略)との間において、同相のコイル辺部間のコイル辺ピッチは、8スロットピッチになっている。つまり、波巻き巻線は、矢印A1方向側に短節巻部3SWを有している。
一方、同図(c)に示すように、コイル導体巻始め部3Sの9本のコイル辺部と、第1コイル辺部群3G1の9本のコイル辺部との間において、同相のコイル辺部間のコイル辺ピッチは、10スロットピッチになっている。つまり、波巻き巻線は、矢印A2方向側に長節巻部3LWを有している。なお、同図では、U1相のコイル辺部間のコイル辺ピッチを図示している。
可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、第1層、第2層、第1層、第2層と繰り返しながら、9本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されるので、波巻き巻線は、矢印A1方向側に短節巻部3SWを有し、矢印A2方向側に長節巻部3LWを有している。つまり、短節巻部3SWのコイル端部と長節巻部3LWのコイル端部とは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)両端に分離して配されている。
3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)一端側(矢印A1方向側)のコイル端部の高さをコイル端部高さ5H51とし、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)他端側(矢印A2方向側)のコイル端部の高さをコイル端部高さ5H52とする。同図に示すように、コイル端部高さ5H51は、コイル端部高さ5H52と比べて低くなっている。本実施形態では、相端部5Tおよび引き回し部分5DWは、短節巻部3SWのコイル端部側(図20に示す矢印A1方向側)に配されている。よって、本実施形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
図20では、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1および立下り傾斜角θDF1が変更された状態を示している。具体的には、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1は、短節巻部3SWの立ち上り傾斜角θUS1と同じ角度θ6に設定され、全節巻部3FWの立下り傾斜角θDF1は、短節巻部3SWの立下り傾斜角θDS1と比べて小さい角度θ7に設定されている。このとき、コイル引回し点5RU1は、相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F11方向)に、0.5スロットピッチ分、移動している。
これにより、シート端部の全節巻部3FWを含めて、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の一端側(矢印A1方向側)のコイル端部高さは、コイル端部高さ5H51で略均一化されている。なお、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の他端側(矢印A2方向側)のコイル端部高さは、コイル端部高さ5H52で略均一になっている。よって、本実施形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
また、同図(b)に示すように、矢印RC1で示される位置において、実線で示すU1相のコイルユニット1aから破線で示すU1相のコイルユニット1bにつなぎ替えられており、巻線の引き回しレーンは、第10層から第9層に変更されている。同図(a)の破線で囲まれる領域RC11で示すように、当該つなぎ替え部分の巻線の引き回しレーン間隔は、第8層から第7層に変更される巻線の引き回しレーン間隔と同じ間隔になっている。以上のことは、他のコイル引回し点5RU2、5RV1、5RV2、5RW1、5RW2についても同様であり、第4層から第3層に変更される巻線の引き回しレーン間隔や第6層から第5層に変更される巻線の引き回しレーン間隔に対しても同様である。
なお、参考形態と同様に、ヘリカル巻シート状コイル3は、2層のうちの一方の層(第2層)が他方の層(第1層)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、短節巻部3SWのコイル辺ピッチ(8スロットピッチ)分、移動した状態に形成することもできる。これにより、参考形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
<第3実施形態>
本実施形態では、ヘリカル巻シート状コイル3は、2層のうちの一方の層(第2層)が他方の層(第1層)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、長節巻部3LWのコイル辺ピッチ(11スロットピッチ)分、移動した状態に形成されている点で第1実施形態および第2実施形態と異なる。以下、第1実施形態および第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
図21は、スロット73の相配置を示す図である。図21は、図8および図19に対応している。図21に示すように、本実施形態においても、単相スロット731と複相スロット732とが混在している。また、第1実施形態と同様に、後述する図22の矢印A1方向側視に短節巻部3SWを有しており、同図の矢印A2方向側視に長節巻部3LWを有している。
本実施形態では、2極18スロットを基本構成とする3相回転電機であり、毎極毎相スロット数は3である。よって、ピッチ規定量は、1スロットピッチまたは2スロットピッチが考えられる。本実施形態では、ピッチ規定量は、2スロットピッチにする。そして、短節巻部3SWのコイル辺ピッチは、毎極スロット数(本実施形態では9)から上記ピッチ規定量(2スロットピッチ)を減じた数に設定する。この場合、短節巻部3SWのコイル辺ピッチは、7スロットピッチにする。一方、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは、毎極スロット数(本実施形態では9)に上記ピッチ規定量(2スロットピッチ)を加えた数に設定する。この場合、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは、11スロットピッチにする。
本実施形態においても、短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されて波巻き構成が為されており、単相スロット731と複相スロット732とが混在している。また、短節巻部3SWのコイル辺ピッチは、7スロットピッチに設定され、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは、11スロットピッチに設定されている。よって、本実施形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態では、ヘリカル巻シート状コイル3は、2層のうちの一方の層(第2層)が他方の層(第1層)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、長節巻部3LWのコイル辺ピッチ(11スロットピッチ)分、移動した状態に形成されている。
図22は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す模式図である。図22(a)〜(c)は、図12(a)〜(c)および図20(a)〜(c)にそれぞれ対応している。本実施形態では、コイル導体巻始め部3S、第1コイル辺部群3G1、第2コイル辺部群3G2および第3コイル辺部群3G3は、それぞれ9本のコイル辺部を有しており、コイル導体巻き返し部3Rは、25本のコイル辺部を有している。
図22(a)に示すように、第2層の第1コイル辺部群3G1は、第1層のコイル導体巻始め部3Sに対して、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に11スロットピッチ分、移動している。そして、第1コイル辺部群3G1の9本のコイル辺部と、第2コイル辺部群3G2の9本のコイル辺部(一部図示略)との間において、同相のコイル辺部間のコイル辺ピッチは、7スロットピッチになっている。つまり、波巻き巻線は、矢印A1方向側に短節巻部3SWを有している。
一方、同図(c)に示すように、コイル導体巻始め部3Sの9本のコイル辺部と、第1コイル辺部群3G1の9本のコイル辺部との間において、同相のコイル辺部間のコイル辺ピッチは、11スロットピッチになっている。つまり、波巻き巻線は、矢印A2方向側に長節巻部3LWを有している。なお、同図では、U1相のコイル辺部間のコイル辺ピッチを図示している。
可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、第1層、第2層、第1層、第2層と繰り返しながら、9本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されるので、波巻き巻線は、矢印A1方向側に短節巻部3SWを有し、矢印A2方向側に長節巻部3LWを有している。つまり、短節巻部3SWのコイル端部と長節巻部3LWのコイル端部とは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)両端に分離して配されている。
3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)一端側(矢印A1方向側)のコイル端部の高さをコイル端部高さ5H61とし、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)他端側(矢印A2方向側)のコイル端部の高さをコイル端部高さ5H62とする。同図に示すように、コイル端部高さ5H61は、コイル端部高さ5H62と比べて低くなっている。本実施形態では、相端部5Tおよび引き回し部分5DWは、短節巻部3SWのコイル端部側(図22に示す矢印A1方向側)に配されている。よって、本実施形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
図22では、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1および立下り傾斜角θDF1が変更された状態を示している。具体的には、全節巻部3FWの立ち上り傾斜角θUF1は、短節巻部3SWの立ち上り傾斜角θUS1と同じ角度θ8に設定され、全節巻部3FWの立下り傾斜角θDF1は、短節巻部3SWの立下り傾斜角θDS1と比べて小さい角度θ9に設定されている。このとき、コイル引回し点5RU1は、相端子5TX側の可動子磁極の移動方向(矢印F11方向)に、0.5スロットピッチ分、移動している。
これにより、シート端部の全節巻部3FWを含めて、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の一端側(矢印A1方向側)のコイル端部高さは、コイル端部高さ5H61で略均一化されている。なお、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の他端側(矢印A2方向側)のコイル端部高さは、コイル端部高さ5H62で略均一になっている。よって、本実施形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
また、同図(b)に示すように、矢印RC1で示される位置において、実線で示すU1相のコイルユニット1aから破線で示すU1相のコイルユニット1bにつなぎ替えられており、巻線の引き回しレーンは、第10層から第9層に変更されている。同図(a)の破線で囲まれる領域RC11で示すように、当該つなぎ替え部分の巻線の引き回しレーン間隔は、第8層から第7層に変更される巻線の引き回しレーン間隔と同じ間隔になっている。以上のことは、他のコイル引回し点5RU2、5RV1、5RV2、5RW1、5RW2についても同様であり、第4層から第3層に変更される巻線の引き回しレーン間隔や第6層から第5層に変更される巻線の引き回しレーン間隔に対しても同様である。
なお、参考形態と同様に、ヘリカル巻シート状コイル3は、2層のうちの一方の層(第2層)が他方の層(第1層)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、短節巻部3SWのコイル辺ピッチ(7スロットピッチ)分、移動した状態に形成することもできる。これにより、参考形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
<第4実施形態>
本実施形態は、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致している点で第1実施形態と異なる。図10に示すように、第1実施形態では、コイル導体は、第1層のコイル導体巻始め部3Sから巻き始められ、第2層の第1コイル辺部群3G1に巻き回されている。既述のとおり、コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されており、第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かってコイル導体が巻き回されている。
以降、同様にして、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、第1層、第2層、第1層、第2層と繰り返しながら、6本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されている。したがって、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)のコイル導体巻始め部3S側視において、コイル導体巻始め部3Sから離れていくコイル導体の巻方向をヘリカル巻方向とするとき、ヘリカル巻方向は、反時計回り(左回り)になっている。
また、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着するとき、相端部5T側からの3相回転電機の軸方向視において、渦巻き状に装着したヘリカル巻シート状コイル3で相端部5Tを始点とした場合の渦巻き方向を円環巻方向とする。図9(b)に示すように、第1実施形態では、円環巻方向は、時計回り(右回り)になっている。つまり、第1実施形態では、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致していない。一方、本実施形態では、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、いずれも時計回り(右回り)になっており、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図23は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す模式図である。図23(a)〜(c)は、図12(a)〜(c)にそれぞれ対応している。コイル導体は、第2層のコイル導体巻始め部3Sから巻き始められ、第1層の第1コイル辺部群3G1、第2層の第2コイル辺部群3G2の順に巻き回されている。コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されており、第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かってコイル導体が巻き回されている。
また、第2コイル辺部群3G2の6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されている。以降、同様にして、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、第1層、第2層、第1層、第2層と繰り返しながら、6本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されている。したがって、本実施形態では、ヘリカル巻方向は、時計回り(右回り)になっている。
図24は、ヘリカル巻シート状コイル3を示す模式図である。図24(a)、(b)は、図9(a)、(b)にそれぞれ対応している。第1実施形態と同様、同図では、コイル導体巻始め部3S側の2層の端部を白色丸印および白色三角印で示しており、コイル導体巻き返し部3R側の2層の端部を黒色丸印および黒色三角印で示している。
同図(b)に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着したとき、ヘリカル巻シート状コイル3とステータコア7のスロット底部との間に隙間SP4が生じている。また、ヘリカル巻シート状コイル3のシート両端部において、径方向外周側に隙間SP5が生じ、径方向内周側に隙間SP6が生じている。隙間SP4は、第1実施形態の隙間SP1に対応し、隙間SP5は、第1実施形態の隙間SP2に対応し、隙間SP6は、第1実施形態の隙間SP3に対応している。なお、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の径方向内周側に滑らかに乗り上げるように巻き重なり、ヘリカル巻シート状コイル3の外周側シートとステータコア7のスロット底部との間の隙間は、同図に示す隙間SP4で最大になる。
同図(b)に示すように、円環巻方向は、時計回り(右回り)になっており、本実施形態では、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、いずれも時計回り(右回り)になっている。つまり、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致している。なお、図23に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータの周方向長の4倍の波巻き構成であるので、仮に、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7のスロット73に隙間なく装着することができたとすると、ヘリカル巻シート状コイル3は、第1層〜第8層に収容することができる。同図では、第8層と第9層との境界線を理想収容ライン3ILで表している。
図25は、隙間詰めの第1段階におけるシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図25(a)〜(c)は、図23(a)〜(c)にそれぞれ対応している。具体的には、図25は、図24に示すコイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部と、第3コイル辺部群3G3のU1相のコイル辺部3G31とをステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動(第2層から第1層に移動)させた状態を示している。これら7本のコイル辺部は、他のコイル辺部の配置の影響を受けることなく、容易にステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)へ移動させることができる。なお、7本のコイル辺部を移動させると、隙間SP5は消滅するが、7本のコイル辺部と第3層のヘリカル巻シート状コイル3との間に、隙間SP51が生じる。
また、同図(c)に示すように、これらの7本のコイル辺部をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させるとき、7本のコイル辺部から巻回される巻線をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させる。つまり、7本のコイル辺部から巻回される巻線は、一旦、ステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)上部へ巻線の引き回しレーンが変更され、コイル端部高さ方向のステータコア7近傍で、もとの引き回しレーンに戻されている。
同図(c)は、同図(b)に示す矢印A2方向視であるので、コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かってコイル導体が巻き回されている。そして、コイル導体巻始め部3Sから巻回された第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回される。そのため、ステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させた巻線は、他のコイル辺部の配策の影響を受けることなく、第1コイル辺部群3G1に向かってコイル導体を巻回すことができる。
また、第3コイル辺部群3G3のU1相のコイル辺部3G31は、第1コイル辺部群3G1および第2コイル辺部群3G2に隣接するU1相のコイル辺部から巻き回される。当該コイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されており、第3コイル辺部群3G3のU1相のコイル辺部3G31は、紙面奥側から紙面手前側に向かってコイル導体が巻き回される。そのため、ステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させた巻線は、他のコイル辺部の配策の影響を受けることなく、第3コイル辺部群3G3のU1相のコイル辺部3G31に向かってコイル導体を巻回すことができる。
本実施形態では、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、いずれも時計回り(右回り)になっており、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致している。そのため、上記7本のコイル辺部に巻回される巻線をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させることが容易である。なお、同図(b)に示すように、矢印A1方向側において、相端子5TXが引き出されているので、矢印A2方向側は、矢印A1方向側と比べて、巻線の引き回しレーンを変更するスペース3G11を確保することが容易である。また、同図では、コイル導体巻始め部3Sの移動後の境界線L1を境界線L2で示している。
図26は、隙間詰めの第2段階におけるシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形方法を示す模式図である。図27は、隙間詰めの第2段階におけるシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図26(a)〜(c)および図27(a)〜(c)は、図25(a)〜(c)にそれぞれ対応している。具体的には、図25に示す状態のヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に寄せて、隙間SP4、SP51を詰める。図26は、このときのシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形方法を示しており、図27は、隙間詰め後のシート乗り上げ部3Aの状態を示している。図26および図27では、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形状態を境界線L31〜L35で示している。
図26に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に寄せると、第3層〜第10層のヘリカル巻シート状コイル3は、シート乗り上げ部3A以外では、矢印A3方向に移動し、シート乗り上げ部3Aでは、矢印A4方向に移動する。具体的には、第3層および第4層のヘリカル巻シート状コイル3は、境界線L31、L32で狭持される領域に移動する。第5層および第6層のヘリカル巻シート状コイル3は、境界線L32、L33で狭持される領域に移動する。第7層〜第10層のヘリカル巻シート状コイル3についても同様である。
可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)のシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形開始位置をシート曲げ開始部3A1とし、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)のシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形終了位置をシート曲げ終了部3A2とする。シート乗り上げ部3Aのコイル端部の一部(部位3A3a、3A3b)は、シート曲げ開始部3A1からシート曲げ終了部3A2までの間、円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜するように変形される。
図27は、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の一部が円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜して変形されている状態を示している。シート乗り上げ部3Aのコイル端部が変形されると、隙間SP4は隙間SP41になり、隙間SP51は隙間SP52になる。隙間SP41は、変形前の隙間SP4と比べて小さくなっており、隙間SP52は、変形前の隙間SP51と比べて小さくなっている。
本実施形態では、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致しているので、コイル導体巻始め部3Sから巻回される巻線等をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させることが容易であり、コイル導体巻始め部3Sから巻回される巻線等がコイル導体巻始め部3Sに巻き重なるヘリカル巻シート状コイル3と干渉することを回避できる。そのため、ステータコア7の径方向に巻き重なる部分(シート乗り上げ部3A)を効率良く変形させることができる。
よって、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着したときに、ステータコア7とヘリカル巻シート状コイル3との間に生じる隙間SP4およびヘリカル巻シート状コイル3のシート端部に生じる隙間SP5を効率良く低減させることができる。したがって、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3をコンパクトにすることができ、3相回転電機を小型化および低コスト化することができる。
図28は、隙間詰めの第3段階におけるシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図28(a)〜(c)は、図27(a)〜(c)にそれぞれ対応している。図27に示すように、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形前後において隙間SP6の大きさに変更はなく、コイル導体巻き返し部3Rの一部が第9層および第10層に突出している。そこで、図28に示すように、コイル導体巻き返し部3Rの先端側2相(V相およびW相)分のコイル端部3R1を、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)と略平行に配設する。
3*〜5*における巻線の引き回しは、スロット内で干渉するコイル導体が無いので、コイル導体巻き返し部3Rの先端側2相(V相およびW相)分の配策を調整することが容易である。これにより、コイル導体巻き返し部3Rは、第9層のみに突出し、第10層には突出しない。よって、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7の径方向に巻き重ねられたときに、シート乗り上げ部3Aの径方向厚みは、理想収容ライン3ILに対して1層分の増加に抑制することができ、シート乗り上げ部3Aをさらにコンパクトにすることができる。なお、同図では、配策変更後の隙間SP6を隙間SP61で示している。
本実施形態では、シート乗り上げ部3Aのコイル端部は、円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜して変形された部位3A3a、3A3bをもち、コイル導体巻き返し部3Rの先端側2相(V相およびW相)分のコイル端部3R1は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)と略平行に配設されている。そのため、コイル導体巻き返し部3Rの径方向内周側に突出する領域を低減させることができ、シート乗り上げ部3Aの径方向厚みを低減させることができる。したがって、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3をさらにコンパクトにすることができる。
次に、第1実施形態の波巻き巻線において、同様の隙間詰めを行いシート乗り上げ部3Aのコイル端部を変形した場合について説明する。既述のとおり、第1実施形態では、ヘリカル巻方向は反時計回り(左回り)であり、円環巻方向は、時計回り(右回り)であるので、ヘリカル巻方向および円環巻方向は一致していない。
図29は、隙間詰め後のシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図29(a)〜(c)は、図28(a)〜(c)にそれぞれ対応している。なお、図29では、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形状態を境界線L41〜L45で示している。また、同図に示すように、コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻き回されているU1相のコイル端部、U2相のコイル端部およびW1相のコイル端部をシート干渉部3SAで示す。
同図(c)に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に寄せて、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の一部(部位3A3a、3A3b)を変形させたとき、境界線L41、L42で狭持されるヘリカル巻シート状コイル3とシート干渉部3SAとが干渉する。そこで、シート曲げ終了部3A2を3スロットピッチ分、円環巻方向と反対方向に移動させ、シート曲げ開始部3A1からシート曲げ終了部3A2までのスロットピッチを9スロットピッチ分にする。これにより、シート干渉部3SAにおける干渉を回避することができる。
次に、コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻回される巻線をステータコアヨーク71側に移動させる場合を考える。同図(c)は、同図(b)に示す矢印A2方向視であるので、コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かってコイル導体が巻き回されている。そして、コイル導体巻始め部3Sから巻回された第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されている。
このとき、第1コイル辺部群3G1の径方向外周側には、第3コイル辺部群3G3が配設されているので、コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻回す巻線をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させようとすると、第1層および第2層の2つのレーンに亘って移動させる必要がある。そのため、ステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させた巻線をスロット内のコイル導体部へ戻すための配策が煩雑となる。このように、第1実施形態では、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致していないので、コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻回される巻線をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させて、シート干渉部3SAにおける干渉を回避することは、容易ではない。
同図は、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の一部(部位3A3a、3A3b)を円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜して変形させた状態を示している。シート乗り上げ部3Aのコイル端部が変形されると、隙間SP1は隙間SP11になり、隙間SP2は隙間SP21になり、隙間SP3は隙間SP31になる。なお、同図では、コイル導体巻き返し部3Rの先端側の6本のコイル辺部を第10層から第9層に移動させている。
コイル導体巻き返し部3Rの先端側の6本のコイル辺部は、ヘリカル巻シート状コイル3のシート端部でありコイル導体が巻き返される部分であるので、他のコイル辺部の配置の影響を受けることなく、第10層から第9層に容易に移動させることができる。しかしながら、同図(c)に示すように、これらの6本のコイル辺部を接続するコイル端部の配策のために、第10層のスペースが必要であり、コイル導体巻き返し部3Rは、第9層および第10層に突出している。
よって、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7の径方向に巻き重ねられたとき、シート乗り上げ部3Aの径方向厚みは、理想収容ライン3ILに対して2層分、増加する。このように、第4実施形態に示すヘリカル巻シート状コイル3は、第1実施形態に示すヘリカル巻シート状コイル3と比べて、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3をコンパクトにすることができ、3相回転電機を小型化および低コスト化することができる。
なお、本実施形態では、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、時計回り(右回り)で一致しているが、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、反時計回り(左回り)で一致させることもできる。また、参考形態、並びに、第2実施形態および第3実施形態においても、第4実施形態と同様にして、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3をコンパクトにすることができ、3相回転電機を小型化および低コスト化することができる。
<その他>
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。参考形態として、以下、コイル導体がステータコア7の周方向の1方向に巻装される1方向巻きコイルを例に説明する。
図30は、U相コイル9Uの接続状態の一例を示す模式図である。同図では、U相コイル9Uを直線的に展開して、U1相の1方向巻きコイルU1a、U1bと、U2相の1方向巻きコイルU2a、U2bと、を分離して示している。なお、同図では、一例として4極の3相回転電機を示しており、ステータコア7の周方向(可動子磁極の移動方向(矢印F1方向))におけるU相コイル9Uの巻始め位置74を黒色四角印で示し、U相コイル9Uの巻始め位置74と同位相になる同位相位置75を白色四角印で示している。以下、同図に基づいて、U相を例に説明するが、V相およびW相についても同様である。
U相コイル9Uは、U1相の1方向巻きコイルU1a、U1bと、U2相の1方向巻きコイルU2a、U2bと、が直列接続されている。1方向巻きコイルU1a、U1bは、それぞれ短節巻部3SWと長節巻部3LWとが交互に繰り返されて波巻きが構成されており、1方向巻きコイルU1a、U1bは直列接続されている。1方向巻きコイルU2aは、1方向巻きコイルU1aを可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に1スロットピッチ分、移動させたものであり、1方向巻きコイルU2bは、1方向巻きコイルU1bを可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に1スロットピッチ分、移動させたものである。
1*は、1方向巻きコイルU1aの巻始め位置を示し、2*は、1方向巻きコイルU1aの巻終わり位置を示している。4*は、1方向巻きコイルU1bの巻始め位置を示し、3*は、1方向巻きコイルU1bの巻終わり位置を示している。U2相についても同様であり、5*は、1方向巻きコイルU2aの巻始め位置を示し、6*は、1方向巻きコイルU2aの巻終わり位置を示している。8*は、1方向巻きコイルU2bの巻始め位置を示し、7*は、1方向巻きコイルU2bの巻終わり位置を示している。なお、1*は、U相端子9TUに接続され、8*は、中性点9Nに接続される。
同図に示すように、1方向巻きコイルU1bは、1方向巻きコイルU1aを可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に1磁極ピッチ分、移動させているので、3相回転電機の駆動時に1方向巻きコイルU1bに流れる電流方向は、1方向巻きコイルU1aの電流方向に対して逆方向になる。そのため、1方向巻きコイルU1a、U1bの関係は、既述のコイルユニット1a、1bの関係と同様の関係になっている。なお、同図では、電流方向を矢印で示している。
具体的には、U1相のコイルユニット1aに相当する1方向巻きコイルU1aは、相端子9TUから巻き始められ、長節巻部3LWと短節巻部3SWとが交互に繰り返されている(1*〜2*)。そして、1方向巻きコイルU1aの長節巻部3LWは、全節巻部3FWを介してU1相のコイルユニット1bに相当する1方向巻きコイルU1bに接続されている(2*〜3*)。全節巻部3FWは、1方向巻きコイルU1bの長節巻部3LWに接続されており、1方向巻きコイルU1bは、長節巻部3LWと短節巻部3SWとが交互に繰り返されている(3*〜4*)。
1方向巻きコイルU1bの長節巻部3LWは、短節巻部3SWを介してU2相のコイルユニット1aに相当する1方向巻きコイルU2aに接続されている(4*〜5*)。1方向巻きコイルU2aは、長節巻部3LWと短節巻部3SWとが交互に繰り返されている(5*〜6*)。そして、1方向巻きコイルU2aの長節巻部3LWは、全節巻部3FWを介してU2相のコイルユニット1bに相当する1方向巻きコイルU2bに接続されている(6*〜7*)。全節巻部3FWは、1方向巻きコイルU2bの長節巻部3LWに接続されており、1方向巻きコイルU2bは、長節巻部3LWと短節巻部3SWとが交互に繰り返されている(7*〜8*)。1方向巻きコイルU2bの長節巻部3LWは、中性点9Nに接続される。
このように、1方向巻きコイルU1a、U1b、U2a、U2bにおいても、ヘリカル巻シート状コイル3の場合と同様に巻装することができ、上記実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。また、上記実施形態では、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータの周方向長の4倍の波巻き構成が為されているが、これに限定されるものではなく、ステータの周方向長の自然数倍であれば良い。なお、本発明の波巻き巻線は、波巻き巻装方式の種々の3相回転電機に用いることができ、例えば、車両の駆動用電動機、発電機、産業用の電動機、発電機などに用いることができる。