以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態について、共通する箇所には共通の符号を付して対応させることにより、重複する説明を省略する。また、各図は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
<第1実施形態>
本実施形態の3相回転電機の波巻き巻線は、コイル導体が全節波巻き構成となるように巻装されており、コイル導体がヘリカル状につながる2層のヘリカル巻シート状コイル3として構成されている。また、本実施形態では、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータ周倍のコイル辺部数が等しい等価構成の2つの部分コイル6P1、6P2が直列接続されている。まず、部分コイル6P1の構成について詳説するが、部分コイル6P2についても同様の構成を有している。
図1は、部分コイル6P1の1相の単位コイル分を示す模式図である。(a)は、C側視における第1層および第2層のコイル導体の層渡り状態を示している。(b)は、コイル導体が巻芯に巻装された状態を示しており、(c)は、(b)において、巻芯を取り除いた状態を示している。(d)は、紙面奥側(A側)のコイル導体の巻装状態(B側からの透視図)を示しており、(e)は、紙面手前側(B側)のコイル導体の巻装状態を示している。(f)は、D側視における第1層および第2層のコイル導体の層渡り状態を示している。
図1は、スロットS10の位置から1磁極ピッチ(本実施形態では6スロットピッチ)毎にコイル導体が巻装された状態を示している。実線で示すコイルユニット1aは、スロットS10の位置において、紙面手前側(B側)から紙面奥側(A側)の方向に巻装されており、スロットS10、S16、S22、S28およびS34において、コイルユニット1aは、巻芯の短手方向(巻芯軸に垂直な方向)に直線状に延びるコイル辺部10aが形成されている。図1のA側からB側に向けてコイル導体が巻装されるときに形成されるコイル辺部10aを往き導体部11aと呼称し、B側からA側に向けて巻装されるときに形成されるコイル辺部10aを還り導体部12aと呼称する。往き導体部11aおよび還り導体部12aの同一側端部は、コイル辺部10aと一体に形成されるコイル端部20aによって接続されている。コイル端部20aは、スロットS13、S19、S25、S31およびS37において巻き曲げられて、巻き曲げ部21aがそれぞれ形成されている。
図1に示すように、本明細書では、半磁極ピッチ分のコイル端部20aと、往き導体部11aと、1磁極ピッチ分のコイル端部20aと、還り導体部12aと、半磁極ピッチ分のコイル端部20aと、を有するコイル導体をコイル要素4aと呼称する。コイル要素4aが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されて接続された状態のコイル導体をコイルユニット1aと呼称する。
図1の破線で示すコイルユニット1bは、スロットS10の位置において、紙面奥側(A側)から紙面手前側(B側)の方向に巻装されている点で、実線で示すコイルユニット1aと異なる。破線で示すコイルユニット1bは、実線で示すコイルユニット1aと同様にスロットS10、S16、S22、S28およびS34においてコイル辺部10bが形成されており、コイル辺部10bは、往き導体部11bおよび還り導体部12bを有している。また、往き導体部11bおよび還り導体部12bの同一側端部は、コイル辺部10bと一体に形成されるコイル端部20bによって接続されている。コイル端部20bは、スロットS13、S19、S25、S31およびS37において巻き曲げられて、巻き曲げ部21bがそれぞれ形成されている。
コイルユニット1aと同様に、本明細書では、半磁極ピッチ分のコイル端部20bと、往き導体部11bと、1磁極ピッチ分のコイル端部20bと、還り導体部12bと、半磁極ピッチ分のコイル端部20bと、を有するコイル導体をコイル要素4bと呼称する。コイル要素4bが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されて接続された状態のコイル導体をコイルユニット1bと呼称する。
コイルユニット1aは、全節巻部3FWを有している。全節巻部3FWとは、コイル端部20aによって接続されるコイル辺部10a間(往き導体部11aと還り導体部12aとの間)のコイル辺ピッチが1磁極ピッチ(本実施形態では6スロットピッチ)である部分をいう。コイル端部20bによって接続されるコイル辺部10b間(往き導体部11bと還り導体部12bとの間)についても同様であり、コイルユニット1bは、全節巻部3FWを有している。
実線で示すコイルユニット1aと破線で示すコイルユニット1bは、シート厚さ方向に対をなしている。コイルユニット1aのコイル辺部10aとコイルユニット1bのコイル辺部10bとがシート厚さ方向に隣接して密着するように加圧成形されると、コイル辺部10aおよびコイル辺部10bは、巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に2層に亘って2磁極ピッチずつ離間された状態で整列する。紙面奥側(A側)に形成されるコイル辺部10aおよびコイル辺部10bを第1層と呼称し、紙面手前側(B側)に形成されるコイル辺部10aおよびコイル辺部10bを第2層と呼称する。図1(a)および(f)は、第1層および第2層におけるコイル導体の層渡り状態を示している。これらの図では、層間を接続する部分が最短となるようにコイル導体の層渡り状態を模式的に図示している。なお、コイルユニット1a、1bがステータコア7に取り付けられた際には、図1に示す巻芯の長手方向(巻芯軸方向)は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に相当する。
図2は、部分コイル6P1の3相分を示す模式図である。図2(a)〜(f)は、図1(a)〜(f)にそれぞれ対応しており、図2に示すスロットSは、図1に示すスロットSに対応している。図3は、図2のIII−III断面図である。本実施形態では、同一スロット内で隣接する実線で示すコイル要素4aと破線で示すコイル要素4bとを一対として、一対のコイル要素4a、4bが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されている。例えば、図2および図3に示すように、スロットS10の第2層とスロットS16の第1層との間でコイル要素4aが形成され、これと対になるコイル要素4bは、スロットS10の第1層とスロットS16の第2層との間で形成されている。同様にして、1スロットピッチ進んだスロットS11の第2層とスロットS17の第1層との間でコイル要素4aが形成され、これと対になるコイル要素4bは、スロットS11の第1層とスロットS17の第2層との間で形成されている。
本実施形態では、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、U相(通電方向関係:順方向U1)、U相(通電方向関係:順方向U2)、W相(通電方向関係:逆方向W1)、W相(通電方向関係:逆方向W2)、V相(通電方向関係:順方向V1)、V相(通電方向関係:順方向V2)、U相(通電方向関係:逆方向U1)、U相(通電方向関係:逆方向U2)、W相(通電方向関係:順方向W1)、W相(通電方向関係:順方向W2)、V相(通電方向関係:逆方向V1)、V相(通電方向関係:逆方向V2)の順に巻線が形成されている。なお、図3では、相*を用いて通電方向の逆方向を示しており、以下同様に図示する。また、図3に示すように、X1相のコイル辺部10aとX2相のコイル辺部10aとは、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に1スロットピッチ分、離間している。但し、XはU、V、Wのいずれかであり、以下同様である。そのため、X1相のコイル辺部10aとX2相のコイル辺部10aとは、同相(X相)ではあるが、電磁気的に位相が異なる。以上のことは、コイル辺部10bについても同様である。
本実施形態では、同相(X相)のコイルユニット1a、1bが可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に2本隣接しており、同相(X相)コイルの巻線単位は4本からなる。同相(X相)のコイルユニット1a、1b、1a、1bは、3相回転電機の駆動時に流れる電流方向が一致するように接続されており、12本の巻線単位からなる3相巻線が構成されている。なお、同図に示すように、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の隣接する各コイル辺部間は、後述するステータコア7のステータコア磁極72を収容可能に所定間隔1W離間されている。
図4は、部分コイル6P1のみを用いて相コイル6Xを形成した場合の相構成を示す模式図である。同図に示すように、本実施形態では、相単位コイル5X1、5X2が直列接続されて、相コイル6Xが形成されており、3相の相コイル6U、6V、6WはY結線されている。相単位コイル5X1は、X1相のコイルユニット1aと、X1相のコイルユニット1bとが直列接続されており、相単位コイル5X2は、X2相のコイルユニット1aと、X2相のコイルユニット1bとが直列接続されている。なお、同図では、X相端子を5TXで示し、中性点を5Nで示している。また、部分コイル6P2は、部分コイル6P1と等価構成であるので、部分コイル6P2のみを用いて相コイル6Xを形成した場合も同様の相構成になる。さらに、部分コイル6P1、6P2は、周方向長がステータコア7の周方向長の自然数倍(本実施形態では2倍)であるステータ周倍の波巻き構成になっている。
図5は、部分コイル6P1の接続状態を示す模式図である。同図は、部分コイル6P1のみを用いて相コイル6Xを形成した場合のシート厚さ方向視におけるシート両端部の巻線の接続状態を示している。(a)〜(c)は、順にU相、V相、W相の1相分の接続状態を示しており、(d)は、3相分の接続状態を示している。同図では、説明の便宜上、コイルユニット1aを実線で示し、コイルユニット1bを破線で示して区別しているが、実際は一体に形成されている。また、図中の数字*は、相端子5TXから中性点5Nまでの巻線の接続順を示している。以下、同図(a)に基づいてU相を例に説明するが、V相およびW相についても同様である。また、部分コイル6P2は、部分コイル6P1と等価構成であるので、部分コイル6P2のみを用いて相コイル6Xを形成する場合も同様に巻線を接続することができる。
相単位コイル5U1は、U相端子5TUを起点にして矢印F12方向に巻装された後(実線で示すU1相のコイルユニット1aに相当。1*〜11*)、コイル引回し点5RU1で巻き返されて矢印F11方向に巻装されており(破線で示すU1相のコイルユニット1bに相当。12*〜23*)、接続点5JU1に接続されている。相単位コイル5U2は、接続点5JU1を起点にして矢印F12方向に巻装された後(実線で示すU2相のコイルユニット1aに相当。24*〜34*)、コイル引回し点5RU2で巻き返されて矢印F11方向に巻装されており(破線で示すU2相のコイルユニット1bに相当。35*〜46*)、中性点5Nに接続されている。
相コイル6Uは、相単位コイル5U1と相単位コイル5U2とが直列接続されている。相単位コイル5U1は、コイルユニット1aが相端子5TU側(矢印F11方向側)のシート端部のコイル導体巻始め部3Sから巻き始められ、反相端子5TU側(矢印F12方向側)のシート端部のコイル導体巻き返し部3Rで巻き返されてコイルユニット1bに接続されている。つまり、相単位コイル5U1は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)においてコイル導体が往復するように巻装されている。相単位コイル5U2についても同様である。なお、3相の各相端子5TU、5TV、5TWを引き出す部分を相端部5Tとする。
本実施形態では、相単位コイル5X1、5X2は、反相端子5TX側(矢印F12方向側)のシート端部で巻線が引回されており、反相端子5TX側(矢印F12方向側)のシート端部に接続点を有しない。そのため、反相端子5TX側(矢印F12方向側)のシート端部でコイルユニット1aおよびコイルユニット1bを接続する場合と比べて、コイル端部20a、20bをコンパクトにすることができる。なお、巻線を引回す代わりに、反相端子5TX側(矢印F12方向側)のシート端部でコイルユニット1aおよびコイルユニット1bを接続することもできる。この場合は、コイルユニット1aおよびコイルユニット1bをそれぞれ巻装した後に互いの端部同士を接続することができるので、巻線を引回す場合と比べて、製作が容易である。
また、図5に示すように、隣接するコイル端部20aは、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)、3相回転電機の軸方向(同図の紙面上において、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に直交する矢印G1方向)およびスロット73の深さ方向(同図の紙面に直交する矢印H1方向)の方向毎に略等距離になるように配されている。また、コイル端部20aは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)両端のコイル端部高さ5H1が略均一になるように形成されている。
そのため、コイル端部20a同士の重なりを3次元的に、きめ細かく回避することができ、コイル端部20aの占積率が向上してコイル端部20aの占有スペースを小さくすることができる。また、コイル端部20aを短くしてコンパクトにできるので、漏れリアクタンスを減少させることができる。これらのことは、コイル端部20bについても同様であり、コイル端部20a、20bとの間においても同様である。
図6は、部分コイル6P1がステータコア7のスロット73に装着された状態を示す部分断面図である。同図に示すように、ステータコア7は、ステータコア7の周方向に延在するステータコアヨーク71と、ステータコアヨーク71からステータコア7の軸芯方向に突出する複数のステータコア磁極72とを有している。また、ステータコア磁極72、72の間には、部分コイル6P1のコイル辺部10a、10b(往き導体部11a、11b、還り導体部12a、12b)を収容可能にスロット73が形成されており、コイル辺部10a、10bは、スロット73に収容されている。なお、同図では、説明の便宜上、4層分のコイル辺部10a、10bが記載されているが、スロット73は、巻き重ねられる周回分のコイル辺部10a、10bを収容可能に形成されている。
また、ステータコア磁極72の先端部721は、ステータコア7の周方向に幅広になっており、可動子8と対向している。可動子8は、同図に示す可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に回転可能に支持されている。本実施形態の波巻き巻線は、可動子8およびステータコア7がステータの径方向に同芯に配されるラジアル空隙型の円筒状回転電機に用いることができる。なお、同図では、1つのスロット73について図示しているが、スロット73は、ステータコア7の周方向に所定磁極数分、形成されており、コイル辺部10a(往き導体部11a、還り導体部12a)は、ステータコア7の各スロット73に交互に挿通されている。コイル辺部10b(往き導体部11b、還り導体部12b)についても同様である。
コイル端部20aは、スロット73の深さ方向(矢印H1方向)において異なる位置に配されるスロット底部側(矢印H11方向側)のコイル辺部10a(還り導体部12a)とスロット開口部側(矢印H12方向側)のコイル辺部10a(往き導体部11a)とを交互に接続している。スロット底部側(矢印H11方向側)のコイル辺部10a(還り導体部12a)とスロット開口部側(矢印H12方向側)のコイル辺部10a(往き導体部11a)とは、スロット73の深さ方向(矢印H1方向)の2層分を占有している。
本実施形態では、コイル端部20aは、スロット73の深さ方向(矢印H1方向)において異なる位置に配されるスロット底部側(矢印H11方向側)のコイル辺部10a(還り導体部12a)と、スロット開口部側(矢印H12方向側)のコイル辺部10a(往き導体部11a)とを接続する。これにより、コイル端部20aをコンパクトにしつつ、隣接するコイル端部20a、20bとの干渉を回避することができる。以上のことは、コイル端部20b、コイル辺部10b(往き導体部11b、還り導体部12b)についても同様である。
図7は、部分コイル6P1におけるスロット73の相配置を示す図である。同図は、シート両端部を除く相コイル6Xの繰り返し単位について、図5に示す矢印A1方向側視の相配置を示している。また、同図では、U1相のコイルユニット1aの接続順を、可動子磁極の移動方向の反相端子5TX側(矢印F12方向側)に延びる矢印で示し、U1相のコイルユニット1bの接続順を、可動子磁極の移動方向の相端子5TX側(矢印F11方向側)に延びる矢印で示している。
部分コイル6P1は、全節波巻き構成であるので、部分コイル6P1を各スロット73に装着すると、スロット73は、単相スロット731のみを有し、複相スロット732を有しない。ここで、単相スロット731とは、1つのスロット73内において3相のうちの単一相のコイル辺部10a、10bが収容されるスロットをいう。また、複相スロット732とは、1つのスロット73内において3相のうちの複数相のコイル辺部10a、10bが収容されるスロットをいう。以上のことは、部分コイル6P2をスロット73に装着する場合についても同様である。
単相スロット731のみを有する3相回転電機は、単相スロット731と複相スロット732とが混在している3相回転電機と比べて、電機子巻線の起磁力分布における高調波成分が大きくなる。そこで、本実施形態では、ステータ周倍のコイル辺部数が等しい2つの等価構成の部分コイル6P1、6P2を直列接続して、ヘリカル巻シート状コイル3を構成する。部分コイル6P1、6P2は、ステータコア7の径方向に隣接して配置する。また、一方の部分コイル(径方向内周側の部分コイル6P2)を他方の部分コイル(径方向外周側の部分コイル6P1)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、所定スロット数分(本実施形態では1スロットピッチ分)、ずらして配置する。これにより、単相スロット731と複相スロット732とを混在させて、電機子巻線の起磁力分布における高調波成分を低減させることができる。
図8は、部分コイル6P1、6P2のコイル導体巻始め部3S近傍およびコイル導体巻き返し部3Rにおけるスロット73の相配置を示す図である。同図は、図5(d)に示す矢印A1方向側視におけるシート両端部のスロット73の相配置を示している。部分コイル6P1は、第2層が第1層に対して、可動子磁極の移動方向の反相端子5TX側(矢印F12方向側)に、全節巻部3FWのコイル辺ピッチ分(本実施形態では6スロットピッチ分)移動した状態に形成されている。部分コイル6P2についても同様である。そのため、全節波巻き構成のヘリカル巻シート状コイル3を容易に製作することができる。
また、部分コイル6P1は、1番から始まる数字*と矢印でU相の相コイル6Uの接続順を示し、部分コイル6P2は、101番から始まる数字*と矢印でU相の相コイル6Uの接続順を示している。具体的には、部分コイル6P1の相単位コイル5U1は、1*〜7*で示す順に接続され、8*で示す接続を介して相単位コイル5U2に接続されている。相単位コイル5U2は、9*〜16*で示す順に接続され、中性点5Nに接続されている。V相およびW相についても同様であり、部分コイル6P2についても同様である。
ここで、部分コイル6P1の4*で示す接続先を、部分コイル6P2の101*で示す接続元(コイル導体巻始め部3SのU1相のコイル辺部10a)に変更する。また、部分コイル6P2の108*で示す接続先を、部分コイル6P1の5*で示す接続元(コイル導体巻き返し部3Rの通電方向関係が順方向のU1相のコイル辺部10b)に変更する。これにより、相単位コイル5U1は、部分コイル6P1のU1相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のU1相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のU1相のコイルユニット1bと、部分コイル6P1のU1相のコイルユニット1bとが、この順に直列接続される。
また、部分コイル6P1の12*で示す接続先を、部分コイル6P2の109*で示す接続元(コイル導体巻始め部3SのU2相のコイル辺部10a)に変更する。さらに、部分コイル6P2の116*で示す接続先を、部分コイル6P1の13*で示す接続元(コイル導体巻き返し部3Rの通電方向関係が順方向のU2相のコイル辺部10b)に変更する。これにより、相単位コイル5U2は、部分コイル6P1のU2相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のU2相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のU2相のコイルユニット1bと、部分コイル6P1のU2相のコイルユニット1bとが、この順に直列接続される。以上のことは、V相およびW相についても同様である。
図9は、3相回転電機の相構成を示す模式図である。同図は、部分コイル6P1、6P2が直列接続されたときの3相回転電機の相構成を示している。同図に示すように、相単位コイル5X1は、部分コイル6P1のX1相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のX1相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のX1相のコイルユニット1bと、部分コイル6P1のX1相のコイルユニット1bとが、この順に直列接続されている。同様に、相単位コイル5X2は、部分コイル6P1のX2相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のX2相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のX2相のコイルユニット1bと、部分コイル6P1のX2相のコイルユニット1bとが、この順に直列接続されている。相単位コイル5X1、5X2は直列接続されて相コイル6Xが形成されており、3相の相コイル6U、6V、6WはY結線されている。
図10は、部分コイル接続部6J近傍のスロット73の相配置を示す図である。同図は、図5(d)に示す矢印A1方向側視における部分コイル接続部6J近傍のスロット73の相配置を示している。ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2は、一方の部分コイル(径方向内周側の部分コイル6P2)が他方の部分コイル(径方向外周側の部分コイル6P1)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、所定スロット数分(本実施形態では1スロットピッチ分)、ずらして配置されている。
ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2間には、径方向外周側にコイル欠損部6J1を有し、径方向内周側にコイル欠損部6J2を有している。コイル欠損部6J1、6J2は、部分コイル6P1、6P2間のずらし量に相当する所定スロット数分(本実施形態では1スロットピッチ分)のコイル辺部10a、10bが収容されていない部分である。なお、同図では、部分コイル6P1、6P2の境界を境界線6Lで示している。
ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2間を接続する部分を部分コイル接続部6Jとする。本実施形態では、部分コイル接続部6Jは、コイル端部20a、20bを所定スロット数分(本実施形態では1スロットピッチ分)、長節化した長節コイル端部22a、22bである。具体的には、長節コイル端部22a、22bは、部分コイル6P1のコイル導体巻き返し部3Rにおいて、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する12本のコイル辺部10a、10bと、部分コイル6P2のコイル導体巻始め部3Sを含む可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する12本のコイル辺部10a、10bと、をそれぞれ接続する。
また、同図では、U1相のコイルユニット1aの接続順を、可動子磁極の移動方向の反相端子5TX側(矢印F12方向側)に延びる矢印で示し、U1相のコイルユニット1bの接続順を、可動子磁極の移動方向の相端子5TX側(矢印F11方向側)に延びる矢印で示している。同図に示すように、部分コイル接続部6Jでは、図5に示す矢印A1方向側に長節巻部3LWを有しており、矢印A2方向側に全節巻部3FWを有している。一方、部分コイル接続部6J以外では、矢印A1方向側および矢印A2方向側に、それぞれ全節巻部3FWを有している。
長節巻部3LWとは、長節コイル端部22aによって接続されるコイル辺部10a間(往き導体部11aおよび還り導体部12a間)のコイル辺ピッチが1磁極ピッチ(本実施形態では6スロットピッチ)より長いコイル導体部分をいう。長節コイル端部22bについても同様である。本実施形態では、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは、7スロットピッチ(1磁極ピッチの6スロットピッチ分とコイル欠損部6J1、6J2の1スロットピッチ分とを加算)に設定されている。
図11は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態におけるスロット73の相配置を示す図である。破線で囲まれたスロット73は、複相スロット732を示しており、破線で囲まれていないスロット73は、単相スロット731を示している。本実施形態では、3相回転電機は、2極12スロットを基本構成とする3相回転電機であり、毎極毎相スロット数は2である。つまり、本実施形態では、スロット73は、毎極毎相スロット数が整数である整数スロットである。また、同図に示すように、スロット73は、単相スロット731と複相スロット732とを有している。
本実施形態では、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータ周倍(本実施形態では2倍)のコイル辺部数が等しい等価構成の部分コイル6P1、6P2が直列接続されている。また、ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2は、一方の部分コイル(径方向内周側の部分コイル6P2)が他方の部分コイル(径方向外周側の部分コイル6P1)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、所定スロット数分(本実施形態では1スロットピッチ分)、ずらして配置されており、単相スロット731と複相スロット732とが混在している。そのため、全節波巻き構成の3相回転電機において、電機子巻線の起磁力分布における高調波成分を低減することができる。
また、同図では、スロット73内における相コイル6Xのコイル辺部数比をスロット73毎に示している。例えば、相端子5TUに接続されるスロット73(複相スロット732)は、4本のU1相のコイル辺部10a、10bと、4本のV2相のコイル辺部10a、10bと、が収容されている。つまり、当該スロット73では、U相およびV相は、それぞれ1のコイル辺部数比を有している。
相端子5TUに接続されるスロット73(複相スロット732)から可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に1スロットピッチ分、進んだスロット73(単相スロット731)は、4本のU1相のコイル辺部10a、10bと、4本のU2相のコイル辺部10a、10bと、が収容されている。つまり、当該スロット73では、U相は、2のコイル辺部数比を有している。
さらに、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に1スロットピッチ分、進んだスロット73(複相スロット732)は、4本のU2相のコイル辺部10a、10bと、4本のW1相のコイル辺部10a、10bと、が収容されている。つまり、当該スロット73では、U相およびW相は、それぞれ1のコイル辺部数比を有している。
このように、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する3つのスロット73、73、73において、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数比は、1、2、1の順に遷移し、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数比の分布が対称化されている。図11に示すように、1磁極ピッチ(本実施形態では6スロットピッチ)間隔毎に、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数比の分布が対称化されており、V相およびW相についても同様に、スロット73内における相コイル6V、6Wのコイル辺部数比の分布が、それぞれ対称化されている。
本実施形態では、直列接続される部分コイルの個数である部分コイル数は、毎極毎相スロット数以下の自然数(本実施形態では2)に設定されている。また、ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2間の所定スロット数分のずらし量は、毎極毎相スロット数から1を減じた自然数以下の自然数(本実施形態では1)に設定されている。そのため、コイル辺ピッチが大きくなりすぎ、巻線係数が低下することによる出力トルクの低下を抑制することができる。また、スロット73内における相コイル6Xのコイル辺部数比の分布を対称化することができるので、起磁力分布を正弦波に近づけて高調波成分の低減効果を高めることができる。よって、高調波対策が不要となり、3相回転電機の高効率化、小型化および低コスト化を図ることができる。
また、本実施形態では、ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2間には、ずらし量に相当する所定スロット数分のコイル欠損部6J1、6J2を有している。そのため、単相スロット731と複相スロット732とが混在する全節波巻き構成の3相回転電機を構成することが容易である。さらに、本実施形態では、隣接する部分コイル6P1、6P2間は、長節コイル端部22a、22bによって接続されている。そのため、コイル端部20a、20bを長節化することにより、隣接する部分コイル6P1、6P2同士を接続することができ、製作が容易である。
次に、ヘリカル巻シート状コイル3の巻線(コイル導体ともいう)について説明する。巻線は、導体表面がエナメルなどの絶縁層で被覆されている。巻線の断面形状は、特に限定されるものではなく、任意の断面形状とすることができる。例えば、断面円形状の丸線、断面多角形状の角線などの種々の断面形状の巻線を用いることができる。また、複数のより細い巻線素線を組み合わせた並列細線でも良い。並列細線を用いる場合、単線の場合と比べて巻線に発生する渦電流損を低減させることができ、3相回転電機の効率が向上する。また、コイル成形に要する力を小さくすることができるので、成形性が向上してコイル製作が容易になる。
コイルユニット1a、1bは、例えば、巻芯に巻線をヘリカル状に巻装して成形することができる。巻線は、1本毎に巻芯に巻装しても複数本を同時に巻装しても良い。コイル辺ピッチを確保するために、巻芯にピンや溝等を設けて、ピンや溝をガイドにして巻装することもできる。本実施形態では、2つの部分コイル6P1、6P2が可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、所定スロット数分(本実施形態では1スロットピッチ分)、ずらして配置される。そのため、コイル接続部6Jにおいて、コイル欠損部6J1、6J2に相当する巻線ピッチ分(本実施形態では1巻線ピッチ分)、間隔をあけて巻装すると良い。
そして、図2に示すように、すべての巻線を巻装後に巻芯を巻線から取り除き、コイル辺部10a、10bが紙面垂直方向に隣接して密着するように加圧成形する。加圧成形の際に巻線が損傷する場合を考慮して、加圧成形後に補修用の樹脂コーティング等を施しても良い。なお、コイルユニット1a、1bは、部分コイル6P1、6P2毎にそれぞれ巻装した後に、部分コイル6P1、6P2間を接続することもできる。
次に、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7のスロット73に装着する方法の一例を説明する。図12は、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7のスロット73に装着された状態を示す部分断面図である。まず、ヘリカル巻シート状コイル3を渦巻き状に巻き上げて、ステータコア7の内周側(同図に示すスロット開口部側(矢印H12方向側))に収容する。そして、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3の外周側シート(部分コイル6P1)から巻きほどきながらステータコア7のスロット73に取り付ける。ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7のスロット73に装着後は、相端子5TXにおける接合および引き出し処理ならびに中性点5Nにおける接合を行う。そして、3相分の接合後に接合部を絶縁処理して、ワニスの含浸、樹脂モールド等によって巻線をステータコア7に固定する。
図13は、ヘリカル巻シート状コイル3を示す模式図である。(a)は、相端子5TX側からのコイル辺部方向視におけるヘリカル巻シート状コイル3を示し、(b)は、相端子5TX側からの3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)視におけるヘリカル巻シート状コイル3を示している。同図では、2層のヘリカル巻シート状コイル3を模式的に示しており、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7のスロット73に装着されたときに、スロット底部側(矢印H11方向側)に配される層を実線で示し、スロット開口部側(矢印H12方向側)に配される層を破線で示している。なお、スロット底部側(矢印H11方向側)は、適宜、ステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)といい、スロット開口部側(矢印H12方向側)は、適宜、ステータコア7の内周側という。
本実施形態では、コイル導体巻始め部3Sは、6本のコイル辺部10a、10bを有している。同図では、コイル導体巻始め部3S側の2層の端部を白色丸印および白色三角印で示している。また、コイル導体巻き返し部3Rは、2磁極ピッチ分のコイル導体であり、18本のコイル辺部10a、10bを有している。同図では、コイル導体巻き返し部3R側の2層の端部を黒色丸印および黒色三角印で示している。
同図(b)に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着したとき、ヘリカル巻シート状コイル3とステータコア7のスロット底部との間に隙間SP1が生じている。また、ヘリカル巻シート状コイル3のシート両端部において、シート間に隙間SP2、SP3が生じている。なお、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の径方向内周側に滑らかに乗り上げるように巻き重なり、ヘリカル巻シート状コイル3の外周側シートとステータコア7のスロット底部との間の隙間は、同図に示す隙間SP1で最大になる。
図14は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す部分コイル接続部6J近傍の模式図である。(a)は、シート側面方向視(同図(b)に示す矢印A1方向視)におけるコイル導体の層渡り状態を示している。(b)は、シート厚さ方向視における相端子5TX側シート端部および部分コイル接続部6J近傍の巻線の接続状態を示している。(c)は、シート側面方向視(同図(b)に示す矢印A2方向視)におけるコイル導体の層渡り状態を示している。なお、同図(a)、(c)は、層間を接続する部分が最短となるようにコイル導体の層渡り状態を模式的に示しており、同図(b)で示す部分コイル接続部6J近傍を破線で囲まれる領域C1で表している。また、同図(a)、(b)では、相端子5TXとの接続を併せて図示している。なお、相内を接続する配策および相間を接続する配策は、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)およびスロット73の深さ方向(矢印H1方向)のうちの少なくとも一方向で、干渉回避を行うことができる。
同図(a)、(c)に示すように、ステータコア7の周方向長の2倍の2つの部分コイル6P1、6P2が直列接続されてヘリカル巻シート状コイル3が形成されており、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の周方向長の4倍の波巻き構成になっている。説明の便宜上、2層のヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)から順に、第1層、第2層、...、第9層、第10層で表されている。これにより、ステータコア7のスロット73内で径方向に巻き重なる周回を区別している。
コイル導体は、第1層のコイル導体巻始め部3Sから巻き始められ、第2層の第1コイル辺部群3G1に巻き回され、第1層の第2コイル辺部群3G2に巻き回されている。同図(a)に示すように、コイル導体巻始め部3Sは、U相の相端子5TUおよびV相の相端子5TVが引き出される2本のコイル辺部を含む6本のコイル辺部を有しており、6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されている。
第1コイル辺部群3G1は、コイル導体巻始め部3Sから巻き回された6本のコイル辺部を有しており、6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かって巻き回されている。また、第2コイル辺部群3G2は、第1コイル辺部群3G1から巻き回された6本のコイル辺部を有しており、6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かって巻き回されている。以降、同様にして、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、第2層、第1層、第2層、第1層と繰り返しながら、6本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されている。
ステータコア7の径方向において、第2層の第1コイル辺部群3G1と隣接する第1層のコイル辺部群を第3コイル辺部群3G3とする。第3コイル辺部群3G3は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)において、コイル導体巻始め部3Sおよび第2コイル辺部群3G2と隣接しており、W相の相端子5TWが引き出される1本のコイル辺部を含む6本のコイル辺部を有している。なお、同図では、ステータコア7の周方向1周分のヘリカル巻シート状コイル3を、それぞれ太線の境界線L11〜L14で示し、各周回の起点をシート1周始め3H1〜3H4、各周回の終点をシート1周終り3T1〜3T4で示している。
また、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3において、コイル導体巻始め部3Sからコイル導体巻き返し部3Rに掛けてステータコア7の径方向内周側に乗り上げるように巻き重なる2磁極ピッチ分のコイル導体をシート乗り上げ部3Aとする。シート乗り上げ部3Aにおける隙間SP1〜SP3は、図13(b)に示す隙間SP1〜SP3に対応している。
図14(a)に示すように、第2層の第1コイル辺部群3G1は、第1層のコイル導体巻始め部3Sに対して、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に全節巻部3FWのコイル辺ピッチ分(本実施形態では6スロットピッチ分)、移動した状態に形成されている。そして、第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部と、第2コイル辺部群3G2の6本のコイル辺部との間において、同相のコイル辺部間のコイル辺ピッチは、1磁極ピッチ(本実施形態では6スロットピッチ)になっている。つまり、波巻き巻線は、矢印A1方向側に全節巻部3FWを有している。
同図(c)に示すように、コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部と、第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部との間において、同相のコイル辺部間のコイル辺ピッチは、1磁極ピッチ(本実施形態では6スロットピッチ)になっている。つまり、波巻き巻線は、矢印A2方向側に全節巻部3FWを有している。なお、同図では、U1相のコイル辺部間のコイル辺ピッチを図示している。本実施形態では、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、第1層、第2層、第1層、第2層と繰り返しながら、6本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されるので、波巻き巻線は、同図(b)に示す矢印A1方向側および矢印A2方向側にそれぞれ全節巻部3FWを有している。
また、本実施形態では、部分コイル接続部6J、相端部5Tおよび引き回し部分5DWは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の同一側(図5および図14に示す矢印A1方向側)に配されている。引き回し部分5DWは、可動子磁極の移動方向の相端部5T側端部(矢印F11方向側のシート端部)における引き回し部分をいう。
具体的には、引き回し部分5DWは、接続点5JU1近傍のU1相のコイルユニット1bおよびU2相のコイルユニット1aと、接続点5JV1近傍のV1相のコイルユニット1bおよびV2相のコイルユニット1aと、接続点5JW1近傍のW1相のコイルユニット1bおよびW2相のコイルユニット1aと、中性点5N近傍のU2相のコイルユニット1bと、中性点5N近傍のV2相のコイルユニット1bと、中性点5N近傍のW2相のコイルユニット1bとが含まれる。
図15は、図14のコイル導体巻き返し部3R近傍の模式図である。(a)は、シート側面方向視(同図(b)に示す矢印A1方向視)におけるコイル導体の層渡り状態を示している。(b)は、シート厚さ方向視におけるシート両端部の巻線の接続状態を示しており、図5(d)と同じである。(c)は、シート側面方向視(同図(b)に示す矢印A2方向視)におけるコイル導体の層渡り状態を示している。図15(a)、(c)は、図14(a)、(c)とそれぞれ同じである。
図14および図15では、コイル導体巻き返し部3Rにおける巻線(V2相)の引回し順序を1番から始まる数字*で示している。2*〜3*において、実線で示すV2相のコイルユニット1aから破線で示すV2相のコイルユニット1bにつなぎ替えられており、巻線が引き回されている層(以下、巻線の引き回しレーンという。)は、第10層から第9層に変更されている。巻線の引き回しレーンは、4*〜5*において、第9層から第10層に変更され、7*〜8*において、第10層から第9層に変更され、11*〜12*において、第9層から第10層に変更されている。このように、2*〜5*では、同層に位置するコイル辺部を接続するために、一旦、ステータコア7の外周側の隙間SP3上部へ巻線の引き回しレーンを変更し、コイル端部高さ方向のステータコア7近傍で、もとの引き回しレーンに戻されている。V2相以外についても同様である。
3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)一端側(矢印A1方向側)のコイル端部の高さをコイル端部高さ5H1とする。図5に示すように、コイル端部高さ5H1は、U2相のコイルユニット1bの占有分と、W1相のコイルユニット1aの占有分と、W2相のコイルユニット1aの占有分と、V1相のコイルユニット1bの立ち上りの占有分と、を加算した高さになる。なお、立ち上り方向は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の一端側の相端部5T側視において、コイル辺部10aから3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)外方に離れていくコイル端部20aの方向をいう。コイル端部20bについても同様であり、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の他の位置においても同様である。
一方、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)他端側(矢印A2方向側)のコイル端部の高さは、V1相のコイルユニット1bの占有分と、V2相のコイルユニット1bの占有分と、W1相のコイルユニット1aの占有分と、W2相のコイルユニット1aの占有分と、を加算した高さになり、コイル端部高さ5H1と同じ高さである。可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の他の位置においても同様である。
これに対して、図14(b)に示すように、コイル接続部6Jのコイル端部高さは、コイル端部高さ5H1に対して、コイル端部高さ5H2分、高くなっている。以下、図16を参照しつつ、コイル接続部6J近傍のコイル端部高さについて説明する。図16は、部分コイル接続部6J近傍のコイル端部高さを説明する図である。(a)は、部分コイル接続部6Jのコイル端部高さを変更する前の状態を示し、図14に示す状態と同じである。(b)および(c)は、部分コイル接続部6Jのコイル端部高さを、コイル端部高さ5H1と同じ高さに変更した状態を示している。
ここで、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の一端側の相端部5T側視において、コイル辺部10aから3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)外方に離れていくコイル端部20aの立ち上り方向(矢印J1方向)と、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)との為す角を立ち上り傾斜角とする。また、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の一端側の相端部5T側視において、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)外方からコイル辺部10aに向かうコイル端部20aの立下り方向(矢印K1方向)と、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)との為す角を立下り傾斜角とする。これらのことは、コイル端部20bについても同様であり、長節コイル端部22a、22bについても同様である。
図16(a)では、長節コイル端部22aの立ち上り傾斜角θUJ1は、コイル端部20aの立ち上り傾斜角θUF1と同じ角度θ1に設定されている。また、長節コイル端部22aの立下り傾斜角θDJ1は、コイル端部20aの立下り傾斜角θDF1と同じ角度θ1に設定されている。長節コイル端部22aのコイル辺ピッチ(7スロットピッチ)は、コイル端部20aのコイル辺ピッチ(6スロットピッチ)と比べて長い。そのため、長節コイル端部22aの立ち上り傾斜角θUJ1が、コイル端部20aの立ち上り傾斜角θUF1と同じ角度θ1に設定されていると、部分コイル接続部6Jのコイル端部高さは、全節巻部3FWのコイル端部高さ5H1に対して、コイル端部高さ5H2分、高くなる。長節コイル端部22aの立下り傾斜角θDJ1についても同様である。
同図(b)では、長節コイル端部22aの立ち上り傾斜角θUJ1は、コイル端部20aの立ち上り傾斜角θUF1と比べて小さい角度θ2に設定されている。また、長節コイル端部22aの立下り傾斜角θDJ1は、コイル端部20aの立下り傾斜角θDF1と比べて小さい角度θ2に設定されている。これにより、部分コイル接続部6Jのコイル端部高さを、全節巻部3FWのコイル端部高さ5H1と同じ高さにすることができる。なお、以上のことは、長節コイル端部22bについても同様であり、U2相、V1相、V2相、W1相およびW2相についても同様である。
図17は、図14において、長節コイル端部22a、22bの立ち上り傾斜角θUJ1および立下り傾斜角θDJ1が変更された状態を示す模式図である。図17は、図14に示す状態から、長節コイル端部22a、22bの立ち上り傾斜角θUJ1および立下り傾斜角θDJ1が、図16(b)に示す角度に設定された状態を示している。これにより、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)一端側(矢印A1方向側)のコイル端部高さは、部分コイル接続部6Jを含めて、コイル端部高さ5H1で略均一化されている。なお、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の他端側(矢印A2方向側)のコイル端部高さは、コイル端部高さ5H1で略均一になっている。
なお、図17(b)の矢印RC1、RC2で示す位置において、U1相の巻線の引き回しレーン間隔は、隣接するV2相の巻線の引き回しレーン間隔と比べて、0.5スロットピッチ分、広くなっている。具体的には、同図(a)の破線で囲まれる領域RC11において、U1相の巻線の層渡り状態を示す層渡りCU11と、隣接するV2相の巻線の層渡り状態を示す層渡りCV21との間隔は、1.5スロットピッチ分になっており、他の部分と比べて0.5スロットピッチ分、広くなっている。
また、領域RC21において、U1相の巻線の層渡り状態を示す層渡りCU12と、隣接するV2相の巻線の層渡り状態を示す層渡りCV22との間隔は、1.5スロットピッチ分になっており、他の部分と比べて0.5スロットピッチ分、広くなっている。さらに、同図(c)の破線で囲まれる領域RC31では、巻線の層渡り状態が示されていない。これらは、部分コイル6P1、6P2が所定スロット数分(本実施形態では1スロットピッチ分)、ずらして配置されており、コイル欠損部6J1、6J2において、コイル辺部10a、10bが収容されていないことによる。
(第1参考形態)
次に、第1参考形態として、領域RC11における層渡りCU11と層渡りCV21との間隔を、他の部分と同じ間隔(1スロットピッチ分)に変更し、領域RC21における層渡りCU12と層渡りCV22との間隔を、他の部分と同じ間隔(1スロットピッチ分)に変更する場合を考える。図16(b)では、長節コイル端部22aの立ち上り傾斜角θUJ1が、コイル端部20aの立ち上り傾斜角θUF1と比べて小さい角度θ2に設定されている。また、長節コイル端部22aの立下り傾斜角θDJ1が、コイル端部20aの立下り傾斜角θDF1と比べて小さい角度θ2に設定されている。この場合、部分コイル接続部6Jにおいて、隣接する長節コイル端部22a間の距離が短くなる。隣接する長節コイル端部22b間および長節コイル端部22a、22bに隣接するコイル端部20a、20bについても同様である。
そこで、図16(c)に示すように、長節コイル端部22aの立ち上り傾斜角θUJ1を、コイル端部20aの立ち上り傾斜角θUF1と同じ角度θ1に設定する。さらに、長節コイル端部22aの立下り傾斜角θDJ1を、コイル端部20aの立下り傾斜角θDF1と比べて小さい角度θ3に設定する。このとき、部分コイル接続部6Jの巻き曲げ部21aは、可動子磁極の移動方向の相端子5TX側(矢印F11方向側)に、0.5スロットピッチ分、移動している。これにより、同図(b)に示す場合と比べて、部分コイル接続部6Jの隣接する長節コイル端部22a間の距離を大きく採ることができ、絶縁性が向上する。隣接する長節コイル端部22b間および長節コイル端部22a、22bに隣接するコイル端部20a、20bについても同様である。
図18は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す部分コイル接続部6J近傍の模式図である。図18(a)〜(c)は、図14(a)〜(c)にそれぞれ対応している。図18は、図14に示す状態から、長節コイル端部22a、22bの立ち上り傾斜角θUJ1および立下り傾斜角θDJ1が、図16(c)に示す角度に設定された状態を示している。
図18(a)に示すように、領域RC11において、層渡りCU11と層渡りCV21との間隔は、1スロットピッチ分になっており、他の部分と同じ間隔になっている。また、領域RC21において、層渡りCU12と層渡りCV22との間隔は、1スロットピッチ分になっており、他の部分と同じ間隔になっている。
しかしながら、部分コイル接続部6Jの巻き曲げ部21aが、可動子磁極の移動方向の相端子5TX側(矢印F11方向側)に、0.5スロットピッチ分、移動すると、部分コイル接続部6Jの長節コイル端部22aに積み重なるコイル端部20a、20bの数が増加する。そのため、図18(b)に示すように、コイル接続部6Jのコイル端部高さは、コイル端部高さ5H1に対して、コイル端部高さ5H3分、高くなる。したがって、部分コイル接続部6Jを含めて、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)一端側(矢印A1方向側)のコイル端部高さを略均一化することが困難になる。
第1実施形態では、長節コイル端部22aの立ち上り傾斜角θUJ1は、全節巻部3FWのコイル端部20aの立ち上り傾斜角θUF1と比べて小さい角度θ2に設定されている。また、長節コイル端部22aの立下り傾斜角θDJ1は、全節巻部3FWのコイル端部20aの立下り傾斜角θDF1と比べて小さい角度θ2に設定されている。さらに、長節コイル端部22aは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)一端側であって、長節コイル端部22aが配される側(矢印A1方向側)のコイル端部高さ5H1が略均一になるように形成されている。そのため、部分コイル接続部6Jを含めて、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)両端のコイル端部高さ5H1、5H1を略均一にすることができ、3相回転電機のコンパクト化および低コスト化を図ることができる。
(第2参考形態)
次に、第2参考形態として、相端部5Tおよび引き回し部分5DWが、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の一端側(図14に示す矢印A1方向側)に配され、部分コイル接続部6Jの長節コイル端部22a、22bが、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の他端側(同図に示す矢印A2方向側)に配されている場合を説明する。
図19は、部分コイル接続部6J近傍のスロット73の相配置を示す図である。同図は、図10に対応している。図19に示すように、本参考形態では、第1実施形態と比べてコイル欠損部6J1、6J2の配置が異なる。具体的には、部分コイル6P2内にコイル欠損部6J1を有し、境界線6Lで示される部分コイル6P1、6P2の境界部分にコイル欠損部6J2を有している。よって、2つの部分コイル6P1、6P2は、等価構成ではない。
また、同図に示すように、部分コイル接続部6Jでは、矢印A1方向側に全節巻部3FWを有しており、矢印A2方向側に長節巻部3LWを有している。一方、部分コイル接続部6J以外では、矢印A1方向側および矢印A2方向側に、それぞれ全節巻部3FWを有している。つまり、部分コイル接続部6Jの長節コイル端部22a、22bは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)他端側(矢印A2方向側)に配されている。なお、本参考形態においても、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは7スロットピッチ(1磁極ピッチの6スロットピッチ分とコイル欠損部6J1、6J2の1スロットピッチ分とを加算)に設定されている。
図20は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態におけるスロット73の相配置を示す図である。図20は、図11に対応している。図20に示すように、本参考形態においても、スロット73は、単相スロット731と複相スロット732とを有している。
例えば、相端子5TUに接続されるスロット73(複相スロット732)は、5本のU1相のコイル辺部10a、10bと、4本のV2相のコイル辺部10a、10bと、が収容されている。つまり、当該スロット73では、U相は5本のコイル辺部10a、10bを有している。また、相端子5TUに接続されるスロット73(複相スロット732)から可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に1スロットピッチ分、進んだスロット73(単相スロット731)は、3本のU1相のコイル辺部10a、10bと、5本のU2相のコイル辺部10a、10bと、が収容されている。つまり、当該スロット73では、U相は8本のコイル辺部10a、10bを有している。さらに、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に1スロットピッチ分、進んだスロット73(複相スロット732)は、3本のU2相のコイル辺部10a、10bと、5本のW1相のコイル辺部10a、10bと、が収容されている。つまり、当該スロット73では、U相は3本のコイル辺部10a、10bを有している。
このように、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する3つのスロット73、73、73において、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数は、5、8、3の順に遷移し、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数の分布が不適正である。V相およびW相についても同様であり、同図の不適正範囲F2は、スロット73内における相コイル6Xのコイル辺部数の分布が不適正なスロット73を示している。
一方、図11に示すように、第1実施形態では、いずれのスロット73においても、スロット73内における相コイル6Xのコイル辺部数の分布が適正化されている。例えば、相端子5TUに接続されるスロット73から、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する3つのスロット73、73、73において、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数は、4、8、4の順に遷移し、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数の分布が適正化されている。V相およびW相についても同様である。
第1実施形態では、部分コイル接続部6J、相端部5Tおよび引き回し部分5DWは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の同一側(図14に示す矢印A1方向側)に配されている。そのため、スロット73内における相コイル6Xのコイル辺部数を適正化することができ、単相スロット731と複相スロット732とが混在する全節波巻き構成の3相回転電機を構成することができる。
図21は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す部分コイル接続部6J近傍の模式図である。図21(a)〜(c)は、図14(a)〜(c)にそれぞれ対応している。図21(a)、(c)に示すように、本参考形態では、第1実施形態と比べてコイル欠損部6J1、6J2の配置が異なっている。また、同図(b)に示すように、相端部5Tおよび引き回し部分5DWは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の一端側(同図に示す矢印A1方向側)に配され、部分コイル接続部6Jの長節コイル端部22a、22bは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の他端側(同図に示す矢印A2方向側)に配されている。
同図(b)の矢印RC1、RC2で示す位置において、U1相の巻線の引き回しレーン間隔は、隣接するV2相の巻線の引き回しレーン間隔と比べて、0.5スロットピッチ分、広くなっている。具体的には、同図(c)の破線で囲まれる領域RC11において、層渡りCU11と層渡りCV21との間隔は、1.5スロットピッチ分になっており、他の部分と比べて0.5スロットピッチ分、広くなっている。また、領域RC21において、層渡りCU12と層渡りCV22との間隔は、1.5スロットピッチ分になっており、他の部分と比べて0.5スロットピッチ分、広くなっている。さらに、同図(a)の破線で囲まれる領域RC31では、巻線の層渡り状態が示されていない。
これらは、部分コイル6P1、6P2が所定スロット数分(本参考形態では1スロットピッチ分)、ずらして配置されており、コイル欠損部6J1、6J2において、コイル辺部10a、10bが収容されていないことによる。本参考形態では、部分コイル接続部6Jの長節コイル端部22a、22bが、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の他端側(同図に示す矢印A2方向側)に配されており、矢印A2方向側において、これらの巻線の引き回しレーン間隔が、他の部分と比べて広くなっている点で、第1実施形態と異なる。
また、同図(b)に示すように、コイル接続部6Jのコイル端部高さは、コイル端部高さ5H1に対して、コイル端部高さ5H2分、高くなっている。本参考形態においても、第1実施形態と同様にして、長節コイル端部22a、22bの立ち上り傾斜角θUJ1および立下り傾斜角θDJ1を設定することができる。これにより、部分コイル接続部6Jを含めて、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)両端のコイル端部高さ5H1、5H1を略均一にすることができ、3相回転電機のコンパクト化および低コスト化を図ることができる。なお、本参考形態におけるコイル導体巻き返し部3R近傍の配策は、第1実施形態と同様である。つまり、本参考形態のコイル導体巻き返し部3R近傍の配策は、図15(b)で示される。
<第2実施形態>
本実施形態では、3相回転電機は、2極18スロットを基本構成とする3相回転電機であり、毎極毎相スロット数が3である点で第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図22は、部分コイル6P1の接続状態を示す模式図である。図22(a)〜(d)は、図5(a)〜(d)にそれぞれ対応している。図22(a)に示すように、相単位コイル5U1は、U相端子5TUを起点にして矢印F12方向に巻装された後(実線で示すU1相のコイルユニット1aに相当。1*〜6*)、コイル引回し点5RU1で巻き返されて矢印F11方向に巻装されており(破線で示すU1相のコイルユニット1bに相当。7*〜12*)、接続点5JU1に接続されている。
相単位コイル5U2は、接続点5JU1を起点にして矢印F12方向に巻装された後(実線で示すU2相のコイルユニット1aに相当。13*〜17*)、コイル引回し点5RU2で巻き返されて矢印F11方向に巻装されており(破線で示すU2相のコイルユニット1bに相当。18*〜22*)、接続点5JU2に接続されている。相単位コイル5U3は、接続点5JU2を起点にして矢印F12方向に巻装された後(実線で示すU3相のコイルユニット1aに相当。23*〜28*)、コイル引回し点5RU3で巻き返されて矢印F11方向に巻装されており(破線で示すU3相のコイルユニット1bに相当。29*〜32*)、中性点5Nに接続されている。
相コイル6Uは、相単位コイル5U1、相単位コイル5U2および相単位コイル5U3が直列接続されている。相単位コイル5U1は、コイルユニット1aが相端子5TU側(矢印F11方向側)のシート端部のコイル導体巻始め部3Sから巻き始められ、反相端子5TU側(矢印F12方向側)のシート端部のコイル導体巻き返し部3Rで巻き返されてコイルユニット1bに接続されている。つまり、相単位コイル5U1は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)においてコイル導体が往復するように巻装されている。相単位コイル5U2、5U3についても同様であり、部分コイル6P2についても同様である。よって、本実施形態の波巻き巻線は、第1実施形態において既述した部分コイル6P1、6P2に関連する効果と同様の効果を得ることができる。
図23は、部分コイル6P1におけるスロット73の相配置を示す図である。同図は、シート両端部を除く相コイル6Xの繰り返し単位について、図22に示す矢印A1方向側視の相配置を示している。図23は、図7に対応している。部分コイル6P1は、全節波巻き構成であるので、部分コイル6P1を各スロット73に装着すると、スロット73は、単相スロット731のみを有し、複相スロット732を有しない。部分コイル6P2をスロット73に装着する場合についても同様である。なお、本実施形態では、1磁極ピッチは9スロットピッチ分であり、コイルユニット1a、1bは、コイル辺ピッチが9スロットピッチの全節巻部3FWを有している。
単相スロット731のみを有する3相回転電機は、単相スロット731と複相スロット732とが混在している3相回転電機と比べて、電機子巻線の起磁力分布における高調波成分が大きくなる。そこで、本実施形態においても、ステータ周倍のコイル辺部数が等しい2つの等価構成の部分コイル6P1、6P2を直列接続して、ヘリカル巻シート状コイル3を構成する。部分コイル6P1、6P2は、ステータコア7の径方向に隣接して配置する。また、一方の部分コイル(径方向内周側の部分コイル6P2)を他方の部分コイル(径方向外周側の部分コイル6P1)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、所定スロット数分(本実施形態では1スロットピッチ分)、ずらして配置する。これにより、単相スロット731と複相スロット732とを混在させて、電機子巻線の起磁力分布における高調波成分を低減させることができる。
図24は、部分コイル6P1、6P2のコイル導体巻始め部3S近傍およびコイル導体巻き返し部3Rにおけるスロット73の相配置を示す図である。同図は、図22(d)に示す矢印A1方向側視におけるシート両端部のスロット73の相配置を示しており、図8に対応している。部分コイル6P1は、第2層が第1層に対して、可動子磁極の移動方向の反相端子5TX側(矢印F12方向側)に、全節巻部3FWのコイル辺ピッチ分(本実施形態では9スロットピッチ分)移動した状態に形成されている。部分コイル6P2についても同様である。そのため、全節波巻き構成のヘリカル巻シート状コイル3を容易に製作することができる。
また、部分コイル6P1は、1番から始まる数字*と矢印でU相の相コイル6Uの接続順を示し、部分コイル6P2は、101番から始まる数字*と矢印でU相の相コイル6Uの接続順を示している。具体的には、部分コイル6P1の相単位コイル5U1は、1*〜5*で示す順に接続され、6*で示す接続を介して相単位コイル5U2に接続されている。相単位コイル5U2は、7*〜11*で示す順に接続され、12*で示す接続を介して相単位コイル5U3に接続されている。相単位コイル5U3は、13*〜18*で示す順に接続され、中性点5Nに接続されている。部分コイル6P2についても同様である。
ここで、部分コイル6P1の3*で示す接続先を、部分コイル6P2の101*で示す接続元(コイル導体巻始め部3SのU1相のコイル辺部10a)に変更する。また、部分コイル6P2の106*で示す接続先を、部分コイル6P1の4*で示す接続元(コイル導体巻き返し部3Rの通電方向関係が順方向のU1相のコイル辺部10b)に変更する。これにより、相単位コイル5U1は、部分コイル6P1のU1相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のU1相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のU1相のコイルユニット1bと、部分コイル6P1のU1相のコイルユニット1bとが、この順に直列接続される。
また、部分コイル6P1の9*で示す接続先を、部分コイル6P2の107*で示す接続元(コイル導体巻始め部3SのU2相のコイル辺部10a)に変更する。さらに、部分コイル6P2の112*で示す接続先を、部分コイル6P1の10*で示す接続元(コイル導体巻き返し部3Rの通電方向関係が順方向のU2相のコイル辺部10b)に変更する。これにより、相単位コイル5U2は、部分コイル6P1のU2相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のU2相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のU2相のコイルユニット1bと、部分コイル6P1のU2相のコイルユニット1bとが、この順に直列接続される。
また、部分コイル6P1の15*で示す接続先を、部分コイル6P2の113*で示す接続元(コイル導体巻始め部3SのU3相のコイル辺部10a)に変更する。さらに、部分コイル6P2の118*で示す接続先を、部分コイル6P1の16*で示す接続元(コイル導体巻き返し部3Rの通電方向関係が順方向のU3相のコイル辺部10b)に変更する。これにより、相単位コイル5U3は、部分コイル6P1のU3相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のU3相のコイルユニット1aと、部分コイル6P2のU3相のコイルユニット1bと、部分コイル6P1のU3相のコイルユニット1bとが、この順に直列接続される。以上のことは、V相およびW相についても同様である。このようにして、相単位コイル5X1、5X2、5X3が直列接続されて相コイル6Xが形成され、3相の相コイル6U、6V、6WがY結線される。
図25は、部分コイル接続部6J近傍のスロット73の相配置を示す図である。同図は、図22(d)に示す矢印A1方向側視における部分コイル接続部6J近傍のスロット73の相配置を示している。図25は、図10に対応している。ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2は、一方の部分コイル(径方向内周側の部分コイル6P2)が他方の部分コイル(径方向外周側の部分コイル6P1)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、所定スロット数分(本実施形態では1スロットピッチ分)、ずらして配置されている。
本実施形態においても、ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2間には、径方向外周側にコイル欠損部6J1を有し、径方向内周側にコイル欠損部6J2を有している。また、部分コイル接続部6Jは、コイル端部20a、20bを所定スロット数分(本実施形態では1スロットピッチ分)、長節化した長節コイル端部22a、22bであり、同図では、長節コイル端部22a、22bによって接続されるコイル辺部10a、10bを破線で示している。
具体的には、長節コイル端部22a、22bは、部分コイル6P1のコイル導体巻き返し部3Rにおいて、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する18本のコイル辺部10a、10bと、部分コイル6P2のコイル導体巻始め部3Sを含む可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する18本のコイル辺部10a、10bと、をそれぞれ接続する。
また、同図に示すように、部分コイル接続部6Jでは、図22(d)に示す矢印A1方向側に長節巻部3LWを有しており、矢印A2方向側に全節巻部3FWを有している。一方、部分コイル接続部6J以外では、矢印A1方向側および矢印A2方向側に、それぞれ全節巻部3FWを有している。なお、本実施形態では、長節巻部3LWのコイル辺ピッチは、10スロットピッチ(1磁極ピッチの9スロットピッチ分とコイル欠損部6J1、6J2の1スロットピッチ分とを加算)に設定されている。
図26は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態におけるスロット73の相配置を示す図である。図26は、図11に対応している。本実施形態では、3相回転電機は、2極18スロットを基本構成とする3相回転電機であり、毎極毎相スロット数は3である。つまり、スロット73は、毎極毎相スロット数が整数である整数スロットである。また、同図に示すように、スロット73は、単相スロット731と複相スロット732とを有している。
本実施形態においても、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータ周倍(本実施形態では2倍)のコイル辺部数が等しい等価構成の部分コイル6P1、6P2が直列接続されている。また、ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2は、一方の部分コイル(径方向内周側の部分コイル6P2)が他方の部分コイル(径方向外周側の部分コイル6P1)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、所定スロット数分(本実施形態では1スロットピッチ分)、ずらして配置されており、単相スロット731と複相スロット732とが混在している。そのため、全節波巻き構成の3相回転電機において、電機子巻線の起磁力分布における高調波成分を低減することができる。
また、例えば、相端子5TUに接続されるスロット73(複相スロット732)は、4本のU1相のコイル辺部10a、10bと、4本のV3相のコイル辺部10a、10bと、が収容されている。つまり、当該スロット73では、U相およびV相は、それぞれ1のコイル辺部数比を有している。
相端子5TUに接続されるスロット73(複相スロット732)から可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に1スロットピッチ分、進んだスロット73(単相スロット731)は、4本のU1相のコイル辺部10a、10bと、4本のU2相のコイル辺部10a、10bと、が収容されている。つまり、当該スロット73では、U相は、2のコイル辺部数比を有している。
さらに、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に1スロットピッチ分、進んだスロット73(単相スロット731)は、4本のU2相のコイル辺部10a、10bと、4本のU3相のコイル辺部10a、10bと、が収容されている。つまり、当該スロット73では、U相は、2のコイル辺部数比を有している。
さらに、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に1スロットピッチ分、進んだスロット73(複相スロット732)は、4本のU3相のコイル辺部10a、10bと、4本のW1相のコイル辺部10a、10bと、が収容されている。つまり、当該スロット73では、U相およびW相は、それぞれ1のコイル辺部数比を有している。
このように、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する4つのスロット73、73、73、73において、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数比は、1、2、2、1の順に遷移し、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数比の分布が対称化されている。図26に示すように、1磁極ピッチ(本実施形態では9スロットピッチ)間隔毎に、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数比の分布が対称化されており、V相およびW相についても同様に、スロット73内における相コイル6V、6Wのコイル辺部数比の分布が、それぞれ対称化されている。
本実施形態においても、部分コイル数は、毎極毎相スロット数以下の自然数(本実施形態では2)に設定されている。また、ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2間の所定スロット数分のずらし量は、毎極毎相スロット数から1を減じた自然数以下の自然数(本実施形態では1)に設定されている。よって、本実施形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
また、ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2間には、ずらし量に相当する所定スロット数分のコイル欠損部6J1、6J2を有している。さらに、隣接する部分コイル6P1、6P2間は、長節コイル端部22a、22bによって接続されている。よって、本実施形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
図27は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す部分コイル接続部6J近傍の模式図である。図27(a)〜(c)は、図14(a)〜(c)にそれぞれ対応している。
図27(a)、(c)に示すように、ステータコア7の周方向長の2倍の2つの部分コイル6P1、6P2が直列接続されてヘリカル巻シート状コイル3が形成されており、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の周方向長の4倍の波巻き構成になっている。また、コイル導体巻始め部3Sは、U相の相端子5TUおよびV相の相端子5TVが引き出される2本のコイル辺部を含む9本のコイル辺部を有しており、9本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されている。
第1コイル辺部群3G1は、コイル導体巻始め部3Sから巻き回された9本のコイル辺部を有しており、9本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かって巻き回されている。また、第2コイル辺部群3G2は、第1コイル辺部群3G1から巻き回された9本のコイル辺部を有しており、9本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かって巻き回されている。なお、第3コイル辺部群3G3は、W相の相端子5TWが引き出される1本のコイル辺部を含む9本のコイル辺部を有している。
図27(a)に示すように、第2層の第1コイル辺部群3G1は、第1層のコイル導体巻始め部3Sに対して、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に全節巻部3FWのコイル辺ピッチ分(本実施形態では9スロットピッチ分)、移動した状態に形成されている。そして、第1コイル辺部群3G1の9本のコイル辺部と、第2コイル辺部群3G2の9本のコイル辺部との間において、同相のコイル辺部間のコイル辺ピッチは、1磁極ピッチ(本実施形態では9スロットピッチ)になっている。つまり、波巻き巻線は、矢印A1方向側に全節巻部3FWを有している。
同図(c)に示すように、コイル導体巻始め部3Sの9本のコイル辺部と、第1コイル辺部群3G1の9本のコイル辺部との間において、同相のコイル辺部間のコイル辺ピッチは、1磁極ピッチ(本実施形態では9スロットピッチ)になっている。つまり、波巻き巻線は、矢印A2方向側に全節巻部3FWを有している。可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、第1層、第2層、第1層、第2層と繰り返しながら、9本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されるので、波巻き巻線は、同図(b)に示す矢印A1方向側および矢印A2方向側にそれぞれ全節巻部3FWを有している。なお、部分コイル接続部6J、相端部5Tおよび引き回し部分5DWは、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)の同一側(図22および図27に示す矢印A1方向側)に配されている。よって、本実施形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
図28は、図27のコイル導体巻き返し部3R近傍の模式図である。図28(a)〜(c)は、図15(a)〜(c)にそれぞれ対応している。なお、図28(b)は、図22(d)と同じであり、図28(a)、(c)は、図27(a)、(c)とそれぞれ同じである。図27および図28では、コイル導体巻き返し部3Rにおける巻線(V3相)の引回し順序を1番から始まる数字*で示している。
2*〜3*において、実線で示すV3相のコイルユニット1aから破線で示すV3相のコイルユニット1bにつなぎ替えられており、巻線の引き回しレーンは、第10層から第9層に変更されている。巻線の引き回しレーンは、4*〜5*において、第9層から第10層に変更され、7*〜8*において、第10層から第9層に変更され、11*〜12*において、第9層から第10層に変更されている。このように、一旦、ステータコア7の外周側の隙間SP3上部へ巻線の引き回しレーンを変更し、コイル端部高さ方向のステータコア7近傍で、もとの引き回しレーンに戻されている。V3相以外についても同様である。
3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)一端側(矢印A1方向側)のコイル端部の高さをコイル端部高さ5H4とする。図22に示すように、コイル端部高さ5H4は、V1相のコイルユニット1bの占有分と、V2相のコイルユニット1bの占有分と、V3相のコイルユニット1bの占有分と、W2相のコイルユニット1aの占有分と、W3相のコイルユニット1aの占有分と、V3相のコイルユニット1bの立ち上りの0.5スロットピッチ分と、を加算した高さになる。可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の他の位置においても同様である。
一方、3相回転電機の軸方向(矢印G1方向)他端側(矢印A2方向側)のコイル端部の高さは、U3相のコイルユニット1aの占有分と、V1相のコイルユニット1aの占有分と、W1相のコイルユニット1bの占有分と、W2相のコイルユニット1bの占有分と、W3相のコイルユニット1bの占有分と、V1相のコイルユニット1aの立ち上りの0.5スロットピッチ分と、を加算した高さになり、コイル端部高さ5H4と同じ高さである。可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)の他の位置においても同様である。
これに対して、図27(b)に示すように、コイル接続部6Jのコイル端部高さは、コイル端部高さ5H4に対して、コイル端部高さ5H5分、高くなっている。よって、第1実施形態と同様にして、部分コイル接続部6Jの長節コイル端部22a、22bの立ち上り傾斜角θUJ1および立下り傾斜角θDJ1を変更すると好適である。これにより、本実施形態の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
<第3実施形態>
本実施形態は、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致している点で第1実施形態と異なる。図14に示すように、第1実施形態では、コイル導体は、第1層のコイル導体巻始め部3Sから巻き始められ、第2層の第1コイル辺部群3G1に巻き回されている。既述のとおり、コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されており、第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かってコイル導体が巻き回されている。
以降、同様にして、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、第1層、第2層、第1層、第2層と繰り返しながら、6本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されている。したがって、ヘリカル巻方向は、反時計回り(左回り)になっている。ここで、ヘリカル巻方向とは、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)のコイル導体巻始め部3S側視において、コイル導体巻始め部3Sから離れていくコイル導体の巻方向をいう。
また、相端部5T側からの3相回転電機の軸方向視において渦巻き状に装着したヘリカル巻シート状コイル3で、相端部5Tを始点とした場合の渦巻き方向を円環巻方向とする。図13(b)に示すように、第1実施形態では、円環巻方向は、時計回り(右回り)になっている。つまり、第1実施形態では、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致していない。一方、本実施形態では、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、いずれも時計回り(右回り)になっており、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図29は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示すコイル導体巻き返し部3R近傍の模式図である。図29(a)〜(c)は、図15(a)〜(c)にそれぞれ対応している。本実施形態では、コイル導体は、第2層のコイル導体巻始め部3Sから巻き始められ、第1層の第1コイル辺部群3G1、第2層の第2コイル辺部群3G2の順に巻き回されている。コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されており、第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かってコイル導体が巻き回されている。
また、第2コイル辺部群3G2の6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されている。以降、同様にして、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、第1層、第2層、第1層、第2層と繰り返しながら、6本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されている。したがって、本実施形態では、ヘリカル巻方向は、時計回り(右回り)になっている。
図30は、ヘリカル巻シート状コイル3を示す模式図である。図30(a)、(b)は、図13(a)、(b)にそれぞれ対応している。第1実施形態と同様に、同図では、コイル導体巻始め部3S側の2層の端部を白色丸印および白色三角印で示しており、コイル導体巻き返し部3R側の2層の端部を黒色丸印および黒色三角印で示している。
図30(b)に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着したとき、ヘリカル巻シート状コイル3とステータコア7のスロット底部との間に隙間SP4が生じている。また、ヘリカル巻シート状コイル3のシート両端部において、径方向外周側に隙間SP5が生じ、径方向内周側に隙間SP6が生じている。隙間SP4は、第1実施形態の隙間SP1に対応し、隙間SP5は、第1実施形態の隙間SP2に対応し、隙間SP6は、第1実施形態の隙間SP3に対応している。なお、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の径方向内周側に滑らかに乗り上げるように巻き重なり、ヘリカル巻シート状コイル3の外周側シートとステータコア7のスロット底部との間の隙間は、同図に示す隙間SP4で最大になる。
同図(b)に示すように、円環巻方向は、時計回り(右回り)になっており、本実施形態では、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、いずれも時計回り(右回り)になっている。つまり、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致している。なお、図29に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の周方向長の4倍の波巻き構成であるので、仮に、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7のスロット73に隙間なく装着することができたとすると、ヘリカル巻シート状コイル3は、第1層〜第8層に収容することができる。同図では、第8層と第9層との境界線を理想収容ライン3ILで表している。
図31は、隙間詰めの第1段階におけるシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図31(a)〜(c)は、図29(a)〜(c)にそれぞれ対応している。具体的には、図31は、図29に示すコイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部を、ステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動(第2層から第1層に移動)させた状態を示している。これら6本のコイル辺部は、他のコイル辺部の配置の影響を受けることなく、容易にステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)へ移動させることができる。なお、6本のコイル辺部を移動させると、隙間SP5は消滅するが、6本のコイル辺部と第3層のヘリカル巻シート状コイル3との間に、隙間SP51が生じる。
また、同図(c)に示すように、これらの6本のコイル辺部をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させるとき、6本のコイル辺部から巻回される巻線をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させる。つまり、6本のコイル辺部から巻回される巻線は、一旦、ステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)上部へ巻線の引き回しレーンが変更され、コイル端部高さ方向のステータコア7近傍で、もとの引き回しレーンに戻されている。
同図(c)は、同図(b)に示す矢印A2方向視であるので、コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かってコイル導体が巻き回されている。そのため、ステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させた巻線は、他のコイル辺部の配策の影響を受けることなく、第1コイル辺部群3G1に向かってコイル導体を巻回すことができる。
本実施形態では、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、いずれも時計回り(右回り)になっており、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致している。そのため、上記6本のコイル辺部に巻回される巻線をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させることが容易である。なお、同図(b)に示すように、矢印A1方向側において、相端子5TXが引き出されているので、矢印A2方向側は、矢印A1方向側と比べて、巻線の引き回しレーンを変更するスペース3G11を確保することが容易である。また、同図では、コイル導体巻始め部3Sの移動後の境界線L11〜L14を境界線L21〜L24で示している。
図32は、隙間詰めの第2段階におけるシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形方法を示す模式図である。図33は、隙間詰めの第2段階におけるシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図32(a)〜(c)および図33(a)〜(c)は、図31(a)〜(c)にそれぞれ対応している。具体的には、図31に示す状態のヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に寄せて、隙間SP4、SP51を詰める。図32は、このときのシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形方法を示しており、図33は、隙間詰め後のシート乗り上げ部3Aの状態を示している。図32および図33では、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形状態を境界線L31〜L35で示している。
図32に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に寄せると、第3層〜第10層のヘリカル巻シート状コイル3は、シート乗り上げ部3A以外では、矢印A3方向に移動し、シート乗り上げ部3Aでは、矢印A4方向に移動する。具体的には、第3層および第4層のヘリカル巻シート状コイル3は、境界線L31、L32で狭持される領域に移動する。第5層および第6層のヘリカル巻シート状コイル3は、境界線L32、L33で狭持される領域に移動する。第7層〜第10層のヘリカル巻シート状コイル3についても同様である。
可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)のシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形開始位置をシート曲げ開始部3A1とし、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)のシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形終了位置をシート曲げ終了部3A2とする。シート乗り上げ部3Aのコイル端部の一部(部位3A3a、3A3b)は、シート曲げ開始部3A1からシート曲げ終了部3A2までの間、円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜するように変形される。
図33は、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の一部が円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜して変形されている状態を示している。シート乗り上げ部3Aのコイル端部が変形されると、隙間SP4は隙間SP41になり、隙間SP51は隙間SP52になる。隙間SP41は、変形前の隙間SP4と比べて小さくなっており、隙間SP52は、変形前の隙間SP51と比べて小さくなっている。
本実施形態では、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致しているので、コイル導体巻始め部3Sから巻回される巻線をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させることが容易であり、コイル導体巻始め部3Sから巻回される巻線がコイル導体巻始め部3Sに巻き重なるヘリカル巻シート状コイル3と干渉することを回避できる。そのため、ステータコア7の径方向に巻き重なる部分(シート乗り上げ部3A)を効率良く変形させることができる。
よって、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着したときに、ステータコア7とヘリカル巻シート状コイル3との間に生じる隙間SP4およびヘリカル巻シート状コイル3のシート端部に生じる隙間SP5を効率良く低減させることができる。したがって、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3をコンパクトにすることができ、3相回転電機を小型化および低コスト化することができる。
図34は、隙間詰めの第3段階におけるシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図34(a)〜(c)は、図33(a)〜(c)にそれぞれ対応している。図33に示すように、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形前後において隙間SP6の大きさに変更はなく、コイル導体巻き返し部3Rの一部が第9層および第10層に突出している。そこで、図34に示すように、コイル導体巻き返し部3Rの先端側2相(V相およびW相)分のコイル端部3R1を、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)と略平行に配設する。
3*〜5*における巻線の引き回しは、スロット73内で干渉するコイル導体が無いので、コイル導体巻き返し部3Rの先端側2相(V相およびW相)分の配策を調整することが容易である。これにより、コイル導体巻き返し部3Rは、第9層のみに突出し、第10層には突出しない。よって、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7の径方向に巻き重ねられたときに、シート乗り上げ部3Aの径方向厚みは、理想収容ライン3ILに対して1層分の増加に抑制することができ、シート乗り上げ部3Aをさらにコンパクトにすることができる。なお、同図では、配策変更後の隙間SP6を隙間SP61で示している。
本実施形態では、シート乗り上げ部3Aのコイル端部は、円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜して変形された部位3A3a、3A3bをもち、コイル導体巻き返し部3Rの先端側2相(V相およびW相)分のコイル端部3R1は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)と略平行に配設されている。そのため、コイル導体巻き返し部3Rの径方向内周側に突出する領域を低減させることができ、シート乗り上げ部3Aの径方向厚みを低減させることができる。したがって、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3をさらにコンパクトにすることができる。
次に、第1実施形態の波巻き巻線において、同様の隙間詰めを行いシート乗り上げ部3Aのコイル端部を変形した場合について説明する。既述のとおり、第1実施形態では、ヘリカル巻方向は反時計回り(左回り)であり、円環巻方向は、時計回り(右回り)であるので、ヘリカル巻方向および円環巻方向は一致していない。
図35は、隙間詰め後のシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図35(a)〜(c)は、図34(a)〜(c)にそれぞれ対応している。なお、図35では、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形状態を境界線L41〜L45で示している。また、同図に示すように、コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻き回されているU1相のコイル端部、U2相のコイル端部およびW1相のコイル端部をシート干渉部3SAという。
ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に寄せて、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の一部(部位3A3a、3A3b)を変形させたとき、境界線L41、L42で狭持されるヘリカル巻シート状コイル3とシート干渉部3SAとが干渉する。そこで、同図(c)に示すように、シート曲げ終了部3A2を2スロットピッチ分、円環巻方向と反対方向に移動させる。これにより、シート干渉部3SAにおける干渉を回避することができる。
次に、コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻回される巻線をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させる場合を考える。同図(c)は、同図(b)に示す矢印A2方向視であるので、コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かってコイル導体が巻き回されている。そして、コイル導体巻始め部3Sから巻回された第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されている。
このとき、第1コイル辺部群3G1の径方向外周側には、第3コイル辺部群3G3が配設されているので、コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻回す巻線をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させようとすると、第1層および第2層の2つのレーンに亘って移動させる必要がある。そのため、ステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させた巻線をスロット73内のコイル導体部へ戻すための配策が煩雑となる。このように、第1実施形態では、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致していないので、コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻回される巻線をステータコア7の外周側(ステータコアヨーク71側)に移動させて、シート干渉部3SAにおける干渉を回避することは、容易ではない。
同図は、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の一部(部位3A3a、3A3b)を円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜して変形させた状態を示している。シート乗り上げ部3Aのコイル端部が変形されると、隙間SP1は隙間SP11になり、隙間SP2は隙間SP21になり、隙間SP3は隙間SP31になる。なお、同図では、矢印A1方向側視において、コイル導体巻き返し部3Rの先端側の6本のコイル辺部10a、10bを第10層から第9層に移動させている。
上記6本のコイル辺部10a、10bは、ヘリカル巻シート状コイル3のシート端部のコイル導体が巻き返される部分であるので、他のコイル辺部10a、10bの配置の影響を受けることなく、第10層から第9層に移動させることができる。しかしながら、同図(c)に示すように、これらの6本のコイル辺部10a、10bを接続するコイル端部の配策のために、第10層のスペースが必要であり、コイル導体巻き返し部3Rは、第9層および第10層に突出している。
以上により、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7の径方向に巻き重ねられたとき、シート乗り上げ部3Aの径方向厚みは、理想収容ライン3ILに対して2層分、増加する。このように、第3実施形態に示すヘリカル巻シート状コイル3は、第1実施形態に示すヘリカル巻シート状コイル3と比べて、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3をコンパクトにすることができ、3相回転電機を小型化および低コスト化することができる。
なお、本実施形態では、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、時計回り(右回り)で一致しているが、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、反時計回り(左回り)で一致させることもできる。また、第2実施形態においても、第3実施形態と同様にして、ヘリカル巻シート状コイル3をコンパクトにすることができ、3相回転電機を小型化および低コスト化することができる。
<まとめ>
第1実施形態および第3実施形態では、2極12スロットを基本構成とする3相回転電機を例に説明し、第2実施形態では、2極18スロットを基本構成とする3相回転電機を例に説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明は、整数スロットの3相回転電機に適用することができ、極数およびスロット数は、これらに限定されるものではない。
本発明の波巻き巻線は、コイル導体が全節波巻き構成となるように巻装されており、ステータ周倍のコイル辺部数が等しい等価構成の部分コイルが複数個直列接続されている。ステータコア7の径方向に隣接する部分コイルは、一方の部分コイルが他方の部分コイルに対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、所定スロット数分、ずらして配置されている。
さらに、本発明の波巻き巻線では、部分コイル数は、毎極毎相スロット数以下の自然数に設定され、隣接する部分コイル間の上記所定スロット数分のずらし量は、毎極毎相スロット数から1を減じた自然数以下の自然数に設定されている。毎極毎相スロット数、部分コイル数、ずらし量、ずらし量の総和の関係の一例を表1に示す。ここで、ずらし量の総和とは、隣接する部分コイル間のずらし量を全て加算したものであり、部分コイル数が2の場合は、ずらし量の総和は、ずらし量と一致する。
表1のNo.1は、第1実施形態および第3実施形態の波巻き巻線を示しており、No.2は、第2実施形態の波巻き巻線を示している。これら以外にも、例えば、毎極毎相スロット数が3であり、かつ、部分コイル数が2の場合、No.3で示す形態が考えられる。同表に示すように、No.3で示す形態は、ずらし量が2に設定されている。
図36は、毎極毎相スロット数が3、部分コイル数が2、部分コイル6P1、6P2間のずらし量が2の場合におけるスロット73の相配置を示す図である。図36は、図26に対応している。図36は、表1のNo.3で示す形態のスロット73の相配置を示しており、隣接する部分コイル6P1、6P2間のずらし量は2スロットピッチ分になっている。図36に示すように、表1のNo.3で示す形態は、一方の部分コイル(径方向内周側の部分コイル6P2)が他方の部分コイル(径方向外周側の部分コイル6P1)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、2スロットピッチ分、ずらして配置されており、単相スロット731と複相スロット732とが混在している。
また、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する5つのスロット73、73、73、73、73において、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数比は、1、1、2、1、1の順に遷移し、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数比の分布が対称化されている。同図に示すように、1磁極ピッチ(同図では9スロットピッチ)間隔毎に、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数比の分布が対称化されており、V相およびW相についても同様に、スロット73内における相コイル6V、6Wのコイル辺部数比の分布が、それぞれ対称化されている。
また、ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2間には、ずらし量に相当する2スロットピッチ分のコイル欠損部6J1、6J2を有している。さらに、隣接する部分コイル6P1、6P2間は、長節コイル端部22a、22bによって接続されている。よって、表1のNo.3で示す形態の波巻き巻線は、上記実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
表1に示すように、毎極毎相スロット数が3以上のときは、部分コイル数を3以上にすることができる。例えば、毎極毎相スロット数が3であり、かつ、部分コイル数が3の場合、表1のNo.4で示す形態が考えられる。
図37は、毎極毎相スロット数が3、部分コイル数が3、部分コイル6P1、6P2、6P3間のずらし量がそれぞれ1の場合におけるスロット73の相配置を示す図である。図37は、図26および図36に対応している。図37は、表1のNo.4で示す形態のスロット73の相配置を示しており、隣接する部分コイル間(部分コイル6P1、6P2間および部分コイル6P2、6P3間)のずらし量は、それぞれ1スロットピッチ分になっている。
同図に示すように、表1のNo.4で示す形態は、一方の部分コイル(径方向内周側の部分コイル6P2)が他方の部分コイル(径方向外周側の部分コイル6P1)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、1スロットピッチ分、ずらして配置されている。また、一方の部分コイル(径方向内周側の部分コイル6P3)が他方の部分コイル(径方向外周側の部分コイル6P2)に対して可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に、1スロットピッチ分、ずらして配置されている。そして、単相スロット731と複相スロット732とが混在している。
また、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する5つのスロット73、73、73、73、73において、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数比は、1、2、3、2、1の順に遷移し、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数比の分布が対称化されている。同図に示すように、1磁極ピッチ(同図では9スロットピッチ)間隔毎に、スロット73内における相コイル6Uのコイル辺部数比の分布が対称化されており、V相およびW相についても同様に、スロット73内における相コイル6V、6Wのコイル辺部数比の分布が、それぞれ対称化されている。
また、ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2間には、ずらし量に相当する1スロットピッチ分のコイル欠損部6J1、6J2を有しており、ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P2、6P3間には、ずらし量に相当する1スロットピッチ分のコイル欠損部6J1、6J2を有している。さらに、隣接する部分コイル6P1、6P2間は、長節コイル端部22a、22bによって接続されており、隣接する部分コイル6P2、6P3間は、長節コイル端部22a、22bによって接続されている。よって、表1のNo.4で示す形態の波巻き巻線は、上記実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
表1のNo.2で示す形態(第2実施形態)の波巻き巻線は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する4つのスロット73、73、73、73において、スロット73内における相コイル6Xのコイル辺部数比が、1、2、2、1の順に遷移している。また、表1のNo.3で示す形態の波巻き巻線は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する5つのスロット73、73、73、73、73において、スロット73内における相コイル6Xのコイル辺部数比が、1、1、2、1、1の順に遷移している。
これに対して、表1のNo.4で示す形態の波巻き巻線は、可動子磁極の移動方向(矢印F1方向)に隣接する5つのスロット73、73、73、73、73において、スロット73内における相コイル6Xのコイル辺部数比が、1、2、3、2、1の順に遷移している。つまり、No.4で示す形態の波巻き巻線は、No.2で示す形態の波巻き巻線やNo.3で示す形態の波巻き巻線と比べて、スロット73内における相コイル6Xのコイル辺部数比の分布がより正弦波に近くなっている。
表1のNo.4で示す形態の波巻き巻線は、隣接する部分コイル6P1〜6P3間のずらし量が、いずれも1に設定されている。また、隣接する部分コイル6P1〜6P3間のずらし量の総和が、毎極毎相スロット数3から1を減じた2に設定されている。このように、本発明の波巻き巻線は、直列接続された3個以上の部分コイルにおいて、隣接する部分コイル間のずらし量がすべて等しく設定され、かつ、隣接する部分コイル間のずらし量の総和が毎極毎相スロット数から1を減じた自然数以下の自然数に設定されていると好適である。これにより、隣接する部分コイル間のずらし量、および、ずらし量の総和が規定されていない場合と比べて、電機子巻線の起磁力分布をより正弦波に近づけることができる。したがって、高調波成分の低減効果をさらに高めることができる。以上のことは、毎極毎相スロット数が4以上の場合も同様である。
なお、巻線の制約条件やコイル欠損部6J1、6J2のスロット数を考慮することもできる。巻線の制約条件には、例えば、相コイル6X内の直列導体数、スロット73内における直列導体数、波巻き巻線の周回数が挙げられる。相コイル6Xは、コイルユニット1a、1bを一対として形成されるので、部分コイル数が1の場合には、相コイル6X内の直列導体数は、2の倍数である必要がある。表1のNo.2で示す形態の波巻き巻線やNo.3で示す形態の波巻き巻線は、部分コイル数が2であるので、相コイル6X内の直列導体数は、4の倍数である必要がある。一方、No.4で示す形態の波巻き巻線は、部分コイル数が3であるので、相コイル6X内の直列導体数は、6の倍数である必要がある。
スロット73内における直列導体数は、原則として2の倍数である必要があり、波巻き巻線の周回数は、部分コイル数の倍数である必要がある。No.2で示す形態の波巻き巻線やNo.3で示す形態の波巻き巻線は、部分コイル数が2であるので、波巻き巻線の周回数は、2の倍数である必要がある。一方、No.4で示す形態の波巻き巻線は、部分コイル数が3であるので、波巻き巻線の周回数は、3の倍数である必要がある。このように、No.2で示す形態の波巻き巻線やNo.3で示す形態の波巻き巻線は、No.4で示す形態の波巻き巻線と比べて、巻線の制約条件が緩和されており、本発明の適用範囲を拡大することができる。
また、図26に示すように、表1のNo.2で示す形態(第2実施形態)の波巻き巻線では、2スロット数分のコイル欠損部6J1、6J2を有している。一方、図36に示すように、表1のNo.3で示す形態の波巻き巻線では、4スロット数分のコイル欠損部6J1、6J2を有している。No.4で示す形態の波巻き巻線についても同様である。よって、No.2で示す形態(第2実施形態)の波巻き巻線は、No.3で示す形態の波巻き巻線やNo.4で示す形態の波巻き巻線と比べて、コイル欠損部6J1、6J2を少なくすることができ、3相回転電機の性能劣化を抑制することができる。
<その他>
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、上記実施形態では、ヘリカル巻シート状コイル3を例に説明したが、本発明の波巻き巻線は、ヘリカル巻シート状コイル3に限定されるものではない。本発明の波巻き巻線は、例えば、1方向巻きコイルで全節波巻き構成にすることもできる。1方向巻きコイルは、コイル導体をステータコア7の周方向の1方向に巻装したものであり、3相回転電機の駆動時にコイル辺部に流れる電流方向が互いに逆方向になるように配設された一対のコイルを有している。具体的には、一対のコイルのうち、一方のコイルを他方のコイルに対して可動子磁極の移動方向に、1磁極ピッチ分、ずらして配設する。
また、上記実施形態では、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の周方向長の2倍の等価構成の部分コイルが直列接続されているが、本発明は、これに限定されるものではない。部分コイルは、ステータコアの周方向長の自然数倍であれば良い。
さらに、上記実施形態では、ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2のうち、径方向内周側の部分コイル6P2を、径方向外周側の部分コイル6P1に対して波巻進行方向に、所定スロット数分、ずらして配置しているが、本発明は、これに限定されるものではない。つまり、ステータコア7の径方向に隣接する部分コイル6P1、6P2のうち、径方向外周側の部分コイル6P1を、径方向内周側の部分コイル6P2に対して波巻進行方向と逆方向に、所定スロット数分、ずらして配置することもできる。
なお、本発明の波巻き巻線は、波巻き巻装方式の種々の3相回転電機に用いることができ、例えば、車両の駆動用電動機、発電機、産業用の電動機、発電機などに用いることができる。