以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態について、共通する箇所には共通の符号を付して対応させることにより、重複する説明を省略する。また、各図は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
<第1実施形態>
本実施形態の回転電機の波巻き巻線は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着したものである。まず、ヘリカル巻シート状コイル3の構成について詳説する。図1は、ヘリカル巻シート状コイル3の1相の単位コイル分を示す模式図である。(b)は、コイル導体が巻芯に巻装された状態を示しており、(c)は、(b)において、巻芯を取り除いた状態を示している。(d)は、紙面奥側(A側)のコイル導体の巻装状態(B側からの透視図)を示しており、(e)は、紙面手前側(B側)のコイル導体の巻装状態を示している。
図1の実線は、巻線ピッチS10の位置から6巻線ピッチ(1磁極ピッチ)毎にコイル導体が巻装された状態を示している。実線で示すコイルユニット1aは、巻線ピッチS10の位置において、紙面奥側(A側)から紙面手前側(B側)の方向に巻装されており、巻線ピッチS10、S16、S22、S28およびS34において、コイルユニット1aは、巻芯の短手方向(巻芯軸に垂直な方向)に直線状に延びるコイル辺部10aが形成されている。図1のA側からB側に向けてコイル導体が巻装されるときに形成されるコイル辺部10aを往き導体部11aと呼称し、B側からA側に向けて巻装されるときに形成されるコイル辺部10aを還り導体部12aと呼称する。往き導体部11aおよび還り導体部12aの同一側端部は、コイル辺部10aと一体に形成されるコイル端部20aによって接続されている。コイル端部20aは、巻線ピッチS13、S19、S25、S31およびS37において巻き曲げられて、巻き曲げ部21aがそれぞれ形成されている。
図1に示すように、本明細書では、半磁極ピッチ分のコイル端部20aと、往き導体部11aと、1磁極ピッチ分のコイル端部20aと、還り導体部12aと、半磁極ピッチ分のコイル端部20aと、を有するコイル導体をコイル要素4aと呼称する。コイル要素4aが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されて接続された状態のコイル導体をコイルユニット1aと呼称する。
図1の破線は、実線で示すコイルユニット1aと同様に、巻線ピッチS10の位置から6巻線ピッチ(1磁極ピッチ)毎にコイル導体が巻装された状態を示している。破線で示すコイルユニット1bは、巻線ピッチS10の位置において、紙面手前側(B側)から紙面奥側(A側)の方向に巻装されている点が実線で示すコイルユニット1aと異なる。破線で示すコイルユニット1bは、実線で示すコイルユニット1aと同様に巻線ピッチS10、S16、S22、S28およびS34においてコイル辺部10bが形成されており、コイル辺部10bは、往き導体部11bおよび還り導体部12bからなる。また、往き導体部11bおよび還り導体部12bの同一側端部は、コイル辺部10bと一体に形成されるコイル端部20bによって接続されている。コイル端部20bは、巻線ピッチS13、S19、S25、S31およびS37において巻き曲げられて、巻き曲げ部21bがそれぞれ形成されている。
コイルユニット1aと同様に、本明細書では、半磁極ピッチ分のコイル端部20bと、往き導体部11bと、1磁極ピッチ分のコイル端部20bと、還り導体部12bと、半磁極ピッチ分のコイル端部20bと、を有するコイル導体をコイル要素4bと呼称する。コイル要素4bが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されて接続された状態のコイル導体をコイルユニット1bと呼称する。実線で示すコイルユニット1aと破線で示すコイルユニット1bは、シート厚さ方向に対をなしている。
コイルユニット1aのコイル辺部10aとコイルユニット1bのコイル辺部10bとがシート厚さ方向に隣接して密着するように加圧成形すると、コイル辺部10aおよびコイル辺部10bは、巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に2層に亘って2磁極ピッチずつ離間された状態で整列する。紙面奥側(A側)に形成されるコイル辺部10aおよびコイル辺部10bを第1層と呼称し、紙面手前側(B側)に形成されるコイル辺部10aおよびコイル辺部10bを第2層と呼称する。図1(a)および(f)は、第1層および第2層におけるコイル導体の層渡り状態を示している。これらの図では、層間を接続する部分が最短となるようにコイル導体の層渡り状態を模式的に図示している。なお、コイルユニット1a、1bがステータコア7に取り付けられた際には、図1に示す巻芯の長手方向(巻芯軸方向)は、可動子磁極の移動方向に相当する。
図2は、ヘリカル巻シート状コイル3の3相分を示す模式図である。図2は、図1の(a)〜(f)にそれぞれ対応しており、図2に示す巻線ピッチSは、図1に示す巻線ピッチSに対応している。図3は、図2のAA−AA断面図を示している。本実施形態では、同一スロット内で隣接する実線で示すコイル要素4aと破線で示すコイル要素4bを一対として、一対のコイル要素4a、4bが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されている。例えば、図2および図3に示すように、巻線ピッチS10の第1層と巻線ピッチS16の第2層との間でコイル要素4aが形成され、これと対になるコイル要素4bは、巻線ピッチS10の第2層と巻線ピッチS16の第1層との間で形成されている。同様にして、1巻線ピッチ進んだ巻線ピッチS11の第1層と巻線ピッチS17の第2層との間でコイル要素4aが形成され、これと対になるコイル要素4bは、巻線ピッチS11の第2層と巻線ピッチS17の第1層との間で形成されている。
本実施形態では、図3に示すように、可動子磁極の移動方向に、U相(通電方向関係:順方向U1)、U相(通電方向関係:順方向U2)、W相(通電方向関係:逆方向W1)、W相(通電方向関係:逆方向W2)、V相(通電方向関係:順方向V1)、V相(通電方向関係:順方向V2)、U相(通電方向関係:逆方向U1)、U相(通電方向関係:逆方向U2)の順に巻線が形成されている。なお、同図では、*を用いて通電方向の逆方向を示している。本実施形態では、同相のコイルユニット1a、1bが可動子磁極の移動方向に2本隣接しており、同相コイルの巻線単位は4本からなる。同相のコイルユニット1a、1b、1a、1bは、回転電機の駆動時に流れる電流方向が一致するように接続されており、12本の巻線単位からなる3相巻線が構成されている。なお、同図に示すように、可動子磁極の移動方向の隣接する各コイル辺部間は、後述するステータコア7のステータコア磁極72を収容可能に所定間隔1W離間されている。
同図に示すように、X1相(XはU、V、Wのいずれか。以下同じ。)のコイル辺部とX2相のコイル辺部は、可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチ分、離間しているので、X1相のコイルユニット1a、1bとX2相のコイルユニット1a、1bは、可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチ分、離間している。仮に、X1相のコイルユニット1a、1bを直列接続して相単位コイル5X1を形成し、X2相のコイルユニット1a、1bを直列接続して相単位コイル5X2を形成し、相単位コイル5X1、5X2を並列接続して、相コイル6Xを形成する場合を想定する。この場合、相単位コイル5X1、5X2は可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチ分、離間しているので、相単位コイル5X1、5X2に発生する誘起電圧は、同相(X相)ではあるが、正確には位相が異なる。これを本明細書では、「電磁気的に位相が異なる」という。そのため、相単位コイル5X1、5X2にそれぞれ発生する誘起電圧が異なり、相内循環電流が生じて回転電機の出力が低下する。
図4は、回転電機の相構成を示す模式図である。本実施形態では、X1相のコイルユニット1aと、X2相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5X1が形成されている。また、X2相のコイルユニット1aと、X1相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5X2が形成されている。相単位コイル5X1、5X2は並列接続されて、相コイル6Xが形成されている。なお、同図では、X相端子を5TXで示し、中性点を5Nで示している。また、本明細書では、3相分のU相端子5TU、V相端子5TV、W相端子5TWをコイル導体端子5Tという。
例えば、所定時刻において、X1相のコイル辺部に発生する誘起電圧がX2相のコイル辺部に発生する誘起電圧と比べて高いと仮定する。この場合、誘起電圧が相対的に高いX1相のコイルユニット1aと、誘起電圧が相対的に低いX2相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5X1が形成される。また、誘起電圧が相対的に低いX2相のコイルユニット1aと、誘起電圧が相対的に高いX1相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5X2が形成される。そのため、相単位コイル5X1の巻線端部間に発生する誘起電圧を5E1とし、相単位コイル5X2の巻線端部間に発生する誘起電圧を5E2とすると、誘起電圧5E1、5E2は等しくなり、X相内に循環電流は生じない。そのため、相内循環電流によって回転電機の出力が低下することなく、回転電機の出力維持を図ることができる。このことは、X1相のコイル辺部に発生する誘起電圧がX2相のコイル辺部に発生する誘起電圧と比べて低い場合についても同様に言える。
また、本実施形態では、相単位コイル6Xの周方向長がステータの周方向長の自然数倍になるステータ周倍の波巻き構成になっている。そのため、例えば、可動子の偏芯等によって界磁磁束にばらつきが生じても、相コイル6Xには、相順に120°(電気角)の位相差を有する略均等な誘起電圧が発生する。したがって、相間の内部循環電流によって回転電機の出力が低下することなく、回転電機の出力維持を図ることができる。
図5は、ヘリカル巻シート状コイル3の接続状態を示す模式図である。同図は、シート厚さ方向視におけるシート両端部の巻線の接続状態を示している。(a)〜(c)は、順にU相〜W相の1相分の接続状態を示しており、(d)は、3相分の接続状態を示している。同図では、説明の便宜上、コイルユニット1aを実線で示し、コイルユニット1bを破線で示して区別しているが、実際は一体に形成されている。また、図中の数字*は、相端子5TXから中性点5Nまでの巻線の接続順を示している。相単位コイル5X1、5X2は並列接続されているので、説明の便宜上、相単位コイル5X1の巻線の接続順を1*から始まる数字*で示し、相単位コイル5X2の巻線の接続順を100*から始まる数字*で示している。以下、同図(a)に基づいてU相を例に説明するが、V相およびW相についても同様である。
相単位コイル5U1は、U相端子5TUを起点にして紙面右方向に巻装された後(実線で示すU1相のコイルユニット1aに相当。1*〜5*)、コイル引回し点5RU1で巻き返されて紙面左方向に巻装されており(破線で示すU2相のコイルユニット1bに相当。6*〜11*)、中性点5Nに接続されている。相単位コイル5U2は、U相端子5TUを起点にして紙面右方向に巻装された後(実線で示すU2相のコイルユニット1aに相当。100*〜104*)、コイル引回し点5RU2で巻き返されて紙面左方向に巻装されており(破線で示すU1相のコイルユニット1bに相当。105*〜110*)、シート端部の接続点5JU1において、U2相のコイルユニット1bと接続されて、中性点5Nに接続されている。そして、相単位コイル5U1と相単位コイル5U2とが並列接続されて、相コイル6Uが形成されている。なお、接続点5JU1における接続を行わないで、そのまま中性点5Nまで配策して、3相分すべてを中性点5Nで接合処理しても良い。
相単位コイル5U1、5U2は、紙面右方向のシート端部で巻線が引回されており、紙面右方向のシート端部に接続点を有しない。そのため、紙面右方向のシート端部でコイルユニット1a、1bを接続する場合と比べて、コイル端部をコンパクトにすることができる。なお、巻線を引回す代わりに、紙面右方向のシート端部でコイルユニット1a、1bを接続することもできる。この場合は、コイルユニット1a、1bをそれぞれ巻装した後に互いの端部同士を接続することができるので、巻線を引回す場合と比べて、製作が容易である。
同図(a)に示すように、ステータコア7のスロット収容部からコイル引回し点5RU1、5RU2までのコイル端部高さを、それぞれ5H1、5H2とすると、コイル端部高さ5H2は、コイル端部高さ5H1と比べて低いので、コイル引回し点5RU1、5RU2近傍の同相の巻線同士がシート厚さ方向にもコイル端部高さ方向にも交差しない。そのため、コイル辺部のつなぎ替えを行うコイル端部をコンパクトにすることができ、後述するコイル導体巻き返し部3R側のシート端部をコンパクトにすることができる。さらに、コイル引回し点5RU1、5RU2近傍の巻線は、可動子磁極の移動方向に略平行でコイル辺部方向にずらして配されているので、コイル辺部のつなぎ替えを行うコイル端部のコイル辺部方向高さを他のコイル端部と略同じ高さにすることができる。よって、コイル端部のコイル辺部方向高さを均一にすることができる。
本実施形態では、同一スロット内で隣接するコイル要素4a、4bを一対として、コイル要素4a、4bが2磁極ピッチ毎に可動子磁極の移動方向に配されているので、可動子磁極の移動方向のコイル要素4a、4b間の相対的な位置関係を保持することができる。さらに、シート厚さ方向に2層に形成されるコイル辺部10a、10bの異なる層に配される往き導体部11a、11bおよび還り導体部12a、12bは、コイル端部20a、20bによってヘリカル状につながり波巻き構成となるように順に接続されてコイルユニット1a、1bが形成されているので、コイル端部20a、20bにて構成導体毎に整列して規則正しく層間を渡らせることができる。そのため、コイル端部20a、20b同士の重なりを3次元的に、きめ細かく回避することができ、コイル端部20a、20bの占積率が向上してコイル端部20a、20bの占有スペースを小さくすることができる。また、コイル端部20a、20bを短くしてコンパクトにできるので、漏れリアクタンスを減少させることができる。さらに、コイル辺部10a、10bがつなぎ替えられる可動子磁極の移動方向のシート端部を除いて、全節巻の波巻き構成となるように巻装されているので、全節巻部分のコイル端部高さを均一にすることができる。
また、本実施形態では、相単位コイル5X1、5X2が並列接続されているので、直列接続の場合と比べて巻線の素線断面積を半減させることができ、コイル導体部に発生する渦電流損を低減させることができる。さらに、コイル成形に要する力を小さくすることができるので、成形性が向上してコイル製作が容易になり、ステータコア7への組付け作業等の作業性も向上する。なお、3相回転電機においてY結線される本実施形態では、3相の各相端子5TXおよび中性点5Nの4点で巻線を接続すれば良いので、巻線の端部処理が簡単、シンプルであり、巻線端部をコンパクトにすることができる。
次に、ヘリカル巻シート状コイル3の巻線(コイル導体ともいう)について説明する。巻線は、導体表面がエナメルなどの絶縁層で被覆されている。巻線の断面形状は、特に限定されるものではなく、任意の断面形状とすることができる。例えば、断面円形状の丸線、断面多角形状の角線などの種々の断面形状の巻線を用いることができる。また、複数のより細い巻線素線を組み合わせた並列細線でも良い。並列細線を用いる場合、単線の場合と比べて巻線に発生する渦電流損を低減させることができ、回転電機の効率が向上する。また、コイル成形に要する力を小さくすることができるので、成形性が向上してコイル製作が容易になる。
コイルユニット1a、1bは、例えば、巻芯に巻線をヘリカル状に巻装して成形することができる。巻線は、1本毎に巻芯に巻装しても複数本を同時に巻装しても良い。巻線ピッチSを確保するために、巻芯にピンや溝等を設けて、ピンや溝をガイドにして巻装することもできる。そして、図2に示すように、すべての巻線を巻装後に巻芯を巻線から取り除き、一対のコイルユニット1a、1bを形成するコイル辺部10aおよび10bが紙面垂直方向に隣接して密着するように加圧成形する。加圧成形の際に巻線が損傷する場合を考慮して、加圧成形後に補修用の樹脂コーティング等を施しても良い。
次に、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7のスロット73に装着する方法を説明する。図6は、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7のスロット73に装着された状態を示す部分断面図である。まず、ヘリカル巻シート状コイル3を渦巻き状に巻き上げて、ステータコア7の内周側に収容し、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3の外周側シートから巻きほどきながらステータコア7のスロット73に取り付ける。ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7のスロット73に装着後は、相端子5TXにおける接合および引き出し処理ならびに中性点5Nにおける接合を行う。3相分の接合後に接合部を絶縁処理して、ワニスの含浸、樹脂モールド等によって巻線をステータコア7に固定する。
同図に示すように、ステータコア7は、ステータコア7の周方向に延在するステータコアヨーク71と、ステータコアヨーク71からステータコア7の軸芯方向に突出する複数のステータコア磁極72と、を有している。また、ステータコア磁極72、72の間には、ヘリカル巻シート状コイル3のコイル辺部10a、10bを収容可能にスロット73が形成されており、コイル辺部10a、10bは、スロット73に収容されている。なお、ステータコア磁極72の先端部721は、ステータコア7の周方向に幅広になっており、可動子8と対向している。可動子8は、同図に示す可動子磁極の移動方向に回転可能に支持されている。本実施形態では、2層からなるヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7の径方向に巻き重ねられており、可動子8およびステータコア7が径方向に同芯に配されるラジアル型の円筒状回転電機として用いることができる。なお、同図では、1つのスロット73について図示しているが、スロット73は、ステータコア7の周方向に所定磁極数分、形成されており、コイル辺部10a、10bは、ステータコア7の各スロット73に交互に挿通されている。
図7は、ヘリカル巻シート状コイル3を示す模式図である。(a)は、コイル導体端子5T側からのコイル辺部方向視におけるヘリカル巻シート状コイル3を示し、(b)は、コイル導体端子5T側からの回転電機の軸方向視におけるヘリカル巻シート状コイル3を示している。同図(a)に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3は2層からなる。2層のうち、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7のスロット73に装着されたときに、ステータコア7の外周側(バックヨーク側)に配設される層を実線で示し、ステータコア7の内周側に配設される層を破線で示している。
本明細書では、可動子磁極の移動方向のヘリカル巻シート状コイル3のシート端部であって、コイル導体を巻き始める部分をコイル導体巻始め部3Sとする。本実施形態では、コイル導体巻始め部3Sは、6本のコイル辺部を有している。同図では、コイル導体巻始め部3S側の2層の端部を白色丸印および白色三角印で示している。また、可動子磁極の移動方向のヘリカル巻シート状コイル3のシート端部であって、コイル導体が巻き返される部分をコイル導体巻き返し部3Rとする。コイル導体巻き返し部3Rは、2磁極ピッチ分のコイル導体であり、本実施形態では18本のコイル辺部を有している。同図では、コイル導体巻き返し部3R側の2層の端部を黒色丸印および黒色三角印で示している。
同図(b)に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着したとき、ヘリカル巻シート状コイル3とステータコア7のスロット底部との間に隙間SP1が生じている。また、ヘリカル巻シート状コイル3のシート両端部において、径方向外周側に隙間SP2が生じ、径方向内周側に隙間SP3が生じている。なお、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の径方向内周側に滑らかに乗り上げるように巻き重なり、ヘリカル巻シート状コイル3の外周側シートとステータコア7のスロット底部との間の隙間は、同図に示す隙間SP1で最大になる。
図8は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す模式図である。(a)は、シート側面方向視(同図(b)に示す矢印A1方向視)におけるコイル導体の層渡り状態を示している。(b)は、シート厚さ方向視におけるシート両端部の巻線の接続状態を示しており、図5(d)と同じである。(c)は、シート側面方向視(同図(b)に示す矢印A2方向視)におけるコイル導体の層渡り状態を示している。なお、同図(a)、(c)は、層間を接続する部分が最短となるようにコイル導体の層渡り状態を模式的に示している。また、同図(a)、(b)では、コイル導体巻始め部3Sと相端子5TXとの接続を併せて示している。
同図(a)、(c)に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータの周方向長の4倍の波巻き構成になっている。説明の便宜上、2層のヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の外周側(バックヨーク側)から順に第1層、第2層、...、第9層、第10層で表されている。これにより、ステータコア7のスロット内で径方向に巻き重なる周回を区別している。また、本実施形態では、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータの周方向長の4倍の波巻き構成であるので、仮に、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7のスロットに隙間なく装着することができたとすると、ヘリカル巻シート状コイル3は、第1層〜第8層に収容することができる。同図では、第8層と第9層との境界線を理想収容ライン3ILで表している。
コイル導体は、第2層のコイル導体巻始め部3Sから巻き始められ、第1層の第1コイル辺部群3G1に巻き回されている。同図(a)に示すように、コイル導体巻始め部3Sは、U相端子5TUおよびV相端子5TVが引き出される4本のコイル辺部を含む6本のコイル辺部を有しており、6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されている。第1コイル辺部群3G1は、コイル導体巻始め部3Sから巻き回された6本のコイル辺部を有しており、6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かって巻き回されている。以降、同様にして、可動子磁極の移動方向に第2層、第1層、第2層、第1層と繰り返しながら、6本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されている。したがって、可動子磁極の移動方向のコイル導体巻始め部3S側視において、コイル導体巻始め部3Sから離れていくコイル導体の巻方向をヘリカル巻方向とするとき、ヘリカル巻方向は、時計回り(右回り)になっている。
ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着するとき、コイル導体端子5T側からの回転電機の軸方向視において、渦巻き状に装着したヘリカル巻シート状コイル3でコイル導体端子5Tを始点とした場合の渦巻き方向を円環巻方向とする。図7(b)に示すように、円環巻方向は、時計回り(右回り)になっている。つまり、本実施形態では、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、いずれも時計回り(右回り)になっており、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致している。
ステータコア7の径方向において、第1層の第1コイル辺部群3G1と隣接する第2層のコイル辺部群を第2コイル辺部群3G2とする。第2コイル辺部群3G2は、可動子磁極の移動方向においてコイル導体巻始め部3Sと隣接しており、W相端子5TWが引き出される2本のコイル辺部を含む6本のコイル辺部を有している。また、図8では、ステータの周方向1周分のヘリカル巻シート状コイル3を太線の境界線L1で示し、起点をシート始め3H1、1周分の終点をシート1周終り3T1で示している。
また、同図(a)、(b)に示すように、U相端子5TUは、コイル導体巻始め部3SのU1相のコイル辺部に対して、可動子磁極の移動方向に電気角で90°ずれた位置から引き出されている。U相端子5TUを引き出す引き出し線と、コイル導体巻始め部3SのU1相のコイル辺部と、を接続するコイル端部の可動子磁極の移動方向に対する傾斜角を傾斜角θ1とする。また、シート端部以外のコイル端部の可動子磁極の移動方向に対する傾斜角を傾斜角θ2とする。本実施形態では、傾斜角θ1は、傾斜角θ2と同じになっており、U相端子5TUの引き出し線が他のコイル端部と干渉することが防止されている。よって、U相端子5TU側のシート端部をコンパクトにすることができる。V相端子5TVおよびW相端子5TWについても同様である。
本明細書では、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3において、コイル導体巻始め部3Sからコイル導体巻き返し部3Rに掛けてステータコア7の径方向内周側に乗り上げるように巻き重なる2磁極ピッチ分のコイル導体をシート乗り上げ部3Aとする。シート乗り上げ部3Aにおける隙間SP1〜SP3は、図7(b)に示す隙間SP1〜SP3に対応している。
また、図8では、コイル導体巻き返し部3Rにおける巻線(V相)の引回し順序を数字*で示している。2*〜3*において、実線で示すV1相のコイルユニット1aから破線で示すV2相のコイルユニット1bにつなぎ替えられており、巻線が引き回されている層(以下、巻線の引き回しレーンという。)は、第9層から第10層に変更されている。巻線の引き回しレーンは、4*〜5*において、第10層から第9層に変更され、7*〜8*において、第9層から第10層に変更され、11*〜12*において、第10層から第9層に変更されている。このように、一旦、ステータコア7の内周側の隙間SP3上部へ巻線の引き回しレーンを変更し、コイル端部高さ方向のステータコア7近傍で、もとの引き回しレーンに戻されている。U相およびW相についても同様である。
図9は、隙間詰めの第1段階におけるシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図9(a)〜(c)は、図8(a)〜(c)に対応しており、図9は、図8に示すコイル導体巻始め部3Sをステータコア7の外周側(バックヨーク側)に移動(第2層から第1層に移動)させた状態を示している。コイル導体巻始め部3Sは、コイル導体の巻き始めであり、他のコイル辺部の配置の影響を受けることなく、容易にステータコア7の外周側(バックヨーク側)へ移動させることができる。なお、コイル導体巻始め部3Sを移動させると、隙間SP2は消滅するが、コイル導体巻始め部3Sと第3層のヘリカル巻シート状コイル3との間に、隙間SP21が生じる。
図9(c)に示すように、コイル導体巻始め部3Sをステータコア7の外周側(バックヨーク側)に移動させるとき、コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻回される巻線をステータコア7の外周側(バックヨーク側)に移動させる。つまり、コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部から巻回される巻線は、一旦、ステータコア7の外周側(バックヨーク側)上部へ巻線の引き回しレーンが変更され、コイル端部高さ方向のステータコア7近傍で、もとの引き回しレーンに戻されて第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部に巻回されている。
同図(c)は、同図(b)に示す矢印A2方向視であるので、コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かってコイル導体が巻き回されている。そして、コイル導体巻始め部3Sから巻回された第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回される。そのため、ステータコア7の外周側(バックヨーク側)に移動させた巻線は、第2コイル辺部群3G2における配策の影響を受けることなく、第1コイル辺部群3G1に向かってコイル導体を巻回すことができる。本実施形態では、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、いずれも時計回り(右回り)になっており、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致しているので、コイル導体巻始め部3Sから巻回される巻線をステータコア7の外周側(バックヨーク側)に移動させることが容易である。
なお、同図(b)に示すように、矢印A1方向側において、相端子5TXが引き出されているので、矢印A2方向側は、矢印A1方向側と比べて、巻線の引き回しレーンを変更するスペース3G11を確保することが容易である。また、同図では、コイル導体巻始め部3Sの移動後の境界線L1を境界線L2で示している。
図10は、隙間詰めの第2段階におけるシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形方法を示す模式図である。図11は、隙間詰めの第2段階におけるシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図10(a)〜(c)および図11(a)〜(c)は、それぞれ図8(a)〜(c)に対応している。図9に示す状態のヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7の外周側(バックヨーク側)に寄せて、隙間SP1、SP21を詰める。図10は、このときのシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形方法を示しており、図11は、隙間詰め後のシート乗り上げ部3Aの状態を示している。図10および図11では、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形状態を境界線L31〜L35で示している。
図10に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7の外周側(バックヨーク側)に寄せると、第3層〜第10層のヘリカル巻シート状コイル3は、シート乗り上げ部3A以外では、矢印A3方向に移動し、シート乗り上げ部3Aでは、矢印A4方向に移動する。具体的には、第3層および第4層のヘリカル巻シート状コイル3は、境界線L31、L32で狭持される領域に移動する。第5層および第6層のヘリカル巻シート状コイル3は、境界線L32、L33で狭持される領域に移動する。第7層〜第10層のヘリカル巻シート状コイル3についても同様である。
可動子磁極の移動方向のシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形開始位置をシート曲げ開始部3A1とし、可動子磁極の移動方向のシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形終了位置をシート曲げ終了部3A2とする。シート乗り上げ部3Aのコイル端部の一部(部位3A3a、3A3b)は、シート曲げ開始部3A1からシート曲げ終了部3A2までの間、円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜するように変形される。
図11は、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の一部が円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜して変形されている状態を示している。シート乗り上げ部3Aのコイル端部が変形されると、隙間SP1は隙間SP11になり、隙間SP21は隙間SP22になる。隙間SP11は、変形前の隙間SP1と比べて小さくなっており、隙間SP22は、変形前の隙間SP21と比べて小さくなっている。
本実施形態では、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致しているので、コイル導体巻始め部3Sから巻回される巻線をステータコア7の外周側(バックヨーク側)に移動させることが容易であり、コイル導体巻始め部3Sから巻回される巻線がコイル導体巻始め部3Sに巻き重なるヘリカル巻シート状コイル3と干渉することを回避できる。そのため、ステータコア7の径方向に巻き重なる部分(シート乗り上げ部3A)を効率良く変形させることができる。よって、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着したときに、ステータコア7とヘリカル巻シート状コイル3との間に生じる隙間SP1およびヘリカル巻シート状コイル3のシート間に生じる隙間SP21を効率良く低減させることができる。したがって、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3をコンパクトにすることができ、回転電機を小型化および低コスト化することができる。
図12は、隙間詰めの第3段階におけるシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図12(a)〜(c)は、図8(a)〜(c)に対応している。図11に示すように、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形前後において隙間SP3の大きさに変更はなく、コイル導体巻き返し部3Rの一部が第9層および第10層に突出している。そこで、図12に示すように、コイル導体巻き返し部3Rの先端側2相(V相およびW相)分のコイル端部3R1を、可動子磁極の移動方向と略平行に配設する。
3*〜5*における巻線の引き回しは、スロット内で干渉するコイル導体が無いので、コイル導体巻き返し部3Rの先端側2相(V相およびW相)分の配策を調整することが容易である。これにより、コイル導体巻き返し部3Rは、第9層のみに突出し、第10層には突出しない。よって、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7の径方向に巻き重ねられたとき、シート乗り上げ部3Aの径方向厚みは、理想収容ライン3ILに対して1層分の増加に抑制することができ、シート乗り上げ部3Aをさらにコンパクトにすることができる。なお、同図では、配策変更後の隙間SP3を隙間SP31で示している。
本実施形態では、シート乗り上げ部3Aのコイル端部は、円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜して変形された部位3A3a、3A3bをもち、コイル導体巻き返し部3Rの先端側2相(V相およびW相)分のコイル端部3R1は、可動子磁極の移動方向と略平行に配設されている。そのため、コイル導体巻き返し部3Rの径方向内周側に突出する領域を低減させることができ、シート乗り上げ部3Aの径方向厚みを低減させることができる。したがって、渦巻き状のヘリカル巻シート状コイル3をさらにコンパクトにすることができる。
<第2実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と比べて、3相の相コイル6XがΔ結線されている点が異なる。図13は、回転電機の相構成を示す模式図である。本実施形態では、3相の相コイル6XはΔ結線されており、同図では、相端子を5T1〜5T3で示している。つまり、相端子5T1、5T2の間にU相コイル6Uが形成され、相端子5T2、5T3の間にV相コイル6Vが形成され、相端子5T3、5T1の間にW相コイル6Wが形成されている。
図14は、ヘリカル巻シート状コイル3の接続状態を示す模式図である。図14(a)〜(d)は、図5(a)〜(d)に対応している。以下、図14(a)に基づいてU相を例に説明するが、V相およびW相についても同様である。
相単位コイル5U1は、相端子5T1を起点にして紙面右方向に巻装された後(実線で示すU1相のコイルユニット1aに相当。1*〜5*)、コイル引回し点5RU1で巻き返されて紙面左方向に巻装されており(破線で示すU2相のコイルユニット1bに相当。6*〜11*)、相端子5T2に接続されている。相単位コイル5U2は、相端子5T1を起点にして紙面右方向に巻装された後(実線で示すU2相のコイルユニット1aに相当。100*〜104*)、コイル引回し点5RU2で巻き返されて紙面左方向に巻装されており(破線で示すU1相のコイルユニット1bに相当。105*〜110*)、相端子5T2に接続されている。そして、相単位コイル5U1と相単位コイル5U2とが並列接続されて、相コイル6Uが形成されている。
相端子5T1〜5T3側のシート端部において、3相の相コイル6Xは、Δ結線されている。具体的には、相単位コイル5U1のU2相のコイルユニット1bおよび相単位コイル5U2のU1相のコイルユニット1bは、可動子磁極の移動方向に隣接する相単位コイル5V1のV1相のコイルユニット1aおよび相単位コイル5V2のV2相のコイルユニット1aに接続されている。同様に、相単位コイル5V1のV2相のコイルユニット1bおよび相単位コイル5V2のV1相のコイルユニット1bは、可動子磁極の移動方向に隣接する相単位コイル5W1のW1相のコイルユニット1aおよび相単位コイル5W2のW2相のコイルユニット1aに接続されている。また、相単位コイル5W1のW2相のコイルユニット1bおよび相単位コイル5W2のW1相のコイルユニット1bは、可動子磁極の移動方向に隣接する相単位コイル5U1のU1相のコイルユニット1aおよび相単位コイル5U2のU2相のコイルユニット1aに接続されている。つまり、相端子5T1〜5T3側のシート端部において、隣接する4本のコイル辺部をひとつの単位として、隣接する12本のコイル辺部が相順にΔ結線されている。
本実施形態では、3相の相コイル6XがΔ結線されているので、相端子5T1〜5T3側のシート端部において巻線を3箇所で取りまとめることができ、巻線の端部処理が簡単、シンプルであり、相端子5T1〜5T3側のシート端部をコンパクトにすることができる。そのため、同相内や相間を引回す引回し線が交差して配線が複雑になることがない。また、中性点を有しないので、中性点を回避する配線が不要である。そのため、中性点を有するY結線と比べて、相端子5T1〜5T3側のシート端部を簡素化、コンパクト化することができる。
図15は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す模式図である。図15(a)〜(c)は、図8(a)〜(c)に対応している。図16は、隙間詰めの第3段階におけるシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図16(a)〜(c)は、図12(a)〜(c)に対応している。本実施形態は、3相の相コイル6XがΔ結線されている点を除いて第1実施形態と同様であり、相端子コイル5T1〜5T3側のシート端部における配策が異なる他は、第1実施形態と同様である。
したがって、本実施形態においても、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、いずれも時計回り(右回り)になっており、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致している。また、シート乗り上げ部3Aのコイル端部は、円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜して変形された部位3A3a、3A3bをもち、コイル導体巻き返し部3Rの先端側2相(V相およびW相)分のコイル端部3R1は、可動子磁極の移動方向と略平行に配設されている。そのため、本実施形態の回転電機の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。
<第3実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3の構成が異なる。具体的には、ヘリカル巻シート状コイル3は、相単位コイル5X1、5X2が直列接続されて、相コイル6Xが形成されている。図17は、回転電機の相構成を示す模式図である。本実施形態では、X1相のコイルユニット1aと、X1相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5X1が形成されている。また、X2相のコイルユニット1aと、X2相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5X2が形成されている。そして、相単位コイル5X1、5X2は直列接続されて、相コイル6Xが形成されている。なお、同図では、X相端子を5TXで示し、中性点を5Nで示している。
図18は、ヘリカル巻シート状コイル3の接続状態を示す模式図である。図18(a)〜(d)は、図5(a)〜(d)に対応している。なお、相単位コイル5X1、5X2は直列接続されているので、本実施形態では、1*から始まる数字*のみを用いて、相端子5TXから中性点5Nまでの巻線の接続順を示している。以下、同図(a)に基づいてU相を例に説明するが、V相およびW相についても同様である。
相単位コイル5U1は、U相端子5TUを起点にして紙面右方向に巻装された後(実線で示すコイルユニット1aに相当。1*〜5*)、コイル引回し点5RU1で巻き返されて紙面左方向に巻装されている(破線で示すコイルユニット1bに相当。6*〜10*)。相単位コイル5U2は、相単位コイル5U1との接続点5JU1を起点にして紙面右方向に巻装された後(コイルユニット1aに相当。11*〜16*)、コイル引回し点5RU2で巻き返されて紙面左方向に巻装されており(コイルユニット1bに相当。17*〜22*)、中性点5Nに接続されている。
本実施形態では、全節巻の波巻き構成において、同相の電磁気的に位相の異なる相単位コイル5X1、5X2が1磁極内に位置するコイル辺部の電流方向が一致するように直列接続されている。そのため、短節巻の効果を得ることができ、トルクリプル等を低減することができる。また、コイル端部を短くしてコンパクトにできるので、漏れリアクタンスを減少させることができる。
図19は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す模式図である。図19(a)〜(c)は、図8(a)〜(c)に対応している。図20は、隙間詰めの第3段階におけるシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図20(a)〜(c)は、図12(a)〜(c)に対応している。本実施形態は、相単位コイル5X1、5X2が直列接続されて、相コイル6Xが形成されている。そのため、本実施形態は、第1実施形態と比べて、相端子5TX側のシート端部における配策が異なり、コイル導体巻き返し部3Rにおけるコイルユニット1aおよびコイルユニット1bのつなぎ方法が異なる。
図19(a)に示す領域C1〜C3は、コイル導体巻き返し部3Rにおいて、コイルユニット1aおよびコイルユニット1bがつながる箇所を示している。領域C1はU相を示し、領域C2はW相を示し、領域C3はV相を示している。例えば、領域C1において、U1相のコイルユニット1aは、U1相のコイルユニット1bにつながっている。また、U2相のコイルユニット1aは、U2相のコイルユニット1bにつながっている。領域C2、C3についても同様である。領域C1〜C3におけるコイルユニット1aおよびコイルユニット1bのつなぎ方法が異なる他は、第1実施形態と同様であるので、本実施形態においても、3*〜5*における巻線の引き回しは、スロット内で干渉するコイル導体が無く、コイル導体巻き返し部3Rの先端側2相(V相およびW相)分の配策を調整することが容易である。
したがって、本実施形態においても、シート乗り上げ部3Aのコイル端部は、円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜して変形された部位3A3a、3A3bをもち、コイル導体巻き返し部3Rの先端側2相(V相およびW相)分のコイル端部3R1は、可動子磁極の移動方向と略平行に配設されている。また、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、いずれも時計回り(右回り)になっており、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致している。そのため、本実施形態の回転電機の波巻き巻線は、第1実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。なお、第2実施形態と同様に、3相の相コイル6Xは、Δ結線にすることもできる。
<まとめ>
既述の実施形態では、ヘリカル巻シート状コイル3は、可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチずつ離間するX1相およびX2相のコイル辺部を有している。つまり、同相の電磁気的に位相の異なる2種類のコイル辺部を用いて、相コイル6Xが形成されている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。以下、同相の電磁気的に位相の異なる4種類のコイル辺部を用いて、相コイル6Xが形成されている形態を例に説明する。
図21は、毎極毎相4個のコイル辺種類を有するヘリカル巻シート状コイル3のU相コイルの接続状態の一例を示す模式図である。(a)は、相単位コイル5U1の接続状態を示し、(b)は、相単位コイル5U2の接続状態を示している。以下、同図に基づいてU相を例に説明するが、V相およびW相についても同様である。なお、同図は、相単位コイル5U1、5U2が並列接続されている形態を示しているが、相単位コイル5U1、5U2を直列接続することもできる。
同図(a)に示すように、相単位コイル5U1は、U1相のコイルユニット1a、U2相のコイルユニット1b、U3相のコイルユニット1aおよびU4相のコイルユニット1bが直列接続されている。U1相のコイルユニット1aは、U相端子5TUを起点にして紙面右方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の他端側で巻き返されて、U2相のコイルユニット1bと接続されている。U2相のコイルユニット1bは、紙面左方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の一端側で巻き返されて、U3相のコイルユニット1aと接続されている。U3相のコイルユニット1aは、紙面右方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の他端側で巻き返されて、U4相のコイルユニット1bと接続されている。U4相のコイルユニット1bは、紙面左方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の一端側で中性点5Nに接続されている。
同図(b)に示すように、相単位コイル5U2は、U4相のコイルユニット1a、U3相のコイルユニット1b、U2相のコイルユニット1aおよびU1相のコイルユニット1bが直列接続されている。U4相のコイルユニット1aは、U相端子5TUを起点にして紙面右方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の他端側で巻き返されて、U3相のコイルユニット1bと接続されている。U3相のコイルユニット1bは、紙面左方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の一端側で巻き返されて、U2相のコイルユニット1aと接続されている。U2相のコイルユニット1aは、紙面右方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の他端側で巻き返されて、U1相のコイルユニット1bと接続されている。U1相のコイルユニット1bは、紙面左方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の一端側で中性点5Nに接続されている。
既述の実施形態では、コイルユニット1a、1bがシート内を1回往復するように直列接続されて、相単位コイル5U1、5U2が形成されている。これに対して、同図に示す形態では、コイルユニット1a、1bがシート内を2回往復するように直列接続されて、相単位コイル5U1、5U2が形成されている。また、毎極毎相のコイル辺種類数をn(nは自然数)とすると、既述の実施形態では、nは2であり、同図に示す形態では、nは4である。
このように、毎極毎相のコイル辺種類数nが偶数の場合は、コイルユニット1a、1bをシート内でn/2回往復するように直列接続して、相単位コイル5U1、5U2を形成することができる。そのため、相単位コイル5U1、5U2のU相端子5TUおよび中性点5Nを周方向近傍に配することができる。したがって、シート端部においてコイル辺部のつなぎ替えを行う場合に、相単位コイル5U1、5U2のU相端子5TUおよび中性点5Nにおける配策が容易であり、作業性が向上する。
なお、毎極毎相のコイル辺種類数nが奇数の場合は、ヘリカル巻シート状コイル3の可動子磁極の移動方向の途中において、コイル辺部をつなぎ替えても良い。但し、ステータ周倍単位でコイル辺部のつなぎ替えを行うものとする。また、コイル辺部がつなぎ替えられるシート端部を除いて、全節巻の波巻き構成となるように巻装されていると好適である。これにより、全節巻部分のシート厚さ方向のコイル端部高さを均一にすることができる。
次に、同相の電磁気的に位相の異なるn種類(nは自然数)のコイル辺部を有するヘリカル巻シート状コイル3において、相単位コイル5X1、5X2(XはU、V、Wのいずれか。以下同じ。)を並列接続して相コイル6Xを構成する場合について説明する。この場合、回転電機の波巻き巻線は、毎極毎相配される同相の電磁気的に位相の異なるn種類(nは自然数)のコイル辺部の中から1つのコイル辺部が毎極選択されて、選択される所要極数分のコイル辺部がコイル端部によって直列接続されて相単位コイル5X1、5X2が形成され、選択されるコイル辺部が相異なる2つの相単位コイル5X1、5X2が並列接続されて相コイル6Xが形成される。そして、相コイル6Xの各相単位コイル5X1、5X2は、n種類のすべての種類のコイル辺部を同数ずつ含み、かつ、直列接続されるコイル辺部の数が同数になるようにコイル辺部が選択される。
また、相コイル6X内のコイル辺部の総数を示す関係式が下記数1で表されると好適である。但し、各相単位コイル5X1、5X2において直列接続されるコイル辺部数を直列コイル辺部数k、磁極数を2pとし、1つのコイル辺種類に属する1磁極当りの直列導体数をqとする。
(数1)
2×k=n×q×2p
相内循環電流の発生を防止するためには、並列接続される各相単位コイル5X1、5X2は、n種類のすべての種類のコイル辺部を同数ずつ含み、かつ、直列接続されるコイル辺部の数が同数でなければならない。つまり、直列コイル辺部数kは、nの自然数倍でなければならないので、直列コイル辺部数kは、自然数gを用いて下記数2で表すことができる。
(数2)
k=g×n
さらに、例えば、可動子の偏芯等によって界磁磁束にばらつきが生じても、相コイル6Xに発生する誘起電圧にばらつきが生じないようにする必要がある。界磁磁束にばらつきが生じると、ステータ1周において、相コイル6Xには、誘起電圧が相対的に高いコイル部分と、誘起電圧が相対的に低いコイル部分と、が生じる。そこで、相単位コイル5X1、5X2の周方向長(シート長さ)をステータの周方向長の自然数倍にすることにより、ステータ1周において誘起電圧を均一化する。相単位コイル5X1、5X2の周方向長に含まれる直列コイル辺部数はkであり、ステータの周方向長に含まれる磁極数は2pであるので、これらの関係は、自然数mを用いて下記数3で表すことができる。また、1つのコイル辺種類に属する直列導体数q分を直列接続した相単位コイル5X1、5X2を考えると、直列コイル辺部数kは、自然数zを用いて下記数4で表すことができる。なお、数3で示す関係式は、数4で示す関係式で表されている。
(数3)
k=m×2p
(数4)
k=z×2p×q
1相当りのコイル辺部の総数は、相単位コイル5X1、5X2の並列数である2と、直列コイル辺部数kとの積になるので、1相当りのコイル辺部の総数は、既述の数1で表すことができる。数1に数2を代入すると、数1は下記数5で表すことができる。また、数1に数4を代入すると、数1は下記数6で表すことができる。数5および数6より、q×2pとnの公約数が2である必要がある。
(数5)
2=q×2p/g
(数6)
2=n/z
並列接続される各相単位コイル5X1、5X2は、n種類のすべての種類のコイル辺部を同数ずつ含み、かつ、直列接続されるコイル辺部の数が同数になるようにコイル辺部が選択されているので、並列接続される各相単位コイル5X1、5X2に発生する誘起電圧が等しくなる。そのため、相内循環電流が生じないので、相内循環電流によって回転電機の出力が低下することなく、回転電機の出力維持を図ることができる。さらに、相コイル6X内のコイル辺部の総数を示す関係式が数1で表されると、相単位コイル5X1、5X2の周方向長(含まれる直列コイル辺部数はk)がステータの周方向長(含まれる磁極数は2p)の自然数倍になるステータ周倍の波巻き構成になるので、例えば、可動子の偏芯等によって界磁磁束にばらつきが生じても、相コイル6X間に発生する誘起電圧にばらつきが生じにくい。そのため、相間の内部循環電流によって回転電機の出力が低下することなく、回転電機の出力維持を図ることができる。
<参考形態>
参考形態として、ヘリカル巻方向および円環巻方向が一致していない回転電機の波巻き巻線について説明する。本参考形態では、ヘリカル巻方向が反時計回り(左回り)になっている点で実施形態と異なる。なお、円環巻方向は、実施形態と同様、時計回り(右回り)になっている。実施形態と共通する箇所には共通の符号を付して対応させることにより、重複する説明を省略する。
図22は、ヘリカル巻シート状コイル3を示す模式図である。図22(a)、(b)は、図7(a)、(b)に対応している。同図では、実施形態と同様、コイル導体巻始め部3S側の2層の端部を白色丸印および白色三角印で示しており、コイル導体巻き返し部3R側の2層の端部を黒色丸印および黒色三角印で示している。
同図(b)に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着したとき、ヘリカル巻シート状コイル3とステータコア7のスロット底部との間に隙間SP4が生じている。また、ヘリカル巻シート状コイル3のシート両端部において、シート間に隙間SP5、SP6が生じている。隙間SP4は、実施形態の隙間SP1に対応し、隙間SP5は、実施形態の隙間SP2に対応し、隙間SP6は、実施形態の隙間SP3に対応する。本参考形態は、隙間SP5、SP6がヘリカル巻シート状コイル3のシート間に生じている点で実施形態と異なる。なお、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の径方向内周側に滑らかに乗り上げるように巻き重なり、ヘリカル巻シート状コイル3の外周側シートとステータコア7のスロット底部との間の隙間は、同図に示す隙間SP4で最大になる。
図23は、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7に渦巻き状に装着してヘリカル巻シート状コイル3が巻き重ねられている状態を直線的に展開して示す模式図である。図23(a)〜(c)は、図8(a)〜(c)に対応している。コイル導体は、第1層のコイル導体巻始め部3Sから巻き始められ、第2層の第1コイル辺部群3G1に巻き回されている。図23(a)に示すように、コイル導体巻始め部3Sは、U相端子5TUおよびV相端子5TVが引き出される4本のコイル辺部を含む6本のコイル辺部を有しており、6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回されている。
第1コイル辺部群3G1は、コイル導体巻始め部3Sから巻き回された6本のコイル辺部を有しており、6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かって巻き回されている。以降、同様にして、可動子磁極の移動方向に第1層、第2層、第1層、第2層と繰り返しながら、6本のコイル辺部毎に順にコイル導体が巻回されている。したがって、本参考形態では、ヘリカル巻方向は、反時計回り(左回り)になっている。一方、図22(b)に示すように、円環巻方向は、時計回り(右回り)になっており、本参考形態では、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致していない。
ステータコア7の径方向において第2層の第1コイル辺部群3G1と隣接する第1層のコイル辺部群を第2コイル辺部群3G2とする。第2コイル辺部群3G2は、可動子磁極の移動方向においてコイル導体巻始め部3Sと隣接しており、W相端子5TWが引き出される2本のコイル辺部を含む6本のコイル辺部を有している。また、同図では、ステータの周方向1周分のヘリカル巻シート状コイル3を太線の境界線L4で示している。
実施形態と同様に、同図では、コイル導体巻き返し部3Rにおける巻線(V相)の引回し順序を数字*で示している。2*〜3*において、実線で示すV1相のコイルユニット1aから破線で示すV2相のコイルユニット1bにつなぎ替えられており、巻線の引き回しレーンは、第10層から第9層に変更されている。巻線の引き回しレーンは、4*〜5*において、第9層から第10層に変更され、7*〜8*において、第10層から第9層に変更され、11*〜12*において、第9層から第10層に変更されている。このように、一旦、ステータコア7の内周側の隙間SP6上部へ巻線の引き回しレーンを変更し、コイル端部高さ方向のステータコア7近傍で、もとの引き回しレーンに戻されている。U相およびW相についても同様である。
図24は、本実施形態の隙間詰めの第2段階に相当するシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形方法を示す模式図である。図25は、本参考形態の隙間詰めにおけるシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形方法を示す模式図である。図24(a)〜(c)および図25(a)〜(c)は、それぞれ図10(a)〜(c)に対応している。図23に示す状態のヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7の外周側(バックヨーク側)に寄せて、隙間SP4、SP5を詰める。図24は、実施形態と同様の方法で、シート乗り上げ部3Aのコイル端部を変形させる場合を示している。同図では、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形状態を境界線L31〜L35で示している。
コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻き回されているU相(通電方向関係:順方向U1)、U相(通電方向関係:順方向U2)、W相(通電方向関係:逆方向W1)の巻線をシート干渉部3SAとする。同図(c)に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3をステータコア7の外周側(バックヨーク側)に寄せて、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の一部(部位3A3a、3A3b)を変形させたとき、境界線L31、L32で狭持されるヘリカル巻シート状コイル3とシート干渉部3SAとが干渉する。
そこで、図25に示すように、シート曲げ終了部3A2を3巻線ピッチ分、円環巻方向と反対方向に移動させ、シート曲げ開始部3A1からシート曲げ終了部3A2までの間を9巻線ピッチ分にする。同図では、このときのシート乗り上げ部3Aのコイル端部の変形状態を境界線L51〜L55で示している。これにより、シート干渉部3SAにおける干渉を回避することができる。
シート乗り上げ部3Aにおいて、境界線L35、L45で囲まれる部分を領域AR1とすると、領域AR1は、シート干渉部3SAにおける干渉回避のためのはみ出し部分であり、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータコア7の径方向内周側に肥大化する。よって、参考形態に示す回転電機は、実施形態に示す回転電機と比べて、大型化および高コスト化する。
また、実施形態と同様に、コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻回される巻線をバックヨーク側に移動させる場合を考える。同図(c)は、同図(b)に示す矢印A2方向視であるので、コイル導体巻始め部3Sの6本のコイル辺部は、紙面奥側から紙面手前側に向かってコイル導体が巻き回されている。そして、コイル導体巻始め部3Sから巻回された第1コイル辺部群3G1の6本のコイル辺部は、紙面手前側から紙面奥側に向かってコイル導体が巻き回される。
このとき、第1コイル辺部群3G1の径方向外周側には、第2コイル辺部群3G2があるので、コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻回す巻線をステータコア7の外周側(バックヨーク側)に移動させようとすると、第1層および第2層の2つのレーンに亘って移動させる必要がある。そのため、バックヨーク側に移動させた巻線をスロット内のコイル導体部へ戻すための配策が煩雑となる。このように、参考形態では、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致していないので、コイル導体巻始め部3Sから第1コイル辺部群3G1に巻回される巻線をバックヨーク側に移動させて、シート干渉部3SAにおける干渉を回避することは、容易ではない。
図26は、隙間詰め後のシート乗り上げ部3Aの状態を示す模式図である。図26(a)〜(c)は、図12(a)〜(c)に対応している。同図は、図25に示す方法で、シート乗り上げ部3Aのコイル端部の一部(部位3A3a、3A3b)を円環巻方向に対してステータコア7の径方向内周側に傾斜して変形させた状態を示している。シート乗り上げ部3Aのコイル端部が変形されると、隙間SP4は隙間SP41になり、隙間SP5は隙間SP51になり、隙間SP6は隙間SP61になる。
図26(b)、(c)に示すように、7*および8*に示すコイル導体は、スロット内における配置の都合上、移動させることができない。そのため、6*〜8*における巻線の引き回しを調整することが困難であり、コイル導体巻き返し部3Rは、第9層および第10層に突出している。つまり、ヘリカル巻シート状コイル3がステータコア7の径方向に巻き重ねられたとき、シート乗り上げ部3Aの径方向厚みは、理想収容ライン3ILに対して2層分、増加する。したがって、参考形態に示すヘリカル巻シート状コイル3は、実施形態に示すヘリカル巻シート状コイル3と比べて、ステータコア7の径方向内周側に肥大化し、回転電機が大型化および高コスト化する。
なお、ヘリカル巻方向が時計回り(右回り)であり、円環巻方向が反時計回り(左回り)である形態についても、参考形態と同様の結果になる。また、参考形態で既述したことは、相単位コイル5X1、5X2が並列接続されているヘリカル巻シート状コイル3に限定されるものではなく、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致していない場合は、相単位コイル5X1、5X2が直列接続されているヘリカル巻シート状コイル3についても言える。また、ヘリカル巻方向と円環巻方向とが一致していない場合は、3相の相コイルがΔ結線されているヘリカル巻シート状コイル3についても参考形態と同様の結果になる。
<その他>
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、ヘリカル巻方向および円環巻方向は、反時計回り(左回り)で、一致させることもできる。また、ヘリカル巻シート状コイル3は、ステータの周方向長の4倍の波巻き構成に限定されるものではなく、ステータの周方向長の自然数倍であれば良い。なお、本発明は、波巻き巻装方式の種々の回転電機に用いることができ、例えば、車両の駆動用モータ、発電機、産業用機器などに用いることができる。