JP6295149B2 - 車両用変速装置 - Google Patents

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本発明は、ベルト式などの無段変速機構と、変速比が固定の歯車式などの有段変速機構とを備えたタイプの車両用変速装置に関する。
本明細書における有段変速機構とは、多段変速機構と同義ではなく、変速段が単段のものを含む概念である。
この種の車両用変速装置の一例として、特許文献1に記載されたものがある。
同文献に記載された車両用変速装置は、ベルト式無段変速機構、変速比が固定の歯車式変速機構、遊星歯車機構、および走行モード切替え用の2つのクラッチを備えている。車両走行モードとしては、第1および第2の走行モードがある。第1の走行モードは、前記2種類の変速機構のうち、ベルト式無段変速機構のみを利用してエンジン出力が車軸側に伝達されるモードである。第2の走行モードは、トルクスプリットモードであり、このモードにおいては、エンジン出力がベルト式無段変速機構および歯車式変速機構の双方を利用して変速された上で、遊星歯車機構を利用してそれらの駆動力が合成され、この合成駆動力が車軸側に出力される。
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、改善すべき余地があった。
すなわち、第1および第2の走行モードの一方から他方への変更動作は、走行モード切替え用の2つのクラッチのオン・オフ状態を切り替えることにより行なわれる。ただし、その際には、駆動伝達経路の一部がインターロックされてベルト式無段変速機構においてベルト滑りが発生することを回避するなどの理由により、前記2つのクラッチの両方が開放状態とされる場合がある。ところが、そのようなクラッチ開放状態となったのでは、エンジンと駆動系とが遮断されるためエンジンの負荷が急減し、エンジン回転数が吹き上がってしまう。
このような事態の顕著な例としては、車両走行中にキックダウン操作がなされ、現走行モードから他の走行モードへのダウンシフトがなされる場合が挙げられる。キックダウン操作時には、アクセルペダルの踏み込み量が最大であるため、このような時期において走行モード切替え用の2つのクラッチの両方が開放状態になると、エンジン回転数は、かなり高い回転数まで吹き上がってしまう。
このようなエンジン回転数の吹き上がりがあると、前記2つのクラッチのうち、係合側のクラッチにおける差回転が大きくなる。これでは、クラッチ係合時にショックが発生し、さらにクラッチなどの部品類がダメージを受ける虞もある。
前記したようなキックダウン操作があった場合には、走行モードの変更が迅速に行なわれる必要がある。ところが、従来においては、既述したように、エンジン回転数の吹き上がりに起因してクラッチの差回転が大きくなるため、走行モードの変更を即座に実行することも事実上困難なものとなっていた。従来においては、キックダウン操作があった場合には、ベルト式無段変速機構の変速比を、クラッチの差回転が少なくなる変速比まで変更する制御を実行した後に、クラッチの切替え動作を開始させる必要があった。ただし、このような制御を実行していたのでは迅速性に欠け、ドライバビリティが悪化する。
特許第4552376号公報
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、走行モード変更時におけるエンジン回転数の吹き上がりを抑制し、クラッチ係合時に大きなショックが発生するなどの不具合が生じることを好適に解消することが可能な車両用変速装置を提供することを、その課題としている。
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
本発明により提供される車両用変速装置は、無段変速機構と、変速比が固定の有段変速機構と、これら両変速機構を利用してエンジン出力が車軸側へ伝達する経路を切り替えるためのクラッチと、電子スロットル制御システムと、を備えており、前記クラッチの切り替えにより設定される車両の走行モードとして、前記両変速機構のうち、前記無段変速機構のみを利用した第1の走行モードと、前記無段変速機構が併用され、または併用されることなく前記有段変速機構を利用した第2の走行モードと、が選択可能とされている、車両用変速装置であって、前記第1の走行モードおよび前記第2の走行モードの一方から他方への走行モードの変更を行なうべく前記クラッチのオン・オフ切り替えを実行する際には、前記電子スロットル制御システムにおいて、実エンジン回転数をアクセル開度に対応する目標エンジン回転数よりも低くするエンジン回転抑制制御が実行されるように構成されており、前記第1の走行モードおよび前記第2の走行モードのうち、一方は低速域走行モードとされ、かつ他方は高速域走行モードとされており、前記エンジン回転抑制制御は、前記高速域走行モード時にキックダウン操作または所定のマニュアル操作が行なわれることに対応して走行モードを前記低速域走行モードへ変更する際の前記クラッチのオン・オフ切り替え時に実行されるように構成されていることを特徴としている。
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1および第2の走行モードの一方から他方への走行モードの変更を行なうべく走行モード切替え用のクラッチのオン・オフ切り替えが実行される際には、電子スロットル制御システムによって、実エンジン回転数が低くなるように制御され、エンジン回転数の吹き上がりが抑制される。このため、前記クラッチの切り替え動作時の差回転が少なくなり、クラッチ切り替え時のショックを小さくして車両の乗り心地をよくすることができる。また、クラッチなどの部品類が大きなダメージを受けることも防止することができる。
さらに、エンジン回転数の吹き上がりに起因するクラッチ差回転の減少を図ることができれば、たとえばキックダウン操作がなされたような場合には、走行モード変更用のクラッチ切り替え動作を、支障のない状態で即座に行なうことが可能となる。すなわち、本発明によれば、クラッチ切り替え動作を開始する前に、予めクラッチ差回転が小さくなるように有段変速機構の変速比を変更する制御を省略することができる。したがって、走行モードの変更を迅速に行なわせ、ドライバビリティを向上させることも可能である。
さらにこのような構成によれば、エンジン回転数がとくに吹き上がり易い所定の走行モード変更時において、エンジン回転数の吹き上がりを的確に抑制し、先に述べたような本発明による効果を好適に得ることができる。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
本発明に係る車両用変速装置の一例を示す概略説明図である。 図1に示す車両用変速装置における走行モード切替え線図である。 図1に示す車両用変速装置のトータルの変速比とベルト式無段変速機構のベルト掛け状態の関係の一例を示す説明図である。 図1に示す車両用変速装置において実行される動作制御の一例を示すフローチャートである。 図1に示す車両用変速装置における概略の作用の一例を示すタイムチャートである。 図1に示す車両用変速装置における変速動作の一例を示す説明図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
図1に示す車両用変速装置Aは、エンジン10の出力を差動歯車装置2に連結された一対の車軸9a,9b側に伝えるためのものである。具体的には、この車両用変速装置Aは、ベルト式無段変速機構4、歯車式変速機構5、遊星歯車機構6、スプリットクラッチC1、ドライブクラッチC2、および前後進切り替え用のブレーキB1を備えている。また、油圧制御装置30や制御部3も構成要素に含まれている。
ベルト式無段変速機構4は、本発明でいう「無段変速機構」の一例に相当する。歯車式変速機構5は、本発明でいう「有段変速機構」の一例に相当する。
ベルト式無段変速機構4は、ベルト掛かり径を可変制御可能な一対のプーリ40a,40bにベルト41を掛け回した構造であり、ベルト掛かり径を変更することにより変速比γBを無段階で変更可能である。プーリ40aは、プライマリ軸70に装着されているが、このプライマリ軸70は、エンジン10の出力軸10aにトルクコンバータ11を介して連結されている。ベルト式無段変速機構4の出力軸としてのセカンダリ軸80は、遊星歯車機構6のサンギヤ60との連結が図られているとともに、リングギヤ62に対してはドライブクラッチC2を介して連結可能とされている。
歯車式変速機構5は、プライマリ軸70にスプリットクラッチC1を介して連結された第1ないし第3の歯車51〜53を有する歯車列であり、第3の歯車53は、遊星歯車機構6のキャリヤ63に連結されている。このため、スプリットクラッチC1をオン状態(係合状態)とした際には、プライマリ軸70の回転駆動力を所定の変速比γGに変速した上で、キャリヤ63に伝達させることが可能である。
遊星歯車機構6のリングギヤ62は、歯車式変速機構5およびベルト式無段変速機構4から遊星歯車機構6に入力された駆動力の出力部とされている。遊星歯車機構6からの出力は、リングギヤ62に連結された出力軸81、ならびにギヤ82を介して、差動歯車装置2のリングギヤ20に伝達される。
車両用変速装置Aにおいては、車両前進用の走行モードとして、第1の走行モードと第2の走行モードとを切替え設定可能である。
第1の走行モードは、歯車式変速機構5およびベルト式無段変速機構4のうち、ベルト式無段変速機構4のみを利用したモードである。この第1の走行モードは、スプリットクラッチC1をオフ、ドライブクラッチC2をオンにすることにより設定される。前後進切り替え用のブレーキB1は、車両後進時にオンとされるものであり、車両前進時にはオフのままとされる。第1の走行モード時においては、たとえば車速、スロットル開度、および目標エンジン回転数などをパラメータとする3次元マップに基づいて変速比γBが決定され、かつこの決定された変速比γBとなるようにベルト式無段変速機構4が制御される

第2の走行モードは、歯車式変速機構5およびベルト式無段変速機構4の双方を利用したトルクスプリットモードである。この第2の走行モードは、スプリットクラッチC1をオン、ドライブクラッチC2をオフに切り替えることにより設定される。歯車式変速機構5の変速比γGは一定(固定)であるが、第2の走行モードにおいては、ベルト式無段変速機構4がサンギヤ60およびピニヨンギヤ61を回転させる結果、両変速機構4,5のトータルの変速比は、ベルト式無段変速機構4の変速比γBを変更することによって制御可能である。第2の走行モードでは、動力伝達効率が高い歯車式変速機構5が用いられるため、図3に示すように、第2の走行モードの期間P2は、第1の走行モードの期間P1よりも動力伝達効率が高い状態となる。
2つのクラッチC1,C2は、たとえば湿式摩擦板タイプの油圧クラッチであり、交互に配されたクラッチディスクとクラッチプレートとを、油圧ピストンにより押圧させて係合可能とするものである。これらクラッチC1,C2以外のブレーキB1や、ベルト式無段変速機構4のプーリ40a,40bのベルト掛かり径変更機構なども油圧式であり、これらは油圧制御装置30を利用して制御される。油圧制御装置30は、制御部3からの指令に基づいて油圧制御を実行する。
制御部3は、たとえばECUであり、エンジン回転数センサSa、車速センサSb、アクセル開度センサSc、シフトセレクタSd、および走行モード切替えスイッチSeなどから信号が送信され、それらのデータに基づいて車両走行モードの変更や、変速比γBの制御などを実行する。また、電子スロットル制御装置10bの制御も実行する。この電子スロットル制御装置10bおよび制御部3の組み合わせは、本発明でいう電子スロットル制御システムの一例に相当する。なお、前記した制御の詳細については、後述する。
車両用変速装置Aにおいては、図2に示すように、走行モード切替えラインLが定められた走行モード切替え線図(変速線図)に基づき、第1および第2の走行モードの切り替え設定がなされる。第2の走行モードは、第1の走行モードよりも車速の高速域側に設定されている。第1および第2の走行モードの切り替えは、基本的には、ベルト式無段変速機構4の変速比γBが、所定の走行モード切替え変速比γSに一致する条件下で行なわれる(図3も参照)。この変速比γSは、たとえば歯車式変速機構5の変速比γGと同じ値である。走行モード切替えラインLは、変速比γBが変速比γSとなるポジションに相当する。
次に、前記した車両用変速装置Aの作用について説明する。併せて、制御部3による動作制御手順の一例について、図4のフローチャートを参照しつつ説明する。
まず、現在の走行モードが、高速域走行モードとしての第2の走行モードである場合において、第1の走行モードに戻す場合には、ベルト式無段変速機構4の変速比γBと走行モード切替え変速比γSとの比較が行われる(S1:YES,S2:YES,S3)。γB>γSの関係になく、たとえばγB=γSの関係である場合には、通常通りの第1の走行モードへの変更動作がなされる(S3:NO,S9)。この動作は、スプリットクラッチC1をオフ(開放)にするとともに、ドライブクラッチC2をオン(係合)にする動作である。
前記とは異なり、γB>γSの関係にあり、かつキックダウン操作に基づいて走行モードの変更が行なわれる場合には、エンジン回転抑制制御が実行されつつ、第1の走行モードへの切替え動作が行なわれる(S3:YES,S4:YES,S5,S6)。エンジン回転抑制制御は、実エンジン回転数を、アクセル開度に対応する目標エンジン回転数よりも低くする制御である。通常時におけるエンジン回転数の制御は、アクセル開度のデータと、スロットル開度制御マップとに基づき、目標エンジン回転数が決定され、かつこの目標
エンジン回転数となるように電子スロットル制御装置10bが制御される。これに対し、前記したエンジン回転抑制制御は、前記した本来の目標エンジン回転数よりも実エンジン回転数を積極的に低くする制御である。
第1の走行モードが設定された後には、ベルト式無段変速機構4において、その変速比γBを所定の目標変速比に接近させる制御が実行されるが、変速比γBが前記目標変速比に到達すると、その時点でエンジン回転抑制制御が解除され、通常のエンジン回転数制御に復帰する(S7:YES,S8)。
前記した制御による作用を、図5を参照して説明する。
すなわち、同図(a)に示すように、時刻t1にキックダウン操作がなされ、同図(b)に示すように、その後の時刻t2〜t3の期間が、クラッチC1,C2の両開放期間になったとしても、同図(c)に示すように、エンジン回転数は、大きく上昇しない。同図の仮想線L1は、本実施形態のエンジン回転抑制制御が実行されない場合である。アクセル開度は、クラッチC1,C2の両開放期間に最大となっているため、仮想線L1の場合にはエンジン回転数は相当に大きく吹き上がる。これに対し、本実施形態では、そのような現象を防止することができる。このため、同図(e)に示すように、ドライブクラッチC2については、差回転が小さい状態での係合動作を実行させることができる。同図の仮想線L2は、エンジン回転抑制制御がなされない場合を示し、この場合にはクラッチ差回転が相当に大きくなる。
このように、本実施形態によれば、クラッチ差回転が小さい状態でドライブクラッチC2の係合が行なわれるため、ショックを小さくし、乗り心地をよくすることが可能である。また、ドライブクラッチC2が大きなダメージを受けるといった不利も解消することが可能である。
一方、前記した動作制御においては、図6に示すように、ベルト式無段変速機構4の変速比γBが、たとえばN1〜N4で示す値を辿るようになされており、変速比γBを本来の走行モード切替え変速比γSに一致させるための制御(図4のステップS10に相当)が省略されている(図5(d)も参照)。このため、本実施形態においては、走行モードの変更を迅速に行なわせ、ドライバビリティを向上させる効果も得られる。既述したように、エンジン回転数の吹き上げに起因するドライブクラッチC2の差回転を小さくし得ることにより、前記したような走行モードの迅速な変更が好適に実現可能である。
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両用変速装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
上述の実施形態においては、キックダウン操作がなされたときに、エンジン回転抑制制御がなされる場合を一例として説明したが、これに限定されない。たとえば、走行モード切替えスイッチSeが操作されるなど、所定のマニュアル操作が行なわれた場合においても、エンジン回転抑制制御がなされるように構成することができる。
本発明において、エンジン回転抑制制御されるのは、高速域走行モードから低速域走行モードへの変更時に限らない。低速域走行モードから高速域走行モードへの変更時においても、クラッチ開放時においてエンジン回転数が吹き上がる場合はあるため、これを防止すべくエンジン回転抑制制御が実行されるようにすることができる。
上述の実施形態とは異なり、第1の走行モードを高速域走行モードとし、かつ第2の走行モードを低速域走行モードに設定することも可能である。
本発明でいう無段変速機構は、ベルト式無段変速機構に代えて、たとえばトロイダル方式などの他の種類の無段変速機構とすることもできる。本発明でいう有段変速機は、歯車
式変速機構に代えて、たとえばチェーン方式の変速機構とすることもできる。
本発明でいう第2の走行モードは、無段変速機構と有段変速機構とを併用したトルクスプリットモードに限らない。無段変速機構を利用せず、歯車式変速機構などの有段変速機構のみを利用したモードとすることもできる。
A 車両用変速装置
C1 スプリットクラッチ
C2 ドライブクラッチ
2 差動歯車装置
3 制御部(電子スロットル制御システム)
4 ベルト式無段変速機構(無段変速機構)
5 歯車式変速機構(有段変速機構)
6 遊星歯車機構
9a,9b 車軸
10 エンジン
10b 電子スロットル制御装置(電子スロットル制御システム)

Claims (1)

  1. 無段変速機構と、変速比が固定の有段変速機構と、これら両変速機構を利用してエンジン出力が車軸側へ伝達する経路を切り替えるためのクラッチと、電子スロットル制御システムと、を備えており、
    前記クラッチの切り替えにより設定される車両の走行モードとして、
    前記両変速機構のうち、前記無段変速機構のみを利用した第1の走行モードと、
    前記無段変速機構が併用され、または併用されることなく前記有段変速機構を利用した第2の走行モードと、
    が選択可能とされている、車両用変速装置であって、
    前記第1の走行モードおよび前記第2の走行モードの一方から他方への走行モードの変更を行なうべく前記クラッチのオン・オフ切り替えを実行する際には、前記電子スロットル制御システムにおいて、実エンジン回転数をアクセル開度に対応する目標エンジン回転数よりも低くするエンジン回転抑制制御が実行されるように構成されており、
    前記第1の走行モードおよび前記第2の走行モードのうち、一方は低速域走行モードとされ、かつ他方は高速域走行モードとされており、
    前記エンジン回転抑制制御は、前記高速域走行モード時にキックダウン操作または所定のマニュアル操作が行なわれることに対応して走行モードを前記低速域走行モードへ変更する際の前記クラッチのオン・オフ切り替え時に実行されるように構成されていることを特徴とする、車両用変速装置。
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