JP6295050B2 - エチレンプロピレンゴム組成物、該組成物から形成されたケーブル及びモールド品 - Google Patents
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本発明の第一実施形態のゴム組成物は、EPゴムと、充填剤と、軟化油と、有機過酸化物系架橋剤と、老化防止剤とを含有し、上記老化防止剤が架橋温度において作用発現可能なヒンダードフェノール系化合物またはアミン系化合物のうち少なくとも1つを含む第1の老化防止剤を含み、ここで上記第1の老化防止剤の含有量が、上記EPゴムの総量100重量部に対して、好ましくは0.25〜1.50重量部の範囲であることを特徴とする。特に限定するものではないが、上記第1の老化防止剤の含有量は、0.50〜1.25の範囲であることがより好ましい。このような第一実施形態のゴム組成物によれば、EPゴムと、有機過酸化架橋剤と、特定量の上記第1の老化防止剤とが共存することによって、系中で起こり得る余剰ラジカルによる望ましくない作用が抑制され、軟化油によるブルームの発生、軟化油の移行及び溶出といった不具合を改善することが可能となる。以下、各成分について説明する。
第一実施形態において、EPゴムは、電気絶縁性材料の分野で公知のエチレン−プロピレン系の共重合体であってよい。例えば、エチレンとプロピレンとの共重合体、及びエチレンとプロピレンと非共役ジエンモノマーとの共重合体が挙げられ、これらは単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。上記非共役ジエンモノマーの例として、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。特に限定するものではないが、第一実施形態では、EPゴムとして、三井化学工業(株)製の商品名「EPTX−4010M」を使用することができる。「EPT X−4010M」は、エチレン(54%)、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(7.6%)の共重合体であって、非油展で、一般的なEPゴムに比べて、ムーニー粘度が著しく低い(ML1+4(100℃)=8)。また、EPゴムとして、三井化学工業(株)製の商品名「EPT4021」を使用することもできる。「EPT4021」は、エチレン(51%)、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(8.1%)の共重合体であって、非油展で、一般的なEPゴムに比べて、ムーニー粘度が低い(ML1+4(100℃)=24)。このようにムーニー粘度が低いと、モールド品成型時の注型が容易であるため、ボイド(空隙)が発生し難く、製造性や製品の信頼性を容易に向上することができるため好ましい。また、上記「EPT4021」及び「EPT X−4010M」は、押出成形性に優れ、一般的なEPゴムよりも架橋点(5−エチリデン−2−ノルボルネン)が多く、架橋特性に優れている点でも好ましい。
第一実施形態において、充填剤は、特に限定されるものではなく、電気絶縁性材料の分野で通常使用される化合物であってよい。例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカといった鉱物系の無機充填剤が挙げられ、これらは単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。また、半電導性が求められる用途にゴム組成物を使用する場合、上述の無機充填剤に加えて、カーボブラックを使用してもよい。充填剤は、未処理であっても、又はシランカップリング剤などによって表面処理されたものであってもよい。シランカップリング剤によって表面処理された充填剤を使用した場合、ベース樹脂となるEPゴムとの相溶性が向上する点で好ましい。特に、シランカップリング剤によって表面処理されたクレーは、機械的強度の向上効果が高い点で、最も好ましい。特に限定するものではないが、第一実施形態では、無機充填剤として、バーゲス・ピグメント社製の商品名「バーゲスKE」を使用することができ、これはシランカップリング剤で表面処理された焼成クレーである。また、カーボンブラックとして、旭カーボン(株)の製品番号「#35」を使用することができる。
第一実施形態において、軟化油は、特に限定されるものではなく、電気絶縁性材料の分野で通常使用される化合物であってよい。例えば、プロセスオイル、エキステンダオイルとして知られる周知の化合物を使用することができる。理論によって拘束するものではないが、第一実施形態では、組成物中のEPゴムと有機過酸化物系架橋剤との架橋反応に付随し、多少なりとも軟化油もラジカル架橋を受け、ゴム分子と強固な共有結合を形成すると考えられる。さらに、その結果として、軟化油はゴム分子に強固に固定され、第一実施形態の組成物は軟化油の移行や溶出といった不具合が改善されると推測される。そのため、軟化油は、少なくともラジカル攻撃に対して脱離し得る水素原子を有する化合物であればよい。そのような化合物の具体例としては、パラフィン系、オレフィン系、ナフテン系、芳香族系の炭化水素化合物が挙げられる。
第一実施形態において、有機過酸化物系架橋剤は、特に限定されるものではなく、電気絶縁性材料の分野で通常使用される化合物であってよい。架橋剤の使用によって、加熱時にEPゴムの架橋反応が良好に進行し、表面外観、電気特性、及び機械的強度に優れるゴム組成物を提供することが可能となる。第一実施形態で使用できる有機過酸化物系架橋剤の一例として、ジクミルパーオキサイド(DCP)、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,3−ジ(t−ブチルパーオキシ)イソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、m−トレイルパーオキサイド、ジプロピオニルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上組合せて使用することができる。第一実施形態では、EPゴムとの相溶性、スコーチ安定性、架橋温度などのバランスに優れ、また耐老化特性に優れる点から、有機過酸化物系架橋剤として、ジクミルパーオキサイド(DCP)を使用することが好ましい。第一実施形態において、上記架橋剤の配合量は、EPゴム100重量部に対して、1〜6重量部の範囲、より好ましくは1.5〜3.5重量部の範囲である。上記架橋剤の配合量を上述の範囲に調整することによって、架橋剤とEPゴムの相溶性、スコーチ安定性、架橋特性を向上させることが容易となる。
有機過酸化物系架橋剤によるラジカル架橋反応は、ラジカルによってゴム分子との間に結合を形成する一方で、ゴム分子の分解や開裂を引き起こす場合がある。また、架橋時又は試験時の高温条件下で発生した余剰なラジカルが、ゴム分子の分解又は開裂を引き起こす場合もある。このようなゴム分子の分解又は開裂は、熱老化や熱劣化といったゴム組成物の特性の低下を招くため、望ましくない。そのため、ゴム組成物の熱老化や熱劣化を抑制するために、老化防止剤が使用される。
このように、架橋温度の観点から、老化防止剤として使用する化合物を適切に選択することによって、第一実施形態による軟化油の溶出及び移行の抑制効果を容易に得ることが可能となる。理論によって拘束するものではないが、例えば、架橋温度よりもかなり低い温度(例えば、架橋温度よりも40℃低い)で作用発現する老化防止剤を使用した場合には、架橋剤が分解し、架橋反応が開始する前に、老化防止剤の分解が進み、余剰ラジカルに起因する軟化油の細分化の抑制効果が低減する可能性が考えられる。また、架橋剤が分解し、ラジカルが発生した際に、老化防止剤が直ぐにラジカルを失活させてしまい、架橋反応の進行を阻害する可能性が考えられる。一方、架橋温度よりもかなり高い温度で作用発現する老化防止剤を使用すると、老化防止剤が架橋温度で作用を発現出来ず余剰ラジカルに起因する軟化油の細分化の抑制効果が低減する可能性が考えられる。
上記第1の老化防止剤として使用するヒンダードフェノール系化合物及びアミン系化合物は、極性分子であるため、極性の小さいゴム分子とは相溶性に乏しく、ブルームが発生しやすい傾向がある。したがって、上記第1の老化防止剤の含有量を1.50重量部未満とすることによって、そのようなブルームの発生することを抑制することが可能となる。逆に第1の老化防止剤の含有量を1.50重量部以上の場合は、ブルームの発生を抑制することが困難である。
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態では、老化防止剤として、第1の老化防止剤に加えて、硫黄系化合物を含む第2の老化防止剤を含むことが好ましく、その配合量はEPゴムの総量100重量部に対して1.00〜1.50重量部とすることが好ましい。特に限定するものではないが、第2の老化防止剤の含有量は、好ましくは1.00〜1.40の範囲である。また、上記老化防止剤として、第1の老化防止剤と第2の老化防止剤とを併用する場合、上記第1の老化防止剤:上記第2の老化防止剤の配合比は1:2〜3:2の範囲、より好ましくは1:2〜1:1とする。但し、それらを併用する場合、EPゴムの総量100重量部に対して、上記第1の老化防止剤の含有量は0.50〜1.50重量部の範囲とする。上記第2の老化防止剤として使用する硫黄系化合物は、架橋時にDCPなどの架橋剤に由来する過酸化物(R−O−O−R)を安定なエーテル化合物(R−O−R)に変換することで架橋剤の活性を低下させ、架橋度を低下させる場合がある。したがって、軟化油がゴム組成物中に強固に保持されるような高い架橋度を得るためには、後述の実施例からも明らかなように、第1の老化防止剤の含有量を単独で使用する場合よりも多くし、架橋時に上記第2の老化防止剤が活性にならないようにすることが好ましい。
本発明のEPゴム組成物は、必要に応じて、架橋助剤、滑剤、安定剤、着色剤、耐衝撃剤、難燃剤、絶縁向上剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、分散剤、離型剤といった、電気絶縁性材料として周知の各種添加剤を含んでもよい。本発明において、EPゴム組成物は、EPゴム、充填剤、軟化油、有機過酸化物系架橋剤及び老化防止剤に加えて、架橋助剤、滑剤及び安定剤を含む。架橋助剤としては、例えば、イオウ、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、m−フェニレンジマレイミド、O,O'−ジベンゾイル−p−キノンジオキシム、25%ポリ−p−ジニトロソベンゼンが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。特に限定するものではないが、伸び特性改善の観点から、イオウが好ましい。また、滑剤としては、例えば流動パラフィン、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレート、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、などが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。特に限定するものではないが、EPゴムとの相溶性、滑性効果の高さの観点から、ポリオレフィンワックスを使用することが好ましい。このような化合物は、三井化学(株)社製の商品名「ハイワックス220P」として入手することができる。また、比較的安価かつ低毒で滑性効果に優れるだけでなく、架橋助剤、安定剤としても作用することが可能であるという多機能性の観点から、ステアリン酸亜鉛などの金属石けん系化合物を使用することも好ましい。さらに、安定剤としては、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、有機スズメルカプタイド、有機スズマレエート、有機スズカルボキシレート、鉛白、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、など挙げられ、これらは単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。特に限定するものではないが、比較的安価であり、低毒で、安定化の効果に優れることから、亜鉛華を使用することが好ましい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
1.EPゴム組成物の調製
表1に示した配合量で各成分を配合し、各成分が均一になるまでオイルロールを用いて混練し(A練が120℃、B練が50℃)、各々のEP組成物を得た。得られたEP組成物をプレス成型機によって成型しシートとした。プレス成型は、温度160℃、時間40分、圧力150Mpaで行った。このプレス成型の際に印加される温度と時間により、EP組成物の架橋反応が進行する。そして、プレス成型の後に、以下に記載の試験を実施するために所定の寸法に打ち抜き、試験片を得た。各試験片を用い、以下の方法に従って、各種特性について検討した。結果を表2〜8に示す。
110℃に加熱した無色透明のキシレン溶剤中に、予め所定の形状に打ち抜いた試験片(長さ:10mm×幅:5mm×厚み:2mmのシート形状を有する)を24時間にわたって浸漬させた後、キシレン溶剤から試験片を取り出し、キシレン溶剤の色変化から目視にて溶出の有無を判定した。なお、判定基準は、組成物において軟化油のみが黄色の色味を示すことを考慮し、以下のとおりとした。なお、評価結果Aが合格レベルである。
(判定基準)
A:溶出なし。試験後のキシレン溶剤が無色透明のままである。
B:溶出あり。試験後のキシレン溶剤がやや黄色味を帯びている。
C:溶出あり。試験後のキシレン溶剤が明らかに黄色に着色している。
先ず、以下の表1に示すように、比較例1における軟化量の量を1.8重量部に変更した以外、全て同じ配合として調製した組成物から、各試験片に貼り合わせる油分2%のゴムシートを作製した。
(判定基準)
A:試験片の重量変化が0.00〜0.40%
B:試験片の重量変化が0.41〜0.80%
C:試験片の重量変化が0.81〜1.20%
D:試験片の重量変化が1.21〜1.60%
E:試験片の重量変化が1.61%以上
大気中、30℃で2年間にわたって、架橋処理前の試験片を保管した。その後、試験片の表面を目視にて観察し、以下の判定基準に従いブルーム(白化)部の有無について判定した。具体的に、試験片におけるブルーム部の比率は、(株)キーエンス製のマイクロスコープを用い、試験片の画像を写した画面の色の濃淡からブルーム部面積を判断し、測定する機能を利用して判定した。なお、評価結果B以上が実用上の合格レベルである。
(判定基準)
A:ブルーム部比率:0〜10%
B:ブルーム部比率:11〜30%
C:ブルーム部比率:31〜50%
D:ブルーム部比率:51〜70%
E:ブルーム部比率:71〜100%
JIS K6251に規格に従い、試験片として、長さ:200mm×幅:200mm×厚み:2mmtのシートをそれぞれ2枚作製し、JIS K6257(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方)の方法に従って、3号ダンベル形状に打ち抜き試験片を得た。各試験片を用い、以下のようにして標線間距離20mm、速度500mm/minで引張試験を行った。まず、試験片の1枚について上記条件下で引張特性を測定した(熱老化前の引張り特性)。次に、同様に作製したもう1枚の試験片を大気中、145℃に加熱した回転式オーブン内に96時間にわたって熱老化させた後、上記条件下で引張試験を行った。以下の式に得られたデータを適用することによって、熱老化引張残率を算出した。
熱老化引張強度残率=(熱老化後の引張強度)*100/(熱老化前の引張強度)
JIS K6257(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−熱老化特性の求め方)に記載の方法に従い、各試験片の熱老化引張り伸び残率について検討した。大気中、145℃に加熱した回転式オーブン内に96時間にわたって放置することで試験片を熱老化させ、熱老化の前後のデータを以下の式に適用することによって、熱老化引張り伸び残率を算出した。
熱老化引張り伸び残率=(熱老化後の引張り伸び)*100/(熱老化前の引張り伸び)
Claims (7)
- エチレンプロピレンゴムと、充填剤と、軟化油と、有機過酸化物系架橋剤と、第1の老化防止剤と、第2の老化防止剤とを含有するエチレンプロピレンゴム組成物であって、 前記第1の老化防止剤が、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート)メタン、及びp−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミンの少なくとも一方であり、前記第1の老化防止剤の含有量が、前記エチレンプロピレンゴムの総量100重量部に対して、0.5〜1.50重量部の範囲であり、 前記第2の老化防止剤が、ベンズイミダゾール系化合物、及びジブチルジチオカルバミン酸ニッケルの少なくとも一方であり、前記第2の老化防止剤の含有量が、前記エチレンプロピレンゴムの総量100重量部に対して、1.00〜1.50重量部の範囲であり、 前記第1の老化防止剤:前記第2の老化防止剤の配合比が1:2〜3:2であることを特徴とするゴム組成物。
- 前記第1の老化防止剤が、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート)メタンであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
- 前記第2の老化防止剤が、2−メルカプトベンズイミダゾールを含むベンズイミダゾール系化合物であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
- 前記軟化油が、パラフィン系炭化水素化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- さらに、滑剤、架橋助剤、および安定剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 導体部と、該導体部を被覆する被覆層を有するケーブルであって、前記被覆層が請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物から形成されていることを特徴とするケーブル。
- 電気機器の接続部に設けられる、被覆層を有するモールド品であって、前記被覆層が請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物から形成されていることを特徴とするモールド品。
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