JP3899830B2 - ケーブル接続部用常温収縮チューブ及びそれに使用されるゴム組成物 - Google Patents

ケーブル接続部用常温収縮チューブ及びそれに使用されるゴム組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケーブル接続部用常温収縮チューブ、及びそれに使用されるゴム組成物に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来の架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの接続部の代表的なものとして、テープ巻モールド、差込式ゴムモールドなどがある。しかし、テープ巻モールドは、施工時間が長いという問題があり、差込式ゴムモールドは、構造上、接続部の内径をケーブル外径より小さくしてあるので、ケーブルへの挿入が行いにくく作業性が悪かった。
【0003】
このため近年、常温収縮チューブを用いた接続部が注目されるようになってきた。常温収縮型は、施工前に常温収縮チューブを拡径し、その内側に支持材を入れて拡径状態を維持し、ケーブルを通した後に所定の位置で支持材を製品から抜き去ることことによりチューブを収縮させ、固定するものである。そのため、挿入が容易で作業性がよく、熱収縮型と異なり、現地で火気を使用せずまた特別な工具を必要としないという特長を持つ。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
常温収縮チューブに用いる材料としては、高い電気絶縁性と耐熱性を持つエチレンプロピレンゴムをベースに、充填剤やプロセスオイル、酸化防止剤などの各種配合剤を添加したゴム組成物が知られている。
【0005】
しかしながら、従来のゴム組成物を使用した場合においては、機械的強度が不足し、接続部の拡径作業時に機械的な破壊を起こすことがあった。さらには、永久伸び、圧縮永久ひずみが劣るために、接続部を一定期間拡径状態で保管した後、ケーブルを通して収縮した際、収縮が不十分になることがあった。そのため、ケーブルとの十分な密着力が得られず、絶縁破壊強さが低下するなどの問題が生じた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題 】
本発明の目的とするところは、前記した従来技術の欠点を解消し、良好な拡径作業性を有し、しかも拡径状態を開放した際の十分な収縮性を維持することにより高い絶縁破壊強さを付与できるケーブル接続部用常温収縮チューブ及びそれに使用されるゴム組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、100℃におけるムーニ粘度(ML1+4)が60以上のエチレンプロピレンゴム100重量部に対して、有機過酸化物を3〜4.5重量部、プロセスオイルを40〜60重量部、焼成クレーを40〜80重量部、硫黄を0.2〜0.8重量部及びフタル酸ジアリルを1〜5重量部含有することを特徴とするケーブル接続部用常温収縮チューブに使用される絶縁ゴム組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、100℃におけるムーニ粘度(ML1+4)が60以上、105以下のエチレンプロピレンゴム100重量部に対して、有機過酸化物を3〜4.5重量部、プロセスオイルを40〜60重量部、焼成クレーを40〜80重量部、硫黄を0.2〜0.8重量部及びフタル酸ジアリルを1〜5重量部含有するゴム組成物からなり、引張強さが5MPa以上、伸びが500%以上であり、永久伸びが15%以下の絶縁チューブからなることを特徴とするケーブル接続部用常温収縮チューブを提供する。
【0009】
更に、本発明は、100℃におけるムーニ粘度(ML1+4)が60以上のエチレンプロピレンゴム100重量部に対して、有機過酸化物を3〜4.5重量部、プロセスオイルを40〜60重量部、焼成クレーを40〜80重量部、硫黄を0.2〜0.8重量部、フタル酸ジアリルを1〜5重量部及びカーボンブラックを20〜70重量部含有することを特徴とするケーブル接続部用常温収縮チューブに使用される半導電性ゴム組成物を提供する。
【0010】
更に、本発明は、前記絶縁チューブと、前記絶縁チューブの内周に形成される内部半導電チューブと、前記絶縁チューブの外周に形成される外部半導電チューブとからなり、前記内部半導電チューブ及び前記外部半導電チューブはいずれも100℃におけるムーニ粘度(ML1+4)が60以上、105以下のエチレンプロピレンゴム100重量部に対して、有機過酸化物を3〜4.5重量部、プロセスオイルを40〜60重量部、焼成クレーを40〜80重量部、硫黄を0.2〜0.8重量部、フタル酸ジアリルを1〜5重量部及びカーボンブラックを20〜70重量部含有するゴム組成物からなり、引張強さが5MPa以上、伸びが500%以上であり、永久伸びが15%以下である請求項2記載のケーブル接続部用常温収縮チューブを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、100℃におけるムーニ粘度(ML1+4)は、ムーニ粘度計を100℃に予熱しておき、未加硫ゴムをセットして1分間静置し、その後ローターを回転させてから4分後の値を求めたものである。引張強さ及び伸びは、JIS K 6251の加硫ゴムの引張試験方法に準拠して測定した値であり、引張強さが5MPa以上で伸びが500%以上を満足しないと、常温収縮チューブの拡径作業性を容易に行うことができない。また、永久伸びは、JIS K 6262の加硫ゴムの永久ひずみ試験方法に準拠して測定した値であり、永久伸びが15%以下を満足しないと、収縮後のチューブのケーブルへの密着性が不十分となり、交流破壊電圧が低くなる。本発明においては、100℃におけるムーニ粘度(ML1+4)が60以上のエチレンプロピレンゴムを主体とした組成物を使用することにより引張強さ、伸び及び永久伸びの特性を満足したケーブル接続部用常温収縮チューブを実現できる。
【0012】
ケーブル導体接続部に用いられるチューブは、絶縁チューブと、該絶縁チューブの内周に形成される内部半導電チューブと、該絶縁チューブの外周に形成される外部半導電チューブとからなる3層構造のものが一般に使用されるが、本発明においては、前記いずれの層も100℃におけるムーニ粘度(ML1+4)が60以上のエチレンプロピレンゴムを主体として含有するゴム組成物からなり、引張強さが5MPa以上、伸びが500%以上であり、永久伸びが15以下を満足するものである。
【0013】
引張強さが5MPa以上、伸びが500%以上であり、永久伸びが15以下を満足させるための絶縁ゴム組成物としては、100℃におけるムーニ粘度(ML1+4)が60以上のエチレンプロピレンゴム100重量部に対して、有機過酸化物を3〜4.5重量部、プロセスオイルを40〜60重量部、焼成クレーを40〜80重量部、硫黄を0.2〜0.8重量部及びフタル酸ジアリルを1〜5重量部含有するものが好適である。
【0014】
本発明において、有機過酸化物は架橋剤として添加するが、その代表例としてはジクミルパーオキサイドをあげることができるが、その他の有機過酸化物も用いることができる。有機過酸化物の含有量は、エチレンプロピレンゴム100重量部に対し3〜4.5重量部の範囲が好ましく、3重量部未満ではチューブの収縮が不安定となる傾向にあり、4.5重量部を越えると伸びが低下する傾向にある。
【0015】
本発明におけるプロセスオイルとしては、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系あるいはこれらの混合物を使用することができる。また、鉱物油、合成油のいずれも用いることができ、合成油としてはエチレンとα−オレフィンの共重合物が代表的である。プロセスオイルの含有量は、エチレンプロピレンゴム100重量部に対し40〜60重量部の範囲が好ましく、40重量部未満ではチューブの伸びが不足し、接続部の拡径作業時あるいは拡径状態で保管している際に機械的に破断を起こす恐れがあるためであり、60重量部を越えると、強度が不足し、同様に接続部の拡径作業時に機械的に破断を起こす恐れがあるためである。また、プロセスオイルの含有量が60重量部を越えると、永久伸びが劣り、接続部を一定期間拡径状態で保管した後、ケーブルを通し拡径状態を取り除いた際、接続部の収縮が不十分になり、ケーブルとの十分な密着力が得られず、絶縁破壊強さが低下する。
【0016】
本発明における焼成クレーは、けい酸アルミニウムを主体とする鉱物系充填剤を使用できる。その粒径は問わないが、平均粒径10μm以下であることが好ましい。また、ゴム組成物の機械的強度、電気絶縁性を高めるためのシランカップリングやチタネートカップリング処理などの表面処理を施してもよい。焼成クレーの含有量は、エチレンプロピレンゴム100重量部に対し40〜80重量部の範囲が好ましく、40重量部未満ではチューブの機械的強度が不足する傾向にあり、80重量部を越えると伸びが不足し、接続部の拡径作業時あるいは拡径状態で保管している際に、機械的な破壊を起こす恐れがあるためである。
【0017】
本発明においては、有機過酸化物に硫黄及びフタル酸ジアリルを併用すると伸びが大きくなり、チューブの拡径作業に有効であることが分かった。硫黄の含有量は、エチレンプロピレンゴム100重量部に対し0.2〜0.8重量部の範囲が好ましく、0.2重量部未満では、伸びを大きくする効果が不十分であり、0.8重量部を超えるとゲル阻害を起こしチューブの収縮性を損なう恐れがある。フタル酸ジアリルの含有量はエチレンプロピレンゴム100重量部に対し1〜5重量部の範囲が好ましく、1重量部未満では伸びを大きくする効果が不十分であり、5重量部を越えると伸びが低下する恐れがある。
【0018】
引張強さが5MPa以上、伸びが500%以上であり、永久伸びが15以下を満足させるための半導電性ゴム組成物としては、100℃におけるムーニ粘度(ML1+4)が60以上のエチレンプロピレンゴム100重量部に対して、ジクミルパーオキサイドを3〜4.5重量部、プロセスオイルを40〜60重量部、焼成クレーを40〜80重量部、硫黄を0.2〜0.8重量部、フタル酸ジアリルを1〜5重量部及びカーボンブラックを20〜70重量部含有するものが好適であり、しかも体積固有抵抗が105Ω・cm以下を実現できるものが好ましい。
【0019】
有機過酸化物、プロセスオイル、焼成クレー、硫黄及びフタル酸ジアリルの含有量については、前述した絶縁ゴム組成物と同様である。カーボンブラックの含有量は、エチレンプロピレンゴム100重量部に対して20〜70重量部の範囲が好ましく、20重量部未満では十分な導電性が得られないと共にチューブの強度が不足する傾向にあり、70重量部を越えると伸びが不足する傾向にある。
【0020】
本発明では他の配合剤として、酸化防止剤、安定剤、滑剤などを用いることができる。
【0021】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、実施例1〜12及び比較例1〜11は絶縁ゴム組成物の配合を、実施例13〜24及び比較例12〜22は半導電性ゴム組成物の配合を示したものである。
【0022】
実施例1〜24及び比較例1〜22に示す各種配合組成のコンパウンドを加圧型ニーダーを用いて混練し、その後、実施例13〜24及び比較例12〜22の配合組成の半導電性ゴムコンパウンドを金型にホットプレス機により注入して内部半導電層となる円筒を製造した。次に、この内部半導電層の外周に、実施例1〜12及比較例1〜11の絶縁ゴムコンパウンドをホットプレス機によりモールド成型して絶縁層を形成し、更に、この絶縁層の外周に、実施例13〜24及び比較例12〜22の配合組成の半導電性ゴムコンパウンドをホットプレス機によりモールド成型し、続いて10MPa、150℃で1時間加圧、加熱による架橋処理を行い、内径14mm、内部半導電層厚さ5mm、絶縁層厚さ10mm、外部半導電層厚さ3mmの常温収縮チューブを製造した。
【0023】
【表1】
Figure 0003899830
【0024】
【表2】
Figure 0003899830
【0025】
【表3】
Figure 0003899830
【0026】
【表4】
Figure 0003899830
【0027】
常温収縮チューブ、絶縁ゴム及び半導電性ゴムについての評価結果を表5〜表8に示す。
【0028】
常温収縮チューブの拡径作業性は、チューブの内側に外径42mmのポリプロピレン製の拡径パイプを挿入し(拡径倍率3倍)、拡径作業が容易に行えた場合を○、拡径作業中に破断した場合を×とした。
【0029】
更に、拡径作業が完了したチューブについては、拡径した状態で、常温で6ヶ月間保管し、その後、拡径した接続部の内側に外径17mmの銅導体の外周に厚さ3.5mmの架橋ポリエチレン絶縁体を施した架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの導体接続部の周囲に被せて収縮させることにより接続部を形成し、この接続部の交流破壊電圧を測定した。なお課電方法は、50Hz、50kVの交流電圧を1時間印加し、それから5kV/10分の割合で昇圧させた。交流破壊電圧が95kV以上を〇、95kVより低いものを×として表示した。
【0030】
図1は、交流破壊電圧の測定に供した接続部の縦断面説明図であり、1は導体、2は絶縁体、3は導体接続管、4は常温収縮チューブ、5は編組メッシュ、6は防水チューブである。
【0031】
引張強さ、伸び及び永久伸びは、絶縁チューブ及び半導電性チューブからシート状に切り出し、これをもとにして供試試料を作成し各特性を測定した。引張強さ及び伸びは、JIS K 6251の加硫ゴムの引張試験方法に準拠して測定した。また、永久伸びは、JIS K 6262の加硫ゴムの永久ひずみ試験方法に準拠して測定した。具体的には、試験片を200%伸張し40℃で96時間放置した後開放し、解放後1時間経過した後に試験片の永久伸びを測定した。200%伸張し40℃で96時間放置中に破断したものは×で示した。体積抵抗率はシートを直径30mmの電極ではさみ、絶縁抵抗計により測定した。
【0032】
【表5】
Figure 0003899830
【0033】
【表6】
Figure 0003899830
【0034】
【表7】
Figure 0003899830
【0035】
【表8】
Figure 0003899830
【0036】
本発明のゴム組成物を用いて製造した実施例25〜47に示す常温収縮チューブを用いた接続部は、拡径作業性が良好で、拡径6ヶ月後の内径は初期と比べて大きな変化は見られず、収縮後のケーブルに対する密着性が高いことから、良好な交流破壊電圧が得られる。これに対し、本発明で規定した以外のゴム組成物を用いて製造した比較例23〜43に示す常温収縮チューブを用いた接続部は、引張強さあるいは伸びが劣り、拡径状態での放置中に破断し、比較例44及び45は拡径して6ヶ月経過後の収縮が悪く、ケーブルとの密着性が不十分となり交流破壊電圧が低い。
【0037】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の常温収縮チューブは、良好な拡径作業性を有し、しかも拡径状態を開放した際の十分な収縮性を維持することにより高い絶縁破壊強さを付与でき、ケーブル接続部の信頼性向上に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の常温収縮チューブの交流破壊電圧の評価に用いたケーブル接続部の縦断面図。
【符号の説明】
1 導体
2 絶縁体
3 導体接続管
4 常温収縮チューブ
5 編組メッシュ
6 防水チューブ

Claims (6)

  1. 100℃におけるムーニ粘度(ML1+4)が60以上のエチレンプロピレンゴム100重量部に対して、有機過酸化物を3〜4.5重量部、プロセスオイルを40〜60重量部、焼成クレーを40〜80重量部、硫黄を0.2〜0.8重量部及びフタル酸ジアリルを1〜5重量部含有することを特徴とするケーブル接続部用常温収縮チューブに使用される絶縁ゴム組成物。
  2. 00℃におけるムーニ粘度(ML1+4)が60以上、105以下のエチレンプロピレンゴム100重量部に対して、有機過酸化物を3〜4.5重量部、プロセスオイルを40〜60重量部、焼成クレーを40〜80重量部、硫黄を0.2〜0.8重量部及びフタル酸ジアリルを1〜5重量部含有するゴム組成物からなり、引張強さが5MPa以上、伸びが500%以上であり、永久伸びが15%以下の絶縁チューブからなることを特徴とするケーブル接続部用常温収縮チューブ。
  3. 100℃におけるムーニ粘度(ML1+4)が60以上のエチレンプロピレンゴム100重量部に対して、有機過酸化物を3〜4.5重量部、プロセスオイルを40〜60重量部、焼成クレーを40〜80重量部、硫黄を0.2〜0.8重量部、フタル酸ジアリルを1〜5重量部及びカーボンブラックを20〜70重量部含有することを特徴とするケーブル接続部用常温収縮チューブに使用される半導電性ゴム組成物。
  4. 前記絶縁チューブと、前記絶縁チューブの内周に形成される内部半導電チューブと、前記絶縁チューブの外周に形成される外部半導電チューブとからなり、前記内部半導電チューブ及び前記外部半導電チューブはいずれも100℃におけるムーニ粘度(ML1+4)が60以上、105以下のエチレンプロピレンゴム00重量部に対して、有機過酸化物を3〜4.5重量部、プロセスオイルを40〜60重量部、焼成クレーを40〜80重量部、硫黄を0.2〜0.8重量部、フタル酸ジアリルを1〜5重量部及びカーボンブラックを20〜70重量部含有する半導電性ゴム組成物からなり、引張強さが5MPa以上、伸びが500%以上であり、永久伸びが15%以下である請求項2記載のケーブル接続部用常温収縮チューブ。
  5. 半導電性ゴム組成物の体積固有抵抗が10 5 Ω・ cm 以下であることを特徴とする請求項3に記載のケーブル接続部用常温収縮チューブに使用される半導電性ゴム組成物
  6. 半導電性ゴム組成物の体積固有抵抗が10 5 Ω・ cm 以下であることを特徴とする請求項4に記載のケーブル接続用常温収縮チューブ
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