本発明の第1の発明に係るピッキング装置は、複数のピッキングユニットを備え、複数のピッキングユニットにおける第1ピッキングユニットは、吸着対象物を吸着すると共に外部と連通する第1吸着面を有する第1吸着具と、第1吸着具と接続され、吸着面と連通する内部空間を有する第1昇降部材と、第1昇降部材を挿入して連結し、第1昇降部材に吸引圧力を付与する第1吸引管路と、第1吸着面に吸着対象物が吸着されていない場合でも、第1昇降部材を上昇させる第1上昇制御部と、を有し、複数のピッキングユニットにおける第2ピッキングユニットは、吸着対象物を吸着すると共に外部と連通する第2吸着面を有する第2吸着具と、第2吸着具と接続され、吸着面と連通する内部空間を有する第2昇降部材と、第2昇降部材を挿入して連結し、第2昇降部材に吸引圧力を付与する第2吸引管路と、第2吸着面に吸着対象物が吸着されていない場合でも、第2昇降部材を上昇させる第2上昇制御部と、を有する。
この構成により、ピッキング装置は、複数のピッキングユニットによって、複数の吸着対象物を同時にピッキングできる。さらには、吸着対象物の大きさや配置によっては、複数のピッキングユニットの全てを使用しないで作業を行うことができる。
本発明の第2の発明に係るピッキング装置では、第1の発明に加えて、第1ピッキングユニットは、第1吸着具を第1吸着対象物に吸着させ、第2ピッキングユニットは、第2吸着具を第2吸着対象物に吸着させ、第1ピッキングユニットおよび第2ピッキングユニットのそれぞれは、第1吸着対象物および第2吸着対象物のそれぞれを、並行して上昇させる。
この構成により、ピッキング装置は、複数のピッキングユニットを用いて、複数の吸着対象物をピッキングできる。
本発明の第3の発明に係るピッキング装置では、第1又は第2の発明に加えて、第1ピッキングユニットおよび第2ピッキングユニットと同じ要素を有する第3ピッキングユニット〜第nピッキングユニットを更に備える。
この構成により、ピッキング装置は、3以上の吸着対象物をピッキングできる。
本発明の第4の発明に係るピッキング装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、第1吸引管路および第2吸引管路のそれぞれに、吸引圧力を付与する吸引装置を更に備える。
この構成により、吸引圧力により、ピッキングユニットのそれぞれは、吸着、上昇を行うことができる。
本発明の第5の発明に係るピッキング装置では、第4の発明に加えて、吸引装置は、第1吸引管路および第2吸引管路に共通に設けられる、もしくは、第1吸引管路および第2吸引管路のそれぞれに個別に設けられる。
この構成により、吸引装置は、複数のピッキングユニットを同時に動作させることができる。
本発明の第6の発明に係るピッキング装置では、第4又は第5の発明に加えて、第1ピッキングユニットは、第1吸着面に吸着対象物が接触する場合に、吸引部による吸引圧力が、第1吸引管路を介して第1吸着面に付与されることで、第1吸着面が吸着対象物を吸着しつつ、第1昇降部材の内部空間の圧力減少によって第1昇降部材が上昇し、第2ピッキングユニットは、第2吸着面に吸着対象物が接触する場合に、吸引部による吸引圧力が、第2吸引管路を介して第2吸着面に付与されることで、第2吸着面が吸着対象物を吸着しつつ、第2昇降部材の内部空間の圧力減少によって第2昇降部材が上昇し、第1ピッキングユニットおよび第2ピッキングユニットのそれぞれは、吸着物を上昇させる。
この構成により、複数のピッキングユニットのそれぞれは、吸引圧力のみで、吸着対象物の吸着および上昇を行うことができる。
本発明の第7の発明に係るピッキング装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、第1吸着面に吸着対象物が接触しない場合には、第1上昇制御部は、第1吸着面から第1吸引管路に接続される吸引装置に繋がる内部空間の少なくとも一部を、閉鎖して外部との連通を閉じ、
第2吸着面に吸着対象物が接触しない場合には、第2上昇制御部は、第2吸着面から第2吸引管路に接続される吸引装置に繋がる内部空間の少なくとも一部を、閉鎖して外部との連通を閉じる。
この構成により、ピッキング動作をしないピッキングユニットが、ピッキング動作を行うピッキングユニットを邪魔しない。
本発明の第8の発明に係るピッキング装置では、第7の発明に加えて、記第1上昇制御部は、第1吸着面から第1吸引管路に接続される吸引装置に繋がる内部空間に設けられた弁を閉じることで、閉鎖し、第2上昇制御部は、第2吸着面から第2吸引管路に接続される吸引装置に繋がる内部空間に設けられた弁を閉じることで、閉鎖する。
この構成により、第1上昇制御部および第2上昇制御部は、使用しないピッキングユニットを強制的に上昇させることができる。
本発明の第9の発明に係るピッキング装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、第1上昇制御部は、吸着具の上部と所定間隔で離隔して、吸着具と接続する第1係止部材と、第1係止部材と接触可能な第1ピストンと、第1ピストンを挿入させる対となる第1シリンダと、を有し、第1シリンダは、第1ピストンを挿入および突出させることを可能とする第1内部空間と、第1内部空間と外部とを連通する第1上部開口部と、第1内部空間と外部とを連通する第1下部開口部と、を有し、第1ピストンは、第1シリンダから突出している一部に、第1係止部材と係止および離隔可能な第1ストッパーと、第1内部空間の側断面に対応して第1内部空間を仕切る第1仕切り板と、を有し、第1下部開口部に空気が供給されることで、第1ピストンは、第1シリンダに挿入されることで上昇し、第1ストッパーは、第1ピストンが上昇する途中で、第1係止部材で係止されることで、第1吸着具を上昇させ、第1上方開口部は、第1仕切り板の上方に位置し、下方開口部は、仕切り板の下方に位置する。
この構成により、第1上昇制御部は、第1ピッキングユニットが使用されない場合に、第1ピッキングユニットを強制的に上昇させることができる。
本発明の第10の発明に係るピッキング装置では、第9の発明に加えて、第2上昇制御部は、吸着具の上部と所定間隔で離隔して、吸着具と接続する第2係止部材と、第2係止部材と接触可能な第2ピストンと、第2ピストンを挿入させる対となる第2シリンダと、を有し、第2シリンダは、第2ピストンを挿入および突出させることを可能とする第2内部空間と、第2内部空間と外部とを連通する第2上部開口部と、第2内部空間と外部とを連通する第2下部開口部と、を有し、第2ピストンは、第2シリンダから突出している一部に、第2係止部材と係止および離隔可能な第2ストッパーと、第2内部空間の側断面に対応して第2内部空間を仕切る第2仕切り板と、を有し、第2下部開口部に空気が供給されることで、第2ピストンは、第2シリンダに挿入されることで上昇し、第2ストッパーは、第2ピストンが上昇する途中で、第2係止部材で係止されることで、第2吸着具を上昇させ、第2上方開口部は、第2仕切り板の上方に位置し、下方開口部は、仕切り板の下方に位置する。
この構成により、第2上昇制御部は、第2ピッキングユニットが使用されない場合に、第2ピッキングユニットを強制的に上昇させることができる。
本発明の第11の発明に係るピッキング装置では、第9又は第10の発明に加えて、第1下部開口部および第2下部開口部のそれぞれに空気を供給する供給路を更に備える。
この構成により、第1上昇制御部および第2上昇制御部は、ピストンを上昇させて、吸着具を上昇させることができる。
本発明の第12の発明に係るピッキング装置では、第11の発明に加えて、供給路は、吸引装置が吸引圧力を付与するのに合わせて、空気を供給する。
この構成により、使用されないピッキングユニットは、使用されるピッキングユニットの上昇に合わせて上昇できる。
本発明の第13の発明に係るピッキング装置では、第11又は第12の発明に加えて、空気供給部は、第1ピッキングユニットおよび第2ピッキングユニットの内、吸着対象物を接触させていないピッキングユニットに備わる、下部開口部に空気を供給する。
この構成により、上昇制御部は、ピストンを強制的に上昇させて、使用されないピッキングユニットを上昇させることができる。
本発明の第14の発明に係るピッキング装置では、第9から第13のいずれかの発明に加えて、第1シリンダは、第1昇降部材の側面に設けられ、第2シリンダは、第2昇降部材の側面に設けられる。
この構成により、上昇制御部は、簡単にピッキングユニットを上昇させることができる。
本発明の第15の発明に係るピッキング装置では、第9から第14のいずれかの発明に加えて、供給路は、第1上部開口部および第2上部開口部のそれぞれに空気を供給し、第1ピストンおよび第2ピストンのそれぞれを、下降させることができる。
この構成により、上昇制御部は、強制的にピッキングユニットを下降させることもできる。
本発明の第16の発明に係るピッキング装置では、第1から第15のいずれかの発明に加えて、第1吸着具および第2吸着具の少なくとも一方は、第1吸着面および第2吸着面のそれぞれの外周に沿って吸着対象物側に突出する接触部を、更に備え、接触部は、第1吸着面および第2吸着面のそれぞれとの間に空隙を有し、空隙は、吸着対象物の変形部分の少なくとも一部を、その内部に収容する。
この構成により、袋物であっても、吸着具は確実に吸着できる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
(空気吸引式のピッキング装置の説明)
まず、単一のピッキングユニットから構成されるピッキング装置を用いる搬送装置の概要を説明する。図1は、本発明の搬送装置の全体斜視図である。図1は、ピッキング装置1を含んで実際の製造ラインや箱詰めラインに設置される搬送装置全体を示している。ピッキング装置1は、単一のピッキングユニット11を備えている。
ここでは、説明の便宜のために、ピッキング装置1が単一のピッキングユニット11を備える場合について説明する。図1、図2を用いた説明により、ピッキング装置を構成するピッキングユニット1の基本的な動作原理と、これを備える搬送装置300の動作原理を説明する。
ピッキング装置1は、搬送装置300の一部に用いられる。搬送装置300は、製造ラインや箱詰めラインにおいて、吸着対象物をある場所から別の場所に移動させる。図1では、製造ライン100における第1ライン101に設置された箱102に詰められている吸着対象物50が、第2ライン104に設置された箱103に搬送される。搬送装置300には、制御ロボット200が備わっている。制御ロボット200は、筐体210と、ピッキング装置1の姿勢を制御する姿勢制御部材201、202を備えている。また、図1には図示していないが、ピッキング装置1は、吸引装置に接続されている。
搬送装置300において、制御ロボット200が、ピッキング装置1の姿勢を制御したり、ピッキング装置1の平面方向及び垂直方向の少なくとも一方の位置を移動させたり、吸引装置からの吸引圧力を付与したりして、ピッキング装置1(ピッキングユニット11)により、吸着対象物50を吸着して所定の位置から所定の位置へ移動する。
ここで、図1では、ピッキング装置1は、吸着対象物50を実際に掴んで搬送する部分を示しており、ピッキング装置1を含んだ全体を搬送装置300として示している。しかしながら、ピッキング装置1と搬送装置300とを、特段に区別する必要があるものではない。例えば、図1で搬送装置300として示されている制御ロボット200(筐体210なども)までを含めた構成を、ピッキング装置1として把握しても良い。
(ピッキング装置の概要と動作)
ピッキング装置1の概要について説明する。図2は、本発明におけるピッキング装置の斜視図である。図2に示されるピッキング装置1は、図1で説明された搬送装置300の一部として用いられる。ピッキング装置1は、単一のピッキングユニット11を備えている。
ピッキングユニット11は、吸着具3、昇降部材9、吸引管路2、第1支持部材4、第2支持部材5を備える。ここで、第1支持部材4および第2支持部材5は、必須の要素ではなく、作業性や作業能率を向上させるために設けられる。また、ピッキングユニット11は、上昇制御部8を備える。
吸着具3は、吸着対象物50を吸着する吸着面31を有する。吸着面31は、外部と連通する状態であり、例えばメッシュ状の開口部を有している。この開口部によって、吸引管路2から付与される吸引圧力(吸引空気)が、外部へ到達して、吸着具3は、吸着面31に接触する吸着対象物50を吸着できる。
昇降部材9は、吸着具3と接続される。昇降部材9は、吸着面31の開口部と連通する内部空間を有しており、この内部空間は、昇降部材9の上方にも連通している。言い換えれば、昇降部材9は、上下で開口しているがらんどうの部材である。昇降部材9は、吸引管路2の内部に挿入される。この挿入によって、昇降部材9は、吸引管路2内部で昇降する。
吸引管路2は、昇降部材9を挿入して連結する。このとき、昇降部材9が吸引管路2内部に挿入されて連結されることで、昇降部材9は、吸引管路2内部で上下移動が自由にできる。なお、昇降部材9が、吸引管路2から外れて落下することのないように、吸引管路2の下端には、昇降部材9を止める部材が備わっていることもよい。
吸引管路2は、昇降部材9を内部で昇降させるために、内部空間を有している。この内部空間を介して、吸引管路2は、吸引圧力を吸着具3(同様に昇降部材9に)に付与する。吸引管路2には、別途吸引装置が接続されており(図2には図示せず)、吸引装置からの吸引圧力(吸引空気)は、吸引管路2の内部空間に到達する。すなわち、吸引管路2、昇降部材9、吸着具3の内部空間が全て連通して、最終的には、吸着面31の開口部から外部へ連通する構造となる。この連通する経路を、吸引圧力を有する吸引空気が移動して、吸着面31に接触する吸着対象物50を吸着する。
吸着面31に吸着対象物50が吸着すると、吸引管路2、昇降部材9および吸着具3を連通する経路の先端がこの吸着対象物50によってふさがれることになる。こうなると、吸引管路2が付与する吸引圧力(吸引空気)は、吸着面31の外部に出ることができなくなる。この結果、吸引管路2から吸着具3に至る内部空間で吸引圧力が留まり、この吸引圧力によって、吸引管路2に挿入されている昇降部材9が上昇できる。昇降部材9は、吸引管路2内部で自由に昇降できる状態で挿入されているからである。
このように、ピッキングユニット11は、吸引管路2からの吸引圧力のみで、(1)吸着面31に吸着対象物50を吸着させる、(2)吸着面が塞がれたことで、吸引圧力が内部に留まり、吸引管路2内部で昇降部材9を上昇させる、(3)昇降部材9に接続される吸着具3も同時に上昇する、(4)当然ながら吸着対象物50も上昇する、とのステップで、吸着対象物50を上昇させる。
逆に言えば、吸引圧力を消滅させると、昇降部材9が下降すると共に、吸着面31から吸着対象物50が外れる。この結果、ピッキングユニット11は、吸着対象物50を、ある場所に置くことができる。
このように、ピッキングユニット11は、制御ロボット200による姿勢制御、水平方向や垂直方向の移動に加えて、吸引圧力のみで、吸着面31で吸着対象物50を吸着すると共に、吸着対象物50を上昇させることができる。吸着対象物50を上昇させることができれば、ピッキング装置1は、吸着対象物50を、ある位置から別の位置に移動させることができる。
本発明のピッキング装置1およびこれが備えるピッキングユニット11は、このような動作原理に基づき、吸着、上昇、下降の基本動作を行える。
(ピッキング装置の概要)
次に、本発明の実施の形態1におけるピッキング装置1の概要について説明する。図3は、本発明の実施の形態1におけるピッキング装置の斜視図である。ピッキング装置1は、複数のピッキングユニット11を備えている。図3に示されるピッキング装置1は、2個のピッキングユニット11A、11Bを備えている。実施の形態1におけるピッキング装置1は、複数のピッキングユニット11を備えることで、(1)複数の吸着対象物50を同時に吸着・上昇・移動・下降する、(2)複数のピッキングユニット11に、一つの吸引装置で吸引圧力を付与し(吸引圧力により(1)の動作が実現される)、(3)(1)、(2)と並行しつつ、複数のピッキングユニット11の内、全てが使用されない場合でも、使用されるピッキングユニット11が吸着対象物を吸着・上昇・移動・下降させてかつ使用されないピッキングユニットが、使用されるピッキングユニットの動作を邪魔しない。
第1ピッキングユニット11Aは、第1吸着具3A、第1昇降部材9A、第1吸引管路2A、第1上昇制御部8Aを有している。更に、図3に示されるように必要に応じて、第1支持部材4A、第2支持部材4Bを有している。
第1吸着具3Aは、外部と連通する第1吸着面31Aを有して、第1吸着面231Aに接触する吸着対象物50を吸着する。ここで、第1吸着具3Aには、第1昇降部材9Aを介して、第1吸引管路2Aから吸引圧力(吸引空気)が付与される。この吸引圧力は、第1吸着面31Aにおいて外部と連通することで、第1吸着面31Aに接触する吸着対象物50に付与される。この付与によって、第1吸着面31Aにおいて第1吸着具3Aは、吸着対象物50を吸着する。ここで、第1吸着面31Aは、吸引圧力を吸着対象物50に付与できるように外部と連通しつつも、吸着対象物50を、第1昇降部材9A内部に入れ込んでしまわないように、メッシュ状、網目状などの構造を有していることが好ましい。
第1昇降部材9Aは、第1吸着具3Aと接続され、第1吸着面31Aと連通する内部空間を有する。第1吸着具3A内部もがらんどうのように内部空間を有しており、第1昇降部材9Aの内部空間と第1吸着具3Aの内部空間とは繋がった状態である。その先端が、第1吸着面31Aとなる。第1昇降部材9Aは、その上方の第1吸引管路2A内部に挿入されるように連結される。連結されるが、第1昇降部材9Aは、第1吸引管路2A内部で上下に昇降可能である。この第1昇降部材9Aの昇降に合わせて、第1吸着具3Aも昇降できる。
第1吸引管路2Aは、第1昇降部材9Aをその内部に収容しつつ、第1昇降部材9Aの昇降を行わせる。このとき、第1吸引管路2Aは、吸引装置からの吸引圧力を第1昇降部材9Aおよび第1吸着具3Aに付与できる。この付与のために、第1吸引管路2Aもその内部はがらんどうの内部空間を有している。この内部空間に、吸引装置からの吸引空気が送られて、第1吸引管路2Aは、第1昇降部材9Aおよび第1吸着具3Aに、吸引圧力を付与できる。
第1吸着面31Aに吸着対象物50が接触すると、第1ピッキングユニット11Aにおける第1吸引管路2Aから第1吸着面31Aまでの経路の先端が、この吸着対象物50によって塞がれる。第1吸引管路2Aが吸引圧力を付与すると、第1吸着面31Aが吸着力を有するようになり、第1吸着具3Aは、第1吸着面31Aに、吸着対象物50を吸着する。
第1吸着面31Aに吸着対象物50が吸着した後で、第1吸引管路2Aが吸引圧力を付与し続けると、第1吸着面31Aから第1吸引管路2Aをつなげる内部空間の気圧が低下する。この気圧低下に伴って、第1昇降部材9Aが、第1吸引管路2A内部に入り込みながら上昇する。こうして、第1ピッキングユニット11Aは、吸着した吸着対象物50を、上昇させる。上昇させれば、その後に平面方向に移動されて、所定の場所へ、吸着対象物50が移動される。
ここで、吸着対象物50は、柔軟性を有する袋に内容物の入った袋物であることが好適である。このような袋物は、吸着、上昇および移動において、落下などの可能性が高いが、第1ピッキングユニット11A(第2ピッキングユニット11Bも同様)は、このような吸引圧力のみで、吸着、上昇および移動を行えるので、袋物であっても落下させにくい。もちろん、吸着対象物50は、袋物以外でもよい。
以上のように、吸引圧力のみで、第1ピッキングユニット11Aは、吸着対象物をピッキング(吸着、上昇、移動、下降など)できる。
第1上昇制御部8Aは、第1ピッキングユニット11Aが、吸着対象物50を吸着等を行わない場合(第1吸着面31Aに、吸着対象物50が吸着されない場合)でも、第1昇降部材9Aを上昇させる。
後述するように、複数のピッキングユニット11の内、使用されないピッキングユニット11では、吸着対象物50が吸着されない。一方で、図示されていない吸引装置が、第1吸引管路2Aおよび第2吸引管路2Bのそれぞれに吸引空気を与えることで、吸引圧力を、第1吸引管路2A、第2吸引管路2Bに付与できる。複数のピッキングユニット11のそれぞれが備える吸引管路2に、一つの吸引装置が同時に吸引圧力を付与することが、詳細な制御を必要としないので、動作性が容易となるからである。
しかしながら、一つの吸引装置が複数のピッキングユニット11のそれぞれの吸引管路2に吸引圧力を同時に付与する場合には、吸着対象物50を吸着しないピッキングユニット11は、吸着面31がふさがれていないので、吸引圧力だけでは、昇降部材9が上昇できない。複数のピッキングユニット11の内、いずれかが上昇しない場合には、吸着対象物50を吸着して上昇させるピッキングユニット11にとって、上昇しないピッキングユニット11が邪魔となる。
あるいは、複数のピッキングユニット11のそれぞれに、独立して吸引装置が設けられる場合もある。ピッキングユニット11毎での吸引圧力を十分に確保して、吸着対象物50の吸着と上昇を確実に行うためである。このように、複数のピッキングユニット11のそれぞれに独立して個別の吸引装置が設けられる場合には、(1)複数のピッキングユニット11のそれぞれに接続される吸引装置の全てが動作して、複数のピッキングユニット11のそれぞれが個別に吸着対象物50を吸着・上昇等させる、(2)複数のピッキングユニット11の一部のみに接続される吸引装置が動作して、一部のピッキングユニット11のみが、吸着対象物50を吸着・上昇等させる、との2つの処理が行われる。
ここで、一つの吸引装置が、複数のピッキングユニット11に吸引圧力を付与する場合でも、個別の吸引装置のそれぞれが、対応する複数のピッキングユニット11のそれぞれに吸引圧力を付与する場合でも、吸着対象物50を吸着しないピッキングユニット11は、その先端である吸着面31が塞がれていないので、吸引圧力が加えられても上昇できない(もちろん、個別に吸引装置が設けられる場合に、吸引圧力が付与されないピッキングユニット11は上昇できない)。
複数のピッキングユニット11の内、一部のピッキングユニット11が上昇しないままであると、他のピッキングユニット11が吸着対象物50を上昇させる際に邪魔となる。上昇させている吸着対象物が、上昇しないピッキングニット11に衝突して落下したりするからである。
いずれの場合でも、第1上昇制御部8Aが、第1昇降部材9Aを強制的に上昇させる。この上昇によって、第1ピッキングユニット11Aが吸着対象物50のピッキング動作を行わない場合で第2ピッキングユニット11Bがピッキング動作を行う場合にも、第1ピッキングユニット11Aが、第2ピッキングユニット11Bのピッキング動作を邪魔しない。
第2ピッキングユニット11Bは、第1ピッキングユニット11Aと同じく、第2吸着具3B、第2昇降部材9B、第2吸引管路2B、第2上昇制御部8Bを備える。また、第2吸着具3Bは、外部と連通するメッシュ状や網目状の開口部を有する第2吸着面31Bを備える。第2吸着具3B、第2昇降部材9B、第2吸引管路2Bは、それぞれ第1ピッキングユニット11Aの備えるそれぞれの要素と同様の構造・機能を有する。これらの要素によって、第2ピッキングユニット11Bも第1ピッキングユニット11Aと同様に、吸着対象物50を吸着、上昇等させてピッキングできる。
また、第2上昇制御部8Bは、第1上昇制御部8Aと同様に、第2ピッキングユニット11Bが使用されない場合でも、第2昇降部材9Bを強制的に上昇させる。吸着対象物50が、第2吸着面31Bに接触しない場合には、第1ピッキングユニット11Aで説明したのと同様に、第2ピッキングユニット11Bも、吸引圧力だけでは上昇できないからである。この結果、第2ピッキングユニット11Bが使用されない場合でも、第1ピッキングユニット11Aによる吸着対象物50のピッキングを邪魔しない。
このように、第2ピッキングユニット11Bも第1ピッキングユニット11Aと同様の動作を行うことができる。
次に、種々のバリエーションでの動作を説明する。
(動作その1:2個の吸着対象物をピッキング)
まず、2つのピッキングユニット11である第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bを備えるピッキング装置1が、それぞれのピッキングユニット11を用いて1個ずつの合計2個の吸着対象物50をピッキングする動作を説明する。
ここで、ピッキング装置1が、複数のピッキングユニット11を備える場合に、複数のピッキングユニット11に共通に吸引装置が設けられてもよいし、複数のピッキングユニット11毎に個別に吸引装置が設けられてもよい。いずれの場合であっても、吸引装置が、個々の吸引管路2に吸引圧力を付与したり解除したりして、ここで説明する吸着・上昇・下降などの動作が実現できる。この結果、第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bのそれぞれが、吸着対象物50をピッキングできる。
なお、ピッキング装置1は、複数のピッキングユニットを備えるので、第3ピッキングユニットや第4ピッキングユニットを更に備えても良い。第3ピッキングユニットや第4ピッキングユニットも、上述した第1ピッキングユニット11Aと同様の構成要素および機能を有する。使用態様に応じて、ピッキング装置1は、3以上のピッキングユニット11を備えても良いものである。第1ピッキングユニット11Aおよび第2ピッキングユニット11Bは、ピッキング装置1が備えるピッキングユニット11の個数を限定する意図ではない。
(動作開始前)
図4は、本発明の実施の形態1における2個の吸着対象物をピッキングするピッキング装置における吸着開始前の状態を示す斜視図である。なお、図4以降においては、図の見易さを優先するため、図3で示した要素の符号と同じ要素については、符号の付与を省略することもある。省略されても、図において同じ要素である要素は、同じ符号を用いて説明する。
ピッキング装置1は、第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bを用いて、2つの吸着対象物50A、50Bを並行してピッキングできる。ピッキング装置1の下に複数の吸着対象物50が置いてあり、ピッキング装置1は、2個ずつの吸着対象物50をピッキングする必要がある場合がある。
図4は、このような状況を示しており、ピッキング装置1は、第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bとを、上述のように動作させて、2つの吸着対象物50A、50Bを同時並行的にピッキングする。
図5は、本発明の実施の形態1における2個の吸着対象物をピッキングするピッキング装置における吸着開始前の状態を示す側面図である。図5は、図4を側面から見た状態を示している。吸着開始前であるので、第1吸着面31A(側面図であるので見えないが、第2吸着面31Bも)は、第1吸着対象物50Aから離れている。
図6は、本発明の実施の形態1における2個の吸着対象物をピッキングするピッキング装置における吸着開始前の状態を示す正面図である。図6は、第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bの両方を示している。
(接触開始後)
図7は、本発明の実施の形態1における2個の吸着対象物に接触している状態を示す斜視図である。制御ロボット200が第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bを下降させる。この下降によって、第1ピッキングユニット11Aの第1吸着具3Aも吸着対象物50Aに向けて下降する。同様に、第2ピッキングユニット11Bの第2吸着具3Bも吸着対象物50Bに向けて下降する。
これらの下降の結果、第1吸着面31Aは、吸着対象物50Aに接触する。第2吸着面31Bは、吸着対象物50Bに接触する。図8は、図7を側面から見た状態を示す側面図である。図9は、図7を正面から見た状態を示す正面図である。いずれの図面からもわかる通り、第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bの下降によって、第1吸着面31Aは吸着対象物50Aに接触し、第2吸着面31Bは、吸着対象物50Bに接触するようになっている。
ピッキング装置1には、第1ピッキングユニット11Aおよび第2ピッキングユニット11Bのそれぞれに共通に吸引装置が接続されている。吸引装置は、第1ピッキングユニット11Aの第1吸引管路2Aと第2ピッキングユニット11Bの第2吸引管路2Bとのそれぞれに、吸引圧力を付与する。
吸引装置による吸引圧力の付与により、上述の通り、第1吸引管路2Aと第1昇降部材9Aとを介して、第1吸着面31Aに吸引圧力が付与される。この吸引圧力は、第1吸着面31Aに設けられている開口部を通じて排出される吸引空気である。この吸引圧力によって、第1吸着面31Aは、吸着対象物50Aを吸着する。同様に、第2吸引管路2Aと第2昇降部材9Bとを介して、第2吸着面31Bに吸引圧力が付与される。この吸引圧力によって、第2吸着面31Bは、吸着対象物50Bを吸着する。
図7〜図9は、この第1吸着面31Aと第2吸着面31Bとが、吸着対象物50A、50Bとを吸着している状態を示す。また、同じ吸引装置が、第1吸引管路2Aと第2吸引管路2Bとに吸引圧力を付与するので、第1吸着面31Aと第2吸着面31Bとのそれぞれは、並行して、吸着対象物50A、50Bを吸着する。この並行した吸着によって、第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bとが、並行的にピッキングを行うことができる。
(上昇)
次に、ピッキング装置1が、第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bとを用いて、吸着対象物50Aと吸着対象物50Bとを、並行して上昇させることを説明する。図10は、本発明の実施の形態1における2個の吸着対象物をピッキングするピッキング装置における上昇時を示す斜視図である。
吸引装置による吸引圧力が第1吸引管路2Aおよび第2吸引管路2Bのそれぞれに付与される。上述のように、まず、第1吸着面31Aが吸着対象物50Aを吸着し、第2吸着面31Bが吸着対象物50Bを吸着する。この吸着によって、第1吸着面31Aの開口部がふさがれると共に、第2吸着面31Bの開口部も塞がれる。
第1吸着面31Aがふさがれることで、吸引圧力によって、第1吸着面31Aから第1吸引管路2Aまでに繋がる内部空間の圧力が低下する。この圧力低下により、第1吸引管路2A内部に挿入されて昇降可能に動作できる第1昇降部材9Aが第1吸引管路2A内部に吸い込まれる。この結果、第1昇降部材9Aは、上昇する。この上昇により、第1ピッキングユニット11Aは、吸着した吸着対象物50Aを上昇させることができる。
同様に、第2吸着面31Bがふさがれることで、吸引圧力によって、第2吸着面31Bから第2吸引管路2Bまでに繋がる内部空間の圧力が低下する。この圧力低下により、第2吸引管路2B内部に挿入されて昇降可能に動作できる第2昇降部材9Bが第2吸引管路2B内部に吸い込まれる。この結果、第2昇降部材9Bは、上昇する。この上昇により、第2ピッキングユニット11Bは、吸着した吸着対象物50Bを上昇させることができる。
このように、一つの吸引装置が、同時に第1吸引管路2Aと第2吸引管路2Bとに吸引圧力を付与することで、第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bとは、並行して吸着対象物50Aと吸着対象物50Bとを、上昇させることができる。
図11は、図10を側面から見た状態を示す側面図である。図12は、図10を正面から見た状態を示す正面図である。図11、図12のそれぞれから明らかな通り、第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bのそれぞれが、吸着対象物50Aと吸着対象物50Bとを吸着して上昇させる。
ピッキング装置1は、第1ピッキングユニット11Aが吸着対象物50Aを上昇させ、第2ピッキングユニット11Bが吸着対象物50Bを上昇させると、制御ロボット200の動作によって、所定の位置に、平面方向での移動を行う。もちろん、垂直方向の移動を行っても良い。移動を行うことで、ピッキング装置1は、吸着している2個の吸着対象物50A,50Bを、同時に所定の位置に移動させることができる。
なお、上昇時においては、第1ピッキングユニット11Aは、第1支持部材4Aと第2支持部材4Bとの対向距離を狭める。対向距離を狭めることで、第1支持部材4Aおよび第2支持部材5Aは、吸着対象物50Aの側面に接触する。接触するのに合わせて、第1支持部材4Aと第2支持部材5Aは、吸着対象物50Aの側面に圧力をかけて押さえる。この押さえによって、上昇時および平面方向での移動時に、第1ピッキングユニット11Aは、吸着対象物50Aを落下させることが少なくなる。
同様に、第2ピッキングユニット11Bも第1支持部材4Bおよび第2支持部材5Bを備えている。上昇時に第1支持部材4Bおよび第2支持部材5B同士の対向距離が狭まって、吸着対象物50Bの側面を押さえる。この結果、第2ピッキングユニット11Bは、上昇時および平面方向での移動時に、吸着対象物50Bを落下させにくくなる。
(吸着対象物の下降)
ピッキング装置1は、平面方向を移動して、所定の位置の上方に吸着対象物50Aと吸着対象物50Bを移動させると、吸着対象物50A、50Bを下降させる。
ピッキング装置1は、所定の移動先の位置に到達すると、吸引装置による吸引圧力を解除し始める。吸引装置は、第1吸引管路2Aと第2吸引管路2Bのそれぞれに、同時並行的に吸引圧力を加えることができる。言い換えれば、吸引装置が吸引圧力を解除し始めると、第1吸引管路2Aと第2吸引管路2Bのそれぞれに付与する吸引圧力を減少させる。
第1吸引管路2Aに付与される吸引圧力が減少しだすと、第1昇降部材9Aは、下降を開始する。合わせて、第1支持部材4Aおよび第2支持部材5Aの対向距離も広がり始める。第1支持部材4Aと第2支持部材5Aとの対向距離が広がると、吸着対象物50Aの側面に加わる圧力が無くなる。このようにして、第1ピッキングユニット11Aは吸着対象物50Aを下降させながら、吸着対象物50Aの側面に加わる圧力も減少させる。
第1吸引管路2Aに付与される吸引圧力が減少していくことで、第1吸着面31Aもその吸着力を消失する。特に、第1昇降部材9Aが下降して、吸着対象物50Aが移動先の設置面に到達すると、第1吸着面31Aの吸着力が消失し、そのまま吸着対象物50Aを離す。この結果、第1ピッキングユニット11Aは、移動先の設置面に、吸着対象物50Aを置くことができる。
このように、第1ピッキングユニット11Aは吸引装置による吸引圧力の制御のみで、吸着対象物50Aの吸着、上昇、下降、設置を実現できる。
第2ピッキングユニット11Bも、第1ピッキングユニット11Aと同様の動作および手順で、移動先で吸着対象物50Bを下降させて設置面におくことができる。このとき、吸引装置は、第1吸引管路2Aと第2吸引管路2Bとのそれぞれに並行して吸引圧力の付与と解除を行う。この結果、ピッキング装置1は、第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bとを、用いて、同時並行的に、2つの吸着対象物50A、50Bをピッキングできる。もちろん、ピッキング装置1が、第3ピッキングユニット・・を備えている場合には、3個以上の吸着対象物50を、同時並行的にピッキングできる。
以上のように、ピッキング装置1は、2個以上の吸着対象物50を、同時並行的に上昇させることができる。
(動作その2:ピッキングユニットの数より少ない個数のピッキング)
ピッキング装置1は、複数のピッキングユニット11を備えることで、複数の吸着対象物50を、同時にピッキングできる。しかしながら、ある場所での複数の吸着対象物50の配置状態によっては、ピッキングユニット11の数に合わせた吸着対象物50のピッキングができない場合がある。例えば、ケースに複数の吸着対象物50が配置されており、ケースの端の吸着対象物をピッキングする場合には、1個のみなど、ピッキングユニットの数よりも少ない数の吸着対象物50しかない場合がある。あるいは、吸着対象物50の長さが長い場合には、複数のピッキングユニット11の間隔では、ピッキングユニット11の数に合わせて、吸着対象物50が並んでいない場合がある。
このような場合には、ピッキング装置1は、全てのピッキングユニット11を、ピッキングに用いることができない。
このような場合には、ピッキング装置1は、複数のピッキングユニット11の内、一部のピッキングユニット11のみを用いることがある。図10などのピッキング装置であれば、第1ピッキングユニット11Aと第2ピッキングユニット11Bのいずれかは、吸着対象物50をピッキングしない可能性がある。
上述した通り、(設置1)第1吸引管路2A(第1ピッキングユニット11A)と第2吸引管路2B(第2ピッキングユニット11B)の両方に共通に吸引装置が設けられる、(設置2)第1吸引管路2A(第1ピッキングユニット11A)と第2吸引管路2B(第2ピッキングユニット11B)のそれぞれに、個別に吸引装置が設けられる場合とがある。
設置1のバターンでは、共通の吸引装置が、第1吸引管路2Aと第2吸引管路2Bとのそれぞれに、同時並行的に吸引圧力を付与したり解除したりする。2個のピッキングを実現するためでもあり、全体の構造を簡略化するためでもある。この設置1のパターンの場合には、第1吸引管路2Aと第2吸引管路2Bの両方に同時に吸引圧力を付与したり解除したりするだけであるので、同期制御などの手間が少なくて済む。
但し、この場合には、吸着対象物50を吸着しないピッキングユニット11において、吸引装置から吸引管路2を介して吸着面31に繋がる内部空間が、吸着面31を介して外部と連通してしまう。連通すると、吸引圧力が付与されても、昇降部材9が昇降できなくなる。
設置2のパターンでは、個別の吸引装置が、ピッキングを行う第1吸引管路2Aもしくは第2吸引管路2Bに吸引圧力を付与したり解除したりする。個別の吸引圧力付与・解除の場合には、吸着対象物50をピッキングしないピッキングユニット11には、吸引圧力が付与されないもしくは付与されても吸引空気が吸着面31から外部に漏れるので、このピッキングユニット11は上昇できない。
このため、第1ピッキングユニット11Aもしくは第2ピッキングユニット11Bのいずれかが、吸着対象物50を吸着しない場合には、吸引圧力による吸引空気が、第1吸着面31Aもしくは第2吸着面31Bのいずれかは、外部に排出してしまう。すなわち、ピッキングに使用されないピッキングユニット11は、吸引圧力が付与されていても、その先端である吸着面31が塞がれていないので、吸引圧力によって上昇できない。
例えば、第1ピッキングユニット11Aは吸着対象物50Aを吸着するが、第2ピッキングユニット11Bが吸着対象物50Bを吸着しない場合には、第1ピッキングユニット11Aは、吸引圧力によって、吸着対象物50Aを吸着・上昇させることができる。これに対して、第2ピッキングユニット11Bは、第2吸着面31Bから外部に吸引空気を排出するだけで、第2ピッキングユニット11Bは、上昇できない。第2ピッキングユニット11Bが下降した位置のままであると、第1ピッキングユニット11Aが吸着して上昇させた吸着対象物50Aに、第2吸着具3Bが衝突して、吸着対象物50Aを落下させてしまう可能性もある。
上述の通り、第1上昇制御部8Aおよび第2上昇制御部8Bのそれぞれは、このような問題を解消できる。ここでは、第2ピッキングユニット11Bがピッキングを行わない場合には、第2上昇制御部8Bが、第2ピッキングユニット11B(第2昇降部材9B)を強制的に上昇させる。上昇では第1ピッキングユニット11Aの上昇に合わせて上昇させる。この結果、第2ピッキングユニット11Bが、第1ピッキングユニット11Aのピッキングを邪魔しない。
逆の場合には、第1上昇制御部8Aが第1ピッキングユニット11Aを強制的に上昇させる。この結果、第1ピッキングユニット11Aが、第2ピッキングユニット11Bのピッキングを邪魔しない。
このように、実施の形態1のピッキング装置1は、複数の吸着対象物50を同時並行的にピッキングできるだけでなく、使用されないピッキングユニット11による他のピッキングユニットによるピッキングを邪魔させないで済む。結果として、ピッキング装置1は、高速ピッキングから特定ピッキングまで、幅広く使用できる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、上昇制御の詳細について説明する。
(その1:吸引圧力の閉鎖による上昇制御)
図13は、本発明の実施の形態2における第1ピッキングユニットのみがピッキングを行うピッキング装置の斜視図である。
図13より明らかな通り、ここでは、第1ピッキングユニット11Aのみが吸着対象物50Aを吸着・上昇を行う場合で説明する。第2ピッキングユニット11Bのみが用いられる場合は、ここでの説明と逆を想定すればよい。
第1ピッキングユニット11Aは、吸着対象物50Aをピッキングするように設定されている。一方、吸着対象物50Bが設置されていないので、第2ピッキングユニット11Bは、吸着等のピッキング動作を行わない。ここで、第2上昇制御部8Bが、第2ピッキングユニット11Bを強制的に上昇させる。
第2上昇制御部8Bの処理方式の一つとして、吸引圧力の閉鎖による方式がある。第2ピッキングユニット11Bの先端である第2吸着面31Bは、吸着対象物50を吸着していない。そこで、第2上昇制御部8Bは、第2吸着面31Bから第2吸引管路2Bの内部空間を介して吸引装置までの内部空間の少なくとも一部を閉鎖する。こうなると、吸引装置から第2ピッキングユニット11Bへと繋がる部分の一部が閉鎖されることになる。閉鎖されれば、第2ピッキングユニット11Bの内部空間に付与される吸引圧力が、その内部に閉じ込められるようになる。
この閉鎖は、上記の一連の内部空間に設けられた切り替えバルブや弁などによって実現される。切り替えバルブや弁が閉じられることで、吸引装置から吸着面31に至る経路が、閉鎖されるからである。
この結果、第2ピッキングユニット11Bの内部空間の圧力が減少して、第2昇降部材9Bは上昇する。この上昇により、吸着対象物50Bが無い第2ピッキングユニット11Bは、第1ピッキングユニット11Aの上昇と同様に上昇する。上昇すれば、第2ピッキングユニット11Bは、第1ピッキングユニット11Aのピッキングを邪魔しない。
逆に、第2ピッキングユニット11Bが吸着対象物50Bに接触してピッキングして第1ピッキングユニット11Aが吸着対象物50Aに接触しない場合には、第1上昇制御部8Aが、第1吸着面31A、第1吸着具3Aの内部空間、第1昇降部材9Aの内部空間および第1吸引管路2Aの内部空間の少なくとも一つを閉鎖する。これらの少なくとも一つが閉鎖されば、第1ピッキングユニット11Aの内部空間に付与される吸引圧力が、その内部に閉じ込められるようになる。こうして、吸着対象物50Aを吸着しない第1ピッキングユニット11Aも強制的に上昇され、第2ピッキングユニット11Bによるピッキング動作を邪魔しない。
ここで、閉鎖までしなくても、内部空間と外部との連通を狭めることでもよい。連通が狭まって内部空間に吸引圧力が一定以上閉じ込められれば、やはり第1昇降部材9A、第2昇降部材9Bが強制的に上昇するからである。
同様に、第2吸着面31B,第2吸着具3B内部、第2昇降部材9Bの内部空間および第2吸引管路2Bの内部空間の少なくとも一つに設けられた弁が閉じられることで実現されればよい。これらの少なくとも一つに予め弁が設けられ、第2上昇制御部8Bは、この弁の開閉を制御する。弁が閉じられれば、これら内部空間が閉鎖されて、吸引圧力が内部空間に閉じ込められるようになる。
弁は、絞り弁であることも好適である。絞り弁によって、、第1上昇制御部8A、第2上昇制御部8Bのそれぞれが、第1昇降部材9A、第2昇降部材9Bを、適当に上昇させることができる。
また、第1吸着面31Aおよび第2吸着面31Bのそれぞれを閉鎖させる場合には、弁ではなく、シャッターが設けられてもよい。
以上のように、内部空間を閉鎖することで、第1上昇制御部8Aおよび第2上昇制御部8Bのそれぞれは、吸着対象物を吸着しない第1ピッキングユニット11Aおよび第2ピッキングユニット11Bのそれぞれを、強制的に上昇させることができる。
(その2:ピストンとシリンダによる上昇)
また、第1上昇制御部8Aおよび第2上昇制御部8Bは、第1吸引管路2Aおよび第2吸引管路2Bのそれぞれに平行に設けられたピストンとシリンダ等の組み合わせによる構造体によって構成されても良い。
図14は、本発明の実施の形態2におけるピッキング装置の斜視図である。図14では、第1ピッキングユニット11Aに設けられた第1上昇制御部8Aの詳細を符号で示している。同様に、第2ピッキングユニット11Bにも、同じ要素(各符号の添え字をBとできる要素)が設けられているが、図の見易さのために、符号を省略している。第2上昇制御部8Bも、第1上昇制御部8Aと同じ要素を備えている。
第1上昇制御部8Aは、第1吸着具3Aの上部と所定間隔で離隔して第1吸着具3Aと接続する第1係止部材92Aを有する。第1係止部材92Aは、第1吸着具3Aの上部に接続して上方に向けて屈曲した板材91Aにより構成される。この屈曲によって、第1吸着具3Aの上部と一定の距離をもつことができる。
第1係止部材92Aは、第1吸着具3Aの上部と一定の距離をもって構成され、後述する第1ストッパー88Aを係止する。
また、第1上昇制御部8Aは、第1係止部材92Aと接触可能な第1ストッパー88Aを有する第1ピストン82Aと、この第1ピストン82Aを挿入させる対となる第1シリンダ81Aと、を有する。第1シリンダ81Aは第1内部空間84Aを有しており、この第1内部空間84Aにおいて、第1ピストン82Aを突出させたり挿入(収容)させたりすることができる。
また、第1シリンダ81Aは、第1内部空間84Aと外部とを連通する第1上部開口部86Aと、第1内部空間84Aと外部とを連通する第1下部開口部87Aとを、有する。第1上部開口部86Aは、第1シリンダ81Aの上方に位置し、第2下部開口部87Aは、第1シリンダ81Aの下方に位置する。
第1ピストン82Aは、第1シリンダ82Aから突出している先端側の一部に、第1係止部材92Aと係止および離隔可能な第1ストッパー88Aを有している。この第1ストッパー88Aが、第1係止部材92Aを貫通することで、第1ピストン82Aが第1係止部材92Aを貫通できる。また、第1ストッパー88Aが第1係止部材92Aと係止することで、第1ピストン82Aが上昇する際に、第1ストッパー88Aが第1係止部材92Aを引き上げる。
また第1ピストン82Aは、第1内部空間84Aの側断面に対応して、第1空間84Aを仕切る第1仕切り板85A(図14では、内部であるので見えない)を有している。この第1仕切り板85Aは、第1内部空間84Aを上部側と下部側とに仕切る。もちろん、第1ピストン82Aが、第1内部空間84A内部で昇降することで、上部側の空間と下部側の空間との体積は変動する。
第1上部開口部86Aは、この第1仕切り板85Aの上方に位置し、第1下部開口部87Aは、第1仕切り板85Aの下方に位置する。このため、第1仕切り板85Aの上部側は、第1上部開口部86Aを介して外部と連通し、第1仕切り板85Aの下部側は、第1下部開口部87Aを介して外部と連通する。
ここで、第1下部開口部87Aに空気を供給する供給路が接続される。供給路が空気を第1下部開口部87Aに供給すると、第1仕切り板85Aが第1シリンダ81Aの内部空間84Aにおいて上昇する。下方から空気が供給されることで、第1仕切り板85Aが持ち上げられるからである。第1仕切り板85Aは、第1ピストン82Aと一体であるので、第1仕切り板85Aが上昇すれば、第1ピストン82Aも上昇する。
第1ピストン82Aが上昇すると、第1係止部材92Aに係止されていなかった第1ストッパー88Aも上昇する。この上昇により、途中で、第1ストッパー88Aは、第1係止部材92Aに係止される。係止されると、第1ストッパー88Aは、第1係止部材92Aと接続されている第1吸着具3Aを上昇させる。すなわち、第1ピストン82Aが、強制的に第1吸着具3Aを上昇させることができる。
このようにして、第1上昇制御部8Aは、第1下部開口部87Aに空気を供給するだけで、第1吸着具3A(ひいては、第1ピッキングユニット11A)を、強制的に上昇させることができる。第1ピッキングユニット11Aが吸着等のピッキング動作を行わない場合には、第2ピッキングユニット11Bでのピッキング動作を邪魔しないように、このように第1ピストン87Aの上昇によって第1吸着具3Aを上昇させる。この結果、第1ピッキングユニット11Aが吸着対象物50を吸着しない場合でも、第2ピッキングユニット11Bの上昇に合わせて、第1ピッキングユニット11Aを上昇させることができる。
ここで、第2ピッキングユニット11Bがピッキング動作を行い、第1ピッキングユニット11Aがピッキング動作を行わない場合には、第2ピッキングユニット11Bに吸引圧力を付与するタイミングに合わせて、第1下部開口部87Aに空気が供給されれば、第2ピッキングユニット11Bの上昇に合わせて、第1ピッキングユニット11Aが強制的に上昇する。
もちろん、使用されないピッキングユニットの上昇は、使用されるピッキングユニット11の上昇のタイミングに会わされてもよいし、その前から上昇させられてもよい。
なお、図14では、第1ピッキングユニット11Aが吸着対象物50Aを吸着させているので、この場合には、第1上昇制御部8Aは動作せず、第2ピッキングユニット11Bの第2上昇制御部8Bが動作する。第2上昇制御部8Bは、第1上昇制御部8Aと同様の構成および機能を有する。
すなわち、第2上昇制御部8Bは、第2係止部材92Bと、第2ピストン82B、第2シリンダ81Bを有する。第2係止部材92Bは、第2吸着具3Bの上部と一定の距離だけ離隔している。第2係止部材92Bは、板材に設けられた穴であればよく、この穴の中を第2ピストン82Bが貫通する。第2ピストン82Bは、突出する側に第2ストッパー88Bを有しており、この第2ストッパー88Bは、第2係止部材92Bの穴を貫通した第2ピストン82Bが上昇する際に、第2係止部材92Bと係止される。
第2シリンダ81Bは、第2内部空間84Bを有しており、この内部空間から突出と収容を行うことで、第2ピストン82Bの出し入れを行う。第2ピストン82Bの第2内部空間84B内部においては、第2内部空間84B内部の側断面を仕切る第2仕切り板85Bが設けられる。この第2仕切り板85Bは、第2内部空間84Bを、上部側と下部側に仕切る。また、第2ピストン82Bの昇降に伴い、第2仕切り板85Bはその位置を変えて、上部側と下部側の体積を変化させる。あるいは、第2仕切り板85Bに加わる圧力によって、第2仕切り板85Bが上下できる。
また、第2シリンダ81Bには、第2内部空間84Bと外部とを連通する第2上部開口部86Bおよび第2下部開口部87Bを有する。第2上部開口部86Bは、第2仕切り板85Bの上方に位置し、第2下部開口部87Bは、第2仕切り板85Bの下方に位置する。
第2下部開口部87Bには、空気を供給する供給路が接続される。第2ピッキングユニット11Bがピッキングに用いられない場合には、供給路から空気が供給される。空気の供給により、第2下部開口部87Bから第2内部空間84Bに空気が供給される。第2内部空間84Bは、第2仕切り板85Bによって仕切られているので、第2下部開口部87Bから空気が供給されると、第2仕切り板85Bが、第2内部空間84B内部で上昇する。
この上昇によって、第2ピストン82Bが上昇する。第2ピストン82Bが上昇すると、これに合わせて第2ストッパー88Bも上昇する。この上昇に伴い、第2ストッパー88Bは、第2係止部材92Bに係止される。係止されることで、第2ストッパー88B(すなわち、第2ピストン82B)が、第2係止部材92Bを上昇させる。第2係止部材92Bは、第2吸着具3Bに接続されているので、第2吸着具3Bもそのまま上昇する。
このようにして、第2上昇制御部8Bも、第2ピッキングユニット11Bが使用されない場合に、第2ピッキングユニット11Bを強制的に上昇させることができる。ここで、供給路は、ピッキングを行う第1ピッキングユニット11Aに吸引圧力が付与されるのに合わせて、第2下部開口部87Bに空気を供給すればよい。
このように、第1ピッキングユニット11Aに備わる第1上昇制御部8Aが、上述のような第1ピストン82A、第1シリンダ81Aなどを備えることで、第1ピッキングユニット11Aが使用されない場合でも、第1ピッキングユニット11Aを強制的に上昇させることができる。同様に、第2ピッキングユニット11Bに備わる第2上昇制御部8Bが、上述のような第2ピストン82B、第2シリンダ81Bなどを備えることで、第2ピッキングユニット11Bが使用されない場合でも、第2ピッキングユニット11Bを強制的に上昇させることができる。結果として、ピッキングを行わないピッキングユニット11は、ピッキングを行うピッキングユニット11のピッキング動作を邪魔しない。
ここで、第1シリンダ81A(第1ピストン82Aも)は、第1昇降部材9Aの側面に設けられることが好適である。同様に、第2シリンダ81B(第2ピストン82Bも)は、第2昇降部材9Bの側面に設けられることが好適である。側面に設けられることで、強制的な上昇を行いやすくなるからである。
また、空気を供給する供給路は、第1ピッキングユニット11Aおよび第2ピッキングユニット11Bの内、吸着対象物50を吸着しない(ピッキング動作しない)ピッキングユニット11に取り付けられることも好適である。コスト低減のためである。
また、空気を供給する供給路は、第1下部開口部87Aおよび第2下部開口部87Bに接続されるだけでなく、第1上部開口部86Aおよび第2上部開口部86Bに接続されることも好適である。
第1上部開口部86Aに供給路が接続されると、第1上部開口部86Aから第1内部空間84Aに空気が供給される。この供給により、第1仕切り板85Aが押し下げられる。結果として、第1ピストン82Aが下降して、第1ストッパー88Aが第1吸着具3Aを上から押し下げる。すなわち、第1ピストン82Aは、第1吸着具3Aを押し下げることができる。結果として、第1ピッキングユニット11Aが、強制的に下降させられる。
同様に、第2上部開口部86Bに供給路が接続されると、第2上部開口部86Bから第2内部空間84Bに空気が供給される。この供給により、第2仕切り板85Bが押し下げられる。結果として、第2ピストン82Bが下降して、第2ストッパー88Bが第2吸着具3Bを上から押し下げる。すなわち、第2ピストン82Bは、第2吸着具3Bを押し下げることができる。結果として、第2ピッキングユニット11Bが、強制的に下降させられる。
(動作手順の説明)
次に、上述したピストンとシリンダによる第1ピッキングユニット11Aや第2ピッキングユニット11Bの強制的な上昇によって、使用されないピッキングユニットが使用されるピッキングユニット11の邪魔とならない動作手順を説明する。
図14は、動作開始状態を示している。ここでは、第1ピッキングユニット11Aが吸着対象物50Aを吸着して上昇させ、第2ピッキングユニット11Bは、使用されない。このため、第2ピッキングユニット11Bに備わる第2上昇制御部8Bが、第2ピッキングユニット11Bを強制的に上昇させる。
図15は、本発明の実施の形態2におけるピッキング装置における第1ピッキングユニットのみがピッキングを行う直前を示す正面図である。図15は、図14を正面から見た状態を示している。図15に示されるように、第1ピッキングユニット11Aは吸着対象物50Aを吸着・上昇させるピッキング動作を行う。第2ピッキングユニット11Bは、ピッキング対象となる吸着対象物50を有しておらず、ピッキング動作を行わない。
図16は、本発明の実施の形態2におけるピッキング装置における第1ピッキングユニットのみがピッキングを行う際に吸着対象物を吸着している状態を示す斜視図である。実施の形態1で説明したように、第1ピッキングユニット11Aが下降して、第1吸着具3Aの第1吸着面31Aが、吸着対象物50Aに接触している。第1ピッキングユニット11Aは、第2吸引管路2Aに吸引圧力を付与する。この付与によって、第1吸着面31Aで吸着対象物50Aを吸着する。
一方、第2ピッキングユニット11Bは、ピッキング動作を行わない。このため、第1吸引管路2Aに吸引圧力が付与されるのに合わせて、第2下部開口部87B(図16では隠れている)に供給路が空気を供給する。空気の供給によって、第2ピストン82Bが上昇を開始する。
図17は、本発明の実施の形態2におけるピッキング装置における第1ピッキングユニットのみがピッキングを行う際に吸着対象物を上昇させている状態を示す斜視図である。第1吸引管路2Aに吸引圧力が付与されることで、吸着に続いて、第1昇降部材9Aが上昇する。図17では、この第1昇降部材9Aの上昇状態が示されている。
第1昇降部材9Aが上昇するにつれて、吸着対象物50Aも上昇する。吸着対象物50Aが大きい場合には、上昇につれて、第2ピッキングユニット11Bに接触してしまうかも知れない。接触すれば、落下などの問題も生じる。
しかし、第2ピッキングユニット11Bに備わる第2上昇制御部8Bの第2下部開口部87Bに供給路から空気が供給されている。この空気の供給によって、第2仕切り板85Bが第2内部空間84B内部を更に上昇する。この上昇に伴い、第2ピストン82Bが上昇する。上昇すれば、第2ストッパー88Bが、第2係止部材92Bと係止されて、第2ピストン82Bが、係止部材92Bを介して第2吸着具3Bを上昇させる。この上昇によって、第2ピッキングユニット11Bも十分な高さまで上昇できる。
こうして上昇した第2ピッキングユニット11Bは、吸着対象物50Aを吸着して上昇させている第1ピッキングユニット11Aのピッキング動作の邪魔をしないようになる。
図18は、図17を正面から見た正面図である。正面図ではっきりわかる通り、第1ピッキングユニット11Aは、吸着対象物50Aを上昇させている。この上昇に合わせて、第2上昇制御部8Bが第2ピッキングユニット11Bを上昇させている。このため、第1ピッキングユニット11Aが、上端まで吸着対象物50Aを上昇させているにも係らず、第2ピッキングユニット11Bは、吸着対象物50に接触することがない。結果として、第1ピッキングユニット11Aのピッキング動作を邪魔していない。
このように、第1上昇制御部8A、第2上昇制御部8Bは、強制的に第1ピッキングユニット11A、第2ピッキングユニット11Bを上昇させることができる。この結果、ピッキング動作を邪魔しない。
以上のように、実施の形態2におけるピッキング装置1は、複数のピッキングユニット11の内、ピッキング動作を行わないピッキングユニットを、ピッキング動作するピッキングユニット11の吸着・上昇に合わせて強制的に上昇させることで、吸着対象物50のピッキング動作を邪魔しない。結果として、複数のピッキングユニット11を備えるピッキング装置1は、様々なバリエーションで使用できる。
(実施の形態3)
次に実施の形態3について説明する。実施の形態3では、吸着具3の工夫について説明する。
実施の形態3では、吸着具3が、吸着対象物50の変形に合わせて吸着する態様を説明する。図19は、本発明の実施の形態3における吸着具の吸着面から見た斜視図である。実施の形態3の吸着具3は、吸着面31の外周に沿って吸着対象物50側に突出する接触部32を更に備える。接触部32は、吸着面31との間に空隙33を有する。空隙33は、袋物などの柔軟性を有する吸着対象物50の、吸着によって変形する変形部分の少なくとも一部を、その内部に収容する。
吸着具3が、このように吸着面31との間に空隙33を有する接触部32を有することで、袋物などの柔軟性と変形性を有する吸着対象物50を吸着する場合でも、変形部分を空隙33に収容できる。このため、変形によってできるしわなどが吸着面31と連通して、吸引圧力が外部に抜けてしまうことが防止できる。この防止によって、吸着具3が、吸着対象物50を落下させてしまうなどの問題が減少する。
図20は、本発明の実施の形態3における吸着具3の断面斜視図である。断面斜視図からわかる通り、吸着具3の吸着面31と接触部32との間の空隙33が、吸着対象物50の変形部分51を収容していることが分かる。加えて、空隙33は、吸着面31の外周に向けて形成されるので、変形部分51は、吸着面31の中央部から外周に向けて広がりつつ空隙33に収容される。
このように、袋物などの柔軟性を有する吸着対象物50は、吸着面31での吸着において、空隙33も活用されて確実に吸着される。
図21は、本発明の実施の形態3における吸着具の側面図である。図21は、吸着具3が、吸着対象物50を空隙33に一部を収容しながら吸着している状態を示している。図17のように、吸着具3は、吸着対象物50を確実に吸着できる。
以上のように、実施の形態3におけるピッキング装置1は、吸着具3によって、確実に吸着対象物50を吸着できる。
なお、実施の形態1〜3で説明された吸着具およびピッキング装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。