以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る計測装置1を示すブロック図である。計測装置1は、第1信号生成部3(第1信号生成手段)、第1除去部5(第1除去手段)、及び計測部7(計測手段)を備える。第1信号生成部3は、第1物理量p1及び第2物理量p2に基づいて、基本波及び複数の高調波を含む第1ソース信号x1(t)を生成する。本明細書において、tは時間を示す。第1除去部5は、第1ソース信号x1(t)から複数の高調波の一部又は全部を除去する。
実施形態1によれば、非線形誤差を生じさせる原因の1つである複数の高調波の一部又は全部を除去することによって、計測装置1(計測部7)の非線形性の計測結果への影響を簡易に低減できる。
第1除去部5は、N個(Nは1以上の整数)の高調波生成部9[1](高調波生成手段)〜高調波生成部9[N](高調波生成手段)、第1加算部11(第1加算手段)、第1フーリエ変換部13(第1フーリエ変換手段)、及び第1制御部15(第1制御手段)を含む。
高調波生成部9[1]〜高調波生成部9[N]の数Nは、第1ソース信号x1(t)のうち第1除去部5による除去対象の高調波の数と同じである。高調波生成部9[1]〜高調波生成部9[N]は、それぞれ、高調波信号h[1]〜高調波信号h[N]を生成する。
ここで、高調波生成部9[1]〜高調波生成部9[N]を総称して高調波生成部9[n](nは1以上の整数)と記載し、高調波信号h[1]〜高調波信号h[N]を総称して高調波信号h[n]と記載する。
高調波信号h[n]は、第1ソース信号x1(t)に含まれる複数の高調波のうち除去対象の高調波の周波数を有する。例えば、除去対象の高調波が2次高調波である場合、高調波生成部9[1]は2次高調波の周波数を有する高調波信号h[1]を生成する。
第1加算部11は、高調波信号h[n]と第1ソース信号x1(t)とを加算し、第1加算信号y1(t)を出力する。計測部7は、アナログの第1加算信号y1(t)をデジタルの第1計測信号z1(t)として出力する。第1フーリエ変換部13は、第1計測信号z1(t)をフーリエ変換して、第1計測信号z1(t)に含まれる複数の高調波を算出する。
第1制御部15は、除去対象の高調波と一致する高調波が第1計測信号z1(t)から除去されるように、高調波生成部9[n]に、高調波信号h[n]の振幅及び/又は位相を調整させる。例えば、除去対象の高調波が2次高調波である場合、第1制御部15は、2次高調波が第1計測信号z1(t)から除去されるように、高調波生成部9[1]に、2次高調波の周波数を有する高調波信号h[1]の振幅及び/又は位相を調整させる。
第1加算部11は、振幅及び/又は位相の調整された高調波信号h[n]と第1ソース信号x1(t)とを加算し、第1加算信号y1(t)を出力する。第1加算信号y1(t)は、計測部7により第1計測信号z1(t)に変換され、第1計測信号z1(t)が、再び第1フーリエ変換部13に入力される。
そして、除去対象の高調波と一致する高調波が第1計測信号z1(t)から除去されるまで、第1フーリエ変換部13によるフーリエ変換、第1制御部15による高調波生成部9[n]の制御、高調波生成部9[n]による振幅及び/又は位相の調整、第1加算部11による加算、並びに計測部7によるデジタル出力が繰り返される。
図1〜図4を参照して、第1ソース信号x1(t)、第1加算信号y1(t)、及び第1計測信号z1(t)の詳細について説明する。図2は、第1ソース信号x1(t)を示す波形図である。第1信号生成部3は、第1物理量p1、第2物理量p2、及び基準物理量prに基づいて、第1ソース信号x1(t)を生成する。第1ソース信号x1(t)は、周期Tを有する周期信号であり、階段状である。
第1ソース信号x1(t)の1周期は、第1物理量p1を示す第1信号p1と、基準物理量prを示す基準信号prと、第2物理量p2を示す第2信号p2とを含む。
第1物理量p1を示す第1信号p1は、時間0から時間T/4までの第1時間幅w1(=(1/4)周期)を有する。基準物理量prを示す基準信号prは、時間T/4から時間3T/4までの第3時間幅w3(=(2/4)周期)を有する。第2物理量p2を示す第2信号p2は、時間3T/4から時間Tまでの第2時間幅w2(=(1/4)周期)を有する。
図2には表れないが、第1ソース信号x1(t)は、複数の周波数成分を有する。つまり、第1ソース信号x1(t)は、基本波及び複数の高調波を含む。基本波は、周波数f(=1/T)を有する。複数の高調波の周波数は、それぞれ、2f、3f、5f…である。つまり、高調波の周波数は、周波数fのk倍の周波数である。kは、4の倍数を除く2以上の整数である。第1ソース信号x1(t)から生成される第1加算信号y1(t)の基本波及び第1計測信号z1(t)の基本波の各々は、第1ソース信号x1(t)の基本波の周波数fと同じ周波数を有する。従って、第1加算信号y1(t)の高調波の周波数は周波数fのk倍の周波数であり、第1計測信号z1(t)の高調波の周波数は周波数fのk倍の周波数である。ただし、第1加算信号y1(t)及び第1計測信号z1(t)の高調波の場合、kが4の倍数をとることもある。
図3は、第1加算信号y1(t)及び第1計測信号z1(t)を示す波形図である。第1ソース信号x1(t)に高調波信号h[n]を加算することによって、第1加算信号y1(t)が生成される。図3では、第1加算信号y1(t)には高調波が残っている。計測部7は、第1加算信号y1(t)を計測し、計測結果として第1計測信号z1(t)を生成する。そして、第1計測信号z1(t)をフーリエ変換し、図3の例では、高調波がゼロになるように、高調波生成部9[n]をフィードバック制御している。その結果、高調波を含まない第1計測信号z1(t)が得られる。つまり、第1計測信号z1(t)は、正弦波であり、基本波のみを有する。
図3に示す第1計測信号z1(t)は、図4に示す非線形応答関数F(y1)を用いて計算されている。図4は、計測部7の入出力特性の一例を示す図である。計測部7は非線形性を有し、計測部7の非線形性は非線形応答関数F(y1)によって表される。y1は任意の入力を示す。計測部7の非線形性により、非線形誤差G(y1)が発生する。第1計測信号z1(t)は、非線形応答関数F(y1(t−τ))によって表される。τは、第1加算信号y1(t)に対する第1計測信号z1(t)の遅延時間を示す。遅延時間τは、計測部7に固有であり、周波数に依存しない。
図3及び図5を参照して、第1物理量p1に対する第2物理量p2の比の値rの算出方法を説明する。計測部7が比の値rを算出する。図5(a)は、計測部7の電気的構成を示す図である。計測部7は、プロセッサー17、記憶部18、検出器19、及び表示部20を含む。
プロセッサー17は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、又はFPGA(Field−Programmable Gate Array)であり、DSP(Digital Signal Processor)を含んでもよい。記憶部18は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びフラッシュメモリー等の半導体メモリーであり、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置を含んでもよい。記憶部18は記憶媒体の一例である。検出器19は、アナログの第1加算信号y1(t)を検出し、デジタルの第1計測信号z1(t)として出力する。検出器19は、例えば、電圧計測を行う場合、アナログ/デジタル変換器を含み、光学計測を行う場合、光電変換部及びアナログ/デジタル変換器を含む。表示部20は、計測結果(例えば、比の値r)を表示する。表示部20は、例えば、液晶ディスプレイである。
図5(b)は、計測部7の機能ブロック図である。計測部7は、位相算出部21(位相算出手段)、遅延算出部23(遅延算出手段)、及び第1比算出部25(第1比算出手段)を含む。プロセッサー17は、記憶部18に格納されたコンピュータープログラムを実行することによって、位相算出部21、遅延算出部23、及び第1比算出部25として機能する。
第1比算出部25は、第1計測信号z1(t)の基本波の位相θに基づいて、第1物理量p1に対する第2物理量p2の比の値rを算出する。すなわち、位相算出部21は、基本波の位相θを算出する。遅延算出部23は、第1加算信号y1(t)に対する第1計測信号z1(t)の遅延時間τを算出する。第1比算出部25は、式(1)に基づいて、比の値rを算出する。式(1)において、prは、基準物理量を示し、fは、第1計測信号z1(t)の基本波の周波数を示す。実施形態1では、pr=0である。
図3に示すように、第1加算信号y1(t)には高調波が残っている。しかし、計測部7の特性周波数が基本波の周波数に比べて十分に高い場合、遅延時間τは発生するが、正弦波を出力するような入力信号は正弦波と同じ位置にピークを持っている。従って、予め、p1=p2として、位相θを計測することで、遅延時間τを求めておけば、式(1)により、位相θから比の値rを計算できる。この場合、位相θを算出するための時間軸上の基準点の補正も同時に行われる。実施形態1によれば、基本波の位相θを計測し、式(1)を用いることにより、簡易に比の値rを算出できる。
図6及び図7を参照して、遅延時間τを0として、式(1)を簡略化して説明する。図6は、式(1)を簡略化して説明するための波形図である。図7は、式(1)を簡略化して説明するためのベクトルを示す図である。
図6は、第1物理量p1のみによる矩形波p1s、第2物理量p2のみによる矩形波p2s、矩形波p1sの基本波p1f、矩形波p2sの基本波p2f、及び合成波Aを示す。合成波Aは、基本波p1fと基本波p2sとの合成波である。
図6及び図7に示すように、基本波p1fは、−45度の位相βと(√2×(p1/π))の振幅とを有する正弦波であり、複素平面においてベクトルp1fで表現できる。基本波p2fは、45度の位相γと(√2×(p2/π))の振幅とを有する正弦波であり、複素平面においてベクトルp2fで表現できる。合成波Aは合成ベクトルAで表現できる。合成ベクトルAの位相θを用いると、角度αは、45度+θである。従って、比の値rは、式(1A)によって表される。位相β、位相γ、及び位相θの各々は、正又は負の符号を含む。図7の例では、位相β及び位相θの各々は負の値であり、位相γは正の値である。
図8〜図11を参照して、階段状信号SFの高調波が非線形誤差に与える影響について説明する。図8は、階段状信号SFを示す波形図である。階段状信号SFは、図2に示した第1ソース信号x1(t)と同じ波形を有し、第1物理量p1(=1)、第2物理量p2(=0.5)、及び基準物理量pr(=0)に基づいて生成される。図9は、階段状信号SFの周波数分布を示す図である。階段状信号SFは、低次から高次までの複数の高調波を含む。
一般的に、階段状信号SFを非線形な計測器で計測すると、計測器の遅延時間の周波数依存性が無視できる場合、出力信号は入力信号と同様な階段状信号になるが、出力信号には非線形誤差が含まれる。一方、階段状信号SFの高さの比rは、式(1)で示されるように、周波数fを有する基本波の位相θから算出できる。そこで、非線形性の影響を周波数空間で眺めてみる。
階段状信号SFの高調波に非線形な関数を作用させると、高調波同士の混合、0次項(定数)と高調波との混合、及び基本波と高調波との混合が起こる。その結果、新たな基本波が生成される。新たな基本波がオリジナルの基本波と異なる位相を持っていると、基本波の位相がずれる。基本波の位相のずれは非線形誤差を発生させる。
ここで、2次の非線形性関数(z=x+0.5×x2)によって計測器を定義する。そして、その計測器によって階段状信号SFを計測した場合において、高調波の混合による基本波の位相のずれについて説明する。
図10は、高調波の混合による基本波の位相のずれを説明する図である。図11は、図10の直線v17の拡大図である。真の値に対応する基本波(オリジナルの基本波)は、原点から点a1までの直線v1で表される。全ての高調波を含む計測値に対応する基本波(新たな基本波)は、原点から点a2までの直線v2で表される。基本波の位相がずれていることを確認できる。
点a1から点a3までの直線v01は、0次項と1次項との混合に対応する。1次項はオリジナルの基本波を示す。0次項と1次項との混合は、オリジナルの基本波の位相に影響を与えないことが確認できる。
点a3から点a4までの直線v12は1次項と2次高調波との混合に対応し、直線v23は2次高調波と3次高調波との混合に対応し、直線v56は5次高調波と6次高調波との混合に対応し、直線v67は6次高調波と7次高調波との混合に対応する。なお、4次高調波は存在しない。
1次項と2次高調波との混合、2次高調波と3次高調波との混合、5次高調波と6次高調波との混合、及び6次高調波と7次高調波との混合は、オリジナルの基本波の位相に影響を与えていることが確認できる。1次項と2次高調波との混合が、オリジナルの基本波の位相を最も大きくずらしている。その次に、2次高調波と3次高調波との混合が、オリジナルの基本波の位相を大きくずらしている。すなわち、低次の高調波ほど、オリジナルの基本波の位相に大きな影響を与え、オリジナルの基本波の位相を大きくずらしている。
式(1)に示されるように、比の値rは基本波の位相θにより表されるため、オリジナルの基本波の位相がずれると、比の値rが、真の値からずれて、非線形誤差を含む。高調波がオリジナルの基本波の位相のずれを発生させているため、高調波が、比の値rに含まれる非線形誤差の原因であると考えられる。低次の高調波ほど、オリジナルの基本波の位相を大きくずらしているため、低次の高調波が、大半の非線形誤差の原因となっている。一般的に、非線形誤差は計測値に対して緩やかにしか変化しないので、小さな振幅の高次の高調波は、非線形誤差の大きさにほとんど影響を与えないと考えられる。
なお、図9に示すように、階段状信号SFは、7次高調波よりもさらに高次の高調波を含んでいるが、それら高調波の振幅は小さい。従って、図8に示すように、0次項〜7次高調波からなる信号S07によって、階段状信号SFを十分に再現可能である。
以上、高調波、特に低次の高調波が非線形誤差の原因となっているため、計測装置1は、複数の高調波の一部又は全部を除去することによって、計測装置1の非線形性の計測結果への影響を低減する。例えば、何次の高調波まで除去すれば、どの程度まで非線形誤差を低減できるかは、計測部7の非線形性を仮定して、数値シミュレーションにより再現可能である。
図1、図5、及び図12を参照して、計測装置1が実行する計測方法の流れを説明する。図12は計測方法を示すフローチャートである。計測装置1は、ステップS1〜ステップS19の処理を実行する。ステップS3はステップS5〜ステップS15を含む。
ステップS1において、第1信号生成部3は、第1物理量p1、第2物理量p2、及び基準物理量prに基づいて、基本波及び複数の高調波を含む第1ソース信号x1(t)を生成する。
ステップS3において、第1除去部5は、第1ソース信号x1(t)から複数の高調波の一部又は全部を除去する。
すなわち、ステップS5において、高調波生成部9[n]は高調波信号h[n]を生成する。ステップS7において、第1加算部11は、第1ソース信号x1(t)と高調波信号h[n]とを加算し、第1加算信号y1(t)を出力する。ステップS9において、計測部7(検出器19)は、アナログの第1加算信号y1(t)をデジタルの第1計測信号z1(t)として出力する。
ステップS11において、第1フーリエ変換部13は、第1計測信号z1(t)をフーリエ変換して、第1計測信号z1(t)に含まれる高調波を算出する。ステップS13において、第1制御部15は、除去対象の高調波と一致する高調波が第1計測信号z1(t)に存在するか否かを判定する。第1制御部15は、肯定的判定(ステップS13でYes)を行った場合、処理をステップS15に進め、否定的判定(ステップS13でNo)を行った場合、処理をステップS17に進める。
ステップS15において、第1制御部15は、除去対象の高調波と一致する高調波が第1計測信号z1(t)から除去されるように、高調波生成部9[n]に、高調波信号h[n]の振幅及び/又は位相を調整させる。そして、処理はステップS5に進む。ステップS5〜ステップS15の処理は、除去対象の高調波と一致する高調波が第1計測信号z1(t)から除去されるまで繰り返される。このようなフィードバック制御を実行することにより、除去対象の高調波を確実に除去できる。
ステップS17において、位相算出部21は、第1計測信号z1(t)の基本波の位相θを算出する。ステップS19において、第1比算出部25は、式(1)に基づいて、第1物理量p1に対する第2物理量p2の比の値rを算出する。なお、遅延算出部23は、p1=p2のときの位相θに基づいて、式(1)により、遅延時間τを予め算出している。
以上、図1〜図12を参照して説明したように、実施形態1によれば、第1計測信号z1(t)から高調波の一部又は全部を除去することにより、計測部7(検出器19)の非線形性の影響を低減できる。その結果、比の値rに含まれる非線形誤差を低減できる。また、計測部7の非線形性を低減しているのではなく、計測部7の非線形性の影響を低減しているため、計測部7、例えば、検出器19の改良は要求されない。従って、検出器19が既存の製品であっても、比の値rに含まれる非線形誤差を低減できる。
また、図1及び図5を参照して説明したように、実施形態1によれば、高調波の一部又は全部を除去した第1計測信号z1(t)の基本波の位相θから比の値rを算出している。つまり、計測と同時に計測部7の非線形性を低減している。従って、実施形態1では、計測装置1は、同時校正的利用に供されている。計測と同時に非線形性の影響を低減するので、一般的な多点校正と異なり、計測部7の非線形性のドリフトの影響を受け難い。なお、一般的な多点校正では、校正と計測との間に時間差が生じるので、計測器の非線形性がドリフトする可能性がある。
さらに、図2及び図5を参照して説明したように、実施形態1によれば、一般的な多点校正と異なり、基準物理量pr(つまり、ゼロ点)以外の基準点が要求されない。例えば、第1物理量p1を参照信号として第2物理量p2を計測しているとみなす場合、計測装置1は、一般的な2点校正を実行する場合と同様に、2つの標準(基準物理量pr及び第1物理量p1)で校正を実行していることになる。実施形態1では、2点校正と同様に2つの標準しか用いていないにも拘らず、計測部7の非線形性を低減することなく、非線形性の計測結果への影響を低減しており、多点校正と同様の効果を有している。なお、一般的な2点校正では、線形性の範囲でしか補正できず、また、オフセット及びゲインの校正しかできない。
さらに、図2を参照して説明したように、実施形態1によれば、第1時間幅w1を有する第1信号p1、第3時間幅w3を有する基準信号pr、及び第2時間幅w2を有する第2信号p2によって構成される第1ソース信号x1(t)を生成する。その結果、式(1)に示す簡易な演算により、比の値rを算出できる。
(実施形態2)
図1、図2、図5、及び図13を参照して、本発明の実施形態2に係る計測装置1について説明する。実施形態2に係る計測装置1は、実施形態1に係る計測装置1を電圧計測に適用する。従って、図1において、第1物理量p1、第2物理量p2、及び基準物理量prの各々は、電圧である。第1ソース信号x1(t)、第1加算信号y1(t)、第1計測信号z1(t)、及び高調波信号h[n]の各々は、電気信号である。また、計測装置1は、同時校正的利用に供される。
図13は、実施形態2に係る計測装置1を示すブロック図である。計測装置1は、第1信号生成部3(第1信号生成手段)、第1除去部5(第1除去手段)、及び計測部7(計測手段)を備える。計測部7の電気的構成は、図5(a)に示した計測部7の電気的構成と同様である。実施形態2では、検出器19は、アナログ/デジタル変換器19a(以下、「ADC19a」と記載する。)(アナログ/デジタル変換部又はアナログ/デジタル変換手段)を含む。ADC19aはアナログ信号をデジタル信号に変換する。
第1信号生成部3はスイッチ12を含み、スイッチ12は接点4a〜接点4dを含む。接点4aには、第1物理量p1としての電圧p1が印加される。接点4bには、第2物理量p2としての電圧p2が印加される。接点4cには、基準物理量prとしての電圧prが印加される。実施形態2では、電圧prは0Vである。
スイッチ12は、接点4dに接続する接点を、接点4a〜接点4cの間で切り替えることによって、階段状の第1ソース信号x1(t)を生成する。すなわち、図2に示すように、スイッチ12は、時間0から時間T/4までの間、接点4aと接点4dとを接続し、時間T/4から時間3T/4までの間、接点4cと接点4dとを接続し、時間3T/4から時間Tまでの間、接点4bと接点4dとを接続する。スイッチ12は、これらの操作を繰り返し、周期的な階段状の第1ソース信号x1(t)を生成する。
第1除去部5は、N個(Nは1以上の整数)の発振器9a[1](高調波生成手段)〜発振器9a[N](高調波生成手段)、第1加算器11a(第1加算手段)、第1高速フーリエ変換器13a(以下、「第1FFT13a」と記載する。)(第1フーリエ変換部又は第1フーリエ変換手段)、及び第1制御部15a(第1制御手段)を含む。
発振器9a[1]〜発振器9a[N]の数Nは、第1ソース信号x1(t)のうち第1除去部5による除去対象の高調波の数と同じである。発振器9a[1]〜発振器9a[N]は、それぞれ、高調波電気信号ha[1]〜高調波電気信号ha[N]を生成する。
ここで、発振器9a[1]〜発振器9a[N]を総称して発振器9a[n](nは1以上の整数)と記載し、高調波電気信号ha[1]〜高調波電気信号ha[N]を総称して高調波電気信号ha[n]と記載する。
高調波電気信号ha[n]は、第1ソース信号x1(t)に含まれる複数の高調波のうち除去対象の高調波の周波数を有する。
第1加算器11aは、高調波電気信号ha[n]と第1ソース信号x1(t)とを加算し、第1加算信号y1(t)を出力する。ADC19aは、アナログ信号である第1加算信号y1(t)をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を第1計測信号z1(t)として出力する。第1FFT13aは、高速フーリエ変換を実行して、第1計測信号z1(t)に含まれる複数の高調波を算出する。
第1制御部15aは、除去対象の高調波と一致する高調波が第1計測信号z1(t)から除去されるように、発振器9a[n]に、高調波電気信号ha[n]の振幅及び/又は位相を調整させる。実施形態1と同様に、除去対象の高調波と一致する高調波が第1計測信号z1(t)から除去されるまで、第1制御部15aによる発振器9a[n]の制御、発振器9a[n]による振幅及び/又は位相の調整、第1加算器11aによる加算、検出器19によるアナログ/デジタル変換、及び第1FFT13aによる高速フーリエ変換が繰り返される。
計測部7は、実施形態1と同様に、位相算出部21、遅延算出部23、及び第1比算出部25を含む。そして、計測部7は、実施形態1と同様に、式(1)に基づいて、比の値rを算出する。
また、計測装置1は、実施形態1と同様に、図12のフローチャートに示す計測方法を実行する。この場合、図12の説明において、高調波生成部9[n]を発振器9a[n]に、高調波信号h[n]を高調波電気信号ha[n]に、第1加算部11を第1加算器11aに、第1フーリエ変換部13を第1FFT13aに、第1制御部15を第1制御部15aに読み替える。
以上、図13を参照して説明したように、実施形態2によれば、電圧計測において、第1計測信号z1(t)から高調波の一部又は全部を除去することにより、計測部7(ADC19a)の非線形性の影響を低減できる。その結果、比の値r、つまり、電圧比に含まれる非線形誤差を低減できる。その他、実施形態2では、実施形態1と同様の効果を奏する。
また、実施形態2に係る計測装置1を直流電圧計測に適用できる。直流電圧計測では、計測装置1の同時校正的利用が有効である。
直流電圧計測において、二重積分方式又は多重積分方式を採用したアナログ/デジタル変換器(ADコンバーター)を搭載した市販の最高級機種のデジタルボルトメーター(デジタルマルチメーター)に計測装置1を適用できる。
例えば、10ppbの線形性を有するデジタルボルトメーターを実現できる可能性がある。電圧比(比の値r)の計測は電圧計測の基本であるため、線形な電圧比計測は高精度なデジタルボルトメーターの実現に必要な技術である。例えば、計測部7として、市販の最高級機種のデジタルボルトメーターを採用することによって、さらに線形性を向上できる。10ppbの線形性を有するデジタルボルトメーターを実現すれば、2次校正用として利用できるし、また、高精度の物理計測に利用できる。また、計測装置1を既存のデジタルボルトメーターに適用するのではなく、新たなデジタルボルトメーターとして計測装置1を製造することもできる。
また、直流電圧計測において、計測装置1を、デルタ・シグマ方式又はSAR(Successive Approximation Register)方式のADコンバーターを搭載した比較的安価なデジタルボルトメーターに適用できる。例えば、1ppmの線形性を有するデジタルボルトメーターを実現できる可能性がある。デルタ・シグマ方式及びSAR方式のデジタルボルトメーターは比較的高いS/N比を有するが、線形性が十分ではない。例えば、計測部7として、デルタ・シグマ方式又はSAR方式のデジタルボルトメーターを採用することで、低価格の1ppmのデジタルボルトメーターを実現できる。
なお、電圧計測におけるアナログのバンドエリミネーションフィルターの中には、バンドパスフィルターの出力を逆位相にして元の信号と加算する方式を採用している場合がある。実施形態2に係る第1FFT13a、第1制御部15a、及び発振器9a[h]は、デジタル信号処理を使った位相検波で多チャンネルのバンドエリミネーションフィルターを実現している。
(実施形態3)
図1、図2、図5、及び図14を参照して、本発明の実施形態3に係る計測装置1について説明する。実施形態3に係る計測装置1は、実施形態1に係る計測装置1を分光計測のような光学計測に適用する。従って、図1において、第1物理量p1、第2物理量p2、及び基準物理量prの各々は、光の強度である。第1ソース信号x1(t)、高調波信号h[n]、及び第1加算信号y1(t)の各々は、光信号である。第1計測信号z1(t)は、電気信号である。また、計測装置1は、同時校正的利用に供される。
図14は、実施形態3に係る計測装置1を示すブロック図である。計測装置1は、第1信号生成部3(第1信号生成手段)、第1除去部5(第1除去手段)、及び計測部7(計測手段)を備える。計測部7の電気的構成は、図5(a)に示した計測部7の電気的構成と同様である。実施形態3では、検出器19は、光電変換部19b(光電変換手段)及びアナログ/デジタル変換器19c(以下、「ADC19c」と記載する。)(アナログ/デジタル変換部又はアナログ/デジタル変換手段)を含む。光電変換部19bは、受光した光信号を電気信号に変換する。光電変換部19bは、例えば、光電子倍増管又はイメージセンサー(例えば、CCDイメージセンサー又はCMOSイメージセンサー)である。ADC19cはアナログ信号をデジタル信号に変換する。
第1信号生成部3には、第1物理量p1としての光強度p1を有する光、第2物理量p2としての光強度p2を有する光、基準物理量prとしての光強度prを有する光が入射される。実施形態3では、光強度prは、暗状態を示すレベルである。
第1信号生成部3は、光強度p1を有する光と、光強度p2を有する光と、光強度prを有する光とを切り替えることによって、階段状の第1ソース信号x1(t)を生成し、第1加算器11bに出射する。すなわち、図2に示すように、第1信号生成部3は、時間0から時間T/4までの間、光強度p1を有する光を出射し、時間T/4から時間3T/4までの間、光を出射せず、時間3T/4から時間Tまでの間、光強度p2を有する光を出射する。第1信号生成部3は、これらの動作を繰り返し、周期的な階段状の第1ソース信号x1(t)を生成する。なお、第1信号生成部3が光を出射しないことによって、暗状態を実現している。
第1除去部5は、N個(Nは1以上の整数)の高調波生成部9b[1](高調波生成手段)〜高調波生成部9b[N](高調波生成手段)、第1加算器11b、第1高速フーリエ変換器13b(以下、「第1FFT13b」と記載する。)(第1フーリエ変換部又は第1フーリエ変換手段)、及び第1制御部15b(第1制御手段)を含む。
高調波生成部9b[1]〜高調波生成部9b[N]の数Nは、第1ソース信号x1(t)のうち第1除去部5による除去対象の高調波の数と同じである。高調波生成部9b[1]〜高調波生成部9b[N]は、それぞれ、高調波光信号hb[1]〜高調波光信号hb[N]を生成し、第1加算器11bに出射する。
ここで、高調波生成部9b[1]〜高調波生成部9b[N]を総称して高調波生成部9b[n](nは1以上の整数)と記載し、高調波光信号hb[1]〜高調波光信号hb[N]を総称して高調波光信号hb[n]と記載する。
高調波光信号hb[n]は、第1ソース信号x1(t)に含まれる複数の高調波のうち除去対象の高調波の周波数を有する。
高調波生成部9b[n]は、光源部45及び電流制御回路47を含む。光源部45は、例えば、LEDである。電流制御回路47は、第1制御部15bに制御され、光源部45に供給する電流を制御又はチョップして、光源部45の発光量を制御する。その結果、電流制御回路47は、高調波光信号hb[n]の振幅及び/又は位相を調整することができる。光源部45は、電流制御回路47に従って、矩形状光信号を生成し、高調波光信号hb[n]として出射する。なお、光源部45は、例えば、レーザーでもよい。この場合、例えば、高調波生成部9b[n]は、電流制御回路47に代えて、光学系を含む。この光学系は、光源部45が出射した一定強度を有する光信号をチョップして、矩形状光信号を生成し、高調波光信号hb[n]として出射する。
例えば、10ppmの線形性を実現する場合に問題となる非線形性は、光検出器の検出面における強度分布に関係している。従って、高調波生成部9b[n]は、高調波光信号hb[n]が光電変換部19bの検出面で第1ソース信号x1(t)と同様の強度分布を有するように、高調波光信号hb[n]を生成する。
第1加算器11bは、高調波光信号hb[n]と第1ソース信号x1(t)とを加算し、第1加算信号y1(t)を出力する。
第1加算器11bは、例えば、分岐光ファイバーである。分岐光ファイバーは、複数の入力用光ファイバーと、単数の出力用光ファイバーと、複数の入力用光ファイバーと単数の出力用光ファイバーとを接続する光カプラーを含む。この場合、第1ソース信号x1(t)は、1つの入力用光ファイバーに入射される。高調波光信号hb[n]は、対応する入力用光ファイバーに入射される。その結果、第1ソース信号x1(t)と高調波光信号hb[n]とが加算され、第1加算信号y1(t)が出力用光ファイバーから出射される。
また、第1加算器11bは、例えば、直線状に配列された複数段のハーフミラーを含む。この場合、第1ソース信号x1(t)は、初段のハーフミラーに入射される。高調波光信号hb[n]は、対応するハーフミラーに入射される。その結果、第1ソース信号x1(t)と高調波光信号hb[n]とが加算され、第1加算信号y1(t)が最終段のハーフミラーから出射される。
第1加算信号y1(t)は、検出器19の光電変換部19bに入射され、光電変換部19bは、第1加算信号y1(t)を受光する。光電変換部19bは、光信号である第1加算信号y1(t)を電気信号に変換して、ADC19cに入力する。ADC19cは、入力されたアナログ信号である電気信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を第1計測信号z1(t)として出力する。第1FFT13bは、高速フーリエ変換を実行し、第1計測信号z1(t)に含まれる複数の高調波を算出する。
第1制御部15bは、除去対象の高調波と一致する高調波が第1計測信号z1(t)から除去されるように、高調波生成部9b[n]に、高調波光信号hb[n]の振幅及び/又は位相を調整させる。実施形態1と同様に、除去対象の高調波と一致する高調波が第1計測信号z1(t)から除去されるまで、第1制御部15bによる高調波生成部9b[n]の制御、高調波生成部9b[n]による振幅及び/又は位相の調整、第1加算器11aによる加算、検出器19による光電変換及びアナログ/デジタル変換、並びに第1FFT13bによるフーリエ変換が繰り返される。
計測部7は、実施形態1と同様に、位相算出部21、遅延算出部23、及び第1比算出部25を含む。そして、計測部7は、実施形態1と同様に、式(1)に基づいて、比の値rを算出する。
また、計測装置1は、実施形態1と同様に、図12のフローチャートに示す計測方法を実行する。この場合、図12の説明において、高調波生成部9[n]を高調波生成部9b[n]に、高調波信号h[n]を高調波光信号hb[n]に、第1加算部11を第1加算器11bに、第1フーリエ変換部13を第1FFT13bに、第1制御部15を第1制御部15bに読み替える。
図14〜図17を参照して、高調波光信号hb[n]による高調波の除去について詳細に説明する。図15は、2次高調波の除去を説明する波形図である。図15は、第1ソース信号x1(t)、第1ソース信号x1(t)の基本波FW、及び高調波光信号hb[1]を示している。
高調波生成部9b[1]は、第1ソース信号x1(t)に含まれる2次高調波を除去するため、この2次高調波の周波数を有する高調波光信号hb[1]を生成し、第1加算器11bに出射する。図15において、高調波光信号hb[1]は斜線で示される。
図16は、2次高調波、3次高調波、及び5次高調波の除去を説明する波形図である。なお、4次高調波は存在しない。図16は、第1ソース信号x1(t)、第1ソース信号x1(t)の基本波FW、及び高調波光信号hb[1]〜高調波光信号hb[3]を示している。
高調波生成部9b[1]は、第1ソース信号x1(t)に含まれる2次高調波を除去するため、この2次高調波の周波数を有する高調波光信号hb[1]を生成し、第1加算器11bに出射する。高調波生成部9b[2]は、3次高調波を除去するため、この3次高調波の周波数を有する高調波光信号hb[2]を生成し、第1加算器11bに出射する。高調波生成部9b[3]は、5次高調波を除去するため、この5次高調波の周波数を有する高調波光信号hb[3]を生成し、第1加算器11bに出射する。図16において、高調波光信号hb[1]〜高調波光信号hb[3]は斜線で示される。
図17は、高調波の除去による非線形誤差の低減を説明する図である。曲線NE1は、高調波を除去していない場合の比の値rの非線形誤差を示す。曲線NE2は、図15の高調波光信号hb[1]により2次高調波を除去した場合の比の値rの非線形誤差を示す。曲線NE3は、図16の高調波光信号hb[1]〜高調波光信号hb[3]により2次高調波、3次高調波、及び5次高調波を除去した場合の比の値rの非線形誤差を示す。
2次高調波を除去した場合は、高調波を除去していない場合よりも非線形誤差が低減される。2次高調波、3次高調波、及び5次高調波を除去した場合は、2次高調波のみを除去した場合よりもさらに非線形誤差が低減される。
図17のシミュレーションでは、光電変換部19bの非線形性のため、非線形誤差を光強度の6乗に比例させ、第1物理量p1を一定にし、第2物理量p2(≦p1)を変化させている。比の値rは、式(1)により算出している。
以上、図14〜図17を参照して説明したように、実施形態3によれば、光学計測において、第1計測信号z1(t)から高調波の一部又は全部を除去することにより、計測部7(光電変換部19b及びADC19c)の非線形性の影響を低減できる。その結果、比の値r、つまり、光の強度比に含まれる非線形誤差を低減できる。その他、実施形態3では、実施形態1と同様の効果を奏する。
また、実施形態3に係る計測装置1を分光計測(紫外線領域、可視光領域、又は近赤外線領域)に適用できる。分光計測では、計測装置1の同時校正的利用が有効である。例えば、ダブルビーム方式の分光計測の線形性を向上させることができる。例えば、計測装置1とダブルビーム方式の分光光度計とを組み合わせることができる。すなわち、ダブルビーム方式において、計測対象の試料と相互作用した光の強度を第1物理量p1とする光と、計測対象の試料と相互作用していない光の強度を第2物理量p2とする光とを、第1信号生成部3に入射させることによって、分光計測の線形性を向上させることができる。また、例えば、10ppmの線形性を有する分光光度計を実現できる可能性がある。分光光度計の線形性が向上すれば、分光光度計を用いた定量分析の精度が向上する。さらに、近赤外領域のように多数の信号がオーバーラップしているような場合に用いられる多変量解析はスペクトルの線形性を仮定しているので、多変量解析の誤差を低減できる。
(実施形態4)
図1及び図18を参照して、本発明の実施形態4に係る計測装置1について説明する。図18は、計測装置1を示すブロック図である。計測装置1は、実施形態1に係る計測装置1の第1除去部5に代えて、第1バンドパスフィルター4(第1除去手段)を備える。計測装置1は、同時校正的利用に供される。
第1バンドパスフィルター4は、第1ソース信号x1(t)の基本波のみを通過させ、高調波除去信号y1(t)(実施形態1の第1加算信号y1(t)に相当)として、計測部7に出力する。計測部7は、アナログの高調波除去信号y1(t)をデジタルの第1計測信号z1(t)に変換する。計測部7は、式(1)により、比の値rを算出する。
第1バンドパスフィルター4は、例えば、アナログフィルターであり、第1ソース信号x1(t)の基本波の位相に影響を与えないように、つまり、第1ソース信号x1(t)の基本波と高調波除去信号y1(t)の基本波との間の位相のずれ及び位相のずれのドリフトが発生しないように構成される。
実施形態4によれば、第1計測信号z1(t)から高調波の一部又は全部を除去することにより、計測部7(検出器19)の非線形性の影響を低減できる。その結果、比の値rに含まれる非線形誤差を低減できる。その他、実施形態4では、実施形態1と同様の効果を奏する。
また、実施形態4に係る計測装置1を電圧計測に適用することもできる。従って、図18において、第1物理量p1、第2物理量p2、及び基準物理量prの各々は、電圧である。第1ソース信号x1(t)、高調波除去信号y1(t)、及び第1計測信号z1(t)の各々は、電気信号である。
さらに、実施形態4に係る計測装置1を分光計測のような光学計測に適用することもできる。従って、図18において、第1物理量p1、第2物理量p2、及び基準物理量prの各々は、光の強度である。第1ソース信号x1(t)及び高調波除去信号y1(t)の各々は、光信号である。第1計測信号z1(t)は電気信号である。
(実施形態5)
図1、図5、図19、及び図20を参照して、本発明の実施形態5に係る計測装置1について説明する。実施形態1〜実施形態4に係る計測装置1は、同時校正的利用に供されている。これに対して、実施形態5に係る計測装置1は、同時校正的利用に供されるだけでなく、多点校正的利用に供される。多点校正的利用では、計測装置1は、非線形誤差のテーブルを予め用意して、そのテーブルを用いて、計測値を補正する。
実施形態5に係る計測装置1は、実施形態1に係る計測装置1と同様の構成を含み、高調波を除去することによって、非線形誤差の影響を低減して比の値rを計測できる。従って、高調波を除去せずに計測した計測値と高調波を除去して計測した計測値との差は、非線形誤差を表す。そこで、非線形誤差のテーブルを作成して、多点校正的利用を実現する。
実施形態5に係る計測装置1は、非線形誤差低減モードと非線形誤差計測モードとを有する。非線形誤差低減モードでは、計測装置1は、実施形態1に係る計測装置1と同様に動作し、同時校正的利用に供される。以下、非線形誤差計測モード及び多点校正的利用について説明する。計測装置1の非線形誤差計測モードは、第1モード及び第2モードを含む。
図19(a)は、本発明の実施形態5に係る計測装置1を示すブロック図である。計測装置1は、実施形態1に係る計測装置1の構成に加えて、2チャンネルの信号源8をさらに備える。第1信号生成部3、第1除去部5、及び計測部7の構成は、それぞれ、実施形態1に係る計測装置1の第1信号生成部3、第1除去部5、及び計測部7の構成と同様である。実施形態5に係る計測部7の電気的構成は、図5(a)に示した電気的構成と同様である。ただし、計測部7は、図5(b)に示される構成と異なる構成を有する。
図20は、計測部7を示す機能ブロック図である。計測部7は、図5(b)に示す計測部7の構成に加えて、第1差算出部53(第1差算出手段)、記憶部18(記憶手段)、第3比算出部55(第3比算出手段)、及び補正部57(補正手段)を含む。
プロセッサー17は、記憶部18に格納されたコンピュータープログラムを実行することによって、位相算出部21、遅延算出部23、第1比算出部25、第1差算出部53、第3比算出部55、及び補正部57として機能する。
図1、図19(a)、及び図20を参照して、第1モードでの計測装置1の動作を説明する。信号源8は、第1物理量p1を示す第1信号p1を生成し、第1物理量p1を一定にして、第1信号p1を第1信号生成部3に出力する。第1信号p1を予め計測し、第1物理量p1のおおよその値を求めておく。求められた第1物理量p1には、非線形誤差だけでなく、オフセット及びゲインの誤差が含まれる。求められた第1物理量p1の値は、第2物理量p2の上限値として設定される。
また、信号源8は、第2物理量p2を示す第2信号p2を生成し、第2物理量p2を段階的に変化させて、第2信号p2を第1信号生成部3に出力する。つまり、信号源8は、第2物理量p2を変化させた後、第2物理量p2を一定に保持し、一定期間の経過後、第2物理量p2を異なる値に変化させ一定に保持する。信号源8は、予め設定された第2物理量p2の変化の段階数に応じて、第2物理量p2の上限値まで、第2物理量p2の変化及び保持を繰り返す。また、第1信号生成部3には、基準物理量prを示す基準信号prが入力される。
第2物理量p2を一定にした後は、比(p2/p1)は安定しており、計測時間内のドリフトは無視できる。第1物理量p1の値及び第2物理量p2の値の高い確度は要求されない。また、比(p2/p1)は事前に既知であることを要しない。なお、確度は、計測値と標準(例えば、国際標準又は国家標準)との差がどのくらいの範囲に収まるかを示す。これに対して、精度とは、同じ物理量を繰り返し計測したときの計測値のばらつきを示す。
第1信号生成部3は、第1物理量p1が一定にされて第2物理量p2が段階的に変化する第1ソース信号x1(t)を出力する。第1除去部5の第1加算部11は、高調波信号h[n]を第1ソース信号x1(t)に加算して、第1加算信号y1(t)を出力する。高調波信号h[n]が加算されているため、第1加算信号y1(t)から高調波が除去されている。計測部7は、第1加算信号y1(t)を入力して、高調波が除去された第1計測信号z1(t)を出力する。以下、実施形態5において、高調波が除去された第1計測信号z1(t)を第1計測信号z1a(t)と記載する。
第1比算出部25は、第2物理量p2ごとに、第1計測信号z1a(t)に基づいて、第1物理量p1に対する第2物理量p2の比の値rを算出する。すなわち、位相算出部21は、第2物理量p2ごとに、第1計測信号z1a(t)の基本波の位相θを算出する。遅延算出部23は、第1計測信号z1a(t)の遅延時間τを算出する。第1比算出部25は、第2物理量p2ごとに、第1計測信号z1a(t)の基本波の位相θ及び遅延時間τを利用して、式(1)に基づいて、比の値rを算出し、比の値rを記憶部18に記憶させる。これら比の値rは、非線形誤差が低減された確度の高い値である。以上、第1モードについて説明した。
次に、第2モードでの計測装置1の動作を説明する。信号源8及び第1信号生成部3の動作は、第1モードでの信号源8及び第1信号生成部3の動作と同じである。第1除去部5の高調波生成部9[n]は高調波信号h[n]を生成しない。従って、第1加算部11は、高調波信号h[n]を第1ソース信号x1(t)に加算することなく、第1ソース信号x1(t)を第1加算信号y1(t)として出力する。高調波信号h[n]が加算されていないため、第1加算信号y1(t)から高調波が除去されていない。計測部7は、第1加算信号y1(t)を入力して、高調波が除去されていない第1計測信号z1(t)を出力する。以下、実施形態5において、高調波が除去されていない第1計測信号z1(t)を第1計測信号z1b(t)と記載する。
第1比算出部25は、第2物理量p2ごとに、第1計測信号z1b(t)に基づいて、第1物理量p1に対する第2物理量p2の比の値rを算出する。すなわち、位相算出部21は、第2物理量p2ごとに、第1計測信号z1b(t)の基本波の位相θを算出する。遅延算出部23は、第1計測信号z1b(t)の遅延時間τを算出する。第1比算出部25は、第2物理量p2ごとに、第1計測信号z1b(t)の基本波の位相θ及び遅延時間τを利用して、式(1)に基づいて、比の値rを算出し、比の値rを記憶部18に記憶させる。これら比の値rは、非線形誤差が低減されていない値である。以上、第2モードについて説明した。
第1差算出部53は、記憶部18から、第2物理量p2ごとに、第1モードで算出された比の値r及び第2モードで算出された比の値rを取得する。そして、第1差算出部53は、第2物理量p2ごとに、第1モードで算出された比の値rと、第2モードで算出された比の値rとの差Δrを算出する。記憶部18は、第2物理量p2ごとに、第2モードで算出された比の値rと関連付けて差Δrを記憶する。
その結果、第2モードで算出された比の値rと差Δrとを関連付けたテーブル(以下、「誤差テーブル」と記載する。)が作成される。差Δrは非線形誤差を表しているため、誤差テーブルは、第2モードで算出された比の値rと非線形誤差とを関連付けたテーブルである。誤差テーブルにおいて、データが十分連続し、十分な精度も持つように、第2物理量p2の変化の段階数を十分多くして、第2物理量p2を細かく変化させることが好ましい。
誤差テーブルが作成されたため、計測部7には、第3物理量p3を示すアナログ信号p3及び第4物理量p4を示すアナログ信号p4を入力できる。第3物理量p3は第1物理量p1に対応し、第4物理量p4は第2物理量p2に対応している。アナログ信号p3及びアナログ信号p4は、任意の入力であり、計測対象である。計測部7は、アナログ信号p3及びアナログ信号p4をそれぞれデジタル信号に変換して、第3物理量p3に対する第4物理量p4の比の値R(=p4/p3)を算出する。そして、計測部7は、誤差テーブルを使用して、比の値Rを補正し、非線形誤差が低減された比の値Rcを算出する。
すなわち、第3比算出部55は比の値Rを算出する。そして、補正部57は、誤差テーブル、つまり、記憶部18が記憶している差Δrに基づいて、比の値Rを補正し、比の値Rcを算出する。誤差テーブルにデータがない場合は、補間によって、非線形誤差を算出する。なお、非線形誤差のドリフトが無視できる場合は、第3物理量p3及び第4物理量p4の計測の前に誤差テーブルを作成してもよいし、第3物理量p3及び第4物理量p4の計測の後に誤差テーブルを作成してもよい。
次に、図19(b)を参照して、実施形態5の変形例に係る計測装置1について説明する。図19(b)は、変形例に係る計測装置1を示すブロック図である。計測装置1は、図19(a)の計測装置1の信号源8に代えて、第1信号源8を備える。第1信号源8は、第1信号生成部3に含まれる。変形例では、第1モード及び第2モードの各々において、第1信号源8が、第1物理量p1が一定にされて第2物理量p2が段階的に変化する第1ソース信号x1(t)を生成及び出力する。
以上、図19及び図20を参照して説明したように、実施形態5(以下、変形例を含む。)によれば、高調波の除去により非線形誤差が低減された比の値rと、非線形誤差の低減されていない比の値rとを簡易に計測できる。従って、多点校正的利用を実現するための誤差テーブルを簡易に作成できる。
また、実施形態5によれば、誤差テーブルを利用することによって、比の値Rを補正できる。従って、第1ソース信号x1(t)を生成しなくてもよいし、また、高調波を除去する必要もない。その結果、変動する第3物理量p3及び第4物理量p4を計測することが可能になる。
さらに、実施形態5において、第1信号生成部3、第1除去部5、及び計測部7を、実施形態2に係る第1信号生成部3、第1除去部5、及び計測部7に置き換えることができる。つまり、実施形態5に係る計測装置1を電圧計測に適用できる。従って、例えば、計測装置1によって、交流電圧計測器又は高速電圧計測器を形成し、交流電圧計測器又は高速電圧計測器の線形性を向上させることができる。
さらに、実施形態5において、第1信号生成部3、第1除去部5、及び計測部7を、実施形態3に係る第1信号生成部3、第1除去部5、及び計測部7に置き換えることができる。つまり、実施形態5に係る計測装置1を光学計測に適用できる。従って、例えば、誤差テーブルによって、光計測装置の非線形性を補正することができる。光計測装置は、例えば、ダブルビーム方式の分光光度計、又はCCDイメージセンサー及びCMOSイメージセンサーのような多チャンネルの光計測器(カメラを含む。)である。線形性の高い光検出方式と線形性の低い光検出方式を比較することで、非線形性を評価できる。LEDのようなスイッチングが容易な光源を複数用意することで、多点校正的利用が実現できる。
(実施形態6)
図21〜図24を参照して、本発明の実施形態6に係る計測装置1について説明する。実施形態1に係る計測装置では、1チャンネルの階段状信号(第1ソース信号x1(t))を生成したが、実施形態6に係る計測装置1では、2チャンネルの階段状信号(第1ソース信号x1(t)及び第2ソース信号x2(t))を生成する。計測装置1は同時校正的利用に供される。以下、主に実施形態6と実施形態1との相違点を説明する。
図21は、実施形態6に係る計測装置1を示すブロック図である。計測装置1は、実施形態1に係る計測装置1の構成に加えて、第2信号生成部3B(第2信号生成手段)及び第2除去部5B(第2除去手段)をさらに備える。
第2信号生成部3Bは、基本波及び複数の高調波を含む第2ソース信号x2(t)を生成する。図22(a)は第1ソース信号x1(t)を示す波形図であり、図22(b)は第2ソース信号x2(t)を示す波形図である。第2ソース信号x2(t)は、第1ソース信号x1(t)の第1物理量p1と第2物理量p2とを入れ替えた波形を有する。
すなわち、第2ソース信号x2(t)の1周期は、第2物理量p2を示す第2信号p2と、基準物理量prを示す基準信号prと、第1物理量p1を示す第1信号p1とを含む。そして、第2信号p2は、時間0から時間T/4までの第2時間幅w2(=(1/4)周期)を有する。基準信号prは、時間T/4から時間3T/4までの第3時間幅w3(=(2/4)周期)を有する。第1信号p1は、時間3T/4から時間Tまでの第1時間幅w1(=(1/4)周期)を有する。また、第2ソース信号x2(t)の基本波の周波数は、第1ソース信号x1(t)の基本波の周波数f(=1/T)と同じであり、第2ソース信号x2(t)の複数の高調波の周波数は、それぞれ、第1ソース信号x1(t)の複数の高調波の周波数と同じである。
図21に戻って、第2除去部5Bは、第2ソース信号x2(t)から複数の高調波の一部又は全部を除去する。
第2除去部5Bは、N個(Nは1以上の整数)の高調波生成部9B[1](高調波生成手段)〜高調波生成部9B[N](高調波生成手段)、第2加算部11B(第2加算手段)、第2フーリエ変換部13B(第2フーリエ変換部又は第2フーリエ変換手段)、及び第2制御部15B(第2制御手段)を含む。高調波生成部9B[1]〜高調波生成部9B[N]、第2加算部11B、第2フーリエ変換部13B、及び第2制御部15Bの構成は、それぞれ、高調波生成部9[1]〜高調波生成部9[N]、第1加算部11、第1フーリエ変換部13、及び第1制御部15の構成と同様である。
すなわち、高調波生成部9B[1]〜高調波生成部9B[N]は、それぞれ、高調波信号hB[1]〜高調波信号hB[N]を生成する。
ここで、高調波生成部9B[1]〜高調波生成部9B[N]を総称して高調波生成部9B[n](nは1以上の整数)と記載し、高調波信号hB[1]〜高調波信号hB[N]を総称して高調波信号hB[n]と記載する。
高調波信号hB[n]は、第2ソース信号x2(t)に含まれる複数の高調波のうち除去対象の高調波の周波数を有する。第2除去部5Bによる除去対象の高調波と第1除去部5による除去対象の高調波とは同じである。
第2加算部11Bは、高調波信号hB[n]と第2ソース信号x2(t)とを加算し、第2加算信号y2(t)を出力する。第2加算信号y2(t)の基本波の周波数及び高調波の周波数は、それぞれ、第2ソース信号x2(t)の基本波の周波数及び高調波の周波数と同じである。
計測部7は、アナログの第1加算信号y1(t)をデジタルの第1計測信号z1(t)として出力すると共に、アナログの第2加算信号y2(t)をデジタルの第2計測信号z2(t)として出力する。計測部7の電気的構成は、図5(a)に示した電気的構成と同様である。実施形態6では、検出器19は、2チャンネルである。第2計測信号z2(t)の基本波の周波数及び高調波の周波数は、それぞれ、第2ソース信号x2(t)の基本波の周波数及び高調波の周波数と同じである。
第2フーリエ変換部13Bは、第2計測信号z2(t)をフーリエ変換して、第2計測信号z2(t)に含まれる複数の高調波を算出する。第2制御部15Bは、除去対象の高調波と一致する高調波が第2計測信号z2(t)から除去されるように、高調波生成部9B[n]に、高調波信号hB[n]の振幅及び/又は位相を調整させる。
第2加算部11Bは、振幅及び/又は位相の調整された高調波信号hB[n]と第2ソース信号x2(t)とを加算し、第2加算信号y2(t)を出力する。第2加算信号y2(t)は、計測部7により第2計測信号z2(t)に変換され、第2計測信号z2(t)が、再び第2フーリエ変換部13Bに入力される。
そして、除去対象の高調波と一致する高調波が第2計測信号z2(t)から除去されるまで、第2フーリエ変換部13Bによるフーリエ変換、第2制御部15Bによる高調波生成部9B[n]の制御、高調波生成部9B[n]による振幅及び/又は位相の調整、第2加算部11Bによる加算、並びに計測部7によるデジタル出力が繰り返される。
図23を参照して、第1物理量p1に対する第2物理量p2の比の値rの算出方法を説明する。計測部7が比の値rを算出する。図23は、計測部7の機能ブロック図である。計測部7は、位相差算出部61(位相差算出手段)、遅延差算出部63(遅延差算出手段)、及び第2比算出部65(第2比算出手段)を含む。プロセッサー17は、記憶部18に格納されたコンピュータープログラムを実行することによって、位相差算出部61、遅延差算出部63、及び第2比算出部65として機能する。
第2比算出部65は、第1計測信号z1(t)の基本波と第2計測信号z2(t)の基本波との位相差Δθに基づいて、第1物理量p1に対する第2物理量p2の比の値rを算出する。すなわち、位相差算出部61は位相差Δθを算出する。実施形態6では、位相差Δθは、第1計測信号z1(t)の基本波の位相に対する第2計測信号z2(t)の基本波の位相のずれを示す。遅延差算出部63は、第1計測信号z1(t)と第2計測信号z2(t)との遅延時間差Δτを算出する。実施形態6では、遅延時間差Δτは、第1計測信号z1(t)の遅延時間と第2計測信号z2(t)の遅延時間との差を示す。第2比算出部65は、式(2)に基づいて、比の値rを算出する。式(2)において、prは、基準物理量を示し、fは、第1計測信号z1(t)の基本波の周波数を示す。実施形態6では、pr=0である。
式(2)において、予め、p1=p2として、位相差Δθを計測することで、遅延時間差Δτを求めることができる。
図21、図23、及び図24を参照して、計測装置1が実行する計測方法の流れを説明する。図24は計測方法を示すフローチャートである。計測装置1は、ステップS31〜ステップS53の処理を実行する。ステップS31の処理は、図12のステップS1の処理と同様である。ステップS33の処理は、図12のステップS3の処理と同様であり、図12に示すステップS5〜ステップS15の処理を含む。
すなわち、ステップS31において、第1信号生成部3は第1ソース信号x1(t)を生成する。ステップS33において、第1除去部5は、第1ソース信号x1(t)から複数の高調波の一部又は全部を除去する。
一方、ステップS41において、第2信号生成部3Bは第2ソース信号x2(t)を生成する。ステップS43において、第2除去部5Bは、第2ソース信号x2(t)から複数の高調波の一部又は全部を除去する。
ステップS43の処理は、図12に示すステップS5〜ステップS15の処理を含む。この場合、ステップS5〜ステップS15の説明において、高調波信号h[n]を高調波信号hB[n]に、第1ソース信号x1(t)を第2ソース信号x2(t)に、第1加算信号y1(t)を第2加算信号y2(t)に、第1計測信号z1(t)を第2計測信号z2(t)に、高調波生成部9[n]を高調波生成部9B[n]に、第1加算部11を第2加算部11Bに、第1フーリエ変換部13を第2フーリエ変換部13Bに、第1制御部15を第2制御部15Bに読み替える。
ステップS51において、位相差算出部61は、第1計測信号z1(t)の基本波と第2計測信号z2(t)の基本波との位相差Δθを算出する。ステップS53において、第2比算出部65は、式(2)に基づいて、第1物理量p1に対する第2物理量p2の比の値rを算出する。なお、遅延差算出部63は、p1=p2のときの位相差Δθに基づいて、式(2)により、遅延時間差Δτを予め算出している。
以上、図21〜図24を参照して説明したように、実施形態6によれば、非線形誤差を生じさせる原因の1つである複数の高調波の一部又は全部を除去することによって、計測部7(検出器19)の非線形性の計測結果への影響を簡易に低減できる。その他、実施形態6では、実施形態1と同様の効果を奏する。
また、実施形態6によれば、位相差Δθから比の値rを算出するため、第1計測信号z1(t)の基本波の位相θを算出するための時間軸上の基準点を探索する作業を省略できる。また、デッドタイムがなくなる。
さらに、実施形態6に係る計測装置1は、電圧計測及び光学計測に適用できる。従って、電圧比及び光の強度比の非線形誤差を低減できる。計測装置1を電圧計測に適用する場合、第1信号生成部3及び第2信号生成部3Bの各々を実施形態2の第1信号生成部3と同様の構成とし、第1除去部5及び第2除去部5Bの各々を実施形態2の第1除去部5と同様の構成とし、計測部7の構成を実施形態2の計測部7と同様の構成にする。計測装置1を光学計測に適用する場合、第1信号生成部3及び第2信号生成部3Bの各々を実施形態3の第1信号生成部3と同様の構成とし、第1除去部5及び第2除去部5Bの各々を実施形態3の第1除去部5と同様の構成とし、計測部7の構成を実施形態3の計測部7と同様の構成にする。
(実施形態7)
図21及び図25を参照して、本発明の実施形態7に係る計測装置1について説明する。図25は、実施形態7に係る計測装置1を示すブロック図である。計測装置1は、実施形態6に係る計測装置1の第1除去部5及び第2除去部5Bに代えて、第1バンドパスフィルター4(第1除去手段)及び第2バンドパスフィルター4B(第2除去手段)を備える。第1バンドパスフィルター4の構成は、図18の第1バンドパスフィルター4の構成と同様である。
第2バンドパスフィルター4Bは、第1バンドパスフィルター4と同様の特性を有し、第2ソース信号x2(t)の基本波のみを通過させ、高調波除去信号y2(t)(実施形態6の第2加算信号y2(t)に相当)として、計測部7に出力する。
計測部7は、アナログの高調波除去信号y1(t)をデジタルの第1計測信号z1(t)に変換すると共に、アナログの高調波除去信号y2(t)をデジタルの第2計測信号z2(t)に変換する。計測部7は、式(2)により、比の値rを算出する。
実施形態7によれば、第1計測信号z1(t)及び第2計測信号z2(t)から高調波の一部又は全部を除去することにより、計測部7(検出器19)の非線形性の影響を低減できる。その結果、比の値rに含まれる非線形誤差を低減できる。その他、実施形態7では、実施形態6と同様の効果を奏する。また、計測装置1を電圧計測及び光学計測に適用することもできる。
(実施形態8)
図21及び図26〜図28を参照して、本発明の実施形態8に係る計測装置1について説明する。実施形態8に係る計測装置1は、図21に示す実施形態6に係る計測装置1を電圧計測に適用する。従って、図21において、第1物理量p1、第2物理量p2、及び基準物理量prの各々は、電圧である。第1ソース信号x1(t)、第1加算信号y1(t)、第1計測信号z1(t)、高調波信号h[n]、第2ソース信号x2(t)、第2加算信号y2(t)、第2計測信号z2(t)、及び高調波信号hB[n]の各々は、電気信号である。また、実施形態8では、第1除去部5及び第2除去部5Bの各々は、2次高調波のみを除去する。従って、N=1である。また、計測装置1は、同時校正的利用に供される。
図26は、実施形態8に係る計測装置1を示すブロック図である。計測装置1は、ファンクションジェネレーター91(以下、「FG91」と記載する。)、ファンクションジェネレーター92(以下、「FG92」と記載する。)、2チャンネルのシグナルジェネレーター93(以下、「SG93」と記載する。)、FPGA94、デジタルボルトメーター95(以下、「DVM95」と記載する。)、スイッチングボード96(以下、「SB96」と記載する。)、2チャンネルのアナログ/デジタル変換器97(以下、「ADC97」と記載する。)、及びパーソナルコンピューター98(以下、「PC98」と記載する。)を備える。
FG91は、ベースクロックclk0をFPGA94に供給し、同期クロックclksをFG92に供給する。FG2は、同期クロックclksに同期して動作し、高調波電気信号h[1]及び高調波電気信号hB[1]を生成する。高調波電気信号h[1]及び高調波電気信号hB[1]の各々は2次高調波と同じ周波数を有する。FG92は、高調波生成部9[1]及び高調波生成部9B[1]として機能する。
SG93は、第1物理量p1としての直流電圧p1、及び第2物理量p2としての直流電圧p2を生成する。FPGA94は、ベースクロックclk0に基づいて、クロックclk1〜クロックclk3及びサンプリングクロックclk4を生成する。DVM95は、電圧計であり、直流電圧p1及び直流電圧p2を計測する。
SB96は、第1信号生成部3、第2信号生成部3B、第1加算部11、及び第2加算部11Bとして機能する。SB96は、第1ソース信号x1(t)及び第2ソース信号x2(t)を生成し、さらに、第1加算信号y1(t)及び第2加算信号y2(t)を生成する。
ADC97は、アナログ信号である第1加算信号y1(t)をデジタル信号に変換して、そのデジタル信号を第1計測信号z1(t)としてPC98に出力する。また、ADC97は、アナログ信号である第2加算信号y2(t)をデジタル信号に変換して、そのデジタル信号を第2計測信号z2(t)としてPC98に出力する。ADC97は、検出器19(図5(a))として機能する。
PC98は、計測部7の一部(位相差算出部61、遅延差算出部63、及び第2比算出部65)として機能し、第1計測信号z1(t)及び第2計測信号z2(t)を計測し、式(2)により、比の値rを算出する。また、PC98は、第1フーリエ変換部13、第2フーリエ変換部13B、第1制御部15、及び第2制御部15Bとして機能する。
図27は、図26のSB96に搭載される信号生成回路81の模式図である。信号生成回路81は、第1信号生成部3及び第2信号生成部3Bとして機能する。信号生成回路81は、スイッチ部82、スイッチ85、及びスイッチ86を含む。スイッチ85は、クロックclk3によって駆動され、接点89a〜接点89cを含む。スイッチ86は、クロックclk3によって駆動され、接点90a〜接点90cを含む。接点89cと接点90cとは接続される。接点89c及び接点90cの各々には、基準物理量prとしての0Vが印加される。つまり、接点89c及び接点90cは接地される。
スイッチ部82は、クロックclkによって駆動され、スイッチ83及びスイッチ84を含む。実施形態8では、クロックclkはクロックclk1及びクロックclk2を含む。スイッチ83は、接点87a〜接点87cを含む。スイッチ84は、接点88a〜接点88cを含む。接点87bと接点88cと接点89bとは接続され、接点87cと接点88bと接点90bとは接続される。接点87aには直流電圧p1が印加され、接点88aには直流電圧p2が印加される。
スイッチ83とスイッチ84とは同期して動作する。従って、スイッチ83が接点87aと接点87bとを接続する時は、スイッチ84は接点88aと接点88bとを接続する。一方、スイッチ83が接点87aと接点87cとを接続する時は、スイッチ84は接点88aと接点88cとを接続する。
スイッチ85とスイッチ86とは同期して動作する。従って、スイッチ85が接点89aと接点89bとを接続する時は、スイッチ86は接点90aと接点90bとを接続する。一方、スイッチ85が接点89aと接点89cとを接続する時は、スイッチ86は接点90aと接点90cとを接続する。
図22及び図27を参照して、信号生成回路81の動作を説明する。時間0から時間T/4までは、接点87aと接点87bとが接続され、接点89aと接点89bとが接続され、接点88aと接点88bとが接続され、接点90aと接点90bとが接続される。従って、第1ソース信号x1(t)のレベルは直流電圧p1のレベルになり、第2ソース信号x2(t)のレベルは直流電圧p2のレベルになる。
時間T/4から時間3T/4までは、接点89aと接点89cとが接続され、接点90aと接点90cとが接続される。従って、第1ソース信号x1(t)のレベル及び第2ソース信号x2(t)のレベルは、それぞれ、0Vになる。
時間3T/4から時間Tまでは、接点88aと接点88cとが接続され、接点89aと接点89bとが接続され、接点87aと接点87cとが接続され、接点90aと接点90bとが接続される。従って、第1ソース信号x1(t)のレベルは直流電圧p2のレベルになり、第2ソース信号x2(t)のレベルは直流電圧p1のレベルになる。
図28を参照して、SB96の詳細について説明する。図28は、SB96を示す回路図である。SB96は、信号生成回路81、第1加算部11、及び第2加算部11Bを含む。図27の信号生成回路81は、図28の信号生成回路81として実現される。信号生成回路81は、ドリフト0のオペアンプA1a,A2a、FET(Field Effect Transistor)入力のオペアンプA3a、ドリフト0のオペアンプA1b,A2b、FET入力のオペアンプA3b、スイッチ82a,82b,85,86、抵抗素子R1a〜R3a、及び抵抗素子R1b〜R3bを含む。オペアンプA1a,A2a,A1b,A2bは非反転増幅器として機能する。スイッチ82a,82b,85,86の各々は、アナログスイッチであり、スイッチ部82と同様の構成を有する。
オペアンプA1aの入力端子には直流電圧p2が入力され、オペアンプA1bの入力端子には直流電圧p1が入力される。オペアンプA1a,A1bの出力端子はスイッチ82aの入力端子j1,j3に接続される。スイッチ82aの出力端子j2とスイッチ82bの入力端子j1との間には、オペアンプA2a及び抵抗素子R1aが直列に接続される。スイッチ82aの出力端子j4とスイッチ82bの入力端子j3との間には、オペアンプA2b及び抵抗素子R1bが直列に接続される。
スイッチ82bの出力端子j2及び抵抗素子R2aはスイッチ85の入力端子j1,j3に接続される。スイッチ85の出力端子j2はオペアンプA3aのマイナス端子に接続され、出力端子j4は接地される。オペアンプA3aの出力端子とマイナス端子との間には抵抗素子R3aが接続される。
スイッチ82bの出力端子j4及び抵抗素子R2bはスイッチ86の入力端子j3,j1に接続される。スイッチ86の出力端子j2はオペアンプA3bのマイナス端子に接続され、出力端子j4は接地される。オペアンプA3bの出力端子とマイナス端子との間には抵抗素子R3bが接続される。
第1加算部11は、抵抗素子R4〜R6及びFET入力のオペアンプA4を含み、反転増幅器を応用した加算器である。抵抗素子R4,R5,R6の一方端子がオペアンプA4のマイナス端子に接続される。オペアンプA4の出力端子には抵抗素子R6の他方端子が接続される。オペアンプA4のプラス端子は接地される。
信号生成回路81は、スイッチ82a,82b,85,86を切り替えながら、直流電圧p1及び直流電圧p2に基づいて、第1ソース信号x1(t)及び第2ソース信号x2(t)を生成する。実施形態8では、オペアンプA2a,A2bの入力容量が入力電圧に依存することによってスイッチ82aのスイッチングノイズもまた直流電圧p1及び直流電圧p2に対して非線形に振る舞うので、オペアンプA2a,A2bのノイズが、第1ソース信号x1(t)及び第2ソース信号x2(t)に重畳しないように、2段のスイッチ(スイッチ82a及びスイッチ82b)を設けている。
抵抗素子R4の他方端子には、オペアンプA3aの出力端子が接続され、抵抗素子R5の他方端子には、高調波電気信号h[1]が入力される。従って、信号生成回路81が生成した第1ソース信号x1(t)及びFG92が生成した高調波電気信号h[1]が第1加算部11に入力される。その結果、第1加算部11は、第1ソース信号x1(t)と高調波電気信号h[1]とを加算及び反転増幅して、第1加算信号y1(t)を出力する。
第2加算部11Bの構成は第1加算部11の構成と同様である。ただし、抵抗素子R4には、オペアンプA3bの出力端子が接続され、抵抗素子R5には、高調波電気信号hB[1]が入力される。従って、第2加算部11Bは、第2ソース信号x2(t)と高調波電気信号hB[1]とを加算及び反転増幅して、第2加算信号y2(t)を出力する。
以上、図26〜図28を参照して説明したように、実施形態8によれば、電圧計測において、第1計測信号z1(t)及び第2計測信号z2(t)から高調波の一部又は全部を除去することにより、ADC97の非線形性の影響を低減できる。その結果、比の値r、つまり、電圧比に含まれる非線形誤差を低減できる。その他、実施形態8では、実施形態6と同様の効果を奏する。
(実施形態9)
図19、図21、図29、及び図30を参照して、本発明の実施形態9に係る計測装置1について説明する。実施形態6〜実施形態8に係る計測装置1は、計測と同時に計測部7の非線形性を低減し、同時校正的利用に供されている。これに対して、実施形態9に係る計測装置1は、同時校正的利用に供されるだけでなく、多点校正的利用に供される。
実施形態9に係る計測装置1は、非線形誤差低減モードと非線形誤差計測モードとを有する。非線形誤差低減モードでは、計測装置1は、実施形態6に係る計測装置1と同様に動作し、同時校正的利用に供される。以下、非線形誤差計測モード及び多点校正的利用について説明する。計測装置1の非線形誤差計測モードは、第1モード及び第2モードを含む。
図29(a)は、実施形態9に係る計測装置1を示すブロック図である。計測装置1は、実施形態6に係る計測装置1の構成に加えて、2チャンネルの信号源8をさらに備える。信号源8の構成は、図19(a)に示した信号源8の構成と同様である。ただし、実施形態9では、信号源8は、第1物理量p1を示す第1信号p1を第1信号生成部3と第2信号生成部3Bとに出力する。また、信号源8は、第2物理量p2を示す第2信号p2を第1信号生成部3と第2信号生成部3Bとに出力する。
実施形態9に係る計測装置1の第1信号生成部3、第1除去部5、第2信号生成部3B、第2除去部5B、及び計測部7の構成は、それぞれ、実施形態6に係る計測装置1の第1信号生成部3、第1除去部5、第2信号生成部3B、第2除去部5B、及び計測部7の構成と同様である。実施形態9に係る計測部7の電気的構成は、図5(a)に示した電気的構成と同様である。検出器19は2チャンネルである。ただし、計測部7は、図5(b)に示される構成と異なる構成を有する。以下、主に実施形態9が、実施形態6(図21〜図24)及び実施形態5(図19及び図20)と異なる点を説明する。
図30は、計測部7を示す機能ブロック図である。計測部7は、図23に示す計測部7の構成に加えて、第2差算出部71(第2差算出手段)、記憶部18(記憶手段)、第3比算出部55(第3比算出手段)、及び補正部57(補正手段)を含む。
プロセッサー17は、記憶部18に格納されたコンピュータープログラムを実行することによって、位相差算出部61、遅延差算出部63、第2比算出部65、第2差算出部71、第3比算出部55、及び補正部57として機能する。
図21、図29(a)、及び図30を参照して、第1モードでの計測装置1の動作を説明する。信号源8、第1信号生成部3、及び第1除去部5の動作は、実施形態5に係る第1モードでの信号源8、第1信号生成部3、及び第1除去部5の動作と同様である。
第2信号生成部3Bは、第1物理量p1が一定にされて第2物理量p2が段階的に変化する第2ソース信号x2(t)を出力する。第2除去部5Bの第2加算部11Bは、高調波信号hB[n]を第2ソース信号x2(t)に加算して、第2加算信号y2(t)を出力する。高調波信号hB[n]が加算されているため、第2加算信号y2(t)から高調波が除去されている。計測部7は、第2加算信号y2(t)を入力して、高調波が除去された第2計測信号z2(t)を出力する。以下、実施形態9において、高調波が除去された第2計測信号z2(t)を第2計測信号z2a(t)と記載する。なお、実施形態5と同様に、高調波が除去された第1計測信号z1(t)を第1計測信号z1a(t)と記載する。
第2比算出部65は、第2物理量p2ごとに、第1計測信号z1a(t)及び第2計測信号z2a(t)に基づいて、第1物理量p1に対する第2物理量p2の比の値rを算出する。すなわち、位相差算出部61は、第2物理量p2ごとに、第1計測信号z1a(t)の基本波と第2計測信号z2a(t)の基本波との位相差Δθを算出する。遅延差算出部63は、第1計測信号z1a(t)と第2計測信号z2a(t)との遅延時間差Δτを算出する。第2比算出部65は、第2物理量p2ごとに、第1計測信号z1a(t)及び第2計測信号z2a(t)に基づく位相差Δθ及び遅延時間差Δτを利用して、式(2)に基づいて、比の値rを算出し、比の値rを記憶部18に記憶させる。これら比の値rは、非線形誤差が低減された確度の高い値である。以上、第1モードについて説明した。
次に、第2モードでの計測装置1の動作を説明する。信号源8、第1信号生成部3、及び第2信号生成部3Bの動作は、第1モードでの信号源8、第1信号生成部3、及び第2信号生成部3Bの動作と同様である。第1除去部5の動作は、実施形態5に係る第2モードでの第1除去部5の動作と同様である。
第2除去部5Bの高調波生成部9B[n]は高調波信号hB[n]を生成しない。従って、第2加算部11Bは、高調波信号hB[n]を第2ソース信号x2(t)に加算することなく、第2ソース信号x2(t)を第2加算信号y2(t)として出力する。高調波信号hB[n]が加算されていないため、第2加算信号y2(t)から高調波が除去されていない。計測部7は、第2加算信号y2(t)を入力して、高調波が除去されていない第2計測信号z2(t)を出力する。以下、実施形態9において、高調波が除去されていない第2計測信号z2(t)を第2計測信号z2b(t)と記載する。なお、実施形態5と同様に、高調波が除去されていない第1計測信号z1(t)を第1計測信号z1b(t)と記載する。
第2比算出部65は、第2物理量p2ごとに、第1計測信号z1b(t)及び第2計測信号z2b(t)に基づいて、第1物理量p1に対する第2物理量p2の比の値rを算出する。すなわち、位相差算出部61は、第2物理量p2ごとに、第1計測信号z1b(t)の基本波と第2計測信号z2b(t)の基本波との位相差Δθを算出する。遅延差算出部63は、第1計測信号z1b(t)と第2計測信号z2b(t)との遅延時間差Δτを算出する。第2比算出部65は、第2物理量p2ごとに、第1計測信号z1b(t)及び第2計測信号z2b(t)に基づく位相差Δθ及び遅延時間差Δτを利用して、式(2)に基づいて、比の値rを算出し、比の値rを記憶部18に記憶させる。これら比の値rは、非線形誤差が低減されていない値である。以上、第2モードについて説明した。
第2差算出部71は、記憶部18から、第2物理量p2ごとに、第1モードで算出された比の値r及び第2モードで算出された比の値rを取得する。そして、第2差算出部71は、第2物理量p2ごとに、第1モードで算出された比の値rと、第2モードで算出された比の値rとの差Δrを算出する。記憶部18は、第2物理量p2ごとに、第2モードで算出された比の値rと関連付けて差Δrを記憶する。
その結果、第2モードで算出された比の値rと差Δrとを関連付けたテーブル(以下、「誤差テーブル」と記載する。)が作成される。差Δrは非線形誤差を表しているため、誤差テーブルは、第2モードで算出された比の値rと非線形誤差とを関連付けたテーブルである。誤差テーブルにおいて、データが十分連続し、十分な精度も持つように、第2物理量p2の変化の段階数を十分多くして、第2物理量p2を細かく変化させることが好ましい。
誤差テーブルが作成されたため、実施形態5と同様に、計測部7には、第3物理量p3を示すアナログ信号p3及び第4物理量p4を示すアナログ信号p4を入力できる。そこで、実施形態5と同様に、第3比算出部55は、第3物理量p3に対する第4物理量p4の比の値R(=p4/p3)を算出する。補正部57は、誤差テーブル、つまり、記憶部18が記憶している差Δrに基づいて、第3比算出部55が算出した比の値Rを補正し、非線形誤差が低減された比の値Rcを算出する。なお、非線形誤差のドリフトが無視できる場合は、実施形態5と同様に、誤差テーブルの作成タイミングは任意でよい。
次に、図29(b)を参照して、実施形態9の変形例に係る計測装置1について説明する。図29(b)は、変形例に係る計測装置1を示すブロック図である。計測装置1は、図29(a)の計測装置1の信号源8に代えて、第1信号源8及び第2信号源8Bを備える。第1信号源8は、第1信号生成部3に含まれ、第2信号源8Bは、第2信号生成部3Bに含まれる。変形例では、第1モード及び第2モードの各々において、第1信号源8が、第1物理量p1が一定にされて第2物理量p2が段階的に変化する第1ソース信号x1(t)を生成及び出力し、第2信号源8Bが、第1物理量p1が一定にされて第2物理量p2が段階的に変化する第2ソース信号x2(t)を生成及び出力する。
以上、図29及び図30を参照して説明したように、実施形態9(以下、変形例を含む。)によれば、高調波の除去により非線形誤差が低減された比の値rと、非線形誤差の低減されていない比の値rとを簡易に計測できる。従って、多点校正的利用を実現するための誤差テーブルを簡易に作成できる。その他、実施形態9では、実施形態5と同様の効果を奏する。
また、図26及び図28を参照して説明した実施形態8に係る計測装置1は、非線形誤差低減モードと非線形誤差計測モードとを有することもできる。非線形誤差低減モードでは、計測装置1は、図26及び図28を参照して説明したように、同時校正的利用に供される。非線形誤差計測モードでは、計測装置1は、実施形態9に係る計測装置1と同様に動作し、多点校正的利用に供される。
(実施形態10)
図13及び図31を参照して、本発明の実施形態10に係る計測装置1について説明する。図13に示すように、実施形態10に係る計測装置1の構成は、実施形態2に係る計測装置1の構成と同様である。ただし、実施形態10に係る計測装置1は、実施形態2に係る計測装置1の計測部7に代えて、図31に示す計測部7を備える。実施形態10に係る計測装置1は、同時校正的利用に供される。
図31は、実施形態10に係る計測装置1の計測部7を示すブロック図である。図31に示すように、計測部7の検出器19は、絶縁アンプ100と、ADC19aとを含む。絶縁アンプ100は、絶縁アンプ100の入力部と出力部との間を絶縁したアンプである。絶縁アンプ100は、第1加算信号y1(t)を増幅し、増幅信号110としてADC19aに出力する。ADC19aは、アナログ信号である増幅信号110をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を第1計測信号z1(t)として出力する。計測装置1のその他の動作は、実施形態2と同様であり、説明を省略する。
実施形態10に係る計測装置1は、例えば、絶縁アンプをADコンバーターの前段に置いた絶縁入力方式のデジタルボルトメーターに適用できる。一般的に、絶縁アンプの非線形性は、ADコンバーターの非線形性より大きい。従って、一般的には、絶縁入力方式のデジタルボルトメーターでは、線形性の高い計測が困難である。しかしながら、実施形態10に係る計測装置1によって、例えば、10ppmの線形性を有する絶縁入力方式のデジタルボルトメーターを実現可能である。その他、実施形態10に係る計測装置1は、実施形態2に係る計測装置1と同様の効果を有する。
(実施形態11)
図13及び図32を参照して、本発明の実施形態11に係る計測装置1について説明する。図13に示すように、実施形態11に係る計測装置1の構成は、実施形態2に係る計測装置1の構成と同様である。ただし、実施形態11に係る計測装置1は、実施形態2に係る計測装置1の計測部7に代えて、図32に示す計測部7を備える。実施形態11に係る計測装置1は、同時校正的利用に供される。
図32は、実施形態11に係る計測装置1の計測部7を示すブロック図である。図32に示すように、計測部7の検出器19は、圧縮器101と、ADC19aと、伸長器102とを含む。圧縮器101は、第1加算信号y1(t)の振幅を圧縮し、振幅圧縮信号111として、ADC19aに出力する。圧縮器101は、例えば、対数アンプのような振幅圧縮回路である。ADC19aは、アナログ信号である振幅圧縮信号111をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を、振幅圧縮信号112として、伸長器102に出力する。伸長器102は、振幅圧縮信号112の振幅を伸長し、第1計測信号z1(t)として出力する。伸長器102は、例えば、デジタル伸長演算装置である。計測装置1のその他の動作は、実施形態2と同様であり、説明を省略する。
実施形態11に係る計測装置1は、例えば、振幅圧縮入力方式のデジタルボルトメーターに適用できる。振幅圧縮入力方式のデジタルボルトメーターでは、振幅圧縮回路がADコンバーターの前段に配置され、デジタル伸長演算装置がADコンバーターの後段に配置されている。一般的に、振幅圧縮回路の圧縮関数は温度及び経過時間によってドリフトするため、振幅圧縮回路によって振幅の圧縮された信号を正確に伸長することは困難である。従って、デジタル伸長演算装置による伸長後のデジタル信号はADコンバーターの出力するデジタル信号より大きい非線形性を示すことが一般的である。そこで、一般的には、振幅圧縮入力方式のデジタルボルトメーターは定量的な電圧計測にはほとんど用いられていない。つまり、振幅圧縮入力方式のデジタルボルトメーターは、用途が限られており、例えば、ダイナミックレンジを広げる用途として超音波診断装置に利用されている。
しかしながら、実施形態11に係る計測装置1によって、例えば、100ppmの線形性を有する振幅圧縮入力方式のデジタルボルトメーターを実現可能である。その結果、定量性を必要とするより広い用途でダイナミックレンジの広い電圧計測が可能になる。その他、実施形態11に係る計測装置1は、実施形態2に係る計測装置1と同様の効果を有する。
次に、本発明が実施例に基づき具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例によって限定されない。
本実施例では、図26及び図28を参照して説明した実施形態8に係る計測装置1を使用し、同時校正的利用を実現した。第1ソース信号x1(t)及び第2ソース信号x2(t)の基本波の周波数fを307.2Hzに設定した。ADC97は、デルタ・シグマ型(ΔΣ型)のアナログ/デジタル変換器であり、24ビットであった(PEX−320724:株式会社インターフェース)。本実施例では、ADC97の非線形誤差の低減が確認された。
まず、本実施例における条件を説明する。FG91(WF1947:株式会社エヌエフ回路設計ブロック)は、12.288MHzの方形波をベースクロックclk0として生成した。ベースクロックclk0は、FPGA94(DE0:Terasic)に入力された。FPGA94は、ベースクロックclk0を80000で分割し、153.6Hz(=f/2)のクロックclk1及びクロックclk2を生成した。また、FPGA94は、ベースクロックclk0を40000で分割し、307.2Hz(=f)のクロックclk3を生成した。クロックclk1はスイッチ82aを駆動するために使用し、クロックclk2はスイッチ82bを駆動するために使用し、クロックclk3はスイッチ85及びスイッチ86を駆動するために使用した。
FPGA94は、ベースクロックclk0を20で分割し、614.4kHzのサンプリングクロックclk4を生成した。サンプリングクロックclk4は、ADC97の両チャンネルで共通である。ADC97の非線形誤差及び信号帯域幅は、それぞれ、24ppm及び614.4kHzであり、典型的な数値である。
SG93は、3つのニッケル・水素充電池(Eneloop 1.3V:三洋電機株式会社)と6抵抗分圧器とで構成された。SG93は、直流電圧p1を約3.9Vで保持した。また、SG93は、直流電圧p2を、0Vから3.6Vまでの間で、同じ間隔で6段階に切り替えた。基準電圧prは0Vであった。SG93が生成した直流電圧p1及び直流電圧p2を、DVM95(6581:株式会社エーディーシー)に設けられたレシオメーターで計測した。DVM95の確度は、1マイクロボルトであり、比計測における約0.3ppmの誤差に等しい。
SB96は、スイッチ82a,82b,85,86(MAX4527:Maxim)により、第1ソース信号x1(t)及び第2ソース信号x2(t)を生成した。SB96には、FG92(WF1948:株式会社エヌエフ回路設計ブロック)から、614.4Hz(=2f)の高調波電気信号h[1]及び高調波電気信号hB[1]が入力された。高調波電気信号h[1]及び高調波電気信号hB[1]の各々は正弦波である。SB96は、第1加算部11によって、第1ソース信号x1(t)と高調波電気信号h[1]とを加算し、第1加算信号y1(t)を生成した。また、SB96は、第2加算部11Bによって、第2ソース信号x2(t)と高調波電気信号hB[1]とを加算し、第2加算信号y2(t)を生成した。抵抗素子R1a,R1b,R2a,R2b,R6の各々の抵抗値は、100kΩであり、抵抗素子R3a,R3bの各々の抵抗値は、10kΩであった。
ADC97は、第1加算信号y1(t)及び第2加算信号y2(t)を計測した。ADC97では、デジタルデータを2.5秒間蓄積し、ランダムノイズ低減のために、平均データを求めた。計測の前に、ADC97の2つの入力端子を接地して、オペアンプのオフセットとスイッチングノイズとを含む基準信号を取得し、減算によってオペアンプのオフセットとスイッチングノイズと除去した。
次に、図33を参照して、時間平均による電圧比rtの算出について説明する。図33(a)は、高調波を除去していない第1計測信号z1(t)を示す波形図である。図33(b)は、高調波を除去していない第2計測信号z2(t)を示す波形図である。スイッチングノイズ及び遷移時間効果を除去するために、斜線で示される領域V11〜領域V28の各々において、電圧の平均値を算出した。領域V11〜領域V28の各々での電圧の平均値には、領域と同じ参照符号を付する。例えば、領域V11の電圧の平均値をV11と記載する。電圧比rtは、式(3)により算出された。
電圧比rtは、PC98に記録され、DVM95の計測値と比較し、ADC97の非線形誤差を算出した。
次に、図34を参照して、位相に基づく電圧比rの算出について説明する。図34(a)は、2次高調波を除去した後の第1計測信号z1(t)を示す波形図である。図34(b)は、2次高調波を除去した後の第2計測信号z2(t)を示す波形図である。PC98は、斜線で示す各領域mにおいて、ゼロ置換を実行して、残余スイッチングノイズを除去した後に、第1計測信号z1(t)及び第2計測信号z2(t)の各々をフーリエ変換し、第1計測信号z1(t)及び第2計測信号z2(t)の各々の基本波(周波数f)及び2次高調波(周波数2f)を算出した。
PC98は、第1計測信号z1(t)及び第2計測信号z2(t)の各々の2次高調波の位相及び振幅を算出し、ディスプレイに表示した。本実施例では、オペレーターが、2次高調波の位相及び振幅を見ながら、FG92を手動で制御し、2次高調波の振幅が0.1未満になるように、高調波電気信号h[1]及び高調波電気信号hB[1]の振幅及び位相を調整した。そして、PC98は、式(2)により、電圧比rを算出した。電圧比rはPC98に記録され、DVM95の計測値と比較し、ADC97の非線形誤差を算出した。電圧比rの非線形誤差と電圧比rtの非線形誤差とを比較することによって、高調波除去の効果を評価した。
次に、図35を参照して、高調波除去の効果について説明する。図35は、非線形誤差を示す図である。横軸は、DVM95の計測値に基づく電圧比を示し、縦軸は、非線形誤差を示す。点Etは電圧比rtの非線形誤差を示し、点Ecは、電圧比rの非線形誤差を示す。点Etと点Ecとを比較すると、2次高調波の除去によって、非線形誤差が約70%低減されたことが確認できた。電圧比rでは、非線形誤差は2ppm以下程度まで低減している。
曲線NE10は、高調波を除去する前のADC97の非線形性を6次多項式関数G(r)によって近似した結果を示している。曲線NE10は、電圧比rtの実験結果と一致している。曲線NE20は、曲線NE10によりADC97の非線形性を近似し、2次高調波を除去したときの非線形誤差をシミュレーションした結果を示す。電圧比rの実験結果と一致している。曲線NE30は、曲線NE10によりADC97の非線形性を近似し、2次高調波、3次高調波、及び5次高調波を除去したときの非線形誤差をシミュレーションした結果を示す。非線形誤差は1ppm未満に抑制されている。
次に、図28及び図33を参照して、信号生成回路81におけるスイッチング動作を説明する。
スイッチ82aについて説明する。クロックclk1がハイレベルのときは、端子j1に入力された信号は、端子j2から出力され、端子j3に入力された信号は、端子j4から出力される。クロックclk1がローレベルのときは、端子j1に入力された信号は、端子j4から出力され、端子j3に入力された信号は、端子j2から出力される。
スイッチ82bについては、スイッチ82aの説明において、クロックclk1をクロックclk2に読み替える。スイッチ85,86の各々については、スイッチ82aの説明において、クロックclk1をクロックclk3に読み替える。
図33(a)は、高調波を除去していない第1計測信号z1(t)を示しているため、この第1計測信号z1(t)の波形は、第1ソース信号x1(t)の波形と同様である。従って、第1計測信号z1(t)の波形を、第1ソース信号x1(t)の波形とみなして説明する。同様に、図33(b)の第2計測信号z2(t)の波形を、第2ソース信号x2(t)の波形とみなして説明する。
図33(c)は、スイッチ82aに供給されるクロックclk1を示す波形図であり、図33(d)は、スイッチ82bに供給されるクロックclk2を示す波形図であり、図33(e)は、スイッチ85,86に供給されるクロックclk3を示す波形図である。
時刻t0時刻t1までは、クロックclk1がハイレベル、クロックclk2がローレベル、クロックclk3がローレベルである。従って、第1ソース信号x1(t)は直流電圧p1のレベルを有し、第2ソース信号x2(t)は直流電圧p2のレベルを有する。
時刻t1時刻t2までは、クロックclk1がハイレベル、クロックclk2がローレベル、クロックclk3がハイレベルである。従って、第1ソース信号x1(t)及び第2ソース信号x2(t)は基準電圧prのレベルを有する。
時刻t2時刻t3までは、クロックclk1がローレベル、クロックclk2がローレベル、クロックclk3がハイレベルである。従って、第1ソース信号x1(t)及び第2ソース信号x2(t)は基準電圧prのレベルを有する。
時刻t3時刻t4までは、クロックclk1がローレベル、クロックclk2がローレベル、クロックclk3がローレベルである。従って、第1ソース信号x1(t)は直流電圧p2のレベルを有し、第2ソース信号x2(t)は直流電圧p1のレベルを有する。
以上、信号生成回路81は、スイッチング動作を実行して、階段状の第1ソース信号x1(t)及び第2ソース信号x2(t)を生成する。
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(8))。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(1)実施形態1〜実施形態11(図1〜図32)において、除去すべき高調波の次数は任意に設定できるし、除去すべき高調波の数Nも任意に設定できる。低次の高調波を除去するだけでも、非線形誤差を低減できるが、より高次の高調波まで除去することにより、さらに非線形誤差を低減できる。
(2)実施形態1〜実施形態11(図1〜図32)において、計測装置1を1製品として製造することもできるし、計測装置1から計測部7を除いた部分のみを1製品として製造することもできる。この場合は、計測部7は、既存又は市販の計測装置を利用する。
(3)実施形態2、実施形態10、及び実施形態11(図13、図31、図32)では、1段の第1加算器11aを設けた。ただし、複数段の加算器を設けて、第1ソース信号x1(t)と高調波電気信号ha[n]とを加算することもできる。例えば、1段目の加算器で、高調波電気信号ha[1]〜高調波電気信号ha[N]を加算して、高調波電気信号ha[1]〜高調波電気信号ha[N]の加算信号を生成し、2段目の加算器で、この加算信号と第1ソース信号x1(t)とを加算し、第1加算信号y1(t)を生成する。
(4)実施形態2、実施形態10、及び実施形態11(図13、図31、図32)において、発振器9a[n]は、正弦波の高調波電気信号ha[n]を生成したが、他の波形の高調波電気信号ha[n]を生成してもよい。例えば、発振器9a[n]は、矩形波の高調波電気信号ha[n]又は三角波の高調波電気信号ha[n]を生成してもよい。また、実施形態3(図14)において、高調波生成部9b[n]は、矩形波の高調波光信号hb[n]を生成したが、他の波形の高調波光信号hb[n]を生成してもよい。例えば、高調波生成部9b[n]は、三角波の高調波光信号hb[n]を生成してもよい。
(5)実施形態3に係る計測装置1(図14)を、マルチチャンネル分光又はポリクロメーターと呼ばれるアレイ検出器を用いた分光計測器に適用することもできる。また、分光計測結果を元に定量(ケモメトリックス)を行う場合、計測データが高精度であることは重要なファクターであるため、この場合の分光計測にも本発明を適用できる。
(6)実施形態4及び実施形態7(図18、図25)において、第1バンドパスフィルター4に代えて、又は第1バンドパスフィルター4と伴にローパスフィルターを設けることもできる。また、実施形態7において、第2バンドパスフィルター4Bに代えて、又は第2バンドパスフィルター4Bと伴にローパスフィルターを設けることもできる。ローパスフィルターは、高調波を減衰させるアナログフィルターである。また、実施形態1〜実施形態11において、高い高調波成分(例えば、10倍以上の高調波)を除去する目的で、ローパスフィルターを併用することもできる。例えば、第1加算部11の前段若しくは後段、第1加算器11aの前段若しくは後段、第1加算器11bの前段若しくは後段、第2加算部11Bの前段若しくは後段に、ローパスフィルターを配置する。
(7)実施形態4、実施形態5、実施形態6、実施形態7、又は実施形態9に係る計測装置1(図18、図19、図21、図25、図29)を電圧計測に適用する場合、計測部7の構成を実施形態10の計測部7(図31)又は実施形態11の計測部7(図32)と同様の構成にすることもできる。また、実施形態8(図26)において、ADC97の前段に、図31に示す絶縁アンプ100を配置することもできる。又は、実施形態8において、ADC97の前段に、図32に示す圧縮器101を配置するとともに、ADC97の後段に、図32に示す伸長器102を配置することもできる。
(8)実施形態1〜実施形態11及び実施例では、計測装置1を電圧計測又光学計測に適用したが、本発明の適用範囲はこれらに限定されない。例えば、実施形態1、実施形態4、実施形態5、実施形態6、実施形態7、又は実施形態9に係る計測装置1(図1、図18、図19、図21、図25、図29)を、電流計測、音響計測、又は振動計測に適用することができる。
計測装置1を電流計測に適用する場合、例えば、第1物理量p1〜第4物理量p4及び基準物理量prの各々は電流であり、第1ソース信号x1(t)、第2ソース信号x2(t)、高調波信号h[n]、高調波信号hB[n]、第1加算信号y1(t)、第2加算信号y2(t)、第1計測信号z1(t)、及び第2計測信号z2(t)の各々は、電気信号である。
計測装置1を音響計測に適用する場合、例えば、第1物理量p1〜第4物理量p4及び基準物理量prの各々は音圧であり、第1ソース信号x1(t)、第2ソース信号x2(t)、高調波信号h[n]、高調波信号hB[n]、第1加算信号y1(t)、及び第2加算信号y2(t)の各々は、音波である。また、第1計測信号z1(t)及び第2計測信号z2(t)の各々は電気信号である。
計測装置1を振動計測に適用する場合、例えば、第1物理量p1〜第4物理量p4及び基準物理量prの各々は弾性波の変位量であり、第1ソース信号x1(t)、第2ソース信号x2(t)、高調波信号h[n]、高調波信号hB[n]、第1加算信号y1(t)、及び第2加算信号y2(t)の各々は、弾性波である。また、第1計測信号z1(t)及び第2計測信号z2(t)の各々は電気信号である。