図を参照して、本発明に係るアルデヒド類含有排水の処理システムの一形態を説明する。図において、処理システム1は、例えば、レトルト装置2(排水源の一例)から排出されるアルデヒド類含有排水をレトルト装置2において再利用するためのものであり、レトルト装置2から延びる往路100、反応部200、ろ過部300、復路400および制御部500を主に備えている。
レトルト装置2は、レトルト釜20、中継槽30および受水槽40を主に備えている。レトルト釜20は、例えば、袋詰や缶詰等の、容器に密閉充填された食品や飲料を加圧熱水により湿熱殺菌するためのものである。中継槽30は、レトルト釜20からの排水を一時的に貯留するためのものであり、レトルト釜20から延びる排水路22が連絡している。受水槽40は、レトルト釜20での熱水源および冷却水源となる水を貯えながら供給するためのものであり、水道水の補水路41と水位センサ(図示省略)を有するとともに、レトルト釜20へ延びる給水路42を有している。補水路41は、水道水の補給を制御するための開閉弁(図示省略)を有している。この開閉弁は、水位センサが作動するまで開放状態になることで水道水を補給し、水位センサの作動により閉鎖状態になることで水道水の補給を停止する。給水路42は、受水槽40に貯留された水をレトルト釜20へ送り出すための送水ポンプ43を有している。
往路100は、レトルト装置2からの排水を反応部200へ送り出すための経路であって中継槽30から延びており、中継槽30側から順に第1ポンプ110、冷却装置120および電気伝導率センサ130を有している。
第1ポンプ110は、中継槽30に貯留された排水を往路100へ送り出すためのものである。冷却装置120は、中継槽30からの排水を冷却するためのものであり、例えば、数台の密閉式クーリングタワーを並列に設置することで排水の処理効率を高めたものである。電気伝導率センサ130は、中継槽30から反応部200へ送り出される排水の電気伝導率を一定時間毎(例えば100ミリ秒毎)に連続的に測定するためのものである。
往路100の末端部は、第1供給路160、第2供給路170および第3供給路180の3系統に分岐し、反応部200に連絡している。第1供給路160、第2供給路170および第3供給路180は、それぞれ開閉弁(図示省略)を有しており、これらの開閉弁の開閉を切り換えることで、反応部200への送水を制御可能である。
反応部200は、往路100からの排水を貯留するための、容量が同じに設定された三槽の貯水槽、すなわち、第1貯水槽210、第2貯水槽220および第3貯水槽230と、排水の循環経路240とを有している。
第1貯水槽210は、第1供給路160が連絡しており、また、開閉弁(図示省略)を有する第1排出路211が延びている。第1貯水槽210は、所要量の排水が貯留されたときに作動する高水位センサS1Hと、貯留した排水が排出され、実質的に空状態となったときに作動する低水位センサS1Lとを有している。
第2貯水槽220は、第2供給路170が連絡しており、また、開閉弁(図示省略)を有する第2排出路221が延びている。第2貯水槽220は、所要量の排水が貯留されたときに作動する高水位センサS2Hと、貯留した排水が排出され、実質的に空状態となったときに作動する低水位センサS2Lとを有している。
第3貯水槽230は、第3供給路180が連絡しており、また、開閉弁(図示省略)を有する第3排出路231が延びている。第3貯水槽230は、所要量の排水が貯留されたときに作動する高水位センサS3Hと、貯留した排水が排出され、実質的に空状態となったときに作動する低水位センサS3Lとを有している。
循環経路240は、第1貯水槽210、第2貯水槽220または第3貯水槽230に貯留された排水を循環するためのものであり、第1貯水槽210から延びかつ開閉弁(図示省略)を有する第1送り流路212、第2貯水槽220から延びかつ開閉弁(図示省略)を有する第2送り流路222、および、第3貯水槽230から延びかつ開閉弁(図示省略)を有する第3送り流路232が連絡しており、また、開閉弁(図示省略)を有しかつ第1貯水槽210に連絡する第1戻り流路213、開閉弁(図示省略)を有しかつ第2貯水槽220に連絡する第2戻り流路223、および、開閉弁(図示省略)を有しかつ第3貯水槽230に連絡する第3戻り流路233に分岐している。
また、循環経路240は、循環ポンプ241、pHセンサ242、第1薬注装置243および第2薬注装置244を有している。循環ポンプ241は、第1貯水槽210、第2貯水槽220または第3貯水槽230に貯留された排水を送水するためのものである。pHセンサ242は、循環経路240を循環する排水のpHを測定するためのものである。
第1薬注装置243は、循環経路240を循環する排水に対して亜硫酸塩を添加するためのものであり、亜硫酸塩の添加量を調節可能である。第1薬注装置243により添加される亜硫酸塩は、水相においてアルデヒド類と反応することでα−ヒドロキシスルホン酸イオンを生成可能なものであれば特に限定されるものではなく、通常、アルカリ金属(好ましくはナトリウム)の亜硫酸塩や亜硫酸水素塩である。亜硫酸塩として、亜硫酸塩と亜硫酸水素塩との混合物を用いることもできる。亜硫酸塩は、通常、水溶液の状態で第1薬注装置243から添加されるのが好ましい。
第2薬注装置244は、pH調整剤の供給により循環経路240を循環する排水のpHを調節するためのものであり、循環する排水に対してpHを高めるための調整剤(例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物等。)またはpHを低めるための調整剤(例えば、塩酸や硫酸等。)を選択的に添加可能である。
ろ過部300は、反応部200からの排水をろ過処理するためのものであり、第2ポンプ311を有する連絡経路310と、逆浸透膜装置320とを主に備えている。
連絡経路310は、第1貯水槽210からの第1排出路211、第2貯水槽220からの第2排出路221および第3貯水槽230からの第3排出路231が連絡しており、逆浸透膜装置320へ延びている。第2ポンプ311は、後記する逆浸透膜モジュール321に向けて排水を圧送する加圧ポンプである。
逆浸透膜装置320は、逆浸透膜モジュール321と、排水路322とを有している。逆浸透膜モジュール321は、単一または複数の逆浸透膜エレメント(図示せず)を備えており、入口側に連絡経路310が連絡している。逆浸透膜エレメントを形成する逆浸透膜は、架橋全芳香族ポリアミドなどを用いた負荷電性のスキン層、すなわち、負に帯電しやすいスキン層を表面に有するものであり、好ましくは、操作圧力0.7MPaおよび回収率15%の条件で濃度500mg/L、pH7.0および温度25℃の塩化ナトリウム水溶液を供給したときの水透過係数が1.3×10−11〜1.7×10−11m3・m−2・s−1・Pa−1でありかつ塩除去率が99%以上の性状のものである。
ここで、操作圧力とは、日本工業規格JIS K3802:1995「膜用語」で定義される平均操作圧力をいい、ここでは、逆浸透膜モジュール321の一次側の入口圧力と一次側の出口圧力との平均値を指す。回収率とは、逆浸透膜モジュール321へ供給される水の流量(A)に対する透過水の流量(B)の割合(%)(すなわち、B/A×100)をいう。水透過係数は、透過水量(m3/s)を膜面積(m2)および有効圧力(Pa)で除した値であり、逆浸透膜での水の透過性能を示す指標である。すなわち、水透過係数は、単位有効圧力を作用させたときに単位時間に膜の単位面積を透過する水の量を意味する。有効圧力は、日本工業規格JIS K3802:1995「膜用語」で定義されており、操作圧力(平均操作圧力)から浸透圧差および二次側圧力を差し引いた圧力である。また、塩除去率は、膜を透過する前後の特定の塩類の濃度から計算される値であり、逆浸透膜での溶質の阻止性能を示す指標である。塩除去率は、逆浸透膜モジュール321に供給される水における特定の塩類の濃度(C1)および透過水における特定の塩類の濃度(C2)から、(1−C2/C1)×100により求められる。
上述のスキン層および性状を備えた逆浸透膜は、逆浸透膜エレメントとして市販されている。このような逆浸透膜エレメントとしては、例えば、東レ社製の型式名「TMG20−400」(上記条件での水透過係数が1.7×10−11m3・m−2・s−1・Pa−1)、ウンジン・ケミカル社製の型式名「RE8040−BLN」(上記条件での水透過係数が1.6×10−11m3・m−2・s−1・Pa−1)および日東電工社製「ESPA1」(上記条件での水透過係数が1.6×10−11m3・m−2・s−1・Pa−1)等が挙げられる。
排水路322は、逆浸透膜モジュール321において生成した濃縮水を逆浸透膜モジュール321から排出するための経路であり、逆浸透膜モジュール321側から帰還経路323と排水制御弁324とをこの順に備えている。
帰還経路323は、逆浸透膜モジュール321からの濃縮水の一部を連絡経路310へ帰還させるためのものであり、排水路322から分岐し、第2ポンプ311の上流側に連絡している。排水制御弁324は、逆浸透膜モジュール321からの濃縮水の廃棄量を制御し、それによって逆浸透膜モジュール321からの透過水の回収率を調節するためのものである。排水制御弁324は、流量を段階的に調節するための機構を有しており、例えば、水ガバナを組み込んだ複数の開閉弁を並列接続して構成される。また、排水制御弁324として、単一の比例制御弁を使用することもできる。
復路400は、逆浸透膜装置320からの透過水をレトルト装置2へ返送するための経路であり、逆浸透膜モジュール321の出口側から延び、レトルト装置2の受水槽40に連絡している。また、復路400は、第3薬注装置410と、残留塩素計420とを有している。第3薬注装置410は、逆浸透膜モジュール321からの透過水に対し、次亜塩素酸塩水溶液(通常は次亜塩素酸ナトリウム水溶液)を添加するためのものである。残留塩素計420は、レトルト装置2へ返送される透過水の残留塩素濃度を測定するためのものである。
制御部500は、処理システム1を所定の動作プログラムに従って運転するためのコンピュータであり、主に、中央演算処理装置、動作プログラム等を記録した読み出し専用メモリ、各種の情報を記録可能なランダムアクセスメモリおよび入出力部を備えている。入出力部の入力側には、電気伝導率センサ130、高水位センサS1H、S2HおよびS3H、低水位センサS1L、S2LおよびS3L、pHセンサ242、残留塩素計420並びに処理システム1への動作指令を入力するための操作盤510等が連絡している。一方、入出力部の出力側には、第1ポンプ110、循環ポンプ241、第2ポンプ311、反応部200の各開閉弁、第1薬注装置243、第2薬注装置244、第3薬注装置410、排水制御弁324および処理システム1の動作状況の表示器520等が連絡している。
制御部500は、電気伝導率センサ130により測定された、中継槽30から反応部200へ送り出される排水の電気伝導率Eと、測定された電気伝導率Eに基づいて設定すべき逆浸透膜モジュール321からの透過水の回収率との関係を規定した関係表を記憶している。排水の電気伝導率は、排水に含まれる硬度成分やシリカなどのスケール生成成分の濃度に比例して高まるため、電気伝導率が高い排水は逆浸透膜モジュール321において膜面にスケールを生成しやすい傾向があり、逆に、電気伝導率が低い排水は逆浸透膜モジュール321において膜面にスケールを生成しにくい傾向にある。
このため、この関係表は、電気伝導率Eが相対的に低い場合は逆浸透膜モジュール321からの透過水の回収率を相対的に高め、電気伝導率Eが相対的に高い場合は逆浸透膜モジュール321からの透過水の回収率を相対的に低めることになるよう、電気伝導率Eと、当該電気伝導率Eの場合に設定すべき回収率との関係を規定しており、例えば、次の表1のようなものである。
レトルト装置2では、受水槽40に貯留された水道水が給水路42を通じて送水ポンプ43によりレトルト釜20へ送水される。レトルト釜20では、供給された水道水による加圧熱水により食品や飲料が湿熱殺菌され、また、供給された水道水をそのまま冷却水として用いることで殺菌後の食品や飲料が冷却される。そして、加圧熱水または冷却水として用いられた、レトルト釜20からの高温の排水は、排水路22を流れ、中継槽30に貯留される。中継槽30に貯留されるレトルト釜20からの排水は、微量のアルデヒド類、通常は1〜5mg/L程度のホルムアルデヒドを含む。
中継槽30に貯留される排水のアルデヒド濃度は、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン塩酸塩(MBTH)を用いる吸光光度法(MBTH法)により測定することができる。この測定は、MBTHの添加装置と吸光光度計とを備えた測定器を排水路22や往路100に設置することで実施することができるが、中継槽30に貯留された排水を適時サンプリングして市販の測定キットに適用することで実施することもできる。排水のホルムアルデヒド濃度の測定において利用可能な測定キットとしては、例えば、株式会社共立理化学研究所の商品名「パックテスト ホルムアルデヒド」(型式「WAK−FOR」)が挙げられる。
また、レトルト釜20からの排水は、補水路41から受水槽40に供給される水道水(すなわち、新水。)に由来の硬度成分やシリカなどのスケール生成成分を含み、その濃度は、レトルト装置2の運転状況により変動し得る。レトルト装置2が連続的に稼働している場合は、通常、処理システム1による排水の処理と再利用とが進行することでスケール生成成分濃度は経時的に減少して行くが、水道水質に変動がある場合やレトルト装置2への新水の補給量が増加するような場合(例えば、比較的短時間で停止と再起動とを繰返しながらレトルト装置2を運転する場合等。)、減少傾向のスケール生成成分濃度が上昇に転じることもある。そのため、レトルト釜20からの排水のスケール生成成分濃度を電気伝導率により評価したとき、排水の電気伝導率は、スケール生成成分濃度の変動により、例えば、10〜1,000μS/cm程度の広い範囲で変動し得る。
このようにレトルト装置2からの排水においてスケール生成成分濃度が大きく変動する可能性があることから、処理システム1は、亜硫酸塩を添加する前の排水の電気伝導率Eに基づいて逆浸透膜モジュール321における透過水の回収率を調節する。したがって、処理システム1は、レトルト装置2の運転状況に応じ、その時点での最適かつ最大の回収率、すなわち、逆浸透膜モジュール321でのスケール生成を抑えることができるとともに、より多くの透過水が得られる回収率を選択することができる。
次に、図2から図6に示す動作フローチャートに基づいて、処理システム1の動作を説明する。処理システム1は、レトルト装置2と同時に運転してもよいし、中継槽30に排水が貯留されている場合はレトルト装置2の停止中に独立して運転することもできる。
処理システム1の操作者が処理システム1の動作開始スイッチをONにすると、動作プログラム(以下、単に「プログラム」と云う。)は、ステップS1において処理システム1の初期設定をする。初期設定では、反応部200において、第1供給路160の開閉弁のみを開放状態に設定し、その他の開閉弁を閉鎖状態に設定するとともに、各種のセンサを作動状態に設定する。
ステップS1の終了後、プログラムはステップS2において第1ポンプ110を作動する。これにより、中継槽30に貯留された排水は、往路100へ送水され、冷却装置120により冷却されて反応部200に到達する。このとき、電気伝導率センサ140は、往路100から反応部200へ流れる排水の電気伝導率を予め設定した時間間隔(例えば、既述の100ミリ秒間隔)で連続的に測定し、その結果を制御部500に記録する。
なお、中継槽30に貯留された高温の排水は、通常、反応部200での温度が20℃以上になり、また、逆浸透膜モジュール321でのろ過処理時の温度が十分な透過流束を確保することのできる20℃以上、かつ、逆浸透膜モジュール321に使用されているシール部材(例えば、ブラインシールリング。)の一般的な耐熱温度である35℃以下になるよう、冷却装置120により冷却するのが好ましい。
反応部200に到達した排水は、第1供給路160から第1貯水槽210に供給され、貯留される。プログラムは、次のステップS3において、第1貯水槽210の高水位センサS1H位置まで第1供給路160からの排水が貯留されたか否かを判定する。排水が高水位センサS1H位置に到達していない場合、プログラムは第1貯水槽210への送水を継続する。一方、排水が高水位センサS1H位置に到達したとき、プログラムはステップS4に移行し、開閉弁の開閉操作を実行する。具体的には、第1供給路160の開閉弁を閉鎖し、第2供給路170の開閉弁を開放する。これにより、第1貯水槽210への送水が停止し、往路100からの排水は、第2供給路170を通じて第2貯水槽220へ供給される。
ステップS4の後、プログラムは、ステップS5以降の工程と、ステップS100以降の工程とを並行して実行する。
ステップS5において、プログラムは、第2貯水槽220の高水位センサS2H位置まで第2供給路170からの排水が貯留されたか否かを判定する。排水が高水位センサS2H位置に到達していない場合、プログラムは第2貯水槽220への送水を継続する。一方、排水が高水位センサS2H位置に到達したとき、プログラムはステップS6に移行し、開閉弁の開閉操作を実行する。具体的には、第2供給路170の開閉弁を閉鎖し、第3供給路180の開閉弁を開放する。これにより、第2貯水槽220への送水が停止し、往路100からの排水は、第3供給路180を通じて第3貯水槽230へ供給される。
ステップS6の後、プログラムは、ステップS7以降の工程と、ステップS200以降の工程とを並行して実行する。
ステップS7において、プログラムは、第3貯水槽230の高水位センサS3H位置まで第3供給路180からの排水が貯留されたか否かを判定する。排水が高水位センサS3H位置に到達していない場合、プログラムは第3貯水槽230への送水を継続する。一方、排水が高水位センサS3H位置に到達したとき、プログラムはステップS8に移行し、開閉弁の開閉操作を実行する。具体的には、第3供給路180の開閉弁を閉鎖し、第1供給路160の開閉弁を開放する。これにより、第3貯水槽230への送水が停止する。
ステップS8の後、プログラムは、ステップS3以降の工程と、ステップS300以降の工程とを並行して実行する。
以上のように、プログラムがステップS3からステップS8を繰り返し実行することで、反応部200では、第1貯水槽210、第2貯水槽220および第3貯水槽230の順に往路100からの排水が繰り返し供給され、貯留される。
ステップS5以降と並行するステップS100において、プログラムは、第1貯水槽210に供給した排水の電気伝導率を記録する。具体的には、制御部500において、第1供給路160の開閉弁が開放中に往路100を流れた排水について電気伝導率センサ130が連続的に測定した電気伝導率E1’の結果の平均値(単純移動平均値、加重移動平均値または指数移動平均値等の移動平均値。)を算出し、その結果を第1貯水槽210に貯留した排水の電気伝導率E1の測定データとして記録する。
ステップS100に続くステップS101において、プログラムは、第1貯水槽210以外の貯水槽、すなわち第2貯水槽220および第3貯水槽230において後記する反応工程を実行中であるか否かを判断する。ここで、循環経路240において、第2貯水槽220の第2送り流路222および第2戻り流路223並びに第3貯水槽230の第3送り流路232および第3戻り流路233のうちのいずれかの開閉弁が開放状態のとき、プログラムは、第2貯水槽220または第3貯水槽230において反応工程を実行中であるものと判断し、待機状態になる。一方、循環経路240において、上記開閉弁の全てが閉鎖状態のとき、プログラムは、第2貯水槽220および第3貯水槽230において反応工程を実行中ではないものと判断し、ステップS102へ移行することで第1貯水槽210についての排水処理サブルーチンを実行する。
第1貯水槽210の排水処理サブルーチン(図4参照)では、ステップP101において、循環経路240の開閉弁の開閉操作を実行する。具体的には、第1送り流路212および第1戻り流路213の開閉弁を開放し、その他の開閉弁は閉鎖状態を維持する。ステップP101の完了後、プログラムはステップP102において循環ポンプ241を作動する。これにより、第1貯水槽210に貯留された排水は、第1送り流路212から循環経路240へ送られ、第1戻り流路213から第1貯水槽210に戻るように循環する。
次に、プログラムは、ステップP103において反応工程(工程A)を開始する。ここでは、第1薬注装置243を作動し、循環経路240を流れる第1貯留槽210からの排水に対して亜硫酸塩を添加するとともに、pH調整動作を開始する。pH調整動作において、プログラムは、pHセンサ242により循環経路240を流れる排水のpHを継続的に測定するとともに、pHの測定値が所定値になるよう第2薬注装置244から適宜pH調整剤を供給する。
プログラムは、続くステップP104において制御部500のタイマーTを0にリセットして計時を開始し、また、続くステップP105においてタイマーTの計時時間が所定時間T1に到達したか否かを判断する。タイマーTがT1に到達しない限り、プログラムは反応工程を継続する。
ステップP103において排水に対して添加された亜硫酸塩は、排水中に含まれるホルムアルデヒド等のアルデヒド類と反応し、α−ヒドロキシスルホン酸イオンを生成する。これにより、第1貯水槽210の排水は、生成したα−ヒドロキシスルホン酸イオンを含む加工水に変換される。
ステップP103での亜硫酸塩の添加量は、通常、排水に含まれるアルデヒド類に対し、2〜6モル当量に設定するのが好ましく、3〜5モル当量になるよう設定するのがより好ましいが、5モル当量に設定するのが特に好ましい。添加量が2モル当量未満の場合、亜硫酸塩の一部が循環中の排水に含まれる溶存酸素との反応のために消費され、排水において亜硫酸塩と未反応のアルデヒド類が残留する可能性があり、後記するろ過部300でのろ過処理において、透過水中の残留アルデヒド濃度が高まる可能性がある。逆に、添加量が6モル当量を超える場合は、排水中に未反応の亜硫酸塩が多く残留し、後記するろ過部300でのろ過処理において透過水の回収率を高めるに従い、透過水中の亜硫酸塩濃度が高まる可能性がある。ろ過処理で得られた透過水は、食品製造の各種用水に適した残留塩素濃度(通常は1〜3mgCl2/L。)に調整して再利用されるのが一般的であり、そのために次亜塩素酸ナトリウム水溶液が添加されるが、透過水中の亜硫酸塩濃度が高まると、復路400において次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を多くする必要性を生じる可能性がある。
なお、レトルト釜20からの排水に含まれるアルデヒド類は、通常、ホルムアルデヒドであり、その濃度は既述の通り1〜5mg/L程度の微量であることから、レトルト釜20からの排水に対する亜硫酸塩の添加量は、排水のホルムアルデヒドの含有量が5mg/Lであるものと仮定し、その5モル当量に固定することもできる。
また、ステップP103のpH調整動作では、循環する排水のpHが7以下になるよう調整する。亜硫酸塩とアルデヒド類とによるα−ヒドロキシスルホン酸イオンの生成反応は、可逆反応であり、酸性環境下においてα−ヒドロキシスルホン酸イオンの生成方向に進行するが、アルカリ性環境下では生成したα−ヒドロキシスルホン酸イオンからアルデヒド類が再生する。このため、排水を上記pHに調整することで、アルデヒド類をα−ヒドロキシスルホン酸イオンへ円滑に変換することができ、また、生成したα−ヒドロキシスルホン酸イオンからアルデヒド類が再生するのを抑制することができる。
但し、反応工程において、循環経路240を循環する排水のpHが6未満になる場合、後記するろ過部300でのろ過処理において回収率を高めるに従って逆浸透膜モジュール321の濃縮水側の水素イオン濃度が高まり、透過水側に水素イオンがリークしやすくなる。この場合、透過水は、pHが水道水基準の5.8を下回ることがあり、このときはレトルト装置2で再利用するためにアルカリ性薬品(例えば、水酸化ナトリウム等。)の添加によりpHを水道水基準の5.8から8.6に調整する必要性が生じる。したがって、循環経路240を循環する排水のpHは、通常、6.0以上に制御するのが好ましく、6.0以上6.5以下になるよう調整するのが特に好ましい。
ステップP103のpH調整動作は、循環経路240を循環する排水のpHをpHセンサ242により連続的に測定し、その結果に応じて第2薬注装置244から選択したpH調整剤を適宜添加する。ここで、第1薬注装置243から添加する亜硫酸塩として亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸水素塩を用いる場合、当該亜硫酸塩を添加した排水はpHが低下するため、pHを高めるための調整剤を選択して適宜添加する。また、亜硫酸塩として亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩を用いる場合、当該亜硫酸塩を添加した排水のpHは低下しにくいことから、pHを低めるための調整剤を選択して適宜添加する。なお、第1薬注装置243から添加する亜硫酸塩として亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸水素塩との混合物を用いる場合、亜硫酸塩と亜硫酸水素塩との比率を調節することで排水のpHを好ましい範囲に制御することもできる。
ステップP105においてタイマーTがT1に到達したことを確認すると、プログラムは次のステップP106に移行する。ここで、T1は、反応工程の開始からの経過時間となるものであり、排水中のアルデヒド類と添加した亜硫酸塩とを反応させるための反応時間に該当する。したがって、T1は、排水中のアルデヒド類が添加した亜硫酸塩と十分に反応可能な時間に設定する必要があり、通常は少なくとも15分に設定するのが好ましい。但し、第1貯水槽210の排水は、後記する逆浸透膜装置320でのろ過処理のために連絡経路310を移動しているときにも反応が進行するため、T1は、排水が連絡経路310を移動するのに要する時間を差し引くことで調節することもできる。
ステップP106において、プログラムは反応工程の終了動作を実行する。ここでは、循環ポンプ241を停止し、また、第1送り流路212および第1戻り流路213の開閉弁を閉鎖する。そして、続くステップP107において、プログラムは、反応部200の他の貯水槽、すなわち、第2貯水槽220および第3貯水槽230のいずれかにおいて、ろ過運転が実行されているか否かを確認する。具体的には、第2貯留槽220からの第2排出路221および第3貯水槽230からの第3排出路231のいずれかの開閉弁が開放状態であるか否かを確認する。これらのいずれかの開閉弁が開放状態のとき、プログラムは、第2貯水槽220および第3貯水槽230のいずれかにおいてろ過運転が実行されているものと判断し、プログラムはステップP107で待機する。一方、第2排出路221および第3排出路231のそれぞれの開閉弁が閉鎖状態のとき、プログラムは、第2貯水槽220および第3貯水槽230のいずれにおいてもろ過運転が実行されていないものと判断し、ステップP108へ移行する。
ステップP108において、プログラムは、ステップS100において記録した電気伝導率E1を参照し、制御部500が記憶した関係表から逆浸透膜装置320において設定すべき回収率を選択する。そして、この回収率が達成されるよう排水制御弁324を制御する。例えば、記録した電気伝導率E1が100μS/cm以上の場合、表1によると設定すべき回収率は60%であるため、逆浸透膜装置320において透過水の回収率が60%になるよう、排水制御弁324を制御する。また、記録した電気伝導率E1が10μS/cm未満の場合、表1によると設定すべき回収率は95%であるため、逆浸透膜装置320において透過水の回収率が95%になるよう、排水制御弁324を制御する。
次に、プログラムはステップP109へ移行し、ろ過工程を開始する。ここでは、第1排出路211の開閉弁を開放するとともに、第2ポンプ311を作動する。これにより、第1貯水槽210において反応工程を経た排水、すなわち加工水は、第1貯水槽210から第1排出路211を通じて連絡経路310へ流れ、逆浸透膜装置320に供給される。
逆浸透膜装置320において、連絡経路310からの加工水は、逆浸透膜モジュール321においてろ過され、α−ヒドロキシスルホン酸イオンが除去される。そして、α−ヒドロキシスルホン酸イオンが除去された加工水、すなわち逆浸透膜モジュール321の透過水は、アルデヒド類が除去された再生水として復路400へ流れ、レトルト装置2の受水槽40に貯留される。
ろ過工程において、逆浸透膜モジュール321での濃縮加工水は、排水路322から一部が帰還経路323へ流れ、一部が排水制御弁324を通じて廃棄される。帰還経路323へ流れた濃縮加工水は、連絡経路310に戻り、再度逆浸透膜モジュール321へ供給される。これにより、逆浸透膜モジュール321において第1貯水槽210から送られる加工水のクロスフローろ過が進行する。このようなクロスフローろ過の進行により、逆浸透膜モジュール321における濃縮加工水は、水素イオン濃度が上昇することからpHが低下する。例えば、反応工程でのpH調整の結果、加工水のpHが6から7である場合、濃縮加工水のpHは、逆浸透膜モジュール321での回収率に応じて5.8から6.5程度に低下する。
ステップP109でのろ過工程は、ステップP108において設定した回収率に従って実行されるため、逆浸透膜モジュール321でのスケールの生成を抑えながら、高回収率で透過水を得ることができる。
なお、ろ過工程において、逆浸透膜装置320の循環比(逆浸透膜モジュール321から流出する濃縮加工水流量(X)と、逆浸透膜モジュール321から流出する透過水流量(Y)との比(X/Y))は、排水に含まれる有機物(通常はレトルト釜20での処理対象である飲料や食品の容器に付着した有機物に由来のもの。)や濁質によるファウリングを抑制する観点から、少なくとも5になるよう設定するのが好ましい。
ろ過工程において、復路400へ流れた透過水は、残留塩素計420により残留塩素濃度が測定される。そして、第3薬注装置410は、残留塩素計420の測定値が食品製造の各種用水に適した1〜3mgCl2/Lになるよう、透過水に対して適宜次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加する。
プログラムは、ステップP109においてろ過工程を開始した後、ステップP110において第1貯水槽210の低水位センサS1Lの作動の有無を判断する。第1貯水槽210から連絡経路310へ加工水の供給が続いている間、低水位センサS1Lは作動しないため、プログラムはろ過工程を継続する。一方、低水位センサS1Lが作動したとき、第1貯水槽210は連絡経路310への加工水の供給を終えて実質的に空になったものと判断することができるため、プログラムはステップP111へ移行して第1排出路211の開閉弁を閉鎖し、第1貯水槽210からの加工水についてのろ過工程を終了する。
ステップP111の終了後、プログラムは、メインルーチンのステップS7に戻る。ステップS7において、第3貯水槽230に往路100からの排水が貯留されることで高水位センサS3Hが作動したとき、次のステップS8において第1供給路160の開閉弁が開放されることから、加工水を排出することで実質的に空状態となった第1貯水槽210は、再度、往路100からの排水が供給され、貯留される。
ステップS7以降と並行するステップS200において、プログラムは、第2貯水槽220に供給した排水の電気伝導率を記録する。具体的には、制御部500において、第2供給路170の開閉弁が開放中に往路100を流れた排水について電気伝導率センサ130が連続的に測定した電気伝導率E2’の結果の平均値(単純移動平均値、加重移動平均値または指数移動平均値等の移動平均値。)を算出し、その結果を第2貯水槽220に貯留した排水の電気伝導率E2の測定データとして記録する。
ステップS200に続くステップS201において、プログラムは、第2貯水槽220以外の貯水槽、すなわち第1貯水槽210および第3貯水槽230において反応工程を実行中であるか否かを判断する。ここで、循環経路240において、第1貯水槽210の第1送り流路212および第1戻り流路213並びに第3貯水槽230の第3送り流路232および第3戻り流路233のうちのいずれかの開閉弁が開放状態のとき、プログラムは、第1貯水槽210または第3貯水槽230において反応工程を実行中であるものと判断し、待機状態になる。一方、循環経路240において、上記開閉弁の全てが閉鎖状態のとき、プログラムは、第1貯水槽210および第3貯水槽230において反応工程を実行中ではないものと判断し、ステップS202へ移行することで第2貯水槽220についての排水処理サブルーチンを実行する。
第2貯水槽220についての排水処理サブルーチン(図5参照)では、ステップP201において、循環経路240の開閉弁の開閉操作を実行する。具体的には、第2送り流路222および第2戻り流路223の開閉弁を開放し、その他の開閉弁は閉鎖状態を維持する。ステップP201の完了後、プログラムはステップP202において循環ポンプ241を作動する。これにより、第2貯水槽220に貯留された排水は、第2送り流路222から循環経路240へ送られ、第2戻り流路223から第2貯水槽220に戻るように循環する。
次に、プログラムは、ステップP203において反応工程(工程A)を開始し、ステップP204およびステップP205を実行する。ステップP203からP205での動作内容は、それぞれ、第1貯水槽210の排水処理サブルーチン(図4参照)におけるステップP103からP105での動作内容と同じである。
ステップP205においてタイマーTがT1に到達したことを確認すると、プログラムは次のステップP206に移行する。ステップP206において、プログラムは反応工程の終了動作を実行する。ここでは、循環ポンプ241を停止し、また、第2送り流路222および第2戻り流路223の開閉弁を閉鎖する。そして、続くステップP207において、プログラムは、反応部200の他の貯水槽、すなわち、第1貯水槽210および第3貯水槽230のいずれかにおいて、ろ過運転が実行されているか否かを確認する。具体的には、第1貯留槽210からの第1排出路211および第3貯水槽230からの第3排出路231のいずれかの開閉弁が開放状態であるか否かを確認する。これらのいずれかの開閉弁が開放状態のとき、プログラムは、第1貯水槽210および第3貯水槽230のいずれかにおいてろ過運転が実行されているものと判断し、プログラムはステップP207で待機する。一方、第1排出路211および第3排出路231のそれぞれの開閉弁が閉鎖状態のとき、プログラムは、第1貯水槽210および第3貯水槽230のいずれにおいてもろ過運転が実行されていないものと判断し、ステップP208へ移行する。
ステップP208において、プログラムは、ステップS200において記録した電気伝導率E2を参照し、制御部500が記憶した関係表から逆浸透膜装置320において設定すべき回収率を選択する。そして、この回収率が達成されるよう排水制御弁324を制御する。
次に、プログラムはステップP209へ移行し、ろ過工程を開始する。第1貯水槽210についての排水処理サブルーチンのステップP109において既に第2ポンプ311を作動させているため、ここでは第2排出路221の開閉弁を開放する。これにより、逆浸透膜装置320に対し、第1貯水槽210からの加工水に続けて第2貯水槽220から加工水が供給されるようになり、この加工水は逆浸透膜装置320においてろ過される。
ステップP209でのろ過工程は、ステップP208において設定した回収率に従って実行されるため、逆浸透膜モジュール321でのスケールの生成を抑えながら、高回収率で第2貯水槽220からの加工水の透過水を得ることができる。
プログラムは、ステップP209においてろ過工程を開始した後、ステップP210において第2貯水槽220の低水位センサS2Lの作動の有無を判断する。第2貯水槽220から連絡経路310へ加工水の供給が続いている間、低水位センサS2Lは作動しないため、プログラムはろ過工程を継続する。一方、低水位センサS2Lが作動したとき、第2貯水槽220は連絡経路310への加工水の供給を終えて実質的に空になったものと判断することができるため、プログラムはステップP211へ移行して第2排出路221の開閉弁を閉鎖し、第2貯水槽220からの加工水についてのろ過工程を終了する。
ステップP211の終了後、プログラムは、メインルーチンのステップS3に戻る。ステップS3において、第1貯水槽210に往路100からの排水が貯留されることで高水位センサS1Hが作動したとき、次のステップS4において第2供給路170の開閉弁が開放されることから、加工水を排出することで実質的に空状態となった第2貯水槽220は、再度、往路100からの排水が供給され、貯留される。
ステップS3以降と並行するステップS300において、プログラムは、第3貯水槽230に供給した排水の電気伝導率を記録する。具体的には、制御部500において、第3供給路180の開閉弁が開放中に往路100を流れた排水について電気伝導率センサ130が連続的に測定した電気伝導率E3’の結果の平均値(単純移動平均値、加重移動平均値または指数移動平均値等の移動平均値。)を算出し、その結果を第3貯水槽230に貯留した排水の電気伝導率E3の測定データとして記録する。
ステップS300に続くステップS301において、プログラムは、第3貯水槽230以外の貯水槽、すなわち第1貯水槽210および第2貯水槽220において反応工程を実行中であるか否かを判断する。ここで、循環経路240において、第1貯水槽210の第1送り流路212および第1戻り流路213並びに第2貯水槽220の第2送り流路222および第2戻り流路223のうちのいずれかの開閉弁が開放状態のとき、プログラムは、第1貯水槽210または第2貯水槽220において反応工程を実行中であるものと判断し、待機状態になる。一方、循環経路240において、上記開閉弁の全てが閉鎖状態のとき、プログラムは、第1貯水槽210および第2貯水槽220において反応工程を実行中ではないものと判断し、ステップS302へ移行することで第3貯水槽230についての排水処理サブルーチンを実行する。
第3貯水槽230についての排水処理サブルーチン(図6参照)では、ステップP301において、循環経路240の開閉弁の開閉操作を実行する。具体的には、第3送り流路232および第3戻り流路233の開閉弁を開放し、その他の開閉弁は閉鎖状態を維持する。ステップP301の完了後、プログラムはステップP302において循環ポンプ241を作動する。これにより、第3貯水槽230に貯留された排水は、第3送り流路232から循環経路240へ送られ、第3戻り流路233から第3貯水槽230に戻るように循環する。
次に、プログラムは、ステップP303において反応工程(工程A)を開始し、ステップP304およびステップP305を実行する。ステップP303からP305での動作内容は、それぞれ、第1貯水槽210の排水処理サブルーチン(図4参照)におけるステップP103からP105での動作内容と同じである。
ステップP305においてタイマーTがT1に到達したことを確認すると、プログラムは次のステップP306に移行する。ステップP306において、プログラムは反応工程の終了動作を実行する。ここでは、循環ポンプ241を停止し、また、第3送り流路232および第3戻り流路233の開閉弁を閉鎖する。そして、続くステップP307において、プログラムは、反応部200の他の貯水槽、すなわち、第1貯水槽210および第2貯水槽220のいずれかにおいて、ろ過運転が実行されているか否かを確認する。具体的には、第1貯留槽210からの第1排出路211および第2貯水槽220からの第2排出路221のいずれかの開閉弁が開放状態であるか否かを確認する。これらのいずれかの開閉弁が開放状態のとき、プログラムは、第1貯水槽210および第2貯水槽220のいずれかにおいてろ過運転が実行されているものと判断し、プログラムはステップP307で待機する。一方、第1排出路211および第2排出路221のそれぞれの開閉弁が閉鎖状態のとき、プログラムは、第1貯水槽210および第2貯水槽220のいずれにおいてもろ過運転が実行されていないものと判断し、ステップP308へ移行する。
ステップP308において、プログラムは、ステップS300において記録した電気伝導率E3を参照し、制御部500が記憶した関係表から逆浸透膜装置320において設定すべき回収率を選択する。そして、この回収率が達成されるよう排水制御弁324を制御する。
次に、プログラムはステップP309へ移行し、ろ過工程を開始する。第1貯水槽210についての排水処理サブルーチンのステップP109において既に第2ポンプ311を作動させているため、ここでは第3排出路231の開閉弁を開放する。これにより、逆浸透膜装置320に対し、第2貯水槽220からの加工水に続けて第3貯水槽230から加工水が供給されるようになり、この加工水は逆浸透膜装置320においてろ過される。
ステップP309でのろ過工程は、ステップP308において設定した回収率に従って実行されるため、逆浸透膜モジュール321でのスケールの生成を抑えながら、高回収率で第3貯水槽230からの加工水の透過水を得ることができる。
プログラムは、ステップP309においてろ過工程を開始した後、ステップP310において第3貯水槽230の低水位センサS3Lの作動の有無を判断する。第3貯水槽230から連絡経路310へ加工水の供給が続いている間、低水位センサS3Lは作動しないため、プログラムはろ過工程を継続する。一方、低水位センサS3Lが作動したとき、第3貯水槽230は連絡経路310への加工水の供給を終えて実質的に空になったものと判断することができるため、プログラムはステップP311へ移行して第3排出路231の開閉弁を閉鎖し、第3貯水槽230からの加工水についてのろ過工程を終了する。
ステップP311の終了後、プログラムは、メインルーチンのステップS5に戻る。ステップS5において、第2貯水槽220に往路100からの排水が貯留されることで高水位センサS2Hが作動したとき、次のステップS6において第3供給路180の開閉弁が開放されることから、加工水を排出することで実質的に空状態となった第3貯水槽230は、再度、往路100からの排水が供給され、貯留される。
以上のように、処理システム1において、反応部200では、第1貯水槽210、第2貯水槽220および第3貯水槽230の順に往路100からの排水が供給され、各槽に貯留された排水は、同じ順に反応工程が適用されて加工水に変換される。また、各槽の加工水は、同じ順にろ過部300へ供給され、ろ過工程が適用される。そして、ろ過部300へ加工水を順次供給することで実質的に空になる各槽は、再度、同じ順に往路100から排水が供給されて反応工程を繰返し、同じ順にろ過部300への加工水の供給を繰り返す。したがって、この処理システム1は、レトルト装置2からのアルデヒド類含有排水に対して連続的に反応工程およびろ過工程を適用し、これによって連続的にろ過部300からの透過水をレトルト装置2に戻すことができるため、レトルト装置2において補水路41からの水道水(すなわち、新水。)の消費を効果的に抑えることができる。
しかも、この処理システム1は、第1貯水槽210、第2貯水槽220および第3貯水槽230の各槽にそれぞれ供給される排水の電気伝導率E1、E2およびE3を測定し、ろ過部300でのろ過工程においてこれらの電気伝導率E1、E2およびE3毎に回収率を変更することから、逆浸透膜モジュール321においてスケールの生成を抑えながら高い回収率で透過水を得ることができる。したがって、処理システム1は、ろ過部300でのスケール生成を抑えるためにレトルト装置2からのアルデヒド類含有排水を必要以上に廃棄する必要がなく、当該アルデヒド類含有排水を効率的に再利用することができる。
なお、この実施の形態に係る処理システム1は、上述の動作プログラムに従い反応部200からの加工水をろ過部300に対して途切れなく供給できるようにするため、次の条件を達成するよう、往路100からの反応部200への送水能力、反応部200の各貯水槽210、220および230の容量、および、反応部200からろ過部300への送水能力等を設定する。
・第1貯水槽210からの加工水のろ過工程の途上で第2貯水槽220に貯留された排水についての反応工程が完了し、かつ、第3貯水槽230への排水供給が完了。
・第2貯水槽220からの加工水のろ過工程の途上で第3貯水槽230に貯留された排水についての反応工程が完了し、かつ、第1貯水槽210への排水供給が完了。
・第3貯水槽230からの加工水のろ過工程の途上で第1貯水槽210に貯留された排水についての反応工程が完了し、かつ、第2貯水槽220への排水供給が完了。
上述の実施の形態に係る処理システム1において、逆浸透膜モジュール321の操作圧力を0.6MPa〜1MPaに設定し、かつ、排水の電気伝導率に基づいて透過水の回収率を60〜95%の範囲で調節しながらホルムアルデヒド濃度が1〜5mg/Lの排水を処理すると、通常、レトルト装置2での再利用に適した水道水基準に適合する透過水、すなわち、残留ホルムアルデヒド濃度が0.08mg/L以下でありかつ全有機炭素量が3.0mg/L以下の透過水が得られる。
上述の実施の形態に係る処理システム1は、反応部200に貯水槽を三槽設け、これに順次排水を貯留することで反応工程を実行しているが、反応部200の貯水槽は二槽であってもよいし、四槽以上であってもよい。また、再生処理が必要な排水量が限定的な場合、反応部200は当該排水量に対応する一つの貯水槽のみを有するものであってもよい。
また、反応部200の各貯水槽に貯留した、反応工程を適用前のそれぞれの排水について電気伝導率Eを測定し、この電気伝導率Eに基づいてろ過部300での回収率を設定するように変更することもできる。
さらに、制御部500は、電気伝導率Eと、その値に対して設定すべき回収率との関係を表わす関数式を記憶し、この関数式を使用してろ過部300での回収率を設定するように変更することもできる。
さらに、処理システム1は、レトルト装置2以外の排水源、例えば、容器に充填された食品や飲料を低温殺菌処理するためのパストライズ装置や食品や飲料の容器洗浄装置からの排水、或いは、その他のアルデヒド類含有排水の発生源からの排水を再利用する場合においても同様に用いることができる。
[実験例]
上述の実施の形態に係る処理システム1を用い、次の性状のホルムアルデヒド含有排水を処理した。
ホルムアルデヒド濃度:1〜5mg/L
pH:6.5〜7.5(水道水の水質基準内。)
電気伝導度:150μS/cm程度(受水槽40に補給される新水の値。)
温度:60℃(但し、冷却装置120により30℃に冷却。)
処理システム1の運転条件および処理結果等を表2に示す。
表2によると、反応工程でのpH調整値が7を超える実験例4および5は、透過水において水道水基準の0.08mg/Lを超えるホルムアルデヒドが残留することがわかる。