以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
図1は、本発明に係る地上移動体1の一例を模式的に示す外観側面図である。図1に例示した本発明に係る地上移動体1は、ハンドル型電動車椅子等の搭乗可能な小型の車両を用いて構成される。地上移動体1の前部には、接地点から所定の高さ、例えば60〜70cmとなる位置に計測装置3が取り付けられている。計測装置3は、光波、電波等の電磁波を発信する。発信された電磁波は、障害物、路面、溝等の反射体に反射され反射波となる。計測装置3は、反射波を受信し、反射波を発信してから受信するまでの時間等の受信状況に基づいて、反射体までの距離を測定する。なお、本願では、電磁波としてレーザ光線を使用するレーザスキャナを計測装置3として用いる形態について説明するが、本発明に係る計測装置3は、レーザスキャナに限定されるものではない。また、レーザスキャナを用いた計測装置3は、電磁波の発信方法として、レーザをパルス波として断続的に発光させる発信方法にて制御するようにしても良く、レーザを連続して発光させる発信方法にて制御するようにしても良い。
計測装置3は、取付位置から斜め下方の反射体までの距離を計測すべく俯角θが30°等の所定角度をなすように取り付けられている。取り付けられた計測装置3は、斜め下方の反射体までの距離の計測を、前方を中心として周囲を走査するように取り付けられている。即ち、計測装置3は、接地点より高い所定高さから、走査面の俯角θが所定角度をなすように走査して斜め下方の反射体までの距離を計測するように構成されている。周囲の走査は、例えば、後述する発信部及び受信部を回転させることにより行われるが、回転軸は、地上移動体1の接地面に対して垂直方向となるように構成しても、発信方向に対して直交するように構成しても良い。また、回転以外の方法で周囲を走査するようにしても良い。さらに、斜め下方だけでなく、計測装置3の下方、即ち真下の反射体までの距離を計測可能に取り付けるようにしても良い。
図1に示すように、地上移動体1が進行方向Fに向けて移動する場合、地上移動体1の移動に伴い計測装置3も進行方向Fに向けて移動する。この場合、進行方向における路面が平坦な道路であれば、計測される距離は略一定であるが、進行方向に階段、溝等の段差、即ち凹部が存在する場合、計測される距離が長くなる。本願に示す例では、図1に示すように、距離に応じた安全領域As、警戒領域Aa及び危険領域Adを定義することとした。即ち、計測した距離が、どの領域内に入っているかによって、安全領域As、警戒領域Aa及び危険領域Adを判定する。安全領域Asは、計測した距離が閾値となる第1の基準値未満の領域であり、警戒領域Aaは計測した距離が閾値となる第2の基準値未満で、かつ第1の基準値以上の領域であり、そして、危険領域Adは第2の基準値以上の領域である。なお、第2の基準値は、第1の基準値より大きい値となる。ここでは、説明の便宜上、第1の基準値及び第2の基準値と称しているが、複数段階の基準値を設けて複数の領域を設定することを意図したものであり、例示した基準値及び領域の設定方法に限定されることなく適宜設定することが可能である。また、これらの基準値は必ずしも距離そのものを示す情報である必要は無く、領域の設定のために換算可能な角度、幅等の他の情報を用いて基準値とみなすことが可能である。このように本発明に係る地上移動体1は、斜め下方を走査し、斜め下方に位置する反射体までの距離が長い場合に、凹部が存在し、危険であると判定する。
図2は、本発明に係る地上移動体1の一例を模式的に示す外観正面図である。図2は、地上移動体1が備える計測装置3による距離の測定範囲を正面から模式的に示している。計測装置3は、地上移動体1の前方を、図2における左右方向(地上移動体1の進行方向と直交する方向)に走査しており、正面領域Aだけでなく、側方領域Bについても反射体までの距離を測定している。従って、地上移動体1は、正面方向(進行方向)だけでなく、側方に位置する側溝等の凹部についても、安全領域As、警戒領域Aa、危険領域Adの判定をすることができる。
図3は、本発明に係る地上移動体1が備える計測装置3の計測領域の設定例を示す説明図である。図3は、距離を計測する範囲と設定された領域との関係を平面図として示している。距離を計測する対象となる正面方向の領域(正面領域A)は、計測装置3の走査角度θ3の範囲内において、進行方向F側の中心角の角度が正面走査角度(第1走査角度)θ1の範囲内の領域として設定される。また、側方の領域(側方領域B)は、計測装置3の走査角度θ3の範囲内において、進行方向F側の中心角の角度が、側方走査角度(第2走査角度)θ2の範囲内で、かつ正面走査角度θ1より大きい角度に位置する領域として設定される。なお、側方走査角度θ2は、正面走査角度θ1より大きい値が設定される。また、正面領域A及び側方領域Bは一部の領域が重複するように設定することも可能である。
正面領域Aにおいては、計測装置3からの距離に対して、安全領域As、警戒領域Aa及び危険領域Adが設定されている。また、側方領域Bにおいても、計測装置3からの距離に対して、安全領域As、警戒領域Aa及び危険領域Adが設定されている。正面領域Aと側方領域Bの安全領域As、警戒領域Aa及び危険領域Adは、それぞれ独立して設定することができるので、同じ距離に基づく領域であっても良く、また、異なる距離に基づく領域であっても良い。なお、ここでは、正面領域A及び側方領域Bのいずれにおいても安全領域As、警戒領域Aa及び危険領域Adの3つの領域を設定しているが、2つの領域であっても良く、また4以上の領域であっても良い。また、側方領域Bよりも凹部の影響を受けやすい正面領域Aにおいては、警戒領域Aaを設けずに、安全領域Asより遠方は危険領域Adであるように設定しても良い。
さらに、計測装置3の走査角度θ3の範囲内において、障害物が存在すると判定する領域を障害物検知領域Cとして設定することができる。障害物検知領域Cは、障害物基準値により設定される領域であり、反射体までの距離が障害物基準値未満の場合、障害物が存在すると判定する。
次に、本発明に係る地上移動体1等の各種装置の構成について説明する。図4は、本発明に係る地上移動体の構成例を示すブロック図である。地上移動体1は、ハンドル型電動車椅子等の移動体本体2に計測装置3を取り付けて構成される。
移動体本体2は、ハンドル等の操舵機構、エンジン等の動力機構等の様々な機構を備えている。そして、本発明に係る構成として、状況検出部20、出力部21、入力部22、制御部23等の各種機構を備えている。
状況検出部20は、移動体本体2の移動速度、操舵角、操作等の状況を検出する各種センサ等の機構であり、検出した状況を示す速度情報、操舵角情報、操作情報等の情報を出力部21へ出力する。状況検出部20が検出する操作には、加速に要するアクセルに対する操作、進行方向を切り替える前後進切替操作、後述する停止制御等の制御状態を解除する解除スイッチに対する操作等の様々な操作が含まれる。
出力部21は、状況検出部20から受け付けた速度情報、操舵角情報、操作情報等の情報を計測装置3へ出力する機構である。
入力部22は、計測装置3から制御信号等の各種情報を受け付ける機構であり、受け付けた情報は制御部23へ出力される。
制御部23は、計測装置3から入力部22を介して受け付けた情報に基づいて、アクセル制御、最大速度制御、ブレーキ制御、警報報知制御等の移動に関する各種制御を行う機構である。
計測装置3は、装置全体を制御する制御部30、反射体までの距離を計測する距離計測部31、外部の装置に接続可能な接続部32等の各種機構を備えている。
制御部30は、LSI(Large Scale IC)、VLSI(Very Large Scale IC)等の集積回路を用いて構成される制御回路であり、半導体メモリ等の記録部30aを備えており、記録部30aに記録されている各種プログラム及びデータ等の情報を読み取り、様々な制御を実行する。記録部30aは、制御部30にて実行される各種プログラムと、安全領域As、警戒領域Aa、危険領域Ad、警戒領域Aaに係る基準値、危険領域Adに係る基準値、正面走査角度、側方走査角度等の各種設定値を含む様々なデータとを記録している。なお、各種設定値は、それぞれ1つの値のみが記録されているのではなく、初期値を含め複数の値が記録されており、制御に用いる設定値として適宜選択することが可能である。
距離計測部31は、電磁波を発信する発信部31a、反射体にて反射された電磁波を受信する受信部31b、走査角度を制御する角度制御部31c、電磁波の受信状況に基づいて反射体までの距離を演算する演算部31d等の各種機構を備えている。
接続部32は、USB(Universal Serial Bus)等の接続規格に基づくコネクタ及び付属回路にて構成される機構であり、USBコード等の各種通信線を介して外部の装置に接続し、外部の装置と各種情報を送受信することができる。例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを用いて構成される設定装置4(図5参照)と接続し、設定装置4により、計測装置3の各種設定を行うことができる。
図5は、本発明に係る地上移動体1に用いられる計測装置3及び計測装置3に接続される設定装置4の構成例を示すブロック図である。図5は、地上移動体1から取り外した計測装置3に設定装置4を接続した状態を示している。計測装置3には、通信線を介して設定装置4が接続されている。設定装置4は、制御部40、記録部41、入力部42、表示部43、接続部44等の各種機構を備えている。
制御部40は、演算回路、レジスタ回路等の各種回路を備え、装置内の各部を制御する処理を実行するCPU(Central Processing Unit )等の機構である。
記録部41は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリ、各種RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを用いて構成される機構であり、本発明に係る設定プログラム41a等のプログラム及びデータ等の各種情報が記録されている。
入力部42は、マンマシンインターフェースとして様々な入力を受け付けるキーボード、マウス、タッチパネル等の機構である。
表示部43は、各種情報を表示する液晶パネル等の機構である。なお、入力部42及び表示部43を一体化させた液晶タッチパネルを用いるようにしても良い。
そして、パーソナルコンピュータ等のコンピュータは、記録部41に記録された設定プログラム41a等の各種プログラムを読み取り、制御部40の制御により実行することにより、設定装置4として機能する。
図6は、本発明に係る地上移動体1に用いられる計測装置3に各種設定値を入力する際の表示画面の一例を示す説明図である。図6は、設定プログラム41aを実行して設定装置4として機能するコンピュータに、計測装置3を接続し、計測装置3の各種設定値を設定する際に、設定装置4の表示部43に表示される表示画面の一例を示している。
表示画面の左上部には、設定値となる数値の入力欄、各種領域の有無を設定する入力欄、警戒領域Aa又は危険領域Adであると判定した場合における危険に係る報知、制御等の方法を示す危険対応の方法を設定する入力欄等の様々な入力欄が表示される。そして、使用者は、例えば、数値の入力欄に、正面走査角度、側方走査角度、正面領域Aの安全領域As、警戒領域Aa、危険領域Adを決定する基準値、側方領域Bの安全領域As、警戒領域Aa、危険領域Adを決定する基準値等の各種設定値を入力する。なお、各種角度の設定値は角度そのものを示す数値を入力するようにしても良いが、後述するように角度に換算可能な角度以外の数値等の情報を入力するようにしても良い。即ち、各種角度の設定値は、角度に係る情報として入力及び設定することが可能である。各種基準値についても同様であり、基準値に係る情報として入力及び設定することが可能である。
表示画面の中央部には計測装置3の計測領域の画像が表示されている。図6では、距離を計測する範囲と設定された領域との関係を平面図として表示した例を示している。計測領域は、正面領域A、側方領域B及び障害物検知領域Cを区分して示している。また、正面領域A内は、安全領域A(As)及び警戒領域A(Aa)が区分して示されており、警戒領域A(Aa)より遠方は危険領域A(Ad)となる。さらに、側方領域B内は、安全領域B(As)及び警戒領域B(Aa)が区分して示されており、警戒領域B(Aa)より遠方は危険領域B(Ad)となる。
また、各領域は、様々な数値により定義されている。図6に示す例では、各種領域を示す正面方向の角度として、正面領域Aの角度を示す正面走査角度θ1、側方領域Bの角度に関する側方走査角度θ2及び障害物検知領域Cの角度を示す障害物検知角度θ3が定義されている。なお、側方領域Bは、側方走査角度θ2の範囲内で、かつ正面走査角度θ1にて規定される正面領域Aを除く両端の領域となる。また、図6では、各領域の中心角を領域の角度として定義した例を示しているが、進行方向(正面方向)から領域の縁部までの角度により定義する等、適宜設定することが可能である。その場合、側方領域Bは、正面領域Aの縁部からの角度により定義することも可能である。また、例えば、正面領域Aの安全領域A(As)は、進行方向における安全領域A(As)までの正面領域深さ(距離)D1及び正面領域深さD1における進行方向と直交する方向における正面領域幅W1により定義されている。なお、正面領域深さD1及び正面領域幅W1が規定されれば、これらの数値を正面走査角度θ1に換算することができる。即ち、正面領域深さD1及び正面領域幅W1は、前述の角度に係る情報として入力及び設定することができる。他にも、座標、面積等の様々な種類の値を適宜組み合わせて正面走査角度θ1を規定することができる。また、側方領域Bの安全領域B(As)についても、当該領域の外縁における安全領域B(As)までの側方領域深さ(距離)D2及び側方領域深さD2における進行方向と直角をなす方向における側方領域幅W2により定義されており、これらの数値を、角度に係る情報として入力及び設定することができる。
計測領域の画像は、数値を入力して設定することにより、設定値に応じて画像が適宜変化するようになっている。また、計測領域の画像そのものを変化させる入力操作を行い、入力及び設定する数値を決定することも可能である。
なお、図6に例示した平面図は、距離を計測する斜め下の方向が縦方向(以下、Y軸方向という)となる座標系を用いて表示しているが、計測装置3が取り付けられている高さ、走査面の俯角等の情報を入力することにより、地上移動体1の接地面(水平面)をY軸方向とする座標系に投影して表示する等、適宜設定することが可能である。
図7A及び図7Bは、本発明に係る地上移動体1に用いられる計測装置3に各種設定値を入力する際の表示画面の座標系を説明する説明図である。図7Aは、地上移動体1を側方から示している。図6に例示した平面図は、距離の計測方向であるY1方向がY軸方向となる座標系にて表示している。これに対して、地上移動体1の接地面上で進行方向に向かうY2方向をY軸方向とした座標系にて平面図を表示するように設定することも可能である。図7Bは、それぞれの座標系で表示した領域の例を示している。なお、図7Bは、図7Aとの比較を容易にすべく、Y軸方向が左側を向くように示している。例えば、Y1方向をY軸とした座標系で表示される正面領域A(Y1)は、Y2方向をY軸とした座標系では正面領域A(Y2)として表示される。また、例えば、Y1方向をY軸とした座標系で表示される障害物検知領域C(Y1)は、Y2方向をY軸とした座標系では障害物検知領域C(Y2)として表示される。Y2方向をY軸とした座標系で各種設定値を設定する場合、地上移動体1から進行方向における距離を認識しながら各種領域を設定することが可能となる。このように、表示する座標系は適宜設定することが可能であり、例示した座標系以外にも、側方から表示する等、適宜設定することが可能である。また、このような画面のパターンを複数登録しておき、適宜切り替えることも可能である。
このように構成された計測装置3及び設定装置4の処理について説明する。図8Aは、本発明に係る地上移動体1に用いられる計測装置3の設定値を設定する設定装置4の設定値入力処理の一例を示すフローチャートである。設定装置4は、記録部41に記録している設定プログラム41aを実行する制御部40の制御により、設定値入力処理を実行する。設定装置4が備える制御部40は、図6に示した表示画面を表示し、設定値となる数値、画像等の情報の入力を入力部42から受け付ける(S101)。
制御部40は、入力された設定値に係る情報に基づいて設定範囲を表示部43に表示する(S102)。使用者は、表示された内容を確認し、表示された内容での設定の可否に係る操作を行う。操作を受け付け、制御部40は、設定値の設定を行うか否かを判定する(S103)。
ステップS103において、設定値の設定を行うと判定した場合(S103:YES)、制御部40は、入力を受け付けている設定値に係る情報を接続部44から通信線を介して計測装置3へ送信する(S104)。
ステップS103において、設定値の設定を行わないと判定した場合(S103:NO)、制御部40は、ステップS101へ戻り、以降の処理を繰り返す。
このようにして、設定装置4は設定入力処理を実行する。
図8Bは、本発明に係る地上移動体1に用いられる計測装置3の設定値設定処理の一例を示すフローチャートである。計測装置3は、制御部30の制御により、接続部32にて設定値に係る情報を受信し(S201)、受信した設定値に係る情報を記録部30aに記録する(S202)。記録部30aに記録された設定値に係る情報は、適宜選択され、設定値として、計測装置3の処理に用いられる。設定値としての処理において、適宜、数値変換、角度換算等の処理が行われ、計測装置3にて取扱可能な数値となる。
このようにして、計測装置3は設定値設定処理を実行する。
以上のようにして、設定値に係る情報が設定された計測装置3を備える地上移動体1の処理について説明する。図9は、本発明に係る地上移動体1にて実行される状況検知処理の一例を示すフローチャートである。地上移動体1は、計測装置3により、周囲を走査し、反射体にて反射された電磁波の受信状況に基づいて距離を計測し、計測した距離に基づいて、周囲の状況を検知する状況検知処理を実行する。地上移動体1は、計測装置3の制御部30の制御により、計測した距離に係る距離情報を取得する(S301)。ステップS301にて取得する距離情報には、反射体までの距離だけでなく、必要に応じて当該距離に係る角度、対応する各種領域等の情報が含まれている。
制御部30は、取得した距離情報に基づいて正面領域凹部検知処理を実行する(S302)。正面領域凹部検知処理とは、検知した反射体が前述の正面領域Aにおける安全領域As、警戒領域Aa及び危険領域Adのうちのいずれの領域に位置するかを判定し、判定した領域に応じた対応を行う処理である。正面領域凹部検知処理の具体的な内容については後述する。
さらに、制御部30は、取得した距離情報に基づいて側方領域凹部検知処理を実行する(S303)。側方領域凹部検知処理とは、検知した反射体が前述の側方領域Bにおける安全領域As、警戒領域Aa及び危険領域Adのうちのいずれの領域に位置するかを検知し、検知した領域に応じた対応を行う処理である。側方領域凹部検知処理の具体的な内容については後述する。
さらに、制御部30は、取得した距離情報に基づいて障害物検知処理を実行する(S304)。障害物検知処理とは、前述の障害物検知領域Cに反射体が存在するか否かを検知する処理である。障害物検知処理の具体的な内容については後述する。
このようにして、地上移動体1の状況検知処理が繰り返し実行される。
図10は、本発明に係る地上移動体1にて実行される正面領域凹部検知処理の一例を示すフローチャートである。図10を用いて示す正面領域凹部検知処理は、図9に示した状況検知処理のステップS302として実行される正面領域凹部検知処理に対応している。地上移動体1は、計測装置3の制御部30の制御により、所得した距離情報に基づいて、反射体が正面領域Aにおける危険領域Adの範囲内であるか否かを判定する(S401)。ステップS401において、正面領域A及び危険領域Adは、記録部30aに設定値として記録されている情報に基づいて規定される。
ステップS401において、正面領域Aにおける危険領域Adの範囲内であると判定した場合(S401:YES)、制御部30は、危険領域Adとなる凹部の幅を積算し(S402)、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であるか否かを判定する(S403)。ステップS403の除外値は、記録部30aに設定値として記録されている情報に基づいて規定される。
計測装置3は、地上移動体1の周囲を走査しながら反射体までの距離を連続的に計測する。従って、危険領域Adと判定する凹部について、地上移動体1の進行方向に直交する方向の幅が一定以上である場合、連続して危険領域Adであると判定することになる。そこで、凹部の幅の基準を除外値として設定しておくことにより、地上移動体1は、危険領域Adであるとの判定から積算して求められる凹部の幅が、除外値以上である場合、除外値として規定される幅以上の幅を有する凹部が存在すると判断することが可能となる。進行方向に凹部が存在したとしても、その幅が、除外値として規定される幅、例えば、タイヤの幅未満である場合、危険性は低いと考えられるので、危険を回避するための危険対応処理の対象から除外することができる。また、タイヤの幅に基づく幅以外に適宜除外値を設定することにより、例えば、グレーチング、格子、網等の狭い幅の凹部を危険対応処理の対象から除外することが可能となる。なお、凹部の幅は、例えば、計測装置3から発信されるレーザのピッチ及び反射体までの距離等の情報に基づいて算出される。
ステップS403において、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であると判定した場合(S403:YES)、反射体が正面領域Aにおける危険領域Adの範囲内に位置すると判断し、制御部30は、危険対応処理を実行する(S404)。
ステップS404にて実行する危険対応処理とは、地上移動体1の搭乗者に対する報知、地上移動体1の移動の制御等の処理である。搭乗者に対する報知とは、危険状況を示す警報音の鳴動、表示、音声出力等の各種処理である。地上移動体1の移動の制御とは、アクセル制御、最大速度制御、ブレーキ制御等の各種処理である。地上移動体1の制御は、計測装置3から制御に係る制御信号を移動体本体2へ出力し、入力部22にて制御信号を受け付けた移動体本体2が、制御信号に基づき制御部23を制御することにより行われる。即ち、計測装置3の制御部30は、制御信号を移動体本体2へ出力することにより、移動体本体2の制御部23に危険対応処理を実行させる。なお、危険領域Adと判定される凹部が一定以上の幅を有すると判定したステップS404における危険対応処理としては、危険状況を搭乗者に報知し、更に地上移動体1を停止する制御が行われる。
そして、地上移動体1は、正面領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。
ステップS403において、連続積算回数が除外値未満であると判定した場合(S403:NO)、制御部30は、反射体が正面領域Aにおける危険領域Adの範囲内に位置すると判断するが、危険対応処理は実行せずに、正面領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。なお、危険対応処理を全く行わないのでは無く、注意灯の点灯等の軽微な処理だけとするようにしてもよい。
ステップS401において、正面領域Aにおける危険領域Adの範囲内ではないと判定した場合(S401:NO)、制御部30は、正面領域Aが警戒領域Aaの範囲内であるか否かを判定する(S405)。
ステップS405において、正面領域Aにおける警戒領域Aaの範囲内であると判定した場合(S405:YES)、制御部30は、警戒領域Aaとなる凹部の幅を積算し(S406)、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であるか否かを判定する(S407)。なお、連続して積算する凹部の幅は、危険領域Adの場合及び警戒領域Aaの場合で、個別に積算して算出してもよく、併せて積算して算出しても良い。個別に積算を行う場合、連続積算幅の初期化の時期は適宜設定することが可能である。即ち、深い凹部と浅い凹部が連続する場合、どのように判定するかを適宜設定することが可能である。また、除外値を共通の設定とすることも、異なる設定とすることも可能である。
ステップS407において、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であると判定した場合(S407:YES)、反射体が、正面領域Aにおける警戒領域Aaの範囲内に位置すると判断し、制御部30は、危険対応処理を実行する(S408)。なお、警戒領域Aaと判定される凹部が一定以上の幅を有すると判定したステップS408における危険対応処理としては、危険状況を搭乗者に報知し、更に地上移動体1を減速し低速走行させる制御が行われる。
そして、地上移動体1は、正面領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。
ステップS405において、正面領域Aにおける警戒領域Aaの範囲内ではないと判定した場合(S405:NO)、反射体が正面領域Aにおける安全領域Asの範囲内に位置すると判断して、正面領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。このとき、ステップS402及びS406にて積算した凹部の連続積算幅は初期化される。
ステップS407において、連続して積算した凹部の幅が除外値未満であると判定した場合(S407:NO)、制御部30は、反射体が正面領域Aにおける警戒領域Aaの範囲内に位置すると判断するが、危険対応処理は実行せずに、正面領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。なお、危険対応処理を全く行わないのでは無く、注意灯の点灯等の軽微な処理だけとするようにしてもよい。
ステップS404及びS408では、報知及び制御の双方を実施する形態を示したが、いずれか一方を実施するようにしても良い。また、停止制御及び低速制御を行う際に、減速勾配の設定、段階的減速の設定等の設定を行い、設定通りに減速制御を行う等、適宜制御することができる。なお、危険対応処理にも更に細分化した領域を設け、危険度、即ち、連続積算幅にて規定される幅、反射体までの距離等の基準に応じて適宜設定するようにしてもよい。
図11は、本発明に係る地上移動体1にて実行される側方領域凹部検知処理の一例を示すフローチャートである。図11を用いて示す側方領域凹部検知処理は、図9に示した状況検知処理のステップS303として実行される側方領域凹部検知処理に対応している。地上移動体1は、計測装置3の制御部30の制御により、所得した距離情報に基づいて、反射体が側方領域Bにおける危険領域Adの範囲内であるか否かを判定する(S501)。
ステップS501において、側方領域Bにおける危険領域Adの範囲内であると判定した場合(S501:YES)、制御部30は、危険領域Adとなる凹部の幅を積算し(S502)、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であるか否かを判定する(S503)。
ステップS503において、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であると判定した場合(S503:YES)、反射体が正面領域Aにおける危険領域Adの範囲内に位置すると判断し、制御部30は、危険対応処理を実行する(S504)。ステップS504における危険対応処理としては、危険状況を搭乗者に報知し、更に地上移動体1を停止する制御が行われる。
そして、地上移動体1は、側方領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。
ステップS503において、連続積算回数が除外値未満であると判定した場合(S503:NO)、制御部30は、反射体が側面領域Bにおける危険領域Adの範囲内に位置すると判断するが、危険対応処理は実行せずに、側方領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。なお、危険対応処理を全く行わないのでは無く、注意灯の点灯等の軽微な処理だけとするようにしてもよい。
ステップ501において、側方領域Bにおける危険領域Adの範囲内ではないと判定した場合(S501:NO)、制御部30は、反射体が側方領域Bにおける警戒領域Aaの範囲内であるか否かを判定する(S405)。
ステップS505において、側方領域Bにおける警戒領域Aaの範囲内であると判定した場合(S505:YES)、制御部30は、警戒領域Aaとなる凹部の幅を積算し(S506)、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であるか否かを判定する(S507)。
ステップS507において、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であると判定した場合(S507:YES)、反射体が側方領域Bにおける警戒領域Aaの範囲内に位置すると判断し、制御部30は、危険対応処理を実行する(S508)。なお、警戒領域Aaと判定される凹部が一定以上の幅を有すると判定したステップS508における危険対応処理としては、危険状況を搭乗者に報知し、更に地上移動体1を減速し低速走行させる制御が行われる。
そして、地上移動体1は、側方領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。
ステップS505において、側方領域Bにおける警戒領域Aaの範囲内ではないと判定した場合(S505:NO)、反射体が側方領域Bにおける安全領域Asの範囲内に位置すると判断して、側方領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。このとき、ステップS502及びS506にて積算した凹部の連続積算幅は初期化される。
ステップS507において、連続して積算した凹部の幅が除外値未満であると判定した場合(S507:NO)、制御部30は、反射体が側面領域Bにおける危険領域Adの範囲内に位置すると判断するが、危険対応処理は実行せずに、状況検知処理の次のステップを実行する。なお、危険対応処理を全く行わないのでは無く、注意灯の点灯等の軽微な処理だけとするようにしてもよい。
図12は、本発明に係る地上移動体1にて実行される障害物検知処理の一例を示すフローチャートである。図12を用いて示す障害物検知処理は、図9に示した状況検知処理のステップS304として実行される障害物検知処理に対応している。地上移動体1は、計測装置3の制御部30の制御により、取得した距離情報に基づいて、反射体が障害物検知領域Cの範囲内であるか否かを判定する(S601)。ステップS601は、障害物検知領域Cとして設定されている範囲内において、障害物となる反射体が存在するか否かを判定する処理である。
ステップS601にて、反射体が障害物検知領域Cの範囲内であると判定した場合(S601:YES)、制御部30は、危険対応処理を実行する(S602)。ステップS602における危険対応処理とは、地上移動体1の搭乗者に対する報知、地上移動体1の移動の制御等の処理である。搭乗者に対する報知とは、危険状況を示す警報音の鳴動、表示、音声出力等の各種処理である。地上移動体1の移動の制御とは、アクセル制御、最大速度制御、ブレーキ制御等の各種処理である。即ち、危険対応処理とは、危険状況を搭乗者に知らせ、更に地上移動体1の減速、停止等の制御を行う処理を示している。
ステップS601において、反射体が障害物検知領域C内ではないと判定した場合(S601:NO)、ステップS602の処理は実行されない。
このようにして、地上移動体1の障害物検知処理が実行され、状況検知処理の次のステップが実行される。
状態検知処理の正面領域凹部検知処理及び側方領域凹部検知処理並びに障害物検知処理において、危険対応処理を実行した場合、その危険対応処理を継続するように設定することも可能であり、また継続しないように設定することも可能である。また、継続するように設定した場合においては、その継続時間についても設定することも可能である。例えば、地上移動体1が、危険領域Adに位置すると判断して停止制御を行った場合、即ちブレーキによる制動を開始した場合、以降の検知結果に関わらず、制動を維持するように設定する。これにより、例えば、正面に溝があり、その溝を通り過ぎたとしても、再加速を行うのではなく、停止するまでその制御状態を維持することで安全性を高めることができる。
危険対応処理の状態を継続するように設定した場合、その状態の解除方法も適宜設定することが可能である。例えば、搭乗者が、後進(バック)を行う操作を行った場合に、危険対応処理の状態を解除するように設定する。地上移動体1が凹部の手前で停止した場合に、後進することができなければ、その後の操作が困難になる恐れがあるからである。なお、危険対応処理の状態の解除が必要な状況としては、地上移動体1が、段差の検出に基づく危険対応処理として停止し、動かなくなった状況、溝を通り過ぎて現在は溝を検知していないが事前の危険対応処理が継続されて停止状態を維持し続けている状況等の状況も考えられる。また、解除の方法としては、操舵を行った場合(ハンドルをきった場合)に、解除するように設定するようにしてもよい。さらに、一般的にシニアカーには、ハンドルにアクセルバーが設けられており、アクセルバーを強く握ると停止する機能を有することに鑑み、このようなシニアカーに適用する場合については、握られたアクセルバーを開放した後、更に握り直したとき、停止状態でアクセルバーを強く握ったとき等を契機として、危険対応処理の状態を解除するように設定することも可能である。さらに、搭乗者が任意のタイミングで解除できるように、解除スイッチを設ける等、適宜設定することが可能である。
図13は、本発明に係る地上移動体1にて実行される設定値切替処理の一例を示すフローチャートである。地上移動体1の移動に際し、障害物及び凹部に対して危険と判断する状況は、移動速度、操舵状況等の移動状況、及び加速操作、操舵操作等の移動のための操作の状況により異なる。設定値切替処理は、このような状況に応じて設定値を切り替える処理である。
地上移動体1が備える計測装置3の制御部30は、移動の状況又は移動のための操作の状況を検出し(S701)、検出した状況に応じて設定値を切り替える(S702)。移動体本体2は、状況検出部20により移動状況及び操作状況を検出し、検出した状況を示す情報を出力部21から計測装置3へ出力する。計測装置3の制御部30は、状況を示す情報の入力を受け付け、受け付けた情報にて示される状況に応じて設定値を切り替える。切替の対象となる設定値は、状況を示す情報に対応付けて記録部30aに記録されており、入力された情報に対応する設定値を選択することにより、設定値を切り替えることができる。なお、切替の対象となる設定値は、様々な設定値が個々に記録されていても良く、また、複数の設定値の組み合わせが設定パターンとして記録されていても良い。
設定値切替処理は、例えば、前述の状況検知処理と平行して実施される
前記実施の形態は、本発明の無数に存在する実施例の一部を開示したに過ぎず、目的、用途、仕様、設定等の様々な要因を加味して適宜設計することが可能である。
例えば、前記実施の形態では、地上移動体1として、ハンドル型電動車椅子を例示したが、本発明に係る地上移動体1は、地上を移動する物体全般を示すものである。即ち、例示した物体の他、乗用ゴルフカート、ジョイスティック型電動車椅子、倒立振子型車両、自立走行型モビリティ(有人及び無人の双方を含む)等の搭乗可能な小型の車両、また、乗用車、二輪車等の一般的な車両、更には、パワーショベル、フォークリフト等の重機に適用することも可能である。また、手押し車等の移動支援に要する装置も地上移動体1として用いることが可能である。
また、前記実施の形態では、計測装置3を地上移動体1の前部に取り付ける形態を示したが、本発明はこれに限らず、前部に加え又は前部に替えて、地上移動体1の後部、側部等の他の部位に取り付ける等、様々な形態に展開することが可能である。
また、前記実施の形態では、計測装置3が制御部30として使用可能な本発明に係る制御回路を備える形態を示したが、本発明はこれに限るものではない。即ち、移動体本体2が本発明に係る制御回路を備えていても良く、本発明に係る制御回路を備える制御装置を、計測装置3及び移動体本体2に取り付け可能となるように設計してもよい。さらには、計測装置3及び移動体本体2の双方に本発明に係る制御回路を組み込み、適宜処理を分担させるようにしてもよい等、様々な形態に展開することが可能である。
また、前記実施の形態では、危険領域Ad等の領域内であると判定した凹部について連続積算幅以上の場合に危険対応処理を行う形態を示したが、連続積算幅以外の設定に基づいて危険対応処理の要否を判定するようにしてもよい。具体的には、不連続の場合をも含む積算幅、積算回数、走査範囲に係る幅に対して危険領域Ad等の領域内である判定した幅の割合等の設定を用いることも可能である等、様々な形態に展開することが可能である。つまり、危険領域Ad等の領域内であると判定した凹部の幅情報(本発明における範囲に係る情報に相当)により、危険対応処理の要否を判定するということである。なお、設定により危険領域Ad等の領域内であると判定した幅が、不連続であるが、積算すると除外値以上となると判定する場合、その判定結果は路面の粗さ等の路面状況の判定に適用することもできる。
さらに、前記実施の形態では、状況検知処理として、正面領域凹部検知処理及び側方領域凹部検知処理並びに障害物検知処理を連続して実行する形態を示したが、本発明はこれに限らず、これらの処理を並行して実行する等、適宜設定することが可能である。
さらに、計測装置3において、地上移動体1から出力された速度情報に基づいて、検出された凹部についての進行方向に対する長さを算出し、算出した長さを危険対応処理の実施に係る判定基準のひとつとして用いる等、適宜設定することが可能である。
以上のように本発明に係る地上移動体1は、例えば、計測装置3にて検出した反射体が、どの領域に属するかを判定し、判定した領域に基づく制御信号を移動体本体2へ出力し、移動体本体2を制御するものであり、その領域の規定方法及び制御方法は任意に設定することが可能である。