JP6290352B2 - Moコリメータおよびそれを用いたX線検出器、X線検査装置並びにCT装置 - Google Patents

Moコリメータおよびそれを用いたX線検出器、X線検査装置並びにCT装置 Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、Moコリメータおよびそれを用いたX線検出器、X線検査装置並びにCT装置に関する。
医療診断や工業用非破壊検査などの分野においては、X線断層写真撮影装置(X線CT装置)などの放射線検査装置が用いられている。X線CT装置は、扇状のファンビームX線を照射するX線管(X線源)と、多数のX線検出素子を並列配置したX線検出器とを、被検体の断層面が中央にくるように対向配置した構造を有している。X線CT装置においては、被検体に対してX線管からファンビームX線を照射し、被検体を透過したX線吸収データをX線検出器で収集した後、これらX線吸収データをコンピュータで解析(断層面の個々の位置におけるX線吸収率の算出、およびX線吸収率に応じた画像の再構成)することによって、被検体の断層を再生している。
X線検出器には、被検体を透過したX線を検知するシンチレータが配置されているが、その前方に散乱線を防止することを目的としたコリメータが配置されている。現行はシンチレータに対して垂直に並べたスリット形状でチャンネル方向のみの散乱線除去をしているが、それを格子状にすることでチャンネル方向だけでなくスライス方向の散乱線も除去できることから画像の解像度をあげることが出来る。よって、現在はスリット形状から格子状への設計変更が求められている。
これまで格子状のコリメータについては、例えば特許第2731162号公報(特許文献1)の図23に示されたように櫛歯状の板を交差させて組み立てていた。鉛板のように比較的軟らかい金属であれば櫛歯状板を加工し易いが、鉛は環境問題からできれば使いたくない材料である。これに代わってMo板を使うことも考えられるが、Mo板は硬い材料であることから櫛歯状への加工は煩雑である。また、櫛歯状の板は厚さ0.1〜0.2mm程度と薄いことからきちんと組むのは大変である。このため、特開2007−3521号公報(特許文献2)では、穴の開いた板材を積層し支持部材で止める方法や、特開2008−168125号公報(特許文献3)では板材同士の間にスペーサを設けた積層構造が提案されている。
いずれも支持部材やスペーサといった別部材を使った構造であるため、製造工程の煩雑さやコストの高騰を抑制できずにいた。また、特許文献2ではMo板を一定間隔開けて縦に並べ、複数個の穴の開いた蓋要素で蓋をした構造であるため製造工程はより煩雑になっていた。
特許第2731162号公報 特開2007−3521号公報 特開2008−168125号公報
このように従来の格子状コリメータは、組立工程が煩雑であった。また、支持部材やスペーサなどの取り付け部品が別途必要でありコストダウンも十分に行えていなかった。
本発明は、このような課題を解決するためのもので、組立工程を簡素化して歩留まりを向上できるMoコリメータを提供するためのものである。
本発明の実施形態によれば、板厚0.02〜0.3mmのMo(モリブデン)板を積層した積層体構造を有するMoコリメータが提供される。Mo板には短辺または直径が0.1〜1.0mmの穴部が複数個設けられている。個々の穴部は積層体の上面から下面まで貫通穴を形成する。
また、貫通穴の断面はストレートもしくは段差形状となっており、段差形状は0〜0.010mm以内であることが好ましい。また、段差形状が0を超えて0.010mm以下の段差領域が端部領域、段差形状が0mmの非段差領域の中心領域にあることが好ましい。また、各貫通穴を貫く直線を引いたとき、各直線は一定の焦点を向いていることが好ましい。また、Mo板の積層枚数が10〜300枚であることが好ましい。また、コリメータの厚さが10mm以上であることが好ましい。また、R形状を有していることが好ましい。また、溶接または接着剤による固定により一体化された積層体構造であることが好ま
しい。
また、2〜50枚のMo板を1セットとした場合に、Moコリメータが複数のセットを含むことができる。各セットは、隣り合うMo板の穴部が互いに連通することにより形成されたストレートな貫通孔を有し、隣り合うセット間での貫通孔の最大段差が0.001〜0.1mmであることが好ましい。
また、実施形態によれば、このようなMoコリメータを用いたことを特徴とするX線検出器が提供される。また、Moコリメータを複数個用いたX線検査装置にも好適である。さらに本発明のX線検出器を用いたCT装置にも好適である。
本発明の実施形態は、Mo板を積層した積層構造を用いていることから組立工程を簡素化できるため歩留まりを向上させることができる。また、支持部材やスペーサなどの別部品も使わないことからコストダウンをも可能とするものである。
本発明の実施形態に係るMoコリメータの一例を示す図である。 Mo板の一例を示す図である。 Mo板の他の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係るMoコリメータの焦点の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係るMoコリメータの焦点の他の一例を示す図である。 貫通穴の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係るMoコリメータの他の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係るMoコリメータのR形状を有する一例を示す図である。 実施形態に係るコリメータを複数個並べた一例を示す図である。 実施形態に係るX線検出器の一例を示す図である。 実施形態に係るX線検査装置の一例を示す図である。 図6に示す貫通穴の要部拡大断面図である。 図7に示す貫通穴の要部拡大断面図である。
本発明の実施形態に係るMoコリメータは、板厚0.02〜0.3mmのMo板を積層した積層体構造を有するMoコリメータにおいて、Mo板には短辺または直径が0.1〜1.0mmの穴部が複数個設けられており、個々の穴部は積層体の上面から下面まで貫通穴を形成することを特徴とするものである。
Mo板は純度99.9wt%以上の純Moや、MoにRe、Ti、Zrなどを1〜30wt%添加したMo合金であってもよい。
Mo板の板厚は0.02〜0.3mmである。板厚が0.02mm未満と薄いMo板は加工するが困難であり、反ってコストアップの要因となる。一方、0.3mmより厚いと後述するR形状に加工した場合にスプリングバックにより形状を維持するのが困難である
。従って、Mo板の板厚は0.02〜0.3mm、好ましくは0.1〜0.2mmである。
図2および図3にMo板の一例を示した。図中、2はMo板、5は穴部、6はねじ止め部、LはMo板の長辺長さ、WはMo板の短辺長さである。
Mo板には、短辺または直径が0.1〜1.0mmの穴部が複数個設けられている。穴部サイズが、0.1〜1.0mm、さらには0.4〜0.7mmであることが好ましい。
穴部の形状は、四角形(正方形、長方形)や六角形などの多角形、円形など特に限定されるものではないが、段差領域の調整には四角形が好ましい。穴部の短辺または直径が0.1mm未満では穴が小さすぎて製造するのが困難である。一方、1.0mmを越えるとコリメータとしての性能が低下する。また、穴部の数は特に限定されるものではないが、実質的にメッシュ状となるように複数個設けられていることが好ましい。
また、図3ではねじ止め部を設けた構造としたが、Mo板の長さLはあくまで穴部が設けられた領域の長さを示すものであり、このねじ止め部は長さLには含まれないものとする。
このようなMo板を積層した積層体構造を有する。Mo板の積層枚数は10〜10000枚、さらには10〜300枚であることが好ましい。積層枚数が10枚未満では、コリメータの厚さ方向が足りず、10000枚を超えるとコリメータが重くなりすぎてX線検出器への搭載に悪影響がでるおそれがある。さらに好ましくは100〜250枚の積層体である。
図1にMoコリメータの一例を示した。図中、1はMoコリメータ、2はMo板、3は端部領域、4は中心領域、LはMo板の長さ、HはMoコリメータの厚さである。なお、LはMo板をそのまま積層した構造とした場合は、Mo板の長さLがそのままMoコリメータの長さLとなる。
本発明では、Mo板の積層体構造において、穴部が上面から下面まで貫通穴を形成している。これは上面の穴部がそれぞれ下面の穴部まで貫通穴となっていることを意味している。これにより、それぞれの穴部がコリメートする役割を持つのである。
また、貫通穴は、貫通穴の断面はストレートまたは段差形状となっており、段差形状は0〜0.010mm以内であることが好ましい。図6に貫通穴の一例を示した。段差形状0mmとは段差の無い非段差領域、いわゆる断面がストレートな形状を示す。また、段差形状が0.010mmとは上下に直接重なり合うMo板のずれが0.010mmの段差がある段差領域であることを示している。Mo板のずれは、0〜0.005mm(0〜5μm)の範囲であることが好ましい。
また、段差形状が0を超えて0.010mm以下の段差領域が端部領域、段差形状が0mmの非段差領域の中心領域にあることが好ましい。端部領域3とは、長さLを100としたときの0〜10、90〜100の領域である。中心領域4とは、長さLを100としたときの45〜55の領域である。
図12は、図6のMoコリメータの端部領域3の穴部5の一部を拡大した模式図である。図12は、一つの貫通孔内における穴部間の段差を表している。図12において、Mo板2aの穴部5aと、Mo板2aと隣接するMo板2bの穴部5bとが一つの貫通孔を形成しているとする。Mo板2aの穴部5aの位置は、Mo板2bの穴部5bの位置に対してずれている。段差dは、Mo板2aの壁部22と穴部5aとの境界と、穴部5bを囲んでいるMo板2bの壁部23との距離である。
段差領域が端部領域、非段差領域が中心領域に存在することにより、各貫通穴を貫く直線を引いたとき、各直線は一定の焦点(X線発生源)を向いている構造とすることができる。図4および図5にMoコリメータの焦点の一例を示した。例えばCT装置のように、リング状の検出器を備えるものでは、X線源(X線管)から、被検体を透過したX線をコリメートするコリメータもリングのR形状と近似していることが好ましい。そのためには、端部領域に段差領域、中心領域に非段差領域を設けて貫通穴が一定の焦点方向を向くようにすることが好ましい。
各貫通穴を貫く直線を引いたときに各直線が一定の焦点(X線発生源)を向いている構造は、以下の方法で確認することができる。コリメータをX線検出器に搭載したときに得られる出力に異常がないことを確認することにより、この構造になっていると判断することができる。
コリメータに形成した各貫通孔を一定の焦点(X線発生源)に向けたとき、最も大きな段差を形成するのは端部領域になる。また、このような形状とするにはエッチングにより穴の位置を変えたMo板を調整し、積層していく方法が有効である。また、完成品のコリメータにおいて段差サイズを測定するには、Mo板の長手方向の断面を取り、段差サイズを測定するものとする。長手方向の断面は任意の断面でよい。
また、貫通穴を一定の焦点方向に向くようにするには、積層するMo板に設けた穴部を徐々に小さくしていく方法もある。また、積層枚数が多いとき、Mo板の積層順に穴部サイズの異なるものを用意するのはコストアップの要因となるので積層枚数の10〜20%ずつ(例えば200枚積層する場合は、10〜20%の20〜40枚ずつ)穴部サイズを小さくしていく方法もある。
図7にMoコリメータの他の一例を示した。図7中、2はMo板、3は端部領域、4は中心領域、5は穴部であり、7−1〜7−4は、複数枚のMo板2を1セットとした場合の各セットを表す。各セット7−1〜7−4において、隣接するMo板2の穴部5同士が連通して形成された貫通孔は、Mo板2の上下面に対して垂直であり、縦断面がストレート形状をしている。つまり、セット7−1〜7−4それぞれに形成された貫通孔は、ストレートなものに統一されている。各セット7−1〜7−4において、中心領域4の貫通孔は、ほぼ同位置に設けられているが、端部領域3の貫通孔は、セット間で位置が異なっている。このため、セット7−1〜7−4のMo板2を積層すると、Moコリメータ1の中心領域4にストレートな貫通孔が形成され、Moコリメータ1の端部領域3に段差形状の貫通孔が形成される。
図13は、図7のMoコリメータの端部領域3の貫通孔の一部を拡大した模式図である。セット7−1のMo板2の穴部5が連通することにより形成された貫通孔81は、セット7−2のMo板2の穴部が連通することにより形成された貫通孔82に対してずれている。貫通孔81は、貫通孔82と一つの貫通孔を構成している。貫通孔81を囲んでいるMo板2の壁部を24、貫通孔82を囲んでいるMo板2の壁部を25とする。段差dは、貫通孔82とMo板2の壁部25との境界と、貫通孔81を囲んでいるMo板2の壁部24との距離である。
穴部の形状を徐々に小さくしていった場合、エッチング原板が積層枚数分必要になる。つまり、200枚積層するにはエッチング原板が200枚必要になるのである。このようなやり方ではコストアップは避けられない。そのため、2〜50枚のMo板の積層体を1セットとし、1つのセット内では穴部形状を統一する。つまり、1つのセット内ではストレートな貫通孔を設ける。その上で、隣り合うセット間での最大段差が0.001〜0.1mmとなるように調整する構造が好ましい。中心領域4では、穴部5はストレートな貫通孔を形成する。一方、端部領域3では各セットの貫通孔間に段差が設けられ、各セットの貫通孔同士が連通することにより形成された貫通孔が一定の焦点方向を向いていることが望ましい。最大段差とは、隣り合うセット間の貫通孔の段差のうち最も大きい段差を示す。隣り合うセット間での貫通孔の段差は同じであってもよいし、それぞれ変えてもよい。また、1セットの積層枚数は2〜50枚であるが、個々の1セット積層枚数は同じであってもよいし、変えてもよい。
このような構造であれば、例えば、200枚積層したコリメータを製造する場合、20枚を1セットとすれば10セットになる。10セットで対応すればエッチング原板は10枚で済む。Mo板一枚一枚で異なるエッチング原板を設けるよりは、遥かにコストダウンが可能である。
また、同じ穴部を形成したMo板を積層した後、R形状を付ける方法や、予めR形状をつけたMo板を積層する方法が挙げられる。
また、積層体構造とすることにより、コリメータ厚さHは、10mm以上と厚いものを形成し易くなる。例えば、CT装置では被検体の映像を立体的に検出する。そのため、穴部を縦×横に並べるだけでなく、厚さ方向もコリメートすることが必要である。
また、Moコリメータの側面には、短辺または長辺の積層方向に段差を有する側面が少なくとも1つ以上存在することが好ましい。X線検査装置においてコリメータを複数個並べて配置する場合、特にCT装置のようにX線検査装置が被検体の周囲を回転する構造の場合はコリメータを一定の焦点方向に向ける必要がある。そのため、コリメータを固定するときに、どちらを上、どちらを下にするか方向性がでてくる。
穴部サイズを徐々に小さくした場合、最上面のMo板と、最下面のMo板のサイズも徐々に小さくしておけば、どちらが上でどちらが下か目視により判断できるのでX線検出器への取付性が向上する。また、積層したMoコリメータにR形状を付けることによっても、コリメータの方向性がでて取付性が向上する。図8にR形状を有するコリメータの一例を示した。コリメータ1を構成する複数のMo板21〜25は、それぞれ、上下面が下方に向かって湾曲している。また、最上面のMo板21の面積が、最下面のMo板25の面積に比して小さい。このようなMo板21〜25を積層し、一体化することにより、円弧形状のコリメータ1となる。
MoコリメータにR形状を付けるときは、プレス加工などの応力付加により行う。Mo板は剛性の強い材料であることから、R形状がきつい場合、Mo板厚が比較的厚い場合(例えばMo板の板厚が0.2mm以上)、Mo板が長い場合は、Mo板のスプリングバックが強くR形状を維持するには図3に示したようなねじ止めが必須になる。そのため、Mo板の長さLを徐々に短くしたものを積層構造とし、実質的なR形状を付与することも効果的である。長さLが徐々に短いMo板を積層していることから、その側面には小さな段差ができる。このとき、コリメータに応力付加によりR形状を付与しないので、穴部サイズを徐々に小さくしていき、段差形状を形成する。
また、Mo板の積層構造体は、その側面を溶接または接着剤による固定により一体化されたものであることが好ましい。ここで、側面とは、Mo板の長辺または短辺の積層構造が露出した面である。Mo板の長辺の積層構造が露出した側面の一例が図6及び図7である。穴部が貫通穴を形成した上で、所定の段差領域を維持するには積層構造体を一体化しておくことが好ましい。特に、CT装置のようにX線検査装置が被検体の周囲を回転するものではコリメータ自体の強度も必要である。
溶接は、ガス溶接、アーク溶接、電気抵抗溶接、電子ビーム溶接など特に限定されるものではないが、溶接個所をできるだけ小さくした方が良いので電子ビーム溶接が好ましい。溶接個所は、特に限定されるものではないが、上面から下面までその側面を一直線に溶接することが好ましい。また、Mo板の長さLが3cmに一か所程度の溶接を行うことが好ましい。
また、接着剤による固定は、側面に接着剤を塗布し、一体化するものである。用いる接着剤は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性接着剤が好ましい。
以上のようなMoコリメータは、X線検出器に好適である。本発明の実施形態に係るMoコリメータは、X線管側、検出器側のどちらに用いてもよいが、R形状(図5のような実質的なR形状も含む)を有したものは検出器側(被検体を透過したX線を検出する側)に有効である。CT装置は被検体の周囲をX線検出器が回転しながら、測定する装置である。そのため、被検体を囲む円形状(ドーナツ状)の検出器においてはMoコリメータもR形状を具備することが好ましい。また、円形状の検出器に合わせてコリメータを複数個搭載することが好ましい。
次に、Moコリメータの製造方法について説明する。本発明の実施形態に係るMoコリメータの製造方法は特に限定されるものではないが歩留まり良く得るための製造方法は次の通りである。
まず、板厚0.02〜0.3mmのMo板を用意する。Mo板は圧延により薄板に加工する。また、必要であればエッチングによりさらに薄板に加工する方法を用いてもよい。
Mo板に穴部を設ける工程は、エッチング加工、プレス加工、レーザ加工、ワイヤカット加工などが挙げられる。板厚0.2mm以下のMo板に図2に示したようなメッシュ状の穴部を形成するにはエッチング加工が好ましい。一方、0.2mmを超える板厚のMo板にメッシュ状の穴部を形成する場合はプレス加工が好ましい。また、必要に応じ、ねじ止め部を設けたMo板を調製する。
次に穴部を設けたMo板を所定枚数積層する。ねじ止め部を設けない場合は、積層構造体の側面を溶接または接着剤により一体化する。このとき、最外層の穴部にかかる部分だけを溶接または接着剤塗布するようにする。
この後、必要に応じ、応力を付加してR形状をつける。また、応力付加はプレス加工である。積層構造体であれば、プレス加工によりR形状を付加したとしても穴部は貫通穴を維持したまま所定のズレ領域を形成できる。R形状を付加するプレス圧力は1〜100MPaが好ましく、より好ましくは30〜80MPaである。また、400〜600℃の熱間で行うことが好ましい。また、プレス加工後は700〜900℃で歪取り熱処理を行うことが好ましい。
また、R形状をつける場合は、予めMo板に応力を付加してR形状を有するMo板を積層してもよい。また、1枚毎にR形状を付ける場合は、プレス圧力1〜80MPa,好ましくは1〜50MPaである。また、また、400〜600℃の熱間で行うことが好ましい。また、プレス加工後は700〜900℃で歪取り熱処理を行うことが好ましい。
R形状をつける場合は、同じMo板を積層することにより、所定の段差領域を形成することができる。特に端部領域に段差領域が形成される。言い換えると、端部領域に段差領域があり、中心領域は非段差領域が存在するコリメータは、同じ穴部を有するMo板を積層し、R形状を付与することで形成できる。そのため、同じ穴部を有するMo板を使えるので量産性はよい。このようなR形状を設ける場合はMo板の長さLが90mm以上の大きなコリメータを形成するのに有効である。
また、R形状を設けない場合は、予め穴部サイズを変えたMo板または穴部の位置を変えたMo板を用意して積層構造体とする。R形状を設けない場合は、Mo板の長さLが90mm未満の小さなコリメータを形成するのに有効である。X線管からのファンビームX線を効率よくコリメートするにはファンビームの中心(X線照射源)に向けたR形状であることが好ましい。R形状を形成しない場合は、Mo板の長さLを90mm未満と小さくしたものを複数個並べることにより、実質的なR形状を形成することができる。
また、予め穴部サイズを変えたMo板または穴部の位置を変えたMo板としては目的とする積層構造体が得られれば特にサイズや位置は限定されるものではないが、例えば、短辺または直径が0.1〜1.0mmの穴部を複数個設けたメッシュ状のMo板を用意したとき、積層枚数の10〜20%毎(200枚積層した場合は、10〜20枚毎)に0.0001〜0.010mmずつ穴のサイズを小さくする方法または長さLを0.005〜0.010mmずつ小さくする(Mo板を徐々に縮小した形状とする)して穴部の位置を変える方法がある。
また、積層構造体は溶接または接着剤塗布により一体化することが好ましい。溶接又は接着剤塗布による一体化を行わない場合は、図3のようなねじ止め部を端部に設けることが好ましい。また、一体化した構造とねじ止め構造の両方を併用してもよい。この場合、ねじ止め部の代りに、Mo板の位置決めのための開口部を位置決め部として設けても良い。また、図3では、ねじ止め部として穴を両端に1個ずつ設けた例を示したが、ねじ止め部を片方に複数個(例えば、2〜3個)設ける構造であってもよい。端部に複数個(2〜3個)ずつ設けることにより、位置決め用の穴とねじ止め用の穴を使い分けてもよい。
Mo板の積層構造体を用いていることから、個々の穴部の位置合わせが容易であり、歩留まりがよい。従来のような櫛歯状の板を噛み合わせるものでは、すべての櫛歯がきちんと噛み合わないと不良品となってしまう。それに対し、積層構造であれば位置合わせが容易である。また側面を溶接または接着剤塗布により一体化することにより、スペーサや支持部材などの余分な部品を使用しないで済む。
以上のように本発明の実施形態に係るMoコリメータであれば、穴部の位置合わせが容易であるので製造歩留まりが非常に高い。また、側面を溶接または接着剤塗布により一体化することによりコリメータの強度を向上させることができる。このようなコリメータであれば、CT装置のようにX線検出器が回転移動するような装置に用いたとしても形状が維持され、型崩れといった不具合が発生しない。その結果、信頼性の高いX線検出器またはそれを用いたCT装置を提供することができる。
図9にコリメータ1を複数個並べた一例を示した。各コリメータ1は、図8と同様に、Mo板21〜25を含む。CT装置のようなX線検査装置ではX線検出器が円形、円弧形または扇形であるので、コリメータも円形、円弧形または扇形に組む。図10にはX線検出器の一例を示した。X線検出器31は、コリメータ1、シンチレータ20及び光電変換部(フォトダイオード)21がこの順番に積層された構造になっている。また、図11にはX線検査装置の一例を示した。X線検査装置10は、X線源11(X線照射装置)及び図10に示すX線検出器31を備えるものである。X線源11(X線照射装置)から、照射されたX線は被検体12を透過してX線検出器31に到達する。X線検出器31ではコリメータ1を設けることにより散乱X線を除去することができ、コリメータ1の貫通孔をまっすぐ通過したX線のみをシンチレータ20で光に変換し、その光を光電変換部21で感受し、電気信号に変換することができる。光電変換部21で変換した電気信号をコンピュータ13で処理されディスプレイ14に映像15として得ることができる。なお、図11ではX線源11が焦点となる。
(実施例1〜5)
Mo板サイズ、穴部サイズを表1に示したものをエッチング加工により製造した。これを表1に示した枚数の積層構造体を形成した。これをR1070のR形状にプレス加工してR形状とし、800℃で歪取り熱処理を行った。その後、側面を溶接して一体化したMoコリメータを製造した。なお、Mo板は純度99.9wt%以上のものを用いた。また、穴部はいずれもメッシュ状に複数個設けたものである。
得られたMoコリメータの歩留まりを調べた。また、端部領域、中心領域の穴部の段差形状を調べた。また、耐久性として振動試験を行った。なお、端部領域、中心領域の穴部の段差形状は、貫通穴の中で重なり合う上下のMo板の中で一番ズレの大きな段差を調べた。また、耐久性は、50cm間を1分間に50往復させ、型崩れのしたものを「×」、型崩れしないものを「○」で表示した。また、歩留まりは良品のできる割合である。その結果を表2に示す。
また、比較例1として、Mo板を用いて櫛歯状のものを用いて格子状に組んだこと以外は実施例1と同じサイズのものを用意した。比較例1についても同様の測定を行った。
Figure 0006290352
Figure 0006290352
本実施例にかかるMoコリメータは積層構造を有していることからその歩留まりは100%であり、耐久性も優れていた。また、プレス加工によりR形状を付けたため短辺側の側面にはMo板厚に基づく段差が形成されていた。また、端部領域は段差領域を形成していた。また、中心領域は段差がなかった。端部領域及び中心領域以外の箇所では、穴部に段差があり、その値は端部領域の段差以下の値であった。
一方、比較例1の櫛歯状のものを噛み合わせたものは上面と下面の穴部の重なりは無かったが、厚さ0.07mmの薄い櫛歯状のMo板を噛み合わせるのは大変であり、歩留まりはかなり悪かった。
(実施例6〜9)
上面Mo板サイズ、下面Mo板サイズを表3に示すようなものとし、その途中を徐々に下面Mo板サイズになるように小さくなるようなMo板を用意し積層体を構成した。なお、穴部は、30〜50枚単位で徐々に小さくしていき上面Mo板に設けた穴部がすべて貫通穴になるようにエッチング処理によりメッシュ状のMo板を設けた。積層構造体は、いずれも側面を接着材塗布で固めたものである。
各Moコリメータについて実施例1と同様の測定を行った。その結果を表4に示す。なお、端部領域及び中心領域以外の箇所では、穴部に段差があり、その値は端部領域の段差以下の値であった。
Figure 0006290352
Figure 0006290352
実施例6〜9は図4に示したような構造である。このような構造は単に積層するだけであるので歩留まりおよび耐久性は優れていた。また、Mo板のサイズを小さくしてく実施例8および実施例9は短辺側の側面は段差が形成されていた。ここでいう段差は、穴部の段差ではなく、Mo板の短辺が階段状に積層されていることを意味する。
(実施例10〜15)
Mo板(Mo純度99.9wt%以上)として、縦100mm×横20mm×厚さ0.05mmのものを用意した。次に表5に示す枚数を1セットとし、200枚の積層構造を有するMoコリメータを実施例10〜13として作製した。また、同様のMo板を用いて、積層枚数5000枚のものを実施例14、積層枚数9500枚のものを実施例15として作製した。実施例11では、20枚のセットを5セット積層した後、この積層物に50枚のセットを2セット積層した。また、実施例15では、20枚のセットを200セット積層した後、この積層物に10枚のセットを550セット積層した。実施例10〜15のMoコリメータは、図7に示す構造のものとした。なお、穴部の形成はエッチングにより行い、穴部サイズは0.5mm×0.5mmのメッシュ形状に統一した。また、各セットのMo板を積層することにより形成される貫通孔はストレート形状に統一した。隣り合うセットにおいて、各セットの中心領域の貫通孔を同位置に設けた。各セットの中心領域以外の箇所の貫通孔は、セット間で異なる位置に設けた。
また、個々のMo板の端部にはねじ止め用穴部を設けた。Moコリメータの組立に際しては、ねじ止め用穴部に押さえ冶具を挿入し、順次、積層していった。積層が完了した後、樹脂接着剤により外周部(四側面)を接着固定した。実施例1と同様に歩留まりと耐久性を調べた。段差形状の貫通孔におけるセット間での段差のうち最大段差を下記表5に示す。なお、Moコリメータの中心領域では、貫通孔の段差が0mmで、中心領域と段部領域以外の箇所では、貫通孔の段差は最大段差よりも小さい値である。
Figure 0006290352
表5から分かる通り、1セット内でストレートな貫通孔を設けて、隣り合うセット間での貫通孔同士の最大段差を0.001〜0.1mmとすることにより、コリメータの歩留まりや耐久性が向上した。特に、ねじ止め用穴部に固定冶具を通して積層しているので積層時の不具合もなかった。また、エッチング原板をセット数分で済むので大幅なコストダウンも可能である。
(実施例1A〜15A、比較例1A)
実施例1〜15および比較例1のMoコリメータを用い、CT装置用X線検出器の被検体検出側にセットした。それぞれ、CT画像を検出したところ、いずれもきれいに3次元画像を検出することができた。これにより、本実施例にかかるMoコリメータは、従来品と同等のコリメータ性能を具備した上で、歩留まりおよび強度の高いコリメータとなっていることが分かった。言い換えれば、本実施例にかかる穴部のズレはCT画像を撮影するにあたり問題がないことが確認できた。
また、実施例にかかるMoコリメータは、短辺側の側面に段差があり、どちらが上面でどちらが下面か目視により分かるのでX線検査装置への装着の際の方向性の判別が容易であった。また、スペーサや支持部材などの特別な部品を使わなくても貫通穴を維持できるため、この点からもコストダウンが可能である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 板厚0.02〜0.3mmのMo板を積層した積層体構造を有するMoコリメータであって、前記Mo板には短辺または直径が0.1〜1.0mmの穴部が複数個設けられており、個々の前記穴部は前記積層体構造の上面から下面まで貫通穴を形成することを特徴とするMoコリメータ。
[2] 前記貫通穴の断面はストレートもしくは段差形状となっており、前記段差形状は0〜0.010mm以内であることを特徴とする上記[1]記載のMoコリメータ。
[3] 前記段差形状が0を超えて0.010mm以下の段差領域が端部領域、前記段差形状が0mmの非段差領域が中心領域にあることを特徴とする上記[1]または上記[2]のいずれか1項に記載のMoコリメータ。
[4] 2〜50枚の前記Mo板のセットを複数含み、
前記セットが前記Mo板の前記穴部が互いに連通することにより形成されたストレートな貫通孔をそれぞれ有し、
隣り合う前記セット間での前記貫通孔の最大段差が0.001〜0.1mmであることを特徴とする上記[1]記載のMoコリメータ。
[5] 前記の各貫通穴を貫く直線を引いたとき、前記の各直線は一定の焦点を向いていることを特徴とする上記[1]ないし上記[4]のいずれか1項に記載のMoコリメータ。
[6] 前記Mo板の積層枚数が10〜10000枚であることを特徴とする上記[1]ないし上記[5]のいずれか1項に記載のMoコリメータ。
[7] 厚さが10mm以上であることを特徴とする上記[1]ないし上記[6]のいずれか1項に記載のMoコリメータ。
[8] R形状を有していることを特徴とする上記[1]ないし上記[7]のいずれか1項に記載のMoコリメータ。
[9] 前記積層体構造は、溶接または接着剤による固定により前記Mo板が一体化されていることを特徴とする上記[1]ないし上記[8]のいずれか1項に記載のMoコリメータ。
[10] 上記[1]ないし上記[9]のいずれか1項に記載のMoコリメータを含むことを特徴とするX線検出器。
[11] 上記[1]ないし上記[9]のいずれか1項に記載のMoコリメータを複数個含むことを特徴とするX線検査装置。
[12] 上記[10]に記載のX線検出器または上記[11]に記載のX線検査装置を含むことを特徴とするCT装置。
1…Moコリメータ、2…Mo板、3…端部領域、4…中心領域、5…穴部、6…ねじ止め部、7−1〜7−4…セット。

Claims (3)

  1. 板厚0.1mm以上0.2mm以下のMo板を100枚以上250枚以下含む積層構造体を有するX線用Moコリメータであって
    前記Mo板には一辺が0.4mm以上0.7mm以下の四角形の穴部が複数個、メッシュ状に設けられており、
    前記積層構造体の積層方向に隣接している前記穴部が、前記積層構造体の上面から下面まで互いに連通して貫通孔を形成することにより、当該積層構造体には前記Mo板の複数の穴部と対応して複数の貫通孔が設けられ、
    前記複数の貫通孔は、前記Mo板の長さLを100とした時、45〜55の前記積層構造体の中心領域では積層方向で隣り合う貫通孔のずれがゼロで、0〜10および90〜100の前記積層構造体の端部領域では積層方向で隣り合う貫通孔のずれが0を超え0.005mm以下であり前記積層構造体の前記複数の貫通孔を貫く直線をそれぞれ引いたとき、各直線は一定の焦点を向いており、
    前記各Mo板には、ねじ止め部が形成されており、そのねじ止め部により前記積層構造体が固定され、かつ前記複数のMo板は前記積層構造体の前記複数のMo板の積層方向に沿う側面に直線状溶接部を当該側面の上面から下面までに亘り、前記Mo板の辺に沿って3cm毎に設けることにより、互いに固定され、一体化されていることを特徴とするX線用Moコリメータ。
  2. 板厚0.1mm以上0.2mm以下のMo板が10〜50枚積層されたセットを複数含む積層構造体を有するX線用Moコリメータであって、
    前記各セットを構成する前記各Mo板には、一辺が0.4mm以上0.7mm以下の四角形の穴部が複数個、メッシュ状に設けられており、
    前記各セットの積層方向に隣接している前記穴部は、各セットの上面から下面まで、互いにずれがゼロで連通して貫通孔を形成することにより、当該各セットには前記Mo板の複数の穴部と対応して複数の貫通孔が設けられ、
    積層方向に隣り合う前記各セット間の貫通孔の最大ずれを0.001〜0.1mmの範囲に設定して前記各セットを積層して前記積層構造体を構成し、前記各セット間で繋がれる貫通孔を貫く直線をそれぞれ引いたとき、各直線は一定の焦点を向いており、
    前記各Mo板には、ねじ止め部が形成されており、そのねじ止め部により前記積層構造体が固定され、かつ前記複数のMo板は前記積層構造体の前記複数のMo板の積層方向に沿う側面に直線状溶接部を当該側面の上面から下面までに亘り、前記Mo板の辺に沿って3cm毎に設けることにより、互いに固定され、一体化されていることを特徴とするX線用Moコリメータ。
  3. 請求項1または2に記載のX線用Moコリメータを搭載したことを特徴とするCT装置。
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