JP3639855B2 - 蛍光x線分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料以外から発生する蛍光X線や散乱X線が検出手段に到達しないように、視野を制限するコリメータを備えた蛍光X線分析装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平行ビームを用いる蛍光X線分析装置においては、図18に示すように、X線管4からの一次X線3を試料1に照射し、試料台2上に固定された試料1から発生する蛍光X線5をコリメータ10Aを通してソーラスリット7に導いて平行ビームとして取り出し、このX線を分光器8によって各元素に対応する波長成分をもつスペクトルに分光し、分光されたX線を検出器9で検出する。
【0003】
試料1とソーラスリット7との間にコリメータ10Aを設けているのは、以下の理由による。
X線管4からの1次X線3は、試料1のみならず試料台2にも照射されるので、図19(a)に示すように、コリメータを設けていない場合、試料1から発生する蛍光X線だけでなく、試料台2の試料周辺部2aから発生する蛍光X線や散乱X線などの妨害線が大量に検出器9に入射する。このため、試料1からの蛍光X線スペクトルに対して、妨害線がバックグランドとなり、S/N比が低下する。これに対して、図19(b)に示すように、コリメータ10Aを設けると、検出器9から見た視野が試料1近傍に制限され、検出器9に入射する妨害線が発生する試料周辺部2aがコリメータ10Aがない場合に比べて小さくなるため、妨害線の多くはコリメータ10Aに遮られて検出器9に到達しなくなり、S/N比の向上を図ることができる。
【0004】
コリメータ10Aは、図18に示すように、平板に径の異なる複数の絞り孔12a,12b,12cを有し、コリメータ10Aを矢印Y方向(横方向)にスライドさせて、試料1の被測定部の形状の大小に応じた径の絞り孔が選択される。
【0005】
しかし、図19(b)に示すように、コリメータ10Aと試料1との間にはある程度の距離Lがあるため、例えば、試料1の直径とほぼ同一径の絞り孔12aを選択しても、検出器9から絞り孔12aを通じて試料1を見た場合には、試料1から外れた部分2aから発生する妨害線も絞り孔12aを通過して検出器に入射することとなり、S/N比の向上を十分に図ることができない。
【0006】
このように妨害線が検出器に入射することを防止するために、試料1の直径よりも小さい径の絞り孔を選択すると、試料1から発生する蛍光X線の通過量も減少してしまうことになり、検出感度が低下する。
【0007】
また、上記の問題を解決するために、図20に示すようなコリメータ10Bも提案されている(特許第2674675号)。このコリメータ10Bは、試料1の被測定部の形状の大小に応じた径を有する複数の筒状部15a,15b,15cを有し、径が小さい筒状部ほど長く設定し、一つの筒状部を選択したとき、径の小さい筒状部ほど試料1に接近するようにしている。この場合、試料の形状の大小に応じてコリメータ10Bの筒状部15a,15b,15cのいずれかを適切に選べば、検出器(図示せず)から筒状部15a,15b,15cのいずれかを通して試料1を見た場合に、試料1のみを見込むことになるので、試料1以外の部分から発生する不要な妨害線が効果的に遮断され、絞り孔の径を試料1の直径よりも小さくしなくても、試料1以外から発生する妨害線がソーラスリット7を通過して検出器に入射することを極力防止できるため、検出感度を低下させることなく、S/N比の向上を図ることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このコリメータ10Bでは、図21に示すように、試料1から発生した蛍光X線5を、例えば、筒状部15aで絞った場合、試料1から発生した蛍光X線5の一部5aは、筒状部15aにおける内壁面16aに入射し、内壁面16aから蛍光X線や散乱X線などの妨害線30が発生してソーラスリット7を通過して検出器に入射してしまう。したがって、S/N比の向上が未だ十分ではない。また、各筒状部15a,15b,15cの中心線17a,17b,17cはいずれもソーラスリット箔に平行でなければならず、高い加工精度が要求されるため、加工性が悪い。
【0009】
他方、図20に示すように、従来の蛍光X線分析装置では、X線源4は、試料1に接近させて照射強度を上げつつ発生した蛍光X線5を検出器に取り込むべく、試料表面1aに対してX線源4の軸方向を傾斜させて1次X線3を照射している。ここで、試料1の被測定部への1次X線3の照射強度とは、試料表面1aの被測定部全体への1次X線3の照射強度の総和をいう。試料表面1aおよびその延長面からなる仮想照射面上での1次X線3の照射強度の分布をシミュレーション計算してみると、X線源4の軸方向が傾斜しているため、図22の曲線Bに示すように、X線源4の照射中心軸が仮想照射面に達する位置Cにおいて照射強度分布は最大ではなく、そこからX線源4が傾斜する方向にずれた位置Mで最大になり、左右非対称に分布する。したがって、例えば、試料1の被測定部の直径が比較的大きいD3であれば、試料1の被測定部への1次X線3の照射強度(斜線部の面積に相当)は、図示のD3の位置で最大になるのに対し、被測定部の直径が比較的小さいD1であれば、図示のD1の位置で最大になる。このように、試料1の被測定部の大きさに応じて、照射強度が最大になる位置は変動する。そこで、本出願人は、試料1の被測定部の大きさに応じて、試料1の被測定部への1次X線3の照射強度が最大になる最適位置に試料台2を移動させることで、X線源1からの1次X線3を十分に利用することを提案した(特願平8−312673号)。
【0010】
しかしながら、従来のコリメータ10A,10Bは、X線源4の照射中心軸が仮想照射面に達する位置Cをコリメータ10の絞りの見込み中心としている。つまり、コリメータ10A,10Bのいずれの絞り孔を選択しても、絞りの見込み中心は、必ず固定された位置Cである。一方、上述のように、被測定部を前記最適位置に移動させると、X線の照射強度が最大となる位置Mが、前記位置Cからずれるので、絞り孔が位置Cを見込むのであれば、被測定部から発生した蛍光X線5を十分に検出器に取り込めなくなり、S/N比を十分向上させることができない。
【0011】
そこで本発明は、検出感度を低下させることなく、従来よりもさらにS/N比を向上させることができ、かつ加工性に優れたコリメータを設けた蛍光X線分析装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の第1の構成にかかる蛍光X線分析装置は、試料と検出手段との間の蛍光X線の通路にコリメータを設けた蛍光X線分析装置であって、前記コリメータは、絞り孔を有し、少なくとも一部がX線源から発生した1次X線の放射領域内に位置する平坦な試料側の壁と、前記放射された1次X線が前記試料側の壁の検出手段側から蛍光X線の通路に入るのを防止する遮断壁とを有する。
【0013】
この構成によれば、試料側の壁は平坦であるため、加工が容易である。また、妨害線となる1次X線が蛍光X線の通路に入るのを防止する遮断壁を有するため、妨害線を防止でき、S/N比を向上させることができる。
【0014】
本発明の第2の構成にかかる蛍光X線分析装置は、試料と検出手段との間の蛍光X線の通路にコリメータを設けた蛍光X線分析装置であって、前記コリメータは、絞り孔を有する試料側の壁と、X線源から発生した1次X線が前記絞り孔に入射するのを防止するために前記壁の前面側に設けられた遮蔽部であるひさしとを有する。
【0015】
この構成によれば、妨害線となる1次X線が第1のコリメータの絞り孔に入射するのを遮蔽部が防止するので、S/N比を向上させることができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、前記試料の被測定部の大きさに応じてこの被測定部への1次X線の照射強度が最大となる最適位置に試料を移動する移動機構を備え、前記コリメータの絞り孔は、前記検出手段から見て、前記最適位置にある被測定部を見込むように配置されている。この構成によれば、1次X線強度が最大となる最適位置にある被測定部を見込むようにコリメータが配置されているので、試料から発生した蛍光X線を十分に利用することによってS/N比がさらに向上する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の参考例および好適な実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に、本発明の第1参考例にかかる蛍光X線分析装置を示す。この装置は、試料1が固定される試料台2と、試料表面1aに傾斜して1次X線3を照射するX線源4と、試料1から発生した2次X線の一種である蛍光X線5の強度を測定する検出手段6とを備えている。検出手段6は、平行化のためのソーラスリット7、分光器8、検出器9、図示しないゴニオメータ等を備えている。なお、検出手段6は、必ずしもソーラスリット7を通して平行ビームを取り出す平行法のものである必要はなく、いわゆる集中法のものでもよい。その場合は、湾曲結晶を分光器として用い、焦点の位置に検出器が設置され、平行化のためのソーラスリット7は備えない。
【0018】
試料1と検出手段6との間の蛍光X線5の通路には、第1のコリメータ10が設けられている。図2(b)に示すように、第1のコリメータ10は、試料1側の前壁11、検出手段6側の後壁13、上壁35および下壁36からなる縦断面台形状に形成されている。なお、第1のコリメータ10は、板材を曲折することによって、または厚板もしくはブロックを削り出すことによって、形成されている。図2(a)に示すように、試料1側の前壁11は段状に形成され、各段の壁11a,11b,11cに段ごとに異なる径の絞り孔12a,12b,12cを有し、試料1側に長く突出した壁ほど、絞り孔の径は小さい。したがって、第1のコリメータ10は、試料1上の被測定部の形状の大小に応じて絞り孔12a,12b,12cの中から一つの絞り孔を選択して蛍光X線5の通路に配置したとき、径の小さい絞り孔ほど試料1に接近する。これによって、絞り孔12a,12b,12cの径をさらに小さくすることなく、被測定部以外からのX線が絞り孔を通過するのを抑制できる。このように、試料1上の被測定部の形状の大小に応じて絞り孔12a,12b,12cのいずれかを適切に選ぶことによって、検出手段6側から絞り孔12a,12b,12cを通して試料1を見た場合に、試料1のみを見込むことになるので、試料1以外から発生する妨害線が検出器に入射することを極力防止でき、検出感度を低下させることなくS/N比の向上を図ることができる。
また、絞り孔12a,12b,12cは、平坦な板状の前壁11に孔を形成しただけであるため、加工性に優れている。
【0019】
図3に示すように、第1のコリメータ10のソーラスリット7側の壁13は平板状であって、第2の絞り孔14a,14b,14cを有する。第2の絞り孔14a,14b,14cそれぞれは、絞り孔12a,12b,12cとほぼ同一の径、またはこれらよりも大きく、検出手段6側から試料1を見た場合に、試料1のみを見込むように配置されている。なお、第1のコリメータ10は、ソーラスリット7側の壁13を必ずしも設ける必要はなく、試料1側の壁の絞り孔12a,12b,12cのみで蛍光X線5を絞ってもよい。
【0020】
図1に示すように、装置において、コリメータ10は紙面垂直方向Yに延びた図示しないガイド体に移動自在に取り付けられている。コリメータ10の下部にはラック21が取り付けられ、パルスモータ23に連結されたピニオン22とかみ合っている。したがって、第1のコリメータ10は、パルスモータ23の駆動によって、図示しないガイド体に沿ってY方向にスライドすることができる。
【0021】
この装置は、試料1の被測定部の大きさに応じてこの被測定部への1次X線3の照射強度が最大となる最適位置に試料1を移動するXYステージのような移動機構24を備え、試料台2は、移動機構24の上部24aに固定されている。XYステージ上部24aは、下部24bに対して左右方向Xに移動自在に設置され、XYステージ下部24bは、その下のベース25に対し、Y方向に移動自在に設置されている。つまり、XYは、仮想照射面内に設定された直交座標である。なお、移動機構24は、rθステージでもよい。この場合、rθは、仮想照射面内に設定されて、試料表面1aの中心点を極とする極座標である。
【0022】
XYステージ24と第1のコリメータ10とは制御手段26により制御される。すなわち、制御手段26は、試料1の被測定部の形状の大小に応じて、試料1の被測定部への1次X線3の照射強度が最大となる最適位置に試料台2を移動させるようにXYステージ24を制御し、かつ、試料1の被測定部の大きさに応じて、試料1の被測定部から発生した蛍光X線5のみを検出手段6に入射させるように、第1のコリメータ10の絞り孔12a,12b,12cのいずれかを選択するために第1のコリメータ10を移動させるパルスモータ23を制御する。
【0023】
このように、試料1の位置は被測定部の大きさに応じて移動されるため、図4に示すように、第1のコリメータ10の各絞り孔12a,12b,12cの中心位置は、第1のコリメータ10の高さ方向hにおいて同一ではなく、高さ方向hにずれている。これは、検出手段6から見て、試料1の被測定部への1次X線3の照射強度が最大となる最適位置(図22)にある被測定部を見込むように配置されているものであって、このように配置することで、試料1から発生した蛍光X線を十分に検出手段6側へ通過させることができ、S/N比をさらに向上させることができる。
【0024】
ところで、図22に示したように、仮想照射面上における1次X線3の照射強度分布Bは、シミュレーション計算あるいは実験により、あらかじめ求めておくことができる。さらに、その照射強度分布Bにおいて、試料1の被測定部が、例えば、直径D3を有する場合には、試料1の被測定部への1次X線3の照射強度は、図22の斜線部で最大になることも同様に求めることができる。この斜線部に対応する仮想照射面上の位置を、被測定部の直径D3に対する位置として、制御手段26に記憶させておく。同様に、その他の被測定部の直径D1,D2(ただし、D1<D2<D3)に対する位置も、制御手段26に記憶させておく。
【0025】
一方、試料1の被測定部の大きさが決まれば、被測定部から発生した蛍光X線5のみを検出手段6に入射させるような第1のコリメータ10の絞り孔の径と被測定部からの距離も決められる。これに基づいて、例えば、被測定部が3種類の異なる大きさを持つ場合、被測定部の直径D1,D2,D3に対する第1のコリメータ10の絞り孔が、それぞれ12a,12b,12cであることを制御手段26に記憶させておく。
【0026】
次に、この装置の動作について説明する。
まず、図1に示すように、試料1を試料台2に中心を一致させて固定する。そして、被測定部の径の大きさ、例えば径D1である旨を制御手段26に入力すると、制御手段26が、記憶した被測定部の直径D1に対する位置、すなわち、試料1の被測定部への1次X線3の照射強度が最大になる位置に試料台2を移動させるようにXYステージ24を制御する。同時に、制御手段26は、記憶した被測定部の直径D1に対する第1のコリメータ10の絞り孔12aが選択されるよう、すなわち、試料1の被測定部から発生した蛍光X線5のみを検出手段6に入射させるようにパルスモータ23を制御する。パルスモータ23の回転により、第1のコリメータ10を図2(a)のY方向に移動させ、図2(a)に示す第1のコリメータ10の孔12aを試料1と検出手段6との間の蛍光X線5の通路に進入させる。
【0027】
この状態でX線源4から1次X線3を照射して試料1から蛍光X線5が発生すると、蛍光X線5は絞り孔12aを通過する。その際、図3に示すように、第1のコリメータ10のソーラスリット7側の内壁面19で反射したX線31が試料1側の内壁面18に入射して妨害線32を発生させるか、またはソーラスリット7側の内壁面19に入射したX線33が蛍光X線を発生させて試料1側の内壁面18で反射して妨害線34となることはあるが、内壁面18,19における反射によって強度が減衰するため、強い妨害線とはならない。このように、第1のコリメータ10には、図21に示した従来のコリメータ10Bにおける内壁面16aに相当する壁面がないため、妨害線の発生が抑制され、S/N比がさらに向上する。
【0028】
本参考例においては、第1のコリメータ10の絞り孔は3種類としたが、被測定試料に応じていくつであってもよい。
【0029】
次に、本発明の第2参考例について説明する。
本参考例の装置が第1参考例と異なる点は、図5に示すように、第1のコリメータ10と検出手段6との間に、第2のコリメータ40が設けられている点である。図6に示すように、第2のコリメータ40は、平板状であって、第1のコリメータ10の複数の絞り孔12a,12b,12cのいずれよりも径が大きい1つ以上、本参考例では3つの絞り孔42a,42b,42cを有し、蛍光X線5の通路に対してY方向に進退自在に設けられている。
【0030】
第2のコリメータ40も図示しないガイド体に移動自在に取り付けられ、第2のコリメータ40の下部に取り付けられたラック51がパルスモータ53に連結されたピニオン52とかみ合い、コリメータ40は、パルスモータ53の駆動によって、図示しないガイド体に沿ってY方向にスライドすることができる。
【0031】
図22に示した仮想照射面上で1次X線3の照射強度分布Bは、被測定部の直径D1,D2,D3,D4,D5,D6(ただし、D1<D2<D3<D4<D5<D6)に対する位置として制御手段26に記憶させておく。また、被測定部の直径D1,D2,D3それぞれに対する絞り孔は、第1のコリメータ10の絞り孔12a,12b,12cであり、被測定部の直径D4,D5,D6それぞれに対する絞り孔は、第2のコリメータ40の絞り孔42a,42b,42cであることを制御手段26に記憶させておく。
【0032】
したがって、被測定部の直径が大きい場合は、平板状の第2のコリメータ40の絞り孔42a,42b,42cのいずれかが選択される。この場合、第2のコリメータ40の各絞り孔42a,42b,42cと試料1との間には比較的大きな距離があるが、被測定部の直径が大きいので、妨害線の検出を十分防止できる。このように、第1のコリメータ10と検出手段6との間に第2のコリメータ40を設けることで、第1のコリメータ10に6種類の直径の絞り孔を設ける場合に比べて、第1のコリメータのY方向の長さを短くすることができ、Y方向へのスライド量が増大することなく、かつ、第1のコリメータ10がかさばらないで済む。本参考例においては、第2のコリメータの絞り孔は3種類としたが、一個でも複数でもよく、数に制限はなく、被測定試料に応じていくつであってもよい。
【0033】
次に、この装置の動作について説明する。
被測定部の径の大きさが径D1,D2,D3のいずれかである場合、第1参考例と同様に、第1のコリメータ10の孔12a,12b,12cのいずれかを試料1と検出手段6との間の蛍光X線5の通路に進入させる。ここで、第2のコリメータ40は、蛍光X線5の通路からは退避している。
【0034】
試料1の被測定部の径が大きい場合、被測定部の径の大きさが径D3,D4,D5のいずれかである旨を制御手段26に入力すると、制御手段26は、試料1の被測定部への1次X線3の照射強度が最大になる位置に試料台2を移動させるようにXYステージ24を制御する。同時に、制御手段26は、記憶した被測定部の直径D3,D4,D5に対する第2のコリメータ40の絞り孔42a,42b,42cが選択されるようにパルスモータ53を制御し、パルスモータ53の回転により、Y方向に第2のコリメータ40を移動し、第2のコリメータ40の孔42a,42b,42cのいずれかを試料1と検出手段6との間の蛍光X線5の通路に進入させる。ここで、第1のコリメータ10は、蛍光X線5の通路からは退避している。
【0035】
このように、第1のコリメータ10と第2のコリメータ40とをそれぞれ移動させることで、各コリメータ10,40のY方向へのスライド量は、コリメータが一つだけの場合に比べて少なくて済む。
【0036】
次に、本発明の第3参考例について説明する。
本参考例の装置も、図5の第2参考例と同様に、制御手段26によって、第1のコリメータ10、第2のコリメータ40、試料1の位置が制御される。図7に示すように、第1のコリメータ10は、ソーラスリット7側の壁を形成する1枚の基板60上に、第1の突出部61と、その側方に第2の突出部62とが設けられている。第1の突出部61は、試料1側の壁が段状に形成され、この段状の壁11a,11b,11cそれぞれが試料1の分析面の形状の大小に応じた複数の絞り孔12a,12b,12cを有する。第2の突出部62は、角錐台形状であって、第1の突出部61の絞り孔12a,12b,12cよりも径が小さい絞り孔12dを有し、第1の突出部61よりも試料1側に突出している。第2の突出部62は、コーン状、直管状などの円筒形状であってもよい。第2の突出部62は、側壁63に窓を有していてもよく、この場合、絞り孔12dに入射したX線の一部は、窓から第2の突出部62の外部へ出ていくため、第2の突出部62の内壁面に入射することによって発生する蛍光X線や散乱X線のような妨害線はほとんどなく、S/N比はさらに向上する。
【0037】
第1のコリメータ10の基板60は、絞り孔12a,12b,12cとほぼ同一の径、またはこれらよりも大きく、検出手段6側から試料1を見た場合に、試料1のみを見込むように配置された、図3の14a,14b,14cに相当する第2の絞り孔を有している。
【0038】
第2のコリメータ40は平板状であって、図8に示すように、第1の突出部61および第2の突出部62の絞り孔12a,12b,12c,12dよりも径の大きい絞り孔42a,42bを有する。第2のコリメータ40には、また、絞り孔42a,42bの側方に、エネルギ分散型の検出器、例えばSSD(半導体検出器)43が取り付けられ、第1のコリメータ10の絞り孔12a,12b,12c,12dで絞った蛍光X線5を検出することができる。
【0039】
次に、この装置の動作について説明する。
第1のコリメータ10の絞り孔12a,12b,12cまたは第2のコリメータ40の絞り孔42a,42bのいずれか一つを選択して蛍光X線を絞る方法は、第1参考例および第2参考例と同様である。
試料1の被測定部の直径が小さい場合は、第2の突出部62の絞り孔12dが選択されるが、この場合、第2のコリメータ40をY方向に移動させて絞り孔12dの後方に位置させ、絞り孔12dを通過した蛍光X線5は、SSD43で検出する。SSD43は、エネルギ分散型であって、結晶分光をせずに、試料からのX線の波長分布特性を大まかに調べることができる。第1の突出部61の絞り孔12a,12b,12cのいずれかが選択された場合にも、これらの絞り孔12a,12b,12cを通過した蛍光X線をSSD43で検出することができる。この場合、SSD43で大まかに波長特性を調べた後に、第1,第2参考例の場合と同様に、検出手段6を用いて平行法または集中法で、特定の波長範囲について判定を行うことができる。
【0040】
次に、本発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態の装置が第1参考例の装置と共通する点の説明は省略し、異なる点のみを説明する。図9に示すように、試料1と検出手段6との間の蛍光X線5の通路には、第1のコリメータ10が設けられている。第1のコリメータ10は、絞り孔12a,12b,12cを有する平坦な試料1側の前壁11と、図10に示すように、検出手段6側の後壁13と、遮断壁である上壁35と、下壁36とを有している。前壁11は、試料1に接近して、少なくとも一部がX線源4から発生した1次X線3の放射領域内に位置する。上壁35は、放射された1次X線3が反射することなく直接、前壁11の背面側、つまり検出手段6側から蛍光X線5の通路に入るのを防止する。この遮断壁である上壁35がなければ、点線で示す1次X線3aが蛍光X線5の通路に入ることとなり、妨害線となってS/N比を低下させることになる。
本実施形態の装置は、下壁36および後壁13を有するが、これらを設けなくてもよい。
【0041】
本実施形態の第1のコリメータ10は、中空のほぼ直方体形状であり、試料1側の前壁11と検出手段6側の後壁13とに絞り孔12a,12b,12cを形成するだけなので、加工が容易である。また、第1参考例と同様に、図21に示した従来のコリメータ10Bにおける内壁面16aに相当する壁面がないため、妨害線の発生が抑制され、S/N比が向上する。
本実施形態では下壁36を前方に向かって上方へ変位するように傾斜させており、これによって、第1のコリメータ10を試料台2に接触することなく試料1に近づけることができ、S/N比が向上する。
本実施形態は、試料1に1次X線3を上方から照射するいわゆる上面照射であるが、試料に下方から1次X線を照射するいわゆる下面照射であれば、この第1のコリメータ10を、上下反転させて配置すればよい。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態の装置が第2参考例と共通する点の説明は省略し、異なる点のみを説明する。図11に装置の一部の断面を示すように、装置は第1のコリメータ10と第2のコリメータ40とを備え、第1のコリメータ10は、これに取り付けられたスライダ(図示せず)が紙面垂直方向Yに延びたガイドバー(図示せず)に沿ってスライダ(図示せず)が摺動することによって方向Yに移動可能である。コリメータ10の下部には前後2つ割りになったラック21が取り付けられ、パルスモータ23に連結されたピニオン22とかみ合っている。
【0043】
図12に示すように、第2のコリメータ40は径が異なる複数の絞り孔42a,42b,42cを有し、それらの側方にSSD43が取り付けられている。SSD43はカバー(図示せず)で覆われて散乱線が入射するのを防止する。図12に示す第2のコリメータ40の絞り孔42b,42cは円形状の上部が欠けた形状であり、試料1の被測定部から発生した蛍光X線のうち、図11のX線源4であるX線管に取り付けられたフィルタホルダ80で反射した蛍光X線が蛍光X線5の通路に入るのを防止する。
【0044】
第1のコリメータ10と第2のコリメータ40との間に第3のコリメータ70が配置されている。この第3のコリメータ70は、第2のコリメータ40に、例えばねじ71によって取り付けられている。図12に示す第3のコリメータ70の絞り孔72は、第2のコリメータの絞り孔42a,42b,42cよりも小さい。第2のコリメータ40よりも試料1に近い第3のコリメータ70を設けることで、第2のコリメータ40の絞り孔42aのみの場合に比べて妨害線を遮断でき、S/N比を向上することができる。
【0045】
図11に示す第2のコリメータ40も、第1のコリメータ10と同様に、紙面垂直方向Yに延びたガイドバー(図示せず)に沿ってスライダ(図示せず)が摺動することによってY方向に移動可能である。第2のコリメータ40にも前後2つ割りになったラック51が取り付けられ、パルスモータ53に連結されたピニオン52とかみ合っている。
【0046】
第1のコリメータ10は図13(a)に詳しく示すように、ソーラスリット7側の壁を形成する1枚の基板60上に、突出部61が設けられている。突出部61の試料1側の壁11は2段に形成され、試料に接近した壁11aは2つの絞り孔12a,12bを有し、試料から遠ざかった壁11bは径の大きい絞り孔12cを有する。この突出部61の下側角部61aは面取りされているため、突出部61の絞り孔12a,12bを被測定部に近づけて配置しても、突出部61は試料台2に接触しない。第1のコリメータ10の基板60には、また、突出部61の側方に、第2のコリメータ40の絞り孔42a,42b,42cのうちの最大径を有するものと同径以上の絞り孔65が形成されている。
【0047】
図13(b)に示すように、第1のコリメータ10の基板60に形成された絞り孔65にはアテネータ29が取り付けられている。アテネータ29は、平板に蛍光X線通過孔29aを複数設けたものである。第2のコリメータ40の絞り孔42a,42b,42cのいずれかを選択して、この絞り孔を通過した蛍光X線を検出手段6に入射させて蛍光X線分析を行うときに、被測定試料において特定の元素の含有量が大きいために、その蛍光X線強度が過度に強いことがある。この場合、第1のコリメータ10をY方向(図12)に移動させ、アテネータ29が取り付けられた絞り孔65を、第2のコリメータ40の絞り孔42a,42b,42cのいずれかと対応させて蛍光X線5の通路に配置する。これにより、両コリメータ10,40を経て検出手段6に入射する蛍光X線の強度を小さくすることができる。
【0048】
第1のコリメータ10は、図13(a)に示すように、X線源4から発生した1次X線3が絞り孔12a,12b,12cの前縁、つまり試料側の開口縁に入射するのを防止する前壁11の前面側に設けられた遮蔽部であるひさし37を有する。ひさし37は、突出部61に平板を取り付けて形成したものでもよく、また、突出部61の一体物として削りだしたものでもよい。図14に拡大して示すように、ひさし37がなければ、1次X線3が矢印3aで示すように絞り孔12aの開口縁12aaに入射して、矢印3aaで示すように反射し、蛍光X線5の通路内に進入して妨害線となる。これに対し、第1のコリメータはひさし37を有しているので、1次X線3は矢印3bで示すようにひさし37の上面で反射されて蛍光X線5の妨害線とはならない。
【0049】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態の装置が第2実施形態と異なる点は、第1のコリメータ10にはひさし37が設けられておらず、図15に示すように、代わりに前壁11aをX線源4(図11)からのX線が絞り孔12aに直接入射しないように、前壁11aの上部がX線源4の中心軸4aに近づく方向に傾斜させてある。こうして矢印3aのように1次X線3が絞り孔12aの開口縁12aaに入射することはなく、矢印3bで示すように第1のコリメータ10の上壁35の上面で反射され、蛍光X線5の妨害線とはならない。
これに対し、いわゆる下面照射であれば、この第1のコリメータ10を、上下反転させて配置すればよい。
【0050】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態の装置が第2実施形態と異なる点は、図16および図17に示すように、第1のコリメータ10が、ひさし37が延長された延長部81を有し、この延長部81にX線源から発生した1次X線3を絞って、試料1上に入射させるための円形状の1次X線用絞り孔82が形成されていることである。延長部81は遮蔽部として作用して、1次X線が絞り孔12aに入射するのを防止する。1次X線用絞り孔82は1次X線を絞って試料1に入射させることにより、試料1の周辺の試料台2から蛍光X線が発生するのを防止して、測定の精度を向上させる。また、延長部81の下面81aは、試料1に近づけるように、延長部81が蛍光X線5の通路に位置しない範囲で、十分下方、例えば第1のコリメータ10の最下面36aとほぼ同一水平面内となる位置まで下げるのが望ましい。本実施形態では、1次X線用絞り孔82と第1のコリメータ10とは一体であるが、別体であってもよい。
【0051】
第1から第4実施形態においても、第1,2参考例と同様に、試料1の被測定部の大きさに応じてこの被測定部への1次X線の照射強度が最大となる最適位置に試料1を移動する移動機構24を備え、第1および第2のコリメータ10,40の絞り孔は、検出手段6から見て、最適位置にある被測定部を見込むように配置されてもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上のように、本発明の第1の構成によれば、試料側の壁は平坦であるため、加工が容易である。また、妨害線となる1次X線が蛍光X線の通路に入るのを防止する上壁を有するため、妨害線を防止でき、S/N比を向上させることができる。
【0053】
本発明の第2の構成によれば、妨害線となる1次X線が第1のコリメータの絞り孔に入射するのを遮蔽部が防止するので、S/N比を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1参考例にかかる蛍光X線分析装置の概略側面図である。
【図2】(a)は、同蛍光X線分析装置の要部の斜視図であり、(b)は、同装置における第1のコリメータの縦断面図である。
【図3】同蛍光X線分析装置における第1のコリメータの横断面図である。
【図4】同蛍光X線分析装置における第1のコリメータの正面図である。
【図5】本発明の第2参考例にかかる蛍光X線分析装置の概略側面図である。
【図6】同蛍光X線分析装置の要部の斜視図である。
【図7】本発明の第3参考例にかかる蛍光X線分析装置の要部の斜視図である。
【図8】同蛍光X線分析装置における第2のコリメータの正面図である。
【図9】本発明の第1実施形態にかかる蛍光X線分析装置の要部の斜視図である。
【図10】同蛍光X線分析装置における第1のコリメータの縦断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態にかかる蛍光X線分析装置の要部の縦断面図である。
【図12】同蛍光X線分析装置の要部の斜視図である。
【図13】(a)は、同蛍光X線分析装置における第1のコリメータの斜視図であり、(b)は、正面図である。
【図14】同蛍光X線分析装置における第1のコリメータの一部拡大図である。
【図15】本発明の第3実施形態にかかる蛍光X線分析装置における第1のコリメータの一部拡大図である。
【図16】本発明の第4実施形態にかかる蛍光X線分析装置における第1のコリメータの一部拡大図である。
【図17】本発明の第4実施形態にかかる蛍光X線分析装置における第1のコリメータの上面図である。
【図18】従来の蛍光X線分析装置の一例を示す要部の斜視図である。
【図19】(a)は、従来の蛍光X線分析装置の一部の側面断面図であり、(b)は、図18の蛍光X線分析装置の一部の側面断面図である。
【図20】従来の蛍光X線分析装置の他の例を示す要部の斜視図である。
【図21】従来の蛍光X線分析装置におけるコリメータの横断面図である。
【図22】傾斜して1次X線を照射させる場合における、仮想照射面上での1次X線の照射強度分布を示す図である。
【符号の説明】
1…試料、5…蛍光X線、6…検出手段、10…第1のコリメータ、11…試料側の壁、12a,12b,12c…第1のコリメータの絞り孔、24…移動機構、35…上壁、37…遮蔽部、40…第2のコリメータ、42a,42b,42c…第2のコリメータの絞り孔、43…エネルギ分散型検出器。
Claims (3)
- 試料と検出手段との間の蛍光X線の通路にコリメータを設けた蛍光X線分析装置であって、
前記コリメータは、絞り孔を有し、少なくとも一部がX線源から発生した1次X線の放射領域内に位置する平坦な試料側の壁と、前記放射された1次X線が前記試料側の壁の検出手段側から蛍光X線の通路に入るのを防止する遮断壁とを有する蛍光X線分析装置。 - 試料と検出手段との間の蛍光X線の通路にコリメータを設けた蛍光X線分析装置であって、
前記コリメータは、絞り孔を有する試料側の壁と、X線源から発生した1次X線が前記絞り孔に入射するのを防止するために前記壁の前面側に設けられた遮蔽部であるひさしとを有する蛍光X線分析装置。 - 請求項1または2において、前記試料の被測定部の大きさに応じてこの被測定部への1次X線の照射強度が最大となる最適位置に試料を移動する移動機構を備え、前記コリメータの絞り孔は、前記検出手段から見て、前記最適位置にある被測定部を見込むように配置されている蛍光X線分析装置。
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