(発明が解決しようとする課題)
特許文献1に記載のマルチ式空気調和機によれば、停止中の室外熱交換器への冷媒の寝込みを解消することができるが、停止中の室外熱交換器に冷媒が寝込む原因となる室外機の異常を検出することはできない。例えば、室外機に備えられる室外熱交換器には、通常は電子膨張弁などの流量調整弁が接続されており、停止中の室外熱交換器に接続される流量調整弁は通常は閉弁される。しかし、流量調整弁に異物が噛み込んでその流量調整弁を閉弁することができない場合、停止中の室外熱交換器にも冷媒が流れる。このため停止中の室外熱交換器に冷媒が寝込む。このような冷媒の寝込みは、特許文献1に記載のローテーション制御によって解消することはできるが、冷媒が寝込む原因となった流量調整弁の異常を検出することはできない。冷媒の寝込みの根本原因が解消されていない故、再び停止中の室外熱交換器への冷媒の寝込みが生じ、冷媒不足に陥る。
本発明は、室外熱交換器に冷媒が寝込む原因となる室外機の異常を検出することができるマルチ式空気調和機を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、圧縮機及び室外熱交換器を有する複数台の室外機と、室内熱交換器を有する複数台の室内機と、それぞれの室外機とそれぞれの室内機を接続する同一系統の冷媒配管とを備え、運転中の室外機及び運転中の室内機並びにこれらを接続する冷媒配管とにより構成される冷媒回路内に冷媒が流れることにより空調が実施されるマルチ式空気調和機において、室外機の異常を判断する異常判断部を備え、冷媒配管は、それぞれの室外機に備えられる室外熱交換器にそれぞれ接続されるとともに、内部に液冷媒が流通する冷媒液配管を備え、異常判断部は、複数の室外機のうち停止中の室外機に備えられる室外熱交換器に接続される冷媒液配管の温度と運転中の室外機に備えられる室外熱交換器に接続される冷媒液配管の温度との差ΔTに基づいて、停止中の室外機の異常を判断する、マルチ式空気調和機を提供する。
停止中の室外機(停止室外機)に備えられる室外熱交換器(停止室外熱交換器)には冷媒が流されないために、停止室外熱交換器に接続される冷媒液配管にも冷媒は流れない。従って、停止室外熱交換器に接続された冷媒液配管の温度は、周囲の温度、すなわち外気温と同程度である。一方、運転中の室外機(運転室外機)に備えられる室外熱交換器(運転室外熱交換器)には冷媒が流されるために、運転室外熱交換器に接続される冷媒液配管には冷媒が流れる。従って、運転室外熱交換器に接続された冷媒液配管の温度は、内部を流れる液冷媒の温度と同程度である。つまり、停止室外熱交換器に接続される冷媒液配管の温度と、運転室外熱交換器に接続される冷媒液配管の温度とは、外気温度と液冷媒温度との差分だけ異なり、両者の差ΔTは一定の値以上の大きさである。
しかし、停止室外機に何等かの異常が発生し、その異常が原因で停止室外熱交換器に冷媒が流された場合、停止室外熱交換器に接続される冷媒液配管にも冷媒は流れる。従って、この場合、停止室外熱交換器に接続された冷媒液配管の温度は、その内部を流れる液冷媒の温度と同程度である。つまり、停止室外熱交換器内に冷媒が流れてしまうような何等かの異常が停止室外機に発生している場合、停止室外熱交換器に接続される冷媒液配管の温度と、運転室外熱交換器に接続される冷媒液配管の温度はほぼ同程度であり、両者の差ΔTは一定の値未満の大きさである。
本発明は、上記の点に着目し、複数の室外機のうち停止室外機に備えられる停止室外熱交換器に接続される冷媒液配管の温度と運転室外機に備えられる運転室外熱交換器に接続される冷媒液配管の温度との差ΔTに基づいて、停止室外機の異常を判断している。よって、停止室外熱交換器に冷媒が寝込む原因となる停止室外機の異常を速やかに検出することができる。
上記発明において、冷媒液配管とは、気相冷媒が凝縮器により凝縮されて液相にされた冷媒が流れる配管である。従って、室外熱交換器が気相冷媒を凝縮して液化する凝縮器として機能する場合、冷媒液配管は、室外熱交換器から流出された冷媒が流れる配管であり、室外熱交換器が液相冷媒を蒸発して気化する蒸発器として機能する場合、冷媒液配管は、室外熱交換器に流入する冷媒が流れる配管である。この場合、冷媒液配管は、冷房時に室外熱交換器から流出する冷媒が流れる配管であり、暖房時に室外熱交換器に流入する冷媒が流れる配管である。また、冷媒液配管は、室外熱交換器と室内熱交換器とを接続する冷媒配管であるのが良い。なお、冷媒液配管を流れる冷媒は、理想的に液相であればよく、気液二相冷媒であってもよい。
また、本発明に係るマルチ式空気調和機は、それぞれの室外機に備えられる室外熱交換器に接続される冷媒液配管に介装され、冷媒液配管を流通する液冷媒の流量を調整可能な流量調整弁を備えるのがよい。そして、異常判断部は、差ΔTに基づいて、停止中の室外機に備えられる室外熱交換器に接続される冷媒液配管に介装される流量調整弁の異常を判断するものであるとよい。
また、異常判断部は、差ΔTが予め定められる温度差未満であるときに、停止中の室外機に異常が発生していると判断するとよい。或いは、異常判断部は、差ΔTが予め定められる温度未満であるときに、停止中の室外機に備えられる室外熱交換器に接続される冷媒液配管に介装される流量調整弁に異常が発生していると判断するとよい。これによれば、停止室外熱交換器に冷媒が寝込む原因となる停止室外機の異常、例えば停止室外熱交換器に接続された冷媒液配管に介装された流量調整弁の異常、特に、その流量調整弁が閉弁することができないといった異常を、速やかに検出することができる。
また、異常判断部は、差ΔTが予め定められる温度差未満である状態が、予め定められた時間を越えて継続する場合に、停止中の室外機に異常が発生していると判断するとよい。或いは、異常判断部は、差ΔTが予め定められる温度差未満である状態が、予め定められた時間を越えて継続する場合に、停止中の室外機に備えられる室外熱交換器に接続される冷媒液配管に介装される流量調整弁に異常が発生していると判断してもよい。これによれば、差ΔTが所定温度未満である状態が所定時間継続して初めて停止室外機或いは停止室外機に備えられる室外熱交換器に接続される冷媒液配管に介装される流量調整弁に異常が発生していると判断されるため、停止室外機或いは流量調整弁の異常の発生の誤検知を防止することができ、異常の発生の精度を高めることができる。
また、本発明に係るマルチ式空気調和機は、運転中の室外機及び運転中の室内機並びにこれらを接続する冷媒配管とにより構成される冷媒回路を流れる冷媒が不足しているか否かを判断する冷媒不足判断部を備えるのがよい。そして、異常判断部は、差ΔT及び冷媒不足判断部による判断結果に基づいて、停止中の室外機の異常を判断するのがよい。この場合、異常判断部は、差ΔTが予め定められる温度差未満である状態が、予め定められた時間を越えて継続し、且つ、冷媒不足判断部によって冷媒回路を流れる冷媒が不足していると判断された場合に、停止中の室外機が異常であると判断するのがよい。
停止室外機に異常が生じていなくても、偶然により、停止室外機に備えられる冷媒液配管の温度と運転室外機に備えられる冷媒液配管の温度が近い場合があり得る。このような場合、差ΔTのみで停止室外機の異常を判断することは難しい。しかし、停止室外機に実際に異常が発生している場合、特に、停止室外熱交換器内に冷媒が流入する原因となる異常が発生している場合、運転中の室外機及び室内機並びにこれらを接続する冷媒配管とにより構成される冷媒回路内を流れる冷媒が不足する。そこで、本発明では、差ΔTが所定温度差未満であるという判断要因と、冷媒不足判断部によって冷媒回路を流れる冷媒が不足しているという判断要因とに基づいて、停止室外機の異常を判断している。このようにして停止室外機の異常を判断することで、異常の検知精度をより高めることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るマルチ式空気調和機の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るマルチ式空気調和機1は、複数の室外機10a,10bと、複数の室内機20a,20b,20c,20dと、冷媒配管30と、制御装置40とを備える。
冷媒配管30は、冷媒液配管30a及び冷媒ガス配管30bとを有する。冷媒液配管30a内には、凝縮された液冷媒或いは気液二相冷媒が流れ、冷媒ガス配管30b内には、蒸発されたガス冷媒或いは気液二相冷媒が流れる。また、それぞれの室外機10a,10bに冷媒液配管30a及び冷媒ガス配管30bが接続され、それぞれの室内機20a,20b,20c,20dに冷媒液配管30a及び冷媒ガス配管30bが接続される。
冷媒液配管30aと冷媒ガス配管30bは、それぞれの室外機10a,10b及びそれぞれの室内機20a,20b,20c,20d内にて連通する。さらに、それぞれの室外機10a,10bに接続された冷媒液配管30a及びそれぞれの室内機20a,20b,20c,20dに接続された冷媒液配管30aは、図1に示すように連通しており、それぞれの室外機10a,10bに接続された冷媒ガス配管30b及びそれぞれの室内機20a,20b,20c,20dに接続された冷媒ガス配管30bは、図1に示すように連通している。従って、複数の室外機10a,10b及び複数の室内機20a,20b,20c,20dは、同一系統の冷媒配管30によって連結される。そして、運転中の室外機及び運転中の室内機並びにこれらを接続する冷媒配管により冷媒回路が構成され、冷媒回路内に冷媒が流れることにより、空調が実施される。
図2は、室外機10a,10bの内部構成及び室内機20a,20b,20c,20dの内部構成を示す図である。図2に示すように、室外機10a,10bは、圧縮機11と、オイルセパレータ12と、四方弁13と、室外熱交換器14と、室外側電子膨張弁15と、サブ熱交換器16と、過冷却コイル17と、アキュムレータ18とを備える。また、室内機20a,20b,20c,20dは、室内側電子膨張弁21と、室内熱交換器22とを備える。これらの構成要素が、冷媒配管としての第1配管31、第2配管32、第3配管33、第4配管34、第5配管35、及びバイパス配管36により接続される。
圧縮機11は例えばガスエンジン等の動力源に接続されており、動力源からの駆動力を受けて作動する。圧縮機11は吸入口11a及び吐出口11bを有する。圧縮機11は、吸入口11aから冷媒ガスを吸入し、内部で冷媒ガスを圧縮し、圧縮した冷媒ガスを吐出口11bから吐出するように作動する。なお、図2には2台の圧縮機が示されているが、1つの室外機に備えられる圧縮機の個数は1個でもよいし、3個以上でもよい。
圧縮機11の吐出口11bは第1配管31の一端に接続される。第1配管31の途中にオイルセパレータ12が介装される。オイルセパレータ12は、圧縮機11の吐出口11bから吐出された潤滑油を回収し、回収した潤滑油を圧縮機11の吸入口11a側に戻す。
第1配管31の他端に四方弁13が接続される。この四方弁13には、第1配管31の他、第2配管32、第4配管34、及び第5配管35が接続される。四方弁13は、第1配管31が第2配管32に接続され且つ第4配管34が第5配管35に接続される冷房時切換状態と、第1配管31が第4配管34に接続され且つ第2配管32が第5配管35に接続される暖房時切換状態とを、選択的に実現するように構成される。
第2配管32は四方弁13と室外熱交換器14とを接続する。室外熱交換器14は、内部に流入する冷媒と外気とを熱交換させる。また、第3配管33は室外熱交換器14と室内熱交換器22とを接続する。室内熱交換器22は、内部に流入する冷媒と室内空気とを熱交換させる。第3配管33の途中には、過冷却コイル17が介装される。過冷却コイル17は、内部を通る冷媒を過冷却させる。また、第3配管33の位置Aから位置Bまでの間の部分は、2つの配管(配管L1、配管L2)に分岐している。配管L1には一方向弁19が介装され、配管L2には室外側電子膨張弁15が介装される。冷房時には冷媒は配管L1を流れ、暖房時には冷媒は配管L2を流れる。室外側電子膨張弁15は、そこを流れる冷媒を膨張させる。また、室外側電子膨張弁15は開度調整可能な流量調整弁でもあり、第3配管33を流れる冷媒(液冷媒)の流量を調整することができる。
第4配管34は四方弁13と室内熱交換器22とを接続する。また、第5配管35は四方弁13と圧縮機11の吸入口11aとを接続する。第5配管35の途中にアキュムレータ18が介装される。アキュムレータ18により第5配管35を流れる液冷媒が蓄積される。よって、吸入口11aにガス冷媒のみが吸入される。
また、第3配管33と第5配管35がバイパス配管36により接続される。バイパス配管36にサブ熱交換器16が介装される。バイパス配管36を流れる冷媒は、サブ熱交換器16に入り、サブ熱交換器16にて、例えば圧縮機11の動力源たるガスエンジンを冷却した冷却水と熱交換する。
図2に示すように、第3配管33及び第4配管34により、室外機10a,10bが室内機20a,20b,20c,20dに連結される。従って、第3配管33及び第4配管34は、それぞれ、室外機側に設けられた配管部分と室内機側に設けられた配管部分とを有する。第3配管33が図1に示す冷媒液配管30aに相当し、第4配管34が図1に示す冷媒ガス配管30bに相当する。また、第1配管31、第2配管32、第5配管35、及びバイパス配管36は、室外機内に配設される。なお、それぞれの室外機10a,10bに、第1配管31、第2配管32、第3配管33、第4配管34、第5配管35、バイパス配管36がそれぞれ配設される。従って、それぞれの室外機10a,10bの室外熱交換器14に、それぞれ第3配管33(冷媒液配管)が接続されている。
また、冷媒回路の各所に温度センサ及び圧力センサが取り付けられる。これらの各種センサのうち、吐出温度センサ51は第1配管31に取り付けられており、圧縮機11から吐出された冷媒の温度(吐出温度)T1を検出する。吸入温度センサ52は第5配管35に取り付けられており、圧縮機11に吸入される冷媒の温度(吸入温度)T2を検出する。また、液管温度センサ53は、第3配管33に取り付けられており、第3配管33の温度(液管温度)T3を検出する。さらに、吸入圧力センサ54は第5配管35に取り付けられており、圧縮機11に吸入される冷媒の圧力(吸入圧力)Pを検出する。なお、液管温度センサ53は、第3配管33のうち室外機10a,10b内に配設されている配管部分に取り付けられる。
また、図1に示すように、制御装置40は、室外機10a,10b及び室内機20a,20b,20c,20dに電気的に接続されており、室外機10a,10b及び室内機20a,20b,20c,20dの動作を制御する。また、制御装置40は、それぞれの室外機10a,10bに設けられている吐出温度センサ51が検出した吐出温度T1、吸入温度センサ52が検出した吸入温度T2、液管温度センサ53が検出した液管温度T3、吸入圧力センサ54が検出した吸入圧力Pを、それぞれ取得する。
制御装置40は、図1及び図2に示すように、異常判断部41及び冷媒不足判断部42を備える。異常判断部41は、停止している室外機に異常が発生しているか否かを判断する。冷媒不足判断部42は、運転している室外機及び室内機により構成される冷媒回路内を流れる冷媒が不足しているか否かを判断する。
次に、上記構成のマルチ式空気調和機1の空調動作について、簡単に説明する。なお、図2において、冷房時における冷媒の流れが実線の矢印により示され、暖房時における冷媒の流れが点線の矢印により示される。まず、冷房運転について説明する。ガスエンジンなどの動力源の駆動により圧縮機11が作動すると、圧縮機11は、第5配管35内の低圧ガス冷媒を吸入口11aから吸入するとともに吸入した低圧ガス冷媒を圧縮して高温高圧ガス冷媒を生成する。そして、生成した高温高圧ガス冷媒を吐出口11bから吐出する。吐出口11bから吐出された高温高圧ガス冷媒は第1配管31を流れ、オイルセパレータ12を経由して四方弁13に入る。
冷房時には、四方弁13は冷房時切換状態にされる。従って、四方弁13によって第1配管31が第2配管32に接続される。そのため第1配管31内の高温高圧ガス冷媒は四方弁13を経由して第2配管32に流れる。第2配管32に流れた高温高圧ガス冷媒は室外熱交換器14に流入する。室外熱交換器14に流入した高温高圧ガス冷媒は室外熱交換器14内を流通する間に外気に熱を吐き出して凝縮する。つまり、室外熱交換器14は冷房時に凝縮器として機能する。
外気に熱を吐き出して凝縮した冷媒は一部液化し、室外熱交換器14から室外機側の第3配管33に流出する。室外機側の第3配管33に流出した液冷媒(或いは気液二相冷媒)は、配管L1を通過し、過冷却コイル17を経た後に室内機側の第3配管33に流れる。そして、室内機側の第3配管33に介装された室内側電子膨張弁21を通る。この室内側電子膨張弁21で冷媒が膨張することにより蒸発しやすいように低圧化される。その後、冷媒は室内熱交換器22に流入する。室内熱交換器22に流入した冷媒は室内熱交換器22内を流通する間に室内空気の熱を奪って蒸発する。つまり、室内熱交換器22は冷房時に蒸発器として機能する。このとき冷媒が室内空気の熱を奪うことによって室内空気が冷やされて、室内が冷房される。
室内空気の熱を奪って蒸発した冷媒は一部気化し、室内熱交換器22から室内機側の第4配管34に流出する。室内熱交換器22から室内機側の第4配管34に流出した冷媒は、さらに室外機側の第4配管34に流れ、やがて四方弁13に入る。冷房時には四方弁13により第4配管34が第5配管35に接続される。そのため第4配管34内の冷媒は四方弁13を経由して第5配管35に流れ、さらにアキュムレータ18に導入される。アキュムレータ18では導入された冷媒が気液分離される。そして、低温低圧のガス冷媒のみが取り出されて圧縮機11の吸入口11aに帰還する。このような冷媒の循環サイクルが繰り返されることにより、室内冷房が継続される。
次に、暖房運転について説明する。圧縮機11が作動すると、圧縮機11の吐出口11bから第1配管31に高温高圧のガス冷媒が吐出される。高温高圧ガス冷媒は第1配管31を流れ、オイルセパレータ12を経由して四方弁13に入る。暖房時には四方弁13は暖房時切換状態にされる。従って、四方弁13によって第1配管31が第4配管34に接続される。そのため第1配管31内の高温高圧ガス冷媒は四方弁13を経由して室外機側の第4配管34に流れる。室外機側の第4配管34に流れた高温高圧ガス冷媒はさらに室内機側の第4配管34を流れた後に室内熱交換器22に流入する。室内熱交換器22に流入した高温高圧ガス冷媒は室内熱交換器22内を流通する間に室内空気に熱を吐き出して凝縮する。つまり、暖房時には室内熱交換器22が凝縮器として機能する。このとき高温高圧ガス冷媒から吐き出された熱によって室内空気が暖められて、室内が暖房される。
室内空気に熱を吐き出して凝縮した冷媒は一部液化し、室内熱交換器22から室内機側の第3配管33に流出する。そして、第3配管33の途中に介装された室内側電子膨張弁21で膨張することにより中圧化される。その後、室外機側の第3配管33を流れ、過冷却コイル17を経由し、さらに配管L2に流れ、配管L2に介装された室外側電子膨張弁15を通る。この室外側電子膨張弁15を冷媒が通ることにより冷媒が低圧化される。室外側電子膨張弁15を通った冷媒は室外熱交換器14に流入する。室外熱交換器14に流入した冷媒は室外熱交換器14内を流通する間に外気の熱を奪って蒸発する。つまり、暖房時には室外熱交換器14が蒸発器として機能する。
外気の熱を奪って蒸発した冷媒は一部気化し、室外熱交換器14から第2配管32に流出し、その後、四方弁13に入る。暖房時には四方弁13により第2配管32が第5配管35に接続される。そのため第2配管32内の冷媒は四方弁13を経由して第5配管35に流れ、さらにアキュムレータ18に導入される。アキュムレータ18では導入された冷媒が気液分離される。そして、低温低圧のガス冷媒のみが圧縮機11の吸入口11aに帰還する。このような冷媒の循環サイクルが繰り返されることにより、室内暖房が継続される。
暖房運転時において、室内熱交換器22を流出した冷媒は、上記したように室内側電子膨張弁21、過冷却コイル17及び室外側電子膨張弁15を経て、室外気側の第3配管33から室外熱交換器14に流入するが、それとは別に、一部の冷媒は、室外機側の第3配管33から分岐したバイパス配管36を流れる。そして、バイパス配管36に介装されたサブ熱交換器16に導入される。サブ熱交換器16に導入された冷媒は、例えば圧縮機11の動力源たるガスエンジンを冷却することによって加熱した冷却水の熱を奪うことにより加熱される。加熱された冷媒は、サブ熱交換器16から流出した後に、バイパス配管36を流れ、さらに第5配管35に入り、その後、アキュムレータ18に導入される。このようにしてシステム中の排熱を回収して冷媒を加熱することにより、効率的な空調運転を実施することができる。
ところで、マルチ式空気調和機においては、運転に必要な容量に応じて室外機の運転台数が決められる。よって、複数台の室外機のうち運転中の室外機(運転室外機)と停止中の室外機(停止室外機)が混在することもある。運転室外機と停止室外機が混在する場合、停止室外機に備えられる室外熱交換器(停止室外熱交換器)14に冷媒が流入しないように、停止室外熱交換器14に接続される第3配管(停止第3配管)33に介装される室外側電子膨張弁(停止室外側電子膨張弁)15の開度は0、すなわち全閉にされる。
しかしながら、異物の噛み込み等によって停止室外側電子膨張弁15が作動異常を起こし、全閉することができなくなった場合、停止室外熱交換器14へも冷媒が流入する。停止室外熱交換器14に冷媒が流入すると、運転室外機及び運転中の室内機(運転室内機)並びにこれらを接続する冷媒配管により構成される冷媒回路内を流れる冷媒が不足するといった不具合を生じる。また、冷媒が寝込んでいる室外熱交換器14を持つ停止室外機に対してローテーション運転が実施されたような場合、冷媒が寝込んでいた分だけ冷媒量が増加するために冷媒量が圧縮機11の許容冷媒量を越える。冷媒量が圧縮機11の許容冷媒量を越えた状態でローテーション運転等が実施された場合、圧縮機11が液圧縮を起こして重大な故障を招く虞がある。従って、停止室外側電子膨張弁15への異物の噛み込み等を含む停止室外機の異常を迅速に検知する必要がある。
本実施形態においては、図2に示すように、制御装置40が異常判断部41を備える。そして、異常判断部41が異常検知処理を実行することにより、上記した不具合の発生、すなわち停止室外熱交換器14への冷媒の流入を素早く検知して異常を報知することができる。
図3は、異常判断部41が異常検知処理を実行するための制御ルーチンの流れを示すフローチャートである。図3に示す制御ルーチンは、所定の短時間ごとに繰り返し実行される。図3に示すルーチンが起動すると、異常判断部41は、まず、ステップ(以下、ステップをSと略記する)10にて、1台の室外機のみが運転されている状態であるか否かを判断する。なお、説明を簡単にするため、この例では2台の室外機を備えるマルチ式空気調和機について説明する。従って、S10の処理は、運転室外機と停止室外機が混在しているか否かの判断をしていることになる。
S10にて、1台の室外機のみが運転されている状態ではないと判断した場合(S10:No)、すなわち全ての室外機が運転されている状態である場合、或いは全ての室外機が停止している状態である場合、異常判断部41はこのルーチンを終了する。一方、1台の室外機のみが運転されている状態であると判断した場合(S10:Yes)、異常判断部41は、タイマによる時間計測を開始する(S12)。次いで、温度差ΔTを計算する(S14)。ここで、温度差ΔTとは、運転室外機に備えられる運転室外熱交換器14に接続された第3配管(運転第3配管)33に設けられた液管温度センサ(運転液管温度センサ)53により検出された温度T3aと、停止第3配管33に設けられた液管温度センサ(停止液管温度センサ)53により検出された温度T3bとの差の絶対値|T3a−T3b|である。
次いで、異常判断部41は、計算した温度差ΔTが2℃未満であるか否かを判断する(S16)。ここで、温度差ΔTと比較される温度(本実施形態では2℃)は予め決められる。温度差ΔTが2℃以上であると判断された場合(S16:No)、異常判断部41はタイマtをリセットし(S20)、その後、このルーチンを終了する。
一方、S16にて、温度差ΔTが2℃未満であると判断した場合(S16:Yes)、異常判断部41はS18に処理を進め、タイマによる計測時間tが5分を越えたか否かを判断する。ここで、タイマによる計測時間tと比較される時間は予め定められる。計測時間tが5分以下である場合(S18:No)、処理をS14に戻し、再度温度差ΔTを計算し(S14)、計算した温度差ΔTが2℃未満であるか否かを判断する(S16)。S14,S16,S18の処理を繰り返すことにより、温度差ΔTが2℃未満である状態が5分を越えて継続している否かが判断される。
ところで、停止室外側電子膨張弁15が正常に全閉している場合、その停止室外側電子膨張弁15が介装されている停止第3配管33内に冷媒は流れない。従って、正常に停止室外側電子膨張弁15が全閉している場合、停止液管温度センサ53により検出される温度T3bは、ほぼ室外温度(外気温度)に等しいはずである。
しかし、停止室外側電子膨張弁15に、異物の噛み込み等により閉じることができないような異常が発生しているときは、停止第3配管33内への冷媒の進入を阻止することができない。このため運転室外機からの液冷媒(或いは気液二相冷媒)が停止第3配管33を流れ、さらに停止室外側電子膨張弁15を経由して停止室外熱交換器14に流れ込む。この場合、停止液管温度センサ53により検出される温度T3bは、停止第3配管33を流れる液冷媒の温度にほぼ等しいはずである。
また、運転室外機に備えられる運転室外熱交換器14に接続される運転第3配管33には液冷媒が流れるため、運転液管温度センサ53により検出される温度T3aは、運転第3配管33を流れる液冷媒の温度にほぼ等しいはずである。つまり、停止室外側電子膨張弁15に全閉不能の異常が発生している場合、運転液管温度センサ53により検出される温度T3aと停止液管温度センサ53により検出される温度T3bとはほとんど同じであり、そのため温度差ΔTは小さい値を示す。一方、停止室外側電子膨張弁15が正常に機能している(すなわち全閉している)場合、運転液管温度センサ53により検出される温度T3aと停止液管温度センサ53により検出される温度T3bとは外気温と液冷媒の温度との差分の開きがあり、その分だけ温度差ΔTは大きい値を示す。本実施形態では、このような温度差ΔTの差異に基づいて、停止室外側電子膨張弁15が全閉不能な異常、すなわち、停止室外熱交換器14に冷媒が流れて冷媒の寝込みを起こすような異常の発生を検知する。具体的には、温度差ΔTが、予め定められた温度(2℃)未満の状態が予め定められた時間(5分)以上継続したときに、このような異常が起きたと判断する。
したがって、異常判断部41は、S18にてタイマtによる計測時間が5分を越えていると判断したとき(S18:Yes)、すなわち、温度差ΔTが2℃未満の状態が5分以上継続したとき、S22に処理を進め、停止室外機の異常を報知する。報知方法としては、音を発して報知してもよいし、制御盤に設けられた異常ランプを点灯させてもよい。これにより異常を使用者、管理者、或いはサービスマンに報知する。また、異常報知後に、マルチ式空気調和機1の駆動を停止してもよい。そして、停止室外機の異常、例えば停止室外側電子膨張弁15への異物の噛み込みなどを解消することにより、上記した圧縮機11における液圧縮等の重大な故障が未然に回避される。異常判断部41は、S22にて異常を報知した後に、このルーチンを終了する。
このように、異常判断部41は、停止室外機に備えられる停止室外熱交換器14に接続される停止第3配管33(冷媒液配管)の温度T3bと運転室外機に備えられる運転室外熱交換器14に接続される運転第3配管33(冷媒液配管)の温度T3aとの差ΔTに基づいて、停止室外機の異常を判断している。より具体的に言えば、異常判断部41は、温度差ΔTが予め定められる温度差未満(本実施形態では2℃未満)である状態が、予め定められた時間(本実施形態では5分)を越えて継続する場合に、停止室外側電子膨張弁15(流量調整弁)に異常が発生していると判断している。よって、停止室外熱交換器14に冷媒が寝込む原因となる停止室外側電子膨張弁15の異常、特に、停止室外側電子膨張弁15が閉弁することができないといった異常を速やかに検出することができる。
また、異常判断部41は、温度差ΔTが2℃未満である場合に即座に異常報知を発するのではなく、温度差ΔTが2℃未満の状態が5分を越えて継続したときに初めて異常報知を発している。このため、液管温度センサ53の誤動作等で温度差ΔTが一時的に2℃未満になったような場合に異常報知を発するような誤報知を防止できる。よって、異常検知の精度を高めることができる。
本実施形態に示す異常検知処理は、特に暖房時に有効である。暖房時には外気温度は低いので、停止室外機が正常である場合、停止液管温度センサ53により検出される温度T3bと運転液管温度センサ53により検出される温度T3aとの差ΔTは大きい。そのため、停止室外機が正常である場合における温度差ΔTと停止室外機が異常である場合における温度差ΔTとの差が大きく、それゆえに停止室外機の異常を検知しやすい。この場合、異常判断部41は、異常検知処理を実行するにあたり、図3のS16の判断がYesであるときに、S18を飛ばしてS22に進み、異常報知をしても良い。つまり、一度でも温度差ΔTが所定値未満になった場合に、停止室外機に異常が発生していると判断してもよい。さらにこの場合、S16にて温度差ΔTに比較される温度を比較的大きい値(例えば5℃)にすることにより、異常検知の精度を高めることができる。
異常報知の検知精度をより高めるために、異常判断部41は、図3に示す異常検知処理ルーチンに変えて、図4に示す異常検知処理ルーチンを実行することができる。
図4に示す異常検知処理ルーチンは、基本的には図3に示す異常検知処理ルーチンと同じである。従って、図3と図4の異常検知処理ルーチンにおいて、同一の処理には同一のステップ番号を記す。図4の異常検知処理ルーチンが図3の異常検知処理ルーチンと異なるところは、S18の判断結果がYesであるとき、すなわち、温度差ΔTが2℃未満である状態が5分を越えて継続している場合、異常判断部41はS19に処理を進め、運転室外機と運転室内機並びにこれらを接続する冷媒回路により構成される冷媒回路を流れる冷媒が不足しているか否かを判断する。異常判断部41は、S19における判断結果を、冷媒不足判断部42から取得することができる。
冷媒回路内を流れる冷媒が不足すると、圧縮機11から吐出される冷媒の温度(吐出温度T1)及び圧縮機11に吸入される冷媒の温度(吸入温度T2)が上昇する傾向にあり、また、冷媒回路内を流れる冷媒が不足すると、圧縮機11に吸入される冷媒の圧力(吸入圧力P)が低下する傾向にある。従って、冷媒不足判断部42は、運転室外機に備えられる吐出温度センサ51が検出する吐出温度T1、吸入温度センサ52が検出する吸入温度T2、あるいは、吸入圧力センサ54が検出する吸入圧力Pに基づいて、冷媒不足を判断することができる。
異常判断部41は、S19にて冷媒回路内の冷媒が不足していると判断した場合(S19:Yes)、停止室外機に異常が発生していると判断して、異常を報知する(S22)。S19にて冷媒回路内の冷媒が不足していないと判断した場合(S19:No)、異常判断部41はタイマtをリセットし(S20)、その後、このルーチンを終了する。
このように、図4に示す制御ルーチンによれば、異常判断部41は、温度差ΔT及び冷媒不足判断部42による判断結果に基づいて停止室外機に異常が発生しているか否かを判断する。具体的には、異常判断部41は、温度差ΔTが所定値(本実施形態では2℃)未満である状態が所定時間(本実施形態では5分)を越えて継続し、且つ、冷媒不足判断部42が、運転室外機及び運転室内機により構成される冷媒回路内の冷媒が不足していると判断した場合に、停止室外機に異常が発生していると判断する。
停止室外機に異常が生じていなくても、偶然により、停止第3配管33の温度(液管温度)T3bと運転第3配管33の温度(液管温度)T3aが近い場合があり得る。このような場合、温度差ΔTのみで停止室外機の異常を判断することは難しい。しかし、停止室外機に実際に異常が発生している場合、特に、停止室外熱交換器14内に冷媒が流入する原因となる異常が発生している場合、運転室外機及び運転室内機により構成される冷媒回路内を流れる冷媒が不足する。そこで、図4に示す制御ルーチンでは、温度差ΔTが2℃未満である状態が5分を越えて継続したという判断要因(S16、S18)と、冷媒回路内を流れる冷媒が不足しているという判断要因(S19)とに基づいて、停止室外機の異常を判断している。このようにして停止室外機の異常を判断することで、異常の検知精度をより高めることができる。
また、異常判断部41は、図5に示す異常処理検知ルーチンを実行してもよい、図5に示す異常処理検知ルーチンは、まず最初にS5にて運転室外機及び運転室内機により構成される冷媒回路内の冷媒が不足しているか否かを判断する。そして、冷媒が不足している場合(S5:Yes)に、図1に示す異常処理検知ルーチンを開始し、冷媒が不足していない場合(S5:No)、異常判断部41はこのルーチンを終了する。異常判断部41がこのような制御ルーチンを実行することによっても、異常判断の検知精度を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、2台の室外機を備えるマルチ式空気調和機を例示したが、備えられる室外機は2台以上であればよい。また、上記実施形態では、異常判断部41が、室外熱交換器に接続される第3配管33に介装された室外側電子膨張弁15の異常を検知しているが、停止室外機に冷媒が流れてしまう異常であれば、どのような異常を検知することもできる。また、上記実施形態では、温度差ΔTが2℃未満である状態が5分を越えて継続した場合に、停止室外機を異常と判断したが、温度差ΔTが予め定められた温度未満である状態が予め定められた時間を越えて継続した場合に、停止室外機の異常を判断すればよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。