本発明は、洗浄水の排出量を切り替えるための構成として、排水口を囲むように設けられた筒体の側面に形成された開口部を筒体の外側から開閉する第1切替弁および第2切替弁を備える構成において、筒体の内外の差圧を緩和すべく第2切替弁等の形状を工夫することにより、筒体の内外の圧力差に起因して第2切替弁の開弁動作が不安定となることを防止し、洗浄水の排出量を安定させようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
まず、本実施形態に係る洗浄水タンク装置の適用例について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器の一部断面図を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る水洗大便器100は、洗浄水タンク装置1と便器本体2とを備える。本実施形態に係る洗浄水タンク装置1は、便器本体2に対して設けられ、便器本体2を洗浄する洗浄水の貯水、および便器本体2に対する洗浄水の排水を行う。便器本体2は、洗浄水タンク装置1から供給される洗浄水を受けるボウル部3と、ボウル部3の上縁部に形成されたリム部4と、洗浄水タンク装置1から排出された洗浄水をボウル部3へと導く導水路5とを有する。ボウル部3の上端部の内壁面には、導水路5から供給される洗浄水を吐水する吐水口6が開口している。吐水口6から吐水された洗浄水は、ボウル部3の壁面に沿って旋回しながら下降してボウル部3を洗浄する。なお、図示は省略するが、便器本体2においては、ボウル部3の下方の溜水部に連通する排水トラップ管路や、溜水部の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるために導水路5からの洗浄水を溜水部の上方の位置にて吐水する吐水口等が形成されている。
このような水洗大便器100において、洗浄水タンク装置1は、便器本体2の導水路5の流入側の開口部が位置する後部上面に載置固定された状態で設けられる。すなわち、洗浄水タンク装置1は、その洗浄水タンク12の底面12a(図2参照)に設けられた排水口14が導水路5に対して上側から臨むように設けられる。そして、洗浄水タンク12から排出される洗浄水が、排水口14を介して導水路5へと排水され、ボウル部3へと供給される。なお、本実施形態に係る洗浄水タンク装置1は、図1に示す便器本体2のような水の落差による流水作用で汚物を押し出す先落とし式の水洗便器のほか、他のタイプの水洗便器(例えば、サイホン作用で汚物を吸い込むように排出するサイホン式の便器等)であっても適用可能である。
本実施形態に係る洗浄水タンク装置1は、便器本体2に対する洗浄水の排出量に関し、使用者等による操作によって便器本体2に対する洗浄水の排出量が3段階に切り替わる構成を備える。具体的には、洗浄水タンク装置1は、洗浄水の排出量が多い順に、大洗浄を行う大洗浄モード、小洗浄を行う小洗浄モード、およびエコ小洗浄を行うエコ小洗浄モードの3つの洗浄モードを有する。洗浄水タンク装置1の各洗浄モードでの動作については後述する。
次に、本実施形態に係る洗浄水タンク装置1の構成について説明する。洗浄水タンク装置1は、便器本体2を洗浄する洗浄水の貯水および排水を行うものである。図2に示すように、本実施形態に係る洗浄水タンク装置1は、外装タンク11と、外装タンク11内に設けられ、便器本体2に供給される洗浄水を貯水する洗浄水タンク12とを備える。外装タンク11は、例えば陶器製の部材により構成され、上側が開口した箱状の部材であって洗浄水タンク12を収容する空間を形成する本体部11aと、この本体部11aの上側の開口部を覆うように取り付けられる蓋体11bとを有する。
外装タンク11を構成する蓋体11bには、その上面側において手洗い鉢11cが形成されている。手洗い鉢11c上には、手洗い鉢11cに向けて吐水する吐水部11dが立設されている。吐水部11dからは、洗浄水タンク12内の水が供給されて吐水される。吐水部11dから吐水された水は、手洗い鉢11cの中央部に設けられた排出口11eから排出され、洗浄水タンク12内に流入する。排出口11eから洗浄水タンク12内に流入する水は、蓋体11bの下方に設けられた導水部材13により、洗浄水タンク12内における所定の場所に導かれる。
洗浄水タンク12は、便器本体2に供給する洗浄水を貯水し、洗浄水を排出する排水口14が底面12aに形成されたものである。洗浄水タンク12は、外装タンク11を構成する本体部11aの内部において固定された状態で設けられる。洗浄水タンク12の底面12aにおける略中央部には、上述したように導水路5に臨む排水口14が設けられている。排水口14は、洗浄水タンク12の底面12aを開口させるとともに底面12aから下側に向けて突出して下側に開口する筒状の突出部分として設けられている。排水口14は、洗浄水タンク12の貯水空間を導水路5内に連通させる。洗浄水タンク12は、筒状の排水口14を外装タンク11の底部11fに貫通させた状態で、所定の係合部材15によって固定される。洗浄水タンク12は、その底面12aにおいて排水口14の周囲に設けられた複数(図2においては2箇所)の固定部16にて、固定部材17により外装タンク11の底部11fに対して固定される。また、洗浄水タンク12は、その大部分が断熱体18によって被装されている。
洗浄水タンク装置1は、洗浄水タンク12内に水を供給するための洗浄水供給装置20と、使用者等の操作を受けて作動する操作装置30と、操作装置30によって操作され、洗浄水タンク12内を排出するための排水弁装置40とを備える。
洗浄水供給装置20について、図2を用いて説明する。図2に示すように、洗浄水供給装置20は、給水管21と、給水バルブ装置22と、吐水管23と、給水装置用フロート24と、手洗い給水管25とを有する。
給水管21は、外装タンク11の外部の水道管等の給水源に接続され、給水源からの給水を受ける。給水バルブ装置22は、給水管21からの給水経路を開閉するバルブ機構を有する。吐水管23は、給水バルブ装置22を介して給水管21と連通し、給水源から給水された水を洗浄水タンク12内に吐水する。給水装置用フロート24は、上下方向に延びるロッド26aの下端側に設けられ、ロッド26aおよびロッド26aの上端部に設けられた作動アーム26bを介して給水バルブ装置22に連結される。
洗浄水供給装置20においては、洗浄水タンク12内の水位の変動による給水装置用フロート24の上下動にともない、ロッド26aおよび作動アーム26bを介して給水バルブ装置22が開閉動作し、洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が調整される。本実施形態では、排水弁装置40が作動することによる洗浄水タンク12からの排水開始後に、洗浄水供給装置20による給水が開始される。また、本実施形態の洗浄水供給装置20は、洗浄水タンク12の満水時における洗浄水の水位が所定の水位WL(図2参照。)で一定となるように構成されている。
また、洗浄水供給装置20において、手洗い給水管25は、給水源からの給水経路が分岐された配管構成であり、給水源からの給水経路において分配された給水を手洗い鉢11c上の吐水部11dへと供給する。洗浄水供給装置20は、洗浄水タンク装置1から便器本体2への洗浄水の供給開始時(排水開始時)に、給水管25による吐水部11dへの水の供給を開始する。なお、洗浄水供給装置20としては、周知の構成のものを採用することができるため、洗浄水供給装置20の各部の具体的な構成については説明を省略する。
操作装置30について、図2を用いて説明する。操作装置30は、使用者等による操作を受けることで作動し、排水弁装置40を作動させる。図2に示すように、操作装置30は、操作レバー31と、回動伝達部材32と、第1の引上げ部材33と、第2の引上げ部材34と、第1の玉鎖35と、第2の玉鎖36とを有する。また、操作装置30は、モータ38と、モータ38に無線または有線で接続される操作部39とを有する。操作部39は、大洗浄用・小洗浄用・エコ小洗浄用の各洗浄を実行させるための3つの操作ボタンを有する。
操作レバー31は、外装タンク11の外側に設けられ、使用者等によって回動操作される手動式の操作部である。図2に示す例では、操作レバー31は、本体部11aの一側(図2において右側)の側壁から突出するように設けられている。操作レバー31の操作としては、操作レバー31が回動する方向によって、大洗浄用の操作または小洗浄用の操作が行われる。操作装置30は、操作レバー31が一方向(例えば図2において手前側)に約90°回動操作されると、排水弁装置40に対して大洗浄用の動作を行い、操作レバー31が他方向(例えば図2において奥側)に約90°回動操作されると、排水弁装置40に対して小洗浄用の動作を行う。
また、モータ38は、操作部39において大洗浄用の操作ボタンが押されることにより、操作レバー31が一方向に約90°回動操作された場合と同様の排水弁装置40に対する大洗浄用の動作が操作装置30において行われるように回転して回動伝達部材32に作用する。モータ38は、操作部39において小洗浄用の操作ボタンが押されることにより、操作レバー31が他方向に約90°回動操作された場合と同様の排水弁装置40に対する大洗浄用の動作が操作装置30において行われるように回転して回動伝達部材32に作用する。このように、本実施形態では、大洗浄および小洗浄については、操作装置30は、操作レバー31の操作および操作部39の操作のいずれの操作によっても動作する。これに対し、エコ小洗浄については、操作装置30は、操作部39の操作によってのみ、つまりモータ38によってのみ動作する。
回動伝達部材32は、軸体やワイヤ部材やユニバーサルジョイント等により構成され、操作レバー31の回動操作に連動して回動する軸状の構造である。回動伝達部材32は、外装タンク11の外側に設けられる操作レバー31に対して連結機構37を介して連結され、外装タンク11の内部において略水平方向に延設される。回動伝達部材32の操作レバー31と連結される側(図2において右側)と反対側に、第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34が設けられる。
第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34は、外装タンク11の幅方向(図2において左右方向)の略中央部に配置され、いずれも回動伝達部材32に外嵌された状態で回動伝達部材32から下側に延設されるように設けられたアーム状の部材である。第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34は、いずれも回動伝達部材32の回動動作にともなって揺動する。第1の引上げ部材33の先端部には、第1の玉鎖35の一端(上端)が連結され、第2の引上げ部材34の先端部には、第2の玉鎖36の一端(上端)が連結される。第1の玉鎖35および第2の玉鎖36の他端は、それぞれ排水弁装置40における所定の場所に連結される。
第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34は、回動伝達部材32に対して、次のような動作が行われるように設けられる。回動伝達部材32が大洗浄用の操作として一方向に回動されると、その回動にともなって第1の引上げ部材33のみが一方向に揺動して第1の玉鎖35を引き上げる。また、回動伝達部材32が小洗浄用またはエコ小洗浄用の操作として他方向に回動されると、その回動にともなって第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34の両方が他方向に揺動して第1の玉鎖35および第2の玉鎖36を引き上げる。
排水弁装置40について、図2から図8を用いて説明する。排水弁装置40は、便器本体2に供給される洗浄水を貯える洗浄水タンク12に設けられ、洗浄水タンク12内を排出するための構成である。排水弁装置40は、弁体41と、作動杆としてのオーバーフロー管42と、貯水筒43と、フロート50と、筒体としての小タンク60とを備える。
弁体41は、洗浄水タンク12の底面12aに配置された排水口14を開閉する。弁体41は、ゴム等の合成樹脂材料からなる弾性部材であって、円環状の形状を有し、オーバーフロー管42の下端部においてオーバーフロー管42の外周面から鍔状に突出するような態様で設けられる。本実施形態では、弁体41は、オーバーフロー管42の下端部において上下方向に所定の隙間をもって設けられた上下2段の鍔状の挟持片部42a間に嵌め込まれた状態で、オーバーフロー管42と一体的に設けられる。
オーバーフロー管42は、洗浄水タンク装置1の待機状態、つまり洗浄水タンク12の満水状態において上端開口部を洗浄水タンク12の水位WLよりも上方に位置させるとともに、下端開口部を排水口14に連通させる。これにより、洗浄水タンク12内の余剰の洗浄水がオーバーフロー管42によって排水口14へと排出される。
オーバーフロー管42は、弁体41を下端部に有し上下動することで弁体41による排水口14の開閉を行う。すなわち、オーバーフロー管42は、上述したように下端部に設けられる上下2段の挟持片部42a間に挟まれた態様で設けられた弁体41を有し、この弁体41とともに一体的に上下動作を行う。オーバーフロー管42とともに上下動作する弁体41により、排水口14が開閉される。このように、オーバーフロー管42と一体的に動作する弁体41は、排水口14を開閉する排水弁51を構成する。
オーバーフロー管42の中間部には、上述したように一端(上端)が第1の引上げ部材33に連結される第1の玉鎖35の他端(下端)が連結される係止部材44が設けられている。係止部材44は、周方向の一部が切り欠かれた円環状ないしは筒状の本体部44aを有し、この本体部44aの部分を、オーバーフロー管42の中間部に形成された縮径部分である凹部42bに嵌合させた状態で設けられる。係止部材44は、凹部42bに嵌め込まれた状態で、オーバーフロー管42の軸方向(上下方向)については相対的な移動が規制される(位置決めされる)とともに、オーバーフロー管42の軸方向を回転軸方向とする水平方向の相対的な回転が許容された状態で、オーバーフロー管42に保持される。
このような構成により、上述したような操作レバー31の操作に連動した回動伝達部材32の回動にともなう第1の引上げ部材33の揺動によって第1の玉鎖35が引き上げられることで、係止部材44を介して第1の玉鎖35の下端側が連結されたオーバーフロー管42が引き上げられる。これにより、オーバーフロー管42と弁体41とが一体的に上昇して排水口14が開かれた状態となる。ここで、弁体41は、洗浄水タンク12内に貯水されている洗浄水に作用する重力により(ヘッド圧により)、排水口14を閉じる方向(鉛直下方)に押さえられているため、第1の玉鎖35が引き上げられた際、先に係止部材44がオーバーフロー管42に対して回転し、その後、オーバーフロー管42が鉛直上方に引き上げられることになる。
貯水筒43は、オーバーフロー管42を筒軸方向に貫通させるとともに洗浄水を流出させるための小孔43a、43b(図6参照)が周面に形成された筒状の部分である。貯水筒43は、フロート50に浮力を与えるための洗浄水を収容する空間を形成するとともに、排水口14からの洗浄水の排水の過程で、収容した洗浄水を小孔43a、43bから排出する。
貯水筒43は、オーバーフロー管42を筒軸方向に貫通させる制御筒45の一部として構成される。制御筒45は、略円筒状の外筒部47と、外筒部47の内側において外筒部47と同軸心状に設けられる略円筒状の内筒部48とを有し、これらからなる2重筒構造を有する。外筒部47および内筒部48は、いずれも筒軸方向(上下方向)の両端を開口させている。
外筒部47と内筒部48との間には、これらを繋ぐ水平隔壁部49が設けられている。水平隔壁部49は、外筒部47における上下方向の中央よりも下側寄りの位置であって、内筒部48の下端部の位置に設けられている。水平隔壁部49は、制御筒45が有する2重筒構造において、外筒部47の内周面47aと内筒部48の外周面48aとをつなぐ円環板状の部分である。
このような構成により、制御筒45において、外筒部47の内周面47aと、内筒部48の外周面48aと、水平隔壁部49の上面49aとによって、上側に開口する貯水可能な円筒状の空間が形成される。かかる円筒状の空間が、フロート50およびフロート50に浮力を与えるための洗浄水を収容する空間となる。このように制御筒45において円筒状の収容空間を形成する部分が、貯水部としての貯水筒43となる。
貯水筒43においては、内筒部48内に、オーバーフロー管42が貫通する。内筒部48は、オーバーフロー管42の上下動作をガイドする機能を有する。また、貯水筒43においては、外筒部47の周壁に、2つの小孔43a、43bがその周壁を貫通するように形成されている。
小孔43a、43bは、貯水筒43に貯水された洗浄水を貯水筒43内から所定の流量で排出させるための開口部である。2つの小孔43a、43bは、外筒部47の周壁の下端部における略同じ高さ位置にて周方向に所定の間隔を開けて設けられている(図6参照)。ここで、2つの小孔43a、43bのうち、一方の小孔43aは、外筒部47の外周側に上下スライド可能に付設された板状の切替部材46のスライド移動により開閉可能に構成されている。つまり、切替部材46による小孔43aの開閉により、貯水筒43内から流出させる洗浄水の流量が調節される。なお、本実施形態では、貯水筒43内の洗浄水を排出させるための小孔が2箇所に設けられているが、この小孔は少なくとも1箇所に設けられればよい。また、本実施形態では、小孔43a、43bは、外筒部47において側面部分である周壁に形成されているが、例えば、貯水筒43を構成する水平隔壁部49において上下方向に貫通するように形成されてもよい。
貯水筒43を構成する制御筒45は、その下側の開口端、つまり外筒部47の下側の開口端を、洗浄水タンク12の底面12aに開口する排水口14に臨ませるように、底面12a上に立設された状態で設けられる。つまり、制御筒45は、排水口14の洗浄水タンク12内への開口部に覆い被さるように配置され、制御筒45の内部空間と排水口14の内部空間とが互いに連通するように設けられる。そして、制御筒45において構成される貯水筒43よりも下側の部分、つまり貯水筒43を構成する外筒部47の水平隔壁部49よりも下側の延設部分には、制御筒45の内外を連通させる流入口45bが形成されている。流入口45bは、洗浄水タンク12内の洗浄水の排水口14からの排出時に、制御筒45の貯水筒43よりも下側の部分において、制御筒45外の洗浄水を制御筒45内に流入させて排水口14へと流入させる。このように、本実施形態に係る排水弁51は、洗浄水タンク12の底面12aに配置された排水口14を開閉する弁体41と、洗浄水を収容する貯水筒43を構成して弁体41の上下動を制御する制御筒45とを有する。
フロート50は、上述したように制御筒45において構成される貯水筒43内に配置され、貯水筒43内の洗浄水によって得た浮力をオーバーフロー管42に作用させる筒状の部材である。フロート50は、貯水筒43内の洗浄水の水位の変動にともなって浮力により上下動する。
フロート50は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂材料からなり、筒状の外形を有する中空部材である。フロート50は、上側に開口する円筒状の空間を形成する貯水筒43内に、内筒部48を貫通させた態様で設けられる。フロート50は、貯水筒43内の洗浄水の水位の変動にともない、上側の一部を貯水筒43の上側の開口から出没させるように上下動する。
フロート50は、貯水筒43内の洗浄水から得た浮力による上昇に際し、上述したようにオーバーフロー管42に設けられる係止部材44によって係止されることで、オーバーフロー管42に作用する。係止部材44は、フロート50を係止させるため、本体部44aの外側に突出する係止片部44bを有する。係止片部44bは、円環状ないしは筒状の本体部44aの外周面から本体部44aの径方向に沿って突出し、本体部44aの周方向を板厚方向とする突片部である。本実施形態では、係止片部44bは、オーバーフロー管42の軸方向視で放射状となるように、本体部44aの周方向について略等間隔で4箇所に設けられている(図5参照)。
このようにフロート50に対する係止部として係止片部44bを突出させる係止部材44は、浮力により上昇するフロート50の上端面に当接することで、フロート50のストッパとして機能するとともに、フロート50の浮力による上昇作用を受けてその浮力の作用をオーバーフロー管42に伝達させる浮力受け部として機能する。係止片部44bは、これらの機能が発揮できる形状・大きさを有する。
フロート50の浮力は、洗浄水タンク12の満水時には、洗浄水の水圧(ヘッド圧)によって弁体41を介して下方向に押さえ付けられているオーバーフロー管42を上昇させることがないように、また、洗浄水タンク12からの排水時には、弁体41およびオーバーフロー管42に作用する下向きの力よりやや大きくなるように設定される。
小タンク60は、排水口14および制御筒45の周囲を取り囲むように洗浄水タンク12の底面から上方に延びて上方を開放する側壁を構成する。小タンク60は、フロート50を収容する貯水筒43を構成する制御筒45を収容する。小タンク60は、その横断面形状が略矩形状となる略四角筒状の筐体である。小タンク60の上側の端部は、小タンク60の略四角筒状の外形に沿って略四角形状に開放されており、その開放部分の開口形状に沿うとともに略水平面に沿う上縁部60aが存在する。また、小タンク60の下端側には、小タンク60の底面部を円形状に開口させた開口部60bが設けられている。そして、小タンク60は、その下側の開口部60bに、制御筒45の下端部を嵌らせるように、制御筒45を収容する。
このように、小タンク60および小タンク60内に設けられる制御筒45は、洗浄水タンク12の底面12aに開口する排水口14を取り囲むように、底面12aに立設した状態で取り付けられる。そして、オーバーフロー管42が、制御筒45において構成される貯水筒43の内筒部48内を挿通した状態で上下動可能に設けられ、オーバーフロー管42の下端部に設けられた弁体41により、オーバーフロー管42の上下動にともなって排水口14が開閉される。
小タンク60の側壁の一部である一側(図3において右側)の側面部61には、略矩形状の開口部62が形成されている。開口部62は、小タンク60の側面部61を貫通して小タンク60の内外を連通させる開口を形成する部分である。上述したように制御筒45とともに排水口14を取り囲むように立設される小タンク60は、制御筒45との関係において、開口部62が設けられる側を、制御筒45の小孔43a、43bが設けられる側と反対側に位置させるように設けられる。以上のように、本実施形態に係る小タンク60は、排水口14および制御筒45の周囲を取り囲むように洗浄水タンク12の底面12aから上方に延びて上方を開放する側壁と、この側壁の一部である側面部61を貫くように形成された開口部62とを有する。
このような小タンク60において、排水口14からの洗浄水の排出量を切り替えるための構成として、小タンク60の側面部61に形成された開口部62を小タンク60の外側から開閉する切替弁が設けられている。本実施形態では、小タンク60に設けられる切替弁として、開口部62を開口面積的に段階的に開閉する第1切替弁70および第2切替弁80の2重の弁が設けられている。これらの第1切替弁70および第2切替弁80は、排水口14からの洗浄水の排出時に小タンク60の外側から小タンク60内へと流入する洗浄水の量を調節する流量調節機構を構成する。
第1切替弁70および第2切替弁80は、いずれも全体として略矩形状に構成された部材であり、小タンク60の外側から開口部62を閉じるように、回動可能に支持された状態で設けられる。第1切替弁70および第2切替弁80は、開口部62に対して第1切替弁70を内側、第2切替弁80を外側に位置させ、互いに近接した状態で互いに重なるように設けられる。
第1切替弁70および第2切替弁80は、いずれも下端部が共通の位置にて回動可能に支持される。具体的には、小タンク60の開口部62が設けられる側の側面部61の開口部62よりも下側の部分において、開口部62を正面にして左右両側の角部分に、その角部分を凹ませた形状の凹部63が設けられている。凹部63は、側面部61に対する段差面であって側面部61と略平行な第1面部63aと、側面部61に隣り合う側面部に対する段差面であって第1面部63aに対して略直角な面である第2面部63bとを有し、小タンク60の角筒形状の横断面形状において開口部62が設けられる側面部61側の部分を凸部分とする。そして、開口部62の下側の部分において、開口部62を正面にして左右方向の両側の凹部63の第2面部63bに、左右方向に突出する軸支部60cが設けられている。
一方、第1切替弁70は、略矩形板状の基部71と、基部71において互いに対向する一対の辺側に設けられた一対の支持突片部72とを有する。一対の支持突片部72は、一対の軸支部60cをその軸方向の両側から挟む態様で軸支部60cに嵌合する。各支持突片部72は、軸支部60cに軸支される部分に、軸支部60cに嵌合するとともに軸支部60cの軸方向の外側に突出する軸支部72aを有する(図13等参照)。第1切替弁70は、基部71に設けられた一対の支持突片部72により、軸支部72aを軸支部60cに嵌合させた状態で、軸支部60cに回動可能に支持される。
また、第2切替弁80は、第1切替弁70が重なる方向視(図16参照)で略矩形状の外形を有する基部81と、基部81の略矩形状の外形において互いに対向する一対の辺側に設けられた一対の支持突片部82とを有する。一対の支持突片部82は、第1切替弁70の一対の支持突片部72の軸支部72aをその軸方向の両側から挟む態様で軸支部72aに嵌合する。各支持突片部82は、軸支部72aに軸支される部分に、軸支部72aに嵌合する支持孔部82aを有する。第2切替弁80は、基部81に設けられた一対の支持突片部82により、支持孔部82aを軸支部72aに嵌合させた状態で、第1切替弁70の軸支部72aに回動可能に支持される。以上のような構造により、第1切替弁70および第2切替弁80が、共通の支軸部65(図4参照)において所定の回動範囲で回動可能に支持される。
第1切替弁70は、閉弁状態となること、つまり開口部62を閉じた状態となることで開口部62の開口面積を減少させる。このため、第1切替弁70の基部71には、連通口71aが形成されている。つまり、第1切替弁70は、開口部62を閉じた状態において、連通口71aにより、小タンク60の内側と外側とを連通させる。連通口71aの開口面積は、開口部62が全開のときより第1切替弁70によって閉じられたときの方が洗浄水の流量が所定量少なくなるように、開口部62の開口面積よりも所定の面積だけ小さく設定されている。このように、第1切替弁70は、その閉弁状態で小タンク60の内外を連通させる連通口71aを有し、開口部62を閉じることで、開口部62において小タンク60の内外を連通させる開口面積を減少させる。
また、第2切替弁80は、小タンク60に対して第1切替弁70の外側に設けられ、閉弁状態となること、つまり開口部62を閉じた状態となることで第1切替弁70により減少した開口部62の開口面積をさらに減少させる。このため、第2切替弁80の基部81には、第1切替弁70側に向けて延びる挿入突部83が設けられている。つまり、挿入突部83は、第2切替弁80において第1切替弁70側の面部に突出形成されている。挿入突部83は、第2切替弁80が閉じる方向に回動して第1切替弁70に近接することで第1切替弁70の連通口71aに挿入される。第2切替弁80は、挿入突部83を第1切替弁70の連通口71aに挿入させることで、開口部62において第1切替弁70が閉じられることで減少した小タンク60の内外を連通させる開口面積をさらに減少させる。
また、第2切替弁80の回動支持側と反対側(上側)の端部には、第2の玉鎖36の他端(下端)が連結される係止部81aが設けられている。これにより、回動伝達部材32の回動による第2の引上げ部材34の揺動にともなって第2の玉鎖36が引き上げられることで、第2切替弁80が支軸部65を中心に開口部62側へと回動するとともに、第1切替弁70も第2切替弁80に押されて支軸部65を中心に開口部62側へと回動する。第1切替弁70および第2切替弁80の回動範囲について、第1切替弁70および第2切替弁80は、開口部62に対して最も離間した位置にある状態で、第1切替弁70および第2切替弁80が水平となる位置よりも手前の位置で所定角度傾いた状態となる(図3参照)。
また、第1切替弁70および第2切替弁80には、それぞれ動作を安定させるための錘91、92が取り付けられている。第1切替弁70に取り付けられる錘91は、矩形板状の形状を有し、第1切替弁70の基部71の内側(第2切替弁80側と反対側)の面に板面を合わせた状態で設けられる。第2切替弁80に取り付けられる錘92は、錘91と同様に矩形板状の形状を有し、第2切替弁80の基部81の外側(第1切替弁70側と反対側)の所定の取付面に板面を合わせた状態で設けられる。なお、第1切替弁70および第2切替弁80における錘91,92の支持態様等を含め、本実施形態に係る第1切替弁70および第2切替弁80の詳細については後述する。
第1切替弁70および第2切替弁80は、いずれも基本的には洗浄水の水圧等の影響を無視した場合、開口部62を閉じた状態から自重によって回動して開弁状態となるように回動可能に設けられる。すなわち、第1切替弁70は、開口部62を閉じた閉弁状態(図7、図8参照)から、錘91の重さを含む自重によって回動して開弁状態となるように回動可能に設けられる。また、第2切替弁80は、小タンク60に対して第1切替弁70の外側にて閉弁状態の第1切替弁70に重なり開口部62に最も近接した位置にある閉塞状態(図7参照)から、錘92の重さを含む自重によって回動して開弁状態となるように回動可能に設けられる。
以上のように、小タンク60の一側の側面部61においては、支軸部65において回動可能に支持された第1切替弁70および第2切替弁80の2体の弁体により、開口部62における小タンク60の内外の連通面積を段階的に調節して小タンク60の外部から内部へと流入する洗浄水の量を調節する流量調節機構が構成されている。具体的には、本実施形態に係る流量調節機構は、開口部62を全開させた状態、第1切替弁70のみにより開口部62を閉じた状態、第1切替弁70および第2切替弁80の両方により開口部62を閉じた状態の3段階で、開口部62における連通面積を調節する。
以上のような構成を備える本実施形態の洗浄水タンク装置1の動作について説明する。まず、洗浄水タンク装置1の洗浄動作として行われる3種類のモードの動作のうち、大洗浄モードでの動作について説明する。
洗浄水タンク装置1による便器本体2の洗浄が行われる前の待機状態においては、洗浄水タンク12は満水状態(図2、水位WL参照)である。この待機状態においては、フロート50が係止部材44の係止片部44bによってオーバーフロー管42に作用するとともに、オーバーフロー管42の下端部の弁体41が、洗浄水タンク12内の洗浄水のヘッド圧により下向きに押さえ付けられた状態となっている。
洗浄水タンク装置1による便器本体2の洗浄の開始時、大洗浄に際しては、使用者等によって、操作レバー31の一方向(例えば図2において手前側)への回動操作、または操作部39における大洗浄用の操作ボタンの押圧操作が行われる。これにより、回動伝達部材32が第1の引上げ部材33のみを揺動させる方向に回動し、第1の引上げ部材33の揺動によって第1の玉鎖35が引き上げられる。これにともない、係止部材44によって第1の玉鎖35の下端が連結されたオーバーフロー管42が弁体41とともに引き上げられ、排水口14が開いて排水口14からの洗浄水の排水が開始される。ここで、上述したように、第1の玉鎖35が引き上げられた際、先に係止部材44がオーバーフロー管42に対して回転し、その後、オーバーフロー管42が鉛直上方に引き上げられることから、オーバーフロー管42が回転しながら鉛直上方に移動することが防がれ、排水弁装置40の安定した開弁動作が得られる。
オーバーフロー管42の引上げにより、オーバーフロー管42の上昇にともなって、係止部材44の係止片部44bによってオーバーフロー管42に作用していたフロート50が浮力によって上昇する(図8参照)。つまり、係止部材44の係止片部44bによって浮力による上昇が規制されていたフロート50が、オーバーフロー管42と一体的に係止部材44が上昇することにともなって上昇する。
操作レバー31の操作によって大洗浄が行われた場合、オーバーフロー管42等の引上げの完了直後に、操作レバー31は初期位置(待機状態での位置)に戻り、これにともない、第1の引上げ部材33等も初期位置に戻る。また、操作部39の操作によって大洗浄が行われた場合、オーバーフロー管42等の引上げの完了直後に、モータ38の動作によって第1の引上げ部材33が初期位置に戻るように回動伝達部材32が回動される。
大洗浄の場合は、第1切替弁70および第2切替弁80は初期位置を保持したままであり、開口部62は全開の状態に維持される(図3参照)。つまり、大洗浄モードにおいては、操作レバー31または操作部39の操作にともなう回動伝達部材32の回動によって第2の引上げ部材34は揺動されず、第2の玉鎖36によって第2切替弁80は引き上げられることなく、第1切替弁70および第2切替弁80は開口部62から離間した状態、つまり開口部62が全開の状態が維持される。したがって、大洗浄モードでは、開口部62の開口面積はそれ自体の開口面積のまま一定である。
オーバーフロー管42および弁体41の上昇にともなって排水口14からの排水が開始された後、排水口14からの洗浄水の排出にともなって洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が全体的に低下する。そして、洗浄水タンク12内の水位が小タンク60の上縁部60aの付近まで低下した時点から、排水口14からの排水にともなう小タンク60内の洗浄水の水位の低下速度が、小タンク60外の洗浄水の水位の低下速度に対して急激に速くなる。このことは、洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が小タンク60の上縁部60aよりも下がることで、排水口14に連通する小タンク60内に対する洗浄水の流入について、小タンク60の上側の開放部からの流入が無くなり、基本的には開口部62からの流入のみとなることに基づく。
こうした小タンク60内の洗浄水の排水口14からの排水の過程において、貯水筒43内に保持されている洗浄水が、小孔43a、43bから小タンク60内へと流出し、その小孔43a、43bからの洗浄水の流出量に応じて、貯水筒43内の洗浄水の水位が所定の速度で低下する。なお、2つの小孔43a、43bのうち、上述したように切替部材46により開閉可能な一方の小孔43aの開閉によって、貯水筒43内の洗浄水の小孔からの流出量が調節される。
貯水筒43内の水位の低下にともない、フロート50が下降し、そのフロート50の下降に連動して、オーバーフロー管42および弁体41が下降する。ここで、下降するオーバーフロー管42および弁体41は、係止部材44を介してフロート50に作用した状態でフロート50の下降に追従する態様となり、フロート50の下降速度と同じ速度で下降する。
そして、排水口14からの洗浄水の排出が継続して所定時間経過後、貯水筒43内の洗浄水の水位がフロート50に浮力を与えない位置まで低下し、オーバーフロー管42と一体的に下降する弁体41により排水口14が閉じられ、排水弁51が閉弁状態となり(図3参照)、所定のタイミングで排水口14からの排水が終了する。このような弁体41の閉弁動作に関し、上述したような2つの小孔43a、43bのうち一方の小孔43aが切替部材46により閉じられている方が、閉じられていない場合よりも貯水筒43からの洗浄水の流出量が少なくなるため、弁体41が閉じるタイミングが遅くなる。つまり、一方の小孔43aが切替部材46により閉じられている場合の方が、両方の小孔43a、43bが開いている場合よりも排水弁51の開弁時間が長くなり排水口14からの洗浄水の排出量が多くなる。このように、切替部材46による一方の小孔43aの開閉の切替えにより、排水口14からの洗浄水の排出量が調節される。
図2に示すように、弁体41により排水口14が閉じられた排水弁51の閉弁後においては、洗浄水タンク12内における小タンク60の外の水位は、最終的な水位(死水位置)DWLとなる。本実施形態の洗浄水タンク装置1において、この最終的な水位DWLは、小タンク60に設けられた開口部62の開口の下端に位置することになる。
弁体41が閉弁して排水口14からの洗浄水の排出が終了した後は、上述したような洗浄水供給装置20による洗浄水タンク12内への給水により、洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が満水時の水位に戻り、洗浄水タンク装置1は待機状態となる。
次に、洗浄水タンク装置1の洗浄動作として行われる3種類のモードの動作のうち、小洗浄モードでの動作について説明する。
洗浄水タンク装置1の待機状態(満水状態)から、洗浄水タンク装置1による便器本体2の洗浄の開始時、小洗浄に際しては、使用者等によって、操作レバー31の他方向(例えば図2において奥側)への回動操作、または操作部39における小洗浄用の操作ボタンの押圧操作が行われる。これにより、回動伝達部材32が第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34の両方を揺動させる方向に回動し、第1の引上げ部材33の揺動にともない第1の玉鎖35によってオーバーフロー管42および弁体41が引き上げられて排水口14からの洗浄水の排水が開始されるとともに、第2の引上げ部材34が揺動することによって第2の玉鎖36が引き上げられる。これにより、小タンク60の開口部62に対して設けられる2重の弁体のうち外側の弁体である第2切替弁80が引っ張られて開口部62を閉じる方向に回動する。この第2切替弁80の回動によって、第2切替弁80の内側に位置する第1切替弁70も第2切替弁80に押されて回動する。ここで、第1切替弁70および第2切替弁80は、開口部62を閉じる位置まで回動する(図7参照)。
オーバーフロー管42の引上げにより、オーバーフロー管42の上昇にともなって、係止部材44の係止片部44bによってオーバーフロー管42に作用していたフロート50が浮力によって上昇する(図8参照)。
操作レバー31の操作によって小洗浄が行われた場合、オーバーフロー管42等の引上げの完了直後に、操作レバー31は初期位置(待機状態での位置)に戻り、これにともない、第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34等も初期位置に戻る。また、操作部39の操作によって小洗浄が行われた場合、オーバーフロー管42等の引上げの完了直後に、モータ38の動作によって第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34が初期位置に戻るように回動伝達部材32が回動される。
小洗浄の場合は、第2の引上げ部材34が初期位置に戻ることで、第2切替弁80が錘92の重さを含む自重により初期位置に戻る。ただし、第1切替弁70は、小タンク60の内外の水圧の差によって開口部62を閉じた状態で一定時間保持される。つまり、第2切替弁80は開口部62の開口面積について作用せずに第1切替弁70のみによって開口部62が一部閉じられた状態(図8参照)が、一定時間の間保持される。
ここで、第1切替弁70が開口部62を閉じた状態が保持されることについて説明する。排水弁51が開いて排水が開始された後、小タンク60内を流れる洗浄水の流速の方が、小タンク60の外部を流れる洗浄水の流速よりも速くなる。このことは、小タンク60の内部の流路面積が第1切替弁70の連通口71aの開口面積よりも大きいことに基づく。小タンク60の内側の流速が小タンク60の外側の流速よりも速くなると、小タンク60の内外で差圧が生じ、この差圧が第1切替弁70に作用し、第1切替弁70の開口部62を閉じた状態が保持される。
このように第1切替弁70の開口部62を閉じた状態が一定時間保持されることにより、第1切替弁70の連通口71aの開口面積が開口部62の開口面積よりも狭い分、開口部62において小タンク60の内外を連通させる開口面積が減少し、開口部62を介して小タンク60の外側から内側に流れ込む洗浄水の流量が減少する。
オーバーフロー管42および弁体41の上昇にともなって排水口14からの排水が開始された後、大洗浄の場合と同様に洗浄水タンク12内の水位が低下する。すなわち、排水口14からの洗浄水の排出にともなって洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が全体的に低下して、小タンク60の上縁部60aの付近まで低下した時点から、排水口14からの排水にともなう小タンク60内の洗浄水の水位の低下速度が、小タンク60外の洗浄水の水位の低下速度に対して急激に速くなる。
こうした小タンク60内の洗浄水の排水口14からの排水の過程において、大洗浄の場合と同様に、貯水筒43内に保持されている洗浄水が、小孔43a、43bから小タンク60内へと流出し、その小孔43a、43bからの洗浄水の流出量に応じて、貯水筒43内の洗浄水の水位が所定の速度で低下する。
貯水筒43内の水位の低下にともない、フロート50が下降し、そのフロート50の下降に連動して、オーバーフロー管42および弁体41が下降する。ここで、下降するオーバーフロー管42および弁体41は、係止部材44を介してフロート50に作用した状態でフロート50の下降に追従する態様となり、フロート50の下降速度と同じ速度で下降する。ここでの下降速度は、大洗浄の場合とほぼ同じである。したがって、貯水筒43内の洗浄水の水位が低下し始めてから排水弁51が閉弁に至るまでの時間は、大洗浄の場合と小洗浄の場合とでほぼ同じである。
そして、排水口14からの洗浄水の排出が継続して所定時間経過後、貯水筒43内の洗浄水の水位がフロート50に浮力を与えない位置まで低下し、オーバーフロー管42と一体的に下降する弁体41により排水口14が閉じられ、排水弁51が閉弁状態となり(図3参照)、所定のタイミングで排水口14からの排水が終了する。排水口14からの洗浄水の排出が終了した後は、洗浄水供給装置20による洗浄水タンク12内への給水によって洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が満水時の水位に戻り、洗浄水タンク装置1は待機状態となる。
次に、洗浄水タンク装置1の洗浄動作として行われる3種類のモードの動作のうち、エコ小洗浄モードでの動作について説明する。
洗浄水タンク装置1の待機状態(満水状態)から、洗浄水タンク装置1による便器本体2の洗浄の開始時、エコ小洗浄に際しては、使用者等によって、操作部39におけるエコ小洗浄用の操作ボタンの押圧操作が行われる。これにより、小洗浄の場合と同様に、回動伝達部材32が第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34の両方を揺動させる方向に回動し、第1の引上げ部材33の揺動にともない第1の玉鎖35によってオーバーフロー管42および弁体41が引き上げられて排水口14からの洗浄水の排水が開始されるとともに、第2の引上げ部材34が揺動することによって第2の玉鎖36が引き上げられる。これにより、小タンク60の開口部62に対して設けられる2重の弁体のうち外側の弁体である第2切替弁80が引っ張られて開口部62を閉じる方向に回動する。この第2切替弁80の回動によって、第2切替弁80の内側に位置する第1切替弁70も第2切替弁80に押されて回動する。ここで、第1切替弁70および第2切替弁80は、開口部62を閉じる位置まで回動する(図7参照)。ただし、第1切替弁70および第2切替弁80は、開口部62を閉じる位置よりも手前の、全開状態から所定角度回動した位置まで回動する構成であってもよい。
エコ小洗浄モードにおいては、モータ38の制御により、揺動した状態の第1の引上げ部材33および第2の引上げ部材34が、所定時間(例えば約3秒)の間その位置で保持される。すなわち、本実施形態では、エコ小洗浄モードの場合、第1の引上げ部材33の揺動にともない第1の玉鎖35によってオーバーフロー管42および弁体41が引き上げられるとともに、第2の引上げ部材34の揺動にともない第2の玉鎖36が引き上げられ第1切替弁70および第2切替弁80が閉じた状態(図7参照)が、所定時間保持される。
なお、エコ小洗浄モードにおいて、第1切替弁70および第2切替弁80について、所定時間の間保持される回動位置が、開口部62を閉じる位置よりも手前の所定角度回動した位置である場合は、第1切替弁70は、小タンク60内を流れる洗浄水の流速による負圧によって開口部62側へ引き付けられ、上述したような小タンク60の内外で生じる差圧によって開口部62を閉じる位置に保持される。この場合、第2切替弁80が所定時間の間保持される回動位置は、開口部62を閉じた状態の第1切替弁70に対して挿入突部83を連通口71aに挿入させた状態となる位置に設定される。
このように、エコ小洗浄モードでは、第1切替弁70および第2切替弁80が開口部62を閉じた状態が、所定時間の間保持される。これにより、開口部62において小タンク60の内外を連通させる開口面積が小洗浄モードの場合よりもさらに減少し、開口部62を介して小タンク60の外側から内側に流れ込む洗浄水の流量がさらに減少する。
一方、オーバーフロー管42の引上げにより、オーバーフロー管42の上昇にともなって、係止部材44の係止片部44bによってオーバーフロー管42に作用していたフロート50が浮力によって上昇する(図8参照)。オーバーフロー管42および弁体41の上昇にともなって排水口14からの排水が開始された後、大洗浄の場合と同様に洗浄水タンク12内の水位が低下する。すなわち、排水口14からの洗浄水の排出にともなって洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が全体的に低下して、小タンク60の上縁部60aの付近まで低下した時点から、排水口14からの排水にともなう小タンク60内の洗浄水の水位の低下速度が、小タンク60外の洗浄水の水位の低下速度に対して急激に速くなる。
貯水筒43内の水位の低下にともない、フロート50が下降する。ここで、エコ小洗浄モードでは、大洗浄モードおよび小洗浄モードの場合と異なり、オーバーフロー管42および弁体41が引き上げられた状態で所定時間の間保持されていることから、オーバーフロー管42および弁体41を残してフロート50のみが下降する。
そして、排水開始時から所定時間経過後、オーバーフロー管42および弁体41ならびに第2切替弁80の保持状態が解除される。これにより、オーバーフロー管42と一体的に下降する弁体41により排水口14が閉じられ、排水弁51が閉弁状態となり(図3参照)、所定のタイミングで排水口14からの排水が終了する。また、第2切替弁80は自重によって初期位置に戻る。
なお、保持状態が解除されることによるオーバーフロー管42および弁体41の下降動作については、モータ38による保持状態の解除にともなう自由落下の他、モータ38の駆動により下降速度が調整された下降動作であってもよい。また、オーバーフロー管42および弁体41ならびに第2切替弁80の保持状態を解除するタイミングは、例えば、貯水筒43内の洗浄水の水位がフロート50に浮力を与えない位置まで低下した時点として設定される。
排水口14からの洗浄水の排出が終了した後は、洗浄水供給装置20による洗浄水タンク12内への給水によって洗浄水タンク12内の洗浄水の水位が満水時の水位に戻り、洗浄水タンク装置1は待機状態となる。
以上のような構成を備える本実施形態の洗浄水タンク装置1においては、洗浄水の排出量を安定させるため、排水弁装置40に関して以下のような構成を備える。
本実施形態に係る排水弁装置40が備える第2切替弁80の詳細について、図9から図12を用いて説明する。図11(b)は、図10(a)におけるA−A断面図であり、図11(c)は、図10(a)におけるB−B断面図である。
図9から図11に示すように、第2切替弁80は、正面視(図10(a)参照)において略矩形状の外形をなす基部81と、小タンク60に支持されるための一対の支持突片部82と、第1切替弁70側に突出形成され、第1切替弁70の連通口71aに挿入される挿入突部83とを有する。なお、第2切替弁80の説明においては、基部81に対して挿入突部83が突出する側(図11(a)において左側)を正面側または前側とし、その反対側(図11(a)において右側)を背面側または後側とし、基部81に対して支持突片部82が設けられる側(図10(a)において下側)を下側、基部81において係止部81aが設けられる側(図10(a)において上側)を上側とする。したがって、図11(a)における左右方向が前後方向となり、図10(a)における上下方向が上下方向なる。また、図10(a)における左右方向を左右方向する。
第2切替弁80は、全体として左右方向に対称な形状を有する。第2切替弁80は、基部81を構成する部分として、挿入突部83が形成される第1の面としての手前側面84aを有する手前側面部84と、手前側面84aよりも小タンク60に対して離れる位置に設けられた第2の面としての奥側面85aを有する奥側面部85とを有する。手前側面84aおよび奥側面85aは、いずれも第2切替弁80において前側を向く平面であって、互いに平行な面であり、奥側面85aの方が手前側面84aよりも後側に位置する。挿入突部83は、手前側面84aを突出の基端面とし、手前側面84aから略垂直方向に突出している。
図11(c)に示すように、第2切替弁80の前後方向(図11(c)における上下方向)について、奥側面85aが、手前側面84aよりも所定の寸法E1だけ後側に位置する。第2切替弁80においては、その前側が、第1切替弁70に合わさる側となることから、第2切替弁80の閉弁状態、つまり第1切替弁70および第2切替弁80の両方が小タンク60の開口部62を閉じた状態において、手前側面84aは、奥側面85aよりも小タンク60側、つまり小タンク60に対して内側に位置することになる。したがって、第1切替弁70および第2切替弁80の両方が開口部62を閉じた状態において、奥側面85aは、手前側面84aよりも小タンク60に対して離れた位置に位置することになる。
手前側面部84および奥側面部85は、手前側面84aおよび奥側面85aに沿って互いに略平行な面部であって、いずれも、第2切替弁80の正面視で、基部81における上下方向の略全体にわたって上下方向を長手方向とする略矩形状をなす部分である。手前側面部84は、左右方向について第2切替弁80の中央部において第2切替弁80全体の略1/3程度の幅寸法で設けられている。この手前側面部84の左右両側かつ奥側において奥側面部85が設けられている。つまり、第2切替弁80の正面視において、手前側面部84は、第2切替弁80の基部81を左右方向に略3等分したうちの中央の略1/3の部分を占め、奥側面部85は、手前側面部84の左右両側の略1/3の部分を占める。
手前側面部84と奥側面部85は、それぞれに対して略垂直な段差面部86を介して段差状に連続する。段差面部86は、手前側面部84の左右に設けられ、左右両外側を向く段差面86aを形成する部分である。つまり、左右の段差面部86の段差面86aは、左右方向に互いに反対側を向き、右側の段差面部86の段差面86aは右側を向き、左側の段差面部86の段差面86aは左側を向く。したがって、手前側面部84と奥側面部85は、横断面視(上面断面視)において、左右の段差面部86とともに、手前側面部84を突出側の端面部とする凸形状をなす(図11(c)参照)。
手前側面部84において、手前側面84aは、他の部分に対して前側にわずかに突出した突条部87の前側の面として形成されている。突条部87は、正面視で上下方向を長手方向とする略矩形状の手前側面部84において、左右方向の中央部にて上下方向の全体にわたって形成されている。突条部87は、その略下半部を構成する部分であって挿入突部83の突出範囲を含む幅広部87aと、幅広部87aよりも幅狭の直線状の部分であって突条部87の略上半部を構成する幅狭部87bとを有する。すなわち、手前側面84aは、突条部87の幅広部87aの前面として形成された比較的幅広の部分と、突条部87の幅狭部87bの前面として形成された比較的幅狭の上下方向に沿う直線状の部分とを有する。なお、本実施形態の第2切替弁80においては、手前側面部84の下側に、基部81の左右方向の中央部において下方に板状に突出形成されている下側突片部81bが形成されている。下側突片部81bは、手前側面84aと連続する平面を形成する。
このような突条部87を有する手前側面部84においては、突条部87が突出する面となる第2手前側面84bが存在する。つまり、手前側面部84における手前側面84aの左右両側の面が、第2手前側面84bとなる。第2手前側面84bは、手前側面84aと同様に手前側面部84において形成された前側を向く平面であり、手前側面84aよりも奥側(後側)に位置する面となる。すなわち、本実施形態では、第2手前側面84bは、奥側面85aと同様に、手前側面84aよりも小タンク60に対して離れる位置に設けられた第2の面に相当する。第2手前側面84bは、突条部87の形状に対応して、幅広部87aの左右両側の部分となる比較的幅狭の下半部分と、幅狭部87bの左右両側の部分となる比較的幅広の上半部分とを有する。本実施形態では、手前側面部84において突条部87により形成される手前側面84aの面積は、第2手前側面84bの面積の略半分程度である。
本実施形態の第2切替弁80において、手前側面84aは、第2切替弁80が第2の面として有する奥側面85aよりも面積が小さい。つまり、手前側面84aの面積は、左右両側の奥側面85aの合計の面積よりも小さい。具体的には、本実施形態の第2切替弁80の場合、第2切替弁80の正面視において手前側面部84は全体の略1/3の部分を占め、左右の奥側面部85は合わせて略2/3を占めることから、手前側面部84は、左右の奥側面部85の半分程度の面積部分である。また、手前側面部84において、手前側面84aは、手前側面部84において第2手前側面84bを除いた略1/3程度の面積部分である。したがって、本実施形態の場合、手前側面84aの面積は、片側の奥側面85aよりも小さく、さらに、第2手前側面84bよりも小さい。
また、第2切替弁80においては、上述したように第2の玉鎖36の下端が連結される係止部81aが基部81の手前側面部84の背面側の上端部に設けられている。係止部81aは、手前側面部84の後側の面である手前側背面84cから後方に向けて下側を開放させた略箱状に突出する部分であり、第2の玉鎖36を係止させるためのスリット81cを形成する。スリット81cは、第2の玉鎖36の玉の外径よりも幅狭であって、箱状の係止部81aにおいてその背面側から上面側の壁部分を左右方向の二つに分割させる。このような係止部81aに対して、第2の玉鎖36が、その紐部分によってスリット81cを介して下端部の玉を箱状の係止部81a内に位置させることで、係止部81a内に玉を引っ掛けた態様で係止される。
また、第2切替弁80において、その周囲には、奥側面85aから第1切替弁70側、つまり前側に立つ壁部88が設けられている。具体的には、壁部88は、基部81の上辺部に沿う上壁部88aと、基部81の左右両側の辺部に沿う側壁部88bと、基部81の下辺部に沿う下壁部88cとを有する。これらの上壁部88a、側壁部88b、および下壁部88cは、左右の各奥側面部85を上側、下側、および左右外側の3方側から囲むように連続的な壁面をなす。壁部88は、全体的にその突出方向の端面、つまり前側の端面の前後方向の位置を上壁部88a、側壁部88b、および下壁部88cの各部で共通とし、その前側の端面の前後方向の位置は、手前側面部84と略同じ位置となる。つまり、壁部88の前側の端面と手前側面部84とは略同一面上に位置する。
また、壁部88を構成する下壁部88cは、後側から前側にかけて下る傾斜状に形成されている。この下壁部88cの傾斜方向に沿って、支持突片部82が延出されている。左右の支持突片部82は、基部81に対して、左右外側の側壁部88bと連続する互いに平行な板状の突片部分として設けられている。支持突片部82の先端部に、支持孔部82aが設けられている。
このように奥側面部85の周囲を囲むように設けられた壁部88を有する構成においては、左右両側の側壁部88bの内側面88dと、段差面部86の段差面86aとが左右方向に互いに対向する。また、上壁部88aの内側面88eと、下壁部88cの内側面88fとが上下方向に互いに略対向する。したがって、手前側面部84の左右両側において、奥側面部85と段差面部86と壁部88とによって凹状部89が形成される。すなわち、この凹状部89は、手前側面部84の左右両側において、奥側面85aを底面とし、上壁部88a、側壁部88b、および下壁部88cそれぞれの内側面88e,88d,88fを周壁面とし、前側を開放側とする略箱状の空間を形成する。
また、第2切替弁80においては、左右の奥側面部85の背面側に、後側に突出して錘92を支持する部分となる突出支持部90が設けられている。突出支持部90は、奥側面部85の後側の面である奥側背面85cから上下方向を長手方向とする略矩形状に突出する箱状の突起部分であり、左右両側の奥側面部85において、奥側背面85cの上部であって左右方向の内側寄り部分に設けられている。
突出支持部90は、奥側背面85cから背の低い四角柱状に突出した部分である。突出支持部90の上面は、壁部88の上壁部88aの外側(上側)の面と連続する(面一の)面であり、上壁部88aの外側の面とともに第2切替弁80の上面を形成する。また、突出支持部90の左右方向の内側の面は、段差面部86の段差面86aの反対側の面である裏側段差面86bと連続する(面一の)面である。左右方向に互いに対向する裏側段差面86b間に、第2の玉鎖36の下端が連結される係止部81aが位置する。
このように奥側面部85の背面側に突出形成された突出支持部90は、その突出形状にならって凹状部89に連続する凹状部89aを形成する。凹状部89aは、奥側面部85の前側において前側開放の空間を形成する凹状部89において、その底面となる奥側面85aの上側かつ左右方向の内側の角部分に、前側を開放側として箱状に凹む空間を形成する。
このように背面側において左右両側に突出支持部90を有する第2切替弁80は、その左右の突出支持部90により、錘92を支持する(図12参照)。具体的には、矩形板状の錘92が、その長手方向を左右方向に沿わせるとともに、板面を突出支持部90の突出方向の端面となる突出側端面90aに沿わせた状態で、左右の突出支持部90間に架設された態様で支持される。つまり、錘92は、その長手方向の両側の端部を、左右の突出支持部90の突出側端面90aに沿わせた状態で支持される。
第2切替弁80は、錘92を位置決め支持する部分として、各突出支持部90の突出側端面90a側に設けられた嵌合支持部90bおよび係止片部90cを有する。嵌合支持部90bは、錘92の板厚に対応して突出側端面90aとともに錘92の下側の角部分が嵌り込む空間を形成する。嵌合支持部90bは、錘92の下側の角部分の直角形状に沿って背面視で略L字状をなし、錘92の下側の左右の角部分を外側から直角状に覆った状態で、錘92を支持する。
係止片部90cは、錘92の短手方向の寸法に対応して、嵌合支持部90bに支持された状態の錘92の上側に位置するように設けられる。係止片部90cは、左右の突出支持部90の突出側端面90a側の上部が、左右方向の外側が突出支持部90の本体部分に繋がるとともに左右方向の内側が自由端となるように、左右方向を長手方向として矩形板状に切り出された態様で設けられた片部である。言い換えると、係止片部90cは、第2切替弁80の上面視および背面視で左右方向の内側を開放側とする細長の切欠部状(スリット状)に表れる横断面略L字状の空間を介して設けられた矩形板状の片部である。係止片部90cは、その矩形板状の外形における板面を前後に向ける。左右の突出支持部90に設けられた一対の係止片部90cは、その先端側を互いに対向させる。係止片部90cの後面は、突出側端面90aと連続し(面一であり)、係止片部90cの上面は、突出支持部90の上面と連続する(面一である)。
係止片部90cの先端部、つまり左右方向の内側の端部には、係止突部90dが設けられている。つまり、係止突部90dは、突出側端面90aにおいて左右方向の内側かつ上側の角部分に設けられている。係止突部90dは、係止片部90cの後面から側面視で略直角三角状に突出する突起部分であり、下側の面を略水平面とし、前側から後側にかけて下る斜面を有する。係止突部90dは、嵌合支持部90bに支持された状態の錘92の上方において錘92に対してわずかに間隔を隔てる位置にて、錘92の上端面92aに下面を対向させるように設けられる。
このような嵌合支持部90bおよび係止片部90cを有する第2切替弁80に対して、錘92は、次のようにして取り付けられる。錘92は、短手方向を上下方向として左右の嵌合支持部90bに対して上側から差し込む態様で嵌め込まれる。ここで、錘92は、前側の板面に左右の係止突部90dを接触させて左右の係止片部90cに干渉する。係止突部90dを介して錘92の干渉を受けた係止片部90cは、係止突部90dの斜面にならって先端側(係止突部90d側)が前側に押されるように弾性変形し、錘92の嵌合支持部90bに対する嵌合を許容する。つまり、錘92は、左右の嵌合支持部90bに差し込まれる過程で、弾性変形した状態の係止片部90cにより係止突部90dを介して後側に押された状態となる。そして、錘92が嵌合支持部90bに差し込まれ、錘92が係止片部90cを越えて上端面92aが係止片部90cの下側に達することで、弾性変形した状態の係止片部90cが自然状態に戻る。これにより、係止片部90cは、その係止突部90dの下面を錘92の上端面92aに対向させた状態となる。
このようにして第2切替弁80の背面側に取り付けられた錘92は、下側の部分が嵌合支持部90bに差し込まれて支持されるとともに、係止片部90cの係止突部90dによって上側への移動が規制された状態となる。
以上のように、第2切替弁80の第1切替弁70側と反対側となる外側、つまり背面側には、第2切替弁80を自重により動作させて開弁状態とするための錘92が取り付けられている。そして、上述したような第2切替弁80における錘92の支持構造によれば、錘92は、奥側面85aよりも小タンク60に対して外側に離れる位置に設けられていることになる。このことは、本実施形態の場合、錘92が取り付けられる面(錘92を支持する面)、つまり板状の錘92がその板面を沿わせる面が、第2切替弁80において奥側面85aよりも後側に位置することに相当する。
具体的には、第2切替弁80において、錘92が取り付けられる面は、突出側端面90aとなる。突出側端面90aは、奥側面85aの裏側の奥側背面85cから後側に突出する突出支持部90の突出側の端面である。したがって、図11(b)に示すように、錘92が取り付けられる突出側端面90aは、前後方向について、奥側面85aに対して、前側の面を奥側面85aとする板状部分の板厚の寸法F1と、奥側背面85cからの突出支持部90の後方への突出長さF2との合計寸法F3分、後側、つまり小タンク60に対して外側に離れる位置に設けられている。なお、突出支持部90の突出長さF2は、例えば、前側の面を奥側面85aとする板状部分の板厚の寸法F1の4〜7倍程度である。
次に、本実施形態に係る排水弁装置40が備える第1切替弁70の詳細について、図13から図15を用いて説明する。図15(b)は、図14(a)におけるC−C断面図であり、図15(c)は、図14(a)におけるD−D断面図である。
図13および図15に示すように、第1切替弁70は、略矩形板状の基部71と、小タンク60に支持されるための一対の支持突片部72とを有する。なお、第1切替弁70の説明においては、第2切替弁80が重なる側(図15(a)において右側)を背面側または後側とし、その反対側(図15(a)において左側)を正面側または前側とし、基部71に対して支持突片部72が設けられる側(図14(a)において下側)を下側、その反対側を上側とする。したがって、図15(a)における左右方向が前後方向となり、図14(a)における上下方向が上下方向なる。また、図14(a)における左右方向を左右方向する。
第1切替弁70は、全体として左右方向に対称な形状を有する。矩形板状の基部71は、詳細には、下側から上側にかけてわずかに徐々に幅狭となる略台形状をなす。左右方向の中央部における下側寄りの位置に、第2切替弁80の挿入突部83を挿通させる連通口71aが形成されている。連通口71aは、板状の基部71を貫通する孔であり、上下方向を長手方向とする長穴形状(略小判形形状)を有する。
基部71の下端部の左右両端から、斜め下前方に向けて一対の支持突片部72が延出している。一対の支持突片部72は、基部71に対して、左右両側の端面(側面)と連続する互いに平行な板状の突片部分として設けられている。支持突片部72の先端部に、軸支部72aが設けられている。軸支部72aは、支持突片部72における左右方向の外側の面から中心軸方向を左右方向とする円筒状に突出した突起部分である。
基部71の背面側には、小突起71dが設けられている。小突起71dは、基部71の後面71cからわずかに突出する突起部分であり、連通口71aよりも上側の部分において左右方向の中央の位置の1箇所に設けられている。小突起71dは、第1切替弁70と第2切替弁80が互いに重なった状態、つまり互いの最近接状態において、第2切替弁80の手前側面84aに当接し、第1切替弁70の後面71cと第2切替弁80の手前側面84aとの間にわずかな隙間を形成する。つまり、第1切替弁70は、第2切替弁80に対して小突起71dによって点接触した状態となり、小突起71dが存在する分、基部71を第2切替弁80の基部81に対してわずかに離間させた状態となる(図3参照)。
第1切替弁70は、基部71の正面側の板面部である前面部71bに、錘91を支持する。具体的には、矩形板状の錘91が、その長手方向を左右方向に沿わせるとともに、板面を基部71の前面部71bに沿わせた状態で支持される。錘91は、連通口71aよりも上方の位置で支持される。
第1切替弁70は、錘91を位置決め支持する部分として、基部71において連通口71aよりも上側の部分に、前面部71bに突設された支持突片部73、係止突片部74、および挿入突部75を有する。支持突片部73は、前面部71bから略垂直に突出する略四角柱状の突起部であり、上側の面を錘91を支持する支持面73aとする。支持突片部73は、左右両側の2箇所に設けられ、錘91の下端面に支持面73aを接触させた状態で、錘91を下側から支持する。
係止突片部74は、前面部71bから略垂直に突出する矩形板状の突起部であり、前面部71bに対向する係止面74aを形成する。係止突片部74は、係止面74aを錘91の前側の板面に対向させた状態で錘91を基部71に係止させる。係止突片部74は、左右両側の2箇所に設けられ、支持突片部73上に支持された状態の錘91を左右両側から挟み込む態様で錘91を係止する。係止突片部74は、係止面74aを形成する部分として、上面視で略直角三角形状をなす係止部74bを有する。係止部74bは、略直角三角形状である上面視形状における斜辺に対応する面として、左右方向の外側から内側にかけて前側から後側に下る斜面を有する。左右の係止突片部74は、係止部74bの斜面側を互いに対向させるように設けられる。
挿入突部75は、前面部71bから略垂直に突出する突起部であり、錘91の中央部に設けられた孔91aに挿入される。つまり、挿入突部75は、支持突片部73上に支持された状態の錘91の中央部の孔91aに対応する位置に設けられている。
このような支持突片部73、係止突片部74、および挿入突部75を有する第1切替弁70に対して、錘91は、次のようにして取り付けられる。錘91は、短手方向を上下方向として左右の支持突片部73上に載せられることで、基部71側の左右の角部分を係止突片部74の係止部74bの斜面に接触させた状態となる。かかる状態から、錘91を前面部71b側に押し付けることで、係止突片部74は、係止部74bの斜面にならって先端側が左右に広がるように弾性変形し、錘91が係止部74bによって係止された状態となること、つまり板面を前面部71bに沿わせた状態となることを許容する。錘91が係止された状態となることで、中央の挿入突部75は、錘91の孔91aに挿入された状態となる。
このようにして第1切替弁70の正面側に取り付けられた錘91は、支持突片部73によって下側から支持され、係止突片部74によって基部71に対して係止されるとともに、挿入突部75を貫通させた状態となる。
以上のように、本実施形態の第1切替弁70は、第1切替弁70の第2切替弁80側と反対側となる正面側、つまり内側に、複数の突起部として、前面部71bに突出形成された支持突片部73、係止突片部74、および挿入突部75を有する。これらの突起部は、第1切替弁70に錘91が取り付けられた状態において、錘91の前側の板面よりも突出した状態となる。つまり、これらの突起部の前面部71bからの突出寸法は、錘91の板厚よりも十分に長い(例えば約2倍)。そして、これらの突起部は、後述するように、小タンク60の開口部62から小タンク60内に流入する洗浄水に乱流を生じさせる乱流形成部として機能する。
以上のような第1切替弁70および第2切替弁80は、相対的な大きさについて、第2切替弁80が、第1切替弁70よりも縦方向の寸法および横方向の寸法が長く構成されている。つまり、第2切替弁80の上下方向の寸法は、第1切替弁70の上下方向の寸法よりも長く、第2切替弁80の左右方向の寸法は、第1切替弁70の左右方向の寸法よりも長い。
第1切替弁70および第2切替弁80は、それぞれの基部71,81において、互いに重なる方向視、つまり正面視において略矩形状をなす。第1切替弁70および第2切替弁80は、第2切替弁80の挿入突部83が第1切替弁70の連通口71aに挿通され、第1切替弁70の小突起71dが第2切替弁80の手前側面84aに接触した状態を、互いに重なった状態とする(図3参照)。第1切替弁70および第2切替弁80は、互いに重なった状態において、左右方向については互いの中心を一致させ、上下方向については互いの中心を略一致させる。なお、2つの切替弁が互いに重なった状態において、第1切替弁70の支持突片部72の軸支部72aは、第2切替弁80の支持突片部82の支持孔部82aに対して左右方向の内側から嵌合した状態となる。
そして、2つの切替弁が互いに重なった状態においては、正面視で、第2切替弁80の基部81の外形の範囲内に、第1切替弁70の基部71が含まれる。つまり、第1切替弁70および第2切替弁80は、互いに重なった状態で、第2切替弁80の基部81の上下方向および左右方向の外形寸法の範囲内に、第1切替弁70の基部71が収まるように構成されている。
具体的には、図16に示すように、縦方向となる上下方向については、第2切替弁80における上面となる壁部88の上壁部88aの外側面と、基部81の左右方向の中央部において下方に突出形成されている下側突片部81bの下端との間の寸法G1の方が、第1切替弁70の略矩形板状の基部71の上端面と下端面との間の寸法G2よりも長い。そして、2つの切替弁が互いに重なった状態で、第2切替弁80の外形の上下方向の寸法G1を規定する範囲内に、第1切替弁70の外形の上下方向の寸法G2が収まっている。すなわち、2つの切替弁が互いに重なった状態において、上側については、第1切替弁70の基部71の上端面と第2切替弁80の上面との間の上下方向の寸法G3分だけ、第2切替弁80が第1切替弁70から上側にはみ出しており、下側については、第1切替弁70の下端面と第2切替弁80の下側突片部81bの下端との間の上下方向の寸法G4分だけ、第2切替弁80が第1切替弁70から下側にはみ出している。
また、横方向となる左右方向については、第2切替弁80における左右の側壁部88bの外側面間の寸法H1の方が、第1切替弁70の基部71における左右外側の端面間の寸法H2よりも長い。そして、2つの切替弁が互いに重なった状態で、第2切替弁80の外形の左右方向の寸法H1を規定する範囲内に、第1切替弁70の外形の左右方向の寸法H2が収まっている。すなわち、2つの切替弁が互いに重なった状態において、左右両側で、第1切替弁70の基部71の左右外側の端面と第2切替弁80の側壁部88bの外側面との間の左右方向の寸法H3分だけ、第2切替弁80が第1切替弁70から左右外側にはみ出している。
このように第1切替弁70および第2切替弁80が互いに重なった状態で第1切替弁70が第2切替弁80の外形寸法の範囲内に収まる構成において、2つの切替弁が互いに重なった状態において、正面視で、第2切替弁80の壁部88によって第1切替弁70の基部71の周囲が囲まれた状態となる。すなわち、図16に示すように、2つの切替弁が互いに重なった状態の正面視で、壁部88の上壁部88aおよび左右の側壁部88bによって、第1切替弁70の基部71が、その上側および左右両側の3方側から囲まれた態様となる。言い換えると、2つの切替弁が互いに重なった状態の正面視で、第2切替弁80の壁部88の上壁部88aおよび左右の側壁部88bは、第1切替弁70の基部71略矩形状の外形に沿って基部71の外側に位置することになる。
また、本実施形態の排水弁装置40においては、小タンク60の側面部61に設けられて第1切替弁70および第2切替弁80によって開閉される開口部62について、その高さ位置が工夫されている。本実施形態の排水弁装置40においては、開口部62は、小タンク60の鉛直方向(上下方向)の中央位置より上側に設けられている。
具体的には、図4に示すように、小タンク60において側面部61に設けられる開口部62は、その開口の下端の位置を、小タンク60の全体の高さの半分の位置(直線J1参照)、つまり小タンク60の鉛直方向の中央位置よりも上側に位置させるように設けられる。本実施形態では、上下方向の開口寸法について小タンク60の約1/4の寸法を有する開口部62が、小タンク60の鉛直方向の中央位置よりも上側半分の部分における略中央部に設けられている。なお、開口部62の開口幅方向については、開口部62は、側面部61の幅方向に対して側面部61の幅方向の両端部以外の大部分を占めるように設けられている。
以上のような構成を備える本実施形態の排水弁装置40によって得られる作用・効果について説明する。
まず、本実施形態に係る排水弁装置40においては、第2切替弁80が、挿入突部83が突出形成される手前側面84aと、手前側面84aよりも小タンク60に対して外側に離れる位置に設けられた奥側面85aおよび第2手前側面84bを有する。このような構成によれば、洗浄水の排出量を切り替えるための構成として、排水口14を囲むように設けられた小タンク60の側面部61に形成された開口部62を小タンク60の外側から開閉する第1切替弁70および第2切替弁80を備える構成において、第2切替弁80の動作を安定させることができ、洗浄水の排出量を安定させることができる。
上述した小洗浄モードおよびエコ小洗浄モードのように、第1切替弁70および第2切替弁80の両方の切替弁が一旦閉じられる洗浄モードにおいては、閉じた状態の第1切替弁から第2切替弁80が離れにくくなり、第2切替弁80が閉じた状態が必要以上に維持されるという現象が生じる可能性がある。このことは、小タンク60内の水が無くなり、小タンク60に対して開口部62からの洗浄水の流入のみになることにより、小タンク60の内外の圧力差が大きくなり、第2切替弁80が小タンク60の外側にある洗浄水から水圧によって閉じる側へ押し付けられることに起因する(図7、矢印K1参照)。第2切替弁80の開くタイミングが遅れると、排水口14からの洗浄水の排出量が減少し、小洗浄モードおよびエコ小洗浄モードにおいて便器本体2に対して十分な量の洗浄水が供給できなくなる。
本実施形態に係る排水弁装置40は、小タンク60の内外の圧力差が大きくなる原因として、第1切替弁70と第2切替弁80との間の隙間が狭いことに着目したものである。すなわち、第1切替弁70と第2切替弁80との間の隙間が狭いと、この隙間における洗浄水の流速が速くなり、そのため、閉じた状態の第2切替弁80の内外の圧力差が生じ、閉じた状態の第1切替弁70に第2切替弁80が押し付けられる結果となる(図7、矢印K1参照)。
そこで、本実施形態に係る排水弁装置40は、第1切替弁70と第2切替弁80との間の隙間を広くするため、第2切替弁80において、手前側面84aと、手前側面84aよりも小タンク60に対して外側に離れる位置に設けられた奥側面85aおよび第2手前側面84bとを有する。このような構成により、第2切替弁80において第1切替弁70との間の隙間を狭くする部分を減らすことができ、第1切替弁70と第2切替弁80との間の間隔を広くすることができる。
具体的には、第1切替弁70と第2切替弁80との間の隙間としては、狭い方から順に、左右方向の中央部分において小突起71dを介する第1切替弁70の後面71cと第2切替弁80の手前側面84aとの間の隙間と、その左右両側における第1切替弁70の後面71cと第2切替弁80の第2手前側面84bとの間の隙間と、その左右外側における第1切替弁70の後面71cと第2切替弁80の奥側面85aとの間の隙間とが存在する。特に、第1切替弁70の後面71cと第2切替弁80の左右両側の奥側面85aとの間の隙間は、奥側面85aを底面とする箱状の空間を形成する凹状部89が存在することにより、第1切替弁70の後面71cと第2切替弁80の手前側面部84との間の隙間と比べて大幅に広い。
このように第2切替弁80が、第1切替弁70側を向く面として、挿入突部83を突出させる手前側面84aと、これよりも小タンク60に対して外側に離れる第2手前側面84bおよび奥側面85aを有することで、第1切替弁70と第2切替弁80との間の間隔を広くすることができ、第1切替弁70と第2切替弁80との間の隙間における洗浄水の水流の流速を遅くすることができる。このため、閉じた状態の第2切替弁80の内側と外側の圧力差を小さくすることができ、第2切替弁80が開かずに閉じた状態が必要以上に維持されるという現象を防止することが可能となる。これにより、第2切替弁80の動作を安定させることができ、第2切替弁80の開弁タイミングの遅れに起因する洗浄水の排出量の減少を抑制することができ、小洗浄モードおよびエコ小洗浄モードにおいて便器本体2に対して十分な量の洗浄水が供給できなくなるといった不具合を解消することができる。結果として、洗浄水の排出先である便器本体2側の圧力損失(先抵抗)の大きさにかかわらず、第2切替弁80の動作を安定させて洗浄水の排出量を安定することができるので、排水弁装置40を備えた洗浄水タンク装置1により様々な種類の便器に対応することが可能となり、高い汎用性を得ることができる。
このような作用・効果に関し、例えば、第2切替弁80において第1切替弁70の後面71cに対向する面が前後方向について全体的に手前側面部84と同じ位置の面により形成された構成を比較例とした場合、本実施形態に係る排水弁装置40によれば、比較例の構成との対比において、第1切替弁70の後面71cに対する近接面積を略半分に低減することが可能となる。ここで、近接面積とは、本実施形態の場合、第1切替弁70と第2切替弁80とが互いに重なった状態において第2切替弁80の内側(正面側)の面部のうち第1切替弁70の後面71cに対して相対的に近接する面部である手前側面部84の面積に相当する。
そして、上記の比較例の構成との関係では、本実施形態に係る排水弁装置40によれば、第1切替弁70および第2切替弁80の両方が閉じた状態であって、小タンク60の外側に相当する第2切替弁80の背面側を水頭圧力とし、小タンク60の内側に相当する第1切替弁70の正面側を大気開放とした解析条件による流体解析において、第2切替弁80が内側(正面側)から受ける力(負圧)が略半分に減少するという解析結果が得られている。このことは、第2切替弁80がその内側(正面側)において力(負圧)を受ける面の面積、つまり第1切替弁70の後面71cに対する近接面積が半減することに起因する。
また、本実施形態に係る排水弁装置40においては、手前側面84aは、第2切替弁80が第2の面として有する奥側面85aよりも面積が小さくなっている。このような構成によれば、第1切替弁70と第2切替弁80の間を流れる洗浄水の流速が速くなる箇所の面積を小さくすることが可能となる。
すなわち、第1切替弁70と第2切替弁80の間において流速が速くなる箇所は、第1切替弁70に対する近接面となる手前側面部84、特に手前側面84aの部分であることから、奥側面85aが手前側面84aよりも広い面積を有することで、2つの切替弁間の隙間を流れる洗浄水の流速が速くなる箇所の面積を小さくすることができる。これにより、閉じた状態の第2切替弁80の内側と外側の圧力差を効果的に小さくすることができ、第2切替弁80が開かずに閉じた状態が必要以上に維持されるという現象を防止することが可能となり、第2切替弁80の動作の安定化を図ることができ、これにともなって排水量の安定化を図ることができる。
また、本実施形態に係る排水弁装置40においては、第2切替弁80が、第1切替弁70よりも縦方向の寸法および横方向の寸法が長く構成され、しかも第2切替弁80の周囲には、奥側面85aから第1切替弁70側に立つ壁部88が設けられている。このような構成によれば、第1切替弁70と第2切替弁80が開放された状態で洗浄水の排出が行われる洗浄モード(大洗浄モード)において、小タンク60の外部から開口部62を介して小タンク60の内部へと流れ込む水流が第1切替弁70と第2切替弁80との間に入り込んで第1切替弁70が煽られて閉じてしまうことを防ぐことができる。
第1切替弁70および第2切替弁80の両方が開いた状態では、錘91,92による自重によって第1切替弁70および第2切替弁80は互いに重なった状態となる(図3参照)。そして、2つの切替弁が互いに重なった状態においては、第2切替弁80の外形寸法の範囲内に第1切替弁70が位置するとともに、第1切替弁70の周囲が壁部88によって囲まれることになる。したがって、第1切替弁70と第2切替弁80との間の隙間の周囲に壁部88が存在することとなり、壁部88によって第1切替弁70と第2切替弁80との間の隙間に水が流れ込むことを抑制することができる。これにより、上記のとおり第1切替弁70が煽られて閉じることが防止される。
このように、本実施形態の排水弁装置40によれば、第1切替弁70と第2切替弁80との間の隙間が広いことから、小洗浄モードおよびエコ小洗浄モードにおいて、第2切替弁80が閉じたままとなる現象が防止され、十分な量の洗浄水を供給することができるとともに、大洗浄モードにおいて、第1切替弁70が煽られて閉じる現象が防止され、所定の洗浄水量を確保することができる。すなわち、本実施形態の排水弁装置40によれば、大洗浄モード、小洗浄モード、およびエコ小洗浄モードの各洗浄モードにおいて、第1切替弁70および第2切替弁80の動作を安定させることができ、洗浄モードに応じた適性な洗浄水量を得ることができる。
また、本実施形態に係る排水弁装置40においては、第2切替弁80の外側に取り付けられる錘92が、奥側面85aよりも小タンク60に対して外側に離れる位置に設けられている。このような構成によれば、錘92によって第2切替弁80の開く方向に働くモーメントを大きくすることができる。これにより、第1切替弁70および第2切替弁80の両方の切替弁が一旦閉じられてその後、第2切替弁80のみが開く洗浄モード(小洗浄モードおよびエコ小洗浄モード)において、上述したような第2切替弁80が閉じた状態が必要以上に維持されるという現象を防止することが可能となる。
図11(a)に示すように、本実施形態に係る第2切替弁80の錘92の取付け構造によれば、前後方向について、第2切替弁80の回動中心の位置L1と、錘92の取付け面となる突出支持部90の突出側端面90aの位置L2との間の寸法L3を、従来と比べて格段に大きくすることができる。これにより、錘92によって第2切替弁80の開く方向に働くモーメントが大きくなり、第2切替弁80を確実に開くことができ、第2切替弁80の開弁動作を安定させることができる。
また、錘92によって第2切替弁80の開く方向に働くモーメントを大きくすることができるので、例えば従来よりも軽い錘によって、第2切替弁80を開く方向に回動するための力を確保することが可能となる。これにより、錘を軽くすることができ、その分、コストを削減することができるというメリットも得られる。
また、本実施形態に係る排水弁装置40においては、第1切替弁70の内側に、開口部62から小タンク60内に流入する洗浄水に乱流を生じさせる乱流形成部として、支持突片部73、係止突片部74、および挿入突部75が設けられている。このような構成によれば、第1切替弁70と第2切替弁80が開放された状態で洗浄水の排出が行われる洗浄モード(大洗浄モード)において、小タンク60の外部から開口部62を介して小タンク60の内部へと流れ込む洗浄水の水流について、第1切替弁70の内側面(前側面)上を流れる水流を乱すことができる。
具体的には、第1切替弁70に設けられた支持突片部73、係止突片部74、および挿入突部75の各突起部は、いずれも第1切替弁70に取り付けられた錘91よりも内側(前側)に突出する(図15(c)参照。)。したがって、図3に示すように、第1切替弁70と第2切替弁80の両方が開いた状態においては、第1切替弁70において内側に突出する突起部が、開口部62を介して小タンク60の外部から内部へと流れ込む洗浄水の水流(図3、矢印M1参照)に作用して乱流を生じさせる。すなわち、第1切替弁70において内側に突出する複数の突起部が、開口部62から小タンク60内に流れ込む水流のうち第1切替弁70の内側面に沿う部分に作用して流を乱す。
これにより、第1切替弁70の内側面上を流れる水流の流速が遅くなるため、第1切替弁70の内側の圧力の低下が抑制され、第1切替弁70の内側と外側の圧力差によって第1切替弁70が閉じてしまうことを防ぐことができる。結果として、大洗浄モードにおいて、第1切替弁70が煽られて閉じる現象が防止され、所定の洗浄水量を確保することができる。
なお、本実施形態では、乱流形成部として、複数の突起部である支持突片部73、係止突片部74、および挿入突部75が設けられているが、乱流形成部はこれらの形状部分に限定されるものではない。第1切替弁70に設けられる乱流形成部としては、複数の突起部に限らず、一つの突起部であってもよく、また、突起部に限らず、開口部62から小タンク60内に流入する洗浄水に作用して乱流を生じさせる形状部分であれば、様々な凹凸形状部分を採用することができる。また、乱流形成部としては、第1切替弁70において錘91を支持するための部分以外に別途設けられた部分であってもよい。
ただし、第1切替弁70に設けられる乱流形成部としては、本実施形態のように、複数の突起部であることにより、開口部62を介して小タンク60の内部へと流れ込む洗浄水の水流について、広範囲に乱流を生じさせることができる。また、本実施形態のように、乱流形成部が、錘91を支持するための部分であることにより、第1切替弁70が開いた状態で開口部62から小タンク60内に流入する洗浄水の流れに乱流を形成するための部分と、錘91を支持するための部分とを兼用することができ、第1切替弁70の形状が複雑になることを防止することができる。
また、本実施形態に係る排水弁装置40においては、小タンク60において、2つの切替弁により開閉される開口部62は、小タンク60の鉛直方向の中央位置より上側に設けられている。このような構成によれば、開口部62が開放された状態で洗浄水の排出が行われる大洗浄モードにおいて、排水弁51の閉弁後における小タンク60の外側の最終的な水位DWL(図2参照)を、開口部62の開口の下端位置とすることができる。これにより、大洗浄モードにおいて洗浄水の排出量のばらつきを抑制することができる。このことについて具体的に説明する。
洗浄水タンク12内の水位が小タンク60の上縁部60aの付近まで低下した時点からの洗浄水の排出について、排水口14に連通する便器本体2側の導水路5等の流路における圧損による抵抗により、排水口14から排出される洗浄水の時間当たりの排出量が変わる。このため、例えば仮に開口部62が小タンク60の下端部に設けられている場合、洗浄水タンク装置1の排水口14から排出される洗浄水を受け入れる便器本体2側の導水路5等の流路における圧損の大小によって、排水口14から排出される洗浄水の量が変化し、排水弁51の閉弁直後における小タンク60外の水位がばらつくことになる。つまり、便器本体2側の圧損の大小による排水口14からの洗浄水の排出量の変化に応じて開口部62から小タンク60内に流入する洗浄水の量が変化し、排水口14からの洗浄水の排出量がばらつくことになる。そして、排水弁51の閉弁直後における小タンク60の外側の水位が開口部62よりも上側に位置すると、排水弁51の閉弁直後における小タンク60外の水位によって、最終的な排水弁51の閉弁後における最終的な水位DWLの位置が変化してしまう。この点、本実施形態のように開口部62が小タンク60における上側に位置することで、便器本体2側の流路における圧損抵抗の大小にかかわらず、排水弁51の閉弁後における小タンク60の外側の水位を開口部62の開口の下端位置、つまり開口部62による摺り切りの位置(水位DWL)とすることができるので、便器本体2側の流路における圧損抵抗の大小の影響が小さくなり、大洗浄モードにおける洗浄水の排出量を安定させることができる。
なお、小タンク60において開口部62の高さ位置を高くすると、洗浄水タンク12内の水位が開口部62の下端位置に早く達するため、小タンク60の内外の圧力差が生じるまでの時間が早くなるが、上述したように排水弁装置40が第2切替弁80および第1切替弁70において備える構成により、小タンク60の内外の圧力差を低減させることができる。このため、本実施形態の排水弁装置40によれば、小タンク60において開口部62が上側の部分に設けられた構成においても、小タンク60の内外の圧力差に起因する切替弁の動作の不具合を防止することができ、第1切替弁70および第2切替弁80について安定した開閉動作を維持することができる。