JP6287022B2 - 電気デバイス用電極およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解質二次電池やキャパシタなどの電気デバイス用電極およびその製造方法に関する。
現代社会でのエネルギーと環境保全との問題解決に関連して、産業界全体に対して二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、その問題解決の一つとして注目されているのが電池である。なかでも、繰り返し使用可能な二次電池は、充放電率、自己放電率、負荷率放電特性、エネルギー密度などの点で他の電池を圧倒するため、電気自動車電源を中心として世界中で二次電池の研究開発を競っている。特に、リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解質二次電池は、携帯機器等だけでなく、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)、および燃料電池自動車等の電動車両の電源装置にも利用されつつある。非水電解質二次電池は、一般的に、正極活物質等をアルミニウム箔等の正極集電体に塗布した正極と、負極活物質等を銅箔等の負極集電体に塗布した負極とが、セパレータに非水電解質液または非水電解質ゲルを保持した電解質層を介して接続された構成を有している。そして、例えばリチウムイオン等のイオンが電極活物質中に吸蔵・放出されることにより、電池の充放電反応が起こる。
このような非水電解質二次電池の電極は、通常、以下の製法により製造される。まず、平均粒経が数μmから数十μmの電極活物質とバインダ(結着材)の混合スラリーを調製する。次に、調製した混合スラリーを金属箔の集電体上に塗布することにより、塗膜を形成し、乾燥(乾燥工程)、プレス(プレス工程)をして、所定の幅に切断し、更に、所定の長さに切断(切断工程)して製造される。
乾燥工程においては、通常、量産性の観点から、スラリー状態の塗膜を高速乾燥させるため、こうした高速乾燥として通常用いられている熱風乾燥を行った場合、集電箔と塗膜材(電極活物質層)が剥離してしまうという問題がある。これは、結着材として配合しているバインダの表面付近の偏析のため、不良をおこしていることが原因であることがわかっている。上記剥離強度の低下は、その剥離した塗工層(電極活物質層)と集電箔との間で、電荷の授受がほとんど起こらなくなる。それに伴い、塗工層(電極活物質層)と電解液(電解質層)の間でリチウムイオンの授受がほとんど起こらなくなり、電池性能が著しく低下する。このため、剥離強度を高くする必要がある。
そこで、このような剥離強度に着目した技術として特許文献1、2が挙げられる。特許文献1では、電極の塗工層(電極活物質層)の剥離強度を維持するため、スラリー中の電極活物質のタップ密度をもとに、乾燥時間を定めている。特許文献2では、集電箔−スラリー界面に事前にバインダを固定する薬剤を塗布することで、集電箔との結着を高める方法を開示している。
特開2011−096458号公報 特開2011−187343号公報
特許文献1では、タップ密度が高いとスラリー粘度が低くなることから、バインダの偏析が起こりやすいとしている。そのため特許文献1の方法では、電極活物質のタップ密度を管理する必要があるとともに、バインダの偏析防止のため、乾燥時間を調整する必要がある(即ち、長時間乾燥を要する)ため、生産効率に劣るという欠点がある。また、特許文献2の方法の場合、事前に塗布する工程が必要になるため、生産効率が悪くなり、生産性が極端に悪化し、コスト高になるという問題があった。
そこでかかる問題を解決するために、本発明は、量産性の観点から生産効率を維持しながら、電極活物質層と集電体(箔)との密着性(剥離強度)、ひいては電気デバイス性能(電池性能やキャパシタ性能)を高めることのできる電極の製造方法を提供する。
電気デバイス用電極の製造方法において、量産性(生産性)、コスト高を考慮すると、従来技術によって剥離強度を保つのは、限界がある。この問題を解決するため、本発明者は、高速乾燥により生産効率を維持しつつ、バインダの偏析が多少生じてもバインダと集電体(箔)との結着性を最大限に向上し得る乾燥条件を見出した。かかる乾燥条件で乾燥工程を行うことにより、上記課題が解決できることを見出した。
即ち本発明の目的は、集電体に塗布されたスラリーの温度が平衡状態になる定率乾燥部で、バインダの結晶化温度未満で加熱することを特徴とする電極の製造方法を提供する。なお、前記スラリーは、少なくとも電極活物質と、半結晶性高分子バインダとを含む固形分成分を溶媒に溶解ないし分散したスラリーである。
本発明の電極の製造方法は、半結晶性高分子バインダを用い、該バインダを含むスラリー(塗膜)の乾燥条件として定率乾燥部で該バインダの結晶化温度未満で加熱することで、高速乾燥が可能となり生産効率を向上させることができる。さらに高速乾燥(例えば、熱風乾燥)を行った場合に該バインダの偏析が多少生じても該バインダと集電体(箔)との結着性を最大限に向上でき、該バインダを含む電極活物質層と集電体(箔)の密着が増し、剥離強度を向上することができる。
即ち、該バインダを含むスラリー(塗膜)の乾燥条件として定率乾燥部で該バインダの結晶化温度未満の温度(結晶化温度より低い温度)で乾燥することで、集電体(箔)付近に残った該バインダの非結晶成分を多く残したまま乾燥できる。この非結晶成分は、分子運動性に優れることから、集電体(箔)表面の凸凹に食い込み、結着面積を増すことができる。このことで、該バインダは、集電体(箔)との密着力を増し、剥離強度を向上させることができるものである。
本発明の製造方法で得られた電極を適用することのできる電気デバイスの1種である扁平型(積層型)の双極型でない非水電解質二次電池の基本構成を示す断面概略図である。 本発明の製造方法で得られた電極を適用することのできる電気デバイスの1種である双極型非水電解質二次電池の基本構成を示す断面概略図である。 本発明の製造方法で得られた電気デバイス用電極を拡大して表した断面概略図である。 図4Aは、半結晶性高分子バインダを含むスラリーを集電体に塗布して形成した塗膜(ウェット状態)を、定率乾燥部で、(100℃以上)該バインダの結晶化温度未満の温度(結晶化温度より低い温度)で乾燥した場合のバインダと集電体(箔)との接着状態を表す断面概略図である。図4Bは、図4Aの一部(上記バインダと集電体(箔)との境界領域)を拡大した図面である。図4Cは、定率乾燥部で上記バインダの結晶化温度以上の温度で乾燥した場合の上記バインダと集電体(箔)との接着状態を表す断面の一部を拡大した概略図である。 本発明の電極の製造方法の乾燥工程におけるプロファイルに関する説明図である。 本発明の電極の製造方法に用いることのできる半結晶性高分子バインダの結晶構造変化の様子を表す図面である。 本発明の電極の製造(主に塗膜形成工程及び乾燥工程)に用いる塗工・乾燥装置による説明図である。 本発明の電極の製造方法に用いることのできる乾燥装置(熱風乾燥、赤外線乾燥の併用乾燥装置)の一実施形態を模式的に表した概略図である。 本発明の製造方法で得られた電極を適用することのできる電気デバイスの1種である扁平な非水電解質二次電池の外観を表した斜視図である。 実施例と比較例(従来技術)において、それぞれの電極の製造時の乾燥速度と、得られた電極の剥離強度の関係を示す図面である。 実施例と比較例(従来技術)において、それぞれの電極の製造時の乾燥速度と、得られた電極サンプルのバインダの表面偏析量の関係を示す図面である。 図12Aでは集電体(アルミ箔)の片面側に塗膜(活物質層)が塗工・乾燥された試料(電極サンプル)において、集電箔から塗膜(活物質層)を剥がした塗膜(活物質層)側界面(裏)と塗膜(活物質層)の表面(表)の様子を模式的に表している。図12Bは、集電体の片面側に塗膜(活物質層)が塗工・乾燥された試料(電極サンプル)において、塗膜(活物質層)の表面(表)側にバインダ(PVDF)が偏析した様子を模式的に表した断面概略図である。
本発明は、半結晶性高分子バインダ含有スラリーを集電体に塗布し、乾燥をする工程において、前記集電体に塗布されたスラリーの温度が平衡状態になる定率乾燥部で、前記バインダの結晶化温度未満で加熱することを特徴とする電極の製造方法である。ここで、前記半結晶性高分子バインダ含有スラリーは、電極活物質と、半結晶性高分子バインダと、を含む固形分成分を溶媒に溶解ないし分散したスラリーをいう。かかる構成により、上記した発明の効果を奏することができる。また、本発明は、上記製造方法により得られてなる電極である。かかる構成により、生産効率が高く安価で、尚且つ電極の活物質層と集電体との密着性(剥離強度)の高い電極を提供できる。その結果、当該電極を用いた電気デバイスでは、デバイスである電池やキャパシタの性能、特に剥離が抑制されることで、容量維持特性に優れている(長寿命化が図れる)。
以下、便宜上、本発明の製造方法により得られた電極及びこの電極を用いた電気デバイスの1種である非水電解質二次電池の概要を説明した後、本発明の電気デバイス用電極の製造方法について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
非水電解質二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)の電解質の形態で区別した場合に、特に制限はない。例えば、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。
図1は、電気デバイスの1種である扁平型(積層型)の双極型ではない非水電解質二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の基本構成を模式的に表した断面概略図である。図1に示すように、積層型電池10aは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体である電池外装材29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、電解質層17と、負極とを積層した構成を有している。正極は、正極集電体11の両面に正極活物質層13が配置された構造を有する。負極は、負極集電体12の両面に負極活物質層15が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型電池10aは、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層負極集電体が位置するようにし、該最外層負極集電体の片面または両面に負極活物質層が配置されているようにしてもよい。
正極集電体11および負極集電体12は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、電池外装材29の端部に挟まれるようにして電池外装材29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
図2は、電気デバイスの1種である双極型非水電解質二次電池(以下、単に「双極型電池」ともいう)10bの基本構成を模式的に表した断面概略図である。図2に示す双極型電池10bは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
図2に示すように、双極型電池10bの発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータ(の面方向中央部=電極極活物質層に対応する部分)に電解質が保持されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23および電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型電池10bは、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止する目的で、単電池層19の外周部にはシール部(絶縁層)31が配置されている。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。ただし、正極側の最外層集電体11aの両面に正極活物質層13が形成されてもよい。同様に、負極側の最外層集電体11bの両面に負極活物質層15が形成されてもよい。
さらに、図2に示す双極型電池10bでは、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板25が配置され、これが延長されて電池外装材であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板27が配置され、同様にこれが延長されて電池の外装であるラミネートフィルム29から導出している。
図2に示す双極型電池10bにおいては、通常、各単電池層19の周囲にシール部31が設けられる。このシール部31は、電池内で隣り合う集電体11どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かようなシール部31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型電池10bが提供されうる。
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型電池10bでは、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型電池10bでも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止する必要がある。よって、発電要素21を電池外装材であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。
図3は、図1および図2に示す非水電解質二次電池10a、10bに用いられる、電極65を拡大して表す断面概略図である。
本発明の電極65は、集電体62上に形成されてなる電極活物質層63(正極活物質層、負極活物質層)を有する。また、電気デバイスとして非水電解質二次電池を例示したが、これに制限されるわけではなく、他のタイプの二次電池(リチウムイオン二次電池)、さらには、一次電池にも適用できる。また、電池だけではなく、キャパシタにも適用できる。なお、本明細書中、「集電体」と記載する場合、正極集電体、負極集電体、双極型電池用集電体のすべてを指す場合もあるし、一つのみを指す場合もある。同様に、「電極活物質層」と記載する場合、正極活物質層、負極活物質層の両方を指す場合もあるし、片方のみを指す場合もある。同様に、「電極活物質」と記載する場合、正極活物質、負極活物質の両方を指す場合もあるし、片方のみを指す場合もある。
以下、本実施形態の電極65について、さらに詳細に説明する。
[集電体]
集電体を構成する材料に特に制限はないが、好適には金属が用いられる。具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅、その他合金等などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅が好ましい。正極集電体としては、アルミニウム箔が好ましく、負極集電体は、電解銅箔、圧延銅箔等の銅箔が特に好ましい。
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm、好ましくは5〜50μm程度である。
[電極活物質層(正極活物質層、負極活物質層)]
正極活物質層または負極活物質層は、電極活物質、および半結晶性高分子バインダを含み、必要に応じて、半結晶性高分子以外のバインダ、界面活性剤、導電助剤、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。
また、電極活物質層内のバインダ成分である半結晶性高分子は、低結晶性領域(いわゆる非晶部;非結晶成分;分子の集まりが疎な部分)および高結晶性領域(いわゆる結晶部;結晶成分;分子の集まりが密な部分)を有する。電極活物質層内において半結晶性高分子の高結晶性領域はバインダ強度(結着強度や剥離強度)に寄与し、低結晶性領域は、電解液を保持する効果を奏する。
本明細書における半結晶性高分子の低結晶性領域(非晶部;非結晶成分;分子の集まりが疎な部分)とは、X線回折ピークの半値幅w°がピーク強度hに対してw/h=3以上であり、XRD(Cu Kα)測定により決定している。また、本明細書における半結晶性高分子の高結晶性領域(結晶部;結晶成分;分子の集まりが密な部分)とは、X開回折ピークの半値幅w°がピーク強度hに対してw/h=0.5以下であり、XRD(Cu Kα)測定により決定している。なお、半結晶性高分子を前記低結晶性領域と前記高結晶性領域とに大別する場合には、X線回折ピークの半値幅w°がピーク強度hに対してw/h=3以上を低結晶性領域とし、w/h=3未満を高結晶性領域としてもよい。あるいはX線回折ピークの半値幅w°がピーク強度hに対してw/h=0.5超を低結晶性領域とし、w/h=0.5以下を高結晶性領域としてもよい。
電極活物質層中に含まれる半結晶性高分子バインダの含有量は、バインダ機能を十分に発揮し、電極活物質を活物質本来の活性を抑制しない量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.1〜10質量%である。より好ましくは1〜10質量%であり、更に好ましくは2〜8質量%であり、特に好ましくは3〜8質量%である。
また、電極活物質層の成分(電極活物質、および半結晶性高分子バインダ、必要に応じて、その他のバインダ、導電助剤など)の組成は、前記電極活物質層の総量に対して、以下の通りである。前記半結晶性高分子バインダの含有量は、0.1〜10質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%、特に好ましくは3〜8質量%の範囲である。前記電極活物質の含有量は、70〜99.5質量%であり、好ましくは75〜97.5質量%であり、より好ましくは80〜97質量%、特に好ましくは90〜96質量%の範囲である。前記その他のバインダの含有量(バインダである半結晶性高分子以外の他のバインダも混合する場合)は、好ましくは1〜10質量%であり、より好ましくは2〜8質量%の範囲である。前記導電助剤の含有量は、0〜10質量%であり、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜7質量%の範囲である。
電極活物質層の厚さは、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、好ましくは100〜200μm、より好ましくは100〜180μmである。
(電極活物質)
正極活物質層は、放電時にイオンを吸蔵し、充電時にイオンを放出できる正極活物質を含むことが好ましい。正極活物質の例としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、PbO2、AgO、またはNiOOHなどが好ましく挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
前記リチウムと遷移金属との複合酸化物の例としては、LiMnO2、LiMn24などのLi−Mn系複合酸化物、LiCoO2などのLi−Co系複合酸化物、LiNiO2、Li(Ni−Co−Mn)O2などのLi−Ni系複合酸化物、LiFeO2などのLi−Fe系複合酸化物、LiFePO4などのリチウムと遷移金属との複合リン酸化合物、またはリチウムと遷移金属との複合硫酸化合物などが好ましく挙げられる。前記遷移金属酸化物の例としては、V25、MnO2、V2MoO8、MoO3、TiO2、V23などが好ましく挙げられる。前記遷移金属硫化物の例としては、TiS2またはMoS2などが好ましく挙げられる。これら正極活物質は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウムと遷移金属との複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。また、正極活物質層は、正極活物質、半結晶性高分子バインダのほか、目的に応じて上記の任意成分(導電助剤、半結晶性高分子以外のバインダ、または電解質など)を含むことができる。
負極活物質層は、負極活物質を含む。また、当該負極活物質層は、放電時にイオンを放出し、充電時にイオンを吸蔵できる負極活物質を含むことが好ましい。当該負極活物質としては、例えば、TiO、Ti23、TiO2、もしくはSnO2などの金属酸化物、グラファイト(天然グラファイト、人造グラファイト;黒鉛)、アモルファス炭素、カーボンブラック、アセチレンブラック、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti512)、金属材料(Si、Snなど)、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。また、負極活物質層は、負極活物質、半結晶性高分子バインダのほか、目的に応じて上記の任意成分(導電助剤、半結晶性高分子以外のバインダ、または電解質など)を含むことができる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
各活物質層に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。また、前記平均粒子径とは、1次粒子の平均粒子径をいう。
前記平均粒子径は、例えば、SEM観察、TEM観察により測定することができる。上記でいう平均粒子径は、粒子の形状が一様でない場合もあるため、絶対最大長で表すものとする。ここで、絶対最大長とは、単結合体の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の長さLの平均をとるものとする。なお、値は単結合体10個から求めた平均値とする。
(半結晶性高分子バインダ)
正極活物質層および/または負極活物質層は、半結晶性高分子バインダを含む。半結晶性高分子は、熱分析測定で多重融解挙動を示す高分子であって、かつバインダとしての役割を果たせば特に制限されることは無い。また、前記バインダの役割を有する半結晶性高分子は、活物質層中の構成部材同士または活物質層と集電体とを結着させて電極構造を維持する目的で添加される。バインダとしては、上記目的を達成できる絶縁性材料であって、充放電時に副反応(酸化還元反応)を起こさない材料であればよく、特に限定されないが、以下の3つの点を満たすものがより望ましい。(1)塗工液を安定なスラリーに保つ(分散作用や増粘作用を有している)。(2)活物質粉末、導電助剤(導電フィラー)粉末等の粒子同士を固着させ電極としての機械的強度を維持させ、かつ粒子同士の電気的接触を保つ。(3)集電体に対して接着力(結着力)を維持する。
そのため前記半結晶性高分子としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)とPVDFとの共重合体、ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素系樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム等のフッ素系樹脂やゴムを用いることができる。この他にも、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、およびポリブテンからなる群から選択される少なくとも1種、またはポリフッ化ビニリデンの水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を用いることができる。これらのバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。
半結晶性高分子バインダの重量平均分子量(Mw)は、5000〜10000であることが好ましく、7000〜8000であることが好ましい。
なお、上記分子量は、MSスペクトル法、光散乱法、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどで公知の方法で測定することができる。本明細書では、液クロマトグラフィーにより測定した分子量であり、以下で使用する種々の高分子も同様の方法で測定している。
半結晶性高分子の結晶化温度は、前記半結晶性高分子に応じて決められるものである。水分除去の観点や乾燥時の温度制御が容易であることから、好ましくは100℃以上、より好ましくは100〜150℃、さらに好ましくは110〜130℃の範囲の結晶化温度を有する半結晶性高分子を使用することが好ましい。
本発明に係る半結晶性高分子の融点は、前記半結晶性高分子に応じて決められるものである。乾燥時の温度制御が容易であることから、好ましくは110℃以上、より好ましくは120〜300℃、さらに好ましくは140〜260℃の範囲の融点を有する半結晶性高分子を使用することが好ましい。一般に、半結晶性高分子は、加熱により結晶部分が壊れて流動性を示すようになるのが高分子の融解で、この温度を半結晶性高分子の融点(Tm)としている。また、高分子は融点(Tm)の多様性を示す特徴的性質を持っているため、それぞれの半結晶性高分子の具体的な値を特定することは難しい。例えば、本発明で使用できる半結晶性高分子であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)の融点(Tm)は、170℃(160℃〜180℃の融点帯を備えている)である。同様に、ポリブチレンテレフタレートのTm=228℃、ポリエチレンテレフタレートのTm=260℃、ポリエチレンのTm=140℃、ポリプロピレンのTm=165℃、ポリメチルペンテンのTm=235℃、ポリブテンのTm=165℃であり、Tm近傍に融点帯を備えている。以上のことから、本発明の半結晶性高分子の融点(Tm)は、110℃以上、より好ましくは120〜300℃、さらに好ましくは140〜260℃がさらに好ましい。
本発明に係る半結晶性高分子のガラス転移温度は、前記半結晶性高分子に応じて決められるものであるが、生産環境の観点から、−50〜50℃の範囲のガラス転移温度を有する半結晶性高分子を使用することが好ましい。
なお、本明細書における結晶化温度(Tc)、融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)は、いずれもDSC(示差走査熱量測定)により求めることができる。通常、ガラス転移(Tg)は非晶質構造が増加する際に起こる。このような転移はDSC曲線のベースラインに段となって現れる。これは、試料中の熱容量の変化による。温度の上昇に伴い、非晶質構造は粘度が減少し、ある点で分子が自発的に結晶化するのに十分な温度(Tc)となる。非晶質固体から結晶性固体に転移する際は発熱反応となり、Tcは山のピークとして現れる。さらに温度が上昇すると最終的に融点(Tm)となり、吸熱(谷のピーク)として現れる。本実施形態で用いたDSCの熱分析の条件は、30℃/分で昇温し、融点ピークを測定(融解温度)後、30℃/分で降温し、再結晶化点(結晶化温度)を測定したものである。
本発明に係る半結晶性高分子の結晶化度は、10%以上60%以下が好ましく、40%以上60%以下がより好ましい。
なお、ここでいう結晶化度は、重量結晶化度であり、1気圧25℃の条件で示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定している。
(その他のバインダ)
正極活物質層および負極活物質層は、半結晶性高分子以外にその他のバインダを含んでもよい。電極活物質層に用いられる任意成分のバインダとしては、活物質層中の構成部材同士または活物質層と集電体とを結着させて電極構造を維持する目的で添加される。バインダとしては、上記目的を達成できる絶縁性材料であって、充放電時に副反応(酸化還元反応)を起こさない材料であればよく、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。その他のバインダとしては、例えば、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適なその他のバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。これらのその他のバインダは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、負極活物質層では、水系溶媒を用いた負極スラリーを使用する場合には、上記の電極活物質と半結晶性高分子以外他に、水系バインダ、増粘剤(CMCなど)などの添加剤が含まれうる。
水系バインダとは、水系溶媒に均一に分散可能なバインダのことを意味する。水系溶媒を用いた負極スラリーを用いて形成された負極活物質層に含まれる水系バインダとしては、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ニトリルゴム(またはニトリルブタジエンゴム;NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリレート系ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などゴム系バインダを用いることもできる。更に、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリビニールアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコールなどの水系バインダ等を挙げることができる。中でも、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適な水系バインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり負極活物質層に使用が可能となる。これらの水系バインダは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。但し、本実施形態では上記に例示したものに何ら制限されるものではなく、従来公知の各種の水系バインダを用いることができる。これらは、電極製造時には、上記水系バインダを安価な水等の水系溶媒中に粒子状に分散させた状態で用いられる。これらの水系バインダを用いることで、充電時の加熱分解発熱量が低く、高容量が得やすく、サイクル特性に優れる。なお、これら水系バインダは強い結着性(結着効果)はあるものの、増粘性が十分でない。そのため、電極作成時に水系スラリーに水系バインダを加えただけでは十分な増粘効果が得られない。そこで、増粘性に優れるCMCないしCMC塩を増粘剤として用いることで、水系バインダに増粘性を付与するものである。
水系バインダの含有量は、負極活物質等を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは負極活物質層の総量に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。但し、上記範囲を外れても、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、十分に適用可能である。水系バインダの含有量が0.5質量%以上であれば、水系スラリーを用いて塗工、乾燥することで十分な結着効果を発現し、得られる負極活物質層において負極活物質同士または負極活物質と集電体とを結着し、導電性の3次元ネットワークを形成し得るものである。また、初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極を提供できる。また、水系バインダの含有量が15質量%以下であれば、負極活物質層に占める水系バインダ量を十分に抑えることができ、初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による高容量の負極を提供できる。また、水系スラリーを用いて塗工、乾燥することで十分な結着(バインダ)効果を発現し、得られる負極活物質層において、負極活物質同士を結着し、高い導電性の3次元ネットワークを形成し得るものである。
負極活物質層の作製に、上記の電極活物質と半結晶性高分子以外他に、水系溶媒を含む水系スラリーを用いてなる場合には、負極活物質層中に負極活物質、増粘剤またはCMC誘導体、水系バインダを含む。好ましくは、更にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、炭酸アルカリを含む。必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
増粘剤のCMCないしCMC塩は、その分子中に、カルボキシルメチル基(−CH2COOH)の他に、その塩として、−CH2COONa、−CH2COOLi、−CH2COOK、−CH2COONH4等が存在する。こうした多数の種類(化合物)を包含するCMCないしCMC塩としては、既に多くの種類(化合物)が市販されており、これらの中から適宜選択して使用することができる。これら市販品の多くは、分子中の−CH2COOH基の水素原子の一部または全部がカチオン種であるNa、Li、K、NH4などであるものが用いられており、カチオン種であるNa、Li、K、NH4量は任意に調整可能である。本実施形態では、−CH2COONaなどカチオン種であるNa等の部分でミセルを形成する為、CMCないしCMC塩の分子鎖の末端はNa等のカチオン種のものを用いるのが望ましいといえる。
CMC誘導体としては、増粘剤のCMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基の全部または一部が、−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基のいずれかになっているものなどが挙げられる。ここで、CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基としては、1種だけでもよいし、2種以上であってもよい。1種の場合には、分子中に存在する−CH2COOR基のRには、Na、Li、K、NH4などのカチオン種のいずれかが挙げられる。また2種以上の場合には、分子中に存在する−CH2COOR基のRには、少なくともNa、Li、K、NH4などのカチオン種が含まれていればよく、その他に、H(水素原子)を有するものであってもよい。初期充電前の負極活物質層の構成材料としてCMCないしCMC塩ではなく、CMC誘導体を含有することで、CMC誘導体では分子中に存在する−CH2COOR基が、初期充電で還元分解されにくい安定な−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基のいずれかになっている。そのため、初期充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極を提供できる。
CMC誘導体では、CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基(水系スラリー中では電離してCH2COO-(イオン基)の状態で存在)の全部または一部が還元反応により、安定な−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基のいずれかになっている。かかるCMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基(水系スラリー中で電離した状態のCH2COO-)の還元割合は、10〜100%、好ましくは50〜100%、より好ましくは80〜100%、特に好ましくは100%である。還元割合が10%未満であれば、得られるCMC誘導体を初回充電した際のガス発生を十分に抑えるのが困難となる場合がある。10%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上とすることで、得られるCMC誘導体を初回充電した際のガス発生を十分に抑えることができる。よって、−CH2COOR基(CH2COO-基)の還元割合は必ずしも全部(=100%)でなくともよいといえるが、還元割合100%とすることで、得られるCMC誘導体を初回充電した際のガス発生を格段に抑制することができる。また、容量向上にも大いに寄与し得る点でも好ましいといえるものである。還元割合は、CMC誘導体につき表面ESCA(X線光電子分光法(装置))などを用いて測定することができる。この他にも、1H NMR(核磁気共鳴分光法)、14C NMR、二次元NMRを用いたCOSY(COrrelation SpectroscopY,COrrelated SpectroscopY)測定法等を用いて測定(補足)することもできる。なお、上記還元割合に代えて、後述するアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量を満足するものであれば、本発明の所期の目的及び効果を達成できているものである。そのため、上記した高価な装置を購入して上記還元割合を求めなくても、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量を測定することで、本発明の所期の目的及び効果の達成が確認可能であることから、上記還元割合は、いわば任意要件といえるものである。
水系溶媒を用いた負極スラリーを用いて形成された負極活物質層に含まれる増粘剤またはCMC誘導体の含有量は、負極活物質層の総量に対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜2質量%の範囲である。CMC誘導体の含有量が0.1質量%以上であれば、負極製造過程での増粘効果を十分に発現し、平坦で滑らかな表面の負極活物質層とすることができる。また、得られた負極の初期充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極を提供できる。またCMC誘導体の含有量が10質量%以下であれば、優れた増粘効果により水系の負極スラリーの粘度を適当に調整することができ、所望の負極活物質層とすることができる。また、得られた負極の初期充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極を提供できる。
増粘剤またはCMC誘導体の重量平均分子量は、5000〜1200000、好ましくは6000〜1100000、より好ましくは7000〜1000000の範囲である。CMC誘導体の重量平均分子量が5000以上であれば、負極水系スラリーの粘度を適度に保つことができるなど、CMC誘導体が還元される前の増粘剤のCMCないしCMC塩を水に溶解した際に、負極の水系スラリーの粘度を適度に保つことができる。その結果、負極の製造段階で増粘剤として有効に利用することができる点で有利である。CMC誘導体の重量平均分子量が1200000以下であれば、CMC誘導体が還元される前の増粘剤のCMCないしCMC塩を水等の水系溶媒に溶解した際にゲル状態となることなく、負極の水系スラリーの粘度を適度に保つことができる。その結果、負極の製造段階で増粘剤として有効に利用することができる点で有利である。CMC誘導体の重量平均分子量の測定方法としては、例えば、金属−アミン錯体および/または金属−アルカリ錯体を含有する溶媒を移動相溶媒としたゲルパーミュエーションクロマトグラフィーを用いてCMC誘導体の分子量分布の測定を行うことができる。かかる分子量分布から、CMC誘導体の重量平均分子量の分子量を算出することができる。なお、CMC誘導体の重量平均分子量の測定方法としては、上記方法に何ら制限されるものではなく、従来公知の方法により測定、算出することができる。
水系スラリーを用いた負極活物質層に含まれるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、充放電容量を改善することができる。該アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属としては、特に制限されるものではなく、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。これらは1種単独でも、2種以上を含有していてもよい。
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量は、負極活物質層の総量に対して、50〜30000ppm、好ましくは100ppm〜20000ppmの範囲である。但し、上記範囲を外れても、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、十分に適用可能である。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が50ppm以上であれば、充放電容量の改善に有効な含有効果が認められる。また30000ppm以下であれば、充放電容量の改善に寄与することができる点で有利である。
水系溶媒を用いた負極スラリーを用いて形成された負極活物質層中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、負極製造過程でアルカリ又はアルカリ水を添加することにより、負極活物質層に持ち込まれる成分である。具体的には、負極製造段階でアルカリ水を用いることで、CMCないしCMC塩を還元することで、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどの元素を含有した負極活物質層が得られる。これらは、後述するように酸化物(酸化リチウム、酸化カリウム)や炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム)等の形態で存在していてもよい。
水系溶媒を用いた負極スラリーを用いて形成された負極活物質層には、炭酸アルカリ(Li2CO3)を含むのが好ましい。具体的には、水系スラリーを用いた負極活物質層に炭酸アルカリを含むことで、初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を大幅に抑制することができ、ガス発生の抑制のみならず、充放電効率が大幅に改善された優れた負極を提供できる。更に初回充放電の効率がよくなる点でも優れている。該炭酸アルカリも、負極製造過程でアルカリ又はアルカリ水を添加することにより、大気中(ないし水系スラリー)の二酸化炭素との反応により、負極活物質層に持ち込まれる成分である。
炭酸アルカリとしては、特に制限されるものではなく、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。これらは1種単独でも、2種以上が併用して含まれていてもよい。なかでも炭酸リチウムが好ましい。この場合には、CMC誘導体の被膜の表面に炭酸リチウムを点在させる、若しくは炭酸リチウムの被膜を形成することができる。この炭酸リチウムは負極活物質のSEI(表面皮膜)の成分でもあるため、ガス発生抑制効果・容量アップの効果に加え、寿命性能の向上を図ることもできる点で優れている。CMC誘導体の被膜の表面への炭酸リチウムの点在化若しくは炭酸リチウムの被膜化は負極製造時になされる以外にも、更に初回充放電によりなされることもある。
炭酸アルカリの含有量としては、負極活物質層の総量に対して、0.01〜5質量%の範囲とするのが好ましい。但し、上記範囲を外れても、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、十分に適用可能である。炭酸アルカリの含有量が0.01質量%以上であれば、CMC誘導体の負膜36の表面に炭酸リチウムの被膜37を形成可能である。そのため、ガス発生抑制効果・容量アップの効果に加え、寿命性能の向上を図ることができる点で優れている。一方、炭酸アルカリの含有量が5質量%以下であれば、負極活物質の含有量を低減させることなく、高容量を保持しつつ、CMC誘導体の負膜36の表面に炭酸リチウムの被膜37を形成可能である。そのため、ガス発生抑制効果・容量アップの効果に加え、寿命性能の向上を図ることができる。
電極活物質層に含まれうるその他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電助剤、電解質、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
前記界面活性剤としては、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を使用することができる。
前記導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。電極活物質層が導電助剤を含むと、前記電極活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
前記電解質としては、電解質塩(リチウム塩)が好ましく、具体的には、Li(C25SO22N、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3等が挙げられる。
前記イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
また、本実施形態において、正極活物質層および負極活物質層中に含まれうる、導電助剤、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤の配合比は、特に限定されない。それらの配合比は、非水溶媒二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
[電極の製造方法]
本発明の電極の製造方法は、電極活物質、半結晶性高分子バインダと、を含む固形分成分を溶媒に溶解ないし分散したスラリーを集電体に塗布し、乾燥をする工程において、前記集電体に塗布されたスラリーの温度が平衡状態になる定率乾燥部で、前記バインダの結晶化温度未満で加熱することを特徴とするものである。
本発明の電極の製造方法は、半結晶性高分子バインダを用い、該バインダを含むスラリー(塗膜)の乾燥条件として定率乾燥部で該バインダの結晶化温度未満で加熱することで、高速乾燥が可能となり生産効率を向上させることができる。さらに高速乾燥(例えば、熱風乾燥)を行った場合に該バインダの偏析が多少生じても該バインダと集電体(箔)との結着性を最大限に向上でき、電極材(該バインダを含む電極活物質層)と集電体(箔)の密着が増し、剥離強度を向上することができる。
上記した半結晶性高分子バインダと集電体(箔)との結着性を最大限に向上できる作用機序(メカニズム)を、図面を用いて説明する。図4Aは、半結晶性高分子バインダを含むスラリーを集電体に塗布して形成した塗膜(ウェット状態)を、定率乾燥部で、(100℃以上)該バインダの結晶化温度未満の温度で乾燥した場合のバインダと集電体(箔)との接着状態を表す断面概略図である。図4Bは、図4Aの一部(上記バインダと集電体(箔)との境界領域)を拡大した図面である。図4Cは、定率乾燥部で上記バインダの結晶化温度以上の温度で乾燥した場合の上記バインダと集電体(箔)との接着状態を表す断面の一部を拡大した概略図である。
図4A、4Bに示すように活物質60、半結晶性高分子バインダ61aを含むスラリーを集電体(箔)62に塗布して形成した塗膜(ウェット状態)63の乾燥条件として定率乾燥部で該バインダ61aの結晶化温度未満の温度(結晶化温度より低い温度)で乾燥する。そうすることで、集電体(箔)62付近に残った上記バインダ61aの非結晶成分(非晶部)を多く残したまま乾燥できる。この半結晶性高分子バインダ61aの非結晶成分(非晶部)は、分子運動性に優れることから、比較的動きやすく、柔軟であるので、溶媒蒸発中に徐々に集電体(箔)62表面の凸凹に食い込み、結着面積を増すことができる(図4B参照)。このことで、上記バインダ61aは、集電体(箔)62との密着力を増し、剥離強度を向上させることができる。なお、図4中の符号61bは、電極材(活物質60、半結晶性高分子バインダ61aを含む)を表し、符号63は活物質層(塗膜)を表し、65は電極を表す。一方、図4Cのように上記バインダ61aを含むスラリーを集電体62に塗布形成した塗膜63の乾燥条件として定率乾燥部で該バインダ61aの結晶化温度以上の温度で乾燥した場合、集電体62付近に残ったバインダ61aの非結晶成分が少ないまま乾燥される。そのため、上記バインダ61aの分子運動性が低いことから、動くことができず、溶媒蒸発中に集電体(箔)62表面の凸凹に食い込むことができないため、結着面積が小さい状態で乾燥されきる(図4C参照)。そのため、高速乾燥(例えば、熱風乾燥)を行った場合に、上記バインダ61aは、集電体(箔)62との密着力も小さいままで、十分な剥離強度を得られず、従来技術と同様に、集電体(箔)62と塗膜63とが剥離してしまう問題を解消することが困難となる。本発明では、図4A〜Cに示す半結晶性高分子バインダと集電体(箔)との結着性を最大限に向上できる作用機序に鑑みなされたものである。即ち、本発明では、電極活物質60と、半結晶性高分子バインダ61aを含むスラリーを集電体62に塗布して形成した塗膜(ウェット状態)63の乾燥条件として定率乾燥部で該バインダ61aの結晶化温度未満の温度で加熱することを要件としたものである。
以下、乾燥工程について詳細に説明する。
(スラリーの調製)
まず、乾燥工程に用いるスラリーを調製する(スラリー調製工程)。このスラリー調製工程では、電極活物質、半結晶性高分子バインダと、を含む固形分成分(スラリー原料=活物質層の構成成分)を溶媒に溶解ないし分散した所望のスラリーを調製する。ここで、前記固形分成分とは、スラリーに含有される溶媒以外の全成分である。またスラリー原料には、電極活物質、半結晶性高分子バインダ以外に、必要により、界面活性剤、導電助剤、電解質、またはイオン伝導性ポリマー等の任意成分を適宜混合させてもよい。すなわち、調製されたスラリーには、電極活物質、溶媒、および半結晶性高分子バインダ、必要に応じて、その他のバインダ、導電助剤など上述の任意成分を含む。
一般に、正極活物質層および負極活物質層を作製する際には、溶媒に活物質層の構成成分を添加・混合したいわゆるスラリー(塗工液)を使用する。前記スラリーの溶媒を水系溶媒にすると、活物質層の構成成分の分散性は容易に担保できる利点がある。一方、前記スラリーの溶媒を非水系溶媒にすると、乾燥工程で該溶媒を、好ましくは100℃以上で、蒸発させることで簡単に除去することができる利点がある。また、非水系溶媒を用いるとバインダ、活物質などを溶媒に溶解・分散しづらい傾向があるが、バインダとして半結晶性高分子バインダを用いることで、当該バインダなどの溶解性・分散性による不均一の問題を解消できる。そのため、半結晶性高分子バインダ、活物質などを非水系溶媒にも安定的に溶解・分散させることができる点で優れている。なお、水系溶媒を用いたスラリーは、負極スラリーに適しており、該水系溶媒を用いた負極スラリーを使用する場合には、上記電極活物質、半結晶性高分子バインダの他に、水系バインダ、増粘剤(CMCなど)などの添加剤が含まれうる。
上記スラリーの調製方法、すなわち電極活物質、半結晶性高分子バインダ、溶媒および任意成分の混合方法や添加順序は特に制限されない。前記混合方法としては、それぞれを溶媒に予め分散/溶解させる;上記バインダを溶解させる前にその他の成分を予め分散/溶解させる;電極活物質及び/又は導電助剤と予め混合しておく;スラリー製造途中段階で添加する;等といった方法が挙げられる。なお溶解/分散にはプラネタリーミキサーを用いるのが望ましいが、一般的な分散用装置を使用してもよいなど特に制限されるものではない。
本実施形態で用いることのできる溶媒としては、特に制限されるものではなく、非水系溶媒としては、有機溶媒が好ましく、少なくとも電極活物質や半結晶性高分子を分散/溶解させることができる溶媒であればよい。具体的には、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、シクロヘキサン、ヘキサンなどが用いられうる。また、水系溶媒としては、特に制限されるものではなく、従来公知の水系溶媒を用いることができるものである。例えば、水(具体的には、純水、超純水、蒸留水、イオン交換水、地下水、井戸水、上水(水道水)等)、水とアルコール(例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなど)との混合液等を用いることができる。但し、本実施形態では、これらに何ら制限されるものではなく、本実施形態の作用効果を損なわない範囲内であれば、従来公知の水系溶媒を適宜選択して利用することができる。
上記スラリーの組成は、スラリーの固形分(溶媒以外の成分=活物質層の構成成分)全量に対して、半結晶性高分子バインダの含有量は、0.1〜10質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%、特に好ましくは3〜8質量%の範囲である。前記電極活物質の含有量は、充分な電池容量を得る点から考慮すると、70〜99.5質量%、好ましくは75〜99質量%、より好ましくは80〜98質量%、特に好ましくは90〜97.5質量%の範囲である。電極活物質の含有量が上記範囲内であれば、バインダの含有量が少なくなることなく、有効にその作用効果を十分に発揮することができる。また電極活物質同士の結着及び、電極活物質と集電体(箔)の結着性が不足することなく、十分な結着強度を発現することができ、電極活物質と集電体(箔)の剥離強度を向上させることができる。前記その他のバインダの含有量(バインダである半結晶性高分子以外の他のバインダも混合する場合)は、0.5〜15質量%、好ましくは1〜10質量%であり、より好ましくは2〜8質量%の範囲である。前記導電助剤の含有量は、好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは3〜7質量%の範囲である。また、溶媒を100質量部としたとき以下の通りである。前記スラリー中の半結晶性高分子バインダの量は、好ましくは1〜10質量部であり、より好ましくは1〜7質量部であり、さらに好ましくは1〜5質量部である。前記スラリー中の電極活物質の量は、好ましくは80〜99質量部、より好ましくは85〜99質量部、さらに好ましくは85〜90質量部である。前記スラリー中のその他のバインダの量(半結晶性高分子バインダ以外の他のバインダも混合する場合)は、好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.1〜2質量部である。前記スラリー中の導電助剤の量は、好ましくは1〜5質量部、より好ましくは3〜5質量部、さらに好ましくは4〜5質量部である。かような組成を備えたスラリーであると目的の電極を製造することができる。ただし、本発明では、上記スラリーの組成の範囲を外れる場合であっても、本発明の作用効果を有効に発現し得る場合には、本発明の技術範囲に含まれるものとする。
また、換言すると、上記スラリーの固形分中の半結晶性高分子バインダの含有量は、0.5〜10質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%、特に好ましくは3〜8質量%の範囲であることが望ましい。上記範囲内とすることで、バインダとしての役割(機能)を十分に発現できる。更に、上記所定量のバインダをその結晶化温度未満の温度で定率乾燥することで、溶媒を適度に蒸発させつつ、上記バインダを集電体(箔)表面の凸凹に食い込ませて結着面積を増大させる効果を十分に発現させることもできる。また、得られる電極に占める上記バンンダの含有量が過度にならず、相対的に活物質量を高めることができる。そのため当該電極を用いた電池等の性能(特に充放電容量など)を高めることもできる。
さらに、上記スラリーの粘度は、25℃で、4000〜10000mPa・secが好ましく、6000〜8000mPa・secがより好ましい。上記スラリーの粘度が上記範囲であると塗布量安定化という観点で好ましい。
(スラリー塗膜形成工程)
次に、乾燥工程に供される塗膜を形成する。詳しくは上記により調製したスラリーを集電体(箔)に塗布して、乾燥工程に供される塗膜(ウェット状態)を形成する(塗膜形成工程)。
上記塗膜形成工程において、上記により調製したスラリーを集電体に塗布して塗膜を形成する方法としては、特に制限されることはない。例えば、スクリーン印刷法、静電スプレーコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、スプレー塗布、フローコーティング法などの公知の方法で、上記スラリーを集電体上に塗布して塗膜を形成することができる。また、得られる電極活物質層が所望の厚さを有するように、スラリーの濃度(粘度)、塗布回数、塗布スピードなどを適宜調整するとよい。
(乾燥工程)
次に、塗膜を所定の乾燥条件で乾燥をする(乾燥工程)。図5は、本発明の電極の製造方法の乾燥工程におけるプロファイルに関する説明図である。図5に示すように、本乾燥工程では、室温からスラリー塗膜表面温度が急激に上昇する昇温部(予熱)、溶媒(例えば、NMP)蒸発速度が定率に推移し、スラリー塗膜表面温度が平衡状態になる定率乾燥部、そして減率乾燥部から構成される。
本実施形態では、乾燥工程において、上記スラリーを集電体に塗布して形成された塗膜(ウェット状態)を、集電体に塗布されたスラリー(塗膜表面)の温度が平衡状態になる定率乾燥部で、半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満で加熱することを特徴とする。上記定率乾燥部で、上記バインダの結晶化温度未満で加熱することにより、上記したような本発明の作用効果を奏することができる(図4A、図4B参照)。ここで、定率乾燥部での乾燥温度条件は、図5に示すように、スラリー塗膜表面温度が、半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満の温度範囲となるように加熱、制御すればよい。即ち、乾燥工程の上記定率乾燥部で、半結晶性高分子バインダの非結晶成分(非晶部)が集電体(箔)付近にも多く残るように、乾燥温度(=塗膜表面温度)を、溶媒蒸発の観点から100℃以上、上記バインダの結晶化温度未満の温度範囲に制御する。このように、100℃以上、半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満の温度範囲で定率乾燥することで溶媒を適度に蒸発させつつ、該バインダを集電体(箔)表面の凸凹に食い込ませて結着面積を増大させることができる(図4B参照)。その結果、半結晶性高分子バインダは、集電体(箔)との密着力を増し、該バインダと集電体(箔)との剥離強度(接着強度)を格段に高め、該バインダと集電体(箔)との剥離の問題を解消し得るものである。なお、スラリー塗膜(ウェット状態)中の溶媒、例えば、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)を素早く除去(蒸発)する観点から、塗膜表面温度は100℃以上が好ましいといえる。なお、定率乾燥部で、(100℃以上)前記バインダの結晶化温度未満の温度範囲で乾燥することで、集電体(箔)上の塗膜(活物質層)全域で前記バインダの非結晶成分(非晶部)を多く残したまま乾燥でき、集電体(箔)付近にも多く残るようにできるものである。
本実施形態では、乾燥工程において、定率乾燥部での乾燥温度条件を上記範囲とするものであり、昇温部(予熱)および減率乾燥部について、本発明の上記作用効果を損なわない範囲内であれば特に制限されるものではなく、任意の乾燥温度条件で行うことができる。好ましくは乾燥温度条件を昇温部(予熱)、定率乾燥部及び減率乾燥部で変化させることなく、これら各部を全て同じ乾燥装置(乾燥炉)内温度となるように加熱してもよい。この場合、かかる所定の乾燥装置(乾燥炉)内温度により、上記定率乾燥部でのスラリー塗膜表面温度が100℃以上、上記バインダの結晶化温度未満となるように乾燥装置(乾燥炉)内温度を設定すればよい。更に量産化(生産効率)の観点からは、より高速乾燥が可能なように、塗膜表面温度が半結晶性高分子バインダの結晶化温度以上融点未満となるように、減率乾燥部の乾燥装置(乾燥炉)内温度を設定(制御)するなどして、加熱(乾燥)を行ってもよい。この場合、昇温部(予熱)も減率乾燥部の乾燥装置(乾燥炉)内温度と同じ乾燥装置(乾燥炉)内温度に設定(制御)するなどして加熱(乾燥)してもよい。
また、上記定率乾燥部での乾燥温度条件は、塗膜表面温度が半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満の温度であればよいが、好ましくは、溶媒蒸発が容易なように、100℃以上、上記バインダの結晶化温度未満の温度範囲で加熱するのがより望ましい。更に好ましくは、高温下で高速乾燥でき、尚且つスラリー塗膜表面温度の管理のし易さから、塗膜表面温度を半結晶性高分子バインダの結晶化温度よりも10℃〜30℃低い温度範囲とするのがより望ましい。即ち、上記バインダの結晶化温度により近い温度で行う方が高速乾燥しやすい反面、スラリー塗膜表面温度が半結晶性高分子バインダの結晶化温度以上とならないように温度管理(制御)するのが難しくなるためである。また、上記バインダの結晶化温度から離れた低温側で行う方が、塗膜表面温度が上記バインダの結晶化温度以上とならないように温度管理するのは容易な反面、乾燥温度(塗膜表面温度)が低い分だけ(溶媒蒸発速度が遅くなる分だけ)高速乾燥し難くなるためである。
本実施形態では、乾燥工程において上記スラリーを集電体(箔)に塗布して形成された塗膜を、上記定率乾燥部で、半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満で加熱した後に、(前記減率乾燥部で)前記バインダの結晶化温度以上、融点未満で加熱することが好ましい。かかる構成とすることにより、図4A、図4Bに示すように、定率乾燥部で半結晶性高分子バインダ61aの結晶化温度より低い温度で乾燥することで、集電体(箔)62付近に残った上記バインダ61aの非結晶成分(非晶部)を多く残したまま乾燥できる。上記バインダ61aの非結晶成分(非晶部)は、分子運動性に優れ、比較的動きやすく柔軟であることから、溶媒蒸発中に徐々に、集電体(箔)62表面の凸凹に食い込み、結着面積を増すことができる。その後、上記バインダ61aの結晶化温度以上、融点未満の温度範囲で加熱をすることで、集電体(箔)62との結着部分の結晶化により、上記バインダ61aが硬化する。このことで、電極活物質層(乾燥塗膜)63と集電体(箔)62にアンカー効果(集電体(箔)62表面の凸凹に食い込んだままバインダ61aが硬化し、アンカーがかかったように固定されること)が生じる。かかるアンカー効果により、電極活物質層(乾燥塗膜)63と集電体(箔)62の間の密着力(接合強度)が増すことで、剥離強度の更なる向上効果を奏することができる(実施例1参照)。但し、本実施形態では、乾燥工程において、上記塗膜を、定率乾燥部で、半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満で加熱すればよく、減率乾燥部では、必ずしも該バインダの結晶化温度以上、融点未満で加熱する必要はない。例えば、塗膜表面温度を、100℃以上、前記バインダの結晶化温度未満の温度範囲で加熱乾燥してもよい(実施例3参照)。
上記定率乾燥部での乾燥温度条件は、上記したと同様に塗膜表面温度が半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満の温度であればよいが、好ましくは、溶媒蒸発が容易なように、100℃以上、該バインダの結晶化温度未満の温度範囲で加熱するのがより望ましい。更に好ましくは、高温下で高速乾燥でき、尚且つスラリー塗膜表面温度の管理のし易さから、塗膜表面温度を半結晶性高分子バインダの結晶化温度よりも10℃〜30℃低い温度範囲とするのがより望ましい。即ち、半結晶性高分子バインダの結晶化温度により近い温度で行う方が高速乾燥しやすい反面、スラリー塗膜表面温度が上記バインダの結晶化温度以上とならないように温度管理(制御)するのが難しくなるためである。また、上記バインダの結晶化温度から離れた低温側で行う方が塗膜表面温度が上記バインダの結晶化温度以上とならないように温度管理するのは容易な反面、乾燥温度(塗膜表面温度)が低い分だけ(溶媒蒸発速度が遅くなる分だけ)高速乾燥し難くなるためである。
その後の上記減率乾燥部(図5参照)での乾燥温度条件は、半結晶性高分子バインダの結晶化温度以上、融点未満の温度範囲であればよい。好ましくは、高温下で高速乾燥でき、尚且つスラリー塗膜表面温度の管理のし易さから、塗膜表面温度を上記バインダの結晶化温度よりも5℃以上高い温度で、尚且つ上記バインダの融点よりも10℃以上低い温度の範囲とするのが望ましい。即ち、半結晶性高分子バインダの融点により近い温度で行う方が高速乾燥しやすい反面、スラリー塗膜表面温度が該バインダの融点以上とならないように温度管理(制御)するのが難しくなるためである。一方、半結晶性高分子バインダの融点から離れた低温側(=バインダの結晶化温度により近い温度)で行う場合、乾燥温度(塗膜表面温度)が低い分だけ(溶媒蒸発速度が遅くなる分だけ)高速乾燥し難くなる。そのため半結晶性高分子バインダの結晶化温度よりも5℃以上高い温度で、該バインダの融点よりも10℃以上低い温度の範囲とするのが、塗膜表面温度が該バインダの結晶化温度未満や融点以上とならないように温度管理するのが容易で高速乾燥にも好適である。
なお、本明細書において、塗膜表面温度は、集電体上に塗工されたスラリー塗膜(電極活物質層)の表面温度である。塗膜表面温度の測定方法は、図7の塗工・乾燥装置81において、集電体84表面へのスラリー塗工装置85によるスラリー塗工直後に、乾燥炉87に入る前に、スラリー塗膜86aないし86bの表面に、熱電対を貼り付ける。熱電対は、乾燥炉長以上の長さのものを使用する。経時で温度データを採取できるように、データ収集装置につなぎ、乾燥炉87内を移動する集電箔84上のスラリー塗膜86aないし86bの表面温度履歴を計測するものである。かかる塗膜表面温度の測定により、図5に示すような乾燥炉内での塗膜表面温度のプロファイルを取得することができる。
(乾燥工程の好適な1態様)
本実施形態の好適な1態様としては、前記スラリーを集電体に塗布し、片面づつ、乾燥をする工程において、まず、片面(以下、A面)の乾燥時の定率乾燥部で、半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満で加熱する。さらに、もう一方の面(以下、B面)の乾燥時の定率乾燥部では、B面とA面に下記式(1):
を満たす温度差をつけて加熱し、その後、B面は、(前記減率乾燥部で)前記バインダの結晶化温度以上、融点未満で加熱することを特徴とするものである。かかる構成とすることで、A面乾燥時に、定率乾燥部で、A面の塗膜表面温度を前記バインダの結晶化温度未満で乾燥することで、図4Bに示すように、集電体(箔)62付近に残った前記バインダ61aの非結晶成分(非晶部)を多く残したまま乾燥できる。A面(塗膜)乾燥後には、B面とA面に上記式(1)の温度差がつくように、B面の定率乾燥部で熱履歴を与えることで、A面塗膜では集電体(箔)62表面の凸凹にバインダ61aが結着し、アンカー効果を伴い、飛躍的に剥離強度を向上させることができる。一方、B面塗膜では、B面の定率乾燥部で、B面の塗膜表面温度を前記バインダの結晶化温度未満で乾燥することで、図4Bに示すように、集電体(箔)62付近に残った前記バインダ61aの非結晶成分(非晶部)を多く残したまま乾燥できる。その後、B面塗膜を(前記減率乾燥部で)前記バインダの結晶化温度以上、融点未満で加熱してA面と同様の熱履歴を与えることで、B面塗膜でも集電体(箔)62表面の凸凹にバインダ61aが結着し、アンカー効果を伴い、飛躍的に剥離強度を向上させることができる。
本態様でも、A面(塗膜)の乾燥時の定率乾燥部での乾燥温度条件は、上記したと同様にA面表面温度(塗膜表面温度)が半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満の温度であればよい。好ましくは、溶媒蒸発が容易なように、A面表面温度(塗膜表面温度)が、100℃以上、該バインダの結晶化温度未満の温度範囲で加熱するのがより望ましい。更に好ましくは、高温下で高速乾燥でき、尚且つA面表面温度(塗膜表面温度)の管理のし易さから、A面表面温度(塗膜表面温度)を半結晶性高分子バインダの結晶化温度よりも10℃〜30℃低い温度範囲とするのがより望ましい。即ち、半結晶性高分子バインダの結晶化温度により近い温度で行う方が高速乾燥しやすい反面、A面表面温度(塗膜表面温度)が上記バインダの結晶化温度以上とならないように温度管理(制御)するのが難しくなるためである。また、上記バインダの結晶化温度から離れた低温側で行う方がA面(塗膜)表面温度が上記バインダの結晶化温度以上とならないように温度管理するのは容易な反面、A面表面温度が低い分だけ(溶媒蒸発速度が遅くなる分だけ)高速乾燥し難くなるためである。
また、本態様では、B面(塗膜)の乾燥時の定率乾燥部での乾燥温度条件は、B面とA面に上記式(1)を満たす温度差をつけて加熱ればよい。即ち、B面表面温度(塗膜表面温度)が半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満の温度であればよいが、好ましくは、溶媒蒸発が容易なように、100℃以上、該バインダの結晶化温度未満の温度範囲で加熱するのがより望ましい。更に好ましくは、高温下で高速乾燥でき、尚且つスラリー塗膜表面温度の管理のし易さから、B面表面温度(塗膜表面温度)を半結晶性高分子バインダの結晶化温度よりも10℃〜30℃低い温度範囲とするのがより望ましい。即ち、半結晶性高分子バインダの結晶化温度により近い温度で行う方が高速乾燥しやすい反面、B面表面温度(塗膜表面温度)が上記バインダの結晶化温度以上とならないように温度管理(制御)するのが難しくなるためである。また上記バインダの結晶化温度から離れた低温側で行う方がB面表面温度が上記バインダの結晶化温度以上とならないように温度管理するのは容易な反面、B面表面温度が低い分だけ(溶媒蒸発速度が遅くなる分だけ)高速乾燥し難くなるためである。
更に、本態様では、B面(塗膜)の定率乾燥と並行してA面(塗膜)の減率乾燥を行うことができるようにB面とA面に温度差をつけて乾燥するものである。即ち、上記B面表面温度を満足した上で、A面表面温度が半結晶性高分子バインダの結晶化温度以上、融点未満の温度範囲となるように温度差をつけて加熱すればよい。好ましくは、高温下で高速乾燥でき、尚且つA面表面温度(塗膜表面温度)の管理のし易さから、A面表面温度(塗膜表面温度)を上記バインダの結晶化温度よりも5℃以上高い温度で、尚且つ上記バインダの融点よりも10℃以上低い温度の範囲とするのが望ましい。即ち、半結晶性高分子バインダの融点により近い温度で行う方が高速乾燥しやすい反面、A面表面温度(塗膜表面温度)が該バインダの融点以上とならないように温度管理(制御)するのが難しくなるためである。一方、半結晶性高分子バインダの融点から離れた低温側(=バインダの結晶化温度により近い温度)で行う場合、A面表面温度(塗膜表面温度)が低い分だけ(溶媒蒸発速度が遅くなる分だけ)高速乾燥し難くなる。そのため半結晶性高分子バインダの結晶化温度よりも5℃以上高い温度で、該バインダの融点よりも10℃以上低い温度の範囲とするのが、A面表面温度(塗膜表面温度)が該バインダの結晶化温度未満や融点以上とならないように温度管理するのが容易で高速乾燥にも好適である。
このようにA面とB面で温度差をつけて加熱する手段としては、例えば、図7、図8に示すような乾燥炉を用い、該炉内を走行する電極の上面側と下面側で異なる温度制御手段(加熱手段)を設ければよい。これにより、該炉内を走行する電極の上面側と下面側に設けた温度制御手段(加熱手段)を別々に温度制御(管理)することで、容易にA面とB面で温度差をつけて加熱することができる(詳しくは、後述する図7、図8の説明参照)。
本態様では、B面の定率乾燥後に、B面は、B面表面温度が(前記減率乾燥部で)半結晶性高分子バインダの結晶化温度以上、融点未満の温度範囲となるように加熱すればよい。好ましくは、高温下で高速乾燥でき、尚且つB面表面温度(塗膜表面温度)の管理のし易さから、B面表面温度(塗膜表面温度)を上記バインダの結晶化温度よりも5℃以上高い温度で、尚且つ上記バインダの融点よりも10℃以上低い温度の範囲とするのが望ましい。即ち、半結晶性高分子バインダの融点により近い温度で行う方が高速乾燥しやすい反面、B面表面温度(塗膜表面温度)が該バインダの融点以上とならないように温度管理(制御)するのが難しくなるためである。一方、半結晶性高分子バインダの融点から離れた低温側(=バインダの結晶化温度により近い温度)で行う場合、B面表面温度(塗膜表面温度)が低い分だけ(溶媒蒸発速度が遅くなる分だけ)高速乾燥し難くなる。そのため半結晶性高分子バインダの結晶化温度よりも5℃以上高い温度で、該バインダの融点よりも10℃以上低い温度の範囲とするのが、B面表面温度(塗膜表面温度)が該バインダの結晶化温度未満や融点以上とならないように温度管理するのが容易で高速乾燥にも好適である。この際、A面は既に減率乾燥も終了し、溶媒が蒸発して、乾燥が完了している。そのため、バインダの位置は、固定化されていて、更なる加熱で、移動しない(図4B参照)。また、B面と同じ温度で加熱(熱負荷)されても、バインダの結晶性に変化は起こらないため、A面とB面とで別々に温度管理することなく、A面とB面を同じ温度で加熱してもよい。また、A面とB面とで別々に温度管理する場合には、製造コストや環境への配慮(CO2排出抑制)から、A面への温度管理に影響せず、A面とB面の温度差による歪(熱応力)が生じない範囲内において、より低温域で加熱するのが望ましい。
(本態様のメカニズムについて)
図6は、半結晶性高分子バインダの結晶構造変化の様子を表す図面である。図6に示すように、半結晶性高分子バインダー(例えば、PVDF)は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの良溶媒で溶解させると、半結晶性高分子(PVDF)のポリマー鎖の結晶性ミクロドメインまでほどけ、非結晶状態(図示せず)になる。この状態でスラリーを集電体に塗布し、乾燥時の定率乾燥部にて、例えば、熱風と赤外線を組み合わせて結晶化温度未満で加熱乾燥することで半結晶性高分子71のポリマーの非結晶成分(非晶部)73を多く残しながら、溶媒除去が可能であることを見出した。結晶化温度未満でも100℃以上で熱風や赤外線(分子振動による加熱方式)で高速乾燥することで溶媒蒸発が可能であることから、バインダの結晶成長が抑制されると考えられる。これにより、非結晶成分を多く残したまま乾燥することができる。このとき、図6に示すように、乾燥工程で、溶媒(NMP)を蒸発させ、その熱履歴によって、結晶化が部分的に進むことで、半結晶性高分子バインダ(PVDF)71は、ポリマーの非結晶成分(非晶部)73と結晶成分(結晶部)75の交じり合った状態となる。乾燥後に、裏面と温度差がつくように、熱負荷させることで、熱移動(高温部から低温部へ)と共に、半結晶性高分子(PVDF)71の非結晶成分(非晶部)73は、集電体(箔)への結着面積を増す(図4A、図4B参照)。乾燥炉から出て、常温放置による冷却作用で、集電体(箔)の収縮と共に、集電体(箔)に挟み込まれた半結晶性高分子(PVDF)71は、アンカー効果を伴い飛躍的な結着力を発現させる。プレス後もこの結着力は、維持される。尚、図6の符号75は半結晶性高分子(PVDF)71の結晶成分(結晶部)を表す。ここで、半結晶性高分子の結晶化温度は、DCSで測定することができる。半結晶性高分子の1種であるPVDFの結晶化温度は130℃である。半結晶性高分子の融点も、DCSで測定することができる。半結晶性高分子の1種であるPVDFの融点は170℃である。
(乾燥工程の好適な他の態様)
本実施形態の好適な他の態様としては、前記スラリーを集電体に塗布し、両面を同時に、乾燥をする工程において、A面B面を同時塗工し、両面同時に、定率乾燥部で、半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満で加熱する。さらにその後、(両面同時に、減率乾燥部で)前記バインダの結晶化温度以上、融点未満で加熱することを特徴とするものである。かかる構成とすることで、上記した本実施形態の好適な1態様での作用効果を奏することができる。加えて本態様では、両面塗工・乾燥で時間を短縮化でき量産効果(生産効率)に優れると共に、剥離強度の向上を図ることができ、得られた電極を用いた電気デバイス(電池やキャパシタ)の性能(容量特性等)を向上させることができる点で優れている。
本形態では、両面(A面塗膜・B面塗膜)の乾燥時の定率乾燥部での乾燥温度条件は、上記したと同様に両面(A面・B面)塗膜表面温度が、いずれも半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満の温度であればよいが、好ましくは、溶媒蒸発が容易なように、100℃以上、該バインダの結晶化温度未満の温度範囲で加熱するのがより望ましい。更に好ましくは、高温下で高速乾燥でき、尚且つ両面(A面・B面)塗膜表面温度の管理のし易さから、両面(A面・B面)の塗膜表面温度を、いずれも半結晶性高分子バインダの結晶化温度よりも10℃〜30℃低い温度範囲とするのがより望ましい。即ち、両面(A面・B面)の塗膜表面温度を半結晶性高分子バインダの結晶化温度により近い温度で行う方が高速乾燥しやすい反面、両面の塗膜表面温度が上記バインダの結晶化温度以上とならないように温度管理(制御)するのが難しくなるためである。また、上記バインダの結晶化温度から離れた低温側で行う方が、両面の塗膜表面温度が上記バインダの結晶化温度以上とならないように温度管理するのは容易な反面、両面の塗膜表面温度が低い分だけ(溶媒蒸発速度が遅くなる分だけ)高速乾燥し難くなるためである。
本形態では、両面同時の定率乾燥後に、両面同時に、減率乾燥部で、両面の塗膜表面温度が半結晶性高分子バインダの結晶化温度以上、融点未満の温度範囲となるように加熱すればよい。好ましくは、高温下で高速乾燥でき、尚且つ両面(A面・B面)の塗膜表面温度の管理のし易さから、両面の塗膜表面温度を上記バインダの結晶化温度よりも5℃以上高い温度で、尚且つ上記バインダの融点よりも10℃以上低い温度の範囲とするのが望ましい。即ち、半結晶性高分子バインダの融点により近い温度で行う方が高速乾燥しやすい反面、両面の塗膜表面温度が該バインダの融点以上とならないように温度管理(制御)するのが難しくなるためである。一方、半結晶性高分子バインダの融点から離れた低温側(=バインダの結晶化温度により近い温度)で行う場合、両面の塗膜表面温度が低い分だけ(溶媒蒸発速度が遅くなる分だけ)高速乾燥し難くなる。そのため前記バインダの結晶化温度よりも5℃以上高い温度で、該バインダの融点よりも10℃以上低い温度の範囲とするのが、両面の塗膜表面温度が該バインダの結晶化温度未満や融点以上とならないように温度管理するのが容易で高速乾燥にも好適である。このように両面(A面、B面)を同時に、同じ乾燥温度条件で加熱する手段としては、例えば、図8に示すような乾燥炉において、該炉内を走行する電極の上面側と下面側で同じ温度制御手段(加熱手段)を設ければよい。これにより、該炉内を走行する電極の上面側と下面側に設けた温度制御手段(加熱手段)を同調させて温度制御(管理)することで、容易にA面とB面で温度差をつけることなく、同じ乾燥温度条件で加熱することができる。
(電極の製造に用いる装置)
図7は、本発明の電極の製造(主に塗膜形成工程及び乾燥工程)に用いる塗工・乾燥装置による説明図である。
図7に示すように、電極の製造(主に塗膜形成工程及び乾燥工程)に用いる塗工・乾燥装置81を2台用いて、始めに、1台目の塗工・乾燥装置81の巻出し部82に箔リール83を取り付け、集電箔84を搬送する。この集電箔84の搬送径路の上方に設けた1台目のスラリー塗工装置85より、搬送されている集電箔84表面にスラリーを塗工(集電箔84のA面にスラリー塗膜86aを形成)し、乾燥炉87を通過させ、巻取り部88に巻き取ることで巻取りリール89を得た。この巻取りリール89を取り外し、隣接する2台目の塗工・乾燥装置81の巻出し部82に取り付け、集電箔84の乾燥塗膜(活物質層)86a'を形成したA面を裏にして、該集電箔84を搬送する。この集電箔84の搬送径路の上方に設けた2台目のスラリー塗工装置85より、搬送されている集電箔84表面にスラリーを塗工(集電箔84のB面にスラリー塗膜86bを形成)し、乾燥炉87を通過させ、巻取り部88に巻き取る。そうすることで、電極90の巻取りリール90aが製造される。なお、集電箔84のB面を上にして2台目の乾燥炉87を通過させることで、集電箔84のB面にも乾燥塗膜(活物質層)86b'が形成されることになる。これにより、集電箔84のA面に乾燥塗膜(活物質層)86a'、B面に乾燥塗膜(活物質層)86b'が形成された電極90を形成することができる。なお、上記で用いるスラリーは、電極活物質と、半結晶性高分子バインダと、を含む固形分成分を溶媒に溶解ないし分散したスラリーであればよい。当該乾燥工程後は、特に制限されるものではなく、既存の電極製造技術(製法)を適宜利用することができる。即ち、乾燥工程で得られた電極90の巻取りリール90aをロールプレス法等によりプレス(プレス工程)をして、所定の幅に切断し(スリット工程)、更に所定の長さに切断(切断工程)することで、所望の電極サイズを有する電極を連続的に量産することができる。
また、図7では2台の塗工・乾燥装置81を用いた例を示したが、1台の塗工・乾燥装置81を用い、2度、塗工・乾燥を繰り返すことで、集電箔84のA面に乾燥塗膜86a'、B面に乾燥塗膜86b'が形成された電極90を得ることもできる。
更に、1台の塗工・乾燥装置81を用い、両面同時に塗工・乾燥を行うことで、集電箔84のA面に乾燥塗膜86a'、B面に乾燥塗膜86b'が同時に形成された電極90を得ることもできる。例えば、図7に示す塗工・乾燥装置81を用いる場合、水平方向に搬送される集電箔84の上方と下方にスラリー塗工装置85を設置し、スラリーの粘度を調整することで、集電箔84の上下両面にスプレー塗布などして塗工してもよい。その後、水平方向に設置された横置きの乾燥炉87内を通過させる。この際、横置きの乾燥炉87内を通過する両面に塗膜が形成された集電箔84を上下両側から同時に加熱することができる加熱手段を用いて同時乾燥させればよい。或いは、図7に示すように水平方向に集電箔84を搬送するのではなく、垂直方向に搬送させてもよい。この場合、垂直方向に搬送する集電箔84の両面(左右両側)にスラリー塗工装置85を設置し、スラリーの粘度を調整することで、集電箔84の左右両面にスプレー塗布などして塗工してもよい。その後、垂直方向に設置された縦置きの乾燥炉87内を通過させる。この際、縦置きの乾燥炉87内を通過する両面に塗膜が形成された集電箔84を左右両側から同時に加熱することができる加熱手段を用いて同時乾燥させてもよい。
なお、乾燥工程で用いる乾燥炉87としては特に制限されるものではなく、搬送する集電箔84が炉内を通過する間に、本発明に規定する乾燥温度条件(図5参照)を満足するように乾燥(加熱)を行うことができるものであればよい。
図8は、本発明の電極の製造方法に用いることのできる乾燥装置の一実施形態である熱風乾燥、赤外線乾燥の併用乾燥装置(乾燥炉)の炉内を模式的に表した断面概略図である。図8に示す熱風乾燥、赤外線乾燥の併用乾燥装置(乾燥炉)91内には、箔リールから引き出された集電体(箔)92とその集電体上に塗工された塗膜93を、図中の矢印(⇒)の方向に搬送することができ、同時に乾燥加熱することのできる空間Pを有している。乾燥炉91内には、加熱手段としては、塗膜(ウェット状態)93が形成された集電体92の上面側と、集電体92の下面側にそれぞれ熱風を供給し得る熱風ノズル94と、集電体(箔)92の上面側に赤外線(IR)を供給し得るヒーター95が設けられている。なお、集電体(箔)92の下面は、図7に示す2台目の乾燥炉87内を通過する集電箔84のように、乾燥塗膜(活物質層;ドライ状態)(図示せず)が形成されている場合もある。あるいは、上記した「乾燥工程の好適な他の態様」のように、両面同時に乾燥する場合には、集電体92の両面にスラリー塗膜(ウェット状態)(図示せず)が形成された集電体となっている場合もある。この場合には、下面側にスラリー塗膜(ウェット状態)が形成されており、乾燥される間に、液だれ等が生じないように、乾燥炉を縦型にし、集電箔が上から下に向けて、或いは下から上に向けて搬送される構造としてもよい。両面同時に乾燥する場合には、炉内の構成として、上下両面ともに、熱風を供給する熱風ノズル94と、赤外線(IR)を供給するヒーター95とを設けた構成とするのが望ましい。
乾燥手段(装置)としては、通常の連続乾燥が可能な、熱風乾燥、赤外線(IR)乾燥を用いた乾燥手段を使用することができるほか、真空乾燥を用いた乾燥手段を使用することもできる。また熱風乾燥とIR乾燥を併用した乾燥手段を使用してもよい。好ましくは、連続乾燥が可能な図8に示す熱風乾燥と赤外線乾燥の併用乾燥装置(乾燥炉)や連続熱風乾燥炉で行うことが好ましい。また、連続乾燥が可能な熱風乾燥と赤外線乾燥の併用乾燥装置や連続熱風乾燥炉を用いてスラリー溶液を塗布した集電体を乾燥すると、短時間で塗膜の温度を上昇させることもできる。その結果、短時間での熱硬化が可能となり乾燥工程の短時間化を行うことができる。具体的には、連続乾燥が可能な熱風や赤外線による加熱乾燥によって、上記に規定したように、定率乾燥部で、塗膜表面温度が、100℃以上、半結晶性高分子バインダの結晶化温度未満となるように、炉内の雰囲気温度を管理(制御)して該塗膜を加熱する。その後、減率乾燥部で、塗膜表面温度が、半結晶性高分子バインダの結晶化温度以上、融点未満の温度範囲となるように、炉内の雰囲気温度を管理(制御)して該塗膜を加熱乾燥することが好ましい。
乾燥工程では、熱風乾燥に赤外線乾燥を併用して乾燥を行うことが好ましい。赤外線の輻射伝熱効果により、連続熱風乾燥に比べて、電極活物質層における半結晶性高分子の高結晶性領域と低結晶性領域との割合を制御しやすくなる。
乾燥時の乾燥雰囲気としては、特に制限されるものではなく、生産コストの観点から、大気雰囲気で行うのが望ましいが、これに制限されるものではない。例えば、N2ガスや不活性ガスによる雰囲気下にして行ってもよい。この場合、N2ガス等を用いて加熱することで伝熱効果を上げることが期待できる。なお、図8に示す併用乾燥炉や連続熱風乾燥炉等の乾燥装置は公知のものを使用でき、図示していない熱風乾燥炉については、例えば、特開平10−160345号公報などのなどが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
また、前記乾燥工程の時間は、図5に示す昇温部と、定率乾燥部と、減率乾燥部を経ることにより、十分に乾燥できていればよく、特に制限されるものではない。大まかな目安としては、5分〜20時間である。
(乾燥塗膜のプレス工程)
次に、上記乾燥工程により、スラリー塗膜を乾燥した後の乾燥塗膜を有する集電体をプレスして、スラリー乾燥塗膜(電極活物質層)が目標密度になるように調整することで、電極原反(正極原反ないし負極原反)を得る(プレス工程)。
プレスの条件としては、特に制限されるものではなく従来公知の製造方法を適用することができる。具体的に、両面に乾燥塗膜(電極活物質層)を有する集電体を連続搬送しながらロールプレスにより、スラリー乾燥塗膜(電極活物質層)が目標密度0.90〜1.10g/cm3の範囲になるように調整するのが望ましい。但し、本発明では上記目標密度の範囲に何ら制限されるものではなく、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性等を考慮して適宜決定すればよい。また、プレス方式は、冷間プレス、熱間プレスのどちらでもよい。
尚、乾燥塗膜(電極活物質層)を有する集電体は、通常、連続搬送しながらロールプレスされた後、巻き取りローラーに巻きとることで、ロール状の電極原反(正極原反ないし負極原反)として得ることができる。なお、巻き取りローラーで巻き取ることなく、上記プレス後、搬送される電極原反(乾燥塗膜を有する集電体)を以下の切断工程に供してもよい。
(電極原反の切断工程)
上記プレス工程で得られた電極原反を、適当な切断手段を用いて所望の形状、大きさ(電極サイズ)にカットする(切断工程)。
上記プレス工程で得られた電極原反を、裁断手段を用いて所望の形状、大きさ(電極サイズ)にカット(切断)する方法としては、特に制限されるものではなく従来公知の製造方法を適用することができる。具体的に、上記で得られた、巻き取りローラーによりロール状に巻き取られた電極原反を、再度、巻出しローラーに取り付けて、電極原反を巻出しなからスリッター等の切断手段を用いて、所望の形状、大きさ、詳しくは目的の電極サイズに合わせて矩形形状にカットすればよい。具体的には、電極原反を、最初に所定の幅に切断し、次に、所定の長さに切断することで、所望の形状、大きさ、詳しくは目的の電極サイズに合わせて矩形形状にカットした電極を得ることができる。なお、切断手段は上記スリッター等に何ら制限されるものではなく、従来公知の切断手段を適宜利用することができる。好ましくは、巻き取りローラーで巻き取ることなく、上記プレス工程後、搬送される電極原反(乾燥塗膜を有する集電体)に対して、スリッター等の切断手段を用いて目的の電極サイズに合わせて矩形形状等にカットするのが工数を削減できる点で望ましい。
(付着水分の除去工程;最終乾燥工程)
次に、上記切断工程で得られた電極を乾燥して、上記乾燥工程から切断工程までに付着した水分を除去する(付着水分の除去工程;最終乾燥工程)。
付着水分の除去(最終乾燥)の条件としては、特に制限されるものではなく従来公知の製造方法を適用することができる。具体的に、乾燥の条件は、上記切断工程で得られた電極サイズなどに応じて決定され、一義的に規定できないが、通常は真空乾燥機を用いて、70℃以上で、7時間以上で乾燥を行う。乾燥雰囲気も特に制限されるものではないが、不活性ガス(窒素ガス)で置換した後、減圧して真空乾燥を行うのが望ましいが、これに制限されるものではない。乾燥手段(装置)は、真空乾燥装置を用いた乾燥手段を使用することができる。また真空乾燥とIR乾燥を併用した乾燥手段を使用してもよい。上記乾燥を経て、所望の目標密度、サイズ、形状を有する電極を得ることができる。
上記で説明したリチウムイオン二次電池は、上記で詳述した電極の製造方法およびその製造方法により得られた電極に特徴を有する。以下、リチウムイオン二次電池のその他の主要な構成部材について説明する。
[電解質層]
電解質層を構成する電解質は、例えば、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。電解質としては、かような機能を発揮できるものであれば特に制限されないが、液体電解質またはポリマー電解質が用いられる。
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有することが好ましい。用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート類が例示される。また、リチウム塩としては、Li(CF3SO22N、Li(C25SO22N、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiCF3SO3等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲルポリマー電解質(ゲル電解質)と、電解液を含まない真性ポリマー電解質とに分類される。
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することで容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーにリチウム塩が溶解してなる構成を有し、有機溶媒を含まない。したがって、電解質として真性ポリマー電解質を用いることで電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上し得る。
ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。これらの電解質は、1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
なお、電解質層にはセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィンやポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素、ガラス繊維などからなる微多孔膜セパレータ、更には不織布セパレータなどが挙げられる。
前記微多孔膜セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。1例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)、その気孔率(空孔率)は20〜80%であることが望ましい。
前記不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。
前記不織布セパレータの気孔率(空孔率)は45〜90%であることが好ましい。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。厚さが5μm未満では電解質の保持性が悪化し、200μmを超える場合には抵抗が増大することになる。
[シール部]
シール部31は、図2に示す双極型電池10bに特有の部材であり、電解質層17の漏れを防止する目的で単電池層19の外周部に配置されている。このほかにも、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こったりするのを防止することもできる。図2に示す形態において、シール部31は、隣接する2つの単電池層19を構成するそれぞれの集電体11で挟持され、電解質層17の基材であるセパレータの外周縁部を貫通するように、単電池層19の外周部に配置されている。シール部31の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、ポリイミドなどが挙げられる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、製膜性、経済性などの観点からは、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、非水電池用の集電板やリチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板25と負極集電板27とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。また、図2に示すように最外層集電体(11a、11b)を延長することにより集電板としてもよいし、別途準備したタブを最外層集電体に接続してもよい。
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知の非水電池や二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
[電池外装材]
電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。なお、上記の非水電池やリチウムイオン二次電池は、従来公知の製造方法により製造することができる。
[非水電池の外観構成]
図9は、本発明の製造方法で得られた電極を適用することのできる電気デバイスの代表的な実施形態である扁平な非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)の外観を表した斜視図である。
図9に示すように、扁平な積層型の非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、な非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図1および図2に示すリチウムイオン二次電池10a、10bの発電要素21に相当するものである。発電要素57は、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
なお、上記な非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型の非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される前記形態により、軽量化が達成されうる。
また、図9に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図9に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
上記な非水電解質二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
また、上記実施形態は、本発明に係る電気デバイスの代表的な実施形態として、扁平な非水電解質二次電池の1種であるリチウムイオン二次電池を例示したが、これに制限されるわけではなく、他のタイプの二次電池、さらには、一次電池にも適用できることはいうまでもない。
上記した本発明に係る電極とその製造方法を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、以下の実施例のみに何ら限定されるわけではない。なお、以下の実施例および比較例のスラリーの固形分(正極活物質層の構成成分)は、活物質として、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、導電助剤としてカーボン(アセチレンブラック)、バインダとして半結晶高分子PVDFを使用した。前記バインダを含まない固形分比率を97質量%とし、スラリーの固形分中のバインダの含有量を3質量%とした。また、スラリーの固形分中の正極活物質の合計含有量が87〜96質量%の範囲、導電助剤の含有量は1〜10質量%の範囲から任意に選択し、以下の実施例及び比較例は、正極活物質、導電助剤及びバインダの混合比率を全て同じにした。また、塗膜表面温度は、集電体上に塗工されたスラリー塗膜(電極活物質層)の表面温度である。塗膜表面温度の測定方法は、図7の塗工・乾燥装置81において、集電体84表面へのスラリー塗工装置85によるスラリー塗工直後に、乾燥炉87に入る前に、スラリー塗膜86aないし86bの表面に、熱電対を貼り付ける。熱電対は、乾燥炉長以上の長さのものを使用する。経時で温度データを採取できるように、データ収集装置につなぎ、乾燥炉87内を移動する集電箔84上のスラリー塗膜86aないし86bの表面温度履歴を計測した。かかる塗膜表面温度の測定により、図5に示す乾燥炉内での塗膜表面温度のプロファイルを取得し、定率乾燥部および減率乾燥部での塗膜表面温度を算出した。
実施例1
正極活物質としてマンガン酸リチウム(LiMn24)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、導電助剤としてカーボン、バインダとして半結晶高分子PVDF(結晶化温度130℃、融点170℃)を所定の割合にて混合した。PVDFを溶解させるため、溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を加えて、プラネタリーミキサーにて、溶解または分解して、スラリーを調製した。集電体として、予め電極サイズにカットされたアルミニウム箔(厚さ20μm)を用い、上記で調製したスラリーを該アルミニウム箔の一方の表面(A面)にスリットダイコーターにて、所定の厚み(プレス後の乾燥膜厚;70μm)となるように均一に塗布した。
始めのA面塗工後の乾燥において、スラリー塗膜を形成した集電体を、熱風と赤外線を併用して用いて乾燥し、図5の定率乾燥部でのA面の塗膜表面温度を、PVDFの結晶化温度(130℃)未満である110℃に保持しながら加熱乾燥した。その後、図5の減率乾燥部でのA面の塗膜表面温度を、PVDFの結晶化温度(130℃)以上、融点(170℃)未満である150℃で加熱した。この間、集電体の裏面(B面)側も同様な温度で加熱した。なお、減率乾燥部の塗膜表面温度は、図5に示すように、定率乾燥部の塗膜表面温度から昇温後、ほぼ安定した温度(炉内雰囲気温度=設定温度)となる。このほぼ安定した温度(炉内雰囲気温度)を減率乾燥部の塗膜表面温度としている(以下、同様とする)。
その後、集電体のもう一方の表面(B面)を上面として、A面と同様に、スラリーを塗工後、定率乾燥部でのB面の塗膜表面温度を、PVDFの結晶化温度(130℃)未満である110℃に保持しながら加熱乾燥した。その後、減率乾燥部でのB面の塗膜表面温度を結晶化温度(130℃)以上、融点(170℃)未満である150℃で加熱した。この間、集電体の裏面(A面)側も同様な温度で加熱した。乾燥後、さらにプレス処理を行って正極(電極サンプル)を得た。
さらに、上記乾燥速度を基準(1倍)としたときに、乾燥速度を2〜3倍に高速化した以外は、上記と同様にして、乾燥速度の異なる正極(電極サンプル)を得た。
ここで、実施例及び比較例のいずれも、乾燥速度=乾燥炉長(m)/乾燥時間(s)で定義される。即ち、乾燥炉には図7に示す乾燥炉長6mを用い、巻き取りスピードを1〜3倍にアップさせて、乾燥時間(上記基準の乾燥時間=2.5分)を1〜1/3に短縮させることで、乾燥速度を1〜3倍に変えたものである。また、実施例及び比較例のいずれも、昇温部では、図5に示すように、塗膜表面温度が、常温から定率乾燥部の温度となるように加熱した。
得られた乾燥速度の異なる正極(電極サンプル)の剥離強度、バインダ偏析量(PVDF中のF元素存在量の分析)を評価した。得られた結果を図10、11に示す。
なお、剥離強度、バインダ偏析量(PVDF中のF元素存在量の分析)の測定方法は以下の通りである。
(剥離強度測定方法)
剥離強度測定は、JIS−K6854−1に準拠し、以下の方法で実施した。
(1)集電体の両面に塗膜(活物質層)が塗工・乾燥された試料(電極サンプル)を用い、外周が横20mm×縦100mmとなるように切り出し、測定試料とする。
(2)一般的な両面テープ(例えばNICHIBAN製の紙両面テープ)を用いて、前記測定試料をベーク板に貼り付ける。
(3)90°剥離強度測定用治具にセットし、強度測定用TENSILE STRENGTH測定装置によって50mm/minの速度で、測定試料の一面側の活物質層(塗膜)を剥離させる。
(4)測定した荷重の平均値(N)を、測定試料の幅(m)で割ったものを各面の剥離強度(N/m)として、比較した。この際、両面に塗工した測定試料について、表面と裏面のそれぞれの剥離強度を平均した値を両面の剥離強度(N/m)とする。
(バインダの偏析量分析方法)
実施例及び比較例に用いたバインダは、フッ素系樹脂(PVDF)であることから元素マッピング分析により、偏析性を分析した。
・測定装置:SEM−EDX(キーエンス VE−9800)
・測定条件:加速電圧:20kV、倍率:1000倍
・測定方法;
集電体に塗膜(活物質層)が塗工・乾燥された試料(電極サンプル)を図12に示す。なお、図12Aでは、集電箔(アルミ箔)97の片面側に塗膜(活物質層)98が塗工・乾燥された試料(電極サンプル)96において、集電箔97から塗膜98を剥がした塗膜側界面(裏)98bと塗膜の表面(表)98aの様子を模式的に表している。図12Bは、集電箔(アルミ箔)97の片面側に塗膜(活物質層)98が塗工・乾燥された試料(電極サンプル)96において、塗膜98の表面(表)98a側にバインダのPVDF99が偏析した様子を模式的に表した断面概略図である。
(1)集電箔97から塗膜(活物質層)98を剥がした塗膜(活物質層)側界面(裏)98bと塗膜(活物質層)の表面(表)98aについて(図12A参照)、SEM−EDXにて、上記測定条件にて、F元素(フッ素元素)の存在量(wt%)を測定する。ここで、SEM−EDXは、走査型電子顕微鏡とそれに付属するエネルギー分散型X線分析装置の略称である。
(2)バインダの表面偏析度は、以下の式により算出した。
実施例2
正極活物質として、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、導電助剤としてカーボン、バインダとして、半結晶高分子PVDF(結晶化温度130℃、融点170℃)を所定の割合にて、混合した。PVDFを融解させるため、溶媒としてNMPを加えてスラリーを調製した。集電体として、予め電極サイズにカットされたアルミニウム箔(厚さ20μm)を用い、上記で調製したスラリーを該アルミニウム箔の一方の表面(A面)にスリットダイコーターにて、所定の厚み(プレス後の乾燥膜厚;70μm)となるように均一に塗布した。
始めのA面塗工後の乾燥において、スラリー塗膜を形成した集電体を、熱風と赤外線を併用して用いて乾燥し、図5の定率乾燥部でのA面の塗膜表面温度を、PVDFの結晶化温度(130℃)未満である110℃に保持しながら乾燥した。この間、集電体の裏面(B面)側も同様な温度で加熱した。次に、B面塗工後の乾燥は、B面とA面に下記式(1):
を満たす温度差をつけて加熱した。詳しくは、B面の定率乾燥部での塗膜(B面)表面温度を、110℃に保持しながら加熱乾燥し、その裏面(A面)の(減率乾燥部での)塗膜(A面)表面温度を140℃で加熱した。その後、B面の減率乾燥部では、B面塗膜表面温度を140℃で加熱し、その裏面(A面)の塗膜(A面)表面温度も140℃で加熱した。乾燥後、プレスは、実施例1と同様の方法で実施し、正極(電極サンプル)を得た。
さらに、上記乾燥速度を基準(1倍)としたときに、乾燥速度を2〜3倍に高速化した以外は、上記と同様にして、乾燥速度の異なる正極(電極サンプル)を得た。
ここで、乾燥速度=乾燥炉長(m)/乾燥時間(s)で定義される。即ち、乾燥炉には図7に示す乾燥炉長6mを用い、巻き取りスピードを1〜3倍にアップさせて、乾燥時間(上記基準の乾燥時間=2.5分)を1〜1/3に短縮させることで、乾燥速度を1〜3倍に変えたものである。
(メカニズムの考察)
実施例1、2では、得られた正極(電極サンプル)の剥離強度、バインダ偏析量(PVDF中のF元素存在量の分析)を評価した結果、実施例1、2共にほぼ同等であり、いずれも剥離強度が高く(優れており)、バインダ偏析量も少ない(優れている)ことが確認できた。こうした結果が得られたメカニズムにつき以下に考察する。
半結晶性高分子バインダのPVDFは、良溶剤のNMPで溶解させると、PVDFポリマー鎖の結晶性ミクロドメインまでほどけ、非結晶状態になる。この状態でスラリーを塗布し、乾燥時の定率乾燥部での塗膜表面温度をPVDFの結晶化温度未満で加熱乾燥することにより、PVDFポリマーの非結晶成分を残しながら、溶媒除去が可能であることを見出した(図4A、図4B、図6参照)。定率乾燥部での塗膜表面温度がPVDFの結晶化温度未満でも熱風や赤外線乾燥により、溶媒(NMP)の効果的な蒸発が可能であることから、バインダの結晶成長が効果的に抑制されると考えられる。これにより、非結晶成分を多く残したまま乾燥することができる。更に、このときの定率乾燥部での塗膜表面温度は、バインダ(PVDF)の結晶化温度(DSC測定値;130℃)よりも低い温度で乾燥することにより、PVDFバインダの非結晶部が多く残る。これは、熱風乾燥でも表面からの入熱による加熱により低温で溶媒蒸発ができるほか、赤外線加熱でも分子振動による加熱方式により溶媒(NMPの)の分子振動により低温で溶媒蒸発ができるためである。PVDFは、結晶化温度以上の熱履歴により、結晶化が促進することから、非結晶状態を多くとどめるには、結晶化温度より低い温度範囲になるように温度制御することにより可能であることを見出した。また、A面は、乾燥後に、裏面と温度差がつくように、熱負荷させることで、A面塗膜(活物質層)から集電体(箔)を介してB面塗膜(活物質層)への熱移動をし、A面側の非結晶PVDFは、比較的分子運動性が束縛されていないことから、集電体(箔)への結着面積を増す。乾燥炉からでて、冷却時の集電体(箔)の収縮と共に、集電体(箔)の表面の凹凸に挟み込まれたPVDFは、アンカー効果を伴い飛躍的な結着力を発現させると考えている(図4A、図4B参照)。
更に、実施例2では、実施例1よりも、電極サンプルを得るまでに乾燥炉を通す回数が少なくてよく、乾燥工程での時間を短縮化でき、生産効率(量産性)に優れ、尚且つ剥離強度の向上を図ることができることがわかった。
比較例1
比較例1は、実施例1と同様のスラリー及び集電体を使用し、実施例1と同様にして、集電体表面(A面)にスラリーを塗工した。その後、乾燥工程では、熱風を用いて乾燥し、図5の定率乾燥部でのA面の塗膜表面温度を、PVDFの結晶化温度(130℃)以上、融点(170℃)未満である140℃に保持しながら乾燥した。その後、減率乾燥部でのA面の塗膜表面温度も、PVDFの結晶化温度(130℃)以上、融点(170℃)未満である140℃で加熱した。この間、集電体の裏面(B面)側も同様な温度で加熱した。
その後、集電体のもう一方の表面(B面)を上面として、A面と同様に、スラリーを塗工後、定率乾燥部でのB面の塗膜表面温度を、PVDFの結晶化温度(130℃)以上、融点(170℃)未満である140℃に保持しながら加熱乾燥した。その後、減率乾燥部でのB面の塗膜表面温度も、結晶化温度(130℃)以上、融点(170℃)未満である140℃で加熱した。この間、集電体の裏面(A面)側も同様な温度で加熱した。乾燥後、プレスは、実施例1と同様の方法で実施し、正極(電極サンプル)を得た。
さらに、上記乾燥速度を基準(1倍)としたときに、乾燥速度を2〜3倍に高速化した以外は、上記と同様にして、乾燥速度の異なる正極(電極サンプル)を得た。
ここで、乾燥速度=乾燥炉長(m)/乾燥時間(s)で定義される。即ち、乾燥炉には図7に示す乾燥炉長6mを用い、巻き取りスピードを1〜3倍にアップさせて、乾燥時間(上記基準の乾燥時間=2.5分)を1〜1/3に短縮させることで、乾燥速度を1〜3倍に変えたものである。
得られた正極(電極サンプル)の剥離強度、バインダ偏析量(PVDF中のF元素存在量の分析)を評価した。得られた結果を図10、11に示す。
図10に示すように、比較例1では、定率乾燥部での塗膜表面温度がPVDFの結晶化温度よりも高いため、PVDFの結晶化が進み、箔への接着面積を広げられないことから、実施例1、3に比して剥離強度が低い結果となった(図4C参照)。また、背景技術で説明の通り、高速乾燥させるため熱風乾燥した場合に、図11に示すように、バインダの表面偏析量も、実施例1、3に比して非常に多い結果となり、剥離強度が低くなった原因の1つであることが確認できた。
実施例3
実施例3は、実施例1と同様のスラリー及び集電体を使用し、実施例1と同様にして、集電体表面(A面)にスラリーを塗工した。その後、乾燥工程では、熱風と赤外線を併用して用いて乾燥し、図5の定率乾燥部でのA面の塗膜表面温度は、PVDFの結晶化温度(130℃)未満である110℃に保持しながら加熱乾燥した。その後、図5の減率乾燥部でのA面の塗膜表面温度も、PVDFの結晶化温度(130℃)未満である120℃で加熱した。この間、集電体の裏面(B面)側も同様な温度で加熱した。
その後、集電体のもう一方の表面(B面)を上面として、A面と同様に、スラリーを塗工後、定率乾燥部でのB面の塗膜表面温度を、PVDFの結晶化温度(130℃)未満である110℃に保持しながら加熱乾燥した。その後、減率乾燥部でのB面の塗膜表面温度も、PVDFの結晶化温度(130℃)未満である120℃で加熱した。この間、集電体の裏面(A面)側も同様な温度で加熱した。乾燥後、プレスは、実施例1と同様の方法で実施し、正極(電極サンプル)を得た。
さらに、上記乾燥速度を基準(1倍)としたときに、乾燥速度を2〜3倍に高速化した以外は、上記と同様にして、乾燥速度の異なる正極(電極サンプル)を得た。
ここで、乾燥速度=乾燥炉長(m)/乾燥時間(s)で定義される。即ち、乾燥炉には図7に示す乾燥炉長6mを用い、巻き取りスピードを1〜3倍にアップさせて、乾燥時間(上記基準の乾燥時間=2.5分)を1〜1/3に短縮させることで、乾燥速度を1〜3倍に変えたものである。
得られた正極(電極サンプル)の剥離強度、バインダ偏析量(PVDF中のF元素存在量の分析)を評価した。得られた結果を図10、11に示す。
その結果、図10に示すように、実施例3では、乾燥速度を1〜3倍に早くしても従来技術(比較例1)よりも剥離強度が向上していることがわかる。これは、定率乾燥部での塗膜表面温度をPVDFの結晶化温度未満である110℃に保持しながら加熱することで、PVDFの表面への偏析が抑制されていることと(図11参照)、PVDFの非結晶成分を集電箔の界面に多く残しているからと考えられる(図4A、4B参照)。非結晶部分を多く残すことで、集電箔への接着面積が高くなっていることから、剥離強度が向上したものと言える。但し、実施例3では、減率乾燥部での塗膜表面温度をPVDFの結晶化温度未満である120℃で加熱している。そのため、減率乾燥部での塗膜表面温度をPVDFの結晶化温度以上、融点未満である150℃で加熱した実施例1に比して、結晶化によるアンカー効果が弱いことで、剥離強度は、実施例1よりも低い結果になった(図10参照)。
(評価結果)
実施例1、3及び比較例1で得られた正極(電極サンプル)の剥離強度、バインダの偏析量(PVDF中のF元素存在量の分析)を評価した結果を図10、11に示す。
図10の比較例1は、従来の熱風乾燥で、定率乾燥部の塗膜表面温度が、バインダ(PVDF)の結晶化温度より高い例であるが、乾燥速度を早くすると剥離強度が著しく、下がる傾向にある。また同サンプルのバインダの表面偏析量は、図11から、乾燥速度を早くするほど、偏析が多い傾向にあることがわかる。
実施例3では、定率乾燥部の塗膜表面温度がバインダの結晶化温度より低いことから、バインダの表面偏析量は、乾燥速度を早くするほど比較例1に比して格段に低く良好な傾向にある(図11参照)。但し、減率乾燥部の塗膜表面温度も結晶化温度より低いことから、結晶化によるアンカー効果が弱いことで、塗膜(活物質層)と集電箔との密着性が実施例1よりも低く、乾燥速度を早くするほど、剥離強度が低くなる傾向にあることがわかる(図10参照)。
実施例1は、インダの表面偏析量が、実施例3とわずかな差であるにも関わらず(図11参照)、バインダの結晶性のコントロールで、集電箔と塗膜(活物質層)の密着性を向上させ、乾燥速度に関わりなく、いずれの乾燥速度でも、実施例2や比較例1に比較して、剥離強度が飛躍的に向上できることがわかる(図10参照)。
10a、10b、50 非水電解質二次電池、
11 正極集電体、
12 負極集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21、57 発電要素、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29、52 電池外装材、
31 シール部、
58 正極タブ、
59 負極タブ、
60 活物質、
61a 半結晶性高分子バインダ、
61b 電極材(活物質、半結晶性高分子バインダを含む)、
62 集電体(箔)、
63 活物質層(塗膜)、
65 電極。

Claims (6)

  1. 電極活物質と、半結晶性高分子バインダと、を含む固形分成分を溶媒に溶解ないし分散したスラリーを集電体に塗布し、乾燥をする工程において、
    前記集電体に塗布されたスラリーの温度が平衡状態になる定率乾燥部で、前記バインダの結晶化温度未満で加熱した後に、
    前記バインダの結晶化温度よりも5℃以上高い温度で、尚且つ上記バインダの融点よりも10℃以上低い温度の範囲で加熱することを特徴とする電気デバイス用電極の製造方法。
  2. 電極活物質と、半結晶性高分子バインダと、を含む固形分成分を溶媒に溶解ないし分散したスラリーを集電体に塗布し、片面づつ、乾燥をする工程において、
    片面(以下、A面)の乾燥時の定率乾燥部で、前記バインダの結晶化温度未満で加熱し、
    もう一方の面(以下、B面)の乾燥時の定率乾燥部では、B面とA面に下記式(1):
    を満たす温度差をつけて加熱し、
    その後、B面は、前記バインダの結晶化温度以上、融点未満で加熱することを特徴とする電気デバイス用電極の製造方法。
  3. 前記スラリーを集電体に塗布し、両面を同時に、乾燥をする工程において、
    A面B面を同時塗工し、両面同時に、定率乾燥部で、前記バインダの結晶化温度未満で加熱し、
    その後、前記バインダの結晶化温度よりも5℃以上高い温度で、尚且つ上記バインダの融点よりも10℃以上低い温度の範囲で加熱することを特徴とする請求項1に記載の電気デバイス用電極の製造方法。
  4. 請求項1、の前記定率乾燥部ないし請求項の前記A面の乾燥時の定率乾燥部で、100℃以上前記バインダの結晶化温度未満の温度範囲で加熱することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電気デバイス用電極の製造方法。
  5. 前記乾燥をする工程は、赤外線乾燥と熱風乾燥とを併用していることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電気デバイス用電極の製造方法。
  6. 前記スラリーの固形分中の半結晶性高分子バインダの含有量が、0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電気デバイス用電極の製造方法。
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