JP6283300B2 - 被研磨物保持材 - Google Patents
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Description
しかし、上記のようなガラス繊維を用いた被研磨物保持材は、切削加工性には優れるが、ガラス粉により、被研磨物の表面にスクラッチが発生するという問題があった。
また、ポリフェニレンスルフィド等を用いた熱可塑性樹脂シートからなる被研磨物保持材も提案されている(特許文献3等参照)。
また、液晶ポリエステル繊維からなる不織布を用いた被研磨物保持材は、切削加工時、切断面に毛羽や膨れが生じてしまい、切削加工性が不十分である。
また、熱可塑性樹脂シートのみからなる被研磨物保持材は、機械的強度が不十分であり、耐久性に劣る。
また、本発明の目的は、被研磨物保持材の表面のスクラッチの発生が殆ど無く、耐久性に優れた被研磨物保持材を提供することにある。
このように、金属元素含有量が少ないことで、被研磨物保持材の表面のスクラッチの発生が殆ど無い。また、本発明の被研磨物保持材は、耐久性にも優れたものである。
ポリフェニレンスルフィド繊維は軟質であることから、外層に配する繊維強化樹脂シートの繊維基材に、ポリフェニレンスルフィド繊維を用いることにより、切削加工性が良好となる。また、被研磨物保持材の厚み精度が良好で、反りが起こらない。
特に、切削加工性に優れた被研磨物保持材となる。更に、被研磨物保持材中の金属元素含有量が少ない。
一方、中間層に、他の繊維基材からなる繊維強化樹脂シートを用いた場合には、被研磨物保持材の機械強度が優れるため、耐久性が向上する。
中でも、全芳香族ポリエステル繊維からなる繊維基材を用いると、被研磨物保持材の機械強度が優れ、金属元素含有量が少ない点で好ましい。
また、ポリフェニレンスルフィド繊維基材からなる繊維強化樹脂シートと他の繊維強化樹脂シートとを交互に積層するなどしてもよい。
繊維基材が40質量%未満では、熱硬化性樹脂が多くなり、機械強度が不十分になる傾向にある。一方、繊維基材が80質量%を超えると、熱硬化性樹脂が少なくなり、成形が難しくなる傾向にある。
繊維基材中、ポリフェニレンスルフィド繊維基材が上記範囲内であれば、切削加工性に優れ、反りが起こらず、厚み精度良く、金属元素含有量が少ない被研磨物保持材とすることができる。
フェニレンスルフィド単位としては、p−フェニレンスルフィド単位やm−フェニレンスルフィド単位などが挙げられる。ポリフェニレンスルフィドは、p−フェニレンスルフィド単位やm−フェニレンスルフィド単位等からなるホモポリマーであってもよいし、これらを有する共重合体であってもよいが、耐熱性、加工性、経済的観点から言ってもp−フェニレンスルフィドの繰り返し単位が最も好ましい。
得られた未延伸糸は、一旦巻き取った後、延撚機で延伸処理を実施する。延伸倍率は2.3倍〜4.0倍が好ましい。
また、上記では未延伸糸を一旦巻き取った後、延伸する方法を記載したが、未延伸糸を一旦巻き取ることなく延伸する直接紡糸延伸法を採用してもよい。
本発明でいう、平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)で測定される数平均分子量である。
また、ポリフェニレンスルフィド繊維基材の厚みは30〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることが好ましい。
30μm未満では、積層枚数が多くなりすぎて、生産性が悪くなる傾向にある。一方、500μmを超えると、厚み精度が悪くなる傾向にある。
全芳香族ポリエステル系ポリマーは、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール及び/又は芳香族ヒドロキシカルボン酸やこれらの誘導体からなるもので、場合により、これらと、脂環族ジカルボン酸、脂環族ジオール、脂肪族ジオールやこれらの誘導体との共重合体も含まれる。ここで芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、2,6−ジカルボキシナフタレン、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)エタン等や、これらのアルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲン基の核置換体が挙げられる。芳香族ジオールとしては、ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン等やこれらのアルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲン基の核置換体が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸、1−ヒドロキシナフタレン−5−カルボン酸等やこれらのアルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲン基の核置換体が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、トランス−1,4−ジカルボキシシクロヘキサン、シス−1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等やこれらのアルキル、アリール、ハロゲン基の核置換体が挙げられる。脂環族及び脂肪族ジオールとしては、トランス−1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、シス−1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、キシリレンジオール等が挙げられる。
本発明において、溶融紡糸に適した芳香族ポリエステルの「流動開始温度」は、305〜325℃が好適である。
また、本発明における芳香族ポリエステル繊維の単糸繊度は10dtex以下が好ましく、5dtex以下がより好ましい。また、フィラメント数の範囲は3〜1000が好ましく、10〜800がより好ましい。
また、伸度は、5.0%以下が好ましく、3.5%以下がより好ましい。
更に、弾性率は、400cN/dtex以上が好ましく、500cN/dtex以上がより好ましい。
上記金属元素が各々20ppmを超えると、被研磨物を汚染し、製品歩留りを低下させる傾向にある。
繊維基材として、ポリフェニレンスルフィド繊維基材を単独で、又は、全芳香族ポリエステル繊維基材との組合せで用いることにより、上記金属元素含有量を少なくすることができる。
具体的には、熱硬化性樹脂を用いる場合、熱硬化性樹脂を溶剤に溶解した樹脂組成物を調製し、それを前記繊維基材に塗布後、バーコーターやクリアランスロールなどを用いて余分な樹脂組成物を掻き取ることにより、繊維強化樹脂シートを調製することができる。
実施例及び比較例で作製した積層板又は被研磨物保持材の特性は、以下の方法により評価した。
積層体を1000mm×1000mmに成形し、周縁部8箇所と中央部1箇所の計9点をマイクロメーターで測定し、最大値と最小値の差で評価した。
積層体を1000mm×1000mmに成形し、水平板上に平置きしたときの端部の浮き上がり量の最大値で評価した。
繊維基材を白金るつぼ中で炭化後、電気炉で灰化させ炭酸ナトリウム(Na2CO3)にてアルカリ融解させたものを超純水で定容し測定試料とした。ICP発光分光分析装置
(AMETEK社製、CIROS CCD)を用い、各金属元素の含有量を測定した。
1000mm×1000mmに成形した積層板を、直径11インチの円盤状に加工すると共にその外周に複数枚の歯を形成し、更に直径3.5インチの保持孔を4個貫通加工して被研磨物保持材を作成した。ついで、この被研磨物保持材の保持孔に、被研磨物として直径3.5インチのアルミニウムハードディスクを嵌め込んだ状態で研磨装置に装着し、研磨装置を稼働させて研磨を行った。研磨を100回繰り返し、計2000枚の被研磨物の研磨を行った。
研磨試験後の被研磨物の表面状態を観察し、スクラッチの発生有無を調べ、不良率を求めた。
研磨試験時の被研磨物保持材の摩耗の程度で評価した。すなわち、使用可能な摩耗程度における使用可能なバッチ数を調べ、下記比較例3における使用可能なバッチ数を100としたときの指数で表した。
被研磨物保持材作成の際、外周の歯部及び保持孔の切削加工時の生産性を相対的に判定し、加工性が良かったものから、◎、〇、△、×と評価した。
1)基材1:ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維織布(PPS繊維(KBセーレン社製、商品名:Gradio、繊度110dtex/24f)、目付95g/m2、厚さ150μmの平織織布)
2)基材2:PPS繊維織布(KBセーレン社製、商品名:Gradio、繊度33dtex/12f、目付35g/m2、厚さ60μmの平織り織布)
3)基材3:全芳香族ポリエステル(LCP)繊維織布(LCP繊維(KBセーレン社製、商品名:Zxion、220dtex/48f)、目付60g/m2、厚さ150μmの平織織布)
4)基材4:全芳香族ポリエステル(LCP)繊維不織布(LCP繊維(KBセーレン社製、商品名:Zxion、2.3dtex×5mm)、目付60g/m2、厚さ300μmの湿式不織布)
5)基材5:アラミド繊維織布(アラミド繊維(東レ・デュポン社製、商品名:Kevler29、220dtex/133f)、目付60g/m2、厚さ150μmの平織織布)
6)基材6:ガラス繊維織布(ガラス繊維(旭シュエ―ベル社製、商品名:A2116/AS450)、目付209g/m2、厚さ180μmの平織織布)
7)樹脂ワニス:硬化剤としてジシアンジアミド、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールを配合したビスフェノールA型エポキシ樹脂ワニス
基材1に、樹脂ワニスを塗布し、含浸後、乾燥により半硬化を行い、プリプレグAを得た。
得られたプリプレグAを8枚積層し、2枚の鏡面板に挟み、昇温速度2.0℃/分、硬化温度175℃×60分、圧力3.0MPaで加熱加圧成形を行い、積層板1を得た。
基材3に、樹脂ワニスを塗布し、含浸後、乾燥により半硬化を行い、プリプレグBを得た。
両外層にプリプレグAを3枚ずつ、中間層にプリプレグBを2枚、計8枚のプリプレグを2枚の鏡面板の間に挟み、昇温速度2.0℃/分、硬化温度175℃×60分、圧力3.0MPaで加熱加圧成形を行い、積層板2を得た。
基材4に、樹脂ワニスを塗布し、含浸後、乾燥により半硬化を行い、プリプレグCを得た。
両外層にプリプレグAを3枚ずつ、中間層にプリプレグCを1枚、計7枚のプリプレグを2枚の鏡面板の間に挟み、昇温速度2.0℃/分、硬化温度175℃×60分、圧力3.0MPaで加熱加圧成形を行い、積層板3を得た。
基材5に、樹脂ワニスを塗布し、含浸後、乾燥により半硬化を行い、プリプレグDを得た。
両外層にプリプレグAを3枚ずつ、中間層にプリプレグDを2枚、計8枚のプリプレグを2枚の鏡面板の間に挟み、昇温速度2.0℃/分、硬化温度175℃×60分、圧力3.0MPaで加熱加圧成形を行い、積層板4を得た。
基材2に、樹脂ワニスを塗布し、含浸後、乾燥により半硬化を行い、プリプレグEを得た。
両外層にプリプレグEを1枚ずつ、中間層にプリプレグBを7枚、計9枚のプリプレグを2枚の鏡面板の間に挟み、昇温速度2.0℃/分、硬化温度175℃×60分、圧力3.0MPaで加熱加圧成形を行い、積層板5を得た。
プリプレグBを8枚積層し、2枚の鏡面板の間に挟み、昇温速度2.0℃/分、硬化温度175℃×60分、圧力3.0MPaで加熱加圧成形を行い、積層板6を得た。
プリプレグCを8枚積層し、2枚の鏡面板の間に挟み、昇温速度2.0℃/分、硬化温度175℃×60分、圧力3.0MPaで加熱加圧成形を行い、積層板7を得た。
前記基材6に前記樹脂ワニスを塗布し、含浸後、乾燥により半硬化を行い、樹脂分が重量比率35%のプリプレグFを得た。
プリプレグFを6枚積層し、2枚の鏡面板の間に挟み、昇温速度2.0℃/分、硬化温度175℃×60分、圧力3.0MPaで加熱加圧成形を行い、積層板8を得た。
Claims (7)
- 繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸してなる繊維強化樹脂シートを複数枚積層してなる被研磨物保持材であって、全ての繊維強化樹脂シートが、ポリフェニレンスルフィド繊維基材を用いた繊維強化樹脂シートであることを特徴とする被研磨物保持材。
- 被研磨物保持材中、繊維基材が40〜80質量%であることを特徴とする請求項1に記載の被研磨物保持材。
- チタン、マグネシウム、アルミニウム又はケイ素の含有量が各々20ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の被研磨物保持材。
- 繊維基材が、織物、不織布又は一方向に引き揃えられた長繊維集合体もしくは短繊維集合体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被研磨物保持材。
- 繊維基材が、総繊度10〜600dtexの平織物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の被研磨物保持材。
- 熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、環状オレフィン系重合体樹脂の中から選択されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被研磨物保持材。
- ポリフェニレンスルフィド繊維基材の厚みが30〜500μmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の被研磨物保持材。
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