JP6283199B2 - 電動機 - Google Patents

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Description

この発明は、例えば、玩具等の低価格商品向けに好適な電動機に係り、特に、構造が簡単で廉価に製作することができ、しかも小型太陽電池でも作動する程度の極めて消費電力が少ない電動機に関する。
本発明者は、先に、商品展示用の電動回転台の動力源として好適な、構造が簡単で廉価に製作することができ、しかも室内照明下の小型太陽電池でも作動する程度の極めて消費電力が少ない電動機を提案している(特許文献1参照)。
この電動機は、同文献の図4及び図9に示されているように、略十字形の板状ロータ(10)と、2個の略円形な扁平空芯コイル(18)と、2個のエミッタ接地型トランジスタを使用したコイル駆動回路とを包含する。
略十字形状の板状ロータ(10)には、永久磁石からなる4個の磁極(13)がその極性をN→S→N→Sの如くに交互に異ならせて等角度間隔(90度間隔)で配置固定されている。
2個の略円形な扁平空芯コイル(18)は、十字形状の板状ロータ(10)が回転するとき、それら4個の磁極(13)とすれ違うようにしてステータ(5)側に180度の角度間隔でロータと対向して配置固定されている。
それら略円形な扁平空芯コイル(18)は、各磁極(13)とすれ違う際の電磁誘導により生ずる誘導起電力パルスによる回転位置検出機能と各磁極(13)との間の電磁的な吸引又は反発による板状ロータ(10)の回転駆動機能とに兼用される。
コイル駆動回路は、電源コンデンサ組み込み型の小型太陽電池(4)により動作し、かつ空芯コイル(18)が負荷素子として組み込まれている。
すなわち、コイル駆動回路は、互いに並置された、いずれも第1導電型(この例では、NPN型)である、左側、右側の駆動用トランジスタと、それら左側、右側の駆動用トランジスタのそれぞれのコレクタ負荷として直列接続されると共に、互いに並置され、かつ互いに巻回方向の異なる、左側、右側の略円形な扁平空芯コイル(18)と、左側、右側の駆動用トランジスタの制御端子電位(ベース電位)をオン閾値電位(ベース・エミッタ間の順方向電位)へと引っ張る左側、右側のプルアップ抵抗と、左側の駆動用トランジスタの制御端子(ベース端子)と右側の駆動用トランジスタの出力端子(コレクタ端子)との間、右側の駆動用トランジスタの制御端子(ベース端子)と左側の駆動用トランジスタの出力端子(コレクタ端子)との間に、それぞれ介在される左側、右側の発振周期設定用のコンデンサとを含んでいる。
そして、板状ロータ(10)の回転開始直後の状態にあっては、左側、右側のプルアップ抵抗の各値と左側、右側のコンデンサの各値とで定まる固有の発振周期に同期して、また定常回転状態にあっては、板状ロータ(10)上の各磁極(13)が扁平空芯コイル(18)とすれ違う周期に同期して、巻回方向の異なる2個の扁平空芯コイル(18)に交互に同一方向の通電を行うことにより、2個の扁平空芯コイル(18)の1つを交互に予め決められた極性(一方はN極、他方はS極)の磁極として機能させることにより、4個の磁極のうちの相隣接する2個の磁極に対してのみ、同時に磁力を作用させるように構成されている。
なお、4個の磁極を構成する永久磁石としては、バリウムフェライト系磁石、ストロンチウムフェライト系磁石、サマリウム系磁石、ネオジム系磁石など様々な磁石を使用することができるが、それらのうちで、最大エネルギー積の大きいサマリウム系磁石、ネオジム系磁石等のレアメタル採用の磁石を使用することが好ましい。
当業者にはよく知られているように、サマリウム系磁石、ネオジム系磁石等のレアメタル採用の磁石は極めて高価であるため、低価格モータの設計にあたっては、磁極数は必要最小限に制限される。具体的には、磁極数が最低の「2」であると、費用的には最も経済的ではあるが、磁極は180度の角度間隔で配置されることとなるため、円滑な回転に支承を来たしたり、板状ロータの停止位置によっては起動困難となりかねない。一方、磁極数が「8」であると、45度の角度間隔で配置されることとなるため、円滑な回転が期待できるが、その反面、磁石の個数が多すぎて、費用的な制限から実用には供し得ない。そのため、ロータの円滑回転と磁石費用との兼ね合いから、磁極数は「4」とするのが普通である。
電機子コイルとしては、通電により磁極との間に充分な磁気的吸引力又は反発力を発生する磁気発生能力と、磁極とのすれ違いに際して充分なレベルの誘導起電力パルスを発生する電磁誘導能力と、電力消費を制限する適度の通電抵抗能力とが求められる。
電機子コイルとして鉄心入りコイルを使用すると、比較的に少ない巻き数としても、充分な磁気発生能力を得ることができるが、巻き数が少ないことから、電磁誘導能力や通電抵抗能力に劣るほか、非通電時にあっては、磁極に鉄心が吸着されてしまい、ロータの起動に支承を来す。
電機子コイルとして空芯コイルを使用すると、磁極への吸い付きの問題は解消するが、鉄心が存在しない分、巻き数を増加させないと、充分な磁気発生能力や電磁誘導能力は得られない。巻き数の大なる電動機用のコイルとしては、円筒状のソレノイド巻き、扇状の型枠巻き等々があるが、いずれも巻き線作業時の巻き線に対するストレスが大きく、歩留まりが悪いこと、成型作業が必要であること等から、比較的に高価である。これに対して、巻き線を比較的に短いボビンの周りに、例えば、複雑なテンション調整なしの例えばガラ巻きにて、巻付けてなる略円形(円に近い楕円を含む)の扁平空芯コイル(単巻きコイル)は、巻き線作業時に巻き線に対するストレスを与えることが少なく、比較的に歩留まりが良好であること、成型作業が不要であることから汎用コイルとして普及していて価格も安く、しかも巻き数さえ増加させれば、目的とする充分な磁気発生能力や電圧誘導能力も得られるため、この種の低価格電動機の電機子コイルとして好ましい。加えて、ロータとして平板状ロータを採用して、扁平空芯コイルを対向配置すれば、回転軸方向の厚みを最小にして、電動機のより小型化乃至薄型化を達成できる利点もある。
特開2005−341647号公報
しかしながら、特許文献1に記載の電動機は、180度間隔で配置された、巻回方向の異なる2個の扁平空芯コイル(18)に交互に同一方向の通電を行うことにより、4個の磁極のうちの相隣接する2個の磁極に対してのみ、同時に磁力を作用させるものであるから、2個の空芯コイルのそれぞれは、自分に割り当てられた2個の磁極にしか電磁力を及ぼすことがなく、他の2個の磁極については、それが間近を通過していても、なんら電磁力を及ぼすことがない。すなわち、4個の磁極のうちで同時に電磁力を受けるのは、常に、2個の磁極に過ぎないため、原理的に見て、回転駆動力が弱いと言う問題がある。
かかる問題の解決策としては、互いに並置される2個の駆動用トランジスタのそれぞれを、互いに並列な一対のトランジスタで構成すると共に、それら一対のトランジスタによって、同一巻回方向の2個の空芯コイルを並列駆動するように構成し、さらに、第1の巻回方向の2個の空芯コイルと第2の巻回方向の2個の空芯コイルのうちで、巻き方向の異なるコイル同士をバイファイラ巻きすることで、2個のバイファイラ巻きコイルを作成し、これら2個のバイファイラ巻きコイルを180度の角度間隔で配置することも考えられる。このような構成によれば、互いに180度の角度間隔離れた2個のバイファイラ巻きの空芯コイルは巻回方向が同じコイル同士で交互に同時に励磁されることとなるため、4個の磁極の全てに対して同時に磁力を作用させることができるので、その分だけ、回転駆動力は強化される。しかし、このような構成では、駆動トランジスタ並びに空芯コイルは2倍の数(4個)が必要となり、またバイファイラ巻きコイルはその構造上の理由から高価であり、大幅なコストアップから、実用に供することはできない。
上述の例において、互いに並置される2個の駆動用トランジスタのそれぞれにより、同一巻回方向の2個の空芯コイルを一括して並列駆動することも考えられるが、その場合にも、空芯コイルが倍の数(4個)必要となる問題は解決されない。
殊に、電動機の小型化及び薄型化を意図して、ロータとして比較的に小型(直径の小さな)の板状ロータを採用すると、空芯コイルとして、略円形(円に近い楕円も含む)な扁平空芯のバイファイラ巻き空芯コイルを採用する場合には、ロータの円周に沿って2個のバイファイラ巻きコイルを180度の角度間隔で配置することに不都合が生ずる。
すなわち、略円形な扁平空芯のバイファイラ巻きコイルにおいて、通電により磁極との間に充分な磁気的吸引力又は反発力を発生する磁気発生能力と、磁極とのすれ違いに際して充分なレベルの誘導起電力パルスを誘起する電磁誘導能力と、電力消費を制限する適度の抵抗能力とを満足させようとすると、空芯コイルの巻き数としては相当に大なるものが要求される。
一方、この種の略円形の扁平空芯コイルの直径は、ボビンが短いことから、コイル電線の巻き数の増加に大きく比例して増大するため、ロータの直径を電動機小型化の要請にしたがって小径なものとすると、扁平空芯コイルの直径は、ロータの直径とほぼ同等又はそれよりもやや大径なものとなり、そのような直径の大なる略円形の2個の扁平空芯コイルを小型ロータの円周に沿って180度の角度間隔で同一平面上に配置しようとすると、扁平空芯コイル同士が周縁部において重なり合ってしまうという不都合が生ずる。
逆に、そのような不都合が生じないためには、ロータの直径を大きくして、2個の扁平空芯コイルの配置スペースを確保することも考えられるが、そうすると、この種の電動機の小型化の要請に反することとなる。
この発明は、上述の技術的背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、永久磁石からなる複数個の磁極がその極性を交互に異ならせて等角度間隔で保持された板状ロータと、前記板状ロータが回転するとき、前記複数の磁極とすれ違うようにしてステータ側に前記磁極の角度間隔に対応させて配置固定され、前記各磁極との間の電磁誘導作用により生ずる誘導起電力パルスによる回転位置検出機能と前記各磁極との間の磁気的な吸引又は反発作用による前記ロータの回転駆動機能とに兼用される略円形の扁平空芯コイルとを備えて、小型化、薄型化、並びに、低価格化を意図する電動機において、電機子となるべき、扁平空芯コイルの個数を増加させることなく、回転駆動力の増大を可能とすること、あるいは、電機子となるべき、扁平空芯コイルの個数を半減しつつも、回転駆動力の維持又は増大を可能とすることにある。
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
上述の技術的課題は、以下の構成を有する本発明に係る電動機により実現されるものと考えられる。
すなわち、本発明に係る電動機は、永久磁石からなる複数個の磁極がその極性を交互に異ならせて等角度間隔で配置された板状ロータと、前記板状ロータが回転するとき、前記複数の磁極とすれ違うようにしてステータ側に前記磁極の角度間隔に対応させて配置固定され、前記各磁極との間の電磁誘導作用により生ずる誘導起電力パルスによる回転位置検出と前記各磁極との間の磁気的な吸引又は反発作用による前記ロータの回転駆動とに兼用される1もしくは2以上の略円形の扁平空芯コイルと、電源投入により、固有の長周期で発振し、周期毎に通電方向を変えて、前記扁平空芯コイルに対して通電を行う自励発振動作と、前記扁平空芯コイルの誘起電圧パルスが所定値を超えると、当該誘起電圧パルスに同期した短周期にて発振し、周期毎に方向を変えて、前記扁平コイルに対して通電を行う他励発振動作とを実行するコイル駆動回路とを包含する。なお、ここで、所定の低周期とは、ロータの回転始動を誘因するに足る低周期であって、回転負荷や電源電圧によっても異なるが、例えば20〜40サイクル程度としてもよい。また、「板状」とは、円筒状のように、回転軸方向に大なる厚みのあるロータを排除する趣旨である。したがって、特許文献1の図4に示すような放射形のロータを排除する趣旨ではない。多少の厚みがあろうと、面方向に均一に広がるものでないとしても、ここで言う「板状」に含まれる。
このような構成によれば、板状ロータ及び略円形の扁平空芯コイルの採用による小型化、薄型化、低価格化を達成することに加えて、コイル駆動回路が、所定の長周期発振動作又は回転に同期した低周期発振周期のいずれで動作する場合にも、1又は2以上の空芯コイルのそれぞれには、それらの発振周期に同期して、相異なる方向の通電が交互に行われるから、起動状態、加速状態、定常状態のいずれの状態にあっても、ロータ上に配列された各磁極に対して1もしくは2以上の空芯コイルから同時に回転駆動力を付与することにより、円滑かつ力強いロータの回転を保証することができる。
前記コイル駆動回路は、互いに並置された、いずれも第1導電型である、左側、右側の駆動用トランジスタと、前記左側、右側の駆動用トランジスタのそれぞれと直列接続されるようにして、互いに並置され、前記左側、右側の駆動用トランジスタのうちの、互いに反対側の駆動用トランジスタと同期してオンオフ制御される、いずれも第2導電型である、左側、右側の従動用トランジスタと、前記左側の駆動用トランジスタの出力側と前記右側の駆動用トランジスタの出力側との間に架け渡された架橋電流路と、前記左側、右側の駆動用トランジスタの負荷素子として前記架橋電流路に介在される前記1もしくは2以上の空芯コイルと、通電開始直後に、前記左側、右側の駆動用トランジスタを交互に所定の長周期でオンオフさせるための始動時補助手段とを含んでいてもよい。なお、ここで「トランジスタ」には、バイボラ型とユニポーラ型(例えば、MOSFET)との双方を含む。
このような構成によれば、電源投入後、しばらくすると、コイル駆動回路は、始動時補助手段の作用により、所定の長周期で発振動作を行うから、前記架橋電流路には、この長周期に同期して、左側の駆動用トランジスタと右側の従動用トランジスタとを経由する第1方向の電流と、右側の駆動用トランジスタと左側の従動用トランジスタとを経由する第2方向の電流とが交互に流れることとなる。すると、各扁平空芯コイルのそれぞれは、自励発振周期(例えば、20〜40サイクル)に同期して、N極とS極とに交互に切り替わるから、ロータ上に配列されたN,Sいずれの極性の磁極に対しても磁力を作用させて、回転駆動力を付与することができる。そのため、この電動機によれば、空芯コイルを2個有するものの、4個の磁極のうちの2個の磁極にしか、同時には、磁力を作用することができなかった従来の電動機(特許文献1)に比べて、より強力な回転駆動力をロータに付与することで、電源投入後、速やかなる回転起動乃至加速を行うことが可能となるる。
一方、ロータの回転数が徐々に上昇して、各磁極とすれ違う際に空芯コイルに誘起される誘導起電力パルスのレベルが増大すると、コイル駆動回路は、始動時補助手段による長周期発振を待つことなく、当該誘導起電力パルスの到来周期に同期した短周期発振動作(例えば、40〜80サイクル)に移行するから、前記架橋電流路には、この短周期発振に同期して、左側の駆動用トランジスタと右側の従動用トランジスタとを経由する第1方向の電流と、右側の駆動用トランジスタと左側の従動用トランジスタとを経由する第2方向の電流とが交互に流れることとなる。すると、先ほどと同様に、各空芯コイルのそれぞれは、発振周期に同期して、N極とS極とに交互に切り替わるから、ロータ上に配列されたN,Sいずれの極性の磁極に対しても同時に磁力を作用させて、回転駆動力を付与することができる。そのため、この電動機によれば、空芯コイルを2個有するものの、4個の磁極のうちの2個の磁極にしか、同時には、磁力を作用することができなかった従来の電動機(特許文献1)に比べて、より強力な回転駆動力をロータに付与することで、ロータの回転を加速することができる。なお、その後、ロータの回転は、回転駆動力とロータの機械的な負荷とがバランスすることで、ほぼ一定速度に導かれることとなる。
このように、本発明に係る電動機によれば、板状ロータ及び略円形の扁平空芯コイルの採用による小型化、薄型化、低価格化を達成することに加えて、コイル駆動回路が、所定の長周期発振動作又は回転に同期した低周期発振周期のいずれで動作する場合にも、1又は2以上の空芯コイルのそれぞれには、それらの発振周期に同期して、相異なる方向の通電が行われるから、起動状態、加速状態、定常状態のいずれの状態にあっても、ロータ上に配列された各磁極に対して1もしくは2以上の空芯コイルから同時に回転駆動力を付与することにより、円滑かつ力強いロータの回転を保証することができる。
上述の発明において、前記複数個の磁極は4個の磁極からなり、かつ前記空芯コイルは180度の角度間隔で配置された、互いに巻方向の同一な2個の略円形の扁平空芯コイルからなる、ものとすれば、特許文献1に記載の電動機と同様な小型化、薄型化、低コスト化を維持しつつも、より強力な回転駆動力を得ることができる。このとき、前記2個の略円形の扁平空芯コイルが、互いに直列接続された状態で前記架橋通電路に介在されるものとすれば、両コイルの電流値を等しくすることで2つの空芯コイルの磁力均等化を図ると共に、両コイルに流れる電流を制限して消費電力の低減化を図り、併せて、2つの空芯コイルで発生する誘導起電力パルスが重畳することで、回転位置検出感度を上げて、自励発振状態から回転同期発振状態への移行を促進し、ロータの回転を高速回転状態へと速やかに導くことができる。そのため、電源コンデンサ組み込み型の小型太陽電池でも充分に作動可能な極めて消費電力の少ない小型、薄型の電動機を提供することができる。
上述の発明において、前記複数個の磁極は4個の磁極からなり、かつ前記扁平空芯コイルは単一の略円形平巻型の空芯コイルからなるものとすれば、1個の空芯コイルであっても、その極性が交互に切り替わることにより、相隣接する4個の磁極のそれぞれに対して磁力を作用させることができる。加えて、このような単一コイル方式によれば、空芯コイルの個数を1個減らすことで、特許文献1記載の電動機よりもさらなる低コスト化を図ることができる一方、空芯コイルの個数が単一であれば、多少、コイルの直径が増加しても、隣接する他の空芯コイルとの干渉の虞はないから、巻き数を増加して磁力を強化することで、空芯コイルが単一であっても、充分なる回転駆動力を得ることもできる。
また、本発明において、前記第1、第2の受電端に供給される直流電源が、電源コンデンサが組み込まれた太陽電池によるものとすれば、電源の存在しない任意の場所に持ち運び可能な電動機を実現することができる。このとき、当該電動機が、電動回転台の動力源として組み込まれるものであれば、電源の存在しない任意の場所に持ち運んで使用可能な太陽電池で動作する各種の回転装置を実現することができる。
本発明において、前記始動時補助手段は、前記左側、右側の駆動用トランジスタの制御端子電位をオン閾値電位へと引っ張る左側、右側のプル抵抗と、前記左側の駆動用トランジスタの制御端子と前記右側の駆動用トランジスタの出力端子との間、前記右側の駆動用トランジスタの制御端子と前記左側の駆動用トランジスタの出力端子との間に、それぞれ介在される左側、右側の自励発振周期設定用のコンデンサとを包含するものであってもよい。このような構成によれば、電源投入後、しばらくすると、コイル駆動回路は、左側、右側のプル抵抗と左側、右側のコンデンサの各値とで定まる長周期で自励発振動作を行うことになる。
このとき、前記左右の駆動用トランジスタのうちのいずれか一方のトランジスタの制御端子と出力端子との間には、前記自励発振周期設定用のコンデンサよりも十分に小さな容量の始動促進用コンデンサが介在されていてもよい。このような構成によれば、電源投入後、コイル駆動回路が安定な自励発振状態に至る期間を短縮化して、モータの始動特性を改善することできる。
本発明において、前記コイル駆動回路が集積回路化され、かつ前記始動時補助手段が独立した自励発振回路であってもよい。ここで、自励発振回路としては、水晶発振回路、CR発振回路等々の比較的に短い周期で発振する低消費電力発振源を採用し、その発振出力を適当な段数の分周回路にて、必要な長周期の発振出力に変換するものが好ましい。こうして、得られた長周期発振信号により、始動時の自励発振動作を誘起するものである。
本発明によれば、板状ロータ及び略円形の扁平空芯コイルの採用による小型化、薄型化、低価格化を達成することに加えて、コイル駆動回路が、初期段階の長周期発振又は回転に追従する短周期発振のいずれで動作する場合にも、1又は2以上の空芯コイルのそれぞれには、それらの発振周期に同期して、相異なる方向の通電が行われるから、起動状態、加速状態、定常状態のいずれの状態にあっても、ロータ上に配列された各磁極に対して1もしくは2以上の空芯コイルから同時に回転駆動力を付与することにより、円滑かつ力強いロータの回転を実現することができる。
本発明に係る電動機が動力源として組み込まれた電動回転台の外観斜視図である。 回転円板及び天板を取り除いた状態における同電動回転台の機枠内部の構成を示す斜視図である。 同電動回転台の機枠内部の構成を示す分解斜視図である。 電動機に組み込まれるロータの詳細を示す分解斜視図である。 天板を取り除いた状態における同電動回転台の機枠内部の構成を示す上面図である。 本発明に係る電動機を構成するロータと空芯コイルとの関係を主として示す要部拡大図である。 本発明に係る電動機を構成するコイル駆動回路の第1実施形態を示す回路図である。 本発明に係る電動機を構成するコイル駆動回路の第2実施形態を示す回路図である。 コイル駆動回路の変形例を示すブロック図である。
以下に、本発明に係る電動機の好適な実施の一形態を添付の図1〜図9を参照しながら詳細に説明する。
本発明に係る電動機が動力源として組み込まれた商品展示用の電動回転台100の外観斜視図が図1に、回転円板及び天板を取り除いた状態における同電動回転台の機枠内部の構成を示す斜視図が図2に、同電動回転台の機枠内部の構成を示す分解斜視図が図3に、電動機に組み込まれるロータの詳細を示す分解斜視図が図4に、天板を取り除いた状態における同電動回転台の機枠内部の構成を示す上面図が図5に、本発明に係る電動機を構成するロータと空芯コイルとの関係を主として示す要部拡大図が図6に、それぞれ示されている。
<<電動回転台の全体構成について>>
図1に示されるように、この電動回転台100は、展示用の商品(例えば、携帯電話機ショップにおける携帯電話機)を載置するために、水平姿勢で回転自在に支持された回転円板1と、この回転円板1の回転駆動のための電動機や減速用の歯車列等が組み込まれた機枠2と、電動機駆動のためのコイル駆動回路を構成する各種回路部品が搭載された小型回路基板(図示せず)とを含んで構成される。なお、電源として太陽電池を採用する場合には、上記の他に、小型(例えば、受光面積が12.0〜20.0平方センチメートル程度)の太陽電池パネルや電源用の電界コンデンサがさらに含まれる。
機枠2は、電動機のステータとして機能するもので、図1に示されるように、四隅に支柱3aを有する底板3と、この底板3の上方に、底板3と平行に支持された天板4とから構成される。図2及び図3に示されるように、天板4と支柱3aとの固定は、天板4の四隅に明けられた透孔4aと支柱3aの上端に設けられたネジ孔3bとを位置合わせしたのち、両者間に、図示しないネジを上下にねじ込むことで行われる。機枠2の材質としては、例えば非磁性体である合成樹脂(例えば、ABS樹脂)が採用される。
<<電動機の機構部分の構成について>>
次に、本発明の要部である電動機の機構部分の構成について、主として、図2、図3、及び図4を参照して説明する。モータの機構部分は、磁極として機能する4個の永久磁石8,9,10,11が保持された板状ロータ7と、電機子として機能する2個の円形の扁平空芯コイル5,6とを包含する。
板状ロータ7は、この例では、図4に示されるように、非磁性体である合成樹脂(例えば、POM樹脂)を用いて、ディスク状(円形の平板状)に、かつ小径の歯車15と一体的に形成されたロータ本体7aと、このロータ本体7aの外周4箇所に形成された円形切り込み孔の内周に沿って下方に延出された略馬蹄形状のホルダ壁7bと、ロータ本体7aの上面に重ねて固定されたリング状金属板7cとを包含する。このリング状金属板7cは慣性部材としての機能と磁気遮蔽板としての機能とを併有する。また、ロータ本体7aの下面側には、ホルダ壁7bに取り囲まれるようにして、4個の永久磁石8,9,10,11がそれぞれ保持される。ロータ7の中心からは、非磁性体であるSUS又は真鍮からなる回転軸12が貫通突出しており、これによりロータ7は回転軸12と一体に回転するように構成されている。この回転軸12は丸棒状であって、鉛直姿勢にて、機枠2を構成する底板3と天板4との間に回転自在に支持されている。より具体的には、回転軸12は、その上下端部を、スラスト軸受けとして機能するメタルピボットを構成するL字状金属片3cと、ラジアル軸受けとして機能し、軸挿入用の丸孔の明けられた軸受けブロック3dを介して支持される。そのため、ロータ7の回転に際する摩擦抵抗は可及的に低減されている。加えて、各回転軸は、スラスト軸受けにて支持されているため、この電動機は、駆動軸を鉛直又は水平のいずれの姿勢としても動作可能とされている。
磁極として機能する4個の永久磁石8,9,10,11は、ロータ7の直径(この例では、20mm)の略1/4程度の直径(この例では、5mm)を有する小径なディスク状乃至釦状(この例では、厚み3mm)に形成されており、その材質としては、バリウムフェライト系磁石、ストロンチウムフェライト系磁石、サマリウム系磁石、ネオジム系磁石を使用することができるが、最大エネルギー積の大きなサマリウム系磁石、ネオジム系磁石を使用することが好ましい。これらの磁石8,9,10,11は、ロータ7の外周(すなわち、回転軌跡である円)に沿って、90度の角度間隔で、ロータ7の下面側に一体的に固定されている。各磁石8,9,10,11のそれぞれは、面と垂直な方向(裏表方向)へと着磁されており、隣接するもの同士で交互に着磁方向を異ならせることにより、例えば磁石8と10の下面がS極、磁石9と11の下面がN極となるように設定されている。
板状ロータ7の下方に相当する、ステータとして機能する底板3上には、2個の巻き方向が同一で円形の扁平空芯コイル5,6が固定される。これらの空芯コイル5,6は、太さ0.06mmのエナメル線を4000回に亘り短い(例えば、4mm程度)ボビンの周りに巻回してなる円形扁平コイルとされ、その直径は、板状ロータ7の直径の7〜8割程度(この例では直径13mm、厚み4mm)に設定されている。これら2つの扁平空芯コイル5,6は、板状ロータ7が回転するときに、4個の磁石8,9,10,11と順にすれ違うようにして、180度の角度間隔を離隔して、板状ロータ7と対向させて配置されている。
以上述べた板状ロータ7上の永久磁石7,9,10,11と扁平空芯コイル5,6との関係が、図5に、まとめて示されている。図から明らかなように、この実施形態による電動機の機構部分は、永久磁石8,9,10,11からなる4個の磁極がその極性を交互に異ならせて90度の角度間隔で配置された平板状のロータ7と、ロータ7が回転するとき、4個の磁極とすれ違うようにして底板4側に磁極の角度間隔の2倍(180度の角度間隔)に対応させて配置され、各磁極との間の電磁誘導作用により生ずる誘導起電力パルスによる回転位置検出機能と各磁極との間の磁気的な吸引又は反発作用によるロータ7の回転駆動機能とに兼用される2個の巻き方向並びに巻き数が同一の円形な扁平空芯コイル5,6とを有している。
なお、それら2個の扁平空芯コイル5,6は、接続基板28を介して直列に接続されたのち、リード線29a,29bにより、図示しない回路基板に搭載されたコイル駆動回路上の外部引出用端子T1,T2へと接続される(図5及び7参照)。
<<電動機に適用される伝達機構の構成について>>
次に、主として、図2、図3、図4、及び図5を参照して、電動機の出力軸である回転軸12から得られる回転動力を回転円板1の回転軸14に伝えるための伝達機構の構成について説明する。
この伝達機構は、順次に噛合する4個の歯車列15,16,17,18からなる減速機構により構成されている。すなわち、電動機の出力軸である回転軸12から得られる回転は、当該回転軸12に一体成形された小径の歯車15と、これと噛合する大径の歯車16とを介して、回転軸13に伝えられる。なお、回転軸13は、軸受けブロック3eを介して回転自在に支持されている。次いで、回転軸13の回転は、当該回転軸13に同軸固定された小径の歯車17と、これと噛合する大径の歯車18とを介して、回転円板1の回転軸14へと伝達される。回転軸14の下端部は、スラスト軸受けとして機能するメタルピボットを構成する金属片3cと、ラジアル軸受けとして機能し、軸挿入用の丸孔の明けられた軸受けブロック3dとを介して支持され、一方、上端部は、ラジアル軸受けとして機能し、軸挿入用の丸孔19aの明けられたボス19を介して回転自在に支持されている。そのため、ロータ14の回転に際する摩擦抵抗は可及的に低減されている。ボス19は、天板4の上面側に突出するものであり、その上端面からさらに突出する回転軸14は、回転円板1の下面から突出するボス20の中心孔へと圧入固定されている。これにより、電動機の出力軸12から得られる回転動力は、以上の歯車列15,16,17,18からなる減速機構を介して、回転軸14へと伝達されて、回転円板1が時計回り又は反時計回りのいずれかの方向へと回転することとなる。
なお、動力伝達用の中間歯車として機能する大径の歯車16、小径の歯車17、及びそれらの回転軸13はいずれも非磁性体である合成樹脂(例えば、POM樹脂)を用いて形成されている。また、回転円板1の回転軸として機能する回転軸14としては、非磁性体である真鍮が採用されており、さらに、回転軸14に取り付けられた大径の歯車18としては、非磁性体である合成樹脂(例えば、POM)が採用れている。
<<電動機の電気回路的構成について>>
次に、本発明に係る電動機の電気回路的な構成について、図7及び図8を参照して説明する。本発明に係る電動機を構成するコイル駆動回路の第1実施形態を示す回路図が図7に、同第2実施形態を示す回路図が図8にそれぞれ示されている。
[コイル駆動回路の第1実施形態について]
図7に示されるように、第1実施形態のコイル駆動回路は、先に説明した空芯コイル5及び6が負荷素子として組み込まれたものであり、第1、第2の受電端T3,T4に供給される直流電源(この例では、太陽電池28と電源用コンデンサ29とで構成される)により動作するように構成されている。
すなわち、このコイル駆動回路は、互いに並置された、いずれも第1導電型(この例では、PNP型)である、左側、右側の駆動用バイポーラトランジスタ21L,21Rと、左側、右側の駆動用バイポーラトランジスタ21L,21Rのそれぞれと直列接続されるようにして、互いに並置され、左側、右側の駆動用トランジスタ21L,21Rのうちの、互いに反対側の駆動用トランジスタの出力でオンオフ制御される、いずれも第2導電型(この例では、NPN型)である、左側、右側の従動用パイポーラトランジスタ22L,22Rと、左側の駆動用バイポーラトランジスタ21Lの出力側(コレクタ端子側)と右側の駆動用バイポーラトランジスタ21Rの出力側(コレクタ端子側)との間に架け渡された架橋電流路23と、左側、右側の駆動用バイポーラトランジスタ21L,21R負荷素子として架橋電流路23に介在される1もしくは2以上(この例では2個)の扁平空芯コイル5,6と、左側、右側の駆動用トランジスタ21L.21Rの制御端子電位(ベース電位)をオン閾値電位(ベース・エミッタ順方向閾値電圧)へと引っ張る(プルダウンする)左側、右側のプルダウン抵抗24L,24Rと、左側の駆動用トランジスタ21Lの制御端子(ベース端子)と右側の駆動用トランジスタ21Rの出力端子(コレクタ端子)との間、右側の駆動用トランジスタ21Rの制御端子(ベース端子)と左側の駆動用トランジスタ21Lの出力端子(コレクタ端子)との間に、それぞれ介在される左側、右側の自励発振周期設定用の電界コンデンサ25L,25Rとを含んで構成されている。なお、左右の従動用パイポーラトランジスタ22L,22Rの制御端子側(ベース端子側)には、それぞれベース電流を制限するための左右のベース抵抗26L,26Rが設けられている。
上述のように、この第1実施形態においては、空芯コイルとしては、互いに巻回方向及び巻き数が同一(つまり、通電により両空芯コイルに同一極性かつ同一強度の磁力を生ずる)2個の円形な扁平空芯コイル5,6が採用されると共に、これらの空芯コイル5,6は、互いに電気的に直列接続された状態で、前記架橋電流路23に介在されている。さらに、これらの空芯コイル5,6は、先に図3及び6を参照して説明したように、180度の角度間隔でステータとして機能する底板3上に配置されている。先に述べたように、このような円形の扁平空芯コイルは、複雑な成型工程も不要で、歩留まりも高く、汎用品として普及しているため、比較的に安価に入手可能である。
加えて、左右の駆動用トランジスタ21L,21Rのうちのいずれか一方(この例では、左側)のトランジスタ21Lの制御端子(ベース端子)と出力端子(コレクタ端子)との間には、自励発振周期設定用の電界コンデンサ25L,25Rよりも十分に小さな容量の始動促進用コンデンサ27が介在されている。
因みに、好適な回路設計例としては、左右のプルダウン抵抗24L,24Rの抵抗値は等しく220KΩ、左右の自励発振周期設定用の電界コンデンサ25L,25Rの静電容量値は等しく6.3V/10μF、2個の空芯コイル5,6の抵抗値は等しく500Ω、左右のベース抵抗26L,26Rの抵抗値は等しく100KΩ、始動促進用コンデンサ27の静電容量値は0.47μFにそれぞれ設定されている。図中T1,T2は、架橋電流路23に空芯コイル5,6を介挿するための外部引出用端子である。
以上の構成によれば、太陽電池28が受光開始(例えば、室内照明光の点灯等)により発電作用を行って、電源用コンデンサ29が充電され、第1、第2の受電端T3,T4の電圧が徐々に所定電圧(例えば、1.5〜3.0ボルト)に達すると、始動促進用コンデンサ27の作用により、左側の駆動用トランジスタ21Lがいち早くオンし、そのコレクタ電流の一部が右側の従動用トランジスタ22Rのベースに供給されて、右側の従動用トランジスタ22Rもオンする。以後、左右の駆動用トランジスタ21L,21Rは、左右のプルダウン抵抗24L,24Rの抵抗値と左右のコンデンサ25L,25Rの静電容量値とで定まる自励発振周期(所定の長周期)をもって、交互にオンオフを繰り返す。この時の自励発振周期(周波数)は、電源電圧の値により異なるが、例えば電源電圧が1.5〜3.0ボルト程度の場合には、20〜40サイクル程度とすることができる。この自励発振周期は、ロータの回転を誘引することを考慮して設定される。
すると、左側の駆動用トランジスタ21L→架橋電流路23→右側の従動用トランジスタ22Rを順に経由する通電路と、右側の駆動用トランジスタ21R→架橋電流路23→左側の従動用トランジスタ22Lを順に経由する通電路とが交互に形成されて、同一巻き数の2つの空芯コイル5,6に対して、同一の電流値をもって、第1方向(図では、左から右)への通電と第2方向(図では右から左)への通電とが交互に行われ、2つの空芯コイル5,6には、所定の自励発振周期に同期して、同一極性(例えば、S極)かつ同一強度の磁極が、極性を交互に切り替えて出現することとなる。
今仮に、図6の状態において、空芯コイル5,6がいずれもS極に励磁されると、S極である永久磁石8,10には反発力が作用する一方、N極である永久磁石9,11には吸引力が作用することにより、ロータ7には図において時計回りの回転駆動力が発生する。これに対して、ロータ7がさらに90度時計回りに回転した状態において、空芯コイル5,6にN極が励磁されると、N極である永久磁石9,11には反発力が作用する一方、S極である永久磁石8,10には吸引力が作用することにより、ロータ7には図において時計回りの回転駆動力が発生することとなる。このような状態が繰り返されることで、ロータ7は例えば時計回りに始動したのち、徐々に速度を増すこととなる。
ロータ7の回転速度が所定値に達すると、永久磁石8,9,10,11が空芯コイル5,6の上を通過するタイミング(すなわち、永久磁石と空芯コイルとがすれ違うタイミング)で、空芯コイル5,6に誘起される逆起電力パルスの大きさが増大し、これが左右の駆動用トランジスタ21L,21Rのうちで、そのときオン状態にあるトランジスタのベース電位を瞬間的に引き上げる(逆バイアスする)ことにより、そのときオンであった駆動用トランジスタは、自励発振周期を待たずして強制的にオフされる。同様の作用が繰り返される結果、以後、左右の駆動用トランジスタ21L,21Rは、ロータ7の半回転毎の周期に同期した他励発振周期で交互にオンオフを繰り返すこととなる。
すると、先の場合と同様にして、左側の駆動用トランジスタ21L→架橋電流路23→右側の従動用トランジスタ22Rを順に経由する通電路と、右側の駆動用トランジスタ21R→架橋電流路23→左側の従動用トランジスタ22Lを順に経由する通電路とが交互に形成されて、同一巻き数の2つの空芯コイル5,6に対して、同一の電流値をもって、第1方向(図では、左から右)への通電と第2方向(図では右から左)への通電とが交互に行われ、2つの空芯コイル5,6には、ロータの半回転に同期した他励発振周期に同期して、同一極性(例えば、S極)かつ同一強度の磁極が、極性を交互に切り替えて出現することとなる。これにより、ロータ7の回転は、ロータ7の機械的負荷と空芯コイルによる回転駆動力とが平衡するまで上昇を続け、両者が平衡した時点でロータ7の速度は一定化される。このときの発振周期は、上述の例で言えば、例えば40〜60サイクル程度とすることができる。
殊に、この第1実施形態においては、架橋電流路23に介在される2個の空芯コイル5,6は互いに電気的に直列接続されるため、2つの空芯コイル5,6で誘起される逆起電力パルスは互いに加算されることとなり、比較的に低速回転のうちから、大きな逆起電力を誘起させることで、自励発振周期による低速回転状態から他励発振周期による高速回転状態への移行を始動後早期に実現し、始動特性を改善することができる。
このように、以上の第1実施形態のコイル駆動回路を備えた電動機によれば、電源投入後、しばらくすると、コイル駆動回路は、左側、右側のプル抵抗24L,24Rと左側、右側のコンデンサ25L,25Rの各値とで定まる固有の周期で自励発振動作を行うから、架橋電流路23には、この自励発振周期(所定の長周期)に同期して、左側の駆動用トランジスタ21Lと右側の従動用トランジスタ22Rとを経由する第1方向の電流と、右側の駆動用トランジスタ21Rと左側の従動用トランジスタ22Lとを経由する第2方向の電流とが交互に流れることとなる。
すると、各空芯コイル5,6のそれぞれは、自励発振周期に同期して、N極とS極とに交互に切り替わるから、ロータ7上に配列されたN,Sいずれの極性の磁極に対しても磁力を作用させて、回転駆動力を付与することができる。そのため、この電動機によれば、各空芯コイル5,6が、同時には、半数の磁極にしか磁力を作用し得なかった従来の電動機(特許文献1)に比べて、より強力な回転駆動力をロータ7に付与することで、電源投入後、速やかなる回転起動乃至加速を行うことができる。
一方、板状ロータ7の回転数が上昇して、各磁極とすれ違う際に空芯コイル5,6に誘起される誘導起電力パルスのレベルが増大すると、コイル駆動回路は、左側、右側のプル抵抗24L,24Rと左側、右側のコンデンサ25L,25Rの各値とで定まる自励発振周期を待つことなく、当該誘導起電力パルスの到来周期に同期した他励発振動作に移行するから、架橋電流路23には、この他励発振周期に同期して、左側の駆動用トランジスタ21Lと右側の従動用トランジスタ22Rとを経由する第1方向の電流と、右側の駆動用トランジスタ21Rと左側の従動用トランジスタ22Rとを経由する第2方向の電流とが交互に流れることとなる。
すると、先ほどと同様に、各空芯コイル5,6のそれぞれは、他励発振周期に同期して、N極とS極とに交互に切り替わるから、ロータ上に配列されたN,Sいずれの極性の磁極に対しても磁力を作用させて、回転駆動力を付与することができる。そのため、この電動機によれば、各空芯コイル5,6が、同時には半数の磁極にしか磁力を作用し得なかった従来の電動機(特許文献1)に比べて、より強力な回転駆動力をロータに付与することで、ロータの回転を加速することができる。その後、ロータの回転は、回転駆動力とロータの機械的な負荷とがバランスすることで、ほぼ一定速度に導かれることとなる。
このように、本発明に係る電動機によれば、平板状ロータ7及び略円形の扁平空芯コイル5,6の採用による小型化、薄型化、低価格化を達成することに加えて、コイル駆動回路が、自励発振周期又は回転に同期した他励発振周期のいずれで動作する場合にも、2個の空芯コイル5,6のそれぞれには、それらの発振周期に同期して、相異なる方向の通電が行われるから、起動状態、加速状態、定常状態のいずれの状態にあっても、ロータ7上に配列された各磁極8,9,10,11に対して2個の空芯コイル5,6から同時に回転駆動力を付与することにより、円滑かつ力強いロータの回転を保証することができる。
殊に、この第1実施形態にあっては、複数個の磁極は4個の磁極(永久磁石8〜11)からなり、かつ扁平空芯コイルは180度の角度間隔で配置された、互いに巻方向かつ巻き数の同一な2個の略円形平巻型の空芯コイル5,6からなる、ものであるから、特許文献1に記載の電動機と同様な小型化、薄型化、低コスト化を維持しつつも、より強力な回転出力を得ることができる。しかも、2個の略円形の扁平空芯コイル5,6が、互いに直列接続された状態で架橋通電路23に介在されるものであるから、両コイルの電流値を等しくすることで2つの空芯コイルの磁力均等化を図ると共に、両コイルに流れる電流を制限して消費電力の低減化を図り、併せて、2つの空芯コイル5,6で発生する誘導起電力パルスが重畳することで、回転位置検出感度を上げて、自励発振状態から他励発振状態への移行を促進し、ロータの回転を高速回転状態へと速やかに導くことができる。そのため、電源コンデンサ組み込み型の小型太陽電池でも充分に動作可能な極めて消費電力の少ない小型、薄型の電動機を実現することができる。
[コイル駆動回路の第2実施形態について]
図8を参照して、コイル駆動回路の第2実施形態について説明する。第2実施形態のコイル駆動回路は、円形の扁平空芯コイルの個数が1個(単一)であることを除き、先に説明した第1の実施形態のそれと同様である。したがって、図7において、図6の第1実施形態と同一構成部分については、同符号を付すことにより、説明は省略する。
すなわち、図8に示されるように、この第2実施形態に係るコイル駆動回路にあっては、架橋電流路23に介在される空芯コイルとしては、1個(単一)の空芯コイル6Aにより構成される。ここで、空芯コイル6Aは、先の第1実施形態における空芯コイル5,6と同様に、太さ0.06mmのエナメル線を4000回、短い(例えば、4mm程度)ボビンの周りに巻回してなる円形の扁平空芯コイルとして構成されている。また、その固定位置は、図5に示す要部拡大図において、例えば、空芯コイル6の位置に配置されている。
このような構成によれば、板状ロータ7及び平巻き型空芯コイル6Aの採用による小型化、薄型化、低価格化を達成することに加えて、1個の空芯コイル6Aであっても、その極性が交互に切り替わることにより、相隣接する4個の磁極8,9,10,11のそれぞれに対して磁力を作用させることができる。加えて、このような単一コイル方式によれば、空芯コイルの個数を1個減らすことで、特許文献1記載の電動機よりもさらなる低コスト化を図ることができると共に、空芯コイルの個数が単一であれば、多少、コイルの直径が増加しても、隣接する他の空芯コイルとの干渉の虞はないから、巻き数を増加して磁力を強化することで、空芯コイルが単一であっても、充分なる回転駆動能力並びに電圧誘起能力を獲得することで、第1実施形態のコイル駆動回路と同様に、起動状態、加速状態、定常状態のいずれの状態にあっても、ロータ7上に配列された各磁極8,9,10,11のうちの相隣接する2個の磁極に対して1個の空芯コイル6Aから同時に回転駆動力を付与することにより、円滑かつ力強いロータの回転を保証することができる。
[コイル駆動回路の第1及び第2実施形態の変形例について]
以上の実施形態においては、始動に必要な長周期の発振動作を実現するために、2つの抵抗24L,24R及び2つのコンデンサ25L,25Rを使用したが、回路の集積回路化を達成するためには、左右の駆動トランジスタ21L,21Rを外部発振回路からのスイッチング制御信号で駆動してもよいであろう。このようなスイッチング制御信号については、例えば、低消費電力のCR発振回路や水晶発振回路と分周回路とを使用して容易に作成することができる。
すなわち、図9(a)に示されるように、第1実施形態の変形例にあっては、コイル駆動回路31は集積回路30として構成される。VDDパッド33とGNDパッド34との間には、太陽電池28により充電されるコンデンサ29の充電電圧が直流電源として供給される。T1パッド35とT2パッド36との間には、2個の空芯コイル5,6が直列接続される。コイル駆動回路31は、電源投入(例えば、太陽電池の照明開始)により、固有の長周期で発振し、周期毎に通電方向を変えて、扁平空芯コイル5,6に対して通電を行う自励発振動作と、扁平空芯コイル5,6の誘起電圧パルスが所定値を超えると、当該誘起電圧パルスに同期した短周期にて発振し、周期毎に方向を変えて、扁平コイル5,6に対して通電を行う他励発振動作とを実行する。
一方、図9(a)に示されるように、第2実施形態の変形例にあっては、コイル駆動回路31は集積回路30として構成される。VDDパッド33とGNDパッド34との間には、太陽電池28により充電されるコンデンサ29の充電電圧が直流電源として供給される。T1パッド35とT2パッド36との間には、1個の空芯コイル6Aが接続される。コイル駆動回路31は、電源投入(例えば、太陽電池の照明開始)により、固有の長周期で発振し、周期毎に通電方向を変えて、扁平空芯コイル6Aに対して通電を行う自励発振動作と、扁平空芯コイル6Aの誘起電圧パルスが所定値を超えると、当該誘起電圧パルスに同期した短周期にて発振し、周期毎に方向を変えて、扁平コイル6Aに対して通電を行う他励発振動作とを実行する。
いずれの変形例にあっても、長周期の自励発振動作は、コイル駆動回路31に組み込まれた独立した自励発振回路(OSC)32により誘引される。この自励発振回路32は、発信源となる低消費電力の発振回路(例えば、CR発振回路、水晶発振回路、等々)と、この発振回路から得られるクロック信号を多段に分周する分周回路列とから構成することができる。そして、自励発振回路32から得られる低周波クロック信号により、図7又は図8に示されるH型ブリッジ回路がスイッチング制御され、これにより、長周期の自励発振動作が実現される。
本発明によれば、板状ロータ及び略円形の扁平空芯コイルの採用による小型化、薄型化、低価格化を達成することに加えて、コイル駆動回路が、始動のためのに長周期又は回転に同期した短周期のいずれで動作する場合にも、1又は2以上の空芯コイルのそれぞれには、それらの発振周期に同期して、相異なる方向の通電が行われるから、起動状態、加速状態、定常状態のいずれの状態にあっても、ロータ上に配列された各磁極に対して1もしくは2以上の空芯コイルから同時に回転駆動力を付与することにより、円滑かつ力強いロータの回転を保証することができる。
1 回転円板
2 機枠
3 底板
3a 支柱
3b ネジ孔
3c 金属片
3d 軸受けブロック
3e 軸受けブロック
4 天板
4a 透孔
5 空芯コイル
6 空芯コイル
6A 単一の空芯コイル
7 板状ロータ
7a ロータ本体
7b ホルダ壁
7c リング状金属板
8 永久磁石
9 永久磁石
10 永久磁石
11 永久磁石
12 ロータの回転軸
13 中間歯車の回転軸
14 回転円板の回転軸
15 小径な歯車
16 大径な歯車
17 小径な歯車
18 大径な歯車
19 ボス
19a 丸孔
20 ボス
21L 左側の駆動用トランジスタ
21R 右側の駆動用トランジスタ
22L 左側の従動用トランジスタ
22R 右側の従動用トランジスタ
23 架橋電流路
24L 左側のプルダウン抵抗
24R 右側のプルダウン抵抗
25L 左側の自励発振周期設定用のコンデンサ
25R 右側の自励発振周期設定用のコンデンサ
26L 左側のベース抵抗
26R 右側のべーす抵抗
27 始動促進用コンデンサ
28 接続基板
29a リード線
29b リード線
30 集積回路
31 コイル駆動回路
32 自励発振回路
33 VDDパッド
34 GNDパッド
35 T1パッド
36 T2パッド
100 電動回転台

Claims (6)

  1. 永久磁石からなる複数個の磁極が、その極性を交互に異ならせて等角度間隔で保持された板状のロータと、
    前記ロータが回転するとき、前記複数の磁極とすれ違うようにしてステータ側に前記磁極の角度間隔に対応させて固定され1もしくは2以上の略円形の扁平空芯コイルと、
    電源投入により、固有の長周期で発振し、周期毎に通電方向を変えて、前記扁平空芯コイルに対して通電を行う自励発振動作と、前記扁平空芯コイルの誘起電圧パルスが所定値を超えると、当該誘起電圧パルスに同期した短周期にて発振し、周期毎に方向を変えて、前記扁平コイルに対して通電を行う他励発振動作とを実行するコイル駆動回路とを包含
    前記コイル駆動回路が、
    互いに並置された、いずれも第1導電型である、左側、右側の駆動用トランジスタと、
    前記左側、右側の駆動用トランジスタのそれぞれと直列接続されるようにして、互いに並置され、前記左側、右側の駆動用トランジスタのうちの、互いに反対側の駆動用トランジスタと同期してオンオフ制御される、いずれも第2導電型である、左側、右側の従動用トランジスタと、
    前記左側の駆動用トランジスタの出力側と前記右側の駆動用トランジスタの出力側との間に架け渡された架橋電流路と、
    前記左側、右側の駆動用トランジスタの負荷素子として前記架橋電流路に介在される前記1もしくは2以上の空芯コイルと、
    通電開始直後に、前記左側、右側の駆動用トランジスタを交互に所定の長周期でオンオフさせるための始動時補助手段とを含み、
    前記始動時補助手段が、
    前記左側、右側の駆動用トランジスタの制御端子電位をオン閾値電位へと引っ張る左側、右側のプル抵抗と、
    前記左側の駆動用トランジスタの制御端子と前記右側の駆動用トランジスタの出力端子との間、前記右側の駆動用トランジスタの制御端子と前記左側の駆動用トランジスタの出力端子との間に、それぞれ介在される左側、右側の自励発振周期設定用のコンデンサとを包含し、
    前記左右の駆動用トランジスタのうちのいずれか一方のトランジスタの制御端子と出力端子との間には、前記自励発振周期設定用のコンデンサよりも十分に小さな容量の始動促進用コンデンサが介在されている、電動機。
  2. 前記複数個の磁極は4個の磁極からなり、かつ前記空芯コイルは180度の角度間隔で配置された、互いに巻方向の同一な2個の略円形の扁平空芯コイルからなる、請求項に記載の電動機。
  3. 前記2個の略円形の扁平空芯コイルは、互いに直列接続された状態で前記架橋通電路に介在される、請求項に記載の電動機。
  4. 前記複数個の磁極は4個の磁極からなり、かつ前記空芯コイルは単一の略円形の扁平空芯コイルからなる、請求項に記載の電動機。
  5. 前記電源が、電源コンデンサが組み込まれた太陽電池である、請求項1〜4のいずれかに記載の電動機。
  6. 太陽電池で動作する各種の回転装置の動力源として組み込まれる、請求項に記載の電動機。
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