JP6280579B2 - 圧力検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、圧力検出装置、特に、入力面に対して垂直方向の応力と共にせん断応力を検出可能な圧力検出装置に関する。
近年、圧力の面内分布が検出できるセンサシートが開発及び製品化されている。例えば、体の下に敷いて体圧分布を測定するものや、圧力を検出できるタッチパッドが知られている。しかし、これらは全て、シート面に作用する法線方向(Z方向)のみの応力の面内分布を検出するものである。
一方、Z方向の応力だけでなくせん断方向(X,Y方向)の応力も検出できるものとして、3分力ロードセルなどがある。しかし、面内分布を検出するためには、3分力ロードセルを大量に敷き詰めて配置する必要があるので、装置の実用化は困難であった。
引用文献1には、複数の矩形の第1電極と複数の第2電極とを誘電体を介して配置することでせん断力を測定可能とした触覚センサが開示されている。
特開2014−115282号公報
引用文献1の触覚センサでは、矩形の第1電極130と第2電極140は、それぞれ上部基板110と下部基板120に敷き詰められるように配置されている。しかし、上部基板110は弾性変形可能であることが条件であるので、そこに多数の第1電極130を形成してさらに制御回路まで配線を延ばすことは、実際には技術的に難しい。
本発明の課題は、圧力検出装置において、入力面に対して垂直方向の応力と共にせん断応力を精度良く検出することにある。
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る圧力検出装置は、支持基板と、支持基板より剛性が低く圧力が作用すると弾性変形する第2絶縁体と、第1絶縁体を有している。圧力検出装置は、複数の第3電極と、複数の第1帯状電極と、複数の第2帯状電極と、静電容量測定回路と、圧力検出回路と、を有している。
支持基板と、第2絶縁体と、第1絶縁体は、圧力が入力される側と反対側から順番に並んで積層されている。
複数の第3電極は、第2絶縁体と支持基板との間に全面的に敷き詰められるように設けられている。
複数の第1帯状電極は、第1絶縁体の第2絶縁体と反対側において第1方向に延びて設けられている。複数の第1帯状電極は、複数の第3電極のうち第1方向と交差する方向に隣接する第3電極同士の間に延びることで、隣接する第3電極のそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている。
複数の第2帯状電極は、第1絶縁体と第2絶縁体との間において第1方向に交差する第2方向に延びて設けられている。複数の第1帯状電極は、複数の第3電極のうち第2方向と交差する方向に隣接する第3電極同士の間に延びることで、隣接する第3電極のそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている。
静電容量測定回路は、第3電極と当該第3電極に平面視で重なっている第1帯状電極との間で発生する静電容量を検出可能である。静電容量測定回路は、第3電極と当該第3電極に平面視で重なっている第2帯状電極との間で発生する静電容量を検出可能である。
圧力算出回路は、圧力が加えられて第2絶縁体が変形するときに、平面視で互いに重なっている第3電極と第1帯状電極との重なり面積及び/又は平面視で互いに重なっている第3電極と第2帯状電極との重なり面積が変化することで静電容量測定回路によって得られた静電容量変化に基づいて、せん断力を算出する。
この装置では、各第1帯状電極は、第2方向に隣接して並んだ複数対の第3電極に対して平面視で重なることで、多数の交点を構成している。また、各第2帯状電極は、第1方向に隣接して並んだ複数対の第3電極に対して平面視で重なることで、多数の交点を構成している。
この装置では、例えば第2方向へのせん断力が第1絶縁体に作用すると、第1帯状電極においてせん断力が作用した部分では、第1帯状電極と隣接する一対の第3電極との各交点(第1帯状電極が対応する一対の第3電極に対して平面視で重なった部分)の面積が変化させられる。これにより、当該第1帯状電極と一方の第3電極との間の静電容量が増加し、当該第1帯状電極と他方の第3電極との間の静電容量が減少する。そして、静電容量測定回路が当該部分の静電容量変化を検出して、さらに圧力算出回路が当該静電容量変化に基づいてせん断力を算出する。
圧力検出装置は、複数のスイッチング素子と、複数の読み出し線と、複数の制御線と、スイッチング制御部と、をさらに備えている。
複数のスイッチング素子は、複数の第3電極に一対一で接続されている。
各読み出し線は、複数のスイッチング素子のうち第1方向又は第2方向に並んだ複数のスイッチング素子に接続されている。各読み出し線は、当該複数のスイッチング素子の並び方向に延びて、静電容量測定回路に接続されている。
複数の制御線は、並び方向と交差する方向に延びており、当該方向に並んだ複数のスイッチング素子に接続されている。
スイッチング制御部は、複数の制御線によって、複数のスイッチング素子のON/OFF制御を行う。
この装置では、スイッチング制御部が1本の制御線によって複数のスイッチング素子をONにした状態において、静電容量測定回路が複数の読み出し線を順番に検出することで、第1帯状電極又は第2帯状電極と第3電極との交点の静電容量変化を検出する。
この装置では、読み出し線が複数のスイッチング素子を介して複数の第3電極に接続されているので、読み出し線の数を減らすことができる。この結果、多くの第3電極が配置された構造において、読み出し線を問題なく配置できる。
第2絶縁体の弾性率は、0.001〜10MPaであってもよい。この装置では、第2絶縁体が十分に柔らかいので、圧力が作用すると、第1帯状電極及び第2帯状電極が、第3電極に対して近づく方向及び平面方向に容易に変位できる。
第1絶縁体は第2絶縁体より薄くてもよい。この装置では、第1帯状電極と第2帯状電極との距離が短く設定されているので、第1帯状電極及び第2帯状電極が第3電極に対して変位するときに、第1帯状電極が第3電極に対して変位する量と第2帯状電極が第3電極に対して変位する量とに大きな差が生じない。この結果、静電容量の測定精度が高く維持される。
本発明に係る圧力検出装置では、入力面に対して垂直方向の力と共にせん断力を精度良く検出できる。
タッチパッド装置のブロック構成図。 第1電極パターンの平面図。 第2電極パターンの平面図。 第3電極パターンの平面図。 電極パターンの重なり状態を示す平面図。 せん断力が作用したときの電極パターンの重なり状態の変化を示す平面図。 せん断力が作用したときの電極パターンの重なり状態の変化を示す平面図。 相互容量、せん断応力、法線方向の応力の関係を示すための模式的断面図。 相互容量、せん断応力、法線方向の応力の関係を示すための模式的断面図。 相互容量、せん断応力、法線方向の応力の関係を示すための模式的断面図。 相互容量、せん断応力、法線方向の応力の関係を示すための模式的断面図。 第3電極パターンのアクティブマトリックスを示す模式図。 圧力測定の制御フローチャート。 第1電極パターンと第3電極パターンとの間の静電容量測定制御のフローチャート。 第2電極パターンと第3電極パターンとの間の静電容量測定制御のフローチャート。
1.第1実施形態
(1)タッチパッド装置の全体構造
図1を用いて、タッチパッド装置1(圧力検出装置の一例)の全体構成を説明する。図1は、タッチパッド装置のブロック構成図である。
タッチパッド装置1は、センサ部3(タッチパッド)と、制御回路5とを有している。
センサ部3は、圧力が作用した位置を検出する機能と、圧力を検出する機能とを有している。
制御回路5は、センサ部3を制御すると共に,センサ部3からの検出信号に基づいて各種測定を行う。
なお、タッチパッド装置1は、PC7を有している。PC7は、例えば、パーソナルコンピュータである。PC7によって、制御回路5に各種データ及び指示を入力することができ、さらに制御回路5からの情報をモニター画面に表示できる。例えば、後述する測定結果である相互容量のデータはPC7のモニターに表示される。
(2)センサ部の構造
センサ部3は、支持基板11と、第2絶縁体13と、第1絶縁体15とを有しており、これらは圧力が入力される側と反対側から順番に並んで積層されている。具体的には、第2絶縁体13は、支持基板11の上面に設けられている。第1絶縁体15は、第2絶縁体13の上面に設けられている。
支持基板11は、例えば、ガラスエポキシ基板であり、厚みは1.6mmである。なお、支持基板11の材料は特に限定されない。
第2絶縁体13は、力が作用すると弾性変形可能な部材である。第2絶縁体13の弾性率は、0.001〜10MPaの範囲にあることが好ましく、0.001〜0.01MPaの範囲にあることがさらに好ましい。第2絶縁体13は、例えば、ポリウレタンゲルシートあり、厚みは1mmである。ポリウレタンゲルシートは、硬度0であり、軽い荷重でも十分変形するものが好ましい。さらに、ポリウレタンゲルシートは、粘着性があるので、別に粘着剤などを用意することなく、支持基板11と第1絶縁体15を接着できる。なお、第2絶縁体13の材料は特に限定されない。
第2絶縁体13の厚みは、10μm〜10000μmの範囲にあることが好ましく、100μm〜2000μmの範囲にあることがさらに好ましい。
第1絶縁体15は、第1電極パターンTyと第2電極パターンTxとを互いに絶縁しつつかつ積層方向に所定の距離に配置するための層である。
第1絶縁体15は、例えば、ウレタンフィルムであり、厚みは0.07mmである。
第1絶縁体15の弾性率は、1MPa〜4000MPaの範囲にあることが好ましく、1MPa〜10MPaの範囲にあることがさらに好ましい。
なお、第1絶縁体15の材料は特に限定されない。
第1絶縁体15の厚みは、1μm〜1000μmの範囲にあることが好ましく、10μm〜100μmの範囲にあることがさらに好ましい。
第1電極パターンTy及び第2電極パターンTxは、それぞれ複数の短冊状又は帯状の第2電極Tx及び第1電極Tyからなる。
第1電極パターンTyは、第1絶縁体15の上面に、すなわち第1絶縁体15の第2絶縁体13と反対側に設けられる。第1電極パターンTyは、図2に示すように、図のY方向に並んでおり、X方向(第1方向の一例)に延びている。第1電極パターンTyは、X方向に延びる複数の第1電極Ty(1)、Ty(2)、Ty(3)、、、、Ty(l−2)、Ty(l−1)、Ty(l)を有している。図2は、第1電極パターンの平面図である。
第2電極パターンTxは、第1絶縁体15の下面に、すなわち第1絶縁体15と第2絶縁体13との間に設けられる。第2電極パターンTxは、図3に示すように、図のX方向に並んでおり、Y方向(第2方向の一例)に延びている。第2電極パターンTxは、Y方向に延びる複数の第2電極Tx(1)、Tx(2)、Tx(3)、、、、Tx(m−2)、Tx(m−1)、Tx(m)を有している。図3は、第2電極パターンの平面図である。
上記の構成により、第2電極パターンTxは、第1電極パターンTyとの間で絶縁性を保ち且つ第1電極パターンTyと交差(この実施形態では、直交)して配置される。第1電極パターンTy及び第2電極パターンTxは、引き出し配線によって接続端子(図示せず)に至るまで引き出される。
第3電極パターンRx(第2絶縁体と支持基板との間に全面的に敷き詰められるように設けられた複数の電極の一例)は、第2絶縁体13と支持基板11との間に設けられる。第3電極パターンRxは、図4に示すように、全体に敷き詰められて配置された多数の島状の第3電極Rxからなる。図4は、第3電極パターンの平面図である。
第3電極パターンRxは、第3電極Rx(1,1)〜Rx(n,o)のマトリックスを構成している。この実施形態では、個々の第3電極Rxの形状は正方形である。後述するように、隣り合う第3電極Rxの隙間を覆うように、第1電極Ty及び第2電極Txが配置されている。つまり、第1電極Ty及び第2電極Txの幅は、第3電極Rx同士の隙間より大きい。第3電極Rxの形状は、その他の形状であってもよい。
第1電極パターンTy、第2電極パターンTx及び第3電極パターンRxの材料としては、数mΩから数百Ωの表面抵抗値(導電性)を示すことが好ましく、例えば、酸化インジウム、酸化錫、インジウム錫酸化物(ITO)、錫アンチモン酸等の金属酸化物や、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ロジウム等の金属などで成膜することができる。これらの材料からなる第1電極パターンTy及び第2電極パターンTxの形成方法としては、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法、あるいはCVD法、塗工法等で透明導電膜を形成した後にエッチングによりパターニングする方法や、印刷法等がある。
上記の構造では、第2電極パターンTxと第3電極パターンRxの間には、入力面からの応力に応じて変形可能な弾性体としての第2絶縁体13が介在している。よって、入力面からの応力によって、第2電極パターンTx及び第1電極パターンTyが第3電極パターンRxに対して変位できる。
なお、第2電極Tx、第1電極Ty、第1絶縁体15も、ある程度の柔らかが必要である。PETフィルムなど剛性が高いものが積層されていると、その剛性によって第2絶縁体13の弾性変形を妨げてしまうためである。
センサ部3は、保護層17を有している。保護層17の上面が、指がタッチする入力面になっている。保護層17は、前述した電極パターンを保護するための層であり、指と電極パターンが導通するのを防止したり、電極パターンの損傷を防止したりする機能を有している。保護層17は、例えば、ウレタンフィルムであり、厚みは0.05mmである。なお、保護層17は任意の部材であり、省略可能である。
保護層17の下面には、第4電極パターンTaが設けられている。第4電極パターンTaは、第1電極パターンTyと、第2電極パターンTxと、第3電極パターンRxを全て覆うようなベタパターンである。第4電極パターンTaも任意の部材である。また、第4電極パターンTaは、第3電極パターンRxを覆うことができればよいので、第1電極パターンTyと同一平面上で第1電極パターンTyの間に形成されていてもよい。
保護層17と第1絶縁体15は、絶縁層としてのPSA19によって互いに固定されている。
第1絶縁体15は第2絶縁体13より薄い。第1絶縁体15の厚みは第2絶縁体13の厚みの20%以下の範囲にあることが好ましく、10%以下の範囲にあることがさらに好ましい。例えば、第2絶縁体13の厚みが1mmである場合に、第1絶縁体15の厚みが0.07mmである。この装置では、第2絶縁体13が薄く設定されることで、第1電極パターンTyと第2電極パターンTxとの距離が短く設定されている。したがって、第1電極パターンTy及び第2電極パターンTxが第3電極Rxに対して変位するときに、第1電極パターンTyが第3電極Rxに対して変位する量と第2電極パターンTxが第3電極Rxに対して変位する量とに大きな差が生じない。
(3)せん断応力の検出原理
図5〜図7を用いて、入力面をせん断方向に応力が受けた場合の電極位置の変化と、その検出原理の説明を定性的に説明する。図5は、電極パターンの重なり状態を示す平面図である。図6及び図7は、せん断力が作用したときの電極パターンの重なり状態の変化を示す平面図である。
複数の第1電極Tyは、複数の第3電極RxのうちY方向に隣接する第3電極Rx同士の間に延びることで、隣接する第3電極Rxのそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている。
複数の第2電極Txは、複数の第3電極RxのうちX方向に隣接する第3電極Rx同士の間に延びることで、隣接する第3電極Rxのそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている。
以上に述べたように、各第1電極Tyは、Y方向に隣接して並んだ複数対の第3電極Rxに対して平面視で重なることで、多数の交点を構成している。また、各第2電極Txは、X方向に隣接して並んだ複数対の第3電極Rxに対して平面視で重なることで、多数の交点を構成している。
図5を用いて、第3電極パターンRxのうち第3電極Rx(a−1,b+1)〜第3電極Rx(a+1,b−1)(a,bは任意の自然数)と、それらと重なりを持つ第2電極Tx(d)、第2電極Tx(d+1)、第1電極Ty(c)、第1電極Ty(c+1)について考える。図5は、応力が無い状態の第1電極Ty、第2電極Tx、第3電極Rxの重なりを示している。各第2電極Tx及び第1電極Tyは、第3電極Rxと重なりを有し、その面積にほぼ比例した相互容量を有する。
以後、ハッチングが施された4つの重なりA〜Dについて検討する。
重なりA:Rx(a−1,b)/Tx(d)間
重なりB:Rx(a,b)/Tx(d)間
重なりC:Rx(a,b+1)/Ty(c)間
重なりD:Rx(a,b)/Ty(c)間
さらに、重なりA〜Dにおける相互容量は、下記のような符号表現で表すことにする。
重なりAの相互容量:C[Rx(a−1,b)/Tx(d)]
重なりBの相互容量:C[Rx(a,b)/Tx(d)]
重なりCの相互容量:C[Rx(a,b+1)/Ty(c)]
重なりDの相互容量:C[Rx(a,b)/Ty(c)]
図6に示すように、入力面に+X方向の応力を受けた場合、第2電極Tx及び第1電極Tyは第3電極Rxに対して+X方向に移動し、それに応じて重なり面積が変化する。具体的には、重なりBの相互容量C[Rx(a,b)/Tx(d)]は増大し、重なりAの相互容量C[Rx(a−1,b)/Tx(d)]は減少する。一方、重なりCの相互容量C[Rx(a,b+1)/Ty(c)]と重なりDの相互容量C[Rx(a,b)/Ty(c)]は変化しない。
図7に示すように、入力面に+Y方向の応力を受けた場合は、第2電極Tx及び第1電極Tyは第3電極Rxに対して+Y方向に移動し、それに応じて重なり面積が変化する。具体的には、重なりCの相互容量C[Rx(a,b+1)/Ty(c)]は増大し、重なりDの相互容量C[Rx(a,b)/Ty(c)]は減少する。
以上より、上記4つの重なりA〜Dの静電容量を測定することで、X方向とY方向の移動を検出でき、それによりせん断応力が検出できる。
(4)相互容量、せん断応力、法線方向応力の関係
次に、第2電極Tx及び第1電極Tyと第3電極Rxとの相互容量と、せん断応力、さらには法線方向(Z方向)の応力との関係を、定量的に解析する。X方向について考えるため、図8〜図11に、第2電極Tx(d)と第3電極Rx(a−1,b)及び第3電極Rx(a,b)の位置関係を断面図として示す。図8〜図11は、相互容量、せん断応力、法線方向の応力の関係を示すための模式的断面図である。
なお、Y方向の応力については重なりDの相互容量C[Rx(a,b)/Ty(c)]と重なりCの相互容量C[Rx(a,b+1)/Ty(c)]を使って同様に検出できるので、ここでは省略する。
図8は、応力が印加されていない状況を示している。この状況での、第2電極Tx(d)と第3電極Rx(a−1)又は第3電極Rx(a,b)の平面の法線方向の距離をzとし、この時の各相互容量は以下の数式1のように表せる。
Figure 0006280579
ここで、K1とK2はそれぞれ、第2絶縁体13の誘電率や厚み、各電極パターンの大きさやX方向、Y方向の位置などによって決まる比例定数である。
図9に示すように、−Z方向に押圧した場合、圧力の強さに応じて第2電極Tx(d)は第3電極Rx(a−1,b)と第3電極Rx(a,b)に近づく。つまり、距離がzからz−Δzになる。この場合、重なりBの相互容量C[Rx(a,b)/Tx(d)]zと重なりAの相互容量C[Rx(a−1,b)/Tx(d)]zは、Δzに応じて、以下の数式2のように変化する。
Figure 0006280579
数式1と数式2を連立させると、Δzは以下の数式3のように表される。
Figure 0006280579
弾性体の変形が弾性領域である場合、Δzは応力に比例するので、数式3によって、容量の変化によって−Z方向の応力を検出できる。
次に、図10に示すように、+X方向に押圧(せん断応力)が発生した場合を考える。その場合、第2電極Txは圧力の強さに応じて移動する。この場合、重なりBの相互容量C[Rx(a,b)/Tx(d)]xと重なりAの相互容量C[Rx(a−1,b)/Tx(d)]xは、Δxに応じて以下の数式4のように変化する。
Figure 0006280579
ここで、Kは図5で表した斜線部分の長さに比例する値である。数式1と数式4から、Δxは以下の数式5のように表せる。
Figure 0006280579
第2絶縁体13の変形が弾性領域である場合、Δxは応力に比例するので、数式5によって、容量の変化によって+X方向の応力を検出できる。
最後に、図11に示すように、+X方向の押圧と−Z方向の押圧が同時に作用した場合を考える。この場合、第2電極Tx(d)はZ方向へΔz移動し、さらにX方向へΔx移動すると考える。C[Rx(a,b)/Tx(d)]zxとC[Rx(a−1,b)/Tx(d)]zxは、数式4のZをZ−Δzに置き換えて計算できるので、以下の数式6のように表せる。
Figure 0006280579
数式6と数式1から、以下の数式7が得られる。
Figure 0006280579
以上より、Δzは、下記の数式8に比例する。
Figure 0006280579
また、以上より、Δxは、下記の数式9に比例する。
Figure 0006280579
以上に述べたように第1電極Ty及び第2電極Txが第3電極Rxに対して平面視において多数の交点を形作るように配置されているので、交点の相互容量を測定することによって、指の接触位置とその圧力が検出できる。つまり、指が第1電極Ty及び第2電極Txに近づくと、接触位置に近い交点の相互容量が変化し、さらに押圧によって、第2絶縁体13が変形すれば第1電極Ty及び第2電極Txが第3電極パターンRxに近づくことでその交点の相互容量が変化する。
例えば、Y方向へのせん断力がある点に作用すると、第1電極Tyにおいてせん断力が作用した部分では、第1電極Tyと隣接する一対の第3電極Rxとの各交点(第1電極Tyが対応する一対の第3電極Rxに対して平面視で重なった部分)の面積が変化させられる。これにより、当該第1電極Tyと一方の第3電極Rxとの間の静電容量が増加し、当該第1電極Tyと他方の第3電極Rxとの間の静電容量が減少する。
(6)タッチパッド装置の制御構成
図1を用いて、タッチパッド装置1の制御構成を説明する。
制御回路5は、マイクロコントローラ25を有している。マイクロコントローラ25は、CPU、RAM、ROM等を有するコンピュータである。
制御回路5は、信号発生回路27を有している。信号発生回路27は、第1電極パターンTy又は第2電極パターンTxと、マイクロコントローラ25に接続されている。信号発生回路27は、第1電極パターンTy又は第2電極パターンTxに電圧パルスを印加可能である。
制御回路5は、ADC(アナログ−デジタル変換器)29を有している。ADC29はマイクロコントローラ25にデジタル信号を入力可能に接続されている。
制御回路5は、アンプ回路33を有している。アンプ回路33は、第3電極パターンRx及びADC29に接続されている。アンプ回路33は、第3電極パターンRxからのアナログ信号を増幅してADC29に送信する。
マイクロコントローラ25は、第1電極パターンTy及び第2電極パターンTxと第3電極Rxとの重なり部分(交点)の相互容量を検出可能である。つまり、マイクロコントローラ25が静電容量測定回路としての機能を有している。具体的には、マイクロコントローラ25は、第3電極Rxと当該第3電極Rxに平面視で重なっている第1電極Tyとの間で発生する静電容量を検出可能である。マイクロコントローラ25は、第3電極Rxと当該第3電極Rxに平面視で重なっている第2電極パターンTxとの間で発生する静電容量を検出可能である。
さらに具体的には、マイクロコントローラ25は、信号発生回路27を介して、第1電極パターンTy又は第2電極パターンTxを送信電極として電圧パルスを順次印加し、複数の第3電極Rxを受信電極として受信強度を測定することにすることで、各電極交点における相互容量の変化を検出する。
制御回路5は、ゲート駆動回路35を有している。ゲート駆動回路35は、複数の制御線(後述)によって、複数のスイッチング素子(後述)のON/OFF制御を行うスイッチング制御部である。ゲート駆動回路35は、マイクロコントローラ25に接続されている。マイクロコントローラ25は、静電容量の検出タイミングと、ゲート駆動回路35の切り替えタイミングとを制御する。
マイクロコントローラ25は、各交点における相互容量の変化に基づいて、圧力作用位置を算出する。つまり、マイクロコントローラ25は、圧力作用位置算出回路の機能を有している。圧力作用位置の算出技術は公知であるので、説明を省略する。
マイクロコントローラ25は各交点における相互容量の変化に基づいて、圧力を算出する。つまり、マイクロコントローラ25は、圧力算出回路の機能を有している。
この装置では、例えば指が保護層17を押すと、マイクロコントローラ25が第2電極Tx又は第1電極Tyに信号を送り、第3電極Rxが受ける信号をアンプ回路33によって増幅された信号としてADC29を介して受け取ることで、マイクロコントローラ25が、第2電極Tx又は第1電極Tyと第3電極Rxとの相互容量を測定できる。そして、マイクロコントローラ25が圧力作用位置を算出し、さらに圧力(入力面に対する法線方向の応力及びせん断応力)を算出する。
図12を用いて、スイッチング素子21のアクティブマトリックスによる第3電極Rxの切り替え回路を説明する。図12は、第3電極パターンのアクティブマトリックスを示す模式図である。図12では、例として、3×3=9エレメントの第3電極Rxにそれぞれスイッチング素子が取り付けてある形態を示す。なお、実際は10×15=150など、エレメントの数がより多くてもよいが、説明の簡略のために図13を使って説明する。この実施形態では、スイッチング素子21は、支持基板11の第2面に設けられている。第3電極Rxとスイッチング素子21は、貫通穴に設けられた接続線23によって接続されている。なお、スイッチング素子は第3電極Rxと同じ側の面に設けられてもよい。スイッチング素子21は、例えば、FETなどのトランジスタや、フォトカプラなどである。ただし、スイッチング素子21の種類は特に限定されない。
スイッチング素子21は、各列に制御線53a〜53cによってゲート駆動回路35に接続されている。複数の制御線53a〜53cは、並び方向と交差する方向に延びており、当該方向に並んだ複数のスイッチング素子21に接続されている。
以上に述べた構造によって、第3電極Rxは、アクティブマトリックス内で、スイッチング素子21を介して、アンプ回路33(図12)の入力に接続されている。具体的には、スイッチング素子21の一端は各第3電極Rxに接続されており、他端は各行ごとに読み出し線51a〜51cよってアンプ回路33に接続されている。言い換えると、複数の読み出し線51a〜51cは、複数のスイッチング素子21のうち一方向に並んだ複数のスイッチング素子21に接続されている。また、読み出し線51a〜51cは、当該複数のスイッチング素子21の並び方向に延びて、アンプ回路33に接続されている。
ゲート駆動回路35(スイッチング制御部の一例)は、スイッチング素子21によって各第3電極Rxを選択的に制御回路5に接続する方法、いわゆるアクティブマトリックスによる検出を用いるために用いられる。ゲート駆動回路35は、マイクロコントローラ25からの指令に応じて複数の制御線53a〜53cによって、スイッチング素子21のON/OFFを切り替える。
ゲート駆動回路35が任意の列のスイッチング素子21のみをONにして、その列の第3電極Rxを個別にアンプ回路33に接続できる。図12では、第3電極Rx(3,1)〜Rx(3,3)に接続されているスイッチング素子21をゲート駆動回路35がONにした状態を示している。この時、第3電極Rx(3,1)〜Rx(3,3)だけ個別にアンプ回路33に接続されており、それ以外の第3電極Rxはスイッチング素子21がOFFであるのでアンプ回路33に接続されない。
以上に述べた構成では、ゲート駆動回路35が1本の制御線によって複数のスイッチング素子21をONにした状態において、マイクロコントローラ25が複数の読み出し線51a〜51cを順番に検出することで、第1電極パターンTy又は第2電極パターンTxと第3電極パターンRxとの交点の静電容量変化を検出する。つまり、読み出し線51a〜51cが複数のスイッチング素子21を介して複数の第3電極Rxに接続されているので、読み出し線の数を減らすことができる。この結果、多くの第3電極Rxが配置された構造において、読み出し線を問題なく配置できる。
比較例として、上記の構成を採用せず、第3電極Rxをすべて個別にアンプ回路に引き回す場合(以後、「全引き回し」と表記する)は、引き回し配線が多くなりすぎて、現実的には不可能であると考えられる。少なくとも、第3電極が4×4以上のマトリックスの場合は、「全引き回し」の場合より、本実施形態のアクティブマトリックスの方が、制御回路への引き回し配線の数が半分以下になるので、有効である。

(7)圧力作用位置及び圧力の検出制御 図13を用いて、マイクロコントローラ25によるタッチパッド装置1のタッチ検出制御動作を説明する。図13は、圧力測定の制御フローチャートである。

最初に、マイクロコントローラ25は、アンプ回路33からのレベル信号に基づいて、タッチ入力の有無を判断する(ステップS1)。

タッチされたと判断されれば(ステップS1でYes)、マイクロコントローラ25が、第1電極パターンTyと第3電極パターンRxとの交点の静電容量を測定する(ステップS2)。
マイクロコントローラ25が、第2電極パターンTxと第3電極パターンRxとの交点の静電容量を測定する(ステップS3)。
各交点の静電容量の値は、マイクロコントローラ25のメモリに保存される。

ステップS2とステップS3の順序は前記実施例に限定されない。
次にマイクロコントローラ25は、タッチの圧力作用位置及び圧力をそれぞれ決定する(ステップS4)。
図14を用いて、ステップS2の各交点の静電容量の測定制御を説明する。図14は、第1電極パターンと第3電極パターンとの間の静電容量測定制御のフローチャートである。
最初に、マイクロコントローラ25は、第1電極パターンTyに駆動電圧を供給する(ステップS11)。
次に、ゲート駆動回路35が、スイッチング素子21の一列をONにする(ステップS12)。
マイクロコントローラ25は、読み出し線から順番に第3電極Rxからの信号を読み取る(ステップS13)。
読み出された値はメモリに保存される(ステップS14)。
次に、全列での測定がされたか否かが判定される(ステップS15)。測定されていない列があれば(ステップS15でNo)、プロセスはステップS12に戻る。全ての列の交点で相互容量が測定されれば(ステップS15でYes)、プロセスは終了する。
図15を用いて、ステップS3の各交点の容量値測定制御を説明する。図15は、第2電極パターンと第3電極パターンとの間の静電容量測定制御のフローチャートである。
最初に、マイクロコントローラ25は、第1電極パターンTyに駆動電圧を供給する(ステップS16)。
次に、ゲート駆動回路35が、スイッチング素子21の一列をONにする(ステップS17)。
マイクロコントローラ25は、読み出し線から順番に第3電極Rxからの信号を読み取る(ステップS18)。
読み出された値はメモリに保存される(ステップS19)。
次に、全列での測定がされたか否かが判定される(ステップS20)。測定されていない列があれば(ステップS20でNo)、プロセスはステップS17に戻る。全ての列の交点で相互容量が測定されれば(ステップS20でYes)、プロセスは終了する。
以上の結果、シート状弾性体に加わるX,Y,Z方向の応力全ての面内分布が検出できるようになる。上記装置の応用例として、複数の指で触った場合に、各指のXYZ方向の力が検出できている。PCのタッチパッドのような入力デバイスとして応用すれば、疑似的に回転方向の応力も検出できるので、“つまむ”や、“表面を捩じる”などの新しいジェスチャーを検出できるようになる。また、3D画像を操作する新しい入力デバイスにもなり得る。
このセンサの応用例としては、体圧分布を測定するものがある。例えば、歩行又は走行計測のため、足裏に掛かる圧力分布を測定する場合など、せん断力の測定が望まれている。また、ベッドに敷けば、寝ている人に加わる体全体のせん断力の分布が測定できるので、床ずれの研究や予防などに役立つ。
2.他の実施形態
以上、本発明の一又は複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
各層の積層順序及び他の層の有無は、前記実施形態に限定されない。
各層の材料及び厚みは、前記実施形態に限定されない。
制御構成は前記実施形態に限定されない。
制御フローチャートは前記実施形態に限定されない。具体的には、複数のステップの順序及び有無は特に限定されない。特に、前後して説明されたステップは、全て同時に又は一部同時に行われてもよい。
第4電極パターンTaと第3電極パターンRxとの間で静電容量を測定してもよい。
第4電極パターンのTaの静電容量を測定することで、弱い圧力を測定できるようにしてもよい。
本発明は、圧力検出装置に広く適用できる。
1 :タッチパッド装置
3 :センサ部
5 :制御回路
11 :支持基板
13 :第2絶縁体
15 :第1絶縁体
25 :マイクロコントローラ
27 :信号発生回路
33 :アンプ回路
35 :ゲート駆動回路
Rx :第3電極パターン
Ta :第4電極パターン
Tx :第2電極パターン
Ty :第1電極パターン

Claims (4)

  1. 圧力が入力される側と反対側から順番に並んで積層された、支持基板と、前記支持基板より剛性が低く圧力が作用すると弾性変形する第2絶縁体と、第1絶縁体と、
    前記第2絶縁体と前記支持基板との間に全面的に敷き詰められるように設けられた複数の電極と、
    前記第1絶縁体の前記第2絶縁体と反対側において第1方向に延びて設けられた、前記複数の電極のうち前記第1方向と交差する方向に隣接する電極同士の間に延びることで前記隣接する電極のそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている複数の第1帯状電極と、
    前記第1絶縁体と前記第2絶縁体との間において前記第1方向に交差する第2方向に延びて設けられた、前記複数の電極のうち前記第2方向と交差する方向に隣接する電極同士の間に延びることで前記隣接する電極のそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている複数の第2帯状電極と、
    前記電極と当該電極に平面視で重なっている第1帯状電極との間で発生する静電容量を検出可能であり、前記電極と当該電極に平面視で重なっている第2帯状電極との間で発生する静電容量を検出可能な静電容量測定回路と、
    圧力が加えられて前記第2絶縁体が変形するときに、平面視で互いに重なっている電極と第1帯状電極との重なり面積及び/又は平面視で互いに重なっている電極と第2帯状電極との重なり面積が変化することで前記静電容量測定回路によって得られた静電容量測定結果に基づいて、せん断力を算出する、圧力算出回路と、
    を備えた圧力検出装置。
  2. 前記複数の電極に一対一で接続された複数のスイッチング素子と、
    前記複数のスイッチング素子のうち前記第1方向又は前記第2方向に並んだ複数のスイッチング素子に接続されており、当該複数のスイッチング素子の並び方向に延びて前記静電容量測定回路に接続された複数の読み出し線と、
    前記並び方向と交差する方向に延びており、当該方向に並んだ複数のスイッチング素子に接続された複数の制御線と、
    前記複数の制御線によって、前記複数のスイッチング素子のON/OFF制御を行うスイッチング制御部と、
    をさらに備えた、請求項1に記載の圧力検出装置。
  3. 前記第2絶縁体の弾性率は、0.001〜10MPaである、請求項1又は2に記載の圧力検出装置。
  4. 前記第1絶縁体は前記第2絶縁体より薄い、請求項1〜3のいずれかに記載の圧力検出装置。
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