JP7094847B2 - 圧力センサーシート - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤや靴底、トラックパットなどの接地状態を測定するための装置に使用される圧力センサーシートに関する。
従来、タイヤの接地状態などを測定する方法として、下記特許文献1に開示された発明が知られている。この発明は、タイヤを接地させるための表面を有する基体と、前記基体の前記表面上に配されかつ複数の圧力測定点を有する圧力センサーシートと、前記圧力センサーシートの表面を覆う保護シートなどから構成され、前記圧力センサーシートは第1線状電極と第2線状電極との間に圧縮されたときの変形量に応じて電気抵抗が小さくなる樹脂が充填されている構造の発明である。
そして、この樹脂の電気抵抗は、シートの外面を押圧する力が大きくなると減少する。そのため、第1線状電極と第2線状電極との平面視での交点において、シートが押圧されることにより、第1線状電極と第2線状電極との電気抵抗が小さくなる。従って、前記電気抵抗が測定されることにより、交点での樹脂に作用する力を測定することができ、タイヤの接地面形状及び接地圧分布が得られる。
特開2018-72041号公報
しかしながら、電気抵抗や電気信号によって圧力測定値を出力する場合、その検出器の周囲の温度の影響を受ける。とくに、タイヤと接地面との間には摩擦などが生じるので、その摩擦などによって熱が発生し、圧力測定値の精度が低下する場合があった。
本発明は、そのような実状に鑑み案出されたもので、前記基板またはいずれかの層に、保護層上から加わる押圧体によって生じた熱を測定するための温度センサが設けられていることを特徴とする圧力センサーシートであって、当該温度センサによって、測定した接地圧分布の温度依存性による誤差を補正し、真のタイヤや靴底の接地圧分布を算出して真の接地状態を測定するための装置に使用できる。
すなわち、本発明の第一実施態様は、基板上に第一電極が形成され、前記第一電極上に絶縁層が形成され、前記絶縁層上に第二電極が形成され、前記第二電極上に保護層が形成された圧力センサーシートであって、前記基板、絶縁層、保護層のいずれかに、保護層上から加わる押圧体によって生じた熱を測定するための温度センサが設けられていることを特徴とする圧力センサーシート、である。
また本発明の第二実施態様は、前記温度センサが、貼合可能な厚みが20μm~3mmの薄膜シートであることを特徴とする圧力センサーシートである。また本発明の第三実施態様は、前記温度センサが、前記第一電極の各素子に追加された電極であることを特徴とする圧力センサーシートである。本発明の第四実施態様は、前記基板またはいずれかの層が、熱伝導率10~300W/(m.K)の層で構成されている圧力センサーシートである。また本発明の第五実施態様は、前記基板またはいずれかの層に、熱伝導率100~500W/(m.K)の熱伝導材が混入されている圧力センサーシートである。また本発明の第六実施態様は、前記いずれかに記載のタイヤまたは靴底の接地状態を測定するための装置に使用される圧力センサーシート、である。
本発明の圧力センサーシートは、基板上に第一電極が形成され、前記第一電極上に絶縁層が形成され、前記絶縁層上に電極が形成され、前記第二電極上に保護層が形成された圧力センサーシートであって、前記基板、絶縁層、保護層のいずれかに、保護層上から加わる押圧体によって生じた熱を測定するための温度センサが設けられていることを特徴とする。
したがって、当該温度センサによって、測定した接地圧分布の温度依存性による誤差を補正し、真のタイヤや靴底の接地圧分布を算出して真の接地状態を測定できる効果がある。また、熱によるエネルギーの損失量が推定できるため、その損失量の少ない接地面の状態が何かを測定可能であり、エネルギー効率の良い製品の研究開発を助長できる効果がある。
また本発明の圧力センサーシートは、前記温度センサが、貼合可能な厚みが20μm~3mmの薄膜シートあるいは第一電極の各素子に追加された電極であることを特徴とする、したがって、嵩張らない温度センサであるため、圧力センサーシートの様々な箇所に設置できる効果がある。したがって、圧力センサーシートのどの箇所に熱が発生し、蓄積しているのか測定できる効果がある。その結果、圧力と温度の両方の分布も計測できる効果がある。
また本発明の圧力センサーシートは、前記基板またはいずれかの層が、熱伝導率10~300W/(m.K)の層で構成されていることを特徴とする。また本発明の圧力センサーシートは、前記基板またはいずれかの層に、熱伝導率100~500W/(m.K)の熱伝導材が混入されていることを特徴とする。したがって、前記保護層とそれに接する押圧体との間に発生した熱が確実に前記温度センサに伝導され、測定した接地圧分布の温度依存性による誤差を精度よく測定できる効果がある。
薄膜シートからなる温度センサが貼合された、本発明の圧力センサーシートの一実施形態を示す断面図である。 第一電極および第二電極の近傍に温度検出電極を設けた場合の、本発明の圧力センサーシートの一実施形態を示す断面図である。 熱伝導材を混入することで、代替的に熱伝導率の高い層で構成されているようにした圧力センサーシートの一実施形態を示す断面図である。
以下、本発明の実施の一形態を、図面に基づき説明する。本発明の圧力センサーシート1は、基板10上に第一電極20が形成され、前記第一電極20上に絶縁層30が形成され、前記絶縁層30上に第二電極40が形成され、前記第二電極40上に保護層50が形成され、前記基板10、第一電極20、絶縁層30、第二電極40、保護層50あるいはこれらの層の間や上下に形成されるアンカー層(図示せず)に、保護層50上から加わる押圧体100によって生じた熱を測定するための温度センサ200が設けられていることを特徴とする(図1)。
保護層50上から加わる押圧体100によって生じた熱は、押圧体100に起因する熱であれば全て対象であり特に限定されるわけではない。例えば、保護層50上と押圧体100とが接触して擦れることによって発生する摩擦熱も本発明の対象であり、押圧体100が発熱体であってそれが接近または接触することによって保護層50に伝導する熱も本発明の対象である。
温度センサ200は、貼合可能な厚みが20μm~3mmの薄膜シートで構成されていることが好ましい。貼合可能な薄膜シートであると、フレキシブルで凹凸が小さく取り扱いやすいので、前記基板10、第一電極20、絶縁層30、第二電極40、保護層50あるいはこれらの層の間や上下に形成されるアンカー層60,70に対して貼合により容易に設置することができ、設置自由度を大幅に向上させることができる。さらに、熱がどのように分布して発生し、どのように伝導しているかを計測することもできる。また、どの層に貼合するのが好ましいか、設置箇所の相対比較をすることも可能である。また、曲げに対しても耐性があるので曲面等への設置も可能になる。
薄膜シートからなる温度センサ200としては、薄膜シート上にサーミスタ材料層と温度センサ用電極とを積層したフィルム型サーミスタ温度センサなどが挙げられる。フィルム型サーミスタ温度センサは、温度上昇とともに抵抗値が減少または増加するサーミスタ材料層をパターン形成し、その抵抗値の変化を温度センサ用電極で計測して温度を測定するものである。
薄膜シートは、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアセタール、液晶ポリマーなどの合成樹脂シートのほか、薄膜ガラス、セラミック、耐熱性不織布などが挙げられる。あるいは金属シート上に耐熱性の絶縁膜を形成した構成のシートであってもよい。厚みは20μm~3mmの範囲で適宜選択すると良い。
サーミスタ材料層の材質は、マンガン,コバルト,鉄等の遷移金属の酸化物の他、タリウム、ニオブ、クロム、チタン、ジルコニウムのいずれかとアルミニウム、シリコン、ビスマスのいずれかとからなる窒化物が挙げられる。前者の製造方法は、上記遷移金属の酸化物を原料とし、それらを混合機で混ぜ合わせ、仮焼きし、加圧造粒法やスプレードライ法などの造粒法を用いて、適度な大きさの顆粒にして、所望の形状に加圧成型する方法が挙げられる。後者の製造方法は、上記元素を含む材料をターゲットとして用い、窒素ガス含有雰囲気中でスパッタリングによりパターン形成する方法が挙げられる。なお、これらのサーミスタ材料層は、安定なサーミスタ特性を得るために高温で本焼成するのが好ましい。
温度センサ用電極の材質は、金、銀、パラジウムなどの金属電極層が挙げられ、ガラス微粉末(ガラスフリット)でもって櫛型等にパターニングするとよい。また、接合性を向上させるため、クロムやニッケルクロム、窒化チタンなどの接合層を、薄膜シートと温度センサ用電極との間に設けてもよい。温度センサ用電極を形成した後は、リード線を取り付け、エポキシ樹脂などで封止して、サーミスタ材料層および温度センサ用電極を保護するとよい
以上、サーミスタ方式による温度センサについて説明をしたが、このほか2種類の異なる金属を接続して両方の接点間にその温度差により生じる起電力を利用する熱電対方式、金属の電気抵抗が温度にほぼ比例して変化することを利用した測温抵抗体方式、液体や気体が温度変化によって膨張・収縮することを利用した熱膨張方式、熱膨張率の異なる二枚の薄い金属板を張り合わせ一端を固定した状態で金属板に温度変化が生じると熱膨張率の違いから金属板がどちらか一方に反り返る現象を利用したバイメタル方式などの温度センサを用いてもよい。
また、温度センサ200は、第一電極20や第二電極40の各素子に並列して追加形成される電極のみで機能を果たすこともできる。すなわち、第一電極20や第二電極40の近傍に半導体などからなる温度検出電極300を設けて温度センサ200の代替としてもよい(図2)。温度検出電極300の一端側は電流制限用の抵抗を介して制御電源に接続され、他端側は接地側端子に接続される。そして、制御電源が温度検出電極に順方向の電流を流す電流源に相当する。
温度検出電極300は、金、銀、パラジウムなどの金属電極層のほか、これらの金属粒子を樹脂バインダーに分散させた導電ペースト膜あるいはポリへキシルチオフェン、ポリジオクチルフルオレン、ペンタセン、テトラベンゾポルフィリンなどの有機半導体などで形成するとよい。温度検出電極300の製造方法は、前者の場合、メッキ法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等で導電膜を全面形成した後にエッチングによりパターニングする方法が挙げられ、後者の場合、スクリーン、グラビア、オフセットなどの印刷法等で直接パターン形成する方法が挙げられる。
温度検出電極300は、一層のみでもよいし二層以上の多層から成り立っていてもよい。温度検出電極300のパターンとしては、丸状,角状、線状などいずれの形状であってもよい。温度検出電極300の厚みは、0.01μm~200μmの範囲内で適宜選択するとよい。
また、前記基板10、第一電極20、絶縁層30、第二電極40、保護層50あるいはこれらの層の間や上下に形成されるアンカー層60,70は、特に限定されるわけではないが、熱伝導率10~300W/(m.K)の層で構成されていることが好ましい。各々の層をこのような範囲の熱伝導率の層に構成することで、前記保護層50とそれに接する押圧体100との間に発生した熱が確実に前記温度センサ200または温度検出電極300に伝導され、測定した接地圧分布の温度依存性による誤差を精度よく測定できるためである。その結果、真の接地状態を測定することが可能となる。
本発明で定義する熱伝導率とは、単位厚さ(例えば、100μm)の膜の両端に単位温度(例えば1℃)の差がある時、その膜の単位面積(例えば、1m)および単位時間(例えば1秒)あたり流れる熱量のことを指す。熱伝導率の測定は、JIS R1611に基づく熱流速型の示差走査熱量法(DSC)により比熱容量を測定し、ハーフタイム法によって熱拡散率を算出し、これらの数値および膜の密度を乗算して決定する非定常法により行う。
熱伝導率が10W/(m.K)未満の層で構成すると、保護層上から加わる押圧体によって生じた熱が途中で放散してしまい測定精度が低下しやすくなる。一方、熱伝導率が300W/(m.K)を越える層で構成すると、周囲環境の影響を受けて保護層上から加わる押圧体によって生じた熱以外の温度変化も拾ってしまい測定精度が低下しやすくなる。熱伝導率10~300W/(m.K)の層の具体例としては、主材の樹脂シートや不織布シート、セラミックシートなどの層に、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、ステンレスなどの熱伝導性のよい金属膜層を積層した層などが挙げられる。主材と金属膜層の厚みの割合は、材質によって異なり適宜選択するとよいが、金属膜層の厚みの方が厚くなる場合が多い。
また前記基板10、第一電極20、絶縁層30、第二電極40、保護層50あるいはこれらの層の間や上下に形成されるアンカー層に、熱伝導率100~500W/(m.K)の熱伝導材80を混入することで、代替的に前記の各層を前記所望の熱伝導率の層で構成されているようにすることもできる(図3)。すなわち、前記の各層の主材が熱伝導性の低い材質で構成されていても、混入した熱伝導材80を介して前記保護層50とそれに接する押圧体100との間に発生した熱を前記温度センサ200または温度検出電極300に伝導させることができる。
熱伝導材80としては、金、銀、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、パラジウムなどの金属粉が挙げられ、主材100に対して10~95の範囲内の重量割合で適宜混入するとよい。金属粉は、鱗片状などいずれの形状であってもよく、粒径もとくに限定されない。
前記各層の主材の材質としては、シリコーン、フッ素、ウレタン、エポキシ、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ブタジエンゴムなどの弾性力を有する合成樹脂シートや伸縮性のある不織布シート、セラミックシートなどが挙げられる。とくに、シリコーンゲル、シリコンエラストマーなどのシリコーン樹脂系の弾性体シートは、低温から高温まで幅広い温度域で耐久性に優れ、かつ弾性力も優れているので、より好ましい。
シリコーン樹脂系の弾性体シートを製造する方法としては、上記シリコーン原料に補強剤や加硫剤を入れ撹拌混合し、所定の厚みの圧延機にかけシート化する圧延成形が挙げられる。その他、所定の型に流し込んで熱および圧力をかけて加硫するプレス成形や、押出機にかけシート化する押出成形、カレンダーロールを用い幅広の長尺シートに成形するカレンダー成形、コーティング装置を用いてガラスクロスなどの基材へ塗工するコーティング成形、インジェクション成形、巻きむし成形などが挙げられる。
これらのシリコーン樹脂系の弾性体シートには、触媒のほか安定剤を配合させておいてもよい。触媒としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミンなどの含窒素化合物、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫などの金属塩、ジブチル錫ジラウレートなどの有機金属化合物などが挙げられる。安定剤としては、置換ベンゾトリアゾール類などの紫外線に対する安定剤、フェノール誘導体などの熱酸化に対する安定剤などが挙げられる。
また、シリコーン樹脂系の弾性体シートの代わりに発泡体で構成された層でもよい。発泡体としては、合成樹脂中にガスを細かく分散させ、発泡状または多孔質形状に成形されたものが挙げられる。とくに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどは、それ自体のシートのみでは弾性力が弱く、発泡体にすることにより、弾性力が発生するので好ましい。発泡体の製造方法は、アゾジカーボンアミドや炭酸水素塩などの熱分解型発泡剤やフロンや炭化水素などを熱可塑性樹脂カプセルでくるんだ熱膨張性マイクロカプセル発泡剤を前記合成樹脂中に分散させ、熱が加わるビーズ発泡,バッチ発泡,プレス発泡,常圧二次発泡、射出発泡,押出発泡,発泡ブローなどの成形方法で製造する方法が挙げられる。
発泡体の泡のサイズは、2μm~100μmが好ましい。そのような泡のサイズにするための発泡体の製造方法としては、加硫発泡の反応過程で、雰囲気圧力(外気圧)を一定の圧力に減圧または加圧してコントロールすることが好ましい。その範囲にコントロールすることにより加硫発泡時の気泡の成長を促進または阻害することができ、一定の所望の発泡倍率及び一定のセル目の大きさを有する発泡体を得ることができるからである。また、発泡倍率の範囲を大幅に広くすることが可能となり、所望の発泡倍率の製品を得ることが可能になるからである。
また、シリコーン樹脂系の弾性体シートや発泡体の代わりに電気粘性流体で構成されている層を用いてもよい。電気粘性流体は電界を印加したり除去したりすることによって粘弾性特性が可逆的に変化する流体のことであり,液晶などの単一物質からなる均一系電気粘性流体や、絶縁液体などに粒子を分散させた分散系電気粘性流体などが挙げられる。とくに、分散系電気粘性流体の場合は、電界の有無によって固液相変化が可能であり、より好ましい。分散系電気粘性流体に使用する粒子としては、炭素質や絶縁質からなる多孔質な微粒子が挙げられる。微粒子の平均粒径は5~30μmが好ましい。分散系電気粘性流体に使用する絶縁液体としては、シリコーンオイルなどが挙げられる。また、絶縁液体に架橋剤や白金触媒などを添加し熱処理を施して、電気粘性流体をゲル化してもよい。
ゲル化した電気粘性流体のシートでは、電界を印加することで粒子がゲル中に埋没し表面状態が変化する。すなわち、界面の電気力によってゲルが隆起し表面はゲルのみの平滑な面一状態になり、他の層と全面に接触して吸着が発現する状態になる。そのような状態になると、絶縁層30にせん断力60が伝わりやすくなり、検出感度が向上する。分散系電気粘性流体の製造方法は、乾燥後の多孔質粒子を電気絶縁性液体の分解温度以上に維持したまま攪拌しながら電気絶縁性液体に添加することにより、多孔質粒子の近傍に存在する電気絶縁性液体を分解させて低分子量の有機化合物を生成させ、その有機化合物を多孔質粒子の表面に均一に吸着させる方法が挙げられる。
第一電極20および第二電極40は、前記の金属膜のほか、これらの金属粒子を樹脂バインダーに分散させた導電ペースト膜あるいはポリへキシルチオフェン、ポリジオクチルフルオレン、ペンタセン、テトラベンゾポルフィリンなどの有機半導体膜などで形成してもよい。第一電極20および第二電極40の製造方法は、金属膜の場合、メッキ法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等で導電膜を全面形成した後にエッチングによりパターニングする方法が挙げられ、導電ペースト膜や有機半導体膜の場合、スクリーン、グラビア、オフセットなどの印刷法等で直接パターン形成する方法が挙げられる。
また、基板10は、ガラスエポキシ基板、ポリイミド基板、ポリブチレンテレフタレート樹脂基板などを用いてもよい。基板10、第一電極20、絶縁層30、第二電極40、保護層50あるいはこれらの層の間や上下に形成されるアンカー層は、一層のみでもよいし二層以上の多層から成り立っていてもよい。第一電極20および第二電極40のパターンとしては、丸状,角状、線状などいずれの形状であってもよい。基板10、第一電極20、絶縁層30、第二電極40、保護層50あるいはこれらの層の間や上下に形成されるアンカー層の厚みは、0.1μm~2000μmの範囲内で適宜選択するとよい。
第一電極20および第二電極40の各々からは配線パターンが接続され、外部にあるコントローラーと電気接続される。そして、前記第一電極20と第二電極40との間で発生する静電容量値の変化を検出することにより、前記保護層50上から加わる接地圧の圧力分布を測定することができる。その測定できる圧力は、Z軸方向 (上部垂直方向) の成分だけでなくXY軸方向(斜め方向)のせん断力60の成分についても測定できる。
すなわち、斜めの方向からせん断力60が加わった場合、複数の第二電極40のうちの一点の第二電極41は、その真下にある一点の第一電極21だけではなく、第一電極21の隣の第二電極22との間の距離も変化する。すなわち、第二電極41と第一電極21との間の静電容量値の変化と第二電極41と第一電極22との間の静電容量値の変化とを測定すれば、斜めの方向のせん断力60の強さを測定できる。
なお、せん断力60の方向の変位が、周縁のほかの第二電極40,41に影響を与え、それがノイズとなって測定したい静電容量値の感度に影響を与えないようにするために、保護層50の表面に切り目を入れてもよい。切り目により第二電極40、41各々が独立して動き、第二電極41の変位が周囲のその他の第二電極40への影響を少なくする効果がある。切り目は保護層50を貫通させて絶縁層30の表面にまで形成してもよい。
切り目の形態としては、例えば点線状、破線状、長鎖線状、一点鎖線状、長二点鎖線状などが挙げられる。切れ目は一本の線であってもよいし複数の線であってもよい。切れ目の深さは、完全に貫通していてもよいし、途中までのハーフカット状であってもよい。切り目の形成方法としては、例えばトムソン刃の打ち抜き方法などが挙げられる。
保護層50上から加わる押圧体100によって生じた熱は、押圧体100が発熱体である場合を除き、Z軸方向の成分に起因するものは少なく、XY軸方向(斜め方向)のせん断力60の成分に起因するものが多いので、とくにXY軸方向(斜め方向)のせん断力60の成分について測定できる機器では、本発明のような温度センサ200や温度検出電極300を搭載する意義が高い。
例えば、タイヤが接地面に及ぼすXY軸方向(斜め方向)のせん断力60を測定するような機器では、そのせん断力60によって生じるタイヤと接地面との摩擦熱が測定誤差の要因に成り得るが、その摩擦熱を温度センサ300や温度検出電極300で検知し、補正をすることにより、求めたい真のXY軸方向(斜め方向)のせん断力60を正確に測定することができる。
同様に、靴底の真の接地状態を測定するための装置についても、足と靴底とが擦れた際にせん断力60に起因する摩擦熱が発生し、トラックポイントの真の接地状態を測定するための装置についても、微小ながらトラックポイントを指で擦った際にせん断力60に起因する摩擦熱が発生するので、これらの用途でも本発明の温度センサ200や温度検出電極300を搭載する意義が高い。
以下、本発明の実施例1として、タイヤの接地状態測定装置に用いた場合の圧力センサーシートについて記載する。実施例1の圧力センサーシートは、以下の手順で製造した。液状シリコーンゴム、加硫架橋剤、トリエチルアミン触媒、フェノール誘導体の安定剤およびメタン内包マイクロカプセル発泡剤を重量比10:4:0.3:0.1:0.4の割合で配合・撹拌させた絶縁層原料を、125μm厚のポリエステル製キャリアシート上に、0.3mm厚の間隙をもたせたカレンダーロールの間を通して分出しを行った。次いで、120℃の加熱炉を通すことで、液状シリコーンゴムを架橋させシート状にするとともに、マイクロカプセルを発泡させたところ、泡のサイズが平均50μmのシリコーンフォームからなる絶縁層(幅40cm、長さ2m)が形成された。
この絶縁層上に、ピッチが1.5mm間隔でパターンが1mm正方形状の銀ペーストからなる複数の第二電極を、スクリーン印刷法にて絶縁層の全面に形成した。次いで、絶縁層の上面に、ポリカーボネート系樹脂からなる厚さ0.5mmの保護層をウレタン系接着剤を介して積層し、絶縁層の下面には、35μm厚の第一電極が形成された1mm厚のガラスエポキシ樹脂基板を積層して、圧力センサーシートを得た。上記複数の第一電極および第二電極は、引き出し配線を通じて静電容量値の変化を検出できるコントローラーに接続した。ついで、前記保護層上にフィルム型サーミスタ温度センサーを貼合した。フィルム型サーミスタ温度センサーは、厚み200μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる薄膜シート上に、二酸化マンガンと窒化アルミニウムとからなるサーミスタ材料層と、銀とパラジウムからなる櫛型パターンの温度センサ用電極とを積層し、リード線を取り付けた後、エポキシ樹脂で封止した構造のものを使用した。
上記フィルム型サーミスタ温度センサーが貼合された圧力センサーシートを用いて、環境温度25℃下において、タイヤ幅195mm,偏平率65%,ホイールサイズ15インチからなる―40℃、10℃、60℃の温度に冷却または加熱したラジアルタイヤを走行速度40km/時で走行させZ軸方向の圧力とXY軸方向のせん断力を測定した。その測定結果は表1の通りであり、タイヤ温度以外全く同じ条件下でテストをしたにもかかわらず、Z軸方向の圧力およびXY軸方向のせん断力の数値に差異がみられた。このタイヤ温度の差異に伴う数値の傾向を参考に、Z軸方向の圧力およびXY軸方向のせん断力の測定値計算プログラムに補正をして、タイヤ温度を少し変えて再度テストをし直したところ、表2の通り数値はいずれも殆ど同じになった。
Figure 0007094847000001

Figure 0007094847000002
以下、本発明の実施例2として、靴底の接地状態測定装置に用いた場合の圧力センサーシートについて記載する。実施例2の圧力センサーシートは、以下の手順で製造した。80℃の恒温槽内において、シリコーンオイルからなる分散系電気粘性流体に、平均粒径20μmの絶縁質からなる乾燥多孔質微粒子、加硫架橋剤、白金触媒および熱伝導率236W/(m.K)の鱗片状アルミニウム金属粉を重量比10:1:1:0.05:1.3の割合で添加配合・攪拌しながら放置することで、多孔質粒子の近傍に存在する電気絶縁性液体が分解し、低分子量の有機化合物が生成され、その有機化合物が多孔質粒子の表面に均一に吸着されたゲル状の電気粘性流体からなる絶縁層(幅40cm、長さ2m)が形成された。この絶縁層の熱伝導率は12W/(m.K)であった。
この絶縁層上に、ポリ3-へキシルチオフェン-2,5-ジイルを有機溶媒に溶かして、ピッチが1.5mm間隔でパターンが1mm正方形状の複数の第二電極とピッチが4.5mm間隔でパターンが0.8mmφの円形状温度検出電極とを、スクリーン印刷法で全面に形成した。次いで、その上面に、アクリル系樹脂からなる厚さ0.05mmの保護層をシリコーン系接着剤を介して積層し、絶縁層の下面には、35μm厚の銅膜からなる第一電極が形成された0.1mm厚のポリイミド樹脂フィルム基板を積層して、圧力センサーシートを得た。上記第一電極および第二電極は、引き出し配線を通じて静電容量値の変化を検出できるコントローラーに接続した。温度検出電極も、引き出し配線を通じて温度変化を検出できるコントローラーに接続した。
上記製造された圧力センサーシートの上を、20℃の環境温度下において、そのままおよび0℃に冷却または40℃に保温した靴を履いた試験者に歩行速度4km/時で歩行してもらい、各温度におけるZ軸方向の圧力とXY軸方向のせん断力を測定した。その測定結果は表3の通りであり、靴の温度以外全く同じ条件下でテストをしたにもかかわらず、Z軸方向の圧力およびXY軸方向のせん断力の数値に若干の差異がみられた。この靴の温度の差異に伴う数値の傾向を参考に、Z軸方向の圧力およびXY軸方向のせん断力の測定値計算プログラムに補正をして、靴の温度を少し変えて再度テストをし直したところ、表4のとおり数値はいずれも殆ど同じになった。
Figure 0007094847000003

Figure 0007094847000004
以下、本発明の実施例3として、パーソナルコンピューターのトラックパットに用いた場合の圧力センサーシートについて記載する。実施例3の圧力センサーシートは、以下の手順で製造した。熱伝導率285W/(m.K)の窒化アルミニウムからなる厚さ1mmのセラミックシートを絶縁層として使用し、この絶縁層上に、ピッチが0.6mm間隔でパターンが0.3mm正方形状の銅からなる第二電極を、部分メッキ法にて絶縁層の全面に形成した。次いで、絶縁層の上面に、熱伝導率170W/(m.K)の窒化ケイ素からなる厚さ1.5mmの保護層を積層し、絶縁層の下面には、10μm厚の銀ペーストからなる第一電極が形成された0.1mm厚のポリイミド樹脂フィルム基板を積層して、圧力センサーシートを得た。上記第一電極および第二電極は、引き出し配線を通じて静電容量値の変化を検出できるコントローラーに接続した。
ついで、前記絶縁層の裏面にフィルム型サーミスタ温度センサーを貼合した。フィルム型サーミスタ温度センサーは、厚み100μmのポリエチレンナフタレートフィルムからなる薄膜シート上に、二酸化マンガンと窒化アルミニウムとからなるサーミスタ材料層と、銀とパラジウムからなる櫛型パターンの温度センサ用電極とを積層し、リード線を取り付けた後、エポキシ樹脂で封止した構造のものを使用した。
上記フィルム型サーミスタ温度センサーが貼合された圧力センサーシートを用いて、環境温度20℃下において、そのままおよびー10℃に冷却または50℃に保温した冶具でもって、トラックパットを試験者に10mm/秒でなぞってもらい、各温度におけるZ軸方向の圧力とXY軸方向のせん断力を測定した。その測定結果は表5の通りであり、冶具の温度以外全く同じ条件下でテストをしたにもかかわらず、Z軸方向の圧力およびXY軸方向のせん断力の数値に若干の差異がみられた。この冶具の温度の差異に伴う数値の傾向を参考に、Z軸方向の圧力およびXY軸方向のせん断力の測定値計算プログラムに補正をして、冶具の温度を少し変えて再度テストをし直したところ、表6のとおり数値はいずれも殆ど同じになった。
Figure 0007094847000005

Figure 0007094847000006
1 圧力センサーシート
10 基板
20、21、22 第一電極
30 絶縁層
40、41 第二電極
50 保護層
60 せん断力
80 熱伝導材
100 押圧体
200 温度センサ
300 温度検出電極

Claims (5)

  1. 基板上に第一電極が形成され、
    前記第一電極上に絶縁層が形成され、
    前記絶縁層上に第二電極が形成され、
    前記第二電極上に保護層が形成された圧力センサーシートであって、
    前記基板またはいずれかの層が、
    熱伝導率10~300W/(m.K)の層で構成され、
    前記基板またはいずれかの層に、保護層上から加わる押圧体によって生じた熱を測定する
    ための温度センサが設けられた、圧力センサーシート。
  2. 基板上に第一電極が形成され、
    前記第一電極上に絶縁層が形成され、
    前記絶縁層上に第二電極が形成され、
    前記第二電極上に保護層が形成された圧力センサーシートであって、
    前記基板またはいずれかの層に、
    熱伝導率100~500W/(m.K)の熱伝導材が混入され、
    前記基板またはいずれかの層に、保護層上から加わる押圧体によって生じた熱を測定する
    ための温度センサが設けられた、圧力センサーシート。
  3. 前記温度センサが、
    貼合可能な厚み20μm~3mmの薄膜シートである、請求項1または請求項2に記載の圧力センサーシート。
  4. 前記温度センサが、
    前記第一電極の各素子に追加された電極である、請求項1または請求項2に記載の圧力センサーシート。
  5. 前請求項1から請求項4のいずれかに記載のタイヤ、靴底またはトラックパッドの接地
    状態を測定するための装置に使用される圧力センサーシート。
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