JP6280503B2 - ガラスリボンを形成するプロセス及び装置 - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2011年11月9日に出願された米国仮特許出願第61/557,521号の優先権の利益を米国特許法第119条に基づいて主張するものであり、この仮特許出願の内容は、本明細書で参照することにより、当該出願の内容全体が援用され、そして本明細書に組み込まれる。
本発明は概して、ガラスリボンを成形する方法及び装置に関するものであり、更に詳細には、薄い板状ガラスリボンをガラスプリフォームから引き出す方法に関するものである。
ガラスリボン、特に表面品質が高く、かつ厚さが一定であり、更にはガラス系材料またはガラスセラミックにより形成される高精度板状ガラスリボンに対する要求が益々強くなっている。このような板状リボンを組み込んだフラットパネルディスプレイは非常に大きな注目を浴びている。注目の殆どが、ラップトップコンピュータに使用されるような小型ユニット、及びフラットパネルディスプレイ、すなわちテレビのような超大型ユニットに集中して向けられている。しかしながら、現在では、フレキシブルディスプレイに関する検討が進められ、そして非常に薄いフレキシブルガラス基板に対する要求が、顕著になっている。
ディスプレイ基板を形成するために広く用いられている2つの方法が、フロート法及びフュージョン法である。これらの方法は共に、溶融ガラス成形材料流をリボン成形装置に供給する耐火性ガラス溶融装置を必要とする。ガラス組成物の歪み点が高い場合、高品質の溶融ガラス成形材料流をリボン成形装置に供給する非常に大規模な高温ガラス溶融装置が必要になる。これは、歪み点が高いガラスが、高い溶融温度、通常1700℃を超える温度を有するからである。
フロート法では、溶融ガラス成形材料流を溶融炉から排出して液体金属媒質を含むフロート炉に流し込む。通常、金属は錫である。フロート炉内の雰囲気は、錫の酸化が起こらないように制御される。溶融ガラスは、板状連続リボンの形態で錫液面の上に浮遊し、そして錫液面の上で広がる。ガラスリボンは、ガラス焼きなまし炉またはトンネル式徐冷炉に送られ、このガラス焼きなまし炉またはトンネル式徐冷炉では、ガラスリボンは、制御された速度で周囲温度に冷却される。冷却後のガラスは、板状平滑面を有し、この板状平滑面は、幾つかの例では、研削及び研磨のようなプロセスにより更に仕上げ処理する必要がある。
しかしながら、高い熱歪み点を有するガラスを、溶融錫を貯留する容器内で成形するのは非常に難しい。これは、錫が、高い蒸発圧を1050〜1100℃を超える温度で有するからである。高い熱歪み点を有するガラスに必要とされる高い成形温度では、溶融錫は、フロート炉の内部で蒸発し、そして続いて、炉の低温部分で凝縮する。幾つかの場合では、凝縮状態が十分高くなって、錫がガラスに滴下し、そしてガラス表面に取り込まれる状況である“錫の滴状の付着物(tin rain)”と称する付着物が付着する。
フュージョン法では、成形溶融ガラスが、耐火樋に流れ込み、そして次に、樋の両側から制御性良く溢れ出す。この方法の主要な利点は、最終的に成形されるガラスリボンの表面が、耐火材料または他の成形装置に決して触れることが無いことである。この方法の別の利点は、この方法から非常に平坦かつ均一な厚さのガラスリボンが得られることである。その結果、ディスプレイ用途の平滑、平坦、かつ均一なガラスリボンを実現するための2次処理が必要ではなくなる。しかしながら、当該方法は、高い熱歪み点を有するガラスを、高温が要求されるために処理することができないという不具合を有しているが、その理由は、このような温度が、ガラス成形用構成部材の劣化を大幅に加速し、そしてガラス溶融物への汚染が拡大する可能性があるからである。通常、ガラスを10〜10ポアズの範囲の粘度で成形して、最適な平坦度及び均一な厚さを実現することが望ましい。
残念なことに、フュージョンドロー法またはフロートガラス法のいずれもが、非常に薄い板状リボンを、高い歪み点、例えば900℃を超える可能性がある歪み点を有するガラス組成物から形成するために効果的ではない。
残念なことに、フュージョンドロー法またはフロートガラス法のいずれもが、非常に薄い板状リボンを、高い熱歪み点、例えば900℃を超える可能性がある歪み点を有するガラス組成物から形成するために効果的ではない。
薄いフレキシブルガラス基板を形成することができる能力を備えることは、フレキシブル電子機器及びディスプレイのロールツーロール(roll−to−roll)処理を行なうために重要である。本明細書において使用されるように、ロールツーロールとは、ガラスリボンを第1ロールまたは供給ロールから第2ロールまたは巻取ロールに供給する操作を指し、リボンの処理は、ガラスリボンが供給ロールから巻取ロールに送られるときに行なわれる。薄い板ガラスを製造するスロットドロー法、フュージョン成形法、及びフロート法のような現在の方法では、約200μm、例えば50〜100マイクロメートルの薄さの厚さ、または約200μm、例えば50〜100マイクロメートルよりも薄い厚さを有するガラスリボンのような薄いガラスリボンを製造するためには限界がある。板ガラスプリフォームをリドローする、またはダウンドローすることにより、100μm未満の厚さを有するガラスリボンの製造が、良好な形状特性及び強度特性を伴って可能になる。リドロー法は新規の成形法ではなく、ファイバ、管状製品、及び他のガラス製品に使用されてきたが、平坦なガラスリボンを引き出して、ガラスリボンを巻き取り、そしてロールツーロール法において使用することができるために十分薄く、かつ可撓性の高い基板を実現することができることは優れた利点となる。ロールツーロール法によって、コーティングを薄い基板に既存の工業技術を用いて印刷することができる。例えば、薄膜電子素子を移動しているガラスリボンにロールツーロール法により付着させることができる。
リボンのまさに端を除いて、反り、しわ、または目に見える他の歪みがないガラスリボンは、引き出しガラスの粘度を制御し、そして特定の熱プロファイルを引き延ばし炉内で維持することにより実現することができる。この性能は、引き出し形状を熱調整する第2炉を用いることにより拡張することができる。歪み(ゆがみ)は、小さい引き出し張力をガラスリボンに加えることにより更に低減することができる。引き出しガラスリボンに保護コーティングをして、当該ガラスリボンの強度特性を維持し、そしてガラスリボンを巻き取ることができるようにしている。
従って、1つの実施形態では、ガラスリボンを形成する方法が開示され、該方法は、中央部分、一対の両側端部を含み、厚さは、200μm超であり、かつ好適には1.5mm未満であるガラスプリフォームを引き延ばし炉内で加熱して、ガラスリボンを成形する工程であって、前記ガラスリボンの前記中央部分の温度を、前記ガラスリボンの粘弾性領域内の前記ガラスリボンの前記端部の温度よりも高くするように前記ガラスプリフォームを加熱する工程を含む工程を含む。前記ガラスリボンの中央部分が200μm未満の所定の厚さになるように前記ガラスリボンを引き出し、そして加熱調整炉内で、前記ガラスリボンの徐冷温度よりも高く、かつ前記ガラスリボンの軟化点未満の温度で熱処理する。第1コーティングを前記ガラスリボンに施すことができ、その後、前記ガラスリボンを巻取機に巻き取ることができ、この場合、前記巻き取りガラスリボンの湾曲半径は約10cm未満である。
前記引き延ばし炉は、側面側加熱素子群と直交して配置される端部側加熱素子群を備えることができる。前記方法は更に、前記引き延ばし炉内で加熱する前に、前記ガラスプリフォームを予備加熱炉内で加熱する工程を含むことができる。
前記ガラスリボンを引き出す工程では、前記ガラスリボンを牽引アセンブリに接触させることが好ましく、該牽引アセンブリは、前記ガラスリボンを下方に2つの正逆回転ベルトの間に挟んで引き出す。好適には、前記ガラスリボンの中央部分は、約200μm未満の厚さを有する。前記ガラスリボンの端部もまた、約200μm未満とすることができる。
前記ガラスプリフォームの歪み点は、約600℃超であることが好ましく、そして幾つかの実施形態では、前記歪み点は、約900℃超である。
前記牽引アセンブリに接触させる前に、保護コーティングを前記ガラスリボンにして、前記コーティングが前記ガラスリボンと前記正逆回転ベルト群との間に配置されるようにすることができる。例えば、保護コーティングは、コーティング材料ロールから供給される固体フィルムとして施すことができ、当該固体フィルムは、供給ロールから巻き出され、そしてガラスリボンにされる。一旦、成形されると、ガラスリボンは巻出機に巻回される。
別の実施形態では、ガラスリボンを引き出す装置について記載され、該装置は、引き延ばし炉を備え、該引き延ばし炉は、固体ガラスプリフォームを加熱するように構成され、前記引き延ばし炉は、前記引き延ばし炉の幅の方向に沿って水平に配列される第1の複数の加熱素子、及び前記引き延ばし炉の前記幅と直交する方向に水平に配列される第2の複数の加熱素子を備える。
前記装置は更に、加熱調整炉の長さに沿って垂直に配列される複数の加熱素子を備える加熱調整炉を備えることができる。前記引き延ばし炉の下方に回転可能に取り付けられ、かつそれぞれ前記ガラスリボンに向かって進出し、そして前記ガラスリボンから退避するように構成されることが好ましい正逆回転ベルト群は、前記ガラスリボンに係合し、そして押し下げ力を前記ガラスリボンに加えるように設計される。前記装置は好適には、フィルム材料を前記ガラスリボンと前記正逆回転ベルト群との間に施す第1コーティングアプリケータを備える。幾つかの実施形態では、前記装置は、前記正逆回転ベルト群の下流に配置される第2コーティングアプリケータを備える。
前記第1の複数の加熱素子は、個別に制御される(すなわち、これらの加熱素子の温度が個別に制御される)ことが好ましい。前記第2の複数の加熱素子もまた、個別に制御することができる。
前記装置は更に、前記引き延ばし炉の上流に配置される予備加熱炉を備えることができる。
本発明は、更に容易に理解され、そして本発明の他の目的、特徴、詳細、及び利点は、以下の説明的な記載が、何らの限定を加えることなく与えられる過程で、添付の図を参照することにより、一層明確に理解されるようになる。
板ガラスをリドローしてより薄い板ガラスにする装置の側部断面図である。 図1の装置内に使用される任意の予備加熱炉、及び加熱調整炉を含む引き延ばし炉の側方断面図である。 図2の引き延ばし炉を上から下に見た断面図であり、個別に制御される加熱ゾーン群を構成する水平配列加熱素子群を示している。 図2の引き延ばし炉の個々の加熱素子の斜視図である。 図2の加熱調整炉を上から下に見た断面図であり、個別に制御される加熱ゾーン群を構成する垂直配列加熱素子群を示している。
以下の詳細な説明では、説明のために、かつ限定的にはならないように、特定の詳細を開示する例示的な実施形態を示して、本発明に対する完全な理解が得られるようにしている。しかしながら、本開示の恩恵を享受するこの技術分野の当業者であれば、本発明を、本明細書において開示される特定の詳細から逸脱する他の実施形態において実施することができることを理解できるであろう。更に、公知のデバイス、方法、及び材料についての説明は、本発明についての説明を不明瞭にしてしまうことがないように省略されている。最後に、可能な限り、同様の参照番号は同様の構成要素を指すようにしている。
本発明の実施形態はとりわけ、ガラスプリフォームを供給する工程、ガラスプリフォームを炉内で加熱する工程、ゴブを形成し、そしてガラスプリフォームを引き出してガラスリボンとする工程を含む。“ゴブを成形する(forming a gob)”とは、ガラスプリフォームを少なくとも当該ガラスプリフォームの軟化点まで加熱し、その後直ぐに、当該プリフォームの肉厚部分、すなわちゴブを当該プリフォームの本体から取り出して、当該ゴブと一緒に広幅のガラス流を引き出す操作を言う。軟化点は普通、ガラスが当該ガラスの自重で変形し、約107.6ポアズの粘度で変形する温度であると考えられる。
本発明の1つの実施形態では、ガラスプリフォームは、従来のガラス成形法により成形される。このような方法として、ゾルゲルの使用を含む化学気相成長法及び鋳造法を挙げることができる。化学気相成長(CVD)法は、光ファイバ分野では良く知られており、そしてほんの少しの例を挙げると、外付け気相成長法(OVD:Outside Vapor Deposition)、気相軸付け法(VAD:Vapor−phase Axial Deposition)、及び内付け化学気相成長法(MCVD:Modified Chemical Vapor Deposition)を含む。OVD及びVADでは共に、加水分解ガラス前駆体化学物質を火炎の中に生じることによりスートを発生し、そしてスートがターゲットに付着して、多孔質のガラススートプリフォームを形成する。次に、多孔質のスートプリフォームは、当該プリフォームをまず、塩素含有ガスのようなクリーニングガス雰囲気で加熱し、その後、当該プリフォームを、十分高い温度に更に加熱して、スート粒子を固化させて透明な固体ガラスプリフォームとすることによりクリーニングし、脱水し、そして固化させることができる。しかしながら、利用可能なガラス成長法は、上に提示した例に限定されないことに留意されたい。
OVDまたはVADとは異なり、ガラスプリフォームを鋳造する際、有機ガラス前駆体群を混合して、加工前プリフォームを形成することができる。加工前プリフォームは、加熱する、そして/または塩素含有ガスのような適切なクリーニングガスに曝すことにより乾燥させ、次に加熱して、加工前プリフォームを固化させることにより透明な固体ガラスプリフォームとする。ガラスプリフォームを鋳造する別の方法では、ガラス(例えば、カレットまたはガラススート)を適切なるつぼの中で溶融させ、そしてその後、溶融ガラスを適切な金型に流し込んで、所望のプリフォーム形状に成形する。これらの鋳造法は共に、この技術分野では良く知られているので、詳細に説明することはしない。前に説明したガラスを付着させる方法の場合と同じように、鋳造法は、本明細書において提示される例に限定されないことに留意されたい。
他の実施形態では、ガラスプリフォームは、前に説明したフュージョン法またはフロート法のような他の従来のガラス成形法により形成することができる。この場合も同じように、このような方法は、良く知られているので詳細に説明することはしない。
図1は、本発明の1つの実施形態によるガラスリボン12をガラスプリフォーム14から引き出す、参照番号10で一括指示される例示的な装置を示している。ガラスプリフォーム14は、図1において真横にしたときに見える板ガラスである。ガラスプリフォーム14は、200μm超とすることができ、例えば0.5mm超、0.7mm超、1.0mm超、または1.2mm超とすることができる。しかしながら、ガラスプリフォーム14は通常、必要とされるところでは、1.5mm未満である。本実施形態による装置10は、ガラスプリフォーム14を保持し、そして移動させる下方送り機構16と、引き延ばし炉18と、任意の加熱調整炉20と、任意の予備加熱炉22と、第1コーティングアプリケータ24と、牽引機構26と、任意の第2コーティングアプリケータ28と、そして巻取装置30と、を備える。通常、装置10は、薄いガラスリボンをプリフォームから、当該プリフォームの幅に応じた約3:1の比で形成することができる。すなわち、ガラスリボンがガラスプリフォームから引き出されるときにガラスリボンが狭い間隙を流下するので、ガラスリボンは通常、端部及びこれらの端部の間に配置される中央部分を含むガラスプリフォームの合計幅の約3分の1の合計幅を有する。
ガラスプリフォーム14は、上に説明した方法のうちのいずれかの方法により、または任意の他の公知のガラス製造方法により形成することができる。好適には、ガラスプリフォーム14は、矩形の形状であり、略平行な対向辺、及び厚さよりも大きい幅を有する。当該プリフォームのガラスは、可視光波長で略透明であることが好ましく、約390nm〜約750nmの波長範囲に亘って少なくとも約95%の透過率を有することが好ましい。プリフォームを円筒形のような他の形状に形成することができる場合、当該プリフォームは、例えば研削により成形して、略矩形の形状とすることができる。ガラスリボン12は、フロート法またはフュージョン法に使用される従来のガラスと同様の歪み点、例えば約600℃〜700℃の歪み点を有するガラスプリフォームから引き出すことができるが、約700℃、800℃超のような温度、または900℃超という高温のような、歪み点よりもずっと高い温度を有するガラスを引き出すことができる。例えば、約1956℃の歪み点を有する高純度溶融シリカは、本発明の装置及び方法を用いて引き出してガラスリボンとすることができる。
ガラスプリフォーム14は通常、プリフォーム下方送り機構16から吊り下がり、下方送り機構16は、クランプ32を備えることにより、ガラスプリフォーム14を挟み付け、そして強固に保持する。下方送り機構16は、ガラスプリフォーム14を平行垂直方向に、上方または下方のいずれかに(z軸34に沿って)、スクリュー38にナット(図示せず)を介して接続されるモータ36により移動させることができる。本明細書において使用されるように、X軸、Y軸、及びZ軸は、3つの直交軸を表わす。しかしながら、この技術分野で公知の、下方送り速度に対する正確な制御を行なうことができるような他の適切な駆動装置を代わりに用いてもよい。下方送り機構16はまた、当該プリフォームをz軸と直交する方向に(すなわち、x−y平面で)移動させて、ガラスプリフォームを引き延ばし炉18の内部で、適切に位置決めすることができる。例えば、ガラスプリフォーム14は、引き延ばし炉18の内部の中心に配置して、当該プリフォームに対する均一な加熱を確実に行なうことができるようにする。
一旦、下方送り機構16から吊り下がると、ガラスプリフォーム14を下降させて引き延ばし炉18の高温ゾーンの内部に、下方送り機構によって到達させ、その後直ぐに、ガラスプリフォーム14の下側部分を少なくとも当該ガラスプリフォームの軟化点にまで加熱する。例えば、引き延ばし炉を、少なくとも約1075℃の温度に加熱して、当該プリフォームを“ゴブ状にする”ことができる。ゴブ成形が行なわれると、ガラスは、当該ガラスの幅を当該ガラスの自重によって幅狭になることができ、そしてゴブ成形は、実際の引き出し操作温度よりも僅かに高い温度で行なわれる。引き延ばし炉18は、熱が、電流を抵抗加熱素子に流すことにより生じる構成の抵抗加熱炉;熱が、誘導電流をマイクロ波サセプタに流すことにより生じる構成の誘導加熱炉;または、炉を少なくともガラスプリフォームの軟化点に加熱することができる任意の他の加熱方法を用いる炉とすることができる。例えば、当該炉は、ガス燃料を燃焼させて火炎を生成する構成のガス炉とすることができる。好適には、当該炉は、ガラスを少なくとも約900℃;更に好ましくは少なくとも約1500℃;そして最も好ましくは少なくとも約2200℃の温度に加熱することができる。一旦、当該プリフォームが“ゴブ状になる”と、引き延ばし炉18の温度を下げることができる。
図2に示す引き延ばし炉18の実施形態では、引き延ばし炉18は、矩形状に配置され、かつ中空内部空間46を画定する一対の対向側方プレート42及び一対の対向端部プレート44を備える抵抗加熱型である。引き延ばし炉18は、図2の記号Zone2〜5が付された複数の水平配列加熱ゾーンを含み、各加熱ゾーンは、ガラスリボンの2つの長辺に沿って横方向に配置される1つ以上の加熱素子48を含む。好適には、各加熱ゾーンのこれらの加熱素子は、他の加熱ゾーンのこれらの加熱素子とは無関係に制御され、そして幾つかの実施形態では、同じ加熱ゾーン内の他の加熱素子とは無関係に制御される。各加熱素子48は、棒状部材として成形されて、十分な電流許容能力を確保し、そして例えば、モリブデンダイシリサイドにより形成することができる。均一な熱勾配を生じ易くし、そして加熱素子によってガラスプリフォームのごく近傍から発生する熱源を減らすために、側方プレート42及び端部プレート44は、炭化珪素(例えば、Hexoloy(登録商標))のような適切な高熱導電性材料により形成することができ、そしてガラスプリフォームとこれらの加熱素子との間に配置される。これらの側方プレートは、これらの加熱素子から供給される熱を拡散させ、そして更に均一な熱プロファイルを、各加熱ゾーンの引き延ばし炉18内に実現することができる。矩形引き延ばし炉の端部プレート44は、側方プレート42と同様の構成であり、そしてゾーン2〜5とは別の加熱ゾーン(図3のゾーン6として記号が付されている)として加熱される。端部ゾーン(ゾーン6)内の個別加熱素子群50は、ガラスリボンの中央部分とは異なる粘度の板ガラス端部を、ガラスリボンのこれらの端部を、ガラスリボンの中央部分とは異なる温度に加熱することにより引き出すことができるようにしている。終点加熱素子群50は、側面側加熱素子群48と同じ設計とすることができるが、側面側加熱素子群48の姿勢と略直交する姿勢になるように配置することができ、そしてガラスリボンの側方(主)表面ではなく、ガラスリボンの端部を加熱するように配置される。好適には、ガラスプリフォームのこれらの端部は、ガラスプリフォームの内部中央部分よりも高い温度に加熱される。端部プレート群44は、終点加熱素子群50をガラスリボン12から分離する。側方プレート群42及び端部プレート群44は、引き出しガラスリボンに、熱バラツキ、及びプリフォームに加わる引き出し応力に起因して生じる虞のある反り及び他の平坦度変位を小さく抑える。
殆どのガラス成形作業は、等温状態を必要とするが、広幅平坦リボンをリドローする場合、非等温状態を有することが好ましい。幅狭になったガラスリボンに引張力が加わってガラスリボンに結合しているガラスプリフォームが等温状態になると、不均一な引き出し張力が当該プリフォームの幅に亘って生じる。等温状態では、引き出し張力は、端部におけるよりもプリフォームの中央において大きいので、当該プリフォームの中央のガラスは、これらの端部よりも高速で引き出される。プリフォームの幅に亘って結果として生じる引き出し張力の差が、反り、及び厚さバラツキを、ガラスリボンに生じさせてしまう。例えば、リボンの端部でカールが生じてしまう。ガラスプリフォームの端部を、特にプリフォームの付け根にある端部をプリフォームの中央よりも高い温度に加熱すると、引き出し張力の影響を小さく抑えることができ、そしてより平坦な引き出しリボンを形成することができる。本明細書において使用されるように、“プリフォームの付け根(preform root)”とは、ガラスプリフォームが、弾性固体から粘性液体に移行する位置を指し、この位置は普通、幅減少によって特徴付けられる。もっと簡単に言うと、“付け根(root)”とは、ガラスプリフォームが終了し、そしてガラスリボンが始まる領域を指す。ガラスプリフォーム中央とプリフォーム端部、特にプリフォームの付け根との間の温度制御を行なえることにより、平坦であり、かつ反りが殆ど無いガラスリボンを引き出すことができる。しかしながら、ガラスリボンは、両極端の端部において或る程度の僅かな厚さバラツキを示す。その結果、端部を除去する必要がある。
1つの実施形態では、個々の側面側加熱素子48は、炉の幅に亘って直線状に配置することができる、すなわち単一の列に並べることができる。好適には、個々の加熱素子48は、例えばコントローラ(図示せず)によって個別に制御されて、個々の加熱素子の温度を個別に調整することができる。個別に制御可能な温度を有する個々の加熱素子を使用すると、ドロー法に、特定の空間温度プロファイルをガラスプリフォームに、特にガラスリボンに、ガラスリボンの幅に亘って容易に付与することにより、より大きな柔軟性を与えることができ、これにより、温度プロファイルがリボンの幅に亘って不均一になることに起因するガラスリボンの反りのような温度関連不具合を低減することができる。複数の個別制御加熱素子を用いる例では、コントローラは更に、個々の加熱素子の温度を制御して、ガラスプリフォームに適用される温度プロファイルを調整することができる。
図3に示すように、各引き延ばし炉加熱素子48及び50は、“U”字形素子として形成することができ、このU字形素子は、引き延ばし炉18の長手方向に一致する長手方向Lに延在する。すなわち、好適には、各個々の加熱素子48及び/又は50の各加熱素子の少なくとも1つの構成部分は、引き延ばし炉の長さに沿って、引き出し方向に垂直に延在する。熱電対52は、引き延ばし炉18内の温度を監視するために適する位置の引き延ばし炉18の内部に挿入することができる。
引き延ばし炉18の他に、図4に示す予備加熱炉22を引き延ばし炉18の上方に配置することができる。引き延ばし炉18は、引き出しサイクルの間に、約500℃の待機状態にして、これらの引き延ばし炉加熱素子の寿命を延ばし、そして炉を引き延ばし温度に加熱するために要する時間を短くすることができる。ガラスプリフォームを500℃の引き延ばし炉18に入れる作業は普通、ガラスの熱膨張率が十分低い場合には問題ではない。しかしながら、ガラスのCTEが高い場合、またはガラスがイオン交換可能なガラスである場合、ガラスプリフォームを引き延ばし炉に入れるときに細心の注意を払う必要がある。ガラスプリフォーム、または引き延ばし炉構成部品への熱衝撃を防止するために、任意の予備加熱炉22を用いて、ガラスプリフォームが引き延ばし炉18に入る前に、適切な温度に予備加熱することができる。予備加熱炉22は、予備加熱炉22の幅に亘って配置される1つ以上の加熱素子53を備え、これらの加熱素子は、抵抗加熱素子とすることができる。例えば、加熱素子群53は、抵抗発熱体巻線のような熱線加熱素子とすることができる。適切な加熱素子材料として、タングステンまたはニクロムを挙げることができる。
装置10は、任意の加熱調整炉20を備えることができ、この加熱調整炉20の実施形態は図2及び5に図示されており、加熱調整炉20は、引き出し方向を基準にして引き延ばし炉18の下に配置することができる。好適には、加熱調整炉20は、当該調整炉に沿って方向Lに垂直に配列される複数の加熱ゾーンを有し、複数の加熱ゾーンは、当該調整炉の長さに沿って垂直下方に配列される複数の加熱素子54を含む。加熱調整炉20は通常、引き延ばし炉18よりも低い温度調整能力しか持たず、そして例えば、抵抗線加熱素子54を装備することができる。すなわち、加熱素子54は、引き延ばし炉加熱素子48及び/又は50よりも低い電流許容能力を有することが好ましい。加熱調整炉20は、矩形形状であることが好ましく、この場合、側面側加熱素子及び端部加熱素子は個別に制御される。加熱調整炉20は、加熱調整炉の上側加熱ゾーンの温度が、ガラスリボンの徐冷点よりも高い状態で動作するように設計されているので、焼きなまし炉ではない。加熱調整炉20を用いて、ガラスリボンの形状を制御することにより、ガラスリボンの歪み(ゆがみ)を低減することができる。更に、加熱調整炉20は、ガラスリボン内に生じる内部応力のかなりの部分を、ガラスリボンを急冷することにより低減し易くする。加熱調整炉20は、図1に示すように、引き延ばし炉18に直接接続することができる、または加熱調整炉20は、引き延ばし炉18とは別体として、引き延ばし炉18から離間させることができる。
引き延ばし炉18と同様に、加熱調整炉20は、加熱素子と引き出しガラスリボンとの間の加熱調整炉の幅に沿って配置される熱放散プレート群39を含むことが好ましい。加熱調整炉は更に、端部加熱素子とガラスリボンの端部との間に配置される熱放散プレート群41を含むことができる。熱放散プレート19及び23は、Hexoloy(登録商標)または同様の材料により形成することができる。
加熱調整炉20をリドロー加熱炉の下に追加すると更に、平坦なガラスリボンを引き出すことができる能力を実現する。調整炉の上部ゾーンは、ガラスの軟化点をほんの少し下回り、かつガラスの徐冷点を上回る温度になるが、当該上部ゾーンは、ガラスを粘弾性変形させることができるように十分高温の状態を保つ。引き出しガラスリボンの端部は、リボンが加熱調整炉の上側ゾーンを通り過ぎるときに、中央領域よりも高速に冷却される。引き出し牽引機構から引き出し張力が、ガラスリボンの高い突出部(上に説明したプリフォームの低粘度領域と混同してはならない)に均一に加わる場合、ガラスは、端部が急冷されると平坦になる。調整炉の中央ゾーンは、ガラスリボンのガラスの徐冷点よりも高い温度であり、そして下側ゾーンは、ガラスの歪み点にほぼ近い温度である。これにより、ガラスリボン内の全ての残留応力を低減するか、または無くすことができるが、その理由は、ガラスリボンが非常に薄いので、リボンがこれらのゾーンに位置している時間だけで十分であるからである。これにより今度は、ガラスを破損することなく巻き取ることができ、そして続いて、ロールツーロール法に使用することができる。
ドローイング法を安定させた後、ポリマーコーティング56を引き出し牽引機構26の上方のリボンに施すことが好ましい。コーティング56は、ガラスリボンが下流の引き出し構造に接触しないように保護して、表面の許容光学品質を維持し、そしてガラスリボンの強度を低下させるガラスの表面傷を防止する。コーティング用途の他に、またはコーティング用途とは別の構成として、テープをリボン端部に貼着するシステムを引き出し中に実行してもよい。ガラスリボンのテープ貼着端部は、巻取機によるロールツーロール処理を、リボンをハンドリングすることができる位置を提供することにより可能にする。すなわち、ロールツーロールハンドリング装置は、テープを機械供給システムで把持することができる。別の構成として、端部テープ貼着は、ポリマーコーティングをテープ貼着前に剥がす場合には、オフラインで行なうことができる。従って、当該装置及びプロセスは、全幅または部分幅保護コーティングをガラスリボン表面に施すことができ、そしてこれらのコーティングは、ガラスに永久的に、または一時的に接着させることができる。
従って、図1は、保護ポリマーコーティング56をガラスリボン12に施す第1コーティングアプリケータ24を示している。保護ポリマーコーティング56は、少なくとも1つの供給ロール58から供給することができ、そしてガラスリボン12にアプリケータ60で施すことができる。例えば、アプリケータ60は、コーティングフィルムをガラスリボンに押圧するローラ群を備えることができる。好適には、保護ポリマーコーティング56は、ガラスリボンの両方の主表面にされる。保護ポリマーコーティング56は、機械的保護をガラスリボンの高品質領域に対して行ない、そしてガラスリボンと牽引機構26との間の直接接触を防止する。本明細書において使用されるように、高品質領域(quality area)という用語は、ガラスリボンのうちのガラスリボンから通常除去される端部と直接比較した場合に、ガラスリボンのうちの最終的に販売され、そして製造に使用され、そして更に別のガラス成形法におけるカレットとして使用することができる部分を指している。従って、高品質領域は、ガラスリボンの中央部分である。
一旦、引き出し始めると、ガラスプリフォームを、下方送りモータ速度、及び引き延ばし炉18内に設定される温度プロファイルによって決まる正確な送り速度で下降させて炉内に進入させる。例えば、ガラスプリフォームの代表的な下方送り速度は、約10〜12mm/分である。前に説明したように、一旦、ゴブが流下し、そしてガラスリボンに牽引機構26が係合すると、引き延ばし炉18を、ゴブの開始加熱成形温度(例えば、約1075℃)から適切な引き延ばし温度にまで下げる。リドロー法を実施するための主要パラメータは:下方送り速度、ガラスの粘度を制御する炉温度、及び引き出し速度(draw speed)としても知られる引っ張り速度である。引き出し粘性は普通、約10ポアズ〜約10ポアズの範囲である。下方送りシステム内に配置される荷重セルにより測定される適切な引き出し張力、すなわち満足できる引き出し張力は、約2〜3ポンド(約0.9〜1.4kg)の範囲とすることができる。板状ガラスリボンをガラスプリフォームから引き出す際の難しさは、当該プリフォームが、例えば約0.70mm厚の厚さ、かつ約300mmの広さを有することができ、これが約1:400以上のアスペクト比に等しくなることである。従って、引き出しリボンの適切な平坦度を維持するためには、ガラスプリフォームの下方送り速度、引き延ばし炉温度、及び牽引機構26によって付与される引き出し速度を注意深く監視する必要がある。
別の実施形態では、ポリマーコーティングは、例えばガラスリボンを、液体コーティング浴中を通して引き出すことにより施すことができる。別の構成として、液体コーティングは、ガラスの表面にスプレーすることができる。液体コーティングは、ガラスの1つ以上の表面に施すことができる。その後、この液体コーティングは、当該コーティング種類に必要とされる適切な硬化装置によって硬化させることができる。例えば、硬化装置は、コーティングを加熱により硬化させる(熱硬化)オーブンとすることができる、または硬化装置はコーティングを、当該コーティングを紫外光で露光することにより硬化(光硬化)させることができる。ガラスリボンにされるコーティングまたはコーティング群は、ガラスに永久的に、または一時的に接着させることができる。
一旦、ゴブが加熱調整炉20を通って、加熱調整炉20の下方に流下すると、ゴブを通常、手で、コーティングアプリケータを通過させて引き下げ、そして引き出し牽引アセンブリ26に収容する。引き出し牽引機構26は、複数の駆動輪64によって駆動される2つの正逆回転ベルト62を備えることにより、これらの正逆回転ベルト62の間の移動が下方に向かって行なわれるようにする。正逆回転ベルト62は、ガラスリボンに向かって内側に移動することができる、またはガラスリボンから離れる方向に外側に向かって移動することができる。これらのベルトが一体になると、ガラスリボン12がこれらのベルトの間に挟まれる。これらのベルトは、空圧駆動アクチュエータによってベルトの間隔を開き、そして閉じることができ、そしてこれらのベルトが閉じるときにベルトから加わる挟み付け力は、調整することができる。薄いガラスリボンが、約150μm以下、約100μm以下、及び幾つかの例における約50μm以下のような約200μm以下の厚さ(例えば、平均厚さ)の中央部分を有する場合、挟み付け力は、最小限の大きさに維持されて、ガラスリボンをこれらのベルトの間で押し潰すことがないようにするが、これらのベルトをスムーズに開き、そして閉じることができるために十分な大きさに維持される。牽引ユニット速度は、サーボ制御され、そしてガラスリボンに作用する僅かな引張力を維持するために十分な速度に設定される。挟み付け装置(図示せず)の荷重セルは、測定フィードバックをコントローラに与えて、プリフォームに加わる引き出し張力を制御することができるようにする。代表的な引き出し速度または引っ張り速度は約0.30m/分である。
ベルト62は、ガラスリボン12をガラスプリフォーム14から下方に引き出す。ベルト62は、高耐熱性の弾性材料により形成されることが好ましい。軟性及び弾性がより高いベルトは、硬質ベルト面よりも良好に機能することが分かっている。好適には、ベルト62は、ガラスリボンの全幅に亘って延在し、そして例えば、ガラスリボンよりも広くすることができる。前に説明したコーティングは、ガラスリボンとこれらのベルトとの間に、例えばコーティングをガラスリボンに施すことにより配置して、ガラスリボンの主表面を、これらのベルトに直接接触することがないように保護することができる。
別の構成として、牽引機構26は、垂直方向に個別に配置することができる複数の狭幅ベルトを備えることができ、そして各ベルトを走行させてベルトの間隔を開くか、または閉じることができる。例えば、6つのベルトを使用することができ、この場合、3つのベルトがガラスリボンの一方の面に配置され、そして他の3つのベルトが、ガラスリボンの他方の面に配置される。この牽引システムによって、ガラスリボンを当該ガラスリボンの端部のみから、または中央のみから引き出すか、或いは端部及び中央を組み合わせた位置から引き出すことができる。牽引ベルトをこのように配置することにより、略均一な引き出し力を、ずっと幅広のリボン、例えば最大500mmの幅を有するガラスリボンに加えることができる。前に説明した“単一の(single)”牽引機構は、約150mm未満のリボン幅に限定される。
ガラスリボン12が牽引機構26によって下方に引き出されるとき、ガラスリボンの厚さは、ガラスリボンの中央部分が所定の厚さに達するまで薄くなる。すなわち、当該リボンは通常、中央部分及び肉厚端部を含む。これらの端部は除去することができ、この場合、これらの中央部分は、更に処理することができる。ガラスリボンの厚さ、特に中央部分の厚さは、とりわけ、リボンをプリフォームから引き出すときの速度、プリフォームを引き延ばし炉18に送り込むときの速度(下方送り速度)、及び引き延ばし炉18の温度からなる要素によって変わる。引き出すことができるガラスリボンの厚さの上限値は普通、プリフォームの厚さによって決まる。好適には、引き出しガラスリボンの最大厚さは、約1.5mm未満、約1.0mm未満、及び更に好ましくは、約0.7mm未満であるが、通常200μm超である。本発明の実施形態に従って引き出されるガラスリボンは、当該リボンの中央部分の厚さが、約200μm以下、約150μm以下、約100μm以下、または約50μm以下になるように引き出すことができる。当該ガラスリボンの端部の厚さも、約200μm未満になるように引き出すことができる。
ガラスリボンの厚さは、ドローイング法の一部として測定することができ、そしてこのような測定の結果を利用して、例えばプリフォームの下方送り速度、及び/又は牽引機構26の引き出し速度を制御することができる。ガラスリボンの厚さは、図1の参照番号66で指示されるレーザマイクロメータのような適切な測定装置により測定することができる。このような装置は市販されていて容易に入手することができる。エラー信号は、測定装置66により、コントローラに既に入力されているガラスリボンの厚さの所定の設定値に基づいて発することができる。エラー信号はコントローラ(図示せず)に中継される。コントローラは、例えばコンピュータとすることができる。次に、コントローラは、下方送り速度、端部ローラ回転速度、及び/又はトルク、または炉温度、或いはこれらの組み合わせを所定の指示(コンピュータプログラムのような)に従って調整して、測定装置66からのエラー信号を減らすことにより、ガラスリボンの厚さを補正することができる。
幾つかの実施形態では、任意の第2コーティングアプリケータ28を用いることができる。図1に示すように、保護フィルム68をガラスリボン12に施す第2コーティングアプリケータ機構28を設けることができる。保護フィルムは、少なくとも1つの供給ロール70から供給され、そしてガラスリボン12にアプリケータロール72によってされる。好適には、保護フィルム68は、ガラスリボンの両方の主表面にされる。
最終工程では、コーティングされたリボンを巻き取る。引き出しガラスリボンを引き出し操作で取り出す方法は、当該方法の一部において、ガラスリボンの厚さによって異なり、そして更に詳細には、肉厚端部によって異なる。例えば、ガラスリボンの肉厚端部が、約数百マイクロメートル以下の厚さを有する場合、ガラスリボンは、図1に示すモータ駆動巻取機を用いた大型巻取機31で巻き取ることができる。当該巻取機は引張力制御手段を有し、この引張力制御手段によって、ガラスを巻取機に最小限の引張力で強固に巻き付けることができる。これらの巻取機は、長期間に亘って保管することができ、そしてガラスを、巻取径に応じて湾曲させると、表面引張力がリボンに生じることにより、ガラスに加わる巻き取り張力が小さくなって、破断を低減することができる。次に、大型巻取機31を巻出機として、次のロールツーロール法において使用することができ、この場合、ガラスリボンは巻出機から次の巻取機に移動させ、そして中間処理をガラスリボンに対して、ガラスリボンが巻出機から巻取機に移動するときに行なう。中間処理では、例えばガラスリボン端部を仕上げ処理する(例えば、除去する)、1枚以上の薄いフィルム層を付着させる、または価値をガラスリボンに付加するために用いることができる処理以外の任意の処理を行なって、仕上げ製品の供給を促進ことができる。ロールツーロール処理の場合、数回巻したリボンを継ぎ足して、より長い長さのリボンを供給することができる。
別の構成として、所定サイズの個々のパネルをリボンから後の時点で、必要に応じて切り出すことができる。ガラスリボンがリボンを巻き付けようとしているときに破断するような厚さを有する、例えば約1ミリメートル超の厚さを有するガラスリボンは、ドロー法を行なっているときに切断して所定サイズまたは種々のサイズの個々のパネルとする必要がある。ガラスリボンを切断して個々のパネルとする工程は、ガラスリボンのスコアリング及びブレーキング、またはレーザ切断のようなこの技術分野で公知の任意の従来方法により行なうことができる。
上に説明したように、ガラスプリフォームが、引き出されてガラスリボンとなるときにガラスプリフォームが受ける引き出し張力差を小さくするために、温度プロファイルを注意深く管理することが必要である。この目的のために、引き延ばし炉及び加熱調整炉を複数ゾーンに、これらのゾーン内の温度を個々に操作することができるように分離する。例えば、ガラスリボンを板ガラスプリフォームから引き出す場合の例示的な温度プロファイルは、引き延ばし炉及び加熱調整炉に対応するこれらのゾーンが、表1に従って加熱されるように設定することができる。
Figure 0006280503
この例によるガラスプリフォームは、約280mm〜約325mmの範囲の幅を有することができる。板ガラスの長さは、引き出されるように設計されるガラスの量、及び引き出し装置の物理的能力に一致する。ガラスプリフォームは、約600℃〜約1956℃、例えば約600℃〜約1000℃、約600℃〜約900℃、または約600℃〜約800℃の範囲の歪み点を有する。他の実施形態では、ガラスプリフォームは、約700℃〜約1956℃、例えば約800℃〜約1956℃、約900℃〜約1956℃、または約1000〜約1956℃の範囲の歪み点を有する。プリフォームの厚さは、例えば約0.70〜約1.5mmの範囲とすることができる。
好適には、ガラスプリフォームは、下方送り機構16により、約10mm/分〜約12mm/分の範囲の送り速度で下方に送り出される。牽引アセンブリ26による引き出し速度は、約0.2〜約0.4メートル/分の範囲である。例えば、牽引機構26による引き出し速度は、約0.3メートル/分とすることにより、ガラスリボンの中心線における引き出し張力を約2.8ポンド(約1.27kg)とすることができる。
この技術分野の当業者であれば、種々の他の変形及び変更を本発明に対して、本発明の思想及び範囲から逸脱しない限り加えることができることを理解できるであろう。従って、本発明は、本発明の変形及び変更を、これらの変形及び変更が添付の請求項、及びこれらの請求項の均等物の範囲に含まれる場合には包含するものである。
2,3,4,5,6 ゾーン
10 装置
12 ガラスリボン
14 ガラスプリフォーム
16 下方送り機構
18 引き延ばし炉
19,23,39,41 熱放散プレート
20 加熱調整炉
22 予備加熱炉
24 第1コーティングアプリケータ
26 牽引機構
28 第2コーティングアプリケータ、第2コーティングアプリケータ機構
30 巻取装置
31 大型巻取機
32 クランプ
34 z軸
38 スクリュー
42 側方プレート
44 端部プレート
48 側面側加熱素子
50 終点加熱素子
53 加熱素子
54 抵抗線加熱素子
56 ポリマーコーティング
58 供給ロール
60 アプリケータ
62 正逆回転ベルト
64 駆動輪
66 レーザマイクロメータ、測定装置
68 保護フィルム
70 供給ロール
72 アプリケータロール

Claims (10)

  1. 中央部分、一対の両側端部、及び200μm超の厚さを有するガラスプリフォームを引き延ばし炉内で加熱して、ガラスリボンを成形する工程であって、前記ガラスリボンの粘弾性領域内の前記端部の温度を、前記ガラスリボンの粘弾性領域内の前記中央部分の温度よりも高くするように前記ガラスプリフォームを加熱することを含む工程と、
    前記ガラスリボンの前記中央部分が200μm以下の厚さを有するように前記ガラスリボンを引き出す工程と、
    前記引き出したガラスリボンを加熱調整炉内で、前記ガラスリボンの徐冷温度よりも高く、かつ前記ガラスリボンの軟化点未満の温度で熱処理する工程と、
    第1コーティングを前記ガラスリボンに施す工程と、
    前記ガラスリボンを、巻取機に、巻き取られたガラスリボンの湾曲半径が10cm未満となるように巻き取る工程と、
    を含むことを特徴とするガラスリボンを作成する方法。
  2. 前記引き延ばし炉内で加熱する前に、前記ガラスプリフォームを予備加熱炉内で加熱する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記ガラスプリフォームを前記引き延ばし炉内で加熱する工程が、側面側加熱素子群の配列方向に直交して配列された端部側加熱素子群を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. 前記引き出す工程が、前記ガラスリボンを、該ガラスリボンを下方に2つの正逆回転ベルトの間に挟んで引き出す牽引アセンブリに接触させることを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記第1コーティングが前記ガラスリボンと前記正逆回転ベルト群との間に配置されるように、前記牽引アセンブリに接触させる前に前記第1コーティングを前記ガラスリボンに施すことを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 前記ガラスプリフォームが600℃超の歪み点を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記ガラスリボンを巻出機に巻回する工程を更に含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. ガラスリボンを引き出す装置であって:
    固体ガラスプリフォームを加熱するように構成された引き延ばし炉であって、該引き延ばし炉の幅の方向に沿って水平に配列され、前記ガラスリプリフォームの主表面を加熱するように配置された第1の複数の加熱素子、及び前記引き延ばし炉の前記幅と直交する方向に水平に配列され、前記ガラスプリフォームの中央部分の温度よりも高い温度まで、前記ガラスプリフォームの側方主表面よりも、前記ガラスプリフォームの端部を加熱するように配置される第2の複数の加熱素子を備える、前記引き延ばし炉と、
    前記引き延ばし炉で引き出したガラスリボンを、前記ガラスリボンの徐冷温度よりも高く、かつ前記ガラスリボンの軟化点未満の温度で熱処理する加熱調整炉であって、引き延ばし方向に関して前記引き延ばし炉の下方に位置し、前記引き延ばし方向に沿って垂直に配列される複数の第3の加熱素子を備える加熱調整炉と、
    前記引き延ばし炉の下方に回転可能に取り付けられ、かつそれぞれ前記ガラスリボンに向かって進出し、そして前記ガラスリボンから退避するように構成される正逆回転ベルト群であって、該正逆回転ベルト群は、前記進出することにより、前記ガラスリボンと係合して、押し下げ力を前記ガラスリボンに加える、前記正逆回転ベルト群と、
    フィルム材料を前記ガラスリボンと前記正逆回転ベルト群との間に施す第1コーティングアプリケータと、
    を備えることを特徴とする装置。
  9. 前記第1の複数の加熱素子の加熱素子群が個別に制御されるものであることを特徴とする請求項8に記載の装置。
  10. 前記引き延ばし炉の上流に配置される予備加熱炉を更に備えることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の装置。
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