JP6279317B2 - ゲル状薄膜、複合膜、気体分離膜及び製造方法 - Google Patents
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Description
また、多孔質含浸液膜は、分離対象ガスは液体成分を通して溶解・拡散機構により分離されるため、原理上分離対象ガスが高分圧の条件でも大幅な性能低下は生じない。しかし、分離対象ガスが高圧条件では液体が時間と共に多孔質膜から漏出し、欠陥を生じるといった問題点を有する。
さらに、高い液体含有率のゲル膜は、ゲル状組成物の強度が低いため、分離条件での圧力により物理的にピンホールが生じる、液体が漏出する、といった問題を有する。よって、従来のゲル膜を用いた気体分離膜では、分離対象ガスが高圧の条件での使用は不可能である。
[1]
下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物とのエンチオール反応によって得られるポリマーと、イオン液体、グリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種の液体と、を含むゲル状薄膜。
(式(1)中、n1は15〜250の整数であり、m1は3〜20の整数であり、X1はm1価の有機基であり、Y1は炭素数1〜15の炭化水素基、−CO−R11−、−CO−NH−R11−、−R12−O−R13−、−R12−NH−R13−、−R12−CO−R13−、−R12−COO−R13−、−R12−CO−NH−R13−、又は−R12−O−CO−NH−R13−であり、R11〜R13は各々独立に炭素数1〜10の炭化水素基である。n1同士、Y1同士は各々互いに同一でも異なっていてもよい。)
(式(2)中、n2は15〜250の整数であり、m2は3〜20の整数であり、X2はm2価の有機基であり、Y2は炭素数1〜15の炭化水素基、−CO−、−CO−NH−、−CO−R21−、−CO−NH−R21−、−R22−O−R23−、−R22−NH−R23−、−R22−CO−R23−、−R22−COO−R23−、−R22−CO−NH−R23−、又は−R22−O−CO−NH−R23−であり、R21〜R23は各々独立に炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2は炭素−炭素二重結合を有する1価の有機基である。n2同士、Y2同士、R2同士は各々互いに同一でも異なっていてもよい。)
式(1)で表される化合物が下記式(3)で表される化合物であり、式(2)で表される化合物が下記式(4)で表される化合物である、[1]のゲル状薄膜。
(式(3)中、n1は15〜250の整数であり、Y1は炭素数1〜15の炭化水素基、−CO−R11−、−CO−NH−R11−、−R12−O−R13−、−R12−NH−R13−、−R12−CO−R13−、−R12−COO−R13−、−R12−CO−NH−R13−、又は−R12−O−CO−NH−R13−であり、R11〜R13は各々独立に炭素数1〜10の炭化水素基である。n1同士、Y1同士は各々互いに同一でも異なっていてもよい。)
(式(4)中、n2は15〜250の整数であり、Y2は炭素数1〜15の炭化水素基、−CO−、−CO−NH−、−CO−R21−、−CO−NH−R21−、−R22−O−R23−、−R22−NH−R23−、−R22−CO−R23−、−R22−COO−R23−、−R22−CO−NH−R23−、又は−R22−O−CO−NH−R23−であり、R21〜R23は各々独立に炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2は炭素−炭素二重結合を有する1価の有機基である。n2同士、Y2同士、R2同士は各々互いに同一でも異なっていてもよい。)
R2が、各々独立に下記式(5−1)〜(5−8)からなる群から選択される少なくとも一種である、[1]又は[2]のゲル状薄膜。
液体の融点が50℃以下である、[1]〜[3]のいずれかのゲル状薄膜。
[5]
液体の沸点が150℃以上である、[1]〜[4]のいずれかのゲル状薄膜。
[6]
イオン液体を構成するカチオンが、イミダゾリウムカチオン又はアンモニウムカチオンであり、イミダゾリウムカチオンは、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリル基、アミノアルキル基又はフルオロアルキル基を有し、アンモニウムカチオンは、A1A2A3A4N+で表され、A1、A2、A3及びA4は、各々独立にフェニル基、無置換の炭素数1〜15個のアルキル基、又は、ヒドロキシル基、エーテル基、アリル基、アミノアルキル基若しくはフルオロアルキル基を有する炭素数1〜15個のアルキル基である、[1]〜[5]のいずれかのゲル状薄膜。
[7]
イオン液体を構成するアニオンが、塩素イオン、臭素イオン、四フッ化ホウ素イオン、硝酸イオン、チオシアネートイオン、ジシアノアミドイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン及びビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドイオンから選択される、[1]〜[6]のいずれかのゲル状薄膜。
[8]
液体の含有率が、ゲル状薄膜の全質量を基準として30質量%〜90質量%である、[1]〜[7]のいずれかのゲル状薄膜。
[9]
100nm〜500μmの膜厚を有する、[1]〜[8]のいずれかのゲル状薄膜。
[10]
多孔質支持体と、該多孔質支持体の表面上に積層された[1]〜[9]のいずれかのゲル状薄膜と、を備える複合膜。
[11]
[1]〜[9]のいずれかのゲル状薄膜、又は[10]の複合膜を備える気体分離膜。
[12]
[1]〜[9]のいずれかのゲル状薄膜の製造方法であって、上記エンチオール反応を光及び/又は熱により行う工程を備える、ゲル状薄膜の製造方法。
[13]
エンチオール反応を重合開始剤の存在下で行う、[12]のゲル状薄膜の製造方法。
[14]
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを含む溶液を多孔質支持体の表面上にコーティングする工程と、表面上でエンチオール反応を行う工程と、を備える、[10]の複合膜の製造方法。
本実施形態のゲル状薄膜において、ポリマーは、下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物とのエンチオール反応によって得られる多官能ポリエチレングリコール骨格を有するポリマーである。ここで、多官能ポリエチレングリコール骨格を有するポリマーとは、複数のポリエチレングリコール骨格(ポリオキシエチレン骨格)を有するポリマーを意味する。換言すれば、本実施形態に係るポリマーは、下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物とのエンチオール反応によって得られる付加重合体構造を有している。
(式(1)中、n1は15〜250の整数であり、m1は3〜20の整数であり、X1はm1価の有機基であり、Y1は炭素数1〜15の炭化水素基、−CO−R11−、−CO−NH−R11−、−R12−O−R13−、−R12−NH−R13−、−R12−CO−R13−、−R12−COO−R13−、−R12−CO−NH−R13−、又は−R12−O−CO−NH−R13−であり、R11〜R13は各々独立に炭素数1〜10の炭化水素基である。n1同士、Y1同士は各々互いに同一でも異なっていてもよい。)
(式(2)中、n2は15〜250の整数であり、m2は3〜20の整数であり、X2はm2価の有機基であり、Y2は炭素数1〜15の炭化水素基、−CO−、−CO−NH−、−CO−R21−、−CO−NH−R21−、−R22−O−R23−、−R22−NH−R23−、−R22−CO−R23−、−R22−COO−R23−、−R22−CO−NH−R23−、又は−R22−O−CO−NH−R23−であり、R21〜R23は各々独立に炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2は炭素−炭素二重結合を有する1価の有機基である。n2同士、Y2同士、R2同士は各々互いに同一でも異なっていてもよい。)
(式(3)中、n1は15〜250の整数であり、Y1は炭素数1〜15の炭化水素基、−CO−R11−、−CO−NH−R11−、−R12−O−R13−、−R12−NH−R13−、−R12−CO−R13−、−R12−COO−R13−、−R12−CO−NH−R13−、又は−R12−O−CO−NH−R13−であり、R11〜R13は各々独立に炭素数1〜10の炭化水素基である。n1同士、Y1同士は各々互いに同一でも異なっていてもよい。)
(式(4)中、n2は15〜250の整数であり、Y2は炭素数1〜15の炭化水素基、−CO−、−CO−NH−、−CO−R21−、−CO−NH−R21−、−R22−O−R23−、−R22−NH−R23−、−R22−CO−R23−、−R22−COO−R23−、−R22−CO−NH−R23−、又は−R22−O−CO−NH−R23−であり、R21〜R23は各々独立に炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2は炭素−炭素二重結合を有する1価の有機基である。n2同士、Y2同士、R2同士は各々互いに同一でも異なっていてもよい。)
本実施形態のゲル状薄膜に用いられる液体は、イオン液体、グリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選ばれた1種以上の液体であり、好ましくは、本実施形態のゲル状薄膜を気体分離膜とした際の二酸化炭素透過性、透過選択性の観点から、イオン液体である。
本実施形態のゲル状薄膜をより詳細に説明するために、ゲル状薄膜(自立膜)又はゲル状薄膜が多孔質支持体の表面上に積層された複合膜の製造方法をまず説明する。しかし、この製造方法に限定されるものではなく、ゲル状薄膜が得られれば、どのような製造方法でもよい。
本実施形態において、液体の含有率は、ゲル状薄膜の全質量を基準として、好ましくは30質量%〜90質量%であり、より好ましくは40〜80質量%であり、特に好ましくは50〜70質量%である。本実施形態のゲル状薄膜を気体分離膜として使用した際、液体の含有率が90質量%を超える場合、ゲル状薄膜の強度が低下しピンホールを生じやすくなる、液体の漏出が生じるといった問題が生じる傾向にあるため、気体分離膜として適さない。液体の含有率が30質量%未満の場合、高気体透過性能である液体成分の寄与が少なくなり気体の透過性が減少する傾向にあるため適さない。
本実施形態によって製造したゲル状薄膜1は気体分離膜として使用することができる。ゲル状薄膜1は自立膜としてもよいが、薄膜化を容易にできる点、耐圧性の点から多孔質支持体2に積層された複合膜3であってもよい。本実施形態における気体分離膜は、ゲル状薄膜の製造方法と同様にして製造することができる。
<末端がビニル基の4官能ポリエチレングリコール(4ARM−PEG−ビニル−10K)の合成>
まず、内容量500mLのガラス製1口フラスコにp−トルエンスルホン酸・一水和物(PTSA)3.6g、テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株):試薬特級)50mLを加え、スターラ−で撹拌し溶解した。溶解後、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)5.6gをテトラヒドロフラン50mLで溶解した溶液にゆっくり加えた。10分間撹拌後、析出した白色沈殿を濾過し、得られた沈殿物を塩化メチレン(和光純薬工業(株):試薬特級)とヘキサン(和光純薬工業(株):試薬特級)とを用い再結晶し、白色の針状結晶を得た(PTSA/DMAP:収率72%)。次に、内容量200mLのガラス製フラスコを用い、ディーン・スターク装置を準備した。これに末端が水酸基の4官能ポリエチレングリコール(JENKEM USA社製:4ARM−PEG−10K(商品名)、分子量10000Da)5g、3−ブテン酸(東京化成工業(株)製)12g、トルエン(和光純薬工業(株)製:試薬特級)15g、PTSA/DMAPを440mg加え、窒素置換した。副生成物として発生する水を共沸により除去し、必要に応じてトルエンを注ぎ足しながら120℃で3時間還流させた。冷却後、飽和食塩水を加え、クロロホルム(和光純薬工業(株):試薬特級)を用いて抽出し、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)飽和水溶液で不純物を抽出により取り除いた。エバポレーターでクロロホルムを除去した後、エタノール(和光純薬工業(株)製:試薬特級)とヘキサンとを用いて再結晶を行い、白色結晶を得た(収率89%)。1H−NMR測定により、白色結晶が、末端がビニル基の4官能ポリエチレングリコール(4ARM−PEG−ビニル−10K)であることを確認した。
内容量10mLのスクリュー管に、合成した4ARM−PEG−ビニル−10Kを750mg、末端がチオール基の4官能ポリエチレングリコール(JENKEM USA社製:4ARM−SH−10(商品名)、分子量10000Da)750mg、IRGACURE2959(商品名)(Ciba製)15mg、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業(株)製)3.6gを加え、撹拌し、気泡が無くなるまで静置した。石英板を2枚用い、スペーサーとしてPS20(商品名)(セプロ社製、ポリスルホン製UF膜、膜厚190μm程度)を2枚重ねて挟んだ。配合した溶液を石英板と石英板との間に流し込み、露光機(UVシステムズ製:FUSION VPS−6)で1512mJ/cm2(254nmにおける露光量)照射した。照射後、12時間静置し、石英板をゆっくりとはがしゲル状薄膜の自立膜を得た。得られたゲル状薄膜は十分に自立性があった。
内容量10mLのスクリュー管に4ARM−PEG−ビニル−10Kを125mg、末端がチオール基の4官能ポリエチレングリコール(JENKEM USA社製:4ARM−SH−10(商品名)、分子量10000Da)125mg、IRGACURE2959(商品名)(Ciba製)2.5mg、塩化メチレン(東京化成工業(株)製)4、16g、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業(株)製)594mg加え、撹拌し、気泡が無くなるまで静置した。石英板を2枚用い、スペーサーとしてPS20(商品名)(セプロ社製、ポリスルホン製UF膜、膜厚190μm程度)を2枚重ねて挟んだ。配合した溶液を石英板と石英板との間に流し込み、露光機(UVシステムズ製:FUSION VPS−6)で1512mJ/cm2(254nmにおける露光量)照射した。照射後、12時間静置し、石英板をゆっくりとはがし膜を取出した。70℃、2時間真空下で乾燥して塩化メチレンを除去し、ゲル状薄膜の自立膜を得た。得られたゲル状薄膜は十分に自立性があった。
内容量10mLのスクリュー管に4ARM−PEG−ビニル−10Kを125mg、末端がチオール基の4官能ポリエチレングリコール(JENKEM USA社製:4ARM−SH−10(商品名)、分子量10000Da)125mg、IRGACURE2959(商品名)(Ciba製)2.5mg、塩化メチレン(東京化成工業(株)製)4、76g加え、撹拌し、気泡が無くなるまで静置した。石英板を2枚用い、スペーサーとしてPS20(商品名)(セプロ社製、ポリスルホン製UF膜、膜厚190μm程度)を2枚重ねて挟んだ。配合した溶液を石英板と石英板の間に流し込み、露光機(UVシステムズ製:FUSION VPS−6)で1512mJ/cm2(254nmにおける露光量)照射した。照射後、12時間静置し、石英板をゆっくりとはがし膜を取り出した。得られた膜をメタノールに12時間浸漬した後、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:メタノール=1:7(質量比)の溶液に浸漬した。70℃、2時間真空下で乾燥することでメタノールを除去し、ゲル状薄膜の自立膜を得た。得られたゲル状薄膜は十分に自立性があった。
実施例3の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:メタノール=1:7(質量比)の溶液をポリエチレングリコール400(和光純薬(株)製):メタノール=1:7(質量比)の溶液に代えた以外は、実施例3と同様にしてゲル状薄膜の自立膜を得た。
実施例3の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:メタノール=1:7(質量比)の溶液をグリセリン(和光純薬(株)製):メタノール=1:7(質量比)の溶液に代えた以外は、実施例3と同様にしてゲル状薄膜の自立膜を得た。
内容量10mLのスクリュー管に4ARM−PEG−ビニル−10Kを125mg、末端がチオール基の4官能ポリエチレングリコール(JENKEM USA社製:4ARM−SH−10(商品名)、分子量10000Da)125mg、IRGACURE2959(Ciba製)2.5mg、蒸留水4.75gを加え、撹拌し、気泡が無くなるまで静置した。石英板の上にPS20(商品名)(セプロ社製、ポリスルホン製UF複合膜)をポリスルホン層が上向きになるように置き、その上に溶液をのせ、もう一枚の石英板を重ねて挟んだ。露光機(UVシステムズ製:FUSION VPS−6)で1512mJ/cm2(254nmにおける露光量)照射し、12時間静置した。石英板をゆっくりとはがし、得られた膜をメタノールに12時間浸漬した後、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:メタノール=1:7(質量比)の溶液に浸漬した。浸漬後、70℃、2時間真空下で乾燥することでメタノール除去し、ゲル状薄膜の複合膜を得た。
実施例6の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(東京化成工業(株)製)に代えた以外は、実施例6と同様にしてゲル状薄膜の複合膜を得た。
内容量20mLのスクリュー管に4ARM−PEG−ビニル−10Kを500mg、末端がチオール基の4官能ポリエチレングリコール(JENKEM USA社製:4ARM−SH−10(商品名)、分子量10000Da)500mg、IRGACURE2959(商品名)(Ciba製)10mg、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド2.33g、塩化メチレン7.17gを加え、撹拌し、気泡が無くなるまで静置した。溶液をゆっくりとシャーレに展開し、PAN50(商品名)(セプロ社製:ポリアクリロニトリルUF複合膜)のポリアクリロニトリル層のみにフロートコート(溶液表面に浮遊・接触させ連続的に引き上げる方法)で塗工を行った。コート後、露光機(UVシステムズ製:FUSION VPS−6)を用い、1512mJ/cm2(254nmにおける露光量)で照射した。照射後12時間静置した後、得られた膜に対して上記と同様に再び溶液でフロートコート、露光の工程を行った。得られた膜を12時間静置後、70℃で12時間真空乾燥を行い、ゲル状薄膜の複合膜を得た。
内容量20mLのスクリュー管に4ARM−PEG−ビニル−10Kを500mg、末端がチオール基の4官能ポリエチレングリコール(JENKEM USA社製:4ARM−SH−10(商品名)、分子量10000Da)500mg、IRGACURE2959(商品名)(Ciba製)10mg、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド2.33g、塩化メチレン7.17gを加え、撹拌し、気泡が無くなるまで静置した。PVDF製中空糸UF膜(旭化成ケミカルズ(株)製)を20cmの長さに切り、先端を圧着して封止し、2gの重りをつけ、溶液に浸漬し垂直に引き上げることでディップコートを行った。コート後、中空糸を金属製の枠に貼り付け、中空糸の全面を数回に分けて露光機(UVシステムズ製:FUSION VPS−6)で1512mJ/cm2(254nmにおける露光量)照射した。照射後12時間静置した後、得られた膜に対して上記と同様に再び溶液でディップコート、露光の工程を行った。得られた膜を12時間静置後、70℃で12時間真空乾燥を行い、ゲル状薄膜の複合膜を得た。
実施例6のメタノールに12時間浸漬する工程と1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:メタノール=1:7(質量比)の溶液に浸漬する工程とを行わなかった以外は、実施例6と同様にして複合膜を得た。
文献(Journal of American Chemical Society (2005)、127号、4976〜4983頁)を参考とし、内容量10mLのスクリュー管にメタクリル酸メチル(東京化成工業(株)製)1.5g、エチレングリコールジメタクリラート(東京化成工業(株)製)59mg、2,2’−アゾビス(イソ ブチロニトリル)(東京化成工業(株)製)49mg、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド3.5g加え、溶解した。ガラス板を2枚用い、スペーサーとしてPS20(セプロ社製、膜厚190μm程度)を2枚重ねて挟んだ。配合した溶液をガラス板の間の隙間に流し込み、100℃、12時間加熱した。加熱後、ガラス板をゆっくりとはがし、自立膜を得た。
比較例2のメタクリル酸メチル(東京化成工業(株)製)1.5gを500mgに、エチレングリコールジメタクリラート(東京化成工業(株)製)59mgを20mgに、2,2’−アゾビス(イソ ブチロニトリル)(東京化成工業(株)製)49mgを32mgに、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド3.5gを4.5gに代えた以外は、比較例2と同様にして自立膜を得た。
旭化成ケミカルズ社製ポリエチレン多孔質膜ハイポア(登録商標)NB630(膜厚30μm)に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを十分に染み込ませ、表面の液体をキムワイプでふき取り、多孔質支持体に液体を染み込ませた多孔質含浸液膜を作製した。
比較例4の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラートを代えた以外は、比較例4と同様にして多孔質含浸液膜を作製した。
特許文献5を参考とし、ゲル状薄膜を作製した。内容量10mLのスクリュー管に、末端がN−ヒドロキシスクシンイミジル基の4官能ポリエチレングリコールであるSUNBRIGHT PTE−100GS(商品名)(日本油脂(株)製:分子量 10000Da)260mg、リン酸バッファー(pH=7.72)0.40g、リン酸クエン酸バッファー(pH=6.42)0.40g、蒸留水2.44gを加え混合しA液とした。また、内容量10mLのスクリュー管に、末端がアミノ基の4官能ポリエチレングリコールであるSUNBRIGHT PTE−100PA(商品名)(日本油脂(株)製:分子量10000Da)260mg、リン酸バッファー(pH=7.72)0.81g、蒸留水2.44gを加え混合しB液とした。A液とB液とを混合し、シャーレに展開し、PAN50(商品名)(セプロ社製:ポリアクリロニトリルUF複合膜)のポリアクリロニトリル層のみにフロートコート(溶液表面に浮遊・接触させ連続的に引き上げる方法)で塗工を行った。約10分後にゲル化は進行し、溶液は高粘性液体となり、最終的に硬化した。ゲル化が経時的に進行したため、PAN50に均一にフロートコートすることができなかった。
内容量10mLのスクリュー管に、末端がN−ヒドロキシスクシンイミジル基の4官能ポリエチレングリコールであるSUNBRIGHT PTE−100GS(商品名)(日本油脂(株)製:分子量 10000Da)111mg、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド260mg、塩化メチレン2.7gを加え混合しC液とした。また、別の内容量10mLのスクリュー管に、末端がアミノ基の4官能ポリエチレングリコールであるSUNBRIGHT PTE−100PA(商品名)(日本油脂(株)製:分子量10000Da)111mg、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド260mg、塩化メチレン2.7gを加え混合しD液とした。C液とD液とを混合し、シャーレに展開し、PAN50(商品名)(セプロ社製:ポリアクリロニトリルUF複合膜)のポリアクリロニトリル層のみにフロートコート(溶液表面に浮遊・接触させ連続的に引き上げる方法)で塗工を行った。C液とD液とを混合後、素早くゲル化が進行し硬化したため、PAN50に均一にフロートコートすることができなかった。
比較例7のコーティング方法をフロートコートからディップコートに変更し、PAN50をPVDF製中空糸UF膜(旭化成ケミカルズ(株)製)に変更した以外は、比較例7と同様にしてゲル状薄膜を作製した。ディップコートは、PVDF製中空糸UF膜を20cmの長さに切り、先端を圧着して封止し、2gの重りをつけ、溶液に浸漬し垂直に引き上げることで行った。先端を封止し2gの重りをつけ、溶液に浸漬して行った。C液とD液とを混合後、素早く反応が進行し硬化したため、均一にディップコートすることはできなかった。
実施例1〜実施例5のゲル状薄膜の自立膜については、次の方法で液体含有率を測定した。まず、ゲル状薄膜の質量を正確に計測し(計測値をW1とする)、薄膜を過剰量のメタノールに24時間浸漬した後、12時間70℃真空乾燥を行い、薄膜の質量を再び計測した(計測値をW2とする)。液体含有率(質量%)=(W1−W2)/W1×100の式により液体含有率を計算した。実施例6〜7のゲル状薄膜の複合膜については、同じ組成の自立膜を作製し、実施例1〜実施例5と同様の方法で液体含有率を測定した。比較例1〜比較例3のゲル状薄膜については、モノマーの配合量から液体含有率を計算で算出した。結果を表1〜2にまとめた。
実施例1〜実施例5、比較例2〜比較例3のゲル状薄膜の自立膜については膜厚計(DIGIMATIC INDICATOR IDF−130:ミツトヨ(株)製)により膜厚を測定した。実施例6〜7、比較例1のゲル状薄膜の複合膜については、走査型電子顕微鏡(JCM−5100型、JEOL製)によって、断面を観察することによって測定した。結果を表1〜2にまとめた。
実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例5において、分離対象ガスが高圧条件での耐圧性、透過測定を図3、図4の装置を用い実施した。50℃、ドライ条件(0%湿度)下で、40%二酸化炭素(CO2)/60%窒素(N2)の混合ガスを用い、差圧8.0MPa条件にて測定した。耐圧性に関しては、12時間測定後、液体の漏出が生じず、透過測定可能なものを「OK」とした。液体の漏出はサンプルセル17の焼結板24又はPermeate出口25付近の内壁に液滴が観察されるかで判断した。透過測定が可能かどうかは、膜に欠陥が生じず、8.0MPaの差圧を保つことができるかどうかで判断した。一方、液体の漏出や、物理的な欠陥が発生し測定が不可能な場合を「NG」とした。また、透過測定に関しては、透過流量を石鹸膜流量計20で測定し、透過ガス比率をサンプルポート19からシリンジでガスを採取しガスクロマトグラフィーで測定した。測定値よりCO2の透過係数(PCO2)を、測定値及び下記式(12)より理想分離係数(α*CO2/N2)をそれぞれ算出して比較した。結果を表1〜2に示す。なお、下記式(12)中、Feedは分離対象ガスを、Permeateは透過ガスを表す。
実施例1〜実施例7において、低圧差圧での透過測定を実施した。ジーティーアールテック社製差圧式ガス・水蒸気透過率測定装置(GTR30XAAS)にて、相対湿度0%、50℃の条件下で、40%二酸化炭素(CO2)/60%窒素(N2)の混合ガス、40%二酸化炭素(CO2)/60%メタン(CH4)の混合ガスを用い測定し、二酸化炭素の透過係数(PCO2)、理想分離係数(α*CO2/N2、α*CO2/CH4)を比較した。結果を表1〜2に示す。
P:透過係数(1Barrer=1×10−10[cm3(STP)cm/cm2/s/cmHg)
α*:理想分離係数
emimTFSA:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
emimBF4:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート
PEG400:ポリエチレングリコール400
−:未実施
測定不可能:膜に欠陥やピンホール等が生じ、測定に必要な差圧を維持できなくなった状態。
実施例8〜実施例9、比較例6〜比較例8について、コーティング性を評価した。支持体上に欠陥なくコートできたものを「OK」、できなかったものを「NG」とした。CO2とN2の分離係数が15以上のものを欠陥なくコートできたと判断した。実施例8、比較例6、比較例7についてはジーティーアールテック社製差圧式ガス・水蒸気透過率測定装置(GTR30XAAS)にて、相対湿度0%、50℃の条件下で、40%二酸化炭素(CO2)/60%窒素(N2)の混合ガスを用い評価した。実施例9、比較例8については、ジーティーアールテック社製等圧式ガス透過率測定装置(GTR20FMAK)にて、相対湿度0%、50℃の条件下で、40%二酸化炭素(CO2)/60%窒素(N2)を用い評価した。結果を表3に示す。
Claims (13)
- 下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物とのエンチオール反応によって得られるポリマーと、
イオン液体、グリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種の液体と、
を含むゲル状薄膜であって、
前記液体の含有率が、前記ゲル状薄膜の全質量を基準として50質量%〜70質量%である、ゲル状薄膜。
(式(1)中、n1は15〜250の整数であり、m1は3〜20の整数であり、X1はm1価の有機基であり、Y1は炭素数1〜15の炭化水素基、−CO−R11−、−CO−NH−R11−、−R12−O−R13−、−R12−NH−R13−、−R12−CO−R13−、−R12−COO−R13−、−R12−CO−NH−R13−、又は−R12−O−CO−NH−R13−であり、R11〜R13は各々独立に炭素数1〜10の炭化水素基である。n1同士、Y1同士は各々互いに同一でも異なっていてもよい。)
(式(2)中、n2は15〜250の整数であり、m2は3〜20の整数であり、X2はm2価の有機基であり、Y2は炭素数1〜15の炭化水素基、−CO−、−CO−NH−、−CO−R21−、−CO−NH−R21−、−R22−O−R23−、−R22−NH−R23−、−R22−CO−R23−、−R22−COO−R23−、−R22−CO−NH−R23−、又は−R22−O−CO−NH−R23−であり、R21〜R23は各々独立に炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2は炭素−炭素二重結合を有する1価の有機基である。n2同士、Y2同士、R2同士は各々互いに同一でも異なっていてもよい。) - 前記式(1)で表される化合物が下記式(3)で表される化合物であり、前記式(2)で表される化合物が下記式(4)で表される化合物である、請求項1に記載のゲル状薄膜。
(式(3)中、n1は15〜250の整数であり、Y1は炭素数1〜15の炭化水素基、−CO−R11−、−CO−NH−R11−、−R12−O−R13−、−R12−NH−R13−、−R12−CO−R13−、−R12−COO−R13−、−R12−CO−NH−R13−、又は−R12−O−CO−NH−R13−であり、R11〜R13は各々独立に炭素数1〜10の炭化水素基である。n1同士、Y1同士は各々互いに同一でも異なっていてもよい。)
(式(4)中、n2は15〜250の整数であり、Y2は炭素数1〜15の炭化水素基、−CO−、−CO−NH−、−CO−R21−、−CO−NH−R21−、−R22−O−R23−、−R22−NH−R23−、−R22−CO−R23−、−R22−COO−R23−、−R22−CO−NH−R23−、又は−R22−O−CO−NH−R23−であり、R21〜R23は各々独立に炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2は炭素−炭素二重結合を有する1価の有機基である。n2同士、Y2同士、R2同士は各々互いに同一でも異なっていてもよい。) - 前記液体の融点が50℃以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル状薄膜。
- 前記液体の沸点が150℃以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゲル状薄膜。
- 前記イオン液体を構成するカチオンが、イミダゾリウムカチオン又はアンモニウムカチオンであり、
前記イミダゾリウムカチオンは、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリル基、アミノアルキル基又はフルオロアルキル基を有し、
前記アンモニウムカチオンは、A1A2A3A4N+で表され、
前記A1、A2、A3及びA4は、各々独立にフェニル基、無置換の炭素数1〜15個のアルキル基、又は、ヒドロキシル基、エーテル基、アリル基、アミノアルキル基若しくはフルオロアルキル基を有する炭素数1〜15個のアルキル基である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゲル状薄膜。 - 前記イオン液体を構成するアニオンが、塩素イオン、臭素イオン、四フッ化ホウ素イオン、硝酸イオン、チオシアネートイオン、ジシアノアミドイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン及びビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドイオンから選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のゲル状薄膜。
- 100nm〜500μmの膜厚を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のゲル状薄膜。
- 多孔質支持体と、該多孔質支持体の表面上に積層された請求項1〜8のいずれか一項に記載のゲル状薄膜と、を備える複合膜。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のゲル状薄膜、又は請求項9に記載の複合膜を備える気体分離膜。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のゲル状薄膜の製造方法であって、
前記エンチオール反応を光及び/又は熱により行う工程を備える、ゲル状薄膜の製造方法。 - 前記エンチオール反応を重合開始剤の存在下で行う、請求項11に記載のゲル状薄膜の製造方法。
- 前記式(1)で表される化合物と前記式(2)で表される化合物とを含む溶液を多孔質支持体の表面上にコーティングする工程と、
前記表面上で前記エンチオール反応を行う工程と、
を備える、請求項9に記載の複合膜の製造方法。
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