特許文献1に記載の軸流タービンは、各作動流体流路の面積比に応じた流量制御が可能であるものの、水中機器のように作動条件が大きく変動する機器の動力として使用した場合、上述のように、水深等の作動環境に応じて圧力比等の作動条件が大きく変動するため、タービン効率が低下しやすい。
本発明は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、作動条件の大きな変動に対応可能なタービンディフューザ、及び該タービンディフューザを備える軸流タービンを提供することである。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る軸流タービンのタービンディフューザは、軸流タービンのタービンディフューザであって、前記軸流タービンのタービン動翼群の間を通過した流体を排出するための第1排出流路部と、前記軸流タービンの周方向において前記第1排出流路部とは異なる領域に設けられ、前記タービン動翼群の間を通過した流体を排出するための第2排出流路部と、を備え、前記第1排出流路部と前記第2排出流路部とは、前記軸流タービンの軸方向に沿った断面における流路形状が互いに異なる。
上記(1)に記載のタービンディフューザによれば、軸方向に沿った断面における第1排出流路部と第2排出流路部の流路形状をそれぞれ異なる流速に適した形状とすれば、流速の変化に応じて第1排出流路部と第2排出流路部のうち該流速に適した排出流路部を使用することにより、流速の変化にともなうタービンディフューザの排気損失の増大を抑制することができる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のタービンディフューザにおいて、前記第1排出流路部及び前記第2排出流路部は、それぞれ、前記タービン動翼群の下流側に設けられるとともに、前記軸方向に沿って下流側に向かうにつれて前記軸流タービンの径方向の流路幅が単調増加するよう形成され、前記径方向における前記第1排出流路部の流路幅のうち、前記第1排出流路部の入口位置での流路幅をD1、前記第1排出流路部の出口位置での流路幅をD2とし、前記径方向における前記第2排出流路部の流路幅のうち、前記第2排出流路部の入口位置での流路幅をD3、前記第2排出流路部の出口位置での流路幅をD4とすると、前記流路幅D1と前記流路幅D2の比D1/D2は、前記流路幅D3と前記流路幅D4の比D3/D4の比と異なる。
上記(2)に記載のタービンディフューザによれば、第1排出流路部及び第2排出流路部は、それぞれ、軸方向に沿って下流側に向かうにつれて径方向の流路幅が単調増加するよう形成されているため、タービン動翼の出口位置での流速が亜音速又は遷音速となる流体が第1排出流路部又は第2排出流路部に流入すると、タービンディフューザの静圧回復性能が良好に発揮される。
また、流速が比較的大きい流体(例えば、タービン動翼の出口位置での流速が亜音速又は遷音速の流体のうち該流速が基準速度以上の流体)を比D1/D2と比D3/D4のうち大きい方に対応する排出流路部に流入させ、流速が比較的小さい流体(例えば、タービン動翼の出口位置での流速が亜音速又は遷音速の流体のうち該流速が上記基準速度未満の流体)を比D1/D2と比D3/D4のうち小さい方に対応する排出流路部に流入させれば、流速の変化に伴うタービンディフューザの排気損失の増大を効果的に抑制することができる。なお、本明細書では、「超音速」とはマッハ数が1.3以上であることを意味し、「遷音速」とはマッハ数が0.8以上1.3未満であることを意味し、「亜音速」とは、マッハ数が0.3以上0.8未満であることを意味するものとする。また、「単調減少」とは、広義の単調減少を意味し、「前記軸流タービンの軸方向に沿って下流側に向かうにつれて前記タービンの径方向の流路幅が単調減少する」とは、軸流タービンの軸方向に沿って下流側に向かうにつれてタービンの径方向の流路幅が減少する場合のみならず、該流路幅が一定の区間を部分的に有する場合も含む意味で用いている。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のタービンディフューザにおいて、前記軸流タービンの軸方向に沿った断面において、前記第1排出流路部における前記径方向内側の流路壁の接線のうち、前記軸方向における第1位置での下流側への接線をL1とし、前記第2排出流路部における前記径方向内側の流路壁の接線のうち、前記軸方向における前記第1位置での下流側への接線をL2とすると、前記軸方向に対する前記接線L1のなす角度θ1は、前記軸方向に対する前記接線L2のなす角度θ2と異なる(ただし、前記軸方向に対して前記径方向外側への角度を正の値とし、前記軸方向に対して前記径方向内側への角度を負の値とする)。
上記(3)に記載のタービンディフューザによれば、第1排出流路部及び第2排出流路部は、それぞれ、軸方向に沿って下流側に向かうにつれて径方向の流路幅が単調増加するよう形成されているため、タービン動翼の出口位置での流速が亜音速又は遷音速となる流体が第1排出流路部又は第2排出流路部に流入すると、タービンディフューザの静圧回復性能が良好に発揮される。
また、タービンディフューザの排出流路を通過する流体は、タービン動翼の出口位置での流速の軸線周りの旋回成分が大きくなるにつれて、径方向内側の流路壁から流体が剥離しやすくなる。このため、上記(3)に記載のタービンディフューザによれば、タービン動翼の出口位置での流速の軸線周りの旋回成分が比較的大きい流体(例えば、該出口位置での流速が亜音速又は遷音速の流体のうち、該旋回成分が所定速度以上の流体)を、角度θ1と角度θ2のうち大きい方に対応する排出流路部に流入させ、上記旋回成分が比較的小さい流体(例えば、該出口位置での流速が亜音速又は遷音速の流体のうち、該旋回成分が所定速度未満の流体)を、比D1/D2と比D3/D4のうち小さい方に対応する排出流路部に流入させれば、径方向内側の流路壁からの流体の剥離を抑制し、流速の変化に伴うタービンディフューザの排気損失の増大を効果的に抑制することができる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のタービンディフューザにおいて、前記第1排出流路部は、前記タービン動翼群の下流側に設けられ、前記軸方向に沿って下流側に向かうにつれて前記軸流タービンの径方向の流路幅が単調減少するよう形成された単調減少部と、前記単調減少部の下流側に設けられ、前記軸方向に沿って下流側に向かうにつれて前記径方向の流路幅が単調増加するよう形成された単調増加部と、を含み、前記第2排出流路部は、前記タービン動翼群の下流側に設けられ、前記軸方向に沿って下流側に向かうにつれて前記径方向の流路幅が単調増加するよう形成されている
上記(4)に記載のタービンディフューザによれば、タービン動翼群におけるタービン動翼の出口位置での流速が超音速となる流体が第1排出流路部に流入すると、第1排出流路部に流入した該流体は単調減少部を経てから単調増加部を流れる。この際、流速が低下しにくい単調減少部で衝撃波の発生が抑制され、衝撃波の発生位置をタービン動翼群から離すことができる。したがって、タービンディフューザの排気損失の増大を抑制することができる。
また、上記(4)に記載のタービンディフューザによれば、第2排出流路部は軸方向に沿って下流側に向かうにつれて径方向の流路幅が単調増加するよう形成されているため、タービン動翼の出口位置での流速が亜音速となる流体が第2排出流路部に流入すると、タービンディフューザ6の静圧回復性能が効果的に発揮される。したがって、タービンディフューザの排気損失の増大を抑制することができる。
このように、上記(4)に記載のタービンディフューザによれば、水中機器の動力源として軸流タービンを使用する場合のように、タービン動翼の出口位置における流体の流速が亜音速から超音速まで幅広く変化する場合であっても、該出口位置での流速が超音速となる流体が第1排出流路部を流入させ、該出口位置での流速が亜音速となる流体を第2排出流路部に流入させれば、流速の変化に伴うタービンディフューザの排気損失の増大を抑制することができる。なお、本明細書において「単調増加」とは、広義の単調増加を意味し、「前記軸流タービンの軸方向に沿って下流側に向かうにつれて前記タービンの径方向の流路幅が単調増加する」とは、軸流タービンの軸方向に沿って下流側に向かうにつれてタービンの径方向の流路幅が増加する場合のみならず、該流路幅が一定の区間を部分的に有する場合も含む意味で用いている。
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載のタービンディフューザにおいて、前記単調減少部及び前記体調増加部は、前記タービン動翼群のタービン動翼における出口位置の翼高さよりも前記タービンの径方向の流路幅が狭いスロート部を形成する。
上記(5)に記載のタービンディフューザによれば、上述の衝撃波の発生を抑制する効果を高めてタービンディフューザの排気損失の増大を抑制することができる。
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れか1項に記載のタービンディフューザにおいて、前記軸流タービンの周方向において前記第1排出流路部及び前記第2排出流路部のそれぞれと異なる領域に設けられた少なくとも一つの非流路部を更に備える。
上記(6)に記載のタービンディフューザによれば、第1排出流路部から第2排出流路部への流体の周方向の移動、及び第2排出流路部から第1排出流路部への流体の周方向の移動を抑制し、タービンディフューザにおける排気損失の増大を抑制することができる。
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載のタービンディフューザにおいて、前記少なくとも一つの非流路部は、第1非流路部及び第2非流路部を含み、前記軸流タービンの周方向において、前記第1排出流路部、前記第1非流路部、前記第2排出流路部及び前記第2非流路部が順に設けられている。
上記(7)に記載のタービンディフューザによれば、第1排出流路部と第2排出流路部とが周方向において不連続となるため、第1排出流路部から第2排出流路部への流体の周方向の移動、及び第2排出流路部から第1排出流路部への流体の周方向の移動を防止し、タービンディフューザにおける排気損失の増大を抑制することができる。
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る軸流タービンは、上記(1)乃至(7)の何れか1項に記載のタービンディフューザと、前記タービン動翼群と、前記タービン動翼群の上流側に設けられたノズル翼群と、前記流体の流入先を前記第1排出流路部と前記第2排出流路部とで切り替えるよう構成された切替装置と、を備える。なお、本明細書において「流体の流入先を第1排出流路部と第2排出流路部とで切り替える」とは、「第1排出流路部のみに流体が流入する状態と第2排出流路部のみに流体が流入する状態とを切り替える」との意味に限らず、「第1排出流路部の流量が第2排出流路部の流量より多い状態と第1排出流路部の流量が第2排出流路部の流量より少ない状態とを切り替える」との意味も含む。
上記(8)に記載の軸流タービンによれば、切替装置を用いて流体の流入先を第1排出流路部と第2排出流路部とで切り替えることにより、流速の変化に応じて第1排出流路部と第2排出流路部のうち該流速に適した排出流路部を使用することができる。
例えば、上記(8)に記載の軸流タービンが上記(2)に記載のタービンディフューザを備える場合には、流速が比較的大きい流体(例えば、タービン動翼の出口位置での流速が亜音速又は遷音速となる流体のうち該流速が基準速度以上の流体)を第1排出流路部に流入させ、流速が比較的小さい流体(例えば、該出口位置での流速が亜音速又は遷音速となる流体のうち該流速が基準速度未満の流体)を第2排出流路部に流入させることにより、流速の変化にともなうタービンディフューザの排気損失の増大を効果的に抑制することができる。
また、上記(8)に記載の軸流タービンが上記(3)に記載のタービンディフューザを備える場合には、タービン動翼の出口位置での流速の軸線周りの旋回成分が比較的大きい流体(例えば、該出口位置での流速が亜音速又は遷音速の流体のうち、該旋回成分が所定速度以上の流体)を、角度θ1と角度θ2のうち大きい方に対応する排出流路部に流入させ、上記旋回成分が比較的小さい流体(例えば、該出口位置での流速が亜音速又は遷音速の流体のうち、該旋回成分が所定速度未満の流体)を、比D1/D2と比D3/D4のうち小さい方に対応する排出流路部に流入させることにより、径方向内側の流路壁からの流体の剥離を抑制し、流速の変化にともなうタービンディフューザの排気損失の増大を効果的に抑制することができる。
また、上記(8)に記載の軸流タービンが上記(4)に記載のタービンディフューザを備える場合には、超音速の流速を第1排出流路部に流入させ、亜音速又は遷音速の流体を第2排出流路部に流入させることにより、亜音速域(又は遷音速域)から超音速域にかけての流速の変化にともなうタービンディフューザの排気損失の増大を効果的に抑制することができる。
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る軸流タービンは、上記(2)に記載のタービンディフューザと、前記タービン動翼群と、前記タービン動翼群の上流側に設けられたノズル翼群と、前記流体の流入先を前記第1排出流路部と前記第2排出流路部とで切り替えるよう構成された切替装置と、を備える軸流タービンであって、前記比D1/D2は、前記比D3/D4より大きく、前記切替装置は、前記タービン動翼の出口位置での流速が第1流速(ただし、該第1流速は亜音速又は遷音速である。)以上となる前記流体を前記第1排出流路部に流入させ、前記タービン動翼の出口位置での流速が前記第1流速未満となる前記流体を前記第2排出流路部に流入させるように、前記流体の流入先を前記第1排出流路部と前記第2排出流路部とで切り替えるよう構成される。
上記(9)に記載の軸流タービンによれば、また、第1排出流路部における比D1/D2が第2排出流路部における比D3/D4よりも大きいため、タービン動翼の出口位置での流速が第1流速(ただし、該第1流速は亜音速又は遷音速である。)以上となる流体を第1排出流路部に流入させ、タービン動翼の出口位置での流速が第1流速未満の流体を第2排出流路部に流入させることにより、亜音速域から遷音速域での流速の変化に伴うタービンディフューザの排気損失の増大を効果的に抑制することができる。
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る軸流タービンは、請求項3に記載のタービンディフューザと、前記タービン動翼群と、前記タービン動翼群の上流側に設けられたノズル翼群と、前記流体の流入先を前記第1排出流路部と前記第2排出流路部とで切り替えるよう構成された切替装置と、を備える軸流タービンであって、前記角度θ1は前記角度θ2より大きく、前記切替装置は、前記タービン動翼の出口位置での流速の前記軸線周りの旋回成分が第2流速以上となる前記流体(ただし、前記出口位置での該流体の流速は亜音速又は遷音速である。)を前記第1排出流路部に流入させ、前記旋回成分が前記第2流速未満となる前記流体を前記第2排出流路部に流入させるように、前記流体の流入先を前記第1排出流路部と前記第2排出流路部とで切り替えるよう構成される。
タービンディフューザの排出流路を通過する流体は、タービン動翼の出口位置での流速の軸線周りの旋回成分が大きくなるにつれて、径方向内側の流路壁から剥離しやすくなる。このため、上記(10)に記載のように、第1排出流路部における角度θ1を第2排出流路部における角度θ2よりも大きくすれば、タービン動翼の出口位置での流速の旋回成分が第2流速以上となる流体(ただし、前記出口位置での該流体の流速は亜音速又は遷音速である。)を第1排出流路部に流入させ、タービン動翼の出口位置での流速が第2流速未満となる流体を第2排出流路部に流入させることにより、径方向内側の流路壁からの流体の剥離を抑制し、亜音速域から遷音速域での流速の変化に伴うタービンディフューザの排気損失の増大を効果的に抑制することができる。
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る軸流タービンは、請求項4又は5に記載のタービンディフューザと、前記タービン動翼群と、前記タービン動翼群の上流側に設けられたノズル翼群と、前記流体の流入先を前記第1排出流路部と前記第2排出流路部とで切り替えるよう構成された切替装置と、を備える軸流タービンであって、前記切替装置は、前記タービン動翼の出口位置での流速が超音速となる前記流体を前記第1排出流路部に流入させ、前記タービン動翼の出口位置での流速が亜音速又は遷音速となる前記流体を前記第2排出流路部に流入させるように、前記流体の流入先を前記第1排出流路部と前記第2排出流路部とで切り替えるよう構成される。
上記(11)に記載の軸流タービンによれば、タービン動翼の出口位置での流速が超音速となる流体は第1排出流路部に流入する。第1排出流路部に流入した該流体は単調減少部を経てから単調増加部を流れるため、流速が低下しにくい単調減少部での衝撃波の発生が抑制され、衝撃波の発生位置をタービン動翼群から離すことができる。これにより、タービンディフューザの排気損失の増大を抑制し、高いタービン効率を実現することができる。
また、上記(11)に記載の軸流タービンによれば、タービン動翼の出口位置での流速が亜音速又は遷音速となる流体は第2排出流路部に流入する。第2排出流路部は、軸方向に沿って下流側に向かうにつれて径方向の流路幅が単調増加するよう形成されているため、タービンディフューザの静圧回復性能が効果的に発揮され、軸流タービンの高いタービン効率を実現することができる。
したがって、水中機器の動力源として軸流タービンを使用する場合のように、タービン動翼の出口位置における流体の流速が亜音速から超音速まで幅広く変化する場合であっても、高いタービン効率を実現することが可能となる。
(12)幾つかの実施形態では、上記(8)乃至(11)の何れか1項に記載の軸流タービンにおいて、前記切替装置は、前記流体を前記ノズル翼群に供給可能な第1供給流路部と、前記流体を前記ノズル翼群に供給可能な第2供給流路部であって、前記第1供給流路部の流路出口とタービン周方向位置が異なる流路出口を有する第2供給流路部と、前記第1供給流路部を介して前記ノズル翼群に前記流体を供給するか前記第2供給流路部を介して前記ノズル翼群に前記流体を供給するかを切り替えるための少なくとも一つのバルブと、を含み、前記少なくとも一つのバルブの切り替え動作によって前記流体の流入先を前記第1排出流路部と前記第2排出流路部とで切り替えるよう構成される。
上記(12)に記載の軸流タービンによれば、少なくとも一つのバルブの切り替え動作によって、流速に応じた最適な第1排出流路部又は第2排出流路部を使用することができる。これにより、タービン動翼の出口位置における流体の流速が幅広く変化する場合であっても、簡易な構成で高いタービン効率を実現することができる。
(13)幾つかの実施形態では、上記(8)乃至(11)に記載の軸流タービンにおいて、前記切替装置は、前記タービンの回転軸線周りに前記タービンディフューザを回転させることにより、前記流体の流入先を前記第1排出流路部と前記第2排出流路部とで切り替えるよう構成される。
上記(13)に記載の軸流タービンによれば、上記(12)に記載の軸流タービンと比較して、第2供給流路部が不要となる。また、タービンディフューザを回転させて流速に応じた最適な第1排出流路部又は第2排出流路部を使用することにより、タービン動翼の出口位置における流体の流速が幅広く変化する場合であっても、高いタービン効率を実現することができる。
(14)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)に記載の軸流タービンにおいて、前記ノズル翼群は、遷音速用の第1ノズル翼群及び亜音速用の第2ノズル翼群を含み、
前記第1ノズル翼群は、前記軸流タービンの周方向において前記第1排出流路部と重なる領域に設けられ、前記第2ノズル翼群は、前記軸流タービンの周方向において前記第2排出流路部と重なる領域に設けられる。
上記(14)に記載の軸流タービンによれば、タービン動翼の出口位置での流速が遷音速となる流体が遷音速用の第1ノズル翼群及び上記第1排出流路部を通過し、タービン動翼の出口位置での流速が亜音速となる流体が亜音速用の第2ノズル翼群及び上記第2排出流路部を通過することが可能となる。これにより、タービン動翼の出口位置における流体の流速が亜音速から遷音速まで変化する場合であっても高いタービン効率を実現することができる。
(15)幾つかの実施形態では、上記(11)に記載の軸流タービンにおいて、前記ノズル翼群は、超音速用の第1ノズル翼群及び亜音速用又は遷音速用の第2ノズル翼群を含み、前記第1ノズル翼群は、前記タービンの周方向において前記第1排出流路部と重なる領域に設けられ、前記第2ノズル翼群は、前記軸流タービンの周方向において前記第2排出流路部と重なる領域に設けられる。
上記(15)に記載の軸流タービンによれば、タービン動翼の出口位置での流速が超音速となる流体が超音速用の第1ノズル翼群及び上記第1排出流路部を通過し、タービン動翼の出口位置での流速が亜音速又は遷音速となる流体が亜音速用又は遷音速用の第2ノズル翼群及び亜音速用又は遷音速用の第2排出流路部を通過することが可能となる。これにより、タービン動翼の出口位置における流体の流速が亜音速(又は遷音速)から超音速まで幅広く変化する場合であっても高いタービン効率を実現することができる。
なお、上記(15)における「前記第1ノズル翼群は、前記軸流タービンの周方向において前記第1排出流路部と重なる領域に設けられ、前記第2ノズル翼群は、前記タービンの周方向において前記第2排出流路部と重なる領域に設けられる」との表現は、換言すれば、「前記第1ノズル翼群は、軸流タービンの軸方向から視認したときに前記第1排出流路部と重なり、前記第2ノズル翼群は、軸流タービンの軸方向から視認したときに前記第2排出流路部と重なる」ことを意味する。同様に、本明細書では、任意のA及びBについて、「Aは軸流タービンの周方向においてBと重なる領域に設けられる」との表現は、換言すれば、「Aは軸流タービンの軸方向から視認したときにBと重なる」ことを意味するものとする。
(16)幾つかの実施形態では、上記(11)に記載の軸流タービンにおいて、前記単調減少部及び前記体調増加部は、前記タービン動翼群のタービン動翼における出口位置の翼高さよりも前記タービンの径方向の流路幅が狭いスロート部を形成し、前記タービンディフューザに流入する前記流体のマッハ数が超音速領域内で小さいほど、前記スロート部における前記タービンの径方向の流路幅を小さくするよう構成された流路幅調節機構を更に備える。
上記(16)に記載の軸流タービンによれば、タービンディフューザに流入する流体のマッハ数が超音速領域内で変化しても、タービンディフューザの排気損失の増大を抑制することができる。
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、作動条件の大きな変動に対応可能な軸流タービンのタービンディフューザ、及び該タービンディフューザを備える軸流タービンが提供される。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1は、一実施形態に係る軸流タービン100(100a)の断面構成の模式図である。図2は、他の実施形態に係る軸流タービン100(100b)の断面構成の模式図である。図1に示す軸流タービン100(100a)と図2に示す軸流タービン100(100b)とは、後述する切替装置10の具体的構成が異なる点を除き、基本的に同様の構成を備えている。
幾つかの実施形態では、例えば図1及び図2に示すように、軸流タービン100(100a,100b)は、タービン動翼群2を有するタービンロータ3と、タービン動翼群2の上流側に設けられたノズル翼群4を有するタービンノズル5と、タービンディフューザ6と、切替装置10とを備えている。
タービンディフューザ6は、タービン動翼群2の間を通過した流体を排出するための第1排出流路部12と、軸流タービン100の周方向において第1排出流路部12とは異なる領域に設けられ、タービン動翼群2の間を通過した流体を排出するための第2排出流路部14とを含む。なお、以下で単に「周方向」、「軸方向」、「径方向」と記載する場合は、それぞれ軸流タービン100の周方向、軸流タービン100の軸方向、軸流タービン100の径方向を意味するものとする。
第1排出流路部12は、タービン動翼群2の下流側に設けられ、軸方向に沿って下流側に向かうにつれて径方向の流路幅Dが単調減少するよう形成された単調減少部16と、単調減少部16の下流側に設けられ、軸方向に沿って下流側に向かうにつれて径方向の流路幅Dが単調増加するよう形成された単調増加部18と、を含む。すなわち、第1排出流路部12は、先細‐末広型の排出流路部である。単調減少部16及び単調増加部18は、タービン動翼群2のタービン動翼20における出口位置Poの翼高さHよりも径方向の流路幅Dが狭いスロート部22を形成する。
第2排出流路部14は、タービン動翼群2の下流側に設けられ、軸方向に沿って下流側に向かうにつれて径方向の流路幅Dが単調増加するよう形成されている。すなわち、第2排出流路部14は、末広型の排出流路部である。
切替装置10は、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が超音速となる流体を第1排出流路部12に流入させ、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が亜音速又は遷音速となる流体を第2排出流路部14に流入させるように、流体の流入先を第1排出流路部12と第2排出流路部14とで切り替えるよう構成される。
本発明者の鋭意検討の結果、水中機器の動力源として軸流タービンを使用すると、水深等の作動環境に応じて圧力比等の作動条件が大きく変動し、タービン動翼20の出口位置Poにおける流体の流速が亜音速から超音速まで幅広く変化する場合があり、タービン効率が低下しやすいことが明らかとなった。
この点、図1及び図2に示す軸流タービン100(100a,100b)によれば、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が超音速となる流体は第1排出流路部12に流入する。第1排出流路部12に流入した該流体は単調減少部16を経てから単調増加部18を流れるため、流速が低下しにくい単調減少部16で衝撃波の発生が抑制され、衝撃波の発生位置をタービン動翼群2から離すことができる。これにより、タービンディフューザ6の排気損失の増大を抑制し、高いタービン効率を実現することができる。
また、図1及び図2に示す軸流タービン100(100a,100b)によれば、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が亜音速又は遷音速となる流体は第2排出流路部14に流入する。第2排出流路部14は、軸方向に沿って下流側に向かうにつれて径方向の流路幅Dが単調増加するよう形成されているため、タービンディフューザ6の静圧回復性能が効果的に発揮され、軸流タービン100(100a,100b)の高いタービン効率を実現することができる。
このように、軸流タービン100(100a,100b)は、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が超音速となる流体を第1排出流路部12に流入させ、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が亜音速又は遷音速となる流体を第2排出流路部14に流入させるよう構成されている。したがって、水中機器の動力源として軸流タービン100を使用する場合のように、タービン動翼20の出口位置Poにおける流体の流速が亜音速から超音速まで幅広く変化する場合であっても、高いタービン効率を実現することが可能となる。また、上述のようにスロート部22の径方向の流路幅Dをタービン動翼20における出口位置Poの翼高さHよりも狭くすることにより、この効果を高めることができる。
一実施形態では、例えば図1に示すように、切替装置10は、第1供給流路部24と、第2供給流路部26と、第1バルブ28(流量制御弁)と、第2バルブ30(流量制御弁)と、第1バルブ28及び第2バルブ30の開閉を制御する制御部32とを備えている。第1供給流路部24は、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が超音速となる流体をノズル翼群4に供給可能な供給流路である。第2供給流路部26は、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が亜音速又は遷音速となる流体をノズル翼群4に供給可能な供給流路であり、第1供給流路部24の出口開口34と周方向位置が異なる出口開口36を有する。制御部32は、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、およびI/Oインターフェイスなどからなるマイクロコンピュータとして構成されている。
第1バルブ28は、第1供給流路部24に設けられており、第1バルブ28が開くと、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が超音速となる流体が第1供給流路部24からノズル翼群4及び第1排出流路部12に供給される。第2バルブ30は、第2供給流路部26に設けられており、第2バルブ30が開くと、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が超音速となる流体が第2供給流路部26からノズル翼群4及び第2排出流路部14に供給される。したがって、切替装置10は、第1供給流路部24を介してノズル翼群4及び第1排出流路部12に流体を供給する場合は、制御部32によって第1バルブ28を開放状態にするとともに第2バルブ30を閉鎖状態にする。また、切替装置10は、第2供給流路部26を介してノズル翼群4及び第2排出流路部14に流体を供給する場合は、制御部32によって第2バルブ30を開放状態にするとともに第1バルブ28を閉鎖状態にする。
このように、図1に示す実施形態では、切替装置10は、第1バルブ28及び第2バルブ30の開閉動作によって流体の流入先を第1排出流路部12と第2排出流路部14とで切り替えるよう構成されている。このため、簡易な構成で流速に応じて最適な第1排出流路部12又は第2排出流路部14を使用することができ、高いタービン効率を実現することができる。
図3は、一実施形態に係るタービンディフューザ6を軸方向から視た模式図であり、図1に示したタービンディフューザ6の構成例を示している。図4は、他の実施形態に係るタービンディフューザ6を軸方向から視た模式図であり、図1に示したタービンディフューザ6の他の構成例を示している。
幾つかの実施形態では、例えば図3及び図4に示すように、第1排出流路部12は、第1供給流路部24の出口開口34と周方向において重なる領域に設けられ、第2排出流路部14は、第2供給流路部26の出口開口36と周方向において重なる領域に設けられている。図3及び図4に示す実施形態では、タービンディフューザ6は、第1排出流路部12及び第2排出流路部14のそれぞれと周方向において異なる領域に設けられた少なくとも一つの非流路部(仕切り部)25を備える。これにより、第1排出流路部12から第2排出流路部14への流体の周方向の移動、及び第2排出流路部14から第1排出流路部12への流体の周方向の移動を抑制し、タービンディフューザ6における排気損失の増大を抑制することができる。
一実施形態では、例えば図4に示すように、上記少なくとも一つの非流路部25は、第1非流路部25a及び第2非流路部25bを含み、第1排出流路部12、第1非流路部25a、第2排出流路部14及び第2非流路部25bが周方向に順に設けられている。
これにより第1排出流路部12と第2排出流路部14とが周方向において不連続となるため、第1排出流路部12から第2排出流路部14への流体の周方向の移動、及び第2排出流路部14から第1排出流路部12への流体の周方向の移動を防止し、タービンディフューザ6における排気損失の増大を抑制することができる。
図5は、一実施形態に係るノズル翼群4を軸方向から視た模式図であり、図1に示したノズル翼群4の構成例を示している。図6は、他の実施形態に係るノズル翼群4を軸方向から視た模式図であり、図1に示したノズル翼群4の他の構成例を示している。
一実施形態では、例えば図5に示すように、ノズル翼群4は、超音速用と亜音速用(又は遷音速用)の何れか一方のノズル翼38のみから構成されてもよい。これにより、ノズル翼群4の構成を簡素化することができる。なお、図5に示す実施形態では、ノズル翼群4はノズル室40に設けられており、周方向においてノズル室40に隣接する領域は非送入部(仕切り部)42となっている。また、ノズル翼群4を構成する複数のノズル翼38の一部が第1供給流路部24の出口開口34と周方向において重なる領域に設けられ、複数のノズル翼38の他の一部が、第2供給流路部26の出口開口36と周方向において重なる領域に設けられている。
一実施形態では、例えば図6に示すように、ノズル翼群4は、超音速用(先細‐末広型)のノズル翼44からなる第1ノズル翼群46と、第1ノズル翼群46と周方向において異なる領域に設けられた亜音速用(先細型)又は遷音速用(先細型)のノズル翼48からなる第2ノズル翼群50とを含む。なお、図6に示す実施形態では、第1ノズル翼群46はノズル室52に設けられており、第2ノズル翼群50はノズル室54に設けられている。ノズル室52とノズル室54との間は、非送入部(仕切り部)56,58によって隔てられている。すなわち、ノズル室52、非送入部56、ノズル室54及び非送入部58は、周方向に順に設けられている。そして、第1ノズル翼群46は、第1供給流路部24の出口開口34と周方向において重なる領域に設けられ、第2ノズル翼群50は、第2供給流路部26の出口開口36と周方向において重なる領域に設けられている。
また、図6に示す第1ノズル翼群46は、周方向において図3又は図4に示す第1排出流路部12と重なる領域に設けられ、第2ノズル翼群50は、周方向において図3又は図4に示す第2排出流路部14と重なる領域に設けられている。これにより、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が超音速となる流体が第1ノズル翼群46及び第1排出流路部12を通過し、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が亜音速又は遷音速となる流体が第2ノズル翼群50及び第2排出流路部14を通過することが可能となる。これにより、高いタービン効率を実現することができる。
次に、図2に戻り、他の実施形態における切替装置10の構成について説明する。図2に示す実施形態では、切替装置10は、第1供給流路部24と、第1供給流路部24に設けられた第1バルブ28(流量制御弁)と、回転機構60と、制御部62を備えている。第1供給流路部24は、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が超音速となる流体と、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が亜音速又は遷音速となる流体とをノズル翼群4に選択的に供給可能な供給流路である。回転機構60は、タービンディフューザ6をタービンノズル5と一体で軸流タービン100(100b)の回転軸周りに回転させるよう構成されている。制御部62は、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、およびI/Oインターフェイスなどからなるマイクロコンピュータとして構成されており、第1バルブ28の開閉動作と、回転機構60によるタービンディフューザ6の上記回転とを制御する。
ここで、図7及び図8を用いて、図2に示した切替装置10の切替動作についてさらに説明する。図7は、タービンディフューザ6が第1位相にある場合の第1供給流路部24の出口開口34、第1排出流路部12及び第2排出流路部14の周方向における位置関係を示す図である。図8は、タービンディフューザ6が第2位相にある場合の第1供給流路部24の出口開口34、第1排出流路部12及び第2排出流路部14との周方向における位置関係を示す図である。
図7に示すように、タービンディフューザ6の第1位相は、タービンディフューザ6の第1排出流路部12が周方向において第1供給流路部24の出口開口34に重なる位相である。図8に示すように、タービンディフューザ6の第2位相は、タービンディフューザ6の第2排出流路部14が周方向において第1供給流路部24の出口開口34に重なる位相である。
制御部62は、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が超音速となる流体を第1供給流路部24から供給する場合、タービンディフューザ6の位相が図7に示す第1位相となるように回転機構60によってタービンディフューザ6を回転させる。これにより、該流体を第1排出流路部12に流入させることができる。
制御部62は、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が亜音速又は遷音速となる流体を第1供給流路部24から供給する場合、タービンディフューザ6の位相が図8に示す第2位相となるように回転機構60によってタービンディフューザ6を回転させる。これにより、該流体を第2排出流路部14に流入させることができる。
このように、図2、図7及び図8を用いて説明した実施形態では、切替装置10は、軸流タービン100の回転軸線周りにタービンディフューザ6を回転させることにより、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が超音速となる流体を第1排出流路部12に流入させ、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が亜音速又は遷音速となる流体を第2排出流路部14に流入させるよう構成されている。
これにより、図1に示した実施形態と比較して、第2供給流路部26が不要となる。また、図1に示した実施形態と同様に、流速に応じた最適な第1排出流路部12又は第2排出流路部14を使用することにより、高いタービン効率を実現することができる。
なお、図2に示した実施形態においても、タービンディフューザ6における第1排出流路部12と第2排出流路部14との間に、図4に示すように非流路部25a,25bを設けても良い。
次に、図9及び図10を用いて、図2に示したタービンディフューザ6が上記第1位相又は上記第2位相にあるときの、第1供給流路部24の出口開口34とタービンノズル5のノズル翼群4との周方向における位置関係を説明する。図9は、図2に示したタービンディフューザ6が第1位相にあるときの、第1供給流路部24の出口開口34とタービンノズル5のノズル翼群4との周方向における位置関係を示す図である。図10は、図2に示したタービンディフューザ6が第2位相にあるときの、第1供給流路部24の出口開口34とタービンノズル5のノズル翼群4との周方向における位置関係を示す図である。
図9に示すように、タービンディフューザ6が第1位相にあるときには、第1供給流路部24の出口開口34は、周方向において超音速用の第1ノズル翼群46と重なる。図10に示すように、タービンディフューザ6が第2位相にあるときには、第1供給流路部24の出口開口34は、周方向においてタービンノズル5の第2ノズル翼群50と重なる。
これにより、図1に示した第2供給流路部26を設けることなく、流速に応じた最適なノズル翼群46又はノズル翼群50を使用することが可能となり、タービン効率を向上することができる。
なお、図9及び図10では、ノズル翼群4が第1ノズル翼群46と第2ノズル翼群50とを有する場合を例に説明したが、図2に示した実施形態において、ノズル翼群4は、超音速用と亜音速用(又は遷音速用)の何れか一方のノズル翼38のみから構成されてもよい。
一実施形態では、例えば図11に示すように、軸流タービン100(100a,100b)は、タービンディフューザ6に流入する流体のマッハ数が超音速領域内で小さいほど、スロート部22における径方向の流路幅Dを小さくするよう構成された流路幅調節機構64を更に備える。図11に示す実施形態では、流路幅調節機構64がタービンディフューザ6の一部6aをスライド移動させることにより、スロート部22における径方向の流路幅Dを調節するよう構成されている。これにより、タービンディフューザ6に流入する流体のマッハ数が超音速領域内で変化しても、タービンディフューザ6の排気損失の増大を抑制することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、図1に示した実施形態では、切替装置10は、第1バルブ28及び第2バルブ30の切り替え動作によって流体の流入先を第1排出流路部12と第2排出流路部14とで切り替えるよう構成されているが、バルブの数はこれに限らない。例えば図12に示すように、切替装置10は、一つの三方弁66を用いて流体の流入先を第1排出流路部12と第2排出流路部14とで切り替えてもよい。このように、図1及び図12に示す切替装置10は、第1供給流路部24を介してノズル翼群4に流体を供給するか第2供給流路部26を介してノズル翼群4に流体を供給するかを切り替え可能な少なくとも一つのバルブ(28及び30、又は66)を有し、該少なくとも一つのバルブの切り替え動作によって流体の流入先を第1排出流路部12と第2排出流路部14とで切り替えるよう構成される。
また、主に図1及び図2を用いて説明した幾つかの実施形態では、切替装置10は、制御部32又は制御部62によって流体の流入先を第1排出流路部12と第2排出流路部14とで切り替えるよう構成されていたが、この切り替えを手動で行うよう構成されていてもよい。図12に示した実施形態においても、切替装置10は、この切り替えを制御部32によって行ってもよいし手動で行ってもよい。
また、主に図1、図2及び図12を用いて説明した軸流タービン100(100a〜100c)では、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が超音速となる流体を先細‐末広型の第1排出流路部12に流入させ、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が亜音速又は遷音速となる流体を末広型の第2排出流路部に流入させることにより、亜音速域(又は遷音速域)から超音速域にかけての流速の変化に伴うタービンディフューザの排気損失の増大を効果的に抑制できることを説明した。
ただし、第1排出流路部12及び第2排出流路部14の軸方向に沿った断面形状の組み合わせはこれに限らない。
例えば、図13に示す軸流タービン100(100d)のように、第1排出流路部12及び第2排出流路部14をそれぞれ末広型に(軸方向に沿って下流側に向かうにつれて径方向の流路幅が単調増加するように)形成してもよい。なお、図13に示す軸流タービン100(100c)の構成のうち特記しない部分は図1に示した軸流タービン100と同様である。
図13に示す軸流タービン100(100d)では、径方向における第1排出流路部12の流路幅のうち、第1排出流路部12の入口位置での流路幅をD1、第1排出流路部の出口位置での流路幅をD2とし、径方向における第2排出流路部14の流路幅のうち、第2排出流路部14の入口位置での流路幅をD3、第2排出流路部14の出口位置での流路幅をD4とすると、流路幅D1と流路幅D2の比D1/D2は、流路幅D3と流路幅D4の比D3/D4の比より大きくなっている。
このため、切替装置10を用いて、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が第1流速(ただし、該第1流速は亜音速又は遷音速である。)以上となる流体を第1排出流路部12に流入させ、タービン動翼20の出口位置Poでの流速が第1流速未満となる流体を第2排出流路部に流入させることにより、遷音速域から亜音速域にかけての流速の変化に伴うタービンディフューザの排気損失の増大を効果的に抑制することができる。
また、軸流タービン100(100d)は、軸方向に沿った断面において、図14に示すように、第1排出流路部12における径方向内側の流路壁8(壁面)の接線のうち、軸方向における第1位置P1での下流側への接線をL1とし、第2排出流路部14における径方向内側の流路壁9(壁面)の接線のうち、軸方向における第1位置P1での下流側への接線をL2とすると、軸方向に対する接線L1のなす角度θ1は、軸方向に対する接線L2のなす角度θ2より大きくなっている(ただし、軸方向に対して径方向外側への角度を正の値とし、軸方向に対して径方向内側への角度を負の値とする。)。換言すれば、第1排出流路部12における径方向内側の流路壁8と軸流タービンの軸線L0との距離をr1、第2排出流路部14における径方向内側の流路壁9と軸流タービンの軸線L0との距離をr2とすると、軸流タービン100(100c)の軸方向における少なくとも一部の範囲において、距離r1と距離r2との差分r1−r2が軸方向下流側に向かうにつれて大きくなっている。例えば、軸流タービン100(100c)の軸方向における少なくとも一部の範囲において、軸方向下流側に向かうにつれて距離r1が大きくなるように流路壁8を形成し、軸方向下流側に向かうにつれて距離r2が小さくなるように流路壁9を形成しても良い。
タービンディフューザ6の排出流路12,14を通過する流体は、タービン動翼20の出口位置Poでの流速の軸線L0周りの旋回成分が大きくなるにつれて、径方向内側の流路壁8,9から剥離しやすくなる。そこで、上記軸流タービン100(100d)では角度θ1を角度θ2より大きくしている。このため、切替装置10を用いて、タービン動翼20の出口位置Poでの流速の旋回成分が第2流速以上となる流体(ただし、該出口位置Poでの流体の流速は亜音速又は遷音速である。)を第1排出流路部12に流入させ、タービン動翼20の出口位置Poでの流速の旋回成分が第2流速未満となる流体を第2排出流路部14に流入させることにより、径方向内側の流路壁8,9からの流体の剥離を抑制し、亜音速域から遷音速域にかけての流速の変化に伴うタービンディフューザの排気損失の増大を効果的に抑制することができる。
なお、軸流タービン100(100d)のノズル翼群4は、図6に示すように、遷音速用の第1ノズル翼群68及び亜音速用の第2ノズル翼群70を含んでいてもよい。この場合、第1ノズル翼群68は、周方向において第1排出流路部12と重なる領域に設けられ、第2ノズル翼群70は、周方向において第2排出流路部14と重なる領域に設けられてもよい。これにより、亜音速域から遷音速域にかけての流速の変化に伴うタービン効率の低下を効果的に抑制することができる。ただし、軸流タービン100(100d)のノズル翼群4は、図5に示すように、遷音速用と亜音速用の何れか一方のノズル翼72のみを有していてもよい。
以上のように、主に図1、図2、図12及び図13を用いて説明した幾つかの実施形態では、第1排出流路部12と第2排出流路部14とは、軸流タービン100(100a〜100d)の軸方向に沿った断面における流路形状が互いに異なっている。このため、各実施形態に示したように、軸方向に沿った断面における第1排出流路部12と第2排出流路部14の流路形状をそれぞれ異なる流速に適した形状とすれば、流速の変化に応じて第1排出流路部12と第2排出流路部14のうち該流速に適した排出流路部を使用することにより、流速の変化にともなうタービンディフューザの排気損失の増大を効果的に抑制することができる。
なお、流速の変化が大きい軸流タービンの例として水中機器の軸流タービンを例示したが、各実施形態で説明した軸流タービン100(100a〜100d)は、水中機器に限らず、流速の変化が大きい蒸気タービン全般に好適に適用することができる。