JP6274172B2 - 免震テーブル装置 - Google Patents
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一般的な免震テーブル装置の原理図を図1に示す。図1では、テーブル板支持機構にころがり支承が用いられている。
図1の免震テーブル装置の固有周期Tnは、減衰力の影響を無視すると
Tn=2π(m/k)1/2 (秒)
で与えられる。ここで、mは免震テーブル装置可動部と搭載機器の合計質量を表し、kは元位置復帰用ばねの合計ばね定数を表す。
1995年1月に発生した阪神大震災、2004年10月に発生した新潟県中越地震、あるいは2011年3月に発生した東日本大震災における地震波は、周期が0.2〜1秒程度の短周期成分が卓越した地震波であった。このような短周期卓越成分を持つ通常の地震波に対しては、搭載機器を含む免震テーブル装置の固有周期を2〜4秒程度に設計することで、搭載テーブル板及び搭載物の加速度を1/5〜1/10程度に低減できる(後掲の特許文献2を参照)。一般の免震テーブル装置では、短周期成分が卓越した通常の地震波を対象としたものが多い。
「卓越成分」とは:地震波は種々の周期を持つ波が合成された不規則波であるが、その内の特に強い周期成分のことを「卓越成分」と言う。又、卓越成分の周期が2秒以上の地震波を長周期地震波と呼んでいる。
この共振を抑制する対策としては、摩擦ダンパー等のダンパーの抵抗力を、通常の地震波に対する抵抗力の何倍かに大きくすることが考えられる。しかしながら、ダンパーの抵抗力をこのように大きくすると、通常の地震波に対する免震効果(加速度低減効果)は低下してしまう。
従って、通常の地震波に対する免震効果を低下させることなく、長周期地震波による免震テーブル装置の共振を抑制することが必要となる。
通常の地震波に対する免震効果を低下させることなく、長周期地震波による免震テーブル装置の共振を回避するための他の方法は、一定相対変位まではばねの強さ(ばね定数)が小さく、一定相対変位を超えるとばねの強さが増して、固有周期が変化するような、非線形復元力特性を持つばね機構を用いることである。
摩擦ダンパーは、例え摩擦力が一定のものであっても非線形ダンパーの部類に属するが、ここでは、相対変位に応じて摩擦力が変化する摩擦ダンパーを非線形摩擦ダンパーと呼び、このような特性を非線形摩擦力特性と呼ぶことにする。
しかしながら、X方向及びY方向に用いられるリニアガイドは、精密に加工された2本のガイド軸を厳密に平行に配置して、その上を可動部(リニアベアリング)が滑らかに移動するように製作しなければならないので、製作が難しく、製作費が高価になるという短所を持っている。
又、上記文献1のX方向及びY方向用非線形摩擦ダンパーは、中央の水平部と両側のテーパー部を有する精密加工されたシャフトを用いるので、製作が容易でないという短所を持っている。
本発明は、耐荷重性能に優れた製作容易なX−Yレール機構を提供し、且つ通常の地震波に対しては高い免震効果与えると共に、簡単な構造で、長周期地震波による免震テーブル装置の共振を抑制できるような、非線形摩擦力機構及び非線形復元力機構を持つ水平免震テーブル装置を提供することを、その目的とする。
本発明で用いる摩擦ダンパーは、構造が簡単で、製作が容易である。
以下、本発明の第1実施形態に係わる免震テーブル装置100を、図3乃至図7を参照して説明する。
図4に示すように、基礎部は、基礎板1と、X方向ガイド軸保持部材1a、1bと、1本のX方向ガイド軸5と、複数個のX方向リニアベアリングケース7(7a、7b、7c)と、X方向コイルばね6a、6b、とによって構成されている。
図3乃至図6は、X方向コイルばねに不等ピッチコイルばねを用いた場合、を示している。
X方向移動ステージの本体は、X方向移動テーブル板2である。このX方向移動テーブル板2の上面には、Y方向移動ステージのための1本のY方向ガイド軸8と、このY方向ガイド軸8の両端を支持するY方向ガイド軸保持部材2a、2bと、複数個のY方向リニアベアリングケース10(10a、10b、10c)と、Y方向コイルばね9a、9b、とが装備されている。
又、粘弾性板12a、12bは、搭載物(図示せず)の重量をX方向ガイド軸5とフリーベア13乃至16とで分担して支えるために必要である。
図3乃至図6は、Y方向コイルばねに不等ピッチコイルばねを用いた場合、を示している。
球体受け13bと自由回転球体13cの間のすき間には、自由回転球体13cの回転を滑らかにするためにグリースが挿入されているが、多数の小球が挿入されることもある。
13以外のフリーベアも、図7(A)と全く同様に構成されている。
圧縮ばね17bは、ブレーキシュー17eと基礎板1の間で適当な一定摩擦力を発生するように、その長さとばね定数が設定されている。
17以外の摩擦ダンパーも、図7(B)と全く同様に構成されている。
図3乃至図6に示すように、Y方向移動ステージは、前述したX方向移動ステージの下半分に似た構造を有し、
Y方向移動テーブル板3と、スペーサー19a、19bと、粘弾性板20a、20bと、複数個のフリーベア21乃至24と、複数個の摩擦ダンパー25、26、とから構成されている。
又、粘弾性板20a、20bは、搭載物(図示せず)の重量をY方向ガイド軸8とフリーベア21乃至24とで分担して支えることができるように、その厚さが調整されている。各フリーベアの構造は、図7(A)に示したものと同様である。
摩擦ダンパー25、26の摩擦力は、Y方向移動テーブル板3のY方向の振動を抑制するように、圧縮ばね17bによって適正に調整されている。
搭載テーブル板4は機器を搭載するためのテーブル板で、その下面中央部は、図5に示す如く、ボルト又は接着剤によってY方向移動テーブル板3に固着される。
次に、第2実施形態を、図8及び図9を参照して説明する。
ここで、前述した第1実施形態の場合と同一の構成部材については、同一の符号を用いることにする。
X方向短コイルばね37aの一端はX方向ガイド軸保持部材1aに固着され、他端はガイド軸に挿通しているX方向スライダー35aに固着されている。更に、X方向スライダー35aの下面には、X方向硬化用摩擦ダンパー39a、39bが2本装着されている。摩擦ダンパーを2本にした理由は、X方向スライダーのX方向ガイド軸回りの回転を防ぐためである。
他のX方向短コイルばね37b及びY方向短コイルばね38a,38bも、短コイルばね37aと同様に、ガイド軸保持部材とスライダーの間に取り付けられている。それぞれのスライダー35b、36a,36bの下面には、硬化用摩擦ダンパー(40a,40b)、(41a,41b)、(42a,42b)が2本ずつ装着されている。
短コイルばねは、線形ばねであってもよく、不等ピッチコイルばねや円錐コイルばねのような非線形ばねであってもよい。又、硬化用摩擦ダンパーのブレーキシューの横幅を広くすれば、各スライダーに取り付ける硬化用摩擦ダンパーは、1本であってもよい。
Y方向についても、X方向と同様である。これによって、X方向、Y方向共に、図2(B)に示すような折れ線状の復元力特性が得られる。
図1の振動系はX方向に対する振動系であるが、Y方向についても全く同様である。従って、免震テーブル装置100及び200のX方向及びY方向の運動は、図1に示すような振動系の運動方程式に、地震波のX方向成分及びY方向成分を代入して求めることができる。又、任意方向から到来する地震波を受けたときの免震テーブル装置100及び200の任意方向の運動は、地震波のX方向成分及びY方向成分を、それぞれX方向の運動方程式及びY方向の運動方程式に代入して解を求め、それらの解をベクトル的に合成して求めることができる。
又、X方向及びY方向の復元力特性が図2(B)に示すような折れ線型非線形特性を有するならば、X方向とY方向のみならず、任意方向からの長周期地震波に対しても、共振を回避する効果を持つことになる。
1‥‥基礎板
1a,1b‥‥X方向ガイド軸保持部材
2‥‥X方向移動テーブル板
2a,2b‥‥Y方向ガイド軸保持部材
3‥‥Y方向移動テーブル板
4‥‥搭載テーブル板
5‥‥X方向ガイド軸
6a,6b‥‥X方向コイルばね
7(7a,7b,7c)‥‥X方向リニアベアリングケース(X方向可動部)
8‥‥Y方向ガイド軸
9a,9b‥‥Y方向コイルばね
10(10a,10b,10c)‥‥Y方向リニアベアリングケース(Y方向可動部)
11a,11b,19a,19b‥‥スペーサー
12a,12b,20a,20b‥‥粘弾性板
13,14,15,16,21,22,23,24‥‥フリーベア
17,18,25,26‥‥摩擦ダンパー
27a,27b,27c,27d,29a,29b,29c,29d,31a,31b,31c,31d,33a,33b,33c,33d‥‥U字形ばね取付部材
28a,28b,30a,30b‥‥X方向U字形ばね
32a,32b,34a,34b‥‥Y方向U字形ばね
35a,35b‥‥X方向スライダー
36a,36b‥‥Y方向スライダー
37a,37b‥‥X方向短コイルばね
38a,38b‥‥Y方向短コイルばね
39a,39b,40a,40b‥‥X方向硬化用摩擦ダンパー
41a,41b,42a,42b‥‥Y方向硬化用摩擦ダンパー
Claims (5)
- 平坦な基礎板上に、保持部材によって両端を水平に保持された1本のX方向ガイド軸と、前記X方向ガイド軸上を走行するX方向可動部と、このX方向可動部に固着されて可動部と一体となって基礎板上をX方向に走行する幅広いX方向移動テーブル板と、前記X方向移動テーブル板の下面でX方向ガイド軸を挟んだ左右端部に取り付けられて基礎板に接する複数個のフリーベア、とによって構成されるX方向移動機構と、
X方向移動テーブル板上のY方向に、保持部材によって両端を水平に保持された1本のY方向ガイド軸と、前記Y方向ガイド軸上を走行するY方向可動部と、このY方向可動部に固着されて可動部と一体となってX方向移動テーブル板上をY方向に走行する、幅のあるY方向移動テーブル板と、前記Y方向移動テーブル板の下面でY方向ガイド軸を挟んだ左右端部に取り付けられてX方向移動テーブル板に接する複数個のフリーベア、とによって構成されるY方向移動機構とを備え、
前記Y方向移動テーブル板上に機器を搭載するための搭載テーブル板を固着装備したことを特徴とする免震テーブル装置。 - 請求項1に記載の免震テーブル装置において、
前記X方向移動テーブル板の下面に、複数個の摩擦ダンパーを、前記基礎板に接触するように固着装備し、更に、前記Y方向移動テーブル板の下面に、複数個の摩擦ダンパーを、前記X方向移動テーブル板に接触するように固着装備したことを特徴とする免震テーブル装置。 - 請求項1又は2に記載の免震テーブル装置において、
前記X方向ガイド軸保持部材と前記X方向可動部の間、及び前記Y方向ガイド軸保持部材と前記Y方向可動部の間に、圧縮変位が大きくなるに従ってばね定数が増大するような、漸硬型非線形復元力特性を有する、元位置復帰用のコイルばねを配設したことを特徴とする免震テーブル装置。 - 請求項1又は2に記載の免震テーブル装置において、
前記X方向ガイド軸保持部材と前記X方向可動部の間、及び前記Y方向ガイド軸保持部材と前記Y方向可動部の間に、元位置復帰用のU字形ばねを取り付け、加えて、各ガイド軸に沿ってU字形ばねの圧縮ストロークよりも短い短コイルばねを装備することにより、X方向又はY方向可動部の相対変位が一定値を超えて短コイルばねに接触すると、短コイルばねの分だけばね定数が増大するような、折れ線状復元力特性を持たせたこと、を特徴とする免震テーブル装置。 - 請求項4に記載の免震テーブル装置において、
前記X方向短コイルばねの自由端に、1個又は2個の摩擦ダンパーを、前記基礎板に接触するように固着装備し、更に、前記Y方向短コイルばねの自由端に、1個又は2個の摩擦ダンパーを、前記X方向移動テーブル板に接触するように固着装備することにより、X方向又はY方向可動部の相対変位が一定値を超えて短コイルばねに接触た後は、摩擦力が階段状に増大するような、二段硬化型摩擦力特性を持たせたこと、を特徴とする免震テーブル装置。
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