JP6273971B2 - 放熱板付パワーモジュール用基板の製造方法 - Google Patents
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特許文献1には、金属板(I)の主面の少なくとも片面に、絶縁層を介して別の金属板(II)が配置された板状金属に、めっき液と逆極性の電流を流し、金属板(II)に部分的に無電解めっきを施すことが記載されている。
また、特許文献2には、絶縁層を挟む第1、第2アルミニウム電極層のうち、第1アルミニウム電極板にのみ部分的にめっきを行うために、第2アルミニウム電極層に亜鉛析出防止用の電位を印加した状態でジンケート処理を行うことにより、第1アルミニウム電極層のみに亜鉛置換膜を形成することが記載されており、その後に無電解めっき処理を施すことによって、第1アルミニウム電極層のみに無電解ニッケル被膜を形成することとしている。
そこで、本発明の放熱板付パワーモジュール用基板の製造方法は、以下の解決手段とした。
なお、放熱板への印加電位が0.1V未満では、放熱板への無電解ニッケルめっきの析出を完全に防止することが難しい。一方、放熱板への印加電圧が1.5Vを超えると、銅の陽極溶解が生じるおそれがある。本発明では0.5V以上とする。
また、放熱板に電位を印加する方法は、定電流、定電圧のどちらでも構わないが、定電圧で行うことが好ましい。定電圧で行う場合、電流密度を一定にするために、放熱板のサイズごとにその表面積を考慮して行う必要がなく、作業が簡便となるからである。
ジンケート処理を施すことにより、回路層とめっき被膜との密着性を向上させることができる。
図3は、本発明により製造される放熱板付パワーモジュール用基板1を用いたパワーモジュール100を示している。放熱板付パワーモジュール用基板1は、パワーモジュール用基板10と、このパワーモジュール用基板10に接合された放熱板30とを備えている。
回路層12及び金属層13は、純度99.00質量%以上の純アルミニウム、アルミニウム合金又はA3003材等の純度95質量%以上のアルミニウム合金等により形成され、例えば0.1mm〜5mmの厚みとされ、通常はセラミックス基板11より小さい矩形状に形成される。これら回路層12及び金属層13は、セラミックス基板11に、Al−Si系、Al−Ge系、Al−Cu系、Al−Mg系またはAl−Mn系等の合金のろう材により、ろう付け接合される。
また、回路層12及び金属層13は、それぞれプレス加工により所望の外形に打ち抜いたものをセラミックス基板11に接合するか、あるいは平板状のものをセラミックス基板11に接合した後に、エッチング加工により所望の外形に形成するか、いずれかの方法を採用することができる。
なお、放熱板30の形状は特に限定されるものではなく、金属層13と平面サイズを同一にして形成される平板状の放熱板や、フィンが形成された平板状の放熱板等の適宜の形状のものが含まれる。
(パワーモジュール用基板形成工程)
まず、セラミックス基板11の各面にろう材を介して回路層12及び金属層13を積層し、これらの積層体を積層方向に加圧した状態で加熱し、ろう材を溶融させることによって回路層12及び金属層13をそれぞれセラミックス基板11にろう付け接合してパワーモジュール用基板10を形成する。具体的には、ろう材としてAl‐7質量%Siろう材を用い、真空雰囲気中で例えば640℃のろう付け温度に加熱することにより、セラミックス基板11と回路層12及び金属層13とをろう付け接合する。
そして、このパワーモジュール用基板10の金属層13の表面に放熱板30を重ねた状態とし、その積層方向に加圧した状態で銅とアルミニウムの共晶温度未満で加熱することにより、放熱板30とパワーモジュール用基板10の金属層13とを、銅とアルミニウムとを相互に拡散させて固相拡散接合により接合し、パワーモジュール用基板10と放熱板30とが接合された接合体Sを形成する。具体的には、真空雰囲気中で、荷重0.3MPa〜10MPa、加熱温度400℃以上548℃未満で、5分〜240分保持することにより、放熱板30とパワーモジュール用基板10の金属層13とを接合することができる。
次に、回路層12の表面に存在する油分やアルミニウム酸化物等の不純物を除去するために、脱脂及びアルカリエッチング処理を行う。
次に、めっき処理工程の前に、回路層12との密着性を確保するため、回路層12の表面を亜鉛(Zn)で被覆するジンケート処理を施す。この際、回路層12のアルミニウムにジンケート液中の亜鉛が反応することで、アルミニウムが溶解して表面に亜鉛が置換析出され、回路層12の表面に亜鉛被膜が形成される。具体的には、接合体Sをジンケート液に30秒から60秒浸漬させることにより、ジンケート処理を行う。
なお、ジンケート処理は2回以上に分けて行ってもよい。1回目のジンケート処理で被膜される亜鉛被膜は粒子が大きい状態であるので、一度、亜鉛被膜を剥離するジンケート剥離処理を施した後に、2回目のジンケート処理を行うことにより、亜鉛粒子が微細な状態で亜鉛被膜が形成される。亜鉛粒子が微細な状態で亜鉛被膜が形成されることにより、回路層12とニッケルめっきの密着性をより向上させることができる。なお、ジンケート剥離処理には、10vol%〜50vol%硝酸を用いることができる。ジンケート剥離処理は処理時間が短いので、銅の溶解量は微量に抑えられる。銅の溶出量の低減が必要な場合は、10vol%硝酸を用いてジンケート剥離処理を行うこともでき、この場合においても同様の効果が得られる。
そして、ジンケート処理後の接合体Sを、無電解ニッケルめっき液(NiPめっき液)60中に浸漬することによって、NiPめっき液60中で亜鉛皮膜(Zn)をニッケル(Ni)に置換させ、置換されたニッケルを触媒としてめっき反応を進行させることにより、回路層12上に無電解ニッケルめっき被膜15を形成する。この際、放熱板30へのめっき反応を抑制するために、放熱板30に0.1V以上1.5V以下の正電位を印加した状態で、接合体SをNiPめっき液60中に浸漬する。具体的には、図2に示すように、電源65の正極に接合体Sの放熱板30を接続するとともに、電源65の負極に電極63を接続して放熱板30を通電状態とし、電極63は予めめっき槽61に貯留されたNiPめっき液60に浸漬しておき、放熱板30がNiPめっき液60に浸漬されると同時に正電位を印加した状態とする。これにより、正電位が印加された放熱板30へのめっき反応を抑制することができる一方で、回路層12上には無電解ニッケルめっき被膜15を形成することができる。
なお、放熱板30に電位を印加する方法は、定電流、定電圧のどちらでも構わないが、定電圧で行うことが好ましい。定電圧で行う場合、電流密度を一定にするために、放熱板30のサイズごとにその表面積を考慮して行う必要がなく、作業が簡便となるからである。
例えば、上記実施形態ではNiPめっき液を用いたが、これに限らず、NiBめっき液や、他の無電解ニッケルめっき液を用いることが可能である。
各放熱板付パワーモジュール用基板を構成するパワーモジュール用基板は、AlNからなるセラミックス基板(60mm×60mm×0.635mmt)の両面に4N‐Alからなる回路層及び金属層(回路層及び金属層のいずれも58mm×58mm×0.4mmt)をAl‐Si系ろう材によりろう付け接合することにより形成した。次いで、レジストインクを印刷し、塩化第一鉄溶液でエッチングを行い、回路層に回路を形成した。
次に、得られたパワーモジュール用基板の金属層に無酸素銅からなる放熱板(20mm×80mm×3mmt)を固相拡散接合によって接合し、各試料の接合体を作製した。
まず、回路層の表面に付着している油分を除去するための脱脂を行った。そして、回路層のアルミニウムの酸化膜を除去するため、アルカリエッチング処理を施した。
そして、デスマット処理を終えた接合体に、めっき被膜と回路層との密着性を確保するため、2回のジンケート処理を行った。
なお、1回目のジンケート処理は、接合体をジンケート液(上村工業製:AZ‐301‐3X、25℃)に1分間浸漬させることにより行った。次に、ジンケート剥離処理を行った後、2回目のジンケート処理を行った。2回目のジンケート処理は、接合体を1回目のジンケート処理と同じジンケート液に30秒間浸漬させることにより行った。また、ジンケート剥離処理は、50vol%硝酸(室温)に30秒浸漬させることにより行った。
めっき液は、低リンタイプ(メルテックス製エンプレート:NI‐246、Ni5.7g/L、pH6.7、80℃)、中リンタイプ(上村工業製ニムデン:NPR‐4、Ni5.0g/L、pH4.6、80℃)、NiBタイプ(上村工業製ベルニッケル、Ni6.7g/L、pH6.6、60℃)を用いて、めっき処理を行った。また、めっき膜厚はいずれも5μmを目途にめっき時間を設定し、低リンタイプでは16分、中リンタイプでは26分、NiBタイプでは60分とした。
「放熱板の溶出」の評価は、各試料へのめっき処理工程後のめっき液中のCu濃度を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(Perkin Elmer社製のOptima 3000XL)により測定して行った。そして、めっき液中のCu濃度が0.1mg/L以下とされるものについては、放熱板の銅溶出がないものとして「○」と評価し、Cu濃度が0.1mg/Lを超えるものについては、放熱板の銅溶出があるものとして「×」と評価した。
表1に結果を示す。
10 パワーモジュール用基板
11 セラミックス基板
12 回路層
13 放熱層
15 無電解ニッケルめっき被膜
30 放熱板
60 無電解ニッケルめっき液
61 めっき漕
63 電極
65 電源
100 パワーモジュール
S 接合体
Claims (2)
- セラミックス基板の一方の面に積層されたアルミニウムからなる回路層と、他方の面に積層されたアルミニウムからなる金属層とを備えたパワーモジュール用基板に、銅からなる放熱板を接合した後に、前記回路層上に無電解ニッケルめっき被膜を形成する放熱板付パワーモジュール用基板の製造方法であって、前記パワーモジュール用基板の前記金属層に前記放熱板を接合した接合体を形成する放熱板接合工程と、前記放熱板に0.5V以上1.5V以下の正電位を印加した状態で前記接合体を無電解ニッケルめっき液中に浸漬して前記回路層上に無電解ニッケルめっき被膜を形成するめっき処理工程とを有することを特徴とする放熱板付パワーモジュール用基板の製造方法。
- 前記放熱板接合工程後で前記めっき処理工程前に前記接合体をジンケート液に浸漬して前記回路層の表面を亜鉛で被覆するジンケート処理工程を有することを特徴とする請求項1記載の放熱板付パワーモジュール用基板の製造方法。
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