JP3734359B2 - 回路基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス基板に金属回路と金属放熱板とが設けられてなる回路基板の改良に関するものであって、回路基板の信頼性を向上することを目的とするものである。本発明の回路基板は、電子部品のパワーモジュール等の組立に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ロボットやモーター等の産業機器の高性能化に伴い、大電力・高能率インバーター等パワーモジュールの変遷が進んでおり、半導体素子から発生する熱も増加の一途をたどっている。この熱を効率よく放散させるため、パワーモジュール基板では従来より様々な方法が取られてきた。特に最近、良好な熱伝導を有するセラミックス基板が利用できるようになったため、その基板上に銅板等の金属板を接合し、回路を形成後、そのままあるいはNiメッキ等の処理を施してから半導体素子を実装する構造も採用されつつある。
【0003】
このようなモジュールは、当初、簡単な工作機械に使用されてきたが、ここ数年、溶接機、電車の駆動部、電気自動車に使用されるようになり、より厳しい環境条件下における耐久性と更なる小型化が要求されるようになってきた。そこで、セラミックス基板に対しても、電流密度を上げるための金属回路厚の増加、熱衝撃等に対する耐久性の向上が要求され、セラミックス焼結体の新たな製造研究により対応している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来、汎用されている回路基板は、アルミナ基板又は窒化アルミニウム基板に銅回路を形成させてなる構造のものであるが、更なる耐ヒートサイクル性に対する信頼性を向上させるため、最近では窒化アルミニウム基板にアルミニウム回路を形成させたものが開発されている。しかしながら、アルミニウムは電流密度等の電気的特性が銅よりも劣るので、そのような回路基板は広く普及されるまでには至っていない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は耐ヒートサイクル性に優れた高信頼性の回路基板を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、セラミックス基板の一方の面に金属回路、他方の面に金属放熱板が形成されてなり、その金属回路及び/又は金属放熱板は、第一、第二、第三以上の異なる3種以上の金属からなるクラッド箔であって、その第一の金属がセラミックス基板に接合されてなり、しかも第一の金属の端部がそれに隣接する第二の金属の端部よりもせり出ていることを特徴とする回路基板である。特に、この回路基板において、第一の金属がアルミニウム、第二の金属がニッケル、第三の金属が銅からなるクラッド箔であり、第二の金属に対する第一の金属のせり出し長さが100μm以上であることを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明について説明すると、回路基板の金属回路部分には数百アンペア、数千ボルトの高電圧、高電流が流れるため、現在、銅回路が主として用いられている。しかし、使用時の環境の変化や、スイッチングによる熱等によって熱衝撃を繰り返して受けるため、銅とセラミックスの熱膨張差による熱応力によってセラミックス基板の界面より銅回路が剥離する問題が生じていた。
【0008】
銅とセラミックスの熱膨張差による熱応力は、熱膨張率だけではなく、その金属自体が持つ機械的性質、主に引張強度や耐力でその大きさが決まる。したがって、熱応力を軽減させるには、銅よりも引張強度や耐力の小さい金属を用いればよいが、そのような特性を持ち、しかも銅と同程度の電気的特性を有する金属は、今のところ現存しない。
【0009】
そこで、本出願人は、異なる3種以上の金属からなるクラッド箔によって、金属回路及び/又は金属放熱板を形成することを提案した(特願平9−253076号、特願平9−305634号)。すなわち、第一、第二、第三ないしはそれ以上の異なる3種以上の金属で構成されたクラッド箔において、引張強度や耐力の小さい第一の金属をセラミックス基板に接合させることによって、第一の金属とセラミックス基板間との熱膨張差による熱応力を低減させ、その上に電気的特性の良好な第三の金属を、第一の金属と反応・拡散しあわないように、第二の金属を介在させたクラッド箔構造としたものである。
【0010】
このようなクラッド箔構造とすることによって、金属回路及び/又は金属放熱板をエッチングによって形成することができるので、そのパターン形状には殆ど制約を受けないという長所がある。しかし、クラッド箔を構成している各金属のエッチング液に対する溶解速度が異なり、特に第一の金属が第二、第三の金属よりも速く溶解するので、第一の金属の端部がえぐれた状態となり、その部分に応力が集中する結果、折角高められた回路基板の信頼性が損なわれる恐れがあった。
【0011】
そこで、本発明者らは、更に検討した結果、エッチング条件を調節することによって、セラミックス基板に接合している第一の金属の端部を、その金属に隣接している第二の金属の端部よりもせり出させた構造とすることによって、高信頼性の損なわれる心配から回避できることを見いだしたものである。
【0012】
本発明で使用されるセラミックス基板の材質としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ等であるが、パワーモジュールには窒化アルミニウムが適している。セラミックス基板の厚みとしては、厚すぎると熱抵抗が大きくなり、薄すぎると耐久性がなくなるため、0.5〜0.8mm程度が好ましい。
【0013】
セラミックス基板の表面性状は重要であり、微少な欠陥や窪み等は、金属回路、金属放熱板あるいはそれらの前駆体である金属板をセラミックス基板に接合する際に悪影響を与えるため、平滑であることが望ましい。従って、セラミックス基板は、ホーニング処理や機械加工等による研磨処理が施されていることが好ましい。
【0014】
本発明で使用されるクラッド箔の構成金属について説明すると、引張強度や耐力が小さく、セラミックスとの熱膨張差による熱応力を低減する役割を持つ第一の金属としては、アルミニウム、鉛、白金等が好ましく、中でもアルミニウムが特に好ましい。また、電気的特性の良好な第三の金属としては、銅、銀、金、アルミニウム等が好ましく、中でも銅が特に好ましい。第一の金属に隣接する第二の金属としては、チタン、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、ニッケル等が好ましいが、中でもニッケルが特に好ましい。クラッド箔の構成金属の厚みとしては、第一の金属が30〜200μm、第二の金属が5〜30μm、第三の金属が100〜500μmであることが好ましい。
【0015】
本発明において、第二の金属に対する第一の金属のせり出し長さは、クラッド箔構造の高信頼性を損なわせないために10μm以上、好ましくは100μm以上、特に好ましくは300μm以上とする。
【0016】
このような第一の金属によるせり出し構造の金属回路及び/又は金属放熱板を形成するには、セラミックス基板とクラッド箔との接合体をエッチングする方法、クラッド箔から打ち抜かれた回路及び/又は放熱板のパターンをセラミックス基板に接合する方法等によって行うことができ、これらの際における接合方法としては活性金属ろう付け法が用いられる。
【0017】
セラミックス基板とクラッド箔との接合体をエッチングする方法の場合は、そのエッチング液の種類、処理条件を工夫して行う。例えば、先ず、第一の金属が溶解されず、第二と第三の金属が溶解するようなエッチング液を準備する。例えば、第一の金属がアルミニウム、第二の金属がニッケル、第三の金属が銅である場合、そのエッチング液は過酸化水素水溶液等である。次いで、上記接合体にエッチングレジストを所望するパターンに印刷した後エッチングを行うと、第二と第三の金属によるパターンが形成されるが、第一の金属はまだベタの状態である。そこで、第二と第三の金属によるパターンをマスキングしてから、第一の金属を溶解するエッチング液、例えば苛性ソーダ等のアルカリ水溶液等を用い、所望するせり出し長さが残るようにエッチングを行う。
【0018】
更には、セラミックス基板とクラッド箔との接合体を、クラッド箔を構成している全ての金属が溶解するエッチング液、例えば塩化第二銅水溶液、塩化第二鉄水溶液等を用いてエッチングする。この場合は、クラッド箔を構成している全ての金属によってパターンが形成されるが、同時にエッチング速度の速い第一の金属の端部がえぐりとられた状態となっている。そこで、第一の金属による所望のせり出し長さとなる部分を残して第二と第三の金属をマスキングした後、第二、第三の金属を溶解するエッチング液でエッチングを行う方法によっても、せり出し構造の金属回路及び/又は金属放熱板を形成させることができる。
【0019】
本発明において、第三の金属の端部の状態については、特に制限はないが、第二の金属の端部に対してせり出ていないことが望ましく、第三の金属の端部は第二の金属の端部と同等位置ないしは第二の金属の端部よりも内側に位置していることが好ましい。
【0020】
本発明で用いられる活性金属ろう付け法については、例えば特開昭60−177634号公報に記載されている。ろう材の金属成分は、アルミニウムとシリコンを主成分とし、溶融時のセラミックス基板との濡れ性を確保するために活性金属を副成分とする。活性金属成分は、セラミックス基板と反応して酸化物や窒化物を生成し、ろう材とセラミックス基板との結合を強固なものにする。活性金属の具体例をあげれば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、バナジウムやこれらの化合物である。本発明におけるこれらの比率としては、アルミニウム70〜95重量部、シリコン30〜5重量部及び銅0〜5重量部の合計量100重量部あたり、活性金属1〜30重量部である。接合温度は、560〜640℃が望ましい。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例をあげて具体的に説明する。
【0022】
実施例1〜6 比較例1〜2
重量割合で、アルミニウム粉末86部、シリコン粉末10部、銅粉末4部及び水素化チタニウム粉末15部からなる混合粉末100部にテルピネオール15部とポリイソブチルメタアクリレートのトルエン溶液を加え、混練してろう材ペーストを調製し、それを窒化アルミニウム基板(寸法:58mm×32mm×0.65mm 曲げ強さ:40kg/mm2 熱伝導率:170W/m・K)の両面に塗布した。その際の塗布量(乾燥後)は3mg/cm2 とした。
【0023】
次に、ろう材ペーストの塗布面にアルミニウム板(純度:99.5% 寸法:58mm×32mm×0.1mm)を接触配置し、真空度1×10-5Torr以下の高真空下、温度640℃で30分加熱した後、2℃/分の降温速度で冷却して接合体を製造した。
【0024】
その後、上記接合体の両面にあるアルミニウム面に、ニッケル(58mm×32mm×10μm)と銅(58mm×32mm×0.3mm)からなるクラッド箔を、そのニッケル面をアルミニウム面に接触させて載置し、赤外線加熱方式の接合炉で、真空度0.1Torr以下の高真空下、630℃×5分の条件で熱処理して接合を行った。
【0025】
得られた接合体は、第一の金属がアルミニウム、第二の金属がニッケル、第三の金属が銅であるクラッド箔が、そのアルミニウム面を窒化アルミニウム基板の両面に接合されてなる構造である。
【0026】
次いで、この接合体の表裏面にUV硬化タイプのエッチングレジストをスクリーン印刷により塗布した後、表1に示す条件でエッチングを行い回路基板を作製した。実施例1、3〜6では第一処理の後にはクラッド箔の構成金属の全てによってパターンが形成されていたので、表1に示されるせり出し長さの部分を残して再度レジスト印刷を行い、第二処理を行った。また、実施例2では第一処理を行った段階では、第二と第三の金属でパターンが形成されているが、第一の金属はベタ状態であったので第二処理を行って、大まかなせり出し部分を有するパターンを形成させた後、再度レジスト印刷後、第三処理を行い、表1に示されるせり出し長さを有する回路基板を作製した。比較例1は、第一処理と第二処理を続けて行った。
【0027】
これら一連の処理を経て作製された回路基板について、第二の金属(ニッケル)に対する第一の金属(アルミニウム)のせり出し長さを、その部分の断面を切断・樹脂包埋・研磨した後、SEM観察により測定した。それらの金属回路面における結果を表1に示したが、金属放熱板面におけるせり出し長さは金属回路面とそれとほぼ同等であった。表1において、せり出し長さの「+」は第二の金属に対してせり出ていること示し、「−」はえぐりとられていることを示す。また、第三の金属(銅)の端部のせり出し状態についても観察したところ、いずれもせり出ておらず、その端部は第二の金属の端部よりも内側に位置していた。
【0028】
更に、気中、−40℃×30分保持後、25℃×10分間放置を1サイクルとするヒートサイクル試験を行い、金属回路又は金属放熱板が剥離するサイクル数を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
Figure 0003734359
【0030】
実施例7
窒化アルミニウム基板のかわりに窒化ケイ素基板(曲げ強さ:1000kg/mm2 熱伝導率:70W/m・K)を用い、第一の金属をアルミニウム、第二の金属をクロム、第三の金属を銅にしたこと以外は、実施例1に準じて実施例1と同等のせり出し構造を有する回路基板を作製した。その結果、金属の剥離発生開始サイクル数は50000回であった。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、耐ヒートサイクル性に優れた高信頼性の回路基板が提供される。

Claims (1)

  1. セラミックス基板の一方の面に金属回路、他方の面に金属放熱板が形成されてなり、その金属回路及び/又は金属放熱板は、第一の金属がアルミニウム、第二の金属がニッケル、第三の金属が銅からなるクラッド箔であって、その第一の金属がセラミックス基板に接合されてなり、しかも第一の金属の端部がそれに隣接する第二の金属の端部よりも100μm以上せり出ていることを特徴とする回路基板。
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