以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本例に係る内燃機関の制御装置21を適用した内燃機関EGを示すブロック図、図2は本例に係る内燃機関の制御装置21を示すブロック図である。なお図2は、図1に示す内燃機関EGの構成から温度推定処理を実行する内燃機関の制御装置21に関係する構成のみを抽出して示したものである。
本例に係る内燃機関の制御装置21が適用される車両は、内燃機関EGのみを走行駆動源とする車両と、内燃機関EGとモータとを走行駆動源とするハイブリッド車両の両方を含み、以下の実施形態では主として内燃機関EGのみによる車両の構成を説明し、ハイブリッド車両に特有の構成については特記するものとする。また本例の内燃機関の制御装置21は、ガソリンを燃料とするガソリンエンジンのほか軽油を燃料とするディーゼルエンジンにも適用することができ、以下の実施形態では主としてガソリンエンジンの構成について説明し、ディーゼルエンジン特有の構成については特記するものとする。さらに本例に係る内燃機関の制御装置21は、フットブレーキを踏んで車両が停車した場合に内燃機関が一時的に停止するアイドリングストップ制御を実行する車両に適用することができ、以下の実施形態ではその説明を適宜行うものとする。なお、アイドリングストップ制御は内燃機関のみによる車両にもハイブリッド車両にも適用することができる。
図1に示すように、内燃機関EGの吸気通路111には、エアーフィルタ112、吸入空気流量を検出するエアフローメータ113、吸入空気流量を制御するスロットルバルブ114、コレクタ115及び吸気温度センサ117が設けられている。スロットルバルブ114には、当該スロットルバルブ114の開度を調整するDCモータ等のアクチュエータ116が設けられている。このスロットルバルブアクチュエータ116は、運転者のアクセルペダル操作量等に基づき演算される要求トルクを達成するように、エンジンコントロールユニット11からの駆動信号に基づき、スロットルバルブ114の開度を電子制御する。なお、アクセルペダルにはアクセル開度センサ136が設けられ、アクセルペダル操作量の検出信号をエンジンコントロールユニット11へ出力する。また、スロットルバルブ114の開度を検出するスロットルセンサ116aが設けられ、その検出信号をエンジンコントロールユニット11へ出力する。なお、スロットルセンサ116aはアイドルスイッチとしても機能させることができる。
コレクタ115から各気筒に分岐した燃料噴射ポート111aに臨ませて、燃料噴射バルブ118が設けられている。燃料噴射バルブ118は、エンジンコントロールユニット11において設定される駆動パルス信号によって開弁駆動され、図外の燃料ポンプから圧送されてプレッシャレギュレータにより所定圧力に制御された燃料を吸気通路111の燃料噴射ポート111aに噴射する。このとき、本例の内燃機関EGにおいては、フットブレーキ操作、変速機コントロールユニットからのシフトポジション信号、エンジン回速度等のエンジン運転状態に基づいてアイドリングストップ制御を実行し、アイドリングストップ条件が成立したらピストン及びクランクの駆動を含めて内燃機関EGを一時的に停止し、その後アイドリングストップ条件が不成立となったら内燃機関EGを再始動する。
シリンダ119と、当該シリンダ119内を往復移動するピストン120の冠面と、吸気バルブ121及び排気バルブ122が設けられたシリンダヘッドとで囲まれる空間が燃焼室123を構成する。点火プラグ124は、各気筒の燃焼室123に臨んで装着され、エンジンコントロールユニット11からの点火信号に基づいて吸入混合気に対して点火を行う。なお、ディーゼルエンジンや圧縮自己着火型ガソリンエンジン(HCCI)にあっては、点火プラグ124は省略される。
排気通路125には、排気中の特定成分、例えば酸素濃度を検出することにより排気、ひいては吸入混合気の空燃比を検出する空燃比センサ126が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。この空燃比センサ126は、リッチ・リーン出力する酸素センサであってもよいし、空燃比をリニアに広域に亘って検出する広域空燃比センサであってもよい。また、排気通路125には、排気を浄化するための排気浄化触媒127が設けられている。この排気浄化触媒127としては、ストイキ(理論空燃比,λ=1、空気重量/燃料重量=14.7)近傍において排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCを酸化するとともに、窒素酸化物NOxの還元を行って排気を浄化することができる三元触媒、或いは排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCの酸化を行う酸化触媒を用いることができる。さらに、排気通路125の排気浄化触媒127の下流側には、排気中の特定成分、例えば酸素濃度を検出し、リッチ・リーン出力する酸素センサ128が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。ここでは、酸素センサ128の検出値により、空燃比センサ126の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を補正することで、空燃比センサ126の劣化等に伴う制御誤差を抑制する等のために(いわゆるダブル空燃比センサシステム採用のために)、下流側酸素センサ128を設けて構成したが、空燃比センサ126の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を行わせるだけでよい場合には、酸素センサ128を省略することができる。なお、図1において129はマフラである。
なお、エンジンコントロールユニット11は、クランク角センサ131から機関回転と同期して出力されるクランク単位角信号を一定時間カウントすることで、又はクランク基準角信号の周期を計測することでエンジン回転速度Neを検出することができる。
内燃機関EGの冷却ジャケット132には、水温センサ133が当該冷却ジャケットに臨んで設けられ、冷却ジャケット132内の冷却水温度を検出し、これをエンジンコントロールユニット11へ出力する。また、エンジンルーム内にはサーミスタなどから構成されて車室外の温度を検出する外気温度センサ135が設けられ、この検出信号はエンジンコントロールユニット11に出力される。さらに変速機などの駆動系にはリードスイッチやホール素子などから構成されて車両の走行速度を検出する車速センサ137が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11に出力される。また図示は省略するが、変速機のコントロールユニットは、変速機のシフトポジション(変速段)をエンジンコントロールユニット11からの要求により出力する(図1にシフトポジション信号にて示す)。なお、本実施形態における「水温センサ133」が本発明の「内燃機関温度検出手段」の一例に相当し、本実施形態における「外気温度センサ135」が本発明の「外気温度検出手段」の一例に相当し、本実施形態における「車速センサ137」が本発明の「車速検出手段」の一例に相当し、本実施形態における「冷却水温度」が本発明の「内燃機関の本体の温度」の一例に相当する。
内燃機関EGは、スタータモータ138を用いてクランクシャフト130を回転駆動することにより始動する。このスタータモータ138は回転軸の先端にピニオンギア139を備え、ピニオンギア139はクランクシャフト130に固定されたドライブプレート又はフライホイール140の外周縁部に形成されたギアと噛合する。また、スタータモータ138は、アクチュエータ(不図示)を用いてピニオンギア139を回転軸方向に移動させる機能を備えている。
イグニッションスイッチがONすると、スタータモータ138が起動してピニオンギア139が回転駆動し、アクチュエータにより回転軸が伸長してピニオンギア139がドライブプレート140に形成されたギアと噛合する。これによりクランクシャフト130が所定速度で回転し、内燃機関EGが始動する。なお、本実施形態における「スタータモータ138」が本発明の「空転実行手段」の一例に相当する。
ハイブリッド車両は、内燃機関及び/又はモータを走行駆動源とし、車両の運転状態や走行駆動用バッテリの充電状態に応じた各種の走行モードが設定されている。たとえば、車両の運転状態などに応じて、内燃機関のみで走行するモードと、モータのみで走行するモードと、内燃機関及びモータの両方で走行するモードを切り替える。このうち内燃機関のみで走行するモードをEG走行モード、モータのみで走行するモードをEV走行モード、内燃機関及びモータの両方で走行するモードをHEV走行モードと称する。これら走行モードの切り替えは、図1に示すエンジンコントロールユニット11とバッテリの充放電等を制御するバッテリコントロールユニット(不図示)とを統括する車両コントロールユニット(不図示)により制御され、EV走行モードを含む走行モードの制御信号(図1に「EV走行モード信号」として示す。)がエンジンコントロールユニット11に出力される。ハイブリッド車両における内燃機関の始動は、走行駆動用モータと、当該走行駆動用モータと内燃機関との間に設けられたクラッチの断接操作により行うことができる。また、上述したスタータモータを走行駆動用モータとは別に設け、このスタータモータにより内燃機関を始動してもよい。
既述したように、各種センサ類からの検出信号(運転パラメータ)は、CPU,ROM,RAM,A/D変換器及び入出力インタフェース等を含んで構成されるマイクロコンピュータからなるエンジンコントロールユニット11に入力され、当該エンジンコントロールユニット11は、センサ類からの信号に基づいて検出される運転状態に応じて、スロットルバルブ114の開度を制御し、燃料噴射バルブ118を駆動し、点火プラグ124のON/OFFを制御して燃料噴射量と燃料噴射時期と点火タイミングとを制御する。
排気通路125の排気浄化触媒127の下流側の近傍には、本例に係る温度センサ134が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。この温度センサ134は、内燃機関EGの空転操作が実行された場合に、吸入通路111から吸入され燃焼室123からエキゾーストマニホールドを含む排気通路125に流下した未燃空気と、排気浄化触媒127と、が直接的に接触した熱交換後に未燃空気の温度を検出し、検出した温度実測値T1をエンジンコントロールユニット11に出力する。そして、エンジンコントロールユニット11は、排気浄化触媒127の不活性化防止のため、排気浄化触媒127の温度を推定する制御を行う。以下、排気浄化触媒の温度推定の制御手順を説明する。
本例の排気浄化触媒127の温度の推定は、図2に示す制御ブロックと、図3に示す制御ルーチンによって実行される。以下に具体的な制御の構成を説明する。
本例の内燃機関の制御装置21は、図2に示すように、エンジン駆動検出部211と、停止時間計測部212と、第1の触媒温度推定部213と、第2の触媒温度推定部214と、エンジン空転開始判定部215と、エンジン始動判定部216と、を備える。図2の最左列は入力パラメータを示し、上述した内燃機関EGの各種構成部品より検出されるものである。
なお、本実施形態における「内燃機関の制御装置21」が本発明の「内燃機関の制御装置」の一例に相当し、本実施形態における「エンジン駆動検出部211」が本発明の「停止検出手段」の一例に相当し、本実施形態における「停止時間計測部212」が本発明の「停止時間計測手段」の一例に相当し、本実施形態の「第1の触媒温度推定部213」が本発明の「初期温度推定手段」の一例に相当し、本実施形態の「第2の第2の触媒温度推定部214」が本発明の「温度推定手段」の一例に相当し、本実施形態の「エンジン空転開始判定部215」が本発明の「空転開始判定手段」の一例に相当し、本実施形態の「エンジン始動判定部216」が本発明の「再始動指令手段」の一例に相当する。
エンジン駆動検出部211は、アクセル開度センサ136から求められるアクセル踏込量と、クランク角センサ131から求められるエンジン回転速度と、水温センサ133から求められる冷却水温度と、車速センサ137から求められる走行速度と、フットブレーキセンサから求められるフットブレーキのON/OFF信号と、変速機コントロールユニットから入力するシフトポジション信号と、ハイブリット車両にあっては車両コントロールユニットから入力するEV走行モード信号(ON/OFF指令信号)と、に基づいて、内燃機関EGが停止しているか否かを検出する。なお、クラッチ付き車両にあってはクラッチセンサから求められるクラッチの入切に基づいて、内燃機関EGが停止しているか否か検出してもよい。
アイドリングストップ制御は、特に限定されないが、例えば内燃機関EGの回転速度が所定値以下で、シフトポジションがニュートラル又はクラッチペダルが踏み込まれている場合又はこれに加えてフットブレーキが踏み込まれている場合に条件(本発明の「内燃機関停止条件」の一例に相当)が成立する。アイドリングストップ制御の条件が成立すると、ピストン120及びクランクシャフト130の駆動を含めて内燃機関EGを一時的に停止する。これにより、燃焼室123における燃焼は中断し、吸気通路111から排気通路125に至るガスの流れも停止する。
なお、ハイブリッド車両にあっては、車両コントロールユニットにてEV走行モードの条件が成立すると、EV走行モードのON指令が出力される。これにより、ピストン120及びクランクシャフト130の駆動を含めて内燃機関EGが一時的に停止し、燃焼室123における燃焼も、吸気通路111から排気通路125に至るガスの流れも停止する。
エンジン駆動検出部211は、上述した内燃機関EGにおける停止状態から駆動状態へ移行したことも検出する。アイドリングストップ制御にあっては、例えばフットブレーキを放してアクセルペダルを踏み込むなどすることでアイドリングストップ制御の成立条件が不成立となり(本発明の「内燃機関再始動条件」の一例に相当)、内燃機関EGが再始動したことを検出する。またハイブリッド車両にあっては、例えばアクセルペダルを踏み込んで走行負荷が増加することでEV走行モードの成立条件が不成立となり、EG走行モード又はHEV走行モードに切り替わることで内燃機関EGが再始動したことを検出する。
停止時間計測部212は、タイマーカウンタで構成され、エンジン駆動検出部211にて検出された停止状態の開始時にカウントを開始し、再始動したときにカウントを終了し、停止状態の開始から再始動までの時間を計測する。ここで計測した停止状態の開始から再始動までの時間を停止継続時間tと称するが、この値tは第1の触媒温度推定部213に出力される。
第1の触媒温度推定部213は、内燃機関EGの停止状態の開始時における排気浄化触媒127出口の温度実測値T0と、停止時間計測部212から出力される停止継続時間tと、に基づいて、所定の演算式により排気浄化触媒127出口の温度を推定し、出口温度推定値T2を求める。そして、求めた出口温度推定値T2に基づいて、所定の演算式により排気浄化触媒127の初期温度を推定し、初期温度推定値T3を求める。さらに、第1の触媒温度推定部213は、求めた初期温度推定値T3を、水温センサ133から求められる冷却水温度と、外気温度センサ135から求められる外気温度と、車速センサ137から求められる走行速度と、に基づいて補正する。第1の触媒温度推定部213は、この初期温度推定値T3を第2の触媒温度推定部214に出力する。
第2の第2の触媒温度推定部214は、温度センサ134から求められる排気浄化触媒127出口の温度実測値T1(空転時の実測値)と、第1の触媒温度推定部213から出力される初期温度推定値T3と、に基づいて、所定の演算式により排気浄化触媒127の温度を推定し、触媒温度推定値T4を求める。そして、第2の触媒温度推定部214は、求めた触媒温度推定値T4をエンジン空転開始判定部215及びエンジン始動判定部216に出力する。
エンジン空転開始判定部215は、第2の触媒温度推定部214から出力される触媒温度推定値T4に基づいて、内燃機関EGの停止時に空転操作を開始するか否かの判断を行う。本例でいう内燃機関EGの空転操作とは、吸気通路111から吸入した外気を燃焼させることなく(燃料カット及び非点火)、排気通路125を介して排気させることをいう。このエンジン空転開始判定部215は、触媒温度推定値T4が空転操作開始閾値Tc1以下となると内燃機関EGの空転操作を開始する判定を行い、触媒温度推定値T4がエンジン始動閾値Tc2に達するまで内燃機関EGの空転操作を開始する判定を所定の時間間隔で行い続ける。また、エンジン空転開始判定部215は、内燃機関EGの空転操作を開始する判定を行った場合は、スタータモータ138を始動する指令を出力する。
空転操作開始閾値Tc1及びエンジン始動閾値Tc2は、排気浄化触媒127の活性温度を基に設定されている。具体的には、空転操作開始閾値Tc1及びエンジン始動閾値Tc2は、排気浄化触媒127の活性温度よりも所定温度だけ高温側の値としている。さらに、エンジン始動閾値Tc2は、空転操作開始閾値Tc1よりも低温側の値としている。なお、本実施形態における「空転操作開始閾値Tc1」が本発明の「第1の閾値」の一例に相当し、本実施形態における「エンジン始動閾値Tc2」が本発明の「第2の閾値」の一例に相当する。
エンジン始動判定部216は、第2の触媒温度推定部214から出力される触媒温度推定値T4に基づいて、内燃機関EGの始動をするか否かの判定を行う。エンジン始動判定部216は、触媒温度推定値T4がエンジン始動閾値Tc2以下となると内燃機関EGの始動をする判定を行う。
次に、図3,図4を参照して、本実施形態に係る内燃機関EGの制御手順を説明する。以下の処理はエンジンコントロールユニット11内にインストールされた内燃機関EGの制御プログラムによって実行される。本実施形態に係る内燃機関の制御は、図2の第2の触媒温度推定部214において求められる触媒温度推定値T4に基づいて、内燃機関EGの空転操作の開始の判定、又は内燃機関EGの始動の判定を行うものである。その際に、触媒温度推定値T4が空転操作開始閾値Tc1以下であるとエンジン空転開始判定部215により内燃機関EGの空転操作を開始する判定を行い、さらに、触媒温度推定値T4がエンジン始動閾値Tc2以下となるとエンジン始動判定部216により内燃機関EGの始動をする判定を行う。
図3に示す制御ルーチンは、車速センサ137により検出される走行速度がゼロでない車両走行中に実行される。まずステップST1にてフットブレーキセンサにより検出されるフットブレーキ信号がONであって、変速機コントロールユニットからのシフトポジション信号としてニュートラル信号が入力され、エンジン回転速度が所定の回転速度以下となると、ステップST2にてアイドリングストップ制御が実行される。これにより、ピストン120及びクランクシャフト130の駆動を含めて内燃機関EGが一時的に停止し、燃焼室123における燃焼が中断するため、内燃機関EGが停止状態となる。なお、図4のタイムチャートにおけるt0が内燃機関EGの停止状態の開始時に相当する。
ステップST3では、停止時間計測部212により停止継続時間tのカウントを開始する。このタイムカウントはステップST9のエンジン始動が検出されるステップST10まで行われる。
ステップST4では、排気浄化触媒127の初期温度を推定し、初期温度推定値T3を求める。具体的には、第1の触媒温度推定部213は、予め定められた推定出口温度マップを用いて、温度センサ134で検出された内燃機関EGの停止状態の開始時における排気浄化触媒127出口の温度実測値T0と、停止継続時間tと、から排気浄化触媒127出口の温度を推定し、出口温度推定値T2を求める。そして、求めた出口温度推定値T2に基づいて、所定の演算式により排気浄化触媒127の初期温度を推定し、初期温度推定値T3を求める。図5に推定出口温度マップの例を示す。内燃機関EGの停止継続時間tが長いほど、排気通路125が外気によって冷却されるので、排気浄化触媒127の出口温度は初期温度T0から降下するものと推定される。
また、本実施形態では、第1の触媒温度推定部213は、求められた初期温度推定値T3を、冷却水温度と、外気温度と、走行速度と、に基づいて補正する。具体的には、まず、第1の触媒温度推定部213は、予め定められた第1の温度変化量マップを用いて、水温センサ133から求められる冷却水温度から排気浄化触媒127の温度変化量T5を演算する。図6に第1の温度変化量マップの例を示す。冷却水温度が高いほど排気通路125が高温になっているので、排気浄化触媒127の出口温度の変化量は小さくなる。
そして、第1の触媒温度推定部213は、予め定められた第2の温度変化量マップを用いて、外気温度センサ135から求められる外気温度から排気浄化触媒127の温度変化量T6を演算する。図7に第2の温度変化量マップの例を示す。外気温度が高いほど排気浄化触媒127の出口温度の変化量は小さくなる。
そして、第1の触媒温度推定部213は、予め定められた第3の温度変化量マップを用いて、車速センサ137から求められる走行速度から排気浄化触媒127の温度変化量T7を演算する。図8に第3の温度変化量マップの例を示す。走行速度が大きいほど排気通路125に当たる風速が大きくなるで、排気浄化触媒127の出口温度の変化量は大きくなる。
なお、内燃機関EGは、アイドリングストップ制御の条件が成立しており、内燃機関EGは停止状態であるため、内燃機関EGの停止状態が開始する前における所定期間の走行速度を車両コントロールユニットから読み出して、排気浄化触媒127の温度変化量T7を演算する。ちなみに、ハイブリット車両にあっては、車両コントロールユニットにてEV走行モードの条件が成立すると、EV走行モードのON指令が出力され、内燃機関EGは一時的に停止するが、車両は走行を継続している。このため、走行中の車両の車速センサ137から検出される走行速度を用いて、排気浄化触媒127の温度変化量を演算する。
そして、第1の触媒温度推定部213は、初期温度推定値T3を、温度変化量T5〜T7に基づいて、従来公知の演算式により補正する。なお、本実施形態における「内燃機関EGの停止継続時間t」、「冷却水温度」、及び「外気温度」が本発明の「内燃機関の運転状態値」の一例に相当し、本実施形態における「走行速度」が本発明の「内燃機関が搭載された車両の運転状態値」の一例に相当する。
このステップST4では、初期温度推定値T3は、第2の触媒温度推定部214に出力されるが、エンジン空転開始判定部215により内燃機関EGの空転操作を開始する判定が行われ、スタータモータ138により内燃機関EGの空転操作が実行される前においては、第2の触媒温度推定部214は、この初期温度推定値T3を触媒温度推定値T4としてエンジン空転開始判定部215へ出力する。なお、エンジン空転開始判定部215により内燃機関EGの空転操作が実行する判定が行われ、スタータモータ138により内燃機関EGの空転操作が実行された場合については、後に詳細に説明する。
ステップST5では、エンジン空転開始判定部215により、触媒温度推定値T4が、予め設定された空転操作開始閾値Tc1以下か否かを判断し、触媒温度推定値T4が空転操作開始閾値Tc1以上である場合は(T4>Tc1)、ステップST5に戻ってステップST4〜ステップST5を繰り返す。触媒温度推定値T4が空転操作開始閾値Tc1以下の場合は(T4<Tc1)、ステップST6へ進む。図4のタイムチャートにおけるt1が、触媒温度推定値T4が空転操作開始閾値Tc1にまで降温した時に相当する。
ステップST6では、ステップST5で触媒温度推定値T4が空転操作開始閾値Tc1以下の場合に、エンジン空転開始判定部215がスタータモータ138を始動する指令を出力し、これによりスタータモータ138が始動する。この結果、内燃機関EGの空転操作が実行され、吸気通路111から吸入された外気が燃焼することなく排気通路125を介して排気される。これにより、未燃空気(吸入空気)が排気通路125内を流下し、排気浄化触媒127と、未燃空気と、が直接的に接触し、排気浄化触媒127の熱が未燃空気に伝わる。
ステップST7では、第2の触媒温度推定部214により、温度センサ134から出力される排気浄化触媒127出口の温度実測値T1と、初期温度推定値T3と、から排気浄化触媒127の温度を推定し、触媒温度推定値T4を求める。
温度センサ134では、排気浄化触媒127出口の温度を検出するが、エンジン空転開始判定部215により内燃機関EGの空転操作が実行する判定が行われ、スタータモータ138により内燃機関EGの空転操作が実行されることで、排気通路125内に未燃空気が流下し、排気浄化触媒127と直接的に接触することで排気浄化触媒127の熱が伝わる。これにより、未燃空気に伝わった熱量に応じた高い温度実測値T1が検出される。
第2の触媒温度推定部214は、所定期間における排気浄化触媒127出口の温度実測値T1の温度変化量に基づいて、初期温度推定値T3を補正することで、排気浄化触媒127の温度を推定し、触媒温度推定値T4を求める。この所定期間は、例えば、エンジン空転開始判定部215により内燃機関EGの空転操作を開始する判定を行った時点から開始し、排気通路125内を流下するガス流速に基づいて設定するものである。なお、排気浄化触媒127の温度補正値を求める方法としては、特に上述に限定されず、例えば、所定期間における排気浄化触媒127出口の温度実測値の最大値に基づいて、排気浄化触媒127の温度を補正してもよい。
上述のように求められた温度実測値T1は、空転操作が実行されることで排気浄化触媒127と直接的に接触し、熱交換を行った後の未燃空気の温度の実測値であり、この温度実測値T1の変化量に基づいて初期温度推定値T3を補正し、排気浄化触媒127の温度を推定するので、排気浄化触媒127の温度の推定精度が向上する。
ステップST8では、エンジン始動判定部216により、ステップST7で求められた触媒温度推定値T4が、予め設定されたエンジン始動閾値Tc2以下か否かを判断し、触媒温度推定値T4がエンジン始動閾値Tc2以上である場合は(T4>Tc2)、所定の時間間隔が経過した後にステップST4に戻ってステップST4〜ステップST8を繰り返す。ステップST4に戻ると、第2の触媒温度推定部214は、再度排気浄化触媒127の温度を推定し、触媒温度推定値T4を求める。そして、ステップST5において、エンジン空転開始判定部215により触媒温度推定値T4が空転操作開始閾値Tc1以下か否かを判断する。触媒温度推定値T4が空転操作開始閾値Tc1以下である場合は(T4<Tc1)、ステップST6において、エンジン空転開始判定部215によりスタータモータ138を始動する指令が出力され、これにより、スタータモータ138が始動し、空転操作が再度実行される。図4のタイムチャートにおけるt2が、エンジン空転開始判定部215により再度、内燃機関EGの空転開始の判定が行われた時に相当する。
触媒温度推定値T4がエンジン始動閾値Tc2以下の場合は(T4<Tc2)、ステップST9へ進む。図4のタイムチャートにおけるt3が、触媒温度推定値T4がエンジン始動閾値Tc2にまで降温した時に相当する。
ステップST9では、エンジン始動判定部216により、ステップST7で演算された触媒温度推定値T4がエンジン始動閾値Tc2以下の場合に内燃機関EGを始動する指令を出力し、内燃機関EGを始動する。ステップST10では、停止時間計測部212は、内燃機関EGが始動したことに伴い停止継続時間tのカウントを停止する。
そして、シフトポジションが走行ポジションに切り替えられ、フットブレーキセンサより検出されるフットブレーキ信号がOFFとなり、アクセルペダルが踏み込まれることで、運転者の要求に応じて車両が加速する。これにより、車両は停止状態から走行状態へ移行する。図4のタイムチャートにおけるt4が、車両が走行状態へ移行した時に相当する。
次に、本実施形態における内燃機関EGの制御装置の効果について説明する。
本実施形態では、内燃機関EGの停止状態において、当該内燃機関EGが空転操作を実行することで排気通路125内に未燃空気を流下させ、排気浄化触媒127と未燃空気とを直接的に接触させる。これにより、排気浄化触媒127の熱が未燃空気に伝わるのでその熱交換後の未燃空気の温度実測値T1を温度センサ134により検出し、当該温度実測値T1に基づいて排気浄化触媒の温度を推定する。この結果、停止状態の継続時間が長くなった場合でも排気浄化触媒127の温度を精度良く推定することができる。
また、本実施形態では、スタータモータ138により内燃機関EGの空転操作が実行される前に出口温度推定値T2から初期温度推定値T3を求め、スタータモータ138により内燃機関EGの空転操作が実行されることで温度センサ134により検出される温度実測値T1の変化量に基づいて、初期温度推定値T3を補正して排気浄化触媒127の温度を推定する。これにより、排気浄化触媒127の温度をさらに精度良く推定することができる。
また、本実施形態では、初期温度推定値T3を冷却水温度と、外気温度と、走行速度と、から求められる排気浄化触媒127の温度変化量に基づいて補正することで、排気浄化触媒127の温度をさらに精度良く推定することができる。
また、本実施形態では、求められた触媒温度推定値T4が空転操作開始閾値Tc1以下の場合に、エンジン空転開始判定部215により内燃機関EGの空転操作を実行する判定を行うことで、不要な内燃機関EGの空転操作により排気浄化触媒127が冷却されるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、求められた触媒温度推定値T4が排気浄化触媒127の活性温度を基に設定されたエンジン始動閾値Tc2以下の場合に、エンジン始動判定部216により内燃機関EGの再始動を実行する判定を行うことで、排気浄化触媒127の暖機を目的とした内燃機関EGの再始動の回数を低減すると共に、排気浄化触媒127の活性温度が確保される。この結果、燃費の低減を図ると共に、エミッションの低減を図ることができる。