JP6269195B2 - 回転子の製造方法 - Google Patents

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この発明は回転子を製造する技術に関し、特にいわゆるラジアルギャップ形の回転電機に採用される回転子を製造する技術に関する。
特許文献1には、磁石を内蔵したロータにおいて、そのN極からS極への磁束の短絡を防ぐ技術が紹介される。具体的にはロータコアにおいて磁石が埋設される磁石配置開口穴が形成される。磁石配置開口穴の一部によって空隙部が形成される。空隙部とロータコアの外周面との間や空隙部同士の間のブリッジの幅を狭くする。
特許文献1では更に、磁石と磁石配置開口穴との間の外周側空隙部や内周側空隙部には非磁性の樹脂等が充填できる。更に外周側空隙部や内周側空隙部には凝固層が設けられる。凝固層の形成によって、コアを形成する電磁鋼板に圧縮応力を作用させる。これにより、ブリッジの磁束の通過を妨げている。
なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献2〜4を挙げる。これらはいずれもロータコアのスリット内に樹脂磁石を充填する技術を開示する。
特開2012−75256号公報 特許第4726105号公報 特開2013−123303号公報 特開2013−240207号公報
特許文献1では磁石の埋設とは別に、ブリッジに応力を作用させるために新たに凝固層を設けており、工程の増加、繁雑を招来する。
よって本願は、永久磁石が発生する磁束がコア内部で短絡的に流れることを抑制するために必要な工程を簡略化することを目的とする。
この発明は、回転子(1)を製造する方法である。当該方法は、第1工程と第2工程とを備える。
前記回転子は、電機子たる固定子(2)に囲まれて前記固定子と共に回転電機(3)に備えられる。前記回転子は前記回転電機の回転軸(J)に対する径方向において前記固定子と空隙(d)を介して対向する。前記回転子は、前記回転軸に沿って延在するコア(11)及び前記コアに埋め込まれた永久磁石(12)を有する。
前記第1工程は、軟磁性体(10)を変形させて前記コアを得る。前記軟磁性体は、外周面(10a,10b)を有して中心軸(P)に沿って延在する。前記軟磁性体は、前記中心軸に沿って見た端部(13b)が前記外周面に最も近づいて前記中心軸の周りに配列されるスロット(13)の複数が空く。
前記第1工程は、前記スロットへ磁石材料(14)を射出して前記軟磁性体を変形させる。当該変形により、前記外周面と前記端部との間の位置での前記軟磁性体を変形させ、当該位置での前記軟磁性体(101)の磁気特性を劣化させて前記コアを得る。
前記第2工程は、前記磁石材料を着磁して前記永久磁石を得る。
望ましくは前記端部は前記中心軸から見て、前記外周面に対して凸状を呈する。
あるいは望ましくは、前記第1工程と前記第2工程とは並行して実行される。
あるいは望ましくは、前記回転子(1)には、シャフトが填め込まれるシャフト貫通孔(15)が空く。そして前記第1工程では、前記シャフト貫通孔に対応した、前記軟磁性体(10)のシャフト貫通孔(15)において前記軟磁性体が保持される。
この発明にかかる回転子の製造方法で得られた回転子を、その中心軸を回転電機の回転軸に一致させることにより、当該回転子と固定子とで回転電機を構成する。外周面とスロットの端部との間の位置での軟磁性体の磁気特性が劣化するので、永久磁石が発生する磁束がコア内部で短絡的に流れることを抑制する効果が向上する。しかも永久磁石が発生する磁束がコア内部で短絡的に流れることを抑制するために必要な工程を簡略化できる。
また前記端部が前記外周面に対して凸状であるときには、軟磁性体が変形する際、外周面と端部との間の位置で軟磁性体にかかる応力が広範に及ぶので、その磁気特性の劣化も広範に及び、磁束がコア内部で短絡的に流れることを抑制する効果が向上する。
本実施の形態にかかる回転電機の構成を示す断面図である。 従来のロータの構成の断面図である。 回転子を製造する工程を説明する断面図である。 回転子を製造する工程を説明する断面図である。 回転子を製造する工程を説明する断面図である。 回転子の形状を拡大して示す断面図である。 スロットの端部の他の形状を示す断面図である。 スロットの端部の他の形状を示す断面図である。 他の態様を示す断面図である。 他の態様を示す断面図である。 他の態様を示す断面図である。
図1は回転電機3の構成を示す断面図である。回転電機3は回転子1と固定子2とを備えており、これらは簡略化して示されている。
固定子2は電機子であるが、電機子が通常有する電機子巻線、当該電機子巻線が巻回されるティースは省略し、単なる円筒形状として概略を示す。
回転子1は、回転電機3の回転軸Jに沿って延在するコア11と、永久磁石12とを有する。永久磁石12はコア11に埋め込まれる。コア11の回転軸J近傍にはシャフト(図示省略)が填め込まれるシャフト貫通孔15が空けられる。
回転子1は固定子2に囲まれる。より具体的には、回転子1は、回転軸Jに対する径方向において、固定子2と空隙dを介して対向する。
後述するように回転子1の回転軸Jから見た外径は円ではない。よって空隙dは回転軸Jに対する周方向において一定ではない。但し図1では図の繁雑を避けるため、そのような回転子1の外径の変動の詳細は示していない。よって空隙dの変動の詳細も示していない。
ブリッジにおける磁束の短絡の防止を説明するため、従来のロータの構成の断面図を図2に示す。当該断面はロータの回転軸に対して垂直である。
軟磁性体10には、永久磁石12を埋設するスロット13が設けられる。スロット13の端部13bと軟磁性体10の外周面10aとの間の軟磁性体10が、ブリッジ101として機能する。
ブリッジ101は、隣接する永久磁石12よりも外周面10a側の軟磁性体10を連結する。よって永久磁石12のN極(図中では「N」を丸で囲んで示す)とS極(図中では「S」を丸で囲んで示す)との間を軟磁性体10において短絡的に流れる磁束(以下、「短絡磁束」と称する)は、ブリッジ101を経由する。
短絡磁束を抑制するために、ブリッジ101は、回転軸に対する径方向の幅が狭い薄肉部となっている。
本実施の形態では短絡磁束を更に抑制するために、ブリッジ101を変形させ、その磁気特性を劣化させる。
図3は図1にかかる回転子1を製造する工程を説明する断面図である。軟磁性体10は、外周面10a(破線で示す)を有して中心軸Pに沿って延在する。例えば外周面10aは中心軸Pに沿って見てほぼ真円を呈する。後に説明する工程により、外周面10aは外周面10bへと変形する。
軟磁性体10にはスロット13の複数が空いており、スロット13も中心軸Pに沿って延在する。スロット13は中心軸Pの周りに配列される。中心軸Pから見たスロット13は、その一対の端部13bが外周面10aに最も近づいている。
軟磁性体10には中心軸P近傍にシャフト貫通孔15が空いており、これが回転子1のシャフト貫通孔15に相当する。よってこれらのシャフト貫通孔15は同じ符号を用いて示した。
磁石材料14がスロット13に射出され、これによって磁石材料14はスロット13の形状に沿って成形される。このような射出成形は特許文献2等で周知であるので、その詳細を省略する。磁石材料14としては例えばボンド磁石の材料を採用することができる。
通常、特許文献3,4に示唆されるように、その射出によるロータコアの変形は望ましくないとされてきた。しかし本願では、磁石材料14の射出による軟磁性体10の変形を肯定的に利用して、回転子1の望ましい形状を得る。
具体的には、スロット13に磁石材料14を射出することにより、外周面10aは部分的に径方向外側に突出して外周面10bとなる。
より具体的には、位置41,42を導入して以下のように説明される。位置41は、隣接する端部13bの間の、中心軸Pに対する周方向の位置である。位置42は、スロット13の、端部13bから離れた周方向の位置である。スロット13には磁石材料14が射出されるので、後述するように磁石材料14から永久磁石12を得ることにより、位置41は磁極間として、位置42は磁極中心として、それぞれ把握することができる。
外周面10aは、スロット13に磁石材料14を射出することに伴って、位置41よりも位置42において、より中心軸Pから遠ざって外周面10bとなる。このようにして変形した軟磁性体10はコア11となる。
このように部分的に軟磁性体10が変形する理由としては次の二つが考えられる。第1には、位置41においては径方向にスロット13が存在しないことにより、軟磁性体10が変形しにくいことである。第2には、位置42においては径方向にスロット13が存在するので、スロット13の端部13b以外の部分(中央部13a)が磁石材料14の射出によって拡がることである。
磁石材料14から永久磁石12を得るためには、周知の着磁技術を採用することができる。例えば磁石材料14をスロット13へ射出する工程と並行して、当該着磁を行う工程を行ってもよい。あるいは射出する工程の後に、着磁を行ってもよい。
またスロット13への磁石材料14の射出の際、シャフト貫通孔15において軟磁性体10を保持することにより、外周面10aが外周面10bへと変形することは妨げられない。
以上のようにして、軟磁性体10は変形してコア11となり、磁石材料14は永久磁石12となって、回転子1が作製される。
図4及び図5は、上述の工程をより詳細に示す断面図である。図4では磁石材料14を射出する前の軟磁性体10が示されている。図5では磁石材料14を射出した後の軟磁性体10が示されている。このようにブリッジ101が変形することにより、その磁気特性が劣化し、短絡磁束を抑制する効果が向上する。
しかもこのブリッジ101の変形は、永久磁石12の材料である磁石材料14を射出する工程で行われる。よって短絡磁束を抑制するために必要な工程を簡略化できる。
図6は回転子1の形状を拡大して示す断面図である。位置41及びその近傍ではコア11は径方向外側へと膨らんではいないのに対して、位置41から離れて位置42へ向かうに連れて外周面10bが膨らんでいる。これに伴いブリッジ101も変形する。
このようなブリッジ101の変形をもたらすためには、磁石材料14をスロット13へ射出する際に、その射出量を増大させることが望ましい。しかもそのような射出量の増大は、回転子1に設けられる永久磁石12の体積を増大させ、以て回転子1が発生する磁束量を増大させる観点においても、また望ましい。
しかも、軟磁性体10の変形を防止するという観点であれば、スロット13への磁石材料14の射出量は控えることになる。これに対して、射出量の増大は、磁石材料14とスロット13との接触面積の増大を招来する。これは磁石材料14と軟磁性体10との密着性、引いては永久磁石12とコア11との密着性が向上するという観点でも、また望ましい。
以上のようにして作製された回転子1は、その中心軸Pを、回転軸Jと一致させることにより、回転電機3が得られる。
なお、外周面10aから外周面10bへの変形は弾性変形であるか、塑性変形であるかを問わない。
図7及び図8は、端部13bの他の形状を示す断面図である。図7では磁石材料14を射出する前の軟磁性体10が示されている。図8では磁石材料14を射出した後の軟磁性体10が示されている。図4及び図5で示された構成と比較して、端部13bが中心軸P(図3参照)から見て、外周面10aに対して凸状を呈する。
このような形状を有することにより、軟磁性体10にかかる応力が広範に及ぶ。よってブリッジ101を含め、その近傍での軟磁性体10の磁気特性の劣化も広範に及ぶ。これれは短絡磁束を抑制する効果が向上する観点で望ましい。
また、図4及び図5で示された構成と比較して、端部13bにかかる応力が分散される。よって図4及び図5で示された構成と比較して、軟磁性体10の変形によるブリッジ101の破損が発生しにくい。
図1乃至図8ではスロット13が、中心軸Pあるいは回転軸Jに沿って見て、外周面10a,10bに対して凹となる形状である場合が図示された。但しスロット13は、端部13bを有し、これらがスロット13のうち、最も外周面10a,10bに近ければ、図示された以外の形状でもよい。
図9は他の態様を示す断面図である。中心軸Pに沿って見て、スロット13が外周面10bに対して凹となる形状を呈し、よって磁石材料14(ひいては永久磁石12も)同様の形状を呈する。
図10は更に他の態様を示す断面図である。このように、スロット13が呈する形状は直線状であってもよい。
あるいはスロット13が呈する形状は、外周面10a,10bに対して傾斜している形状であってもよい。図11はこのような変形を例示する断面図であり、外周面10a,10bに対して、中央部が欠けたV字型の形状を呈する。
なお、図11に示されたように位置42近傍においてスロット13が連続していない場合、位置42において外周面10bは中心軸Pに対して膨らまない場合もある。位置42近傍でのスロット13同士の間が軟磁性体10の変形を阻むからである。
しかしそのような場合であっても、端部13bは位置42から離れているので、ブリッジ101の変形は得られる。
1 回転子
10 軟磁性体
10a,10b 外周面
11 コア
12 永久磁石
13 スロット
13b 端部
14 磁石材料
15 シャフト貫通孔
2 固定子
3 回転電機
41,42 位置
J 回転軸
P 中心軸

Claims (4)

  1. 電機子たる固定子(2)に囲まれて前記固定子と共に回転電機(3)に備えられ、前記回転電機の回転軸(J)に対する径方向において前記固定子と空隙(d)を介して対向し、前記回転軸に沿って延在するコア(11)及び前記コアに埋め込まれた永久磁石(12)を有する回転子(1)を製造する方法であって、
    外周面(10a,10b)を有して中心軸(P)に沿って延在し、前記中心軸に沿って見た端部(13b)が前記外周面に最も近づいて前記中心軸の周りに配列されるスロット(13)の複数が空いた軟磁性体(10)において、前記スロットへ磁石材料(14)を射出して前記軟磁性体を変形させることにより、前記外周面と前記端部との間の位置での前記軟磁性体を変形させ、当該位置での前記軟磁性体(101)の磁気特性を劣化させて前記コアを得る第1工程と、
    前記磁石材料を着磁して前記永久磁石を得る第2工程と
    を備える、回転子の製造方法。
  2. 前記端部は前記中心軸から見て、前記外周面に対して凸状を呈する、請求項1記載の回転子の製造方法。
  3. 前記第1工程と前記第2工程とは並行して実行される、請求項1又は請求項2記載の回転子の製造方法。
  4. 前記回転子(1)には、シャフトが填め込まれるシャフト貫通孔(15)が空き、
    前記第1工程では、前記シャフト貫通孔に対応した、前記軟磁性体(10)のシャフト貫通孔(15)において前記軟磁性体が保持される、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の回転子の製造方法。
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