JP6268454B1 - 船舶に搭載する盤に内蔵される機器の防振機構及び防振方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】船級規則に規定された条件を満足しつつ、船舶内の限られたスペースに防振特性の優れた機器を設置可能とするとともに、市販品の機器でも使用可能で、汎用性が高くかつスペース効率の優れた機器の防振機構及び防振方法を提供する。【解決手段】船舶に搭載する盤1の内部に収容され電子回路基板3を内蔵する機器2と、前記機器に取り付けられた複数の防振部材10a〜10dと、を有する機器の防振機構6であって、前記複数の防振部材は前記機器の重心位置から略等距離でかつ略対称な位置に配置され、前記機器の質量と前記防振部材のバネ定数によって定まる固有振動数を、前記電子回路基板の質量とバネ定数によって決定される固有振動数よりも低く、かつ前記電子回路基板の質量とバネ定数によって決定される固有振動数において振動伝達率が1以下になるように前記防振部材のバネ定数を決定する。【選択図】図2
Description
本発明は防振機構に関し、特に、盤を船舶に搭載する場合に、盤内部に電子回路基板等を内蔵した機器がある場合における機器の防振機構及び防振方法に関する。
制御盤や配電盤などの一般的な盤の内部には様々な機器が設置されており、それぞれが固有振動数をもっている。また、機器の内部には電子回路基板を備えているものもあり、基板自身も固有振動数をもっている。特に、船舶に搭載する盤では、船舶のメインエンジンなどの振動にさらされるため、振動に対し脆弱な部品に対しては防振対策が必要である。
ところで、船舶は船体の構造や設備の安全性を保つため、船級協会が制定する技術規則(船級規則)を満足し、認証を受けなければならない。一般的に船舶内における振動は、メインエンジンの大きさ等の条件により加振周波数は変化するが、船級協会例えば日本海事協会(ClassNK)の船級規則の規定に定められている環境試験条件によれば、加振特性は周波数2〜13.2Hz帯では振幅±1mm、周波数13.2〜100Hz帯では加速度0.7Gと規定されている。
以下、従来の防振方法について図7〜図11を参照して説明する。
図7において、1は盤、2は機器、3は機器内蔵の電子回路基板、4は防振機構、5は基礎であり、盤1と基礎5の間に防振機構4を設けた構成例である(特許文献1)。
図7において、1は盤、2は機器、3は機器内蔵の電子回路基板、4は防振機構、5は基礎であり、盤1と基礎5の間に防振機構4を設けた構成例である(特許文献1)。
この構成例では、周囲の油、湿気、熱等の悪環境から防護するため、及び危険防止の観点から外部からの接近を防ぐため、機器2を盤1の内部に収納している。機器2として、例えば汎用のインバータユニットや発電機の自動電圧調整器等の機器が挙げられるが、これに限定されるものではない。
防振機構4は弾性体等からなる防振部材10を備え(図示せず)、メインエンジンなどの振動の伝達源である基礎5から盤1への振動の伝達を抑制するために設けられている。
このような盤1を天井等高さ制限のある船内の空間に設置する場合は、図9(a)に示すように、防振機構4の高さ(h1)の分、盤1の高さを低くするか、又は図9(b)に示すように、防振機構4の高さ(h2)を低くする必要がある。しかしながら、防振機構4がゴム等の弾性体である場合、高さを低くするとそのバネ定数が高くなる(硬くなる)ため、後述する理由により防振機構4が減衰できる振動周波数範囲は狭くなる。
このような盤1を天井等高さ制限のある船内の空間に設置する場合は、図9(a)に示すように、防振機構4の高さ(h1)の分、盤1の高さを低くするか、又は図9(b)に示すように、防振機構4の高さ(h2)を低くする必要がある。しかしながら、防振機構4がゴム等の弾性体である場合、高さを低くするとそのバネ定数が高くなる(硬くなる)ため、後述する理由により防振機構4が減衰できる振動周波数範囲は狭くなる。
一方、防振機構4のバネ定数が小さい(柔らかい)ものを使用すると、盤1の重量及び防振機構4のバネ定数で決定される固有周波数を低くすることができるため、防振機構4が減衰できる振動周波数範囲を広くとることができるが、図10に示すように、隣接する盤1や壁面との接触を防止するため、盤1の振動や船体の傾きによる振れ幅(振幅)を考慮したスペース(h3)を設ける必要があり、スペース効率が悪化する。
そのため、船内という限られたスペースに盤1を設置する場合にはバネ定数の高い(硬い)防振部材を使用し、盤の振動による振れ幅(振幅)を抑える必要がある。しかしながら、バネ定数を高くすると式1の関係式により、防振部材の固有振動数は高い周波数となるので、防振機構としての低周波域における効力が期待できない。
ここで、Fnは固有振動数[Hz]、kはバネ定数[kN/m]、gは重力加速度9.8[m/s2]、mは重量[kN]である。
図7に示す構成例において、例えば、機器2等の内蔵品も含めた盤1の重量mを14.7kN、防振機構4の防振部材10はニトリルゴムを使用したものとしてバネ定数kを17.64kN/mmとすると、式1により盤1と防振機構4の組合せからなる防振系の固有振動数Fnは、17.3Hzである。
この振動特性を図4に示す。図4において、左側縦軸は加速度G(以下、「加振力」ともいう)、右側縦軸は振動伝達率、横軸は振動数(Hz)であり、領域Aが船級規則の規定に定められている振動加振力の領域である。図4には、図7に示す従来の防振機構(固有振動数Fnが17.3Hzの場合)の伝達特性曲線bと、バネ定数が高い場合の伝達特性曲線cを図示しているが、さらに本発明に係る防振機構の伝達特性曲線aも図示している。その詳細は後述する。
一方、機器2に内蔵される電子回路基板3も図8(b)に示すような振動モードを有しており、また、電子回路基板3の重量とバネ定数で決まる固有振動数を持っている。
複数の構成素子3aを搭載した電子回路基板3は、図8(a)に示すように、支持部材3bを介して機器2に取り付け固定されているが、盤1の振動にともない、図8(b)に示すように支持部材3bを支点として振動する。
複数の構成素子3aを搭載した電子回路基板3は、図8(a)に示すように、支持部材3bを介して機器2に取り付け固定されているが、盤1の振動にともない、図8(b)に示すように支持部材3bを支点として振動する。
この電子回路基板3の固有振動数は基板のサイズにもよるが、平均的に30〜40Hz程度で、例えば、固有振動数が30Hzの場合の振幅増大係数であるQ値(基盤の共振の倍率)は17倍程度である。
図7に示す従来の防振機構では、30Hzでの振動伝達率Trは、図4に示すように、約0.49で、このとき基板は0.7G×0.49×17=5.83Gの加速度が電子回路基板3に加わることになり、電子回路基板3が損傷する可能性が高い。また、図8(b)に示すような振動モードで電子回路基板3が振動すると、電子回路基板3に接続されているコネクター等に対して相対的な変位を持って振動し、電子回路基板3とコネクターの間の接触部分が擦られて摩耗し、電気信号の伝達ができなくなることによって機器2が故障する場合もある。
次に、図7に示す従来の防振機構の固有振動数である17.3Hzを考えると(図4の振動伝達曲線b参照)、ニトリルゴムの共振時の振動伝達率は5倍程度であるので、電子回路基板3は0.7G×5=3.5Gの加速度を受けるため、この場合も電子回路基板3が損傷する可能性が高い。
このような損傷を防止するために、図11に示すように、機器2に内蔵された電子回路基板3に樹脂等からなる充填剤を充填する振動対策が提案されている。図11において、3は電子回路基板、7は充填用ケース、8は樹脂等の充填剤、3aは電子回路基板3の構成素子である。この構成例では、電子回路基板3を充填用ケース7内に収容し、充填用ケース7内に充填剤8を充填し、電子回路基板3上の構成素子3aが振動等で動かないように固定したものである(特許文献2)。
上述したように、図7に示す従来の防振機構では、盤1と基礎5の間に防振機構4を設けているため、式1の関係により、搭載する盤1の質量によって防振機構4の固有振動数が変動することになる。そのため、充分な防振効果を得ようとすると、盤1の質量によって防振機構4のバネ定数をその都度変更する必要がある。
特に、盤1の構成は電源回路や負荷回路の数量、又は設置可能スペースの要因により多岐にわたるため、盤1の質量や構成は一定にはならない。そのため、防振機構4を盤1の質量や構成に応じてその都度変更する必要があり、製造組立工程が複雑化するとともに汎用性に欠けるという課題がある。
また、低周波域での防振効果を得るために、防振機構4の固有振動数を低くしようとすると、バネ定数の小さい(柔らかい)防振機構4を使用する必要があり、盤1の振れ幅(振幅)が大きくなるため、盤1の振れ幅を考慮した余分な設置スペースが必要になり、スペース効率が悪化し(図10参照)、逆に、設置スペースを縮小するために、バネ定数の高い防振機構4を使用すると、図4の伝達特性曲線cで示すように、防振機構4の固有振動数が高くなるため、低周波域での防振効果が期待できなくなるという課題がある。
さらに、盤1と基礎5の間に防振機構4を設けることから、据付に必要な天井面までの高さを十分に確保する必要があるため、その点でもスペース効率が悪化するという課題がある(図9(a)、(b)参照)。
このように、船舶の限られた空間の中に設置する設備として、占有する体積を小さくし、スペース効率を向上させることが求められているが、従来の防振機構4では、このような問題を解決することが難しいという課題があった。
他にも、船内の機関室等は、高温・多湿、油等の悪環境にさらされるが、防振機構4として一般的にはゴム等の弾性体が使用されているため劣化が進みやすく、弾性体の防振特性が変化することから、防振機構4を随時交換する必要がある。しかしながら、防振機構4は盤1の下に設置されているため、防振機構4の交換作業が困難となるという課題があった。
さらに、盤1の下部に防振機構4を設置したことで、波のうねり等により盤1が通常(防振部材を設けない場合)より傾きやすくなる。したがって、図10に示すように、隣接する盤1や壁面との接触を防止するためのスペースを設ける必要があり、これによりスペース効率が悪化するという課題がある。
また、図11に示す充填剤を用いた従来の防振機構では、振動から保護する対象である電子回路基板3を直接充填剤8で振動しないように固定していることで、盤1の下部等に防振機構4を設ける必要がないため、スペース効率に優れている。しかしながら、電子回路基板3によっては充填剤8を使用できない場合があったり、機器2に内蔵された電子回路基板3に充填用ケース7を取り付けたり、充填剤8を必要とする等、部品点数及び製造工程数が増加し、汎用性に欠けるとともに、製造コストが増大するという課題があった。
本発明は、上述した様々な課題を解決するためになされたもので、船級規則に規定された条件を満足しつつ、船舶内の限られたスペースに防振特性の優れた機器を設置可能とするとともに、市販品の機器でも使用可能で、汎用性が高くかつスペース効率の優れた機器の防振機構及び防振方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る機器の防振機構は、船舶に搭載する盤の内部に収容され電子回路基板を内蔵する機器と、前記機器に取り付けられた複数の防振部材と、を有する機器の防振機構であって、前記複数の防振部材は前記機器の重心位置から略等距離でかつ略対称な位置に配置され、前記機器の質量と前記防振部材のバネ定数によって定まる固有振動数を、前記電子回路基板の質量とバネ定数によって決定される固有振動数よりも低く、かつ前記電子回路基板の質量とバネ定数によって決定される固有振動数において振動伝達率が1以下になるように前記防振部材のバネ定数を決定することを特徴とする。
また、本発明に係る機器の防振方法は、本発明に係る防振機構を用いた機器の防振方法において、複数の防振部材を前記機器の重心位置から略等距離でかつ略対称な位置に配置し、前記機器の質量と前記防振部材のバネ定数によって定まる固有振動数を、前記機器に内蔵された電子回路基板の質量とバネ定数によって決定される固有振動数よりも低く、かつ前記電子回路基板の質量とバネ定数によって決定される固有振動数において振動伝達率が1以下になるように前記防振部材のバネ定数を決定することを特徴とする。
本発明に係る機器の防振機構及び防振方法によれば、船級規則に規定された条件を満足しつつ、船舶内の限られたスペースに防振特性の優れた機器を設置可能とするとともに、市販品の機器でも使用可能で、汎用性が高くかつスペース効率の優れた機器の防振機構及び防振方法を提供することができる。
以下、本発明に係る機器の防振機構及び防振方法の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において同一構成には同一符号を付し、重複説明を省略する。
(構成)
図1は本実施形態に係る防振機構の模式図であり、図2は防振機構6が取り付けられた機器2の全体構成図である。図1において、盤1は従来の防振機構4を介さず基礎5に直接据付けられ、機器2は本実施形態に係る防振機構6を介して盤1に取り付けられている。
(構成)
図1は本実施形態に係る防振機構の模式図であり、図2は防振機構6が取り付けられた機器2の全体構成図である。図1において、盤1は従来の防振機構4を介さず基礎5に直接据付けられ、機器2は本実施形態に係る防振機構6を介して盤1に取り付けられている。
防振機構6は、図2に示すように、機器2の四隅に配置される4つの防振部材10a〜10dを備えている。防振部材10a〜10dは、第1の固定金具11a〜11dにより盤1に取り付けられ、第2の固定金具12a、12bにより機器2に取り付けられている。
なお、図2に示す例では、防振部材10a〜10dは、盤1を構成する筐体9に取り付けられているが、これに限定されず盤1に直接取り付けてもよい。
なお、図2に示す例では、防振部材10a〜10dは、盤1を構成する筐体9に取り付けられているが、これに限定されず盤1に直接取り付けてもよい。
4つの防振部材10a〜10dは、船体からの振動を減衰させ、機器2及び機器内蔵の電子回路基板3の損傷を防止している。
防振部材10a〜10dは、例えばポリウレタンエラストマー等からなる弾性体が用いられる。
防振部材10a〜10dは、例えばポリウレタンエラストマー等からなる弾性体が用いられる。
(作用)
以下、上記のように構成された防振機構の作用について説明する。
防振部材10a〜10dは、その防振部材10a〜10dと機器2の組合せにおける固有振動数が、防振する機器2の内部の電子回路基板3の固有振動数である30〜40Hz帯とならないように選定する。具体的には、式2を用いて、固有振動数は30Hz未満で、かつ加振力を減衰するため振動伝達率が1以下となるようにその材質及び寸法形状を選定する。
以下、上記のように構成された防振機構の作用について説明する。
防振部材10a〜10dは、その防振部材10a〜10dと機器2の組合せにおける固有振動数が、防振する機器2の内部の電子回路基板3の固有振動数である30〜40Hz帯とならないように選定する。具体的には、式2を用いて、固有振動数は30Hz未満で、かつ加振力を減衰するため振動伝達率が1以下となるようにその材質及び寸法形状を選定する。
ここで、kはバネ定数[kN/m]、gは重力加速度9.8[m/s2]、mは重量[kN]である。
式2の関係から、機器の質量(m)が増えれば、防振部材10a〜10dの厚さを薄くするかポリウレタンの発泡率を低くする等して、防振部材10a〜10dのバネ定数(k)を高くする。
また、船級規則に定められている船舶のメインエンジンの加振特性は、周波数2〜13.2Hz帯では振幅は±1mm、周波数13.2〜100Hz帯では加速度0.7Gと規定されているため、2〜13.2Hz帯での加速度は式3により求められる。
ここで、aは加速度[G]、d0−pは片振幅[m]、fは周波数[Hz]、gは重力加速度9.8[m/s2]である。
図3(a)、(b)は、式3を用いた2〜13Hz帯での周波数と加速度の対比表及び対比曲線である。
図3(a)、(b)から、2〜13Hz帯での加速度は0.02〜0.68Gとなり、13.2〜100Hz帯での加速度0.7Gよりも低い加速度となることがわかる。
図3(a)、(b)から、2〜13Hz帯での加速度は0.02〜0.68Gとなり、13.2〜100Hz帯での加速度0.7Gよりも低い加速度となることがわかる。
図3(a)、(b)からわかるように、2〜13Hz帯では加速度は低く抑えられるので、この周波数帯を防振機構4a〜4dの固有振動数とすることで、防振機構4a〜4dが共振した際に機器2へ加わる加速度を低減することができる。
例えば、防振部材10a〜10dと機器2の組合せの固有振動数である10Hzにおける加振力は図3(a)、(b)に示すように、0.4Gに低減される。そして、図4の伝達特性曲線aに示すように、10Hzでの防振部材10a〜10dの振動伝達率は4であるので、防振部材10a〜10dを取り付けた機器2に加わる加速度は、0.4G(加速度)×4(振動伝達率)となり、1.6Gの加速度が機器2に加わることとなる。
一方で、防振部材10a〜10dと機器2の組合せの固有振動数を13.2Hz以上とした場合は、図3(a)、(b)に示すように、船級が規定する振動加振力は0.7G(加速度)であるため、0.7G×4(振動伝達率)=2.8Gの加速度が機器2に加わることとなる。
したがって、本発明が対象とする船内に設置される盤1においては、防振部材10a〜10dと機器2の組合せの固有振動数を13.2Hz以下とすることで機器2に加わる加速度を13.2Hz以上の場合と比較し低減できる。
しかしながら、13.2Hz以下の共振点では、振幅は±1mm(振幅)×4(振動伝達率)となるので、±4mmと振幅が大きくなることが懸念されるが、機器2に加わる周波数(13.2Hz以下)は、電子回路基板3の固有振動数(30Hz)以下であるので、電子回路基板3の動きとしては、機器2全体と一緒に動いているだけで、図8(b)に示すような相対的な変位も変形も発生しないため、電子回路基板3の損傷を防止できる。
このことから、防振部材10a〜10dと機器2の組合せの固有振動数を13.2Hz以下に設定すれば、防振部材10a〜10dと機器2が共振した際でも防振対象である機器2及び電子回路基板3に対して損傷を与えることがなくなる。
また、機器2の内部の電子回路基板3の固有振動数である30Hzにおける機器2(電子回路基板3)に加わる加速度は、電子回路基板3の共振の倍率Q値を17、防振部材10a〜10dの減衰率を14%とすれば、0.7G×17×0.14 =1.66Gの加速度が電子回路基板3に加わることになる。電子回路基板3に実装している構成素子3aが振動によって外れたり、電子回路基板3のコネクターの接触部分が擦られて摩耗し、電気信号の伝達ができなくなるような故障を起こす恐れのある加速度は、電子回路基板3の仕様によって異なるが、それを3.0Gと仮定すると、30Hzで共振した際でも防振対象である電子回路基板3に対して損傷を与えることはない。
このように防振部材10a〜10dと機器2の組合せにおける固有振動数を13.2Hz以下とし、電子回路基板3の固有振動数である30Hzでは、かつ加振力を減衰するために振動伝達率が1以下かつ電子回路基板3が故障しない加速度まで加振力を減衰する振動伝達率となるように防振部材10a〜10dのバネ定数を選定することで、電子回路基板3の損傷を防止できる。
また、図7に示す従来の防振機構では、盤1を下部から防振機構4で支えていたため、式1の関係によりバネ定数の高い防振部材を使用しなければならなかった。また、盤1の重心位置は盤によって多岐にわたるため、盤1の重心位置から防振機構4の固定点までの距離は均等にはならない。
そして、盤1に印加された振動の加振力により盤1の重心に振動の力が作用する場合や、船体が波浪等により傾斜した場合を考えた場合、盤1の重心位置と防振機構4の間には距離があるため振動加振力によりモーメントが発生する。
したがって、振動を受けた際に図7に示す防振機構4では、盤1の質量に重心から防振機構4までの距離を掛けたモーメントの力が加わることになるが、重心位置から固定点までの距離が均等ではないため、防振部材の固定点には異なるモーメントが加わることになる。そのため、重心からの距離が遠い固定点では、他の固定点より大きなモーメントが加わることになるため、その固定点のみバネ定数の高い(硬い)防振部材を使用しなければならなかった。また、船体が傾斜した場合には盤1の上部に防振機構4が無いことによってもモーメントが発生し盤1が傾いてしまっていた。
これに対して、本実施形態に係る防振機構6では、機器2の重心に対して対称な位置に防振部材10a〜10dを配置することで、防振部材10a〜10dに加わるモーメントを均一にしている。この点について、図5(a)、(b)を用いて具体的に説明する。
図5は、図1の防振機構の防振部材10a〜10dと機器2の重心位置13との関係を示した図である。そのうち、図5(a)は機器2の正面図、図5(b)は側面図である。
図5(a)に示すように、防振部材10a〜10dは機器2の重心位置13に対し左右対称に配置し、かつ、図5(b)に示すように、機器2の重心位置13と、防振部材10a〜10dに第1の固定金具11a〜11d及び第2の固定金具12a、12bを固定している固定ボルト14a〜14dを前後方向において同一位置とすることで、防振部材10a〜10dと機器2の重心位置13までの距離を均一にしている。
図5(a)に示すように、防振部材10a〜10dは機器2の重心位置13に対し左右対称に配置し、かつ、図5(b)に示すように、機器2の重心位置13と、防振部材10a〜10dに第1の固定金具11a〜11d及び第2の固定金具12a、12bを固定している固定ボルト14a〜14dを前後方向において同一位置とすることで、防振部材10a〜10dと機器2の重心位置13までの距離を均一にしている。
そのため、振動を受けた際に、全ての防振部材10a〜10dに同一のモーメントが加わるため、お互いのモーメントは打ち消しあうことができるので防振部材10a〜10dは機器2の質量を支えればよく、モーメントによる力は支える必要は無くなる。したがって、全ての防振部材10a〜10dは同一のものを使用することが可能となる。
なお、防振部材10a〜10dと機器2の重心位置13からの距離は完全に均一であることが望ましいが、完全に均一にならない場合でも、距離の差分によるモーメントが発生するだけであるので、図8に示す構成例よりもその大きさは小さく、機器2の傾きは小さい。
次に、図6は従来の機器2の取り付け方法を示す図で、通常、機器2は盤1の筐体9に防振機構を介さずに直接固定されている。そのため、機器2の背面からの放熱は筐体9によって妨げられている。
それに対し、本実施形態に係る防振機構6では、図5(b)に示すように機器2と筐体9の間に所定間隔(h4)の空隙を設けることができるので、機器2の背面からの放熱を促進することができる。その結果、通常の取り付け方法よりも機器2の温度上昇を抑えることが可能である。
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、船級規則に規定された条件を満足しつつ、船舶内の限られたスペースに防振特性の優れた機器2を設置可能とするとともに、市販品の機器でも使用可能で、汎用性が高くかつスペース効率の優れた機器の防振機構及び防振方法を提供することができる。
また、機器2と盤1の筐体9の間に所定間隔の放熱空隙を設けることができるので、機器2の温度上昇を抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、船級規則に規定された条件を満足しつつ、船舶内の限られたスペースに防振特性の優れた機器2を設置可能とするとともに、市販品の機器でも使用可能で、汎用性が高くかつスペース効率の優れた機器の防振機構及び防振方法を提供することができる。
また、機器2と盤1の筐体9の間に所定間隔の放熱空隙を設けることができるので、機器2の温度上昇を抑制することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…盤、2…機器、3…電子回路基板、4…防振機構、5…基礎、6…防振機構、7…充填用ケース、8…充填剤、9…筐体、10a〜10d…防振部材、11a〜11d…第1の固定金具、12a、12b…第2の固定金具、13…重心位置、14a〜14d…固定ボルト。
Claims (4)
- 船舶に搭載する盤の内部に収容され電子回路基板を内蔵する機器と、前記機器に取り付けられた複数の防振部材と、を有する機器の防振機構であって、
前記複数の防振部材は前記機器の重心位置から略等距離でかつ略対称な位置に配置され、
前記機器の質量と前記防振部材のバネ定数によって定まる固有振動数を、前記電子回路基板の質量とバネ定数によって決定される固有振動数よりも低く、かつ前記電子回路基板の質量とバネ定数によって決定される固有振動数において振動伝達率が1以下になるように前記防振部材のバネ定数を決定することを特徴とする機器の防振機構。 - 防振部材のバネ定数と機器の重量で定まる固有振動数を13.2Hz以下としたことを特徴とする請求項1記載の機器の防振機構。
- 前記機器の背面と前記盤との間に放熱用に空隙を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の機器の防振機構。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の防振機構を用いた機器の防振方法において、
複数の防振部材を前記機器の重心位置から略等距離でかつ略対称な位置に配置し、前記機器の質量と前記防振部材のバネ定数によって定まる固有振動数を、前記機器に内蔵された電子回路基板の質量とバネ定数によって決定される固有振動数よりも低く、かつ前記電子回路基板の質量とバネ定数によって決定される固有振動数において振動伝達率が1以下になるように前記防振部材のバネ定数を決定することを特徴とする機器の防振方法。
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CN113905555A (zh) * | 2021-09-22 | 2022-01-07 | 吴炳宜 | 一种线路板保护箱 |
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-
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- 2016-12-28 JP JP2016254711A patent/JP6268454B1/ja active Active
Patent Citations (4)
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