{レーザレーダ装置11の構成例}
図1は、本発明を適用したレーザレーダ装置(物体検出装置)の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
レーザレーダ装置11は、例えば、車両に設けられ、その車両の進行方向にある物体の検出を行う。より具体的に言えば、レーザレーダ装置11は室内側フロントガラス上の室内バックミラーの下に設けられる。さらに、その取付け位置はワイパーブレードがフロントガラスを拭く領域内である。なお、以下、レーザレーダ装置11により物体の検出が可能な領域を監視領域と称する。また、以下、レーザレーダ装置11が設けられている車両を他の車両と区別する必要がある場合、自車両と称する。さらに、以下、自車両の左右方向(車幅方向)と平行な方向を水平方向と称する。
レーザレーダ装置11は、制御部21、投光部22、受光部23、測定部24、演算部25、物体トラッキング部26、通知部27、およびブレーキ制御部28を含むように構成される。
制御部21は、車両制御装置12からの指令や情報等に基づいて、レーザレーダ装置11の各部の制御を行う。
投光部22は、物体の検出に用いるパルス状のレーザ光(レーザパルス)である測定光を監視領域に投光する。
受光部23は、測定光の反射光を受光し、水平方向のそれぞれ異なる方向からの反射光の強度(明るさ)を検出する。そして、受光部23は、各方向の反射光の強度に応じた電気信号である複数の受光信号を出力する。
測定部24は、受光部23から供給される受光信号に基づいて受光値の測定を行い、測定結果を演算部25に供給する。
演算部25は、測定部24から供給される受光値の測定結果に基づいて、監視領域内の物体の検出を行い、検出結果を制御部21、物体トラッキング部26、および通知部27に供給する。
物体トラッキング部26は、演算部25の検出結果に基づいて、物体の動きをトラッキング(追跡)し、物体の位置と物体の加速度を用いて現在の物体の位置を推定すると共に、その信頼度を求め、推定した物体の位置の情報と信頼度の情報とからなるトラッキング情報を通知部27、およびブレーキ判定部28に出力する。
ブレーキ判定部28は、トラッキング情報に基づいて、自動ブレーキを動作させるか否かを判定し、判定結果を通知部27に出力する。
通知部27は、監視領域内の物体の検出結果に基づいた、ブレーキ判定部28からの判定結果に応じて、自動ブレーキによる動作をさせるための信号を車両制御装置12に供給する。また、通知部27は、物体トラッキング部26より供給されてくるトラッキング情報を車両制御装置12に供給する。さらに、通知部27は、演算部25より供給されてくる演算結果である物体の検出結果の情報を車両制御装置12に出力する。
車両制御装置12は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)等により構成され、監視領域内の物体の検出結果に基づいて、自動ブレーキ制御や運転者への警報等を行う。
車両センサ13は、車両に設置されており、自車両の速度を検出し、制御部21に供給する。
{投光部22の構成例}
図2は、レーザレーダ装置11の投光部22の構成例を示している。投光部22は、駆動回路101、発光素子102、及び、投光光学系103を含むように構成される。
駆動回路101は、制御部21の制御の下に、発光素子102の発光強度や発光タイミング等の制御を行う。
発光素子102は、例えば、レーザダイオードからなり、駆動回路101の制御の下に、測定光(レーザパルス)の発光を行う。発光素子102から発光された測定光は、レンズ等により構成される投光光学系103を介して監視領域に投光される。
{受光部23の構成例}
図3は、レーザレーダ装置11の受光部23の構成例を示している。受光部23は、受光光学系201及び受光素子202−1乃至202−16を含むように構成される。
なお、以下、受光素子202−1乃至202−16を個々に区別する必要がない場合、単に受光素子202と称する。
受光光学系201は、レンズ等により構成され、光軸が車両の前後方向を向くように設置される。そして、受光光学系201は、監視領域内の物体等により反射された測定光の反射光が入射し、入射した反射光を各受光素子202の受光面に入射させる。
各受光素子202は、例えば、入射した光電荷をその光量に応じた電流値の受光信号に光電変換するフォトダイオードからなる。また、各受光素子202は、受光光学系201に入射した反射光が集光する位置において、受光光学系201の光軸に対して垂直、かつ、自車両の車幅方向に平行(すなわち、水平方向)に一列に並ぶように設けられている。そして、受光光学系201に入射した反射光は、受光光学系201への水平方向の入射角度に応じて、各受光素子202に振り分けられて入射する。従って、各受光素子202は、監視領域からの反射光のうち、水平方向においてそれぞれ異なる方向からの反射光を受光する。これにより、監視領域は水平方向の複数の方向における複数の領域(以下、検出領域と称する)に分割され、各受光素子202は、それぞれ対応する検出領域からの反射光を個別に受光する。そして、受光素子202は、受光した反射光をその受光量に応じた電流値の受光信号に光電変換し、得られた受光信号を測定部24に供給する。
{測定部24の構成例}
図4は、レーザレーダ装置11の測定部24の構成例を示している。測定部24は、選択部251、電流電圧変換部252、増幅部253、及び、サンプリング部254を含むように構成される。選択部251は、マルチプレクサ(MUX)261−1乃至261−4を含むように構成される。電流電圧変換部252は、トランス・インピーダンス・アンプ(TIA)262−1乃至262−4を含むように構成される。増幅部253は、プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)263−1乃至263−4を含むように構成される。サンプリング部254は、A/Dコンバータ(ADC)264−1乃至264−4を含むように構成される。
なお、以下、MUX261−1乃至261−4、TIA262−1乃至262−4、PGA263−1乃至263−4、及び、ADC264−1乃至264−4をそれぞれ個々に区別する必要がない場合、それぞれ単にMUX261、TIA262、PGA263、及び、ADC264と称する。
MUX261−1は、制御部21の制御の下に、受光素子202−1乃至202−4から供給される受光信号のうち1つ以上を選択して、TIA262−1に供給する。なお、MUX261−1は、複数の受光信号を選択した場合、選択した受光信号を加算してTIA262−1に供給する。
MUX261−2は、制御部21の制御の下に、受光素子202−5乃至202−8から供給される受光信号のうち1つ以上を選択して、TIA262−2に供給する。なお、MUX261−2は、複数の受光信号を選択した場合、選択した受光信号を加算してTIA262−2に供給する。
MUX261−3は、制御部21の制御の下に、受光素子202−9乃至202−12から供給される受光信号のうち1つ以上を選択して、TIA262−3に供給する。なお、MUX261−3は、複数の受光信号を選択した場合、選択した受光信号を加算してTIA262−3に供給する。
MUX261−4は、制御部21の制御の下に、受光素子202−13乃至202−16から供給される受光信号のうち1つ以上を選択して、TIA262−4に供給する。なお、MUX261−4は、複数の受光信号を選択した場合、選択した受光信号を加算してTIA262−4に供給する。
従って、各受光素子202は、受光素子202−1乃至202−4からなる第1のグループ、受光素子202−5乃至202−8からなる第2のグループ、受光素子202−9乃至202−12からなる第3のグループ、受光素子202−13乃至202−16からなる第4のグループに分割される。そして、MUX261−1は、第1のグループの受光素子202の選択を行い、選択した受光素子202の受光信号を出力する。MUX261−2は、第2のグループの受光素子202の選択を行い、選択した受光素子202の受光信号を出力する。MUX261−3は、第3のグループの受光素子202の選択を行い、選択した受光素子202の受光信号を出力する。MUX261−4は、第4のグループの受光素子202の選択を行い、選択した受光素子202の受光信号を出力する。
各TIA262は、制御部21の制御の下に、MUX261から供給される受光信号の電流−電圧変換を行う。すなわち、各TIA262は、入力された電流としての受光信号を電圧としての受光信号に変換するとともに、制御部21により設定されたゲインで変換後の受光信号の電圧を増幅する。そして、各TIA262は、増幅後の受光信号を後段のPGA263に供給する。
各PGA263は、制御部21の制御の下に、TIA262から供給される受光信号の電圧を、制御部21により設定されたゲインで増幅し、後段のADC264に供給する。
各ADC264は、受光信号のA/D変換を行う。すなわち、各ADC264は、制御部21の制御の下に、PGA263から供給されるアナログの受光信号のサンプリングを行うことにより受光値の測定を行う。そして、各ADC264は、受光値のサンプリング結果(測定結果)を示すデジタルの受光信号を演算部25に供給する。
{MUX261の構成例}
図5は、MUX261の機能の構成例を模式的に示している。
MUX261は、デコーダ271、入力端子IN1乃至IN4、接点C1乃至C4、及び、出力端子OUT1を備えている。接点C1乃至C4の一端は、それぞれ入力端子IN1乃至IN4に接続されており、接点C1乃至C4の他の一端は、出力端子OUT1に接続されている。
なお、以下、入力端子IN1乃至IN4及び接点C1乃至C4を個々に区別する必要がない場合、単に入力端子IN及び接点Cと称する。
デコーダ271は、制御部21から供給される選択信号をデコードし、デコードした選択信号の内容に従って、各接点Cのオン/オフを個別に切り替える。そして、オンになっている接点Cに接続されている入力端子INに入力される受光信号が選択され、出力端子OUT1から出力される。なお、オンになっている接点Cが複数ある場合、選択された複数の受光信号が加算されて出力端子OUT1から出力される。
{演算部25および物体トラッキング部26の構成例}
図6は、演算部25および物体トラッキング部26の構成例を示している。
演算部25は、積算部301、および検出部302を含むように構成される。また、検出部302は、ピーク検出部311、および物体検出部312を含むように構成される。
積算部301は、同じ受光素子202の受光値の積算をサンプリング時刻毎に行い、その積算値(以下、積算受光値と称する)をピーク検出部311に供給する。
ピーク検出部311は、各受光素子202の積算受光値(反射光の強度)に基づいて、測定光の反射光の強度の水平方向及び時間方向(距離方向)のピークを検出し、検出結果を物体検出部312に供給する。
ここで、時間方向(距離方向)のピークについて説明する。レーザレーダ装置は、投光された測定光が物体によって反射されて、レーザレーダ装置に帰ってくるまでの時間(飛行時間と呼ぶ)を用いて該物体までの距離を算出している。この飛行時間は、距離を光速で除した値と比例しているため、時間が分かれば距離を算出することができる。ある受光素子202が反射光を受光した時刻がt1だとした場合には、時刻t1における積算受光値が他の時刻の積算受光値よりも大きい値となる。受光素子202毎に、その積算受光値が最大となるサンプリング時刻とこの時刻における積算受光値とからピークを特定することができる。このピークが時間方向(距離方向)のピークである。例えば、後述する図9の最下段で示されるサンプリング時刻に対するサンプリング値の積算値の分布におけるピークが、時間方向(距離方向)のピークに相当する。
また、水平方向のピークについて説明する。前述したように、受光素子202は、車両の幅方向に向かって水平に配置されている。監視領域は水平方向に複数の検出領域に分割され、各受光素子202は、それぞれ対応する検出領域からの反射光を受光する。例えば、車両に設置されている2つのリフレクタは、レーザレーダ装置からほぼ同じ距離だけ離れており、また水平方向にも車幅よりもやや短い距離離れている。あるサンプリング時刻において2つのリフレクタの一方からの反射光を受光素子202−4が受光し、それとは離れて配置されている受光素子202−8が2つのリフレクタの他方からの反射光を受光するとした場合には、水平方向に配置された受光素子202−1乃至受光素子202−16のうち、受光素子202−4と受光素子202−8との2箇所において積分受光値が突出して大きくなる。これが水平方向のピークである。例えば、後述する図11の最上段で示される水平方向に対する積算受光値の分布におけるピークが、水平方向のピークに相当する。
物体検出部312は、積算受光値(反射光の強度)の水平方向及び時間方向(距離方向)の分布及びピークの検出結果に基づいて、監視領域内の物体の検出を行い、検出結果を制御部21、通知部27、および物体トラッキング部26に供給する。
物体トラッキング部26は、演算部25の検出部302における物体検出部312の検出結果に基づいて、物体の動きをトラッキング(追跡)し、物体検出部312により検出された物体の位置と物体の加速度を用いて現在の物体の位置を推定すると共に、その信頼度を算出する。より具体的には、物体トラッキング部26は、ワイパ検出部26a、雨滴検出部26b、信頼度決定部26c、および位置特定部26dを備えている。
ワイパ検出部26aは、物体検出部312の検出結果に基づいて、検出されたものが自車のワイパであるか否かを検出する。雨滴検出部26bは、物体検出部312の検出結果に基づいて、雨滴を検出し、検出した雨滴の量に基づいて、現在の降雨量を検出する。
信頼度決定部26cは、ワイパ経過時間と物体の検出結果に対する信頼度との関係を示す曲線を、降雨量毎に記憶しており、物体の検出結果に対する信頼度を決定する。より詳細には、信頼度決定部26cは、雨滴検出部26bにより検出された降雨量に基づいて、記憶している信頼度減衰曲線を選択し、さらに、直近でワイパが検出されたタイミングからの経過時間であるワイパ経過時間から、今現在の物体の検出結果の信頼度を特定する。そして、位置特定部26dは、これまでの物体の検出結果と、信頼度の情報に基づいて、移動する物体をトラッキングして、今現在の物体の位置を特定し、通知部27に供給する。なお、信頼度決定部26cは、信頼度を、降雨量とワイパ経過時間との関係を表わすテーブルとして記憶するよいにしてもよいし、ワイパ経過時間と降雨量との関数式として記憶し、都度算出するようにしてもよい。
通知部27は、監視領域内の物体の検出結果を車両制御装置12に供給する。
{物体検出処理}
次に、図7のフローチャートを参照して、レーザレーダ装置11により実行される物体検出処理について説明する。
ステップS1において、各MUX261は、受光素子202の選択を行う。具体的には、各MUX261は、制御部21の制御の下に、各MUX261に入力される受光信号のうち後段のTIA262に供給する受光信号を選択する。そして、以下の処理において、選択された受光信号の出力元の受光素子202の受光値の測定が行われる。換言すれば、選択された受光素子202の検出領域からの反射光の強度の測定が行われる。
ステップS2において、投光部22は、測定光を投光する。具体的には、駆動回路101は、制御部21の制御の下に、発光素子102からパルス状の測定光を出射させる。発光素子102から出射された測定光は、投光光学系103を介して監視領域全体に投光される。
ステップS3において、受光部23は、反射光に応じた受光信号を生成する。具体的には、各受光素子202は、受光光学系201を介して、ステップS2の処理で投光した測定光に対する反射光のうち、それぞれ対応する方向の検出領域からの反射光を受光する。そして、各受光素子202は、受光した反射光をその受光量に応じた電気信号である受光信号に光電変換し、得られた受光信号を後段のMUX261に供給する。
ステップS4において、測定部24は、受光信号のサンプリングを行う。具体的には、各TIA262は、制御部21の制御の下に、各MUX261から供給された受光信号の電流−電圧変換を行うとともに、制御部21により設定されたゲインにより受光信号の電圧を増幅する。各TIA262は、増幅後の受光信号を後段のPGA263に供給する。
各PGA263は、制御部21の制御の下に、各TIA262から供給される受光信号の電圧を、制御部21により設定されたゲインで増幅し、後段のADC264に供給する。
各ADC264は、制御部21の制御の下に発生されるサンプリングの開始タイミングを規定するトリガ信号に基づいて、各PGA263から供給される受光信号のサンプリングを行い、受光信号をA/D変換する。各ADC264は、A/D変換後の受光信号を積算部301に供給する。
なお、受光信号のサンプリング処理の詳細については、図8を参照して後述する。
ステップS5において、積算部301は、前回までの受光値と今回の受光値の積算を行う。これにより、図9を参照して後述するように、同じ前記受光素子202からの受光信号の同じサンプリング時刻における受光値の積算が行われる。
ステップS6において、制御部21は、受光値の測定を所定の回数(例えば、100回)行ったか否かを判定する。まだ受光値の測定を所定の回数行っていないと判定された場合、処理はステップS2に戻る。すなわち、受光値の測定が所定の回数(例えば、100回)行われるまで、ステップS2乃至S6の処理が繰り返される。そして、ステップS6において、受光値の測定が所定の回数行われたと判定された場合、処理は、ステップS7に進む。
ここで、図8乃至図10を参照して、ステップS2乃至S6の処理の具体例について説明する。
図8は、受光信号のサンプリング処理の具体例を示すタイミングチャートであり、図内の各段の図の横軸は時間を示している。
図8の最上段は、測定光の発光タイミングを示している。検出期間TD1、TD2、・・・は、物体の検出処理を行う期間の最小単位であり、1回の検出期間において物体の検出処理が1回行われる。
また、各検出期間は、4サイクルの測定期間TM1乃至TM4及び休止期間TBを含んでいる。測定期間は、受光値の測定を行う受光素子202の切り替えを行う最小単位である。すなわち、各測定期間の前に受光素子202の選択が可能である。一方、測定期間内は受光素子202の変更をすることができない。従って、1回の測定期間において、同じ種類の受光素子202の受光値の測定が行われる。これにより、測定期間単位で反射光の強度を測定する対象となる検出領域を切り替えることができる。
図8の2段目は、検出期間TD1の測定期間TM2を拡大した図である。この図に示されるように、1サイクルの測定期間内に、測定光が所定の間隔で少なくとも1回以上の所定の回数(例えば100回)だけ投光される。
図8の3段目は、ADC264のサンプリングタイミングを規定するトリガ信号の波形を示しており、4段目は、ADC264における受光信号のサンプリングタイミングを示している。なお、4段目の縦軸は受光信号の値(電圧)を示し、受光信号上の複数の黒丸は、それぞれサンプリングポイントを示している。従って、隣接する黒丸と黒丸の間の時間が、サンプリング間隔となる。
制御部21は、測定光の投光から所定の時間経過後に、トリガ信号を各ADC264に供給する。各ADC264は、トリガ信号が入力されてから所定の時間が経過した後、所定のサンプリング周波数(例えば、数十から数百MHz)で所定の回数(例えば32回)だけ受光信号のサンプリングを行う。すなわち、測定光が投光される度に、MUX261により選択された受光信号のサンプリングが、所定のサンプリング間隔で所定の回数行われる。
例えば、ADC264のサンプリング周波数を100MHzとすると、10ナノ秒のサンプリング間隔でサンプリングが行われる。従って、距離に換算して約1.5mの間隔で受光値のサンプリングが行われる。すなわち、各検出領域内の自車両からの距離方向において約1.5m間隔の各地点からの反射光の強度が測定される。
そして、各ADC264は、トリガ信号を基準とする(トリガ信号が入力された時刻を0とする)各サンプリング時刻におけるサンプリング値(受光値)を示すデジタルの受光信号を積算部301に供給する。
このように、測定光が投光される度に、MUX261により選択された各受光素子202の受光信号のサンプリングが行われる。これにより、選択された各受光素子202の検出領域内の反射光の強度が所定の距離単位で検出される。
一方、休止期間TBにおいては、測定光の投光及び受光値の測定が休止する。そして、測定期間TM1乃至TM4における受光値の測定結果に基づく物体の検出処理や、投光部22、受光部23、測定部24の設定、調整、試験等が行われる。
次に、図9を参照して、受光値の積算処理の具体例について説明する。図9は、1サイクルの測定期間中に測定光を100回投光した場合に、ある受光素子202から出力される100回分の受光信号に対する積算処理の例を示している。なお、図9の横軸はトリガ信号が入力されたタイミングを基準(時刻0)とする時刻(サンプリング時刻)を示し、縦軸は受光値(サンプリング値)を示している。
この図に示されるように、1回目から100回目までの各測定光に対して、それぞれサンプリング時刻t1乃至tyにおいて受光信号のサンプリングが行われ、同じサンプリング時刻における受光値が積算される。例えば、1回目から100回目までの各測定光に対するサンプリング時刻t1における受光値が積算される。このようにして、検出期間内にサンプリングされた、同じ受光素子202からの受光信号の同じサンプリング時刻における受光値の積算が行われる。そして、この積算値が以降の処理に用いられる。
ここで、MUX261において複数の受光素子202からの受光信号を加算する場合、全ての受光素子202が一致する受光信号の受光値が積算される。例えば、受光素子202−1及び202−2からの受光信号を加算した受光信号の受光値は、受光素子202−1又は受光素子202−2の一方のみからの受光信号の受光値とは別に積算される。換言すれば、受光素子202−1及び202−2からの受光信号を加算した受光信号の受光値と、受光素子202−1又は受光素子202−2の一方のみからの受光信号の受光値とは、それぞれ別の種類の受光信号をサンプリングした受光値として区別され、分けて積算される。
この積算処理により、1回の測定光に対する受光信号のS/N比が低い場合でも、この積算処理を行うことにより、信号成分は増幅され、ランダムなノイズは平均化されて減少する。その結果、受光信号から信号成分とノイズ成分を分離しやすくなり、実質的に受光感度を上げることができる。これにより、例えば、遠方の物体や反射率の低い物体の検出精度が向上する。
なお、以下、1サイクルの測定期間内に実行される所定の回数(例えば、100回)の測定処理及び積算処理のセットを測定積算ユニットと称する。
図10は、各測定期間における各MUX261の受光素子202の選択の組み合わせの例を示している。なお、この図において、MUX261−1乃至261−4をMUX1乃至4と短縮して表している。また、図内の四角のマスの中の番号は、MUX261−1乃至261−4により選択された受光素子202の番号を示している。すなわち、受光素子202−1乃至202−16が、それぞれ1乃至16の番号で示されている。
例えば、測定期間TM1において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−1、202−5、202−9、202−13がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。測定期間TM2において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−2、202−6、202−10、202−14がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。測定期間TM3において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−3、202−7、202−11、202−15がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。測定期間TM4において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−4、202−8、202−12、202−16がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。
従って、この例では、1回の検出期間中に、全ての受光素子202の受光値の測定が行われる。換言すれば、1回の検出期間中に、監視領域内の全検出領域からの反射光の強度が測定される。
ここで、図7のフローチャートの説明に戻る。ステップS7において、制御部21は、測定期間を所定の回数繰り返したか否かを判定する。まだ測定期間を所定の回数繰り返していないと判定された場合、処理はステップS1に戻る。
すなわち、ステップS7において、測定期間を所定の回数繰り返したと判定されるまで、ステップS1乃至S7の処理が繰り返し実行される。すなわち、所定の長さの検出期間内に、測定期間が所定の回数繰り返される。また、測定期間毎に、受光値の測定を行う対象となる受光素子202の選択が行われ、反射光の強度の測定対象となる検出領域が切り替えられる。
一方、ステップS7において、測定期間を所定の回数繰り返したと判定された場合、処理はステップS8に進む。
ステップS8において、ピーク検出部311は、各受光素子202のサンプリング時刻毎の積算受光値の分布に基づいて、1回の検出期間内の反射光の強度の水平方向及び時間方向(距離方向)のピークを検出する。
具体的には、ピーク検出部311は、受光素子202毎に積算受光値がピークとなるサンプリング時刻を検出する。これにより、自車両からの距離方向において反射光の強度がピークとなる地点が、検出領域毎に検出される。換言すれば、各検出領域において、反射光の強度がピークとなる物体が検出された地点の自車両からの距離が検出される。
また、ピーク検出部311は、サンプリング時刻毎に、全ての受光素子202の中から積算受光値がピークとなる受光素子202(検出領域)を検出する。これにより、自車両からの距離方向において、所定の間隔ごと(例えば、約1.5mごと)に反射光の強度がピークとなる水平方向の位置(検出領域)が検出される。
そして、ピーク検出部311は、検出結果を示す情報を物体検出部312に供給する。
すなわち、例えば、図11で示されるように、測定光は車両351によって反射されて受光素子202により受光されるが、投光から受光までには時間差が生じている。この時間差は、レーザレーダ装置と車両351との距離に比例するので、車両351からの反射光は、該時間差と一致するサンプリングタイミング(サンプリング時刻tn)における受光値として測定される。従って、車両351を含む検出領域の各受光素子202の積算受光値のうち、特にサンプリング時刻tnにおける積算受光値が大きくなる。
尚、図11のグラフは、自車両の前方に車両351が走行している場合に、車両351からの反射光が戻ってくる付近のサンプリング時刻における積算受光値の水平方向の分布を示している。すなわち、このグラフは、当該サンプリング時刻における各受光素子202の積算受光値を、各受光素子202の水平方向の並び順に横軸方向に並べたグラフである。
なお、ピーク検出部311のピーク検出方法には、任意の方法を採用することができる。
ステップS9において、物体検出部312は、測定期間内の反射光の強度の水平方向及び時間方向の分布及びピークの検出結果に基づいて、監視領域内の他の車両、歩行者、障害物等の物体の有無、並びに、物体の種類、方向、距離等の検出を行う。
なお、物体検出部312の静止物体(動物体を含む)の物体検出方法には、任意の方法を採用することができる。
すなわち、例えば、図11で示されるように、前方に車両351が存在する場合、車両351により反射された反射光が、受光素子202により受光されるため、検出領域内に車両351を含む各受光素子202の積算受光値が大きくなる。特に、車両351の後方の左右のリフレクタ352L,352Rの反射率が高いため、検出領域内にリフレクタ352L,352Rを含む各受光素子202の積算受光値が特に大きくなる。
従って、図11のグラフに示されるように、水平方向の積算受光値の分布において、2つの顕著なピークP1,P2が現れる。また、リフレクタ352Lとリフレクタ352Rの間の車体により反射された反射光も検出されるため、ピークP1とピークP2の間の積算受光値もその他の領域に比べて高くなる。このように、同じサンプリング時刻における積算受光値の水平方向の分布において、顕著な2つのピークを検出することにより、前方の車両を検出することが可能である。
ステップS10において、物体検出部312は、必要に応じて物体の検出結果を外部に通知する。例えば、物体検出部312は、物体の有無に関わらず、物体の検出結果を定期的に、通知部27を介して車両制御装置12に供給する。或いは、例えば、物体検出部312は、車両が前方の物体に衝突する危険性がある場合に限り、物体の検出結果を車両制御装置12および物体トラッキング部26に供給する。
ステップS11において、制御部21は、所定の時間待機する。すなわち、制御部21は、図8の休止期間TBが終了するまで、測定光の投光を行わないように待機する。
その後、処理はステップS1に戻り、ステップS1乃至S11の処理が繰り返し実行される。すなわち、検出期間毎に積算受光値に基づいて物体の検出を行う処理が繰り返される。
以上の処理により、物体の距離、方向および積算受光値のピーク値などを含む情報を検出結果として出力することが可能となる。
{物体トラッキング処理}
次に、図12のフローチャートを参照して、物体トラッキング処理について説明する。
ステップS31において、物体トラッキング部26は、物体検出部312から出力された物体の検出結果より、走行時の障害物となる可能性が有るためにトラッキングの対象となるトラッキング対象物体、並びに、雨滴、およびワイパの検出結果を抽出する。トラッキング対象物体の検出結果とは、測定光が投光された時刻に対して反射光が受光された時刻が所定時間よりも離れている物体に関する検出結果であり、少なくとも自車両から数m程度以上離れている物体に関する検出結果である。また、雨滴、およびワイパの検出結果とは、測定光が投光された時刻に対して反射光が受光された時刻が所定時間よりも短く、フロントガラスから数cm程度の距離からの反射を示す物体に関する検出結果である。なお、この実施例におけるレーザレーダ装置11の距離分解能では、距離情報だけでは、反射がワイパによるものなのか、降っている雨滴によるものなのかの区別はできない。また、以降において、トラッキング対象物体の検出結果は、単に対象物体検出結果と称するものとし、雨滴、およびワイパの検出結果は、雨滴ワイパ検出結果と称するものとする。
ステップS32において、ワイパ検出部26aは、雨滴ワイパ検出結果のうち、ピーク値がワイパ閾値Bよりも高いものが存在するか否かにより、ワイパを検出したか否かを判定する。
{雨滴閾値Aおよびワイパ閾値Bについて}
ここで、雨滴ワイパ検出結果に基づいて、雨滴、およびワイパを検出するための雨滴閾値Aおよびワイパ閾値Bについて説明する。
図13の左部で示されるように、フロントガラス401上に雨滴411−1乃至411−3が付着すると、投光部22により投光される測定光は、実線で示される光路で投光されることになる。この場合、例えば、雨滴411−1を透過した測定光の一部は、本来、点線で示される方向に投光されるべきところ、屈折により実線で示される光路により投光される。このため、本来の測定光よりも、拡散した状態で投光されることになる。結果として、監視領域に投光される測定光の一部が監視領域外に投光されることにより、反射光が低減し、受光部23による受光レベルが低減することになる。
また、図13の左部の場合、例えば、雨滴411−3を介して反射光が入射されると、反射光の一部は、本来は点線で示される光路により受光部23で受光されるべきところが、雨滴411−3による屈折により実線で示される光路により受光される。このため、本来の反射光と異なる光路となるため、受光部23においては、正しい方向からの反射光として受光することができない。さらに、上述したように、投光された測定光が雨滴411−1などにより拡散されていると、受光部23により受光される光の受光強度が低減する。結果として、誤検出が生じる恐れがある。尚、以降において、雨滴411−1乃至411−3を、特に区別する必要がない場合、単に、雨滴411と称するものとする。
ところが、降雨状態であっても、ワイパ421が矢印方向(図中左方向)に駆動して、フロントガラス401上に付着した雨滴411−1乃至411−3が拭き取られると、一時的に、図13の右部で示されるように、雨滴411がフロントガラス401上にない状態となるため、上述した測定光の拡散や、反射光の屈折などが生じない状態となる。
また、図示しないがワイパ421がフロントガラス401上を移動している場合、投光された測定光がワイパ421で反射して、受光部23により受光されることになる。ワイパ421は、フロントガラス401と接する拭き取り部位が、一般にゴム製の構成となっているが、このゴム製の拭き取り部位を支持する支持部位が存在し、この支持部位が駆動することにより、拭き取り部位がフロントガラス401上を移動して雨滴411−1乃至411−3を拭き取る。この支持部位は、一般に金属製であり、測定光を反射し易いもので構成されていることから、測定光を強く反射し、その反射光が受光部23により高いピーク値となる受光信号として受光される。
そこで、ワイパ検出部26aは、雨滴ワイパ検出結果のうち、ワイパ閾値Bよりも高い受光信号の検出結果が存在する場合、ワイパを検出したものとみなす。また、雨滴検出部26bは、雨滴ワイパ検出結果のうち、ワイパ閾値Bよりも低いものであって、雨滴閾値A(<ワイパ閾値B)よりも高い受光信号の検出結果を雨滴であるものとみなす。
さらに、フロントガラス401に付着する雨滴411の量は、ワイパ421により拭き取られた直後においては少ないため、フロントガラスの前方に降っている雨滴からの反射光はフロントガラス401に付着している雨滴411によって減衰されないで受光され、受光強度が強くなるため、降っている雨滴を検出し易い状態となる。しかしながら、ワイパ421により拭き取られてからの経過時間が進むにつれて、フロントガラス401上に付着する雨滴411の量は増加することにより、反射光が拡散し易くなり、反射光の受光強度が弱くなるので、雨滴411を検出し難い状態となっていく。
そこで、雨滴検出部26bは、ワイパ421が検出されて、拭き取りがなされたとみなされたタイミングにおいては、一時的に雨滴閾値Aのレベルを引き上げて、最大閾値A_maxとし、比較的強い反射光の強度のピーク値のみを雨滴として検出するようにする。さらに、雨滴検出部26bは、ワイパ421が検出されて、雨滴411が拭き取られたタイミングからの経過時間であるワイパ経過時間が進むにつれて、雨滴閾値Aの最小閾値A_minまで徐々に低減させ、雨滴411により拡散された比較的弱い反射光のピーク値も雨滴として検出するように設定する。つまり、雨滴閾値Aは、最小閾値A_minとされ、ワイパ421が検出されて、雨滴411が拭き取られた直後において、最大閾値A_maxとされ、以降、ワイパ経過時間の経過に伴って、徐々に最小閾値A_minまで低減させるように制御される。このような処理が繰り返されるにより、雨滴検出部26bは、フロントガラス401上における雨滴411の状態に応じて適切に雨滴を検出することが可能となる。
例えば、雨滴ワイパ検出結果として、図14で示されるような検出結果であった場合、時刻t2におけるピーク値がワイパ閾値Bを超えているので、ワイパが検出されたものとみなされる。ステップS32において、図14の時刻t2のピーク値で示されるようにワイパ閾値Bを超えるピーク値の受光信号が認められる場合、ワイパ421が検出されたものとみなされ、処理は、ステップS33に進む。尚、図14においては、縦軸が雨滴ワイパ検出結果として抽出された検出結果の受光信号のサンプリング値の積算値を示しており、横軸が、レーザレーダ装置が測定を開始してからの経過時間tを示している。従って、図14においては、雨滴ワイパ検出結果として、時刻t1乃至t5のピーク値に対応する検出結果が抽出されていることが示されている。
ステップS33において、雨滴検出部26bは、ワイパ421が検出されたタイミングからの経過時間を示すワイパ経過時間Tを0にリセットした後、カウントを開始する。
ステップS34において、雨滴検出部26bは、雨滴閾値Aを最大閾値A_maxにまで引き上げて、ワイパ経過時間Tが進むに従って、例えば、図14の時刻t2以降の点線で示されるように減衰するように設定する。
尚、ステップS32において、ワイパ閾値Bを超えるピーク値が検出されず、ワイパ421が検出されていないと判定された場合、ステップS33,S34の処理はスキップされて、処理は、ステップS35に進む。
ステップS35において、雨滴検出部26bは、雨滴ワイパ検出結果に基づいて、ピーク値がワイパ閾値Bよりも低く、かつ、雨滴閾値Aより高い物体を検出したか否かに基づいて、雨滴を検出したか否かを判定する。すなわち、フロントガラスから少し離れた空間(雨滴の検知領域)に降下してくる雨滴の反射光は、雨滴の検知領域に存在する全ての雨滴からの反射が混じった1つの反射光として受光される。そこで、雨滴検出部26bは、雨滴ワイパ検出結果に基づいて、受光量のピーク値がワイパ閾値Bよりも低く、かつ、雨滴閾値Aより高い物体を検出したか否かに基づいて、雨滴を検出したか否かを判定する。したがって、例えば、図14で示されるような雨滴ワイパ検出結果が抽出されている場合、時刻t1,t3乃至t5のピーク値がワイパ閾値Bよりも低く、かつ、雨滴閾値Aよりも高いので、このようなとき、雨滴が検出されていると判定され、処理は、ステップS36に進む。
ステップS36において、雨滴検出部26bは、雨滴として検出されるピーク値の物体の数量に応じて、降雨量を測定する。すなわち、フロントガラスから少し離れた空間(雨滴の検知領域)に降下してくる雨滴の反射光は、雨滴の検知領域に存在する全ての雨滴からの反射が混じった1つの反射光として受光される。このため、雨滴として検出された物体が多ければ、反射光量が大きく、少なければ小さくなる。そこで、雨滴検出部26bは、反射光として受光される受光量に応じて、降雨量を測定する。
ステップS37において、信頼度決定部26cは、自らで記憶している信頼度減衰曲線のうち、現在の降雨量に対応する信頼度減衰曲線を選択する。
{信頼度減衰曲線について}
ここで、信頼度減衰曲線について説明する。
図13を参照して、上述したように、フロントガラス401に雨滴411が付着することにより、受光部23により受光される反射光の方向は変化が生じて、誤検出が生じる恐れがある。しかしながら、ワイパ421が雨滴411を拭き取った直後においては、フロントガラス401上に雨滴411が存在しない状態となるため、誤検出は生じ難く、ワイパ421により雨滴411が拭き取られたタイミングからの時間の経過に伴って、徐々に誤検出が生じ易い状態に変化する。
従って、検出結果の信頼度は、ワイパ421が検出されたタイミングが最も高く、その後、時間の経過に伴って減衰していくものと考えることができる。さらに、この信頼度の減衰の変化率は、降雨量が多いほど、減衰が早く、逆に、降雨量が少ないほど、減衰が遅い。そこで、信頼度Rは、図15で示されるような波形となる。尚、図15においては、縦軸が信頼度R(0乃至1)であり、横軸が経過時間tである。また、実線が降雨量が大雨のときの信頼度減衰曲線であり、点線が降雨量が中雨のときの信頼度減衰曲線であり、二点鎖線が降雨量が小雨であるときの信頼度減衰曲線を示している。また、図15においては、時刻t11,t12において、ワイパ421の通過が検出されたタイミングが示されている。
すなわち、信頼度減衰曲線は、降雨量に関わらず、ワイパ421が検出されたタイミングからの時間経過に伴って、減衰する。また、降雨量が増えると、減衰率が高くなり、より早いタイミングで減衰することが示されている。尚、信頼度減衰曲線については、図15においては、3種類の降雨量に応じた曲線が示された例が示されているが、これ以上の種類の降雨量毎に曲線を設定するようにしても良い。
ステップS37においては、このように降雨量により設定される信頼度減衰曲線のうち、ステップS36により計測された降雨量に対応する信頼度減衰曲線が選択される。したがって、図15で示されるように降雨量の大雨、中雨、および小雨に対応する3本の信頼度減衰曲線が設定されている場合、信頼度決定部26cは、測定結果となる降雨量が、大雨、中雨、および小雨のいずれに相当するのかを決定した後、降雨量に対応する信頼度減衰曲線を選択する。
ステップS38において、信頼度決定部26cは、現在のワイパ経過時間Tを読み出し、読み出したワイパ経過時間Tに対応する信頼度Rを決定する。
ステップS39において、位置特定部26dは、直前の物体トラッキング処理により特定したトラッキングの対象物体の位置情報および物体トラッキング処理が行われた時刻、前回の物体トラッキング処理により特定したトラッキングの対象物体の位置情報および物体トラッキング処理が行われた時刻を利用して、トラッキング対象物体の加速度を算出する。なお、時刻は物体検出部312が対象物体の位置を検出した時刻や、ピーク検出部311がピークを検出した時刻などを用いても良い。
尚、ステップS35において、雨滴閾値Aを超えるピーク値が検出されない場合、雨滴が検出されていないものと判定され、ステップS36乃至S38の処理がスキップされ、処理は、ステップS39に進む。ただし、この場合、降雨がないことが前提とされるため、ステップS39においては、信頼度Rはデフォルトとなる1の状態で加速度が算出される。
ステップS40において、位置特定部26dは、算出されたトラッキング対象物体の加速度と、直前の物体トラッキング処理により特定されたトラッキング対象物体の位置との情報から、今現在のトラッキング対象物体の位置を推定し、推定位置として算出する。
ステップS41において、位置特定部26dは、算出された推定位置と、物体検出部312により検出された検出位置とに基づいて、今現在のトラッキング対象物体の位置を特定し、特定位置として、信頼度Rと共に通知部27に出力する。
ステップS42において、通知部27は、必要に応じて、今現在のトラッキング対象物体の特定位置の情報と、信頼度Rとからなるトラッキング情報を通知部27、およびブレーキ判定部28に出力する。
すなわち、図16で示されるように、物体が位置X0から図16中の左方向に移動する場合、前々回に特定された特定位置を位置X0とし、前回に特定された特定位置を位置X1とするとき、ここで求められた加速度を維持したまま位置X1から移動すると仮定すれば、今回の推定位置は位置X2aとして推定される。つまり、図16の場合、ステップS40の処理により、推定位置として位置X2aが算出される。
そして、物体検出部312での検出結果において、物体の計測位置が位置X2bであって、信頼度が信頼度Rであるとき、今回の推定位置X2a、今回の計測位置X2b、および信頼度Rから、ステップS41の処理により、以下のように求められる位置X2cが、特定位置として算出され、以降において、前回の特定位置として計算に使用される。
尚、物体トラッキング処理の開始時は、特定位置が未だ算出されていないために、位置X0と位置X1には特定位置では無く、計測位置を用いて、第1回の計算を行う。第2回目の計算では、第1回の計算で求めた特定位置を前々回の特定位置とし、前回の特定位置には計測位置を用いて第2回目の計算を行うようにする。
X2c=X2a×(1−R)+X2b×R
すなわち、今回推定された推定位置X2aと今回計測された計測位置X2bとが異なる場合、2つの原因が考えられる。
第1には物体(例えば車両)が実際に加速を行ったため、加速度に変化が生じることにより、今回の推定位置X2aと今回計測された位置X2bとが異なるようになった。
第2に物体からの反射光が雨滴によって屈折したために、本来、受光する受光素子の横の受光素子で受光されたため、今回の推定位置X2aと今回計測された位置X2bとが異なるようになった。
雨量が多い場合には、第2の原因による影響も大きくなると考えられるために、信頼度Rによって、今回推定された推定位置X2aと今回計測された計測位置X2bとの重み付けにより、今回特定される物体の位置であるものとみなす。
また、物体の水平方向の移動距離は、図17で示されるように、受光素子202内の検出位置Paから検出位置Pbまでの変化量に応じて検出されることになる。
しかしながら、図17で示されるように、受光素子202から所定の距離の物体が位置PA1から位置PB1に距離L1だけ移動したときと、所定の距離よりも近い距離で物体が位置PA2から位置PB2へと距離L2だけ移動したときとでは、受光素子202上の検出位置の変化は、いずれも同一の検出位置Pa乃至Pbとなる。そこで、水平方向の移動量は、物体までの距離と、受光素子202上での受光位置との関係に応じて求められることになる。尚、以上においては、車幅方向における、物体の位置を信頼度Rに基づいて推定する処理の説明を行ったが、さらに車の前後方向においても、信頼度Rに基づいて推定する処理を行っても良い。
このような演算により、トラッキング対象物体の位置が特定位置として求められ、ステップS42の処理により通知部27より出力される。
以上の処理により、ワイパの通過を検出することが可能となる。これにより、ワイパが検出されたタイミングからの経過時間に応じて降雨による物体検出の信頼度を特定することが可能となる。さらに、信頼度が特定されることにより、物体の動きをトラッキングして、物体の加速度等に基づいて推定した現在の推定位置と計測された現在の計測位置とが信頼度により重み付けされることにより、現在の位置が特定位置として求められるので、より高い精度で物体の位置を検出することが可能となる。
尚、以上においては、物体の位置を特定するにあたって、時系列の検出位置の情報より求められる加速度を利用した例について説明してきたが、時系列の検出位置の情報より得られる速度を利用して物体の位置を特定するようにしても良い。
{自動ブレーキ判定処理}
次に、図18のフローチャートを参照して、自動ブレーキ判定処理について説明する。
ステップS51において、ブレーキ判定部28は、上述した物体トラッキング処理により物体トラッキング部26より供給されてくるトラッキング情報を取得する。
ステップS52において、ブレーキ判定部28は、信頼度Rが所定の閾値よりも高いか否かを判定し、例えば、信頼度Rが所定の閾値よりも低い場合、処理は、ステップS51に戻る。一方、ステップS52において、信頼度Rが所定の閾値よりも高い場合、処理は、ステップS53に進む。
ステップS53において、ブレーキ判定部28は、対象物体までの距離が自動ブレーキを緊急動作させる必要がある所定の距離よりも短い距離であるか否かを判定し、例えば、緊急動作させる必要がある所定の距離よりも短くない場合、処理は、ステップS51に戻る。そして、ステップS53において、緊急動作させる必要がある所定の距離よりも短いと判定された場合、処理は、ステップS54に進む。
ステップS54において、ブレーキ判定部28は、自動ブレーキを動作させる必要があるものと見なして、自動ブレーキの動作を指示する信号を通知部27から車両制御装置12に出力させる。これにより車両制御装置12は、必要に応じて図示せぬ制動装置を制御して、自動ブレーキを掛けるように制御する。
つまり、この場合、ステップS51の処理により、物体トラッキング処理の検出結果であるトラッキング情報に含まれる信頼度Rが取得され、ステップS52の処理により、その信頼度Rが所定の閾値よりも高いと判定され、さらに、ステップS53の処理により、対象物体までの距離が自動ブレーキを緊急動作させる必要がある所定の距離よりも短い距離であると判定された場合、自動ブレーキを動作させるための信号が出力される。
すなわち、信頼度Rが所定の閾値よりも高く、かつ、対象物体までの距離が自動ブレーキを緊急動作させる必要がある距離よりも短いときに、自動ブレーキが動作するように制御される。
また、以上においては、物体トラッキング処理および自動ブレーキ判定処理のいずれの処理もなされる例について説明してきたが、物体トラッキング処理のみがなされる構成とするようにしてもよい。すなわち、この場合、トラッキング情報のみが出力されて、このトラッキング情報に基づいて、車両制御装置12が自らで自動ブレーキを動作させるか否かを判定するようにしてもよい。
さらに、ステップS53において、判定される対象物体までの距離については、上述した信頼度Rにより重み付けられた距離でもよいし、それ以外の推定された距離、または、計測された距離であっても良い。
結果として、雨滴がある場合でも、対象物体までの距離が、自動ブレーキの緊急動作が必要な距離内であるときには、自動ブレーキを動作できるように制御されるので、物体の誤検出に伴った自動ブレーキの誤作動を防止しつつ、適切に自動ブレーキの動作を制御することが可能となる。
また、ステップS52における信頼度Rと所定の閾値とを比較して判定する処理はスキップするようにしてもよい。すなわち、この場合、物体トラッキング情報に含まれるトラッキングされている対象物体までの距離が緊急動作させる必要がある所定の距離以内であるか否かのみで自動ブレーキを動作させるか否かが判定されることになる。
{コンピュータの構成例}
なお、上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
図19は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)601,ROM(Read Only Memory)602,RAM(Random Access Memory)603は、バス604により相互に接続されている。
バス604には、さらに、入出力インタフェース605が接続されている。入出力インタフェース605には、入力部606、出力部607、記憶部608、通信部609、及びドライブ610が接続されている。
入力部606は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部607は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部608は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部609は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ610は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア611を駆動する。
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU601が、例えば、記憶部608に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース605及びバス604を介して、RAM603にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
コンピュータ(CPU601)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア611に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア611をドライブ610に装着することにより、入出力インタフェース605を介して、記憶部608にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部609で受信し、記憶部608にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM602や記憶部608に、あらかじめインストールしておくことができる。
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
また、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。