{レーザレーダ装置11の構成例}
図1は、本発明を適用したレーザレーダ装置の一実施の形態であるレーザレーダ装置11の構成例を示している。
レーザレーダ装置11は、例えば、車両に設けられ、その車両の進行方向にある物体の検出を行う。なお、以下、レーザレーダ装置11により物体の検出が可能な領域を監視領域と称する。また、以下、レーザレーダ装置11が設けられている車両を他の車両と区別する必要がある場合、自車両と称する。さらに、以下、自車両の左右方向(車幅方向)と平行な方向を水平方向と称する。
レーザレーダ装置11は、制御部21、投光部22、受光部23、測定部24、及び、演算部25を含むように構成される。
制御部21は、車両制御装置12からの指令や情報等に基づいて、レーザレーダ装置11の各部の制御を行う。
投光部22は、物体の検出に用いるパルス状のレーザ光(レーザパルス)である測定光を監視領域に投光する。
受光部23は、測定光の反射光を受光し、水平方向のそれぞれ異なる方向からの反射光の強度(明るさ)を検出する。そして、受光部23は、各方向の反射光の強度に応じた電気信号である複数の受光信号を出力する。
測定部24は、受光部23から供給される受光信号に基づいて受光値の測定を行い、測定結果を演算部25に供給する。
演算部25は、測定部24から供給される受光値の測定結果に基づいて、監視領域内の物体の検出を行い、検出結果を制御部21及び車両制御装置12に供給する。
車両制御装置12は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)等により構成され、監視領域内の物体の検出結果に基づいて、自動ブレーキ制御や運転者への警報、自動ブレーキ、および制動力補助等を含む制御を行う。
車両センサ13は、車両に設置されており、自車両の3次元空間における加速度を検出し、加速度の検出結果に基づいて、自車両の速度や上下方向の振動のレベル(振幅)を検出し、制御部21および演算部25に供給する。
{投光部22の構成例}
図2は、レーザレーダ装置11の投光部22の構成例を示している。投光部22は、駆動回路101、発光素子102、及び、投光光学系103を含むように構成される。
駆動回路101は、制御部21の制御の下に、発光素子102の発光強度や発光タイミング等の制御を行う。
発光素子102は、例えば、レーザダイオードからなり、駆動回路101の制御の下に、測定光(レーザパルス)の発光を行う。発光素子102から発光された測定光は、レンズ等により構成される投光光学系103を介して監視領域に投光される。
{受光部23の構成例}
図3は、レーザレーダ装置11の受光部23の構成例を示している。受光部23は、受光光学系201及び受光素子202−1乃至202−16を含むように構成される。
なお、以下、受光素子202−1乃至202−16を個々に区別する必要がない場合、単に受光素子202と称する。
受光光学系201は、レンズ等により構成され、光軸が車両の前後方向を向くように設置される。そして、受光光学系201は、監視領域内の物体等により反射された測定光の反射光が入射し、入射した反射光を各受光素子202の受光面に入射させる。
各受光素子202は、例えば、入射した光電荷をその光量に応じた電流値の受光信号に光電変換するフォトダイオードからなる。また、各受光素子202は、受光光学系201に入射した反射光が集光する位置において、受光光学系201の光軸に対して垂直、かつ、自車両の車幅方向に平行(すなわち、水平方向)に一列に並ぶように設けられている。そして、受光光学系201に入射した反射光は、受光光学系201への水平方向の入射角度に応じて、各受光素子202に振り分けられて入射する。従って、各受光素子202は、監視領域からの反射光のうち、水平方向においてそれぞれ異なる方向からの反射光を受光する。これにより、監視領域は水平方向の複数の方向における複数の領域(以下、検出領域と称する)に分割され、各受光素子202は、それぞれ対応する検出領域からの反射光を個別に受光する。そして、受光素子202は、受光した反射光をその受光量に応じた電流値の受光信号に光電変換し、得られた受光信号を測定部24に供給する。
{測定部24の構成例}
図4は、レーザレーダ装置11の測定部24の構成例を示している。測定部24は、選択部251、電流電圧変換部252、増幅部253、及び、サンプリング部254を含むように構成される。選択部251は、マルチプレクサ(MUX)261−1乃至261−4を含むように構成される。電流電圧変換部252は、トランス・インピーダンス・アンプ(TIA)262−1乃至262−4を含むように構成される。増幅部253は、プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)263−1乃至263−4を含むように構成される。サンプリング部254は、A/Dコンバータ(ADC)264−1乃至264−4を含むように構成される。
なお、以下、MUX261−1乃至261−4、TIA262−1乃至262−4、PGA263−1乃至263−4、及び、ADC264−1乃至264−4をそれぞれ個々に区別する必要がない場合、それぞれ単にMUX261、TIA262、PGA263、及び、ADC264と称する。
MUX261−1は、制御部21の制御の下に、受光素子202−1乃至202−4から供給される受光信号のうち1つ以上を選択して、TIA262−1に供給する。なお、MUX261−1は、複数の受光信号を選択した場合、選択した受光信号を加算してTIA262−1に供給する。
MUX261−2は、制御部21の制御の下に、受光素子202−5乃至202−8から供給される受光信号のうち1つ以上を選択して、TIA262−2に供給する。なお、MUX261−2は、複数の受光信号を選択した場合、選択した受光信号を加算してTIA262−2に供給する。
MUX261−3は、制御部21の制御の下に、受光素子202−9乃至202−12から供給される受光信号のうち1つ以上を選択して、TIA262−3に供給する。なお、MUX261−3は、複数の受光信号を選択した場合、選択した受光信号を加算してTIA262−3に供給する。
MUX261−4は、制御部21の制御の下に、受光素子202−13乃至202−16から供給される受光信号のうち1つ以上を選択して、TIA262−4に供給する。なお、MUX261−4は、複数の受光信号を選択した場合、選択した受光信号を加算してTIA262−4に供給する。
従って、各受光素子202は、受光素子202−1乃至202−4からなる第1のグループ、受光素子202−5乃至202−8からなる第2のグループ、受光素子202−9乃至202−12からなる第3のグループ、受光素子202−13乃至202−16からなる第4のグループに分割される。そして、MUX261−1は、第1のグループの受光素子202の選択を行い、選択した受光素子202の受光信号を出力する。MUX261−2は、第2のグループの受光素子202の選択を行い、選択した受光素子202の受光信号を出力する。MUX261−3は、第3のグループの受光素子202の選択を行い、選択した受光素子202の受光信号を出力する。MUX261−4は、第4のグループの受光素子202の選択を行い、選択した受光素子202の受光信号を出力する。
各TIA262は、制御部21の制御の下に、MUX261から供給される受光信号の電流−電圧変換を行う。すなわち、各TIA262は、入力された電流としての受光信号を電圧としての受光信号に変換するとともに、制御部21により設定されたゲインで変換後の受光信号の電圧を増幅する。そして、各TIA262は、増幅後の受光信号を後段のPGA263に供給する。
各PGA263は、制御部21の制御の下に、TIA262から供給される受光信号の電圧を、制御部21により設定されたゲインで増幅し、後段のADC264に供給する。
各ADC264は、受光信号のA/D変換を行う。すなわち、各ADC264は、制御部21の制御の下に、PGA263から供給されるアナログの受光信号のサンプリングを行うことにより受光値の測定を行う。そして、各ADC264は、受光値のサンプリング結果(測定結果)を示すデジタルの受光信号を演算部25に供給する。
{MUX261の構成例}
図5は、MUX261の機能の構成例を模式的に示している。
MUX261は、デコーダ271、入力端子IN1乃至IN4、接点C1乃至C4、及び、出力端子OUT1を備えている。接点C1乃至C4の一端は、それぞれ入力端子IN1乃至IN4に接続されており、接点C1乃至C4の他の一端は、出力端子OUT1に接続されている。
なお、以下、入力端子IN1乃至IN4及び接点C1乃至C4を個々に区別する必要がない場合、単に入力端子IN及び接点Cと称する。
デコーダ271は、制御部21から供給される選択信号をデコードし、デコードした選択信号の内容に従って、各接点Cのオン/オフを個別に切り替える。そして、オンになっている接点Cに接続されている入力端子INに入力される受光信号が選択され、出力端子OUT1から出力される。なお、オンになっている接点Cが複数ある場合、選択された複数の受光信号が加算されて出力端子OUT1から出力される。
{演算部25の構成例}
図6は、演算部25の構成例を示している。
演算部25は、積算部301、検出部302、及び、通知部303を含むように構成される。また、検出部302は、ピーク検出部311及び物体検出部312を含むように構成される。
積算部301は、同じ受光素子202の受光値の積算をサンプリング時刻毎に行い、その積算値(以下、積算受光値と称する)をピーク検出部311に供給する。
ピーク検出部311は、各受光素子202の積算受光値(反射光の強度)に基づいて、測定光の反射光の強度の水平方向及び時間方向(距離方向)のピークを検出し、検出結果を物体検出部312に供給する。
ここで、時間方向(距離方向)のピークについて説明する。レーザレーダ装置は、投光された測定光が物体によって反射されて、レーザレーダ装置に帰ってくるまでの時間(飛行時間と呼ぶ)を用いて該物体までの距離を算出している。この飛行時間は、距離を光速で除した値と比例しているため、時間が分かれば距離を算出することができる。ある受光素子202が反射光を受光した時刻がt1だとした場合には、時刻t1における積算受光値が他の時刻の積算受光値よりも大きい値となる。受光素子202毎に、その積算受光値が最大となるサンプリング時刻とこの時刻における積算受光値とからピークを特定することができる。このピークが時間方向(距離方向)のピークである。例えば、後述する図9の最下段で示されるサンプリング時刻に対するサンプリング値の積算値の分布におけるピークが、時間方向(距離方向)のピークに相当する。
また、水平方向のピークについて説明する。前述したように、受光素子202は、車両の幅方向に向かって水平に配置されている。監視領域は水平方向に複数の検出領域に分割され、各受光素子202は、それぞれ対応する検出領域からの反射光を受光する。例えば、車両に設置されている2つのリフレクタは、レーザレーダ装置からほぼ同じ距離だけ離れており、また水平方向にも車幅よりもやや短い距離離れている。あるサンプリング時刻において2つのリフレクタの一方からの反射光を受光素子202−4が受光し、それとは離れて配置されている受光素子202−8が2つのリフレクタの他方からの反射光を受光するとした場合には、水平方向に配置された受光素子202−1乃至受光素子202−16のうち、受光素子202−4と受光素子202−8との2箇所において積分受光値が突出して大きくなる。これが水平方向のピークである。例えば、後述する図11の最上段で示される水平方向に対する積算受光値の分布におけるピークが、水平方向のピークに相当する。
物体検出部312は、積算受光値(反射光の強度)の水平方向及び時間方向(距離方向)の分布及びピークの検出結果に基づいて、監視領域内の物体の検出を行い、検出結果を制御部21及び通知部303に供給する。
また、物体検出部312は、停止判定部312aを備えている。停止判定部312aは、車両センサ13より供給される加速度の情報から得られる、上下方向の振幅に基づいて、自車両の移動方向に対する垂直方向の振動の振幅の大きさに応じて物体検出処理を停止状態とするか否かを判定する。停止判定部312aが、自車両の移動方向に対する垂直方向の振動の振幅の大きさに応じて物体検出処理を停止状態とすると判定するとき、物体検出部312は、車両制御装置12に対して車両を制御する動作の一時停止を指示する停止命令を出力するようにして、車両制御装置12の車両を制御する動作を停止させる。
従って、物体検出部312は、検出結果と共に、その信頼度に関する情報などを送信するようにして、車両制御装置12が、所定の信頼度より低い検出結果に対しては、車両を制御する動作を停止させるようにしてもよい。また、物体検出部312は、検出結果を通知部303に所定時間だけ出力しないようにして、車両制御装置12の車両を制御する動作を停止させるようにしてもよい。
通知部303は、監視領域内の物体の検出結果を車両制御装置12に供給する。車両制御装置12は、通知部303から検出結果が入力されない場合には、衝突回避のための制御を一時停止する。
{物体検出処理}
次に、図7のフローチャートを参照して、レーザレーダ装置11により実行される物体検出処理について説明する。
ステップS1において、各MUX261は、受光素子202の選択を行う。具体的には、各MUX261は、制御部21の制御の下に、各MUX261に入力される受光信号のうち後段のTIA262に供給する受光信号を選択する。そして、以下の処理において、選択された受光信号の出力元の受光素子202の受光値の測定が行われる。換言すれば、選択された受光素子202の検出領域からの反射光の強度の測定が行われる。
ステップS2において、投光部22は、測定光を投光する。具体的には、駆動回路101は、制御部21の制御の下に、発光素子102からパルス状の測定光を出射させる。発光素子102から出射された測定光は、投光光学系103を介して監視領域全体に投光される。
ステップS3において、受光部23は、反射光に応じた受光信号を生成する。具体的には、各受光素子202は、受光光学系201を介して、ステップS2の処理で投光した測定光に対する反射光のうち、それぞれ対応する方向の検出領域からの反射光を受光する。そして、各受光素子202は、受光した反射光をその受光量に応じた電気信号である受光信号に光電変換し、得られた受光信号を後段のMUX261に供給する。
ステップS4において、測定部24は、受光信号のサンプリングを行う。具体的には、各TIA262は、制御部21の制御の下に、各MUX261から供給された受光信号の電流−電圧変換を行うとともに、制御部21により設定されたゲインにより受光信号の電圧を増幅する。各TIA262は、増幅後の受光信号を後段のPGA263に供給する。
各PGA263は、制御部21の制御の下に、各TIA262から供給される受光信号の電圧を、制御部21により設定されたゲインで増幅し、後段のADC264に供給する。
各ADC264は、制御部21の制御の下に発生されるサンプリングの開始タイミングを規定するトリガ信号に基づいて、各PGA263から供給される受光信号のサンプリングを行い、受光信号をA/D変換する。各ADC264は、A/D変換後の受光信号を積算部301に供給する。
なお、受光信号のサンプリング処理の詳細については、図8を参照して後述する。
ステップS5において、積算部301は、前回までの受光値と今回の受光値の積算を行う。これにより、図9を参照して後述するように、同じ前記受光素子202からの受光信号の同じサンプリング時刻における受光値の積算が行われる。
ステップS6において、制御部21は、受光値の測定を所定の回数(例えば、100回)行ったか否かを判定する。まだ受光値の測定を所定の回数行っていないと判定された場合、処理はステップS2に戻る。すなわち、受光値の測定が所定の回数(例えば、100回)行われるまで、ステップS2乃至S6の処理が繰り返される。そして、ステップS6において、受光値の測定が所定の回数行われたと判定された場合、処理は、ステップS7に進む。
ここで、図8乃至図10を参照して、ステップS2乃至S6の処理の具体例について説明する。
図8は、受光信号のサンプリング処理の具体例を示すタイミングチャートであり、図内の各段の図の横軸は時間を示している。
図8の最上段は、測定光の発光タイミングを示している。検出期間TD1、TD2、・・・は、物体の検出処理を行う期間の最小単位であり、1回の検出期間において物体の検出処理が1回行われる。
また、各検出期間は、4サイクルの測定期間TM1乃至TM4及び休止期間TBを含んでいる。測定期間は、受光値の測定を行う受光素子202の切り替えを行う最小単位である。すなわち、各測定期間の前に受光素子202の選択が可能である。一方、測定期間内は受光素子202の変更をすることができない。従って、1回の測定期間において、同じ種類の受光素子202の受光値の測定が行われる。これにより、測定期間単位で反射光の強度を測定する対象となる検出領域を切り替えることができる。
図8の2段目は、検出期間TD1の測定期間TM2を拡大した図である。この図に示されるように、1サイクルの測定期間内に、測定光が所定の間隔で少なくとも1回以上の所定の回数(例えば100回)だけ投光される。
図8の3段目は、ADC264のサンプリングタイミングを規定するトリガ信号の波形を示しており、4段目は、ADC264における受光信号のサンプリングタイミングを示している。なお、4段目の縦軸は受光信号の値(電圧)を示し、受光信号上の複数の黒丸は、それぞれサンプリングポイントを示している。従って、隣接する黒丸と黒丸の間の時間が、サンプリング間隔となる。
制御部21は、測定光の投光から所定の時間経過後に、トリガ信号を各ADC264に供給する。各ADC264は、トリガ信号が入力されてから所定の時間が経過した後、所定のサンプリング周波数(例えば、数十から数百MHz)で所定の回数(例えば32回)だけ受光信号のサンプリングを行う。すなわち、測定光が投光される度に、MUX261により選択された受光信号のサンプリングが、所定のサンプリング間隔で所定の回数行われる。
例えば、ADC264のサンプリング周波数を100MHzとすると、10ナノ秒のサンプリング間隔でサンプリングが行われる。従って、距離に換算して約1.5mの間隔で受光値のサンプリングが行われる。すなわち、各検出領域内の自車両からの距離方向において約1.5m間隔の各地点からの反射光の強度が測定される。
そして、各ADC264は、トリガ信号を基準とする(トリガ信号が入力された時刻を0とする)各サンプリング時刻におけるサンプリング値(受光値)を示すデジタルの受光信号を積算部301に供給する。
このように、測定光が投光される度に、MUX261により選択された各受光素子202の受光信号のサンプリングが行われる。これにより、選択された各受光素子202の検出領域内の反射光の強度が所定の距離単位で検出される。
一方、休止期間TBにおいては、測定光の投光及び受光値の測定が休止する。そして、測定期間TM1乃至TM4における受光値の測定結果に基づく物体の検出処理や、投光部22、受光部23、測定部24の設定、調整、試験等が行われる。
次に、図9を参照して、受光値の積算処理の具体例について説明する。図9は、1サイクルの測定期間中に測定光を100回投光した場合に、ある受光素子202から出力される100回分の受光信号に対する積算処理の例を示している。なお、図9の横軸はトリガ信号が入力されたタイミングを基準(時刻0)とする時刻(サンプリング時刻)を示し、縦軸は受光値(サンプリング値)を示している。
この図に示されるように、1回目から100回目までの各測定光に対して、それぞれサンプリング時刻t1乃至tyにおいて受光信号のサンプリングが行われ、同じサンプリング時刻における受光値が積算される。例えば、1回目から100回目までの各測定光に対するサンプリング時刻t1における受光値が積算される。このようにして、検出期間内にサンプリングされた、同じ受光素子202からの受光信号の同じサンプリング時刻における受光値の積算が行われる。そして、この積算値が以降の処理に用いられる。
ここで、MUX261において複数の受光素子202からの受光信号を加算する場合、全ての受光素子202が一致する受光信号の受光値が積算される。例えば、受光素子202−1及び202−2からの受光信号を加算した受光信号の受光値は、受光素子202−1又は受光素子202−2の一方のみからの受光信号の受光値とは別に積算される。換言すれば、受光素子202−1及び202−2からの受光信号を加算した受光信号の受光値と、受光素子202−1又は受光素子202−2の一方のみからの受光信号の受光値とは、それぞれ別の種類の受光信号をサンプリングした受光値として区別され、分けて積算される。
この積算処理により、1回の測定光に対する受光信号のS/N比が低い場合でも、この積算処理を行うことにより、信号成分は増幅され、ランダムなノイズは平均化されて減少する。その結果、受光信号から信号成分とノイズ成分を分離しやすくなり、実質的に受光感度を上げることができる。これにより、例えば、遠方の物体や反射率の低い物体の検出精度が向上する。
なお、以下、1サイクルの測定期間内に実行される所定の回数(例えば、100回)の測定処理及び積算処理のセットを測定積算ユニットと称する。
図10は、各測定期間における各MUX261の受光素子202の選択の組み合わせの例を示している。なお、この図において、MUX261−1乃至261−4をMUX1乃至4と短縮して表している。また、図内の四角のマスの中の番号は、MUX261−1乃至261−4により選択された受光素子202の番号を示している。すなわち、受光素子202−1乃至202−16が、それぞれ1乃至16の番号で示されている。
例えば、測定期間TM1において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−1、202−5、202−9、202−13がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。測定期間TM2において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−2、202−6、202−10、202−14がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。測定期間TM3において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−3、202−7、202−11、202−15がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。測定期間TM4において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−4、202−8、202−12、202−16がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。
従って、この例では、1回の検出期間中に、全ての受光素子202の受光値の測定が行われる。換言すれば、1回の検出期間中に、監視領域内の全検出領域からの反射光の強度が測定される。
ここで、図7のフローチャートの説明に戻る。ステップS7において、制御部21は、測定期間を所定の回数繰り返したか否かを判定する。まだ測定期間を所定の回数繰り返していないと判定された場合、処理はステップS1に戻る。
すなわち、ステップS7において、測定期間を所定の回数繰り返したと判定されるまで、ステップS1乃至S7の処理が繰り返し実行される。すなわち、所定の長さの検出期間内に、測定期間が所定の回数繰り返される。また、測定期間毎に、受光値の測定を行う対象となる受光素子202の選択が行われ、反射光の強度の測定対象となる検出領域が切り替えられる。
一方、ステップS7において、測定期間を所定の回数繰り返したと判定された場合、処理はステップS8に進む。
ステップS8において、ピーク検出部311は、各受光素子202のサンプリング時刻毎の積算受光値の分布に基づいて、1回の検出期間内の反射光の強度の水平方向及び時間方向(距離方向)のピークを検出する。
具体的には、ピーク検出部311は、受光素子202毎に積算受光値がピークとなるサンプリング時刻を検出する。これにより、自車両からの距離方向において反射光の強度がピークとなる地点が、検出領域毎に検出される。換言すれば、各検出領域において、反射光の強度がピークとなる物体が検出された地点の自車両からの距離が検出される。
また、ピーク検出部311は、サンプリング時刻毎に積算受光値がピークとなる受光素子202(検出領域)を検出する。これにより、自車両からの距離方向において、所定の間隔ごと(例えば、約1.5mごと)に反射光の強度がピークとなる水平方向の位置(検出領域)が検出される。
そして、ピーク検出部311は、検出結果を示す情報を物体検出部312に供給する。
すなわち、例えば、図11で示されるように、測定光は車両351によって反射されて受光素子202により受光されるが、投光から受光までには時間差が生じている。この時間差は、レーザレーダ装置と車両351との距離に比例するので、車両351からの反射光は、該時間差と一致するサンプリングタイミング(サンプリング時刻tn)における受光値として測定される。従って、車両351を含む検出領域の各受光素子202の積算受光値のうち、特にサンプリング時刻tnにおける積算受光値が大きくなる。
尚、図11のグラフは、自車両の前方に車両351が走行している場合に、車両351からの反射光が戻ってくる付近のサンプリング時刻における積算受光値の水平方向の分布を示している。すなわち、このグラフは、当該サンプリング時刻における各受光素子202の積算受光値を、各受光素子202の水平方向の並び順に横軸方向に並べたグラフである。
なお、ピーク検出部311のピーク検出方法には、任意の方法を採用することができる。
ステップS9において、物体検出部312は、測定期間内の反射光の強度の水平方向及び時間方向の分布及びピークの検出結果に基づいて、監視領域内の他の車両、歩行者、障害物等の物体の有無、並びに、物体の種類、方向、距離等の検出を行う。
なお、物体検出部312の静止物体(動物体を含む)の物体検出方法には、任意の方法を採用することができる。
すなわち、例えば、図11で示されるように、前方に車両351が存在する場合、車両351により反射された反射光が、受光素子202により受光されるため、検出領域内に車両351を含む各受光素子202の積算受光値が大きくなる。特に、車両351の後方の左右のリフレクタ352L,352Rの反射率が高いため、検出領域内にリフレクタ352L,352Rを含む各受光素子202の積算受光値が特に大きくなる。
従って、図11のグラフに示されるように、水平方向の積算受光値の分布において、2つの顕著なピークP1,P2が現れる。また、リフレクタ352Lとリフレクタ352Rの間の車体により反射された反射光も検出されるため、ピークP1とピークP2の間の積算受光値もその他の領域に比べて高くなる。このように、同じサンプリング時刻における積算受光値の水平方向の分布において、顕著な2つのピークを検出することにより、前方の車両を検出することが可能である。
ステップS10において、物体検出部312は、停止判定部312aを制御して、図12のフローチャートを参照して後述する停止状態判定処理により物体検出処理が停止状態とされているか否かを判定する。ステップS10において、例えば、停止状態ではないと判定された場合、処理は、ステップS11に進む。
ステップS11において、通知部303は、必要に応じて物体の検出結果を外部に通知する。例えば、通知部303は、物体の有無に関わらず、物体の検出結果を定期的に車両制御装置12に供給する。或いは、例えば、通知部303は、車両が前方の物体に衝突する危険性がある場合に限り、物体の検出結果を車両制御装置12に供給する。この処理により、車両制御装置12は、例えば、図示せぬ制動装置を動作させて緊急ブレーキを掛けて、自車両を緊急停車させることが可能となる。
ステップS12において、制御部21は、所定の時間待機する。すなわち、制御部21は、図8の休止期間TBが終了するまで、測定光の投光を行わないように待機する。
その後、処理はステップS1に戻り、ステップS1乃至S12の処理が繰り返し実行される。すなわち、検出期間毎に積算受光値に基づいて物体の検出を行う処理が繰り返される。
尚、ステップS10において、例えば、停止状態であると判定された場合、ステップS11の処理はスキップされる。
以上の処理により、自車両が走行する前方などの監視領域内で物体が検出される場合、車両制御装置12により、例えば、自動的にブレーキを作動させて自車両の速度を減速させる、または停止させることにより、危険回避措置を取らせることが可能となる。
{停止状態判定処理}
次に、図12のフローチャートを参照して、停止状態判定処理について説明する。
ステップS31において、停止判定部312aは、上下方向の振幅を検出する。
ステップS32において、停止判定部312aは、上下方向の振幅が所定の閾値th1を超えているか否かを判定し、振幅が所定の閾値th1を超えるまで同様の処理を繰り返す。そして、ステップS32において、振幅が所定の閾値th1を超えた場合、処理は、ステップS33に進む。
ここで、上下方向の振幅、並びに閾値th1,th2について説明する。例えば、図13の上部で示されるように、自車両501が道路502上を図中の右方向に進行しているものとする。この場合、自車両501は、図中の道路502のうねりに沿って進行する。上下方向の振幅は、道路502上に凹凸がない場合でも、走行に伴った微小な振動が発生することにより、図13の下部で示されるように、時間tに対して微小な振幅Fが発生することになる。
例えば、図14の上部で示されるように、道路502上に凸部521−1乃至521−5が存在するものとすれば、自車両501が凸部521−1乃至521−5を乗り越える際に大きな衝撃が発生する。この大きな衝撃が発生すると、図14の下部で示されるように、凸部521−1乃至521−5を通過するタイミングに対応する時刻t11乃至t18において振幅Fが大きな値となる。以降において、このように大きな衝撃が発生したと認められる振幅Fの閾値を閾値th2と称するものとする。尚、振幅Fと閾値th2との比較は、振幅Fの絶対値による比較であるので、振幅Fが閾値th2を超える状態とは、振幅Fの実測値がth2より大きくなるか、または、−th2より小さくなるかのいずれかの状態を表す。このような道路502を走行した場合には、自車両の上下方向の振動が極めて大きいが、遭遇する可能性が低いと想定される。つまり、誤検知の可能性は高いが、発生頻度が低い事象である。
また、例えば、図15の上部で示されるように、道路502上ではなく、凸部521−1乃至521−5に対して、例えば、砂利道などの微小な凹凸などからなる不整地531上を自車両501が走行すると、図15の下部で示されるような振幅Fが検出される。すなわち、図15の下部においては、微小な凹凸に応じた時刻t31乃至t49において振幅Fが閾値th2より小さいが、凹凸が存在しない道路502を通過する場合の所定の振幅よりは大きな値となる。以降において、このように不整地を走行していると認められる所定の振幅となる閾値を閾値th1(<th2)と称するものとする。尚、振幅Fと閾値th1との比較は、振幅Fの絶対値による比較であるので、振幅Fが閾値th1を超える状態とは、振幅Fの実測値がth1より大きいか、または、−th1より小さいかのいずれかの状態を表す。このような道路502を走行した場合には、自車両の上下方向の振動が大きいが、遭遇する可能性が高いと想定される。つまり、誤検知の可能性も有り、発生頻度が高い事象である。
従って、ステップS32においては、実質的に、不整地を走行していると認められるか否かが判定されることになり、例えば、不整地を走行していると認められると判定された場合、すなわち、振幅Fが閾値th1よりも大きい場合、処理は、ステップS33に進む。
ステップS33において、停止判定部312aは、上下方向の振幅Fが所定の閾値th2を超えているか否か、すなわち、大きな衝撃が発生したと認められるか否かを判定する。
ステップS33において、例えば、振幅Fが所定の閾値th2を超えておらず、大きな衝撃が発生していないとみなされる場合、処理は、ステップS34に進む。
ステップS34において、停止判定部312aは、上下方向の振幅Fが所定の閾値th1を超えた時刻から所定時間T1が経過しているか否かを判定し、所定時間T1が経過していると判定した場合、処理は、ステップS35に進む。すなわち、上下方向の振幅Fが所定の閾値th1を超えて、そのタイミングから所定時間T1が経過したとき、不整地の走行がなされていると見なされて、処理がステップS35に進む。
ステップS35において、停止判定部312aは、既に振動状態、または、停止状態であることを示すフラグがセットされているか否かを判定する。尚、振動状態は、および、停止状態については、後述するものとする。
ステップS35において、例えば、振動状態および停止状態のいずれでもない、すなわち、不整地の走行がなされていないと判定されていた場合、処理は、ステップS36に進む。
ステップS36において、停止判定部312aは、状態を、不整地を走行している状態を示す振動状態を示すフラグを設定し、振動状態における継続時間の計測を開始し、処理は、ステップS31に戻る。
一方、ステップS35において、例えば、既に状態が振動状態または停止状態の状態を示すフラグがセットされている場合、処理は、ステップS37に進む。
ステップS37において、停止判定部312aは、振動状態の継続時間が所定時間T2以上継続しているか否かを判定する。ステップS37において、振動状態の継続時間が所定時間T2以上継続しているとみなされた場合、処理は、ステップS38に進む。すなわち、走行中に、例えば、踏切を超えた場合などのように、1回や数回、自車両の上下方向の振動が発生することは頻出する。このような一過性の場合には、停止状態としないために、振動状態における継続時間を、所定時間T2を超えることを判定の条件に加えている。
ステップS38において、停止判定部312aは、状態を物体検出処理の停止状態を示すフラグを設定する。
すなわち、誤検出のおそれがあるために、物体検出処理を一時的に停止する。
通常、図16の上段で示されるように、自車両501は、道路502を図中の右方向に走行するとき、レーザレーダ装置11により監視領域Z11内における衝突の恐れがある物体551の有無を検出する。
この状態から、例えば、図16の中段で示されるように、自車両501の前輪501aが、道路502上の凸部541に乗り上げた場合、監視領域Z11は全体として上方にずれて、監視領域Z21となる。この結果、監視領域Z21内において、物体551を検出することはできるものの、ずれた監視領域Z21内に、上方の看板などの物体561を、衝突の恐れがある物体として誤検出する恐れがあった。
また、例えば、図16の下段で示されるように、自車両501の後輪501bが、道路502上の凸部542に乗り上げた場合、監視領域Z11は全体として下方にずれて、監視領域Z22となる。この結果、監視領域Z22内において、物体551を検出することはできるものの、ずれた監視領域Z22内に、道路502上の道路鋲などを、衝突の恐れがある物体として誤検出する恐れがあった。
尚、図示しないが、図16の中段の状態については、後輪501bが凹部に嵌った状態と同様である。また、図16の下段の状態については、前輪501aが、凹部に嵌った状態と同様である。
そこで、振動状態が所定時間以上継続した場合、検出結果に誤検出が含まれる可能性があるものとみなし、ステップS38において、物体検出処理を停止状態に設定される。
ステップS39において、停止判定部312aは、停止状態とされてからの継続時間をリセットし、計測を開始する。尚、このとき、停止判定部312aは、振動状態の継続時間の計測は継続したままにする。また、既に停止状態であり、停止状態の継続時間の計測が続いている場合でも、停止判定部312aは、停止状態の継続時間をリセットして初期値にして計測を開始する。
また、ステップS37において、振動状態の継続時間が所定時間T2以上継続していないとみなされた場合、処理は、ステップS31に戻る。そして、ステップS31乃至S35,S37の処理が繰り返される。
ステップS31乃至S35,S37の処理が所定時間T2以上継続して繰り返されると、ステップS37において、振動状態が所定時間T2以上継続したと判定されて、処理がステップS38に進む。そして、ステップS38において、物体検出処理が停止状態に設定される。例えば、図15において、振動状態継続期間で示される時刻t31乃至t49の時間が所定時間T2である場合、時刻t49において、所定時間T2が経過したものとみなされて、物体検出処理が停止状態とされる。
すなわち、不整地の走行が開始されて、所定時間T2以上継続されると、図16を参照して説明したように、検出結果に誤りがある可能性があることから、物体検出処理を停止状態に設定する。これにより、図16を参照して説明したような、誤検出を低減することが可能となり、誤検出に基づいた急ブレーキが作動するといった処理を抑制することが可能となる。尚、このとき、振動状態の継続時間の計測は継続されるので、物体検出処理が停止状態に設定されても、閾値th1を超える振幅Fが検出され続ける場合、すなわち、不整地の走行が継続されているとみなされる場合、振動状態の継続時間の計測は継続され続ける。このため、ステップS38,S39の処理が繰り返されて、状態は、その都度、停止状態とされ、さらに、停止状態の継続時間の計測が初期値から計測され直され続ける。
また、ステップS33において、振幅Fが閾値th2よりも大きい場合、処理は、ステップS38に進む。すなわち、図14で示されるような、凸部521−1乃至521−5を自車両501が乗り越えるような場合、図15,図16を参照して説明したような誤検出が発生しているものと考えられるので、このような場合、即時、停止状態に設定される。
さらに、振動状態が継続している限り、停止状態の継続時間が繰り返し初期値から計測されることになるので、一旦、停止状態に設定される条件を満たしたタイミングからは、所定時間だけは確実に物体検出処理が停止状態に設定される。したがって、物体検出処理において、ステップS1乃至S7の処理により繰り返し計測される受光値の積算結果に、誤検出の影響がなくなったとみなされる状態まで、検出結果を通知部303に出力させないようにすることが可能となる。結果として、車両制御装置12に対して誤検出による検出結果に応じた情報が供給されないことになるので、誤検出によるブレーキがかかるといった処理を防止させることが可能となる。
さらに、ステップS34において、例えば、振幅Fが所定の閾値th1を超えてから所定時間T1が経過しておらず、不整地を走行していないとみなされる場合、処理は、ステップS40に進む。
ステップS40において、停止判定部312aは、既に振動状態の継続時間が計測され続けていたか否かを判定する。ステップS40において、例えば、既に振動状態の継続時間が計測され続けていた場合、処理は、ステップS41に進む。
ステップS41において、停止判定部312aは、振動状態の継続時間の計測を停止し、振動状態の継続時間の値をリセットする。このとき、振動状態を示すフラグが設定されている場合、停止判定部312aは、振動状態のフラグを解除して通常状態に設定する。尚、ステップS40において、既に振動状態の継続時間が計測され続けていないとみなされた場合、ステップS41の処理がスキップされる。
ステップS42において、停止判定部312aは、物体検出処理が停止状態に設定されてからの継続時間が所定の時間以上経過しているか否かを判定する。ステップS42において、停止状態に設定されてからの経過時間が所定の時間以上経過している場合、処理は、ステップS43に進む。
ステップS43において、停止判定部312aは、物体検出処理の停止状態を示すフラグを解除して通常状態とし、停止状態の継続時間の計測を停止して値をリセットし、処理は、ステップS31に戻る。
尚、ステップS42において、物体検出処理が停止状態とされてからの継続時間が所定の時間以上ではないとみなされた場合、ステップS43の処理は、スキップされる。
以上の処理により、例えば、図17の上段で示されるように、時刻t100において振動状態が検出されてから継続時間T2が経過する時刻t101において、停止状態が設定されると、停止状態が終了する時刻t102まで図7のフローチャートにおけるステップS11の処理がスキップされる。これにより、少なくとも時刻t101乃至t102の時間に対応する所定時間T3だけ停止状態にされることになるので、通知部303に対して検出結果が出力されない、処理停止期間が設定される。このため、測定光が監視領域に適切に照射されていないとみなされる場合、物体の検出状態に関わらず車両制御装置12に対して物体の検出結果に応じた情報が供給されないので、上下方向の振動による物体の誤検出に基づいた自動ブレーキが掛けられるといった誤動作を防止させることが可能となる。
すなわち、不整地の走行が継続されている限り(振幅Fが閾値th1を超え続ける限り)、振動状態の継続時間は計測され続けることになるため、常に、停止状態に設定される処理が繰り返されて、停止状態の継続時間についてもリセットされて計測される処理が繰り返される。このため、不整地の走行が終了して振動状態の継続時間の計測がリセットされて停止されてから、所定時間以上継続しないと停止状態が解除されない。結果として、不整地の走行状態が解除されたことが確実な状態になるまで、停止状態が継続されて、物体検出処理の検出結果が出力されないことになるので、誤検出を確実に抑制することが可能となる。
また、図17の下段で示されるように、時刻t100において振動状態が検出されてから継続時間T2が経過する時刻t101において、大きな凸部を自車両が乗り越えたタイミング(例えば、振幅Fが閾値th2を超えるタイミング)で停止状態に設定された後、所定時間が経過するまでに(停止状態が解除されるまでに)、再び時刻t111において、新たな凸部を乗り越えると、改めて停止状態が設定されて、停止状態の経過時間がリセットされて計測され直される。このため、最後に、大きな凸部を乗り越えたタイミングから所定の時間が経過するまでは、停止状態に設定され、処理停止期間が設定され続けることになる。
結果として、停止状態が継続された間に計測され続けている受光値の測定結果に誤検出が含まれない状態となるまでは、確実に物体検出処理の検出結果が出力されないようにすることができるので、誤検出が抑制される。
{変形例}
以上においては、停止状態に設定されると、物体検出部312からの検出結果の出力が停止されることにより、誤検出が防止される例について説明してきたが、停止状態に設定された場合、図7のステップS1乃至S7で繰り返し実施される受光値の計測処理そのものを停止させるようにしてもよい。
ここで、図18のフローチャートを参照して、停止状態に設定された場合、図7のステップS1乃至S7で繰り返し実施される受光値の計測処理そのものを停止させるようにした物体検出処理について説明する。
尚、図18のフローチャートにおけるステップS61乃至S71の処理は、図7におけるステップS1乃至S9,S11,S12の処理と同様であるので、その説明は省略するものとする。
すなわち、ステップS72において、物体検出部312は、物体検出処理が停止状態であるか否かを判定し、停止状態である時、処理は、ステップS73に進む。
ステップS73において、物体検出部312は、物体検出処理の停止状態が解除されたか否かを判定し、解除されるまで同様の処理を繰り返す。そして、ステップS73において、停止状態が解除された場合、処理は、ステップS61に戻る。
すなわち、一旦、停止状態に設定されると、図7のステップS1乃至S9,S11,S12の処理に対応するステップS61乃至S70の処理がなされない状態になるので、物体検出処理における受光値の測定そのものが実行されないので、誤検出が抑制される。
また、本発明は、車両用以外の他の用途に用いるレーザレーダ装置にも適用することが可能である。振動検出部としての車両センサには、車体のピッチ角を検出するためのジャイロ、シャーシとボディとの変位を検出する車高センサなどを用いても良い。
以上の如く、本発明の技術により、簡易で、かつ、低コストな構成により、移動体に搭載するレーザレーダ装置の移動に伴った振動に起因する誤検出を抑制し、物体の検出精度を向上させることが可能となる。
{コンピュータの構成例}
なお、上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
図19は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)601,ROM(Read Only Memory)602,RAM(Random Access Memory)603は、バス604により相互に接続されている。
バス604には、さらに、入出力インタフェース605が接続されている。入出力インタフェース605には、入力部606、出力部607、記憶部608、通信部609、及びドライブ610が接続されている。
入力部606は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部607は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部608は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部609は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ610は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア611を駆動する。
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU601が、例えば、記憶部608に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース605及びバス604を介して、RAM603にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
コンピュータ(CPU601)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア611に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア611をドライブ610に装着することにより、入出力インタフェース605を介して、記憶部608にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部609で受信し、記憶部608にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM602や記憶部608に、あらかじめインストールしておくことができる。
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
また、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。