以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
<1.実施の形態>
{レーザレーダ装置11の構成例}
図1は、本発明を適用したレーザレーダ装置の一実施の形態であるレーザレーダ装置11の構成例を示している。
レーザレーダ装置11は、例えば、車両に設けられ、その車両の前方の監視を行う。なお、以下、レーザレーダ装置11により物体の検出が可能な領域を監視領域と称する。また、以下、レーザレーダ装置11が設けられている車両を他の車両と区別する必要がある場合、自車両と称する。さらに、以下、自車両の左右方向(車幅方向)と平行な方向を水平方向と称する。
レーザレーダ装置11は、制御部21、測定光投光部22、検査光発光部23、受光部24、測定部25、及び、演算部26を含むように構成される。
制御部21は、車両制御装置12からの指令や情報等に基づいて、レーザレーダ装置11の各部の制御を行う。また、制御部21は、後述するように、レーザレーダ装置11の物体の検出感度を制御する。
測定光投光部22は、物体の検出に用いるパルス状のレーザ光(レーザパルス)である測定光を監視領域に投光する。
検査光発光部23は、受光部24及び測定部25の検査等に用いる検査光を発光し、受光部24に照射する。
受光部24は、測定光の反射光又は検査光を受光し、水平方向のそれぞれ異なる方向からの反射光又は検査光の強度(明るさ)を検出する。そして、受光部24は、各方向の反射光又は検査光の強度に応じた電気信号である複数の受光信号を出力する。
測定部25は、受光部24から供給されるアナログの受光信号に基づいて、受光部24における反射光に対する受光値の測定を行い、測定した受光値を示すデジタルの受光信号を演算部26に供給する。
演算部26は、測定部25から供給される受光値の測定結果に基づいて、監視領域内の物体の検出を行い、検出結果を制御部21及び車両制御装置12に供給する。
車両制御装置12は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)等により構成され、監視領域内の物体の検出結果に基づいて、自動ブレーキ制御や運転者への警報等を行う。
{測定光投光部22の構成例}
図2は、レーザレーダ装置11の測定光投光部22の構成例を示している。測定光投光部22は、駆動回路101、発光素子102、及び、投光光学系103を含むように構成される。
駆動回路101は、制御部21の制御の下に、発光素子102の発光強度や発光タイミング等の制御を行う。
発光素子102は、例えば、レーザダイオード(LD)からなり、駆動回路101の制御の下に、測定光(レーザパルス)の発光を行う。発光素子102から発光された測定光は、レンズ等により構成される投光光学系103を介して監視領域に投光される。
{検査光発光部23及び受光部24の構成例}
図3は、レーザレーダ装置11の検査光発光部23及び受光部24の構成例を示している。検査光発光部23は、駆動回路151及び発光素子152を含むように構成される。受光部24は、受光光学系201及び受光素子202−1乃至202−16を含むように構成される。
なお、以下、受光素子202−1乃至202−16を個々に区別する必要がない場合、単に受光素子202と称する。
駆動回路151は、制御部21の制御の下に、発光素子152の発光強度や発光タイミング等の制御を行う。
発光素子152は、例えば、LED(Light Emitting Diode)からなり、駆動回路151の制御の下に、パルス状のLED光からなる検査光の発光を行う。発光素子152から発光された検査光は、レンズ等の光学系を介さずに、各受光素子202の受光面に直接照射される。
受光光学系201は、レンズ等により構成され、光軸が車両の前後方向を向くように設置される。そして、受光光学系201は、監視領域内の物体等により反射された測定光の反射光が入射し、入射した反射光を各受光素子202の受光面に入射させる。
各受光素子202は、例えば、入射した光電荷をその光量に応じた電流値の受光信号に光電変換するフォトダイオードからなる。また、各受光素子202は、受光光学系201に入射した反射光が集光する位置において、受光光学系201の光軸に対して垂直、かつ、自車両の車幅方向に平行(すなわち、水平方向)に一列に並ぶように設けられている。そして、受光光学系201に入射した反射光は、受光光学系201への水平方向の入射角度に応じて、各受光素子202に振り分けられて入射する。従って、各受光素子202は、監視領域からの反射光のうち、水平方向においてそれぞれ異なる方向からの反射光を受光する。これにより、監視領域は水平方向の複数の方向における複数の領域(以下、検出領域と称する)に分割され、各受光素子202は、それぞれ対応する検出領域からの反射光を個別に受光する。そして、受光素子202は、受光した反射光をその受光量に応じた電流値の受光信号に光電変換し、得られた受光信号を測定部25に供給する。
ここで、図4及び図5を参照して、各受光素子202の検出領域の具体例について説明する。図4は、レーザレーダ装置11が設けられた自車両Cを上から見た場合の各検出領域の位置を模式的に示している。図5は、受光部24を上から見た場合の各受光素子202と各検出領域との関係を模式的に示している。なお、図5では、図を分かりやすくするために、各検出領域からの反射光のうち受光光学系201のレンズの中央を通る光線のみを模式的に示している。
各受光素子202は、自車両Cの進行方向に向かって右から受光素子202−1、202−2、202−3・・・の順に一列に並べられている。これに対して、レーザレーダ装置11の監視領域は、自車両Cの前方に放射状に広がる検出領域A1乃至A16により構成され、各検出領域は、自車両Cの進行方向に向かって左から検出領域A1、A2、A3・・・の順に並んでいる。そして、受光素子202−1は、監視領域内の左端であって、自車両Cの左前方の斜線で示される検出領域A1からの反射光を受光する。また、受光素子202−16は、監視領域内の右端であって、自車両Cの右前方の斜線で示される検出領域A16からの反射光を受光する。さらに、受光素子202−8及び202−9は、監視領域の中央の網掛けで示される検出領域A8及びA9からの反射光を受光する。
また、各受光素子202は、発光素子152からの検査光をその受光量に応じた電流値の受光信号に光電変換し、得られた受光信号を測定部25に供給する。
{測定部25の構成例}
図6は、レーザレーダ装置11の測定部25の構成例を示している。測定部25は、選択部251、電流電圧変換部252、増幅部253、及び、サンプリング部254を含むように構成される。選択部251は、マルチプレクサ(MUX)261−1乃至261−4を含むように構成される。電流電圧変換部252は、トランス・インピーダンス・アンプ(TIA)262−1乃至262−4を含むように構成される。増幅部253は、プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)263−1乃至263−4を含むように構成される。サンプリング部254は、A/Dコンバータ(ADC)264−1乃至264−4を含むように構成される。
なお、以下、MUX261−1乃至261−4、TIA262−1乃至262−4、PGA263−1乃至263−4、及び、ADC264−1乃至264−4をそれぞれ個々に区別する必要がない場合、それぞれ単にMUX261、TIA262、PGA263、及び、ADC264と称する。
受光素子202−1乃至202−4は、MUX261−1に接続され、受光素子202−5乃至202−8は、MUX261−2に接続され、受光素子202−9乃至202−12は、MUX261−3に接続され、受光素子202−13乃至202−16は、MUX261−4に接続されている。また、MUX261−1、TIA262−1、PGA263−1及びADC264−1が直列に接続され、MUX261−2、TIA262−2、PGA263−2及びADC264−2が直列に接続され、MUX261−3、TIA262−3、PGA263−3及びADC264−3が直列に接続され、MUX261−4、TIA262−4、PGA263−4及びADC264−4が直列に接続されている。
各MUX261は、制御部21の制御の下に、それぞれ接続されている受光素子202から供給される受光信号のうち1つ以上を選択して、後続のTIA262に供給する。なお、各MUX261は、複数の受光信号を選択した場合、選択した受光信号を加算して、後続のTIA262に供給する。
各TIA262は、制御部21の制御の下に、MUX261から供給される受光信号の電流−電圧変換を行う。すなわち、各TIA262は、入力された電流としての受光信号を電圧としての受光信号に変換するとともに、制御部21により設定されたゲインで変換後の受光信号の電圧を増幅する。そして、各TIA262は、増幅後の受光信号を後段のPGA263に供給する。
各PGA263は、制御部21の制御の下に、TIA262から供給される受光信号の電圧を、制御部21により設定されたゲインで増幅し、後段のADC264に供給する。
各ADC264は、受光信号のA/D変換を行う。すなわち、各ADC264は、制御部21の制御の下に、PGA263から供給されるアナログの受光信号のサンプリングを行うことにより受光値の測定を行う。そして、各ADC264は、受光値のサンプリング結果(測定結果)を示すデジタルの受光信号を演算部26に供給する。
{MUX261の構成例}
図7は、MUX261の機能の構成例を模式的に示している。
MUX261は、デコーダ271、入力端子IN1乃至IN4、接点C1乃至C4、及び、出力端子OUT1を備えている。接点C1乃至C4の一端は、それぞれ入力端子IN1乃至IN4に接続されており、接点C1乃至C4の他の一端は、出力端子OUT1に接続されている。
なお、以下、入力端子IN1乃至IN4及び接点C1乃至C4を個々に区別する必要がない場合、単に入力端子IN及び接点Cと称する。
デコーダ271は、制御部21から供給される選択信号をデコードし、デコードした選択信号の内容に従って、各接点Cのオン/オフを個別に切り替える。そして、オンになっている接点Cに接続されている入力端子INに入力される受光信号が選択され、出力端子OUT1から出力される。なお、オンになっている接点Cが複数ある場合、選択された複数の受光信号が加算されて出力端子OUT1から出力される。
{演算部26の構成例}
図8は、演算部26の構成例を示している。
演算部26は、積算部301、検出部302、及び、通知部303を含むように構成される。また、検出部302は、ピーク検出部311及び物体検出部312を含むように構成される。
積算部301は、同じ受光素子202の受光値の積算をサンプリング時刻毎に行い、その積算値(以下、積算受光値と称する)をピーク検出部311に供給する。
ピーク検出部311は、各受光素子202の積算受光値(反射光の強度)に基づいて、測定光の反射光の強度の水平方向及び時間方向(距離方向)のピークを検出し、検出結果を物体検出部312に供給する。
物体検出部312は、積算受光値(反射光の強度)の水平方向及び時間方向(距離方向)の分布及びピークの検出結果に基づいて、監視領域内の物体の検出を行い、検出結果を制御部21及び通知部303に供給する。
通知部303は、監視領域内の物体の検出結果を車両制御装置12に供給する。
{車両検出処理の第1の実施の形態}
次に、図9のフローチャートを参照して、レーザレーダ装置11により実行される車両検出処理の第1の実施の形態について説明する。
なお、以降に説明する車両検出処理の各実施の形態では、車体の後部に左右に間隔を空けて並ぶ2つのリフレクタが設けられている三輪以上の車両が検出対象となるが、説明を簡単にするために、検出対象となる車両を四輪車両と総称する。従って、この明細書内で、特に断りがない限り、四輪車両には、三輪車両又は五輪以上の車両も含まれる。より具体的には、三輪トラック、小型トラック、小型乗用車、大型乗用車、大型バス、大型トラック、大型特殊車、小型特殊車等が含まれる。
また、詳細な説明は省略するが、以降に説明する車両検出処理の各実施の形態と並行して、四輪車両以外の物体の検出処理も実行される。
ステップS1において、レーザレーダ装置11は、測定積算処理を実行する。ここで、図10のフローチャートを参照して、測定積算処理の詳細について説明する。
ステップS51において、各MUX261は、受光素子202の選択を行う。具体的には、各MUX261は、制御部21の制御の下に、各MUX261に入力される受光信号のうち後段のTIA262に供給する受光信号を選択する。そして、以下の処理において、選択された受光信号の出力元の受光素子202の受光値の測定が行われる。換言すれば、選択された受光素子202の検出領域からの反射光の強度の測定が行われる。
ステップS52において、測定光投光部22は、測定光を投光する。具体的には、駆動回路101は、制御部21の制御の下に、発光素子102からパルス状の測定光を出射させる。発光素子102から出射された測定光は、投光光学系103を介して監視領域全体に投光される。
ステップS53において、受光部24は、反射光に応じた受光信号を生成する。具体的には、各受光素子202は、受光光学系201を介して、ステップS52の処理で投光した測定光に対する反射光のうち、それぞれ対応する方向の検出領域からの反射光を受光する。そして、各受光素子202は、受光した反射光をその受光量に応じた電気信号である受光信号に光電変換し、得られた受光信号を後段のMUX261に供給する。
ステップS54において、測定部25は、受光信号のサンプリングを行う。具体的には、各TIA262は、制御部21の制御の下に、各MUX261から供給された受光信号の電流−電圧変換を行うとともに、制御部21により設定されたゲインにより受光信号の電圧を増幅する。各TIA262は、増幅後の受光信号を後段のPGA263に供給する。
各PGA263は、制御部21の制御の下に、各TIA262から供給される受光信号の電圧を、制御部21により設定されたゲインで増幅し、後段のADC264に供給する。
各ADC264は、制御部21の制御の下に、各PGA263から供給される受光信号のサンプリングを行い、受光信号をA/D変換する。各ADC264は、A/D変換後の受光信号を積算部301に供給する。
なお、受光信号のサンプリング処理の詳細については、図11を参照して後述する。
ステップS55において、積算部301は、前回までの受光値と今回の受光値の積算を行う。これにより、図12を参照して後述するように、同じ受光素子202からの受光信号の同じサンプリング時刻における受光値の積算が行われる。また、積算部301は、各ADC264から出力される受光信号について、受光値の積算処理をそれぞれ並行して実行する。これにより、4つの受光素子202の受光値の積算が、個別に並行して行われる。
ステップS56において、制御部21は、受光値の測定を所定の回数(例えば、100回)行ったか否かを判定する。まだ受光値の測定を所定の回数行っていないと判定された場合、処理はステップS52に戻る。
その後、ステップS56において受光値の測定を所定の回数行ったと判定されるまで、ステップS52乃至S56の処理が繰り返し実行される。これにより、後述する所定の長さの測定期間内に、測定光を投光し、選択した受光素子202の受光値を測定する処理が所定の回数繰り返される。また、測定した受光値の積算が行われる。
一方、ステップS56において、受光値の測定を所定の回数行ったと判定された場合、処理はステップS57に進む。
ステップS57において、制御部21は、測定期間を所定の回数(例えば、4回)繰り返したか否かを判定する。まだ測定期間を所定の回数繰り返していないと判定された場合、処理はステップS51に戻る。
その後、ステップS57において、測定期間を所定の回数繰り返したと判定されるまで、ステップS51乃至S57の処理が繰り返し実行される。すなわち、後述する所定の長さの検出期間内に、測定期間が所定の回数繰り返される。また、測定期間毎に、受光値の測定を行う対象となる受光素子202の選択が行われ、反射光の強度の測定対象となる検出領域が切り替えられる。
一方、ステップS57において、測定期間を所定の回数繰り返したと判定された場合、
測定積算処理は終了する。
ここで、図11乃至図13を参照して、測定積算処理の具体例について説明する。
図11は、受光信号のサンプリング処理の具体例を示すタイミングチャートであり、図内の各段の図の横軸は時間を示している。
図11のいちばん上の段は、測定光の発光タイミングを示している。検出期間TD1、TD2、・・・は、物体の検出処理を行う期間の最小単位であり、1回の検出期間において物体の検出処理が1回行われる。
また、各検出期間は、4サイクルの測定期間TM1乃至TM4及び休止期間TBを含んでいる。測定期間は、受光値の測定を行う受光素子202の切り替えを行う最小単位である。すなわち、各測定期間の前に受光素子202の選択が可能である一方、測定期間内は受光素子202の変更をすることができない。従って、1回の測定期間において、同じ受光素子202の受光値の測定が行われる。これにより、測定期間単位で反射光の強度を測定する対象となる検出領域を切り替えることができる。
図11の2段目は、検出期間TD1の測定期間TM2を拡大した図である。この図に示されるように、1サイクルの測定期間内に、測定光が所定の間隔で所定の回数(例えば、100回)だけ投光される。
図11の3段目は、ADC264のサンプリングタイミングを規定するトリガ信号の波形を示しており、4段目は、ADC264における受光信号のサンプリングタイミングを示している。なお、4段目の縦軸は受光信号の値(電圧)を示し、受光信号上の複数の黒丸は、それぞれサンプリングポイントを示している。従って、隣接する黒丸と黒丸の間の時間が、サンプリング間隔となる。
制御部21は、測定光の投光から所定の時間経過後に、トリガ信号を各ADC264に供給する。各ADC264は、トリガ信号が入力されてから所定の時間が経過した後、所定のサンプリング周波数(例えば、数十から数百MHz)で所定の回数(例えば32回)だけ受光信号のサンプリングを行う。すなわち、測定光が投光される度に、MUX261により選択された受光信号のサンプリングが、所定のサンプリング間隔で所定の回数行われる。
例えば、ADC264のサンプリング周波数を100MHzとすると、10ナノ秒のサンプリング間隔でサンプリングが行われる。従って、距離に換算して約1.5mの間隔で受光値のサンプリングが行われる。すなわち、各検出領域内の自車両からの距離方向において約1.5m間隔の各地点からの反射光の強度が測定される。
そして、各ADC264は、トリガ信号を基準とする(トリガ信号が入力された時刻を0とする)各サンプリング時刻におけるサンプリング値(受光値)を示すデジタルの受光信号を積算部301に供給する。
このように、測定光が投光される度に、MUX261により選択された各受光素子202の受光信号のサンプリングが並行して行われる。すなわち、MUX261−1、MUX261−2、MUX261−3及びMUX261−4において選択された各受光素子202の受光信号は、それぞれADC264−1、ADC264−2、ADC264−3及びADC264−4によって並行してサンプリングが行われる。これにより、選択された各受光素子202の検出領域内の反射光の強度が所定の距離単位で測定される。
一方、休止期間TBにおいては、測定光の投光及び受光値の測定が休止する。そして、測定期間TM1乃至TM4における受光値の測定結果に基づく物体の検出処理や、測定光投光部22、受光部24、測定部25の設定、調整、試験等が行われる。
次に、図12を参照して、受光値の積算処理の具体例について説明する。図12は、1サイクルの測定期間中に測定光を100回投光した場合に、ある受光素子202から出力される100回分の受光信号に対する積算処理の例を示している。なお、図12の横軸はトリガ信号が入力されたタイミングを基準(時刻0)とする時刻(サンプリング時刻)を示し、縦軸は受光値(サンプリング値)を示している。
この図に示されるように、1回目から100回目までの各測定光に対して、それぞれサンプリング時刻t1乃至tyにおいて受光信号のサンプリングが行われ、同じサンプリング時刻における受光値が積算される。例えば、1回目から100回目までの各測定光に対するサンプリング時刻t1における受光値が積算される。このようにして、検出期間内にサンプリングされた、同じ受光素子202からの受光信号の同じサンプリング時刻における受光値の積算が行われる。そして、この積算値が以降の処理に用いられる。
ここで、MUX261において複数の受光素子202からの受光信号を加算する場合、例えば、受光素子202−1及び202−2からの受光信号を加算した受光信号の受光値は、受光素子202−1又は受光素子202−2の一方のみからの受光信号の受光値とは別に積算される。換言すれば、受光素子202−1及び202−2からの受光信号を加算した受光信号の受光値と、受光素子202−1又は受光素子202−2の一方のみからの受光信号の受光値とは、それぞれ別の種類の受光信号をサンプリングした受光値として区別され、分けて積算される。
この積算処理を行うことにより、1回の測定光に対する受光信号のS/N比が低い場合でも、信号成分が増幅され、ランダムなノイズは平均化されて減少する。その結果、受光信号から信号成分とノイズ成分を分離しやすくなり、実質的に受光感度を上げることができる。これにより、例えば、遠方の物体や反射率の低い物体の検出精度が向上する。なお、積算回数が多くなるほど、受光感度が上がることになる。
なお、以下、1サイクルの測定期間内に実行される所定の回数(例えば、100回)の測定処理及び積算処理のセットを測定積算ユニットと称する。
図13は、各測定期間において各MUX261により選択される受光素子202の組み合わせの例を示している。なお、この図において、MUX261−1乃至261−4をMUX1乃至4と短縮して表している。また、図内の四角のマスの中の番号は、MUX261−1乃至261−4により選択された受光素子202の番号を示している。すなわち、受光素子202−1乃至202−16が、それぞれ1乃至16の番号で示されている。
例えば、測定期間TM1において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−1、202−5、202−9、202−13がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。測定期間TM2において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−2、202−6、202−10、202−14がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。測定期間TM3において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−3、202−7、202−11、202−15がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。測定期間TM4において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−4、202−8、202−12、202−16がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。
従って、この例では、1回の検出期間内に全ての受光素子202の受光値の測定が行われる。換言すれば、1回の検出期間内に監視領域内の全検出領域からの反射光の強度が測定される。
図9に戻り、ステップS2において、検出部302は、リフレクタ候補の検出を行う。具体的には、積算部301は、1回の検出期間内の各受光素子202の積算受光値をピーク検出部311に供給する。ピーク検出部311は、各受光素子202のサンプリング時刻毎の積算受光値の分布に基づいて、検出期間内の反射光の強度の水平方向及び時間方向(距離方向)のピークを検出する。
具体的には、ピーク検出部311は、受光素子202毎に積算受光値がピークとなるサンプリング時刻を検出する。これにより、自車両からの距離方向において反射光の強度がピークとなる地点が、検出領域毎に検出される。換言すれば、各検出領域において、反射光の強度がピークとなる地点の自車両からの距離が検出される。
また、ピーク検出部311は、サンプリング時刻毎に積算受光値がピークとなる受光素子202(検出領域)を検出する。これにより、自車両からの距離方向において、所定の間隔ごと(例えば、約1.5mごと)に反射光の強度がピークとなる水平方向の位置(検出領域)が検出される。
そして、ピーク検出部311は、検出結果を示す情報を物体検出部312に供給する。
なお、ピーク検出部311のピーク検出方法には、任意の方法を採用することができる。
物体検出部312は、積算受光値(反射光の強度)の水平方向及び時間方向のピークの検出結果に基づいて、同一車両のリフレクタ候補の検出を行う。例えば、物体検出部312は、積算受光値の水平方向及び時間方向の分布において、同様の動きを続けている2以上のピークが存在する場合、それらのピークを同一車両のリフレクタ候補として検出する。ここで、図14を参照して、リフレクタ候補の検出方法の具体例について説明する。
図14のグラフは、自車両の前方に車両351が走行している場合に、車両351からの反射光が戻ってくる付近のサンプリング時刻における積算受光値の水平方向の分布を示している。すなわち、このグラフは、当該サンプリング時刻における各受光素子202の積算受光値を、各受光素子202の水平方向の並び順に横軸方向に並べたグラフである。なお、図内の四角のマスの中の番号は、各受光素子202の番号を示しており、自車両に水平方向に配置された受光素子202の並びを示している。
測定光は車両351によって反射されて受光素子202により受光されるが、投光から受光までには時間差が生じている。この時間差は、レーザレーダ装置11と車両351との距離に比例するので、車両351からの反射光は、該時間差と一致するサンプリングタイミング(サンプリング時刻tn)における受光値として測定される。従って、車両351を含む検出領域の各受光素子202の積算受光値のうち、特にサンプリング時刻tnにおける積算受光値が大きくなる。
また、前方に車両351が存在する場合、車両351により反射された反射光が、受光素子202により受光されるため、検出領域内に車両351を含む受光素子202−5乃至202−11の積算受光値が大きくなる。特に、車両351の後方の左右のリフレクタ352L,352Rの反射率が高いため、検出領域内にリフレクタ352L,352Rを含む受光素子202−6及び202−10の積算受光値が特に大きくなる。従って、図14のグラフに示されるように、水平方向の積算受光値の分布において、2つの顕著なピークP1,P2が現れ、このピークP1,P2がリフレクタ候補として検出される。なお、以下、ピークP1,P2をリフレクタ候補P1,P2とも称する。
なお、リフレクタ候補の検出方法には、任意の方法を採用することができる。
ステップS3において、物体検出部312は、ステップS2の処理の結果に基づいて、同一車両のリフレクタ候補が検出されたか否かを判定する。同一車両のリフレクタ候補が検出されたと判定された場合、処理はステップS4に進む。
ステップS4において、物体検出部312は、リフレクタ候補が3つ以上検出されたか否かを判定する。リフレクタ候補が3つ以上検出されたと判定された場合、処理はステップS5に進む。これは、例えば、リフレクタの間にあるナンバープレート等の反射光が強く、同一車両からの反射光のピークが3つ以上検出されるような場合を想定している。
ステップS5において、物体検出部312は、適切な間隔にあるリフレクタ候補を2つ選択する。具体的には、物体検出部312は、検出された3つ以上のリフレクタ候補のうちの任意の2つを同じ車両に設けられている1対(ペア)のリフレクタ候補と仮定して、この1対のリフレクタ候補間の距離を計算する。物体検出部312は、この距離の計算を全ての2つのリフレクタ候補の組み合わせについて実行し、2つのリフレクタ候補の間の距離が一般的な四輪車両のリフレクタ間の距離に最も近い組み合わせを検出する。そして、物体検出部312は、検出した組み合わせに含まれる2つのリフレクタ候補を選択する。
その後、処理はステップS6に進む。
一方、ステップS4において、リフレクタ候補が2つのみ検出されたと判定された場合、ステップS5の処理はスキップされ、処理はステップS6に進む。
ステップS6において、物体検出部312は、リフレクタ候補間のボディの検出を行う。具体的には、物体検出部312は、2つのリフレクタ候補をそれぞれ検出した受光素子202の間の受光素子202(以下、リフレクタ候補間受光素子と称する)の積算受光値に基づいて、リフレクタ候補の間の領域(以下、ボディ検出対象領域とも称する)における物体の検出を行う。なお、ボディ検出対象領域には、2つのリフレクタ候補がそれぞれ検出された2つの検出領域の間にある検出領域が含まれる。
例えば、図14の例の場合、リフレクタ候補P1を検出した受光素子202−6とリフレクタ候補P2を検出した受光素子202−10の間の受光素子202−7至202−9の個々の積算受光値に基づいて、リフレクタ候補P1,P2の間のボディ検出対象領域(検出領域A7乃至A9)における物体の検出が行われる。そして、例えば、ボディ検出対象領域において検出された物体と自車両との間の距離が、リフレクタ候補と自車両との間の距離とほぼ等しい場合、リフレクタ候補の間に車両のボディが存在すると判定される。
なお、リフレクタ候補間のボディの検出方法には、任意の方法を採用することができる。例えば、積算受光値が所定の閾値以上の場合には、ボディが存在すると判定することができる。
ステップS7において、物体検出部312は、ステップS6の処理の結果に基づいて、ボディが検出されたか否かを判定する。ボディが検出されたと判定された場合、処理はステップS8に進む。
ステップS8において、物体検出部312は、四輪車両であると判定する。すなわち、物体検出部312は、2つのリフレクタ候補が検出された位置に、リフレクタを含む四輪車両が存在すると判定する。その後、処理はステップS14に進む。
一方、ステップS7において、ボディが検出されなかったと判定された場合、処理はステップS9に進む。
ステップS9において、物体検出部312は、リフレクタ候補間の領域(すなわち、ボディ検出対象領域)の測定結果を加算する。具体的には、物体検出部312は、ボディ検出対象領域に含まれる複数の検出領域からの反射光をそれぞれ受光する受光素子202の積算受光値をサンプリング時刻毎に加算する。
例えば、図14の例の場合、リフレクタ候補P1,P2の間の検出領域A7乃至A9からの反射光をそれぞれ受光する受光素子202−7至202−9の積算受光値が、サンプリング時刻毎に加算される。例えば、サンプリング時刻t1における受光素子202−7至202−9の積算受光値を加算し、サンプリング時刻t2における受光素子202−7至202−9の積算受光値を加算するように、各サンプリング時刻における受光素子202−7至202−9の積算受光値が加算される。
ステップS10において、物体検出部312は、リフレクタ候補間のボディの検出を行う。すなわち、物体検出部312は、リフレクタ候補間の領域の測定結果を加算した結果に基づいて、ステップS6と同様の処理により、リフレクタ候補間のボディの検出を行う。例えば、図14の例の場合、受光素子202−7至202−9の積算受光値を加算した結果に基づいて、リフレクタ候補間のボディの検出が行われる。
上述したように、車両の後部のリフレクタ以外の車体部分は、リフレクタと比較して反射率が非常に低く、反射光量が小さい。そこで、リフレクタ候補間の領域の測定結果を加算した結果を用いることにより、水平分解能は低下するものの、リフレクタ候補間の物体の検出感度を上げることができ、リフレクタ候補間のボディの検出精度を向上させることができる。
ステップS11において、ステップS7の処理と同様に、ボディが検出されたか否かが判定され、ボディが検出されたと判定された場合、処理はステップS12に進む。
ステップS12において、ステップS8の処理と同様に、四輪車両であると判定され、処理はステップS14に進む。
一方、ステップS11において、ボディが検出されなかったと判定された場合、処理はステップS13に進む。
ステップS13において、物体検出部312は、四輪車両でないと判定する。すなわち、物体検出部312は、2つのリフレクタ候補が検出された位置に四輪車両が存在しないと判定する。その後、処理はステップS14に進む。
一方、ステップS3において、同一車両のリフレクタ候補が検出されなかったと判定された場合、ステップS4乃至S13の処理はスキップされ、処理はステップS14に進む。この場合、監視領域内に四輪車両は存在しないと判定される。
ステップS14において、演算部26は、検出結果を通知する。具体的には、物体検出部312は、四輪車両の有無、四輪車両の位置、距離、大きさ等の検出結果を通知部303及び制御部21に供給する。通知部303は、必要に応じて、検出結果を車両制御装置12に供給する。
その後、処理はステップS1に戻り、ステップS1以降の処理が実行される。
このようにして、リフレクタ候補間の検出感度を上げることにより、四輪車両の検出精度を向上させることができる。
また、最初にリフレクタ候補間の検出感度を上げずにリフレクタ候補間のボディの検出が行われ、ボディが検出されなかった場合に、リフレクタ候補間の検出感度を上げ、再度リフレクタ候補間のボディの検出が行われる。これにより、必要なときに必要な検出領域のみ検出感度を高くすることができ、検出する必要のない物体の検出やノイズによる誤検出等を防止することができる。さらに、四輪車両の検出精度を下げずに、レーザレーダ装置11全体の検出感度を下げることができ、コストダウンを実現することができる。
{車両検出処理の第2の実施の形態}
次に、図15のフローチャートを参照して、レーザレーダ装置11により実行される車両検出処理の第2の実施の形態について説明する。なお、この第2の実施の形態は、第1の実施の形態と比較して、さらに複数の検出期間にわたって測定結果を加算して、四輪車両の検出を行うようにしたものである。
図15の処理を図9の処理と比較すると、ステップS107において、リフレクタ候補間にボディが検出されなかったと判定された以降の処理が異なる。すなわち、ステップS107において、リフレクタ候補間にボディが検出されなかったと判定された場合、処理はステップS109に進む。
ステップS109において、物体検出部312は、リフレクタ候補間の各検出領域の現在と過去の測定結果を加算する。具体的には、物体検出部312は、所定のn回前(n≧1)から現在までの複数の検出期間にわたって、ボディ検出対象領域に対する積算受光値を受光素子202(検出領域)及びサンプリング時刻毎に加算する。
例えば、図14の例の場合、n回前から現在までの検出期間における受光素子202−7乃至202−9の各受光素子202の積算受光値が、それぞれ個別にサンプリング時刻毎に加算される。すなわち、受光素子202−7至202−9の各受光素子202の各サンプリング時刻における積算受光値が、それぞれ個別に複数の検出期間にわたって積算される。
ステップS110において、物体検出部312は、リフレクタ候補間の領域の測定結果を加算する。具体的には、物体検出部312は、ボディ検出対象領域に含まれる複数の検出領域に対するn回前から現在までの積算受光値を加算した後の積算受光値(以下、複数期間積算受光値と称する)を、サンプリング時刻毎に加算する。
例えば、図14の例の場合、受光素子202−7至202−9の複数期間積算受光値が、サンプリング時刻毎に加算される。例えば、サンプリング時刻t1における受光素子202−7至202−9の複数期間積算受光値を加算し、サンプリング時刻t2における受光素子202−7至202−9の複数期間積算受光値を加算するように、各サンプリング時刻における受光素子202−7至202−9の複数期間積算受光値が加算される。
これにより、第1の実施の形態と比較して、リフレクタ候補間の物体の検出感度をさらに上げることができ、リフレクタ候補間のボディの検出精度をさらに向上させることができる。
その後、ステップS111乃至S115において、図9のステップS10乃至S14と同様の処理が実行された後、処理はステップS101に戻り、ステップS101以降の処理が実行される。
このようにして、第1の実施の形態と比較して、リフレクタ候補間の検出感度をさらに上げることにより、四輪車両の検出精度をさらに向上させることができる。
なお、例えば、ステップS110の処理を省略して、リフレクタ候補間の各検出領域の現在と過去の測定結果を加算した結果のみに基づいて、リフレクタ候補間のボディの検出を行うようにしても、四輪車両の検出精度を向上させることが可能である。
{車両検出処理の第3の実施の形態}
次に、図16のフローチャートを参照して、レーザレーダ装置11により実行される車両検出処理の第3の実施の形態について説明する。なお、この第3の実施の形態は、第1の実施の形態と比較して、リフレクタ候補間にボディが検出されなかった場合、リフレクタ候補間の検出感度を上げて、再度測定積算処理及びリフレクタ候補間のボディの検出を行うようにしたものである。
図16の処理を図9の処理と比較すると、ステップS207において、ボディが検出されなかったと判定された以降の処理が異なる。具体的には、ステップS207において、ボディが検出されなかったと判定された場合、処理はステップS209に進む。
ステップS209において、レーザレーダ装置11は、リフレクタ候補間に対するゲインを上げて、測定積算処理を実行する。具体的には、物体検出部312は、リフレクタ候補間にボディが検出されなかったことを制御部21に通知する。制御部21は、測定光投光部22、受光部24、測定部25及び演算部26を制御して、図10を参照して上述した測定積算処理を実行する。
また、制御部21は、例えば、各リフレクタ候補間受光素子に割り当てられた測定期間において、各リフレクタ候補間受光素子からの受光信号が供給されるTIA262及びPGA263のゲインを設定可能な範囲で最大に設定し固定する。すなわち、制御部21は、リフレクタ候補間受光素子から受光信号が供給される各TIA262及びPGA263のゲインを、その測定期間中において、設定可能な範囲で最大に設定する。一方、制御部21は、リフレクタ候補間受光素子以外の受光素子から受光信号が供給される各TIA262及びPGA263のゲインを、その測定期間中において、所定の標準値に設定する。これにより、リフレクタ候補間の物体の検出感度が上がる。
ステップS211において、図9のステップS9の処理と同様に、リフレクタ候補間の領域の測定結果が加算される。
その後、ステップS211乃至S215において、図9のステップS10乃至S14と同様の処理が実行された後、処理はステップS201に戻り、ステップS201以降の処理が実行される。
このようにして、リフレクタ候補間の検出感度をさらに上げることにより、四輪車両の検出精度をさらに向上させることができる。
また、最初にリフレクタ候補間に対するゲインを上げずにリフレクタ候補間のボディの検出が行われ、ボディが検出されなかった場合に、リフレクタ候補間に対するゲインを上げ、再度測定積算処理及びリフレクタ候補間のボディの検出が行われる。これにより、必要なときに必要な検出領域に対してのみゲインを高くすることができ、検出する必要のない物体の検出やノイズによる誤検出等を防止することができる。さらに、四輪車両の検出精度を下げずに、レーザレーダ装置11全体の検出感度を下げることができ、コストダウンを実現することができる。
なお、例えば、ステップS210の処理を省略して、リフレクタ候補間に対してゲインを上げて測定積算処理を実行した測定結果のみに基づいて2回目の検出処理を行ったとしても、四輪車両の検出精度を向上させることが可能である。
{車両検出処理の第4の実施の形態}
次に、図17のフローチャートを参照して、レーザレーダ装置11により実行される車両検出処理の第4の実施の形態について説明する。なお、この第4の実施の形態は、第2の実施の形態と第3の実施の形態を組み合わせたものである。
図17の処理を図16の処理と比較すると、2回目の測定積算処理を実行した以降の処理が異なる。具体的には、ステップS260において、図15のステップS109の処理と同様に、リフレクタ候補間の各検出領域の現在と過去の測定結果が加算される。
ステップS261において、図15のステップS110の処理と同様に、リフレクタ候補間の領域の測定結果が加算される。
その後、ステップS262乃至S266において、図16のステップS211乃至S215と同様の処理が実行された後、処理はステップS251に戻り、ステップS251以降の処理が実行される。
このようにして、2回目の測定積算処理を行った後、リフレクタ候補間の測定結果の加算に加えて、リフレクタ候補間の各領域の現在と過去の測定結果の加算も行うため、リフレクタ候補間のボディの検出精度がさらに向上し、その結果、四輪車両の検出精度がさらに向上する。
このようにして、第3の実施の形態と比較して、リフレクタ候補間の検出感度をさらに上げることにより、四輪車両の検出精度をさらに向上させることができる。
なお、例えば、ステップS261の処理を省略して、リフレクタ候補間の各検出領域の現在と過去の測定結果を加算した結果のみに基づいて、2回目の検出処理を行うようにしても、四輪車両の検出精度を向上させることが可能である。
{車両検出処理の第5の実施の形態}
次に、図18のフローチャートを参照して、レーザレーダ装置11により実行される車両検出処理の第5の実施の形態について説明する。なお、この第5の実施の形態は、第3の実施の形態と比較して、2回目の検出処理時に、リフレクタ候補間において注目領域を設定し、注目領域においてボディの検出を行うようにしたものである。
図18の処理を図16の処理と比較すると、ステップS307において、リフレクタ候補間にボディが検出されなかったと判定された以降の処理が異なる。具体的には、ステップS307において、リフレクタ候補間にボディが検出されなかったと判定された場合、処理はステップS309に進む。
ステップS309において、制御部21は、リフレクタ候補間において注目領域を設定する。具体的には、物体検出部312は、リフレクタ候補間にボディが検出されなかったことを制御部21に通知する。制御部21は、リフレクタ候補間において、リフレクタ候補から離れた検出領域のうちの1つを選択し、注目領域に設定する。すなわち、制御部21は、ボディ検出対象領域内の検出領域のうち、リフレクタ候補が検出されている検出領域に隣接している両端の検出領域を除く検出領域の中から1つを選択し、注目領域に設定する。
例えば、図14の例の場合、ボディ検出対象領域である検出領域A7乃至A9のうちのいずれか1つが注目領域に設定される。
なお、リフレクタ候補が検出されている検出領域における強い光は、隣接する検出領域に影響を及ぼす可能性が高い。つまり、リフレクタ候補の隣の検出領域から反射光を受光する受光素子202は、物体からの反射光を直接受光していなくても、リフレクタ候補からの強い光の影響により高い受光信号を出力してしまう。そこで、その強い光の影響によるボディの誤検出を防止するために、リフレクタ候補が検出されている検出領域に隣接する検出領域が注目領域の候補から除かれる。
ステップS310において、レーザレーダ装置11は、注目領域に対するゲインを上げて、注目領域に対して優先的に測定積算処理を実行する。具体的には、物体検出部312は、リフレクタ候補間にボディが検出されなかったことを制御部21に通知する。制御部21は、測定光投光部22、受光部24、測定部25及び演算部26を制御して、図10を参照して上述した測定積算処理を実行する。ただし、この測定積算処理において、制御部21は、図16のステップS209と同様の処理により、注目領域に対するゲインを上げるように制御する。
また、制御部21は、検出期間内に、注目領域に対応する受光素子202、及び、リフレクタ候補が検出されている検出領域に対応する受光素子202を選択する頻度を増やし、可能な範囲で優先的に測定期間を割り当てるように制御する。
例えば、図14の例において、検出領域A8が注目領域に設定されている場合、図19に示されるように、検出期間TD内の測定期間TM1乃至TM4が、受光素子202−8及び202−10に全て割り当てられる。これにより、検出期間内における注目領域(検出領域A8)、及び、リフレクタ候補が検出された検出領域A10における受光値の積算回数が増加し、それらの領域に対する検出感度が上昇する。
ステップS311において、物体検出部312は、注目領域においてボディの検出を行う。具体的には、物体検出部312は、注目領域に対応する受光素子202の積算受光値に基づいて、注目領域における物体の検出を行う。そして、例えば、注目領域において、リフレクタ候補と同じ距離付近に物体が検出された場合、リフレクタ候補の間に車両のボディが存在すると判定される。
その後、ステップS312乃至S315において、図16のステップS212乃至S215と同様の処理が実行された後、処理はステップS301に戻り、ステップS301以降の処理が実行される。
このように、最初の検出処理でリフレクタ候補間にボディが検出されない場合、注目領域に対するゲインを上げるとともに、注目領域の受光値の積算回数を増やすように測定積算処理が実行される。そして、注目領域の測定結果に基づいて、2回目のボディの検出処理が行われる。これにより、リフレクタ候補間のボディの検出精度が向上し、四輪車両の検出精度が向上する。
なお、注目領域を1つではなく、複数設定するようにしてもよい。
また、ボディ検出対象領域全体を注目領域に設定するようにしてもよい。すなわち、ボディ検出対象領域に対するゲインを上げて、ボディ検出対象領域内に各検出対象領域に対して優先的に測定積算処理を実行するようにしてもよい。
{車両検出処理の第6の実施の形態}
次に、図20のフローチャートを参照して、レーザレーダ装置11により実行される車両検出処理の第6の実施の形態について説明する。なお、この第6の実施の形態は、第2の実施の形態と第5の実施の形態を組み合わせたものである。
図20の処理を図18の処理と比較すると、2回目の測定積算処理を実行した以降の処理が異なる。具体的には、ステップS361において、図15のステップS109と同様の処理により、注目領域の現在と過去の測定結果が加算される。
その後、ステップS363乃至S367において、図18のステップS311乃至S315と同様の処理が実行された後、処理はステップS351に戻り、ステップS351以降の処理が実行される。
このようにして、2回目の測定積算処理を行った後、注目領域の現在と過去の測定結果を加算し、リフレクタ候補間の検出感度をさらに上げることにより、四輪車両の検出精度をさらに向上させることができる。
<2.変形例>
以下、上述した本発明の実施の形態の変形例について説明する。
ボディ検出対象領域や注目領域の検出感度を上げる方法は、上述した方法に限定されずに、他の方法を採用することが可能である。
例えば、ボディ検出対象領域又は注目領域の受光値を測定する測定期間において、測定光の強度を高くするようにしてもよい。
また、例えば、ボディ検出対象領域又は注目領域の受光値を測定する測定期間を長くすることにより、測定期間内の測定光の投光回数を増やし、受光値の積算回数を増やすようにしてもよい。
さらに、例えば、可変式のフィルタ等を用いて、ボディ検出対象領域又は注目領域の方向へ投光される測定光の強度を、他の領域の方向へ投光される測定光の強度より高くするようにしてもよい。
また、レーザレーダ装置の構成は、図1に示される例に限定されるものではなく、必要に応じて変更することが可能である。
例えば、制御部21と演算部26を統合したり、機能の割り当てを変更したりすることが可能である。
また、例えば、受光素子202、MUX261、TIA262、PGA263、ADC264の数を、必要に応じて増減することが可能である。例えば、受光素子202の数を増やして、監視領域を広げたり、監視領域内の検出領域をより細分化したりすることが可能である。逆に、受光素子202の数を減らして、監視領域を狭めたり、監視領域内の検出領域を集約したりすることも可能である。
また、例えば、MUX261、TIA262、PGA263及びADC264の組み合わせの数を変更して、並行してサンプリングを行うことが可能な受光信号の数を増減することが可能である。
さらに、例えば、1つのMUX261に接続される受光素子202の数を変更することも可能である。また、例えば、各MUX261に接続される受光素子202の数は、必ずしも全て同じである必要はない。
さらに、例えば、各MUX261に接続される受光素子202の組合せは上述した例に限定されるものではなく自由に変更することができる。
また、MUXの出力数を2以上にすることも可能である。すなわち、MUXが、入力された受光信号の中から2以上の受光信号を選択して個別に出力できるようにしてもよい。
さらに、以上では、1回の検出期間毎に物体の検出処理を1回行う例を示したが、例えば、必要に応じて、2回以上の検出期間にわたって受光値を積算し、2回以上の検出期間毎に物体の検出処理を1回行うようにしてもよい。
また、1回の検出期間内の測定期間のサイクル数は、任意の値に変更することが可能である。
また、本発明は、例えば、MUX261を設けずに、TIA262、PGA263、及び、ADC264を受光素子202と同じ数だけ設けて、1回の測定期間内において全ての受光素子の受光値を測定可能なレーザレーダ装置にも適用することができる。
さらに、本発明は、例えば、受光値の積算を行わずに物体の検出処理を行うレーザレーダ装置にも適用することができる。
また、本発明は、例えば、レーザ光を走査しながら監視領域に投光するタイプのレーザレーダ装置にも適用することができる。
この場合、例えば、ボディ検出対象領域又は注目領域へのレーザ光の投光時間を延ばしたり、投光回数を増やしたりすることにより、ボディ検出対象領域又は注目領域の検出感度を上げることができる。また、例えば、ボディ検出対象領域又は注目領域内にレーザ光を走査するときに、レーザ光の強度を高くすることにより、ボディ検出対象領域又は注目領域の検出感度を上げることができる。さらに、例えば、ボディ検出対象領域又は注目領域に集中してレーザ光を走査することにより、ボディ検出対象領域又は注目領域の検出感度を上げることができる。
[コンピュータの構成例]
なお、上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
図21は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)601,ROM(Read Only Memory)602,RAM(Random Access Memory)603は、バス604により相互に接続されている。
バス604には、さらに、入出力インタフェース605が接続されている。入出力インタフェース605には、入力部606、出力部607、記憶部608、通信部609、及びドライブ610が接続されている。
入力部606は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部607は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部608は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部609は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ610は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア611を駆動する。
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU601が、例えば、記憶部608に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース605及びバス604を介して、RAM603にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
コンピュータ(CPU601)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア611に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア611をドライブ610に装着することにより、入出力インタフェース605を介して、記憶部608にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部609で受信し、記憶部608にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM602や記憶部608に、あらかじめインストールしておくことができる。
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
また、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。