JP6253884B2 - 電極層、該電極層を備えた蓄電デバイス及び電極層の製造方法 - Google Patents

電極層、該電極層を備えた蓄電デバイス及び電極層の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭素材料に電極活物質を担持させた電極材料、該電極材料の製造方法および該電極材料を備えた蓄電デバイスに関する。本発明では、電極活物質として、リチウムコバルト酸化物を使用する。
携帯電話やノート型パソコンなどの情報機器の電源として、エネルギー密度が高い非水系電解液を使用したリチウムイオン二次電池が広く使用されているが、これらの情報機器の高性能化や取扱う情報量の増大に伴う消費電力の増加に対応するために、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度の向上が望まれている。また、石油消費量の低減、大気汚染の緩和、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量の低減などの観点から、ガソリン車やティーゼル車に代わる電気自動車やハイブリッド自動車などの低公害車に対する期待が高まっており、これらの低公害車のモーター駆動電源として、高いエネルギー密度を有する大型のリチウムイオン二次電池の開発が望まれている。
現在の非水系電解液を使用したリチウムイオン二次電池としては、高いエネルギー密度を有するものとして、コバルト酸リチウム(LiCoO)を正極活物質として用いるものが期待され、実用化が進んでいる。例えば特許文献1には、正極活物質としてLiCoOを用い、カーボンを負極として用いる二次電池が開示されている。また特許文献2には、レート特性などの充放電特性を改善するべく、コバルト酸リチウム粉を1〜40μmの粒度分布、かつ平均粒径5〜15μmなどの特定範囲としたリチウムイオン二次電池が開示されている。
特開昭63−121260号公報 特開2001−185142号公報
しかしながら、上述のような正極活物質であるコバルト酸リチウムに関しては、未だコバルト酸リチウムの出力特性は必ずしも満足のいくものでは無い。特許文献2のように、コバルト酸リチウムを微粒子化し、粒度分布や粒径を特定の範囲とすることで、均質な電解反応によって充放電特性の悪化を抑制することはできるが、コバルト酸リチウム粉の粒径などの調整だけでは、出力特性は未だ改善できていない。
そこで、本発明の目的は、正極活物質としてリチウムコバルト酸化物を用いた場合でも、良好な出力特性を有するリチウムイオン二次電池をもたらす電極材料、該電極材料を備えた蓄電デバイス及び電極材料の製造方法を提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明は、炭素材料に、リチウムコバルト酸化物が担持された炭素材料を有する電極層であって、前記炭素材料とリチウムコバルト酸化物の合計量に対して、前記リチウムコバルト酸化物は60〜80wt%含有され、前記炭素材料は40〜20wt%含有され、前記リチウムコバルト酸化物は、一次粒子が2つの粒子径分布を有し、第1の粒子径分布は5〜110nmに極大を有し、第2の粒子径分布は110〜500nmに極大を有し、その電極密度が2.5g/cc以下の範囲であることを特徴とする。
また、この電極を用いて形成された電極を備えた蓄電デバイスも本発明の一態様である。
また、前記の目的を達成しうるため、本発明の製造方法は、以下の工程を含むものである。
(1)リチウムコバルト酸化物の材料源と炭素材料とを含有する反応液にずり応力と遠心力とを加えることにより、炭素材料にリチウムコバルト酸化物の前駆体を担持させる前駆体担持工程と、
(2)前記炭素材料に担持させたリチウムコバルト酸化物の前駆体に加熱処理を行い、炭素材料に担持されるとともにナノ化したリチウムコバルト酸化物を得る熱処理工程。
以上の(1)(2)の工程において、前記炭素材料とリチウムコバルト酸化物の合計量に対して、前記リチウムコバルト酸化物は60〜80wt%含有され、前記炭素材料は40〜20wt%含有され、前記リチウムコバルト酸化物は、一次粒子が2つの粒子径分布を有し、第1の粒子径分布は5〜110nmに極大を有し、第2の粒子径分布は110〜500nmに極大を有し、得られた電極層の電極密度が2.5g/cc以下の範囲である
なお、前記熱処理工程は、酸素を含む雰囲気下で処理を行うことが好適である。
本発明によれば、炭素材料にリチウムコバルト酸化物を担持させた電極材料であって、その電極材料の電極密度を2.5g/cc以下の範囲とすることにより、出力特性が良好な電極を形成できる。
本実施形態に係る炭素素材にリチウムコバルト酸化物とリチウムコバルト酸化物を担持した電極材料の製造工程を示すフローチャートである。 材料源担持工程のための装置を示す構成図である。 実施例1に係る炭素材料(KB)にLiCoO2を担持させた電極材料の製造工程を示すフローチャートである。 実施例3における炭素材料(KB)にLiCoO2を担持させた電極材料のSEM(×10k)像である。 実施例3における炭素材料(KB)にLiCoO2を担持させた電極材料のSEM(×50k)像である。
以下、本発明を実施する形態について、説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。
(1)電極材料
本発明に係る電極材料に含まれるリチウムコバルト酸化物は、リチウムの吸蔵放出できる材料であり、LiCoやLiCo1−yNiyO(0.1≦y≦0.5)が挙げられる。なお、これらのリチウムコバルト酸化物には若干の副成分元素(Ti、Nb、Sn及びMgなどの遷移金属など)が含まれていても良い。
電極材料に含まれる炭素材料としては、導電性を有している炭素材料であれば特に限定なく使用することができる。例としては、ケッチェンブラック(以下、KB)、アセチレンブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ(以下、CNF)、無定形炭素、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化ケッチェンブラック、活性炭、メソポーラス炭素などを挙げることができる。また、気相法炭素繊維を使用することもできる。これらの炭素材料が繊維構造を有する場合は(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバや気相成長カーボンファイバ)、繊維状の分散及び均質化を目的として超高圧分散処理を施したものを使用しても良い。また、炭素材料は、単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良く、特には出力特性が向上させるため繊維状の炭素材料と球状の炭素材料を併用して使用することが好適である。炭素材料の少なくとも一部がカーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバであるのが好ましい。導電性の高い電極材料が得られるからである。炭素材料の粒子径は、10nm〜300nmの範囲であるのが好ましく、10〜100nmの範囲であるのがより好ましく、10〜50nmの範囲であるのが特に好ましい。
リチウムコバルト酸化物は、ナノ粒子として炭素材料に担持されている。ここでナノ粒子とは、ナノレベルの一次粒子を有するものである。そして、ナノ粒子とは、その径が、円形や楕円形や多角形等の塊においてはその大きさが5〜500nm以下をいう。また、リチウムコバルト酸化物は、電極材料の表面をSEMで観察すると、リチウムコバルト酸化物の一次粒子の粒子径が110〜500nmのリチウムコバルト酸化物(大きい粒子)、及び粒子径が5〜110nm未満のリチウムコバルト酸化物(小さい粒子)が炭素材料に担持されている。なお、小さい粒子は、大きい粒子の表面に担持されていてもよい。つまり、本発明のリチウムコバルト酸化物のナノ粒子の大きさは、5〜500nmであり、この中に、大きい粒子と小さい粒子とが分布して混在している。つまり、粒径子の分布は、多分散となる。大きい粒子は、粒子径が110〜500nmの範囲での粒度分布の値が極大となるように分布し、小さな粒子は、粒子径が5〜110nmの範囲での粒度分布の値が極大となるように分布する。このようにリチウムコバルト酸化物の一次粒子として、異なる粒子径分布のリチウムコバルト酸化物が炭素材料に担持されることで、電極層として密度を高めることができ、高容量化が得られる。なお、一次粒子の粒子径は、電極材料をSEMにて観察し、その中から無作為に大きい粒子、小さい粒子を選定し、その粒子径を測定した値である。後述の実施例では、この方法によりナノ粒子の粒子径を求めた。
本実施形態の電極材料においては、リチウムコバルト酸化物は、電極材料中の60wt%以上含有される共に、炭素材料は、40wt%以下含有される。特に、リチウムコバルト酸化物を70wt%以上とし、炭素材料を30wt%以下の割合で配合することで、高いエネルギー密度の電極材料が得られる。さらに、炭素材料としては、球状の炭素材料と繊維状の炭素材料を混合させても良い。例えば、球状であるKBと繊維状のCNFを混合させることでその容量が向上する。
この電極材料は、粉末として得られ、電極材料の粉末を所定の溶媒とバインダとで混錬して成型することで、電気エネルギーを貯蔵する電極となる。この電極は、リチウムを含有する電解液を用いる電気化学キャパシタや電池に用いることができる。すなわち、この二次電池やキャパシタ用電極材料により作成された電極は、リチウムイオンの吸蔵、脱着を行うことができ、正極として作動する。
(2)製造方法
本実施形態の炭素材料にリチウムコバルト酸化物を担持させた電極材料の製造工程の一例は、次のa)〜c)の工程を備える。
a)リチウムコバルト酸化物の材料源となる金属を含む少なくとも一種の化合物を溶解させた溶液に炭素材料を添加した反応液を、旋回可能な反応器内に導入する調製工程。
b)上記反応器を旋回させて上記反応液にずり応力と遠心力とを加えることにより、上記炭素材料にリチウムコバルト酸化物の前駆体を担持させる担持工程。
c)前記炭素材料に担持させたリチウムコバルト酸化物の前駆体に加熱処理を行い、炭素材料に担持されるとともにナノ化したリチウムコバルト酸化物を得る工程を含む熱処理工程。
以上のa)〜c)の工程を経ることでリチウムコバルト酸化物が炭素材料に担持されることになる。そして、得られた炭素材料にリチウムコバルト酸化物を担持させた電極材料の電極密度は、2.5g/cc以下の範囲である。
(a)調整工程
調整工程では、溶媒に、リチウムコバルト酸化物の材料源である金属を含む化合物(以下、「材料源」という。)の少なくとも1種と、炭素材料とを添加し、材料源を溶媒に溶解させることによって、反応液を得ている。
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない液であれば特に限定なく使用することができ、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを好適に使用することができる。2種以上の溶媒を混合して使用しても良い。
リチウムコバルト酸化物の材料源である金属を含む化合物は次のものが例示できる。
(リチウム源)
水酸化リチウム(LiOH・HO)を用いることができる。水酸化リチウム以外のリチウム源としては、酢酸リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウムなどのリチウム化合物を利用することができる。
(コバルト源)
酢酸コバルト(Co(CHCOO)・4HO)を用いることができる。酢酸コバルト以外にも、硝酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルトなどのコバルト化合物も使用することもできる。
(b)前駆体担持工程
前駆体担持工程は、炭素材料の表面にリチウムコバルト酸化物の前駆体を担持させる行程である。前駆体を炭素材料に担持させる方法としては、図2示す反応器を旋回させて反応液にずり応力と遠心力とを加える(以下、「UC処理」という。)ことにより、炭素材料上に材料源を担持させる。
図2に示すように、反応容器は、開口部にせき板1−2を有する外筒1と、貫通孔2−1を有し旋回する内筒2からなる。この反応器の内筒2内部に反応液を投入し、内筒2を旋回することによってその遠心力で内筒2内部の反応物となるコバルト源及び炭素材料が内筒の貫通孔2−1を通って外筒の内壁1−3に移動する。この時反応物は内筒2の遠心力によって外筒の内壁1−3に衝突し、薄膜状となって内壁1−3の上部へずり上がる。この状態では反応物には内壁1−3との間のずり応力と内筒からの遠心力の双方が同時に加わり、薄膜状の反応物に大きな機械的エネルギーが加わることになる。この機械的なエネルギーが反応に必要な化学エネルギー、いわゆる活性化エネルギーに転化するものと思われるが、短時間で反応が進行する。このようにコバルト源と炭素材料にずり応力と遠心力とを加え、コバルト源の少なくとも一部を炭素材料に吸着させる。
この反応において、薄膜状であると反応物に加えられる機械的エネルギーは大きなものとなるため、薄膜の厚みは5mm以下、好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。なお、薄膜の厚みはせき板の幅、反応液の量によって設定することができる。例えば、この薄膜を生成するために必要な遠心力は1500N(kgms−2)以上、好ましくは60000N(kgms−2)以上、さらに好ましくは270000N(kgms−2)以上である。
その後、反応液にさらにリチウム源を加え2回目のUC処理を実施することで、メカノケミカル反応させ、炭素材料上でリチウムコバルト酸化物の前駆体を生成する。また、水にアルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなど)を添加し、反応液のpHを9〜11の範囲に調整してもよい。所定のpHとすることで、コバルト源が反応して水酸化物となるとともに炭素材料への担持効率が向上する。
なお、上述のとおりリチウム源はこの反応液中に含有させてUC処理を行うこともできるが、さらに、後述する熱処理工程の際にリチウム源を混合するようにしてもよい。また、リチウム源は、後述する熱処理工程の際にのみ混合するようにしてもよい。但し、UC処理により同時にリチウム源の混合処理を実施できるため、当該前駆体担持工程の際に一緒に混合することが好適である。
なお、一段階のUC処理によっても、炭素材料に担持させたリチウムコバルト酸化物の前駆体の生成は可能である。この場合は炭素材料、コバルト源及びリチウム源を含む反応液のpHを調整し(必要に応じてホモジナイザーなどで反応液を攪拌して材料源及び炭素材料を分散させる)、反応器の内筒の内部に投入して内筒を旋回して、これらを混合、分散すると共にずり応力と遠心力を加え化学反応を促進させる。反応終了と共に、炭素材料に担持させたリチウムコバルト酸化物の前駆体を得ることができる。
このように前駆体担持工程を経て、リチウムコバルト酸化物の材料源が含有された反応液にずり応力と遠心力が加えられることで、炭素材料に担持されたリチウムコバルト酸化物の前駆体を生成することができる。
(c)熱処理工程
熱処理工程では、炭素材料に担持させたリチウムコバルト酸化物の前駆体を合成及び結晶化させる工程である。この前駆体を合成及び結晶化の方法としては、高圧の水蒸気の存在下で行われる化合物の合成及び結晶を成長させる方法である水熱合成法を利用することができる。
この水熱合成は原料水溶液をオートクレーブに装入し加圧下に加熱し、飽和水蒸気中にて行なう。加圧・加熱することにより常温常圧下では水に溶けにくい物質を溶解させ、反応速度を増大させて、結晶の成長を促進することができる。加熱温度は、原料となる金属塩の種類にもよるが通常は110〜300℃である。密閉容器中で加熱することにより加圧も同時に行なわれる。オートクレーブ内圧は一般には温度によって決まるが、積極的に加圧してもよく1.1〜84.8気圧程度が好ましい。
水熱合成では、リチウムコバルト酸化物の前駆体を合成及び結晶化させる。通常、炭素材料は、酸素を含む雰囲気中で、300℃を超えると酸化し消失する。水熱合成では、300℃以下で、リチウムコバルト酸化物の前駆体を合成及び結晶化させることが可能であるため、酸素を含む雰囲気下で行うことが可能となる。特に、熱処理工程で酸素を必要とするリチウムコバルト酸化物において有効である。また、300℃以下という比較的低温でリチウムコバルト酸化物の前駆体を合成及び結晶化させることが可能であるため、UC処理にて炭素材料に分散担持させたナノレベルの小さな前駆体においても結晶を維持し、ナノ粒子として炭素材料に分散担持させたリチウムコバルト酸化物を生成できる。
炭素材料は、水熱合成法での加熱温度である110〜300℃で消失しないものであり、この炭素材料の表面には、リチウムコバルト酸化物がナノ粒子として分散担持されている。なお、この水熱合成法においては、オートクレーブに投入する溶媒として水以外にも、例えばアルコール類(エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等)などの有機溶媒や、これらの有機溶媒と水との混合溶液を用いることもできる。
この水熱合成法により生じる現象は以下のように考えられる。まず、本発明では、110〜300℃という比較的低温で熱処理工程が行われる。そのため、熱力学的に不安定な材料からなるリチウムコバルト酸化物の前駆体でも、結晶化させることができる。同様に、粒子径が大きいものよりも、熱の影響を受けやすい粒子径が小さい結晶も、低温で結晶化することができると思われる。
すなわち、熱処理の際に高温反応を用いると、炭素材料が消失してしまい、ナノレベルのリチウムコバルト酸化物を担持した炭素材料を得ることができず、また不安定な結晶となっていた。しかしながら、この水熱合成法を用いることで、低温での合成を行っているため、熱による影響が少なく、炭素材料が消失せず、UC処理によってナノ化したリチウムコバルト酸化物を担持した炭素材料が得られる。
そして、この製造方法により作成された電極材料は、リチウムコバルト酸化物がナノ粒子として維持されている。それにより当該電極材料をリチウム二次電池用電極材料として用いた電池や電気化学キャパシタなどの蓄電デバイスは、その高入出力化及び高容量化が達成されることとなる。
(3)電極材料の電極密度
本発明に係る電極材料は、炭素材料にリチウムコバルト酸化物を担持させた電極材料であり、その電極密度を2.5g/cc以下の範囲とすることにより、高エネルギー密度と出力特性において良好な結果が得られる。通常電極密度を向上させることで、電極容量が増えそれに伴いエネルギー密度や出力特性も増加すると考えられるが、炭素材料にリチウムコバルト酸化物を担持させた電極材料においては、この電極材料を用いて高密度の電極を作成してもエネルギー密度及びレート特性が向上せず、逆に悪化してしまっていた。しかし、本発明のような炭素材料に微細であるナノレベルのリチウムコバルト酸化物を担持させた電極材料においては、電極密度を特定の密度の範囲とすることで高エネルギー密度を有し、出力特性が良好な結果となる。尚、電極密度が1.2g/cc未満では、電極密度が十分でなく、良好なエネルギー密度、出力特性とならない。そのため、本発明の電極密度の範囲としては、1.2g/cc以上、且つ2.5g/cc以下の範囲が好ましい。
なお、本願明細書に記載の「電極密度」とは、炭素材料にリチウムコバルト酸化物を担持させた電極材料を、特定の溶媒としてN−メチルピロリドン、バインダとしてポリフッ化ビニリデンを用い、電極材料を100としたときに溶媒を50、バインダを5の重量割合にて形成したスラリーをアルミニウム箔上に塗布して乾燥し、アルミニウム箔上に電極層を作成し、この電極層の単位体積当たりの質量とする。具体的には、電極層の1cm2における電極層の厚み領域(体積)において、電極材料を含む固形分の重さを該体積で除した値とする。なお、前記固形分には、電極材料に加え、ポリフッ化ビニリデンも含めるものとする。
本発明に係る電極材料の電極密度は、その製造工程において、リチウムコバルト酸化物の粒子径及びリチウムコバルト酸化物と炭素材料の配合比(wt%)、水熱合成の処理条件等の変更や、その他得られた電極材料をボールミルを行いまたは行わない等により調整できる。
(4)リチウムイオン二次電池
本発明の電極材料は、リチウムイオン二次電池の正極のために好適である。したがって、本発明はまた、本発明の電極材料を含む電極層を有する正極と、負極と、負極と正極との間に配置された非水系電解液を保持したセパレータとを備えたリチウムイオン二次電池を提供する。
正極のための電極層は、必要に応じてバインダを溶解した溶媒(N−メチルピロリドンやイソプロピルアルコールなど)に、本発明の炭素材料にリチウムコバルト酸化物を担持させた電極材料を分散させ、得られた分散物をドクターブレード法などによって集電体上に塗工し、乾燥することにより作成することができる。また、得られた分散物を所定形状に成形し、集電体上に圧着しても良い。なお、本発明の電極材料、バインダを含む溶媒に、さらに金属酸化物や炭素材料を混合・分散させた混合溶媒を用い、混合物質層を形成することもできる。
集電体としては、白金、金、ニッケル、アルミニウム、チタン、鋼、カーボンなどの導電材料を使用することができる。集電体の形状は、膜状、箔状、板状、網状、エキスパンドメタル状、円筒状などの任意の形状を採用することができる。
バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニル、カルボキシメチルセルロースなどの公知のバインダが使用される。バインダの含有量は、混合材料の総量に対して1〜30質量%であるのが好ましい。1質量%以下であると電極層の強度が十分でなく、30質量%以上であると、負極の放電容量が低下する、内部抵抗が過大になるなどの不都合が生じる。
負極としては、一般的なリチウムイオン二次電池において使用されている黒鉛電極の他、公知の負極活物質を含む電極層を備えた負極を特に限定無く使用することができる。負極活物質の例としては、Fe、MnO、MnO、Mn、Mn、CoO、Co、NiO、Ni、TiO、TiO、SnO、SnO、SiO、RuO、WO、WO、ZnO等の酸化物、Sn、Si、Al、Zn等の金属、LiVO、LiVO、LiTi12などの複合酸化物、Li2.6Co0.4N、Ge、Zn、CuNなどの窒化物を挙げることができる。
負極のための電極層は、必要に応じてバインダを溶解した溶媒に、上記負極電極質と導電剤とを分散させ、得られた分散物をドクターブレード法などによって集電体上に塗工し、乾燥することにより作成することができる。また、得られた分散物を所定形状に成形し、集電体上に圧着しても良い。
集電体及びバインダについては、正極のための集電体及びバインダについての記載が負極においてもあてはまる。導電剤としては、カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛などの炭素粉末を使用することができる。
セパレータとしては、例えばポリオレフィン繊維不織布、ガラス繊維不織布などが好適に使用される。セパレータに保持される電解液は、非水系溶媒に電解質を溶解させた電解液が使用され、公知の非水系電解液を特に制限なく使用することができる。
非水系電解液の溶媒としては、電気化学的に安定なエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、スルホラン、3−メチルスルホラン、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル及びジメトキシエタン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド又はこれらの混合物を好適に使用することができる。
非水系電解液の溶質としては、有機電解液に溶解したときにリチウムイオンを生成する塩を、特に限定なく使用することができる。例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(CFSO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiN(SO、LiAsF、LiSbF、又はこれらの混合物を好適に使用することができる。非水系電解液の溶質として、リチウムイオンを生成する塩に加えて、第4級アンモニウムカチオン又は第4級ホスホニウムカチオンを有する第4級アンモニウム塩又は第4級ホスホニウム塩を使用することができる。例えば、R又はRで表されるカチオン(ただし、R、R、R、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す)と、PF 、BF 、ClO 、N(CFSO 、CFSO 、C(SOCF 、N(SO 、AsF 又はSbF からなるアニオンとからなる塩、又はこれらの混合物を好適に使用することができる。
[特性比較(LiCoO/KB)]
本製造方法で得られた二次電池用電極材料の特性を確認する。本実施例及び比較例では、以下の条件により電極材料を作成し、当該電極材料を二次電池用電極材料として用いた電池を作成してエネルギー密度及びレート特性を測定した。
(実施例1)
図3に示すように、まず、ケッチェンブラック(KB)と、材料源となるコバルト源であるCo(CHCOO)・4HOと、蒸留水とを混合した反応液を調整(調整工程)し、この反応液に対して50m/sの回転速度で5分間のUC処理を行った。UC処理を終えた反応液に対しては、リチウム源としてLiHO・HOを加えて、さらに50m/sの回転速度で5分間のUC処理を行った。このUC処理では、66000N(kgms−2)の遠心力が加わっている。この第1,2回目のUC処理は、UC処理によるLiCoO2の前駆体を炭素材料に担持させる前駆体担持工程に対応する。
そして、得られた溶液を濾過・乾燥し、さらに大気中などの酸化雰囲気中で250℃まで急速加熱し、1時間の間保持することで予備加熱処理を行う。予備熱処理後、オートクレーブ内にHOと、予備加熱処理によって作製した前駆体と、Hとを加えて、水熱合成を行い250℃で6時間保持し、KBにLiCoO2を担持させた電極材料を得た。このときの圧力は39.2気圧である。この水熱合成は、熱処理行程に対応する。なお、このとき、電極材料中のLiCoO2が80wt%、KBが20wt%となるように調整している。
その後、得られたKBにLiCoO2を担持させた電極材料(粉体)をバインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、溶媒としてのN−メチルピロリドン(NMP)と共に(LiCoO2/KB/PVDF/NMP 80:20:5:50/wt%)分散して、電極スラリーを作成した。この電極スラリーをSUS板上に溶接されたSUSメッシュ中に投入して乾燥し、10μmの電極厚みの電極層を形成し、作用電極W.E.とした。この電極層の1cmにおけるその厚み領域(体積)における固形分の重さを体積で除した値を測定し電極密度として表1に示す(以下の実施例及び比較例で示す電極密度はこの手法で測定している)。そして、前記電極層上にセパレータと対極C.E.及び参照極としてLiフォイルを乗せ、電解液として、1MのLiPF6のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート1:1溶液を浸透させて、電池セルとした。
(実施例2〜実施例5)
実施例2〜実施例5では、実施例1で作成したKBにLiCoO2を担持させた電極材料において、水熱合成の処理温度及び処理時間を変更し、表1に示す電極密度となる電極材料を作製した。その電極材料を用いて実施例2〜実施例5の電池を作成した。実施例2〜実施例5では、電極材料中のLiCoO2が80wt%、KBが20wt%となるように調整している。
(比較例1)
電極密度をさらに高密度化するため、実施例1で作成したKBにLiCoO2を担持させた電極材料において、水熱合成の処理温度及び処理時間を変更して検討を行ったが、2.8g/ccの電極密度の電極材料を作製するのは困難であった。代わりに、実施例1で作成したKBにLiCoO2を担持させた電極材料を、さらに、電極密度を高密度化するためにボールミルを行い、表1に記載の電極密度を高めた電極材料を得た。そして、この電極材料を用いて比較例1の電池を作成した。比較例1の電池は、ボールミルによって、高密度化処理した電極材料を電極層に用いた以外は実施例1と同様の手法を用いて比較例1の電池を作成している。
(結果)
実施例1〜実施例5の電池及び比較例1の電池について、10Cレートでのエネルギー密度及びレート特性を評価し、その結果を表1に示す。なお、レート特性は、0.1Cのエネルギー密度に対する10Cのエネルギー密度の維持率(%)を示す。
表1に示すとおり、比較例1の電極材料を用いた電池セルは、電極密度が高いにも関わらず実施例1〜実施例5の電極材料を用いた電池セルに比較して、10Cでのエネルギー密度著しく小さい値を示し、レート特性も低い値を示した。これに対し、実施例1の電極材料を用いた電池セルは、エネルギー密度及びレート特性が極めて良好であり、電極密度が低い実施例1であっても200Wh/Lを超えるエネルギー密度を有していた。
また、図4には、実施例3において、電極作成前の炭素材料(KB)にLiCoO2を担持させた電極材料のSEM像(×10k)を示す。また図5には、さらに実施例3における電極材料のSEM像(×50k)を示す。
図4に示すように、実施例3では、微細なナノ粒子を見て取ることができる。また、倍率を上げて観察した図5においては、実施例3の電極材料を観察すると、比較的粒子径の大きなLiCoO粒子(粒子径110〜500nm)と、比較的粒子径の小さなLiCoO粒子(粒子径5〜110nm未満)とが担持されていることがわかる。なお、この比較的粒子径の小さなLiCoO粒子は、粒子径の大きなLiCoO粒子の表面に担持されていているものもある。これらのLiCoO粒子がナノレベルで高分散されていることが分かる。
[LiCoO2とKB+CNFとの配合割合]
炭素材料にLiCoO2を担持させた電極材料について、LiCoO2と炭素材料の配合割合(wt%)について検討した。
(実施例6〜実施例8)
実施例3の電極材料の電極材料中の炭素材料の割合以外を同条件とし、炭素材料として、KBに加えCNFを混合した。また、LiCoO2と炭素材料(KBとCNF)との配合割合を変更して電極材料を得、これらの電極材料を用いて実施例6〜実施例8の電池を作成した。この時の、実施例6〜実施例8の電極材料中のLiCoO2、KB、CNFの割合は、表2に示すとおりである。
(結果)
実施例6〜実施例8の電池について、10Cレートでのエネルギー密度及びレート特性を評価し、その結果を表2に示す。なお、レート特性は、0.1Cのエネルギー密度に対する10Cのエネルギー密度の維持率(%)を示す。
表2に示すとおり、実施例6〜実施例8の電池は、10Cレートでのエネルギー密度がいずれも200Wh/Lを超え、且つレート特性も良好な値を有していた。なかでも、LiCoO2を70wt%以上配合した実施例7及び実施例8の電池セルは、エネルギー密度が極めて良好であった。また炭素材料として、球状であるKBと繊維状のCNFを混合させることでその容量が向上する結果となった。
1…外筒
1−2…せき板
1−3…内壁
2…内筒
2−1…貫通孔

Claims (6)

  1. 炭素材料に、リチウムコバルト酸化物が担持された炭素材料を有する電極層であって、
    前記炭素材料とリチウムコバルト酸化物の合計量に対して、前記リチウムコバルト酸化物は60〜80wt%含有され、前記炭素材料は40〜20wt%含有され、
    前記リチウムコバルト酸化物は、一次粒子が2つの粒子径分布を有し、第1の粒子径分布は5〜110nmに極大を有し、第2の粒子径分布は110〜500nmに極大を有し、
    電極密度が2.5g/cc以下の範囲であることを特徴とする電極層。
  2. 前記炭素材料とリチウムコバルト酸化物の合計量に対して、前記リチウムコバルト酸化物は、70wt%以上含有され、また炭素材料は、30wt%以下含有されていることを特徴とする請求項1に記載の電極層。
  3. 前記炭素材料は、繊維状炭素と球状炭素とが混合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極層。
  4. 請求項1乃至のいずれかに記載の電極層を用いて形成された電極を備えた蓄電デバイス。
  5. 炭素材料に、リチウムコバルト酸化物が担持された炭素材料を有する電極層の製造方法であって、
    リチウムコバルト酸化物の材料源と炭素材料を含有する反応液にずり応力と遠心力とを加えることにより、炭素材料にリチウムコバルト酸化物の前駆体を担持させる前駆体担持工程と、
    前記炭素材料に担持させたリチウムコバルト酸化物の前駆体に加熱処理を行い、炭素材料に担持させたナノ化したリチウムコバルト酸化物を得る熱処理工程と、を有し
    前記炭素材料とリチウムコバルト酸化物の合計量に対して、前記リチウムコバルト酸化物は60〜80wt%含有され、前記炭素材料は40〜20wt%含有され、
    前記リチウムコバルト酸化物は、一次粒子が2つの粒子径分布を有し、第1の粒子径分布は5〜110nmに極大を有し、第2の粒子径分布は110〜500nmに極大を有し、
    得られた電極層の電極密度が2.5g/cc以下の範囲であることを特徴とする電極層の製造方法。
  6. 前記熱処理工程は、
    酸素を含む雰囲気下で処理を行うことを特徴とする請求項に記載の電極層の製造方法。
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