JP6251870B2 - スラッジ回収方法及び粉粒体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水又は水溶液中での加工により発生した粉末を含むスラッジを回収するスラッジ回収方法に関する。
半導体製品や太陽電池などでは、高純度のケイ素(シリコン:Si)が多く利用されている。Siの高純度化の過程やインゴットからウエハを製造する工程における切断や研磨、又は半導体プロセスの後工程でのダイシング、バックグラインドなどにより、冷却水とともに大量のSiスラッジが発生する。高純度Siの原料は、半導体製品や太陽電池を製造する際の加工により、全使用量の50〜80%以上がスラッジとして廃棄されている。
廃棄されるスラッジを有効利用する技術として種々の技術が開示されているが、その際の大きな問題の一つとして、水中でSiの酸化が進行し多くのSiが酸化Siとなって回収が困難になるという問題がある。すなわち、水中のSi粉体は、Si + 2HO → SiO +2H の反応が進行し、水素の発生をともない酸化が進行する。つまり、SiスラッジからSiを回収する場合には、水中でのSiの粉体の酸化を抑制することが重要である。しかしながら、従来は水中で発生した粉体を早期に乾燥させたり、窒素中で乾燥させるなどの工夫をするものの、それらの方法では酸化Siの量を15%以内に抑制して乾燥させることは高コストとなっており、実用的ではなかった。
SiスラッジからSiを回収する技術として、例えば特許文献1、2に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、シリコンインゴットやシリコンウェーハを加工する加工方法又はその加工により生じた加工屑を含有するシリコンスラッジから、シリコンを回収し、電子産業用シリコンとして再生するシリコンの再生方法において、シリコンの加工表面又はシリコン削り屑を含む溶液に酸化還元電位を制御するガスを添加するものである。
特許文献2に示す技術は、シリコン加工プロセスで発生したシリコンスラッジを純水または超純水中に分散後、シリコンスラッジに含まれる不純物を浮上させて除去することでスラッジ状のシリコンを回収し、その回収物を成形し乾燥させることで、シリコン加工プロセスから排出された加工屑の再利用と、シリコン系太陽電池用原料の低コスト化とが図れるものである。
また、シリコンと水を反応させて水素を発生させる技術が、特許文献3に開示されている。特許文献3には、水素発生方法として、Si粉と水を反応させ、酸化シリコンを生成すると同時に水素発生を行うことが記載されており、Si表面が水と接触する面積が減少する場合に、水素発生が抑制されることが記載されている。
さらに、非特許文献1に示すような研究成果が開示されている。非特許文献1には、シリコン加工プロセスで発生したシリコンスラッジの含水率を30%に低減することで、酸化量(シリコン中の酸素濃度)を抑制することが記載されている(図10を参照)。含水率99.8%すなわち、十分な水の中でスラッジが存在する場合は、シリコン中の酸素濃度(重量%)は25%以上になるまで、酸化が進行することが示されている。しかし、一方Siウエハなどは長時間水中に保持しても、表面の酸化が進行しないことが知られているにも関わらず、加工されたSiの紛体は、酸化が進行し酸素成分が数十%の組成にまでなることについての機構の相違は、表面の加工ひずみ、細粒化による表面積の増大などが指摘されていたが、必ずしも解明されていなかった。
特開2010−1181号公報 特開2010−258111号公報 特開2004−115349号公報
東芝LSIパッケージソリューション株式会社、他4者、"シリコン汚泥高度化リサイクル研究会"、[online]、平成22年度、福岡県リサイクル総合研究センター「研究会」資料、[平成24年7月1日検索]、インターネット<URL:http://www.recycle-ken.or.jp/k_seika/2010/silicone.pdf>
特許文献1には、シリコンスラッジ中に空気を供給してシリコンを酸化させることや、シリコンが炭素により汚染される前に酸素と反応させてシリコン酸化物へと表面を改質することが記載されているが、その目的は不純物金属や炭素とシリコンとの化学反応を抑制することであり、水中でシリコンの酸化が進行し、多くのシリコンが酸化シリコンとなって再利用が困難になってしまう可能性がある。
特許文献2は、シリコン粉を純水又は超純水に分散させて静置し、シリコンスラッジと上澄み液とに沈降分離してシリコンスラッジを乾燥する技術であるが、シリコンスラッジを乾燥する工程が必要であり作業に手間が掛かると共に、シリコン粉を純水又は超純水に分散させて静置している間にシリコン粉の酸化が進行し、多くのシリコンが酸化シリコンとなって再利用が困難になってしまう可能性がある。
特許文献3には、Si表面が水と接触する面積が減少する場合に、水素発生が抑制されることが記載されているが、本発明で明らかとなった安定酸化膜の形成については一切記載されておらず、安定酸化膜により酸化の進行を抑制する技術ではない。
非特許文献1は、含水率を30%に低減することで、酸化量(シリコン中の酸素濃度)を抑制できることが記載されている。これは、含水率30%以下では、Siスラッジ粉が凝集して表面での水との反応が抑制されることで、酸化の進行が抑制されていると考えられる。しかしながら、含水率を30%程度以下にすることは、濾過や乾燥などプロセスが大がかりとなり、コスト増となり、実用性が低い。
発明者の鋭意努力により、水中又は水溶液中で処理対象物が酸化する原因として、処理対象物の表面に不動態被膜(又は安定酸化膜)が形成されていないことであることが判明した。すなわち、本発明は、スラッジ中に存在する処理対象物の粉末の酸化を不動態被膜を形成することで抑制し、多量の処理対象物を容易に回収するスラッジ回収方法を提供する。なお、本発明における不動態被膜又は安定酸化膜とは、内部への酸化の進行を抑制する表面における緻密な酸化を言う。
本発明に係るスラッジ回収方法は、水又は水溶液中でケイ素(シリコン:Si)を加工する際に発生する前記Siの粉末を含むスラッジから前記Siを回収するスラッジ回収方法において、水又は水溶液中での前記Siの加工により発生する前記粉末の新生面に少なくとも酸素成分を含む気体を供給し、供給された前記気体に含まれる酸素成分と前記Siとが反応して生成されるSiO安定酸化膜を形成する安定酸化膜形成ステップを含むものである。
このように、本発明に係るスラッジ回収方法においては、水又は水溶液中でのSiの加工により発生する粉末の新生面に、少なくとも酸素成分を含む気体を供給して当該気体に含まれる酸素成分とSiとが反応して生成されるSiO安定酸化膜を形成するため、酸化の進行を抑制しSiを高効率に回収することができるという効果を奏する。
本発明に係るスラッジ回収方法は、前記安定酸化膜形成ステップにて、スラッジ溶液中の酸素気泡率を0.02%以上とするものである。すなわち、溶液Xl中に導入する酸素量Yml/分、またその導入された酸素気泡が存在する平均時間をt秒とすると、溶液中に存在する酸素気泡量の割合(気泡率)P(O)=Yt/600X(%)を、0.02%以上、空気の気泡の場合P(air)は0.1%以上とするものである(酸素導入による溶液量の増分としても計測が可能であり、空気の場合は、酸素量を1/5として適用できる。)。
このように、本発明に係るスラッジ回収方法においては、溶液中に存在する酸素気泡量P(O)は0.02%以上(空気気泡量の割合P(air)を0.1%以上)とするため、実験結果から明らかなように、酸化の進行が抑制されSiを高効率に回収することができるという効果を奏する。さらに好ましくは、酸素気泡率P(O)を0.1%以上とすることで、極めて効果的である。空気にSiスラッジが接触する時間は、短時間でも効果がみられるが、10分以上が好ましく、さらに好ましくは1時間以上である。
本発明に係るスラッジ回収方法は、前記水溶液の温度が65℃以下とするものである。このように、本発明に係るスラッジ回収方法においては、水溶液の温度を65℃以下とするため、実験結果から明らかなように、酸化の進行が抑制されSiを高効率に回収することができるという効果を奏する。
本発明に係るスラッジ回収方法は、前記水溶液の温度が30℃より高いものである。また、本発明に係るスラッジ回収方法は、前記Siの加工と同時に予めマイクロバブルを含む水を供給し、当該マイクロバブルの酸素成分と前記Siとを反応させてSiO安定酸化膜を形成するものである。
本発明に係るスラッジ回収方法のフローチャートである。 実施例で用いた各試料を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像した画像である。 第1の実験で用いた各試料を真空乾燥した場合の時間に対する重量変化を示す図である。 第1の実験で用いた各試料におけるEDX分析の結果を示す図である。 第2の実験において分析した各試料の分析領域を観察したSEM写真である。 第2の実験における深さ方向の分析結果を示す図である。 第3の実験における各試料の酸素量の割合を示す図である。 第4の実験結果において空気気泡率と酸素濃度との関係を示す図である。 第5の実験結果においてスラッジ溶液温度と酸素濃度との関係を示す図である。 Siの回収時間とSi中の酸素濃度との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
本実施形態に係るスラッジ回収方法について、図1を用いて説明する。図1は、Siスラッジの回収処理を示すフローチャート本実施形態においては、例えば半導体プロセスや太陽電池の製造工程において発生するSiのスラッジから高純度のSiを回収するスラッジ回収方法を説明する。Si以外には、例えばアルミニウム、ステンレス、チタン、クロム、ニッケル、すず、亜鉛等のスラッジから高純度の材料を回収することが可能である。
図1に示す本実施形態に係るスラッジ回収方法は、まず、予め半導体プロセスや太陽電池の製造の際に用いる高純度Si原料が製造、切断または破砕され(S0)、次にSiインゴットが製造され(S1)、そのSiインゴットが加工される(S2)。Si原料あるいはSiインゴットの加工については、例えば、半導体プロセスでは外周研削、面取り、切断、研磨、後工程におけるダイシング、バックグラインド等があり、太陽電池の製造ではバンドソー、ワイヤソー等がある。これらの加工は水又は水溶液中で行われ、各加工で発生したSi粉を含むSiスラッジ溶液が生じる。Siインゴットの加工で生じたSiスラッジは、例えば遠心分離等により個体と液体に分離され、分離された個体が圧搾脱水されてSi粉粒体として回収される(S3)。
回収されたSi粉粒体は、溶解装置等で溶融されると共に蒸発により不純物が除去される(S4)。溶融したSiは鋳型に流し込まれて冷却され(S5)、再生Siのインゴットが精製される(S6)。Si太陽電池あるいは、Si半導体原料以外への再利用については、ステップS3においてSi微粒体として回収されたものを、塊状として添加しやすい形状とし、高純度のSi原料として、合金化などに利用することができる。
本実施形態においては、水中又は水溶液中でSiインゴットを加工する際に、少なくとも酸素成分(O)を含む気体(ここでは、仮に空気とする)を供給し、Si粉の水中における新生面を空気に十分に暴露することで、Si粉の表面に安定酸化膜(実質的にはSiO)を形成する。一旦安定酸化膜が形成されたSi粉は、その後水中又は水溶液中で酸化が促進されないため、高効率にSiを回収することが可能となる。
ここで、安定酸化膜の定義について説明する。安定酸化膜は、Si粉の表面に形成される緻密な酸化膜であり、表面にこの安定酸化膜が形成された場合は、例えば水に着けた状態であっても内部まで酸化が進行しないものである。安定酸化膜が形成されているかどうかの判断は、水と接触した際に、Si + 2HO → SiO +2Hの反応が進行して水素が発生するかどうかで行うことができる。すなわち、安定酸化膜が形成されている場合は、酸化が進行しないため、水と接触しても水素を発生しないのに対して、安定酸化膜が形成されていない場合は、酸化が進行し、水と接触することで水素を発生する。
また、これ以外にも、例えばSi + 2HO → SiO +2Hの反応が進行することによる重量の変化から判断することができる。すなわち、安定酸化膜が形成されている場合は酸化が進行しないため、SiOが生成されず、重量の増加が無いか極めて少ないものとなる。これに対して、安定酸化膜が形成されていない場合は酸化が進行し、SiOが生成されるため、重量の増加がある。水中のSi粉の重量増の測定は、脱酸素雰囲気中(たとえばアルゴン雰囲気中)で、水を濾過後真空乾燥し、大気に触れることなく重量を測定したのち、水中(たとえば水50cc中に10gのSi粉)に浸漬保持(たとえば、常温、24時間)したのち、再び同様に濾過乾燥して重量変化を測定する。3%以下の重量増である場合に安定酸化膜が形成されていると判断できる。
このように、安定酸化膜が形成されているかどうかの判断は、水と接触した際に水素の発生があるかどうか、及び/又は、水中で時間を置いた際に重量増があるかどうかで行うことができる。
なお、図1のフローチャートにおいて、好ましくはステップS0からステップS2のSi原料またはインゴットの加工時、又は、ステップS3のスラッジ回収時にSi粉に空気を供給し、より好ましくはステップS2のSiインゴットの加工時にSi粉に空気を供給する。また、加工時に使用する水を予めマイクロバブルを含むものとし、加工と同時にマイクロバブルによりSi粉末を酸素に暴露するようにしてもよい。このとき、例えば水及びマイクロバブルに含まれる酸素量の合計が、そのときの飽和溶存酸素量の1.2倍以上であることが望ましい。
また、少なくとも酸素成分を含む気体を供給する際は攪拌されていることが好ましく、バブリングによる攪拌、機械的な攪拌、超音波による攪拌等が好適である。特にバブリングによる攪拌を行うことで酸素成分を含む気体を適正に供給することができ、さらに、金属系不純物の混入を低減できる効果がある。例えば、Ni、Fe等の不純物混入量が、50ppmから15ppm以下に抑制されたことが確認されている。
以上のようなことから、本発明に係るスラッジ回収方法においては、水又は水溶液中でSiを加工する際に空気を供給して安定酸化膜を形成するため、乾燥等の工程を別途必要とせずに、Si粉の酸化の進行を抑制し、Siを高効率に回収することができる。
本発明に係るスラッジ回収方法について以下の実験結果を示す。
(1.Siスラッジの酸化挙動の調査)
まず、第1の実験として、Si酸化量の制御を目的とする各環境条件でのSiの酸化挙動の調査を重量変化、EDX分析、オージェ分析などにより行った。
(Si粉体の酸化挙動)
図2に本実験で用いた各試料を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像した画像を示す。試料Aは切断スラッジであり、多結晶Siの切断粉で切削水中から採取したものである。試料AのBET値は19.2m/gである。試料Bは集塵粉であり、乾式での破砕時に生じる乾燥粉体である。試料BのBET値は4.15m/gである。試料Cは購入したものであり、外部から入手したSiスラッジである。試料CのBET値は5.9m/gである。
図3は、各試料の初期水分量を分析するための結果を示すグラフであり、真空乾燥した場合の各試料の時間に対する重量変化を示す。図3から、試料Aの切断スラッジは多くの水分を含み、試料Cの購入スラッジは多少の水分を含み、試料Bの集塵粉はほとんど水分を含んでいないことが示される。
各試料10.0gを真空乾燥後、50ccの水中で24時間浸漬し、真空乾燥を行った場合の重量の変化を測定した。その結果、試料Aの切断スラッジは10.0gから13.7gに増加し、試料Bの集塵粉は10.0gから10.1gと殆ど変化がなく、試料Cの購入スラッジは10.0gから13.3gに増加した。上記各試料10.0gを事前乾燥せずに水20cc中で100℃、6時間加熱し、乾燥後EDX分析を行った。その結果を図4に示す。EDXによる分析(EDXの分析は、表面近傍の分析となるが、試料間の相対的な比較として有効である)酸素の割合は試料Aの切断スラッジ>試料Cの購入スラッジ>試料Bの集塵粉の順で大きくなっていた。
(2.Si酸化進行機構の検証)
上記の実験結果を踏まえ、第2の実験としてSi酸化の進行機構を検証する実験を行った。この実験は、Si表面が、新生面が水中又は脱酸素雰囲気で形成され、十分な酸素が存在しない状況で酸化が進行する場合、すなわち安定酸化膜が形成されない場合にSiの酸化が顕著に進行するという想定で行った。
試料として以下に示す多結晶のSiウエハを3種類を用意した。
(a)ウエハ片(10数mm角)を乾式で研磨(耐水研磨紙600番→1200番)後、洗浄、70℃で3分乾燥後、200cc水道水に浸漬。70℃3時間保持。その後乾燥。
(b)ウエハ片(10数mm角)を水中で研磨(耐水研磨紙600番→1200番)後、洗浄、乾燥させることなく200cc水道水に浸漬。70℃3時間保持。その後乾燥。
(c)ウエハ片(10数mm角)を水中で研磨(耐水研磨紙600番→1200番)後、洗浄、乾燥させることなく200cc水道水に浸漬。70℃3時間保持。常温湿潤紙中に96時間保持。その後乾燥。
上記各試料をオージェ電子分光(AES)装置を使って以下の分析を行った。
(1)SEM観察:表面状態を確認すると共に分析領域を指定する。
(2)深さ方向分析:表層組織の深さ分布を知るために主成分について深さ方向分析する。
測定条件として、AES装置にSAM−670(PHI社製、FE型)を用い、電子ビームを5kV,10nA、ビームサイズを0.05μm、イオンビームをAr,3kV、スパッタ速度を4.4nm/分(SiOの場合)とした。
(表面観察と表面オージェ分析)
以下、分析結果を説明する。図5に分析した領域付近を観察したSEM写真を示す。図5(A)が試料aの乾式研磨した場合の写真、図5(B)が試料bの湿式研磨した場合の写真、図5(C)が試料cの湿式研磨後水中保持した場合の写真である。図5の写真からわかるように、試料aの場合は、多少研磨による線状の傷があるものの表面は比較的平坦になっており、試料bの場合は、研磨による線状の傷に加えて酸化による凹凸部分が散見され、試料cの場合は、酸化による激しい凹凸部分がほとんどの領域に広がっている。
このことから、水中でも一般的に酸化しないとされているシリコンウエハであっても、水中に浸かった状態で新生面が形成された場合や、特にその後水中に保持された場合には、Si粉と同様に酸化が進行することが明らかとなった。
(深さ方向分析)
図6に深さ方向の分析結果を示す。図6(A)が試料a、図6(B)が試料b、図6(C)が試料cの分析結果である。横軸がスパッタ時間(分:スパッタ速度=約4.4nm/分)、縦軸が濃度(原子%)である。図6(C)については、横軸のスケールが異なった状態で示されている。
図6(A)に示す試料aの乾式研磨の場合と図6(B)に示す試料bの湿式研磨の場合は、いずれも表面酸化膜が薄く、自然酸化膜(シリコンウエハ酸化膜)より少し厚い程度である。一方、図6(C)に示す試料cの湿式研磨後水中保持した場合は、酸化膜が厚くなっている(5nm程度)。SEM観察で見える表面の凹み構造から、表層が溶出したと考えられる。
以上の分析結果から、新生面が十分な酸素存在状態に暴露されない場合、表面のSi酸化又はSiの溶出が進行し、酸化膜厚の増加と同時にSi表面の凹凸が顕著となる。上記酸化機構の検証結果から、新生面への十分な酸素供給による安定酸化膜の形成が酸化抑制に効果があることが確認された。
(3.Si粉スラッジの空気バブリングの有効性検証)
Si粉スラッジについては、空気バブリングが新生面への安定酸化膜形成に有効であることが考えられることから、第3の実験として検証実験を行った。
試料としてSi切断スラッジ発生直後を採取し、3時間後に200mlをビーカに移して各条件で保持した。(a)ビーカを静置(バブリングなし)、(b)ビーカ中溶液内にホースを設置して空気バブリングを実施、(c)ビーカ中溶液内にホースを設置してN2バブリングを実施した。バブリングの気体導入量は、200mlスラッジ溶液に対して50ml/minとした。いずれもビーカー底部に導入ホース先端を配置した。またSiスラッジの溶液中の濃度は、初期の段階で約5%であった。空気の気体の水中の気泡率は約0.25%で、継続してバブリングをおこなった。
3時間後の観察の結果、(a)はHの発生が継続しており1秒間に数個以上の泡発生が見られた。(b)はHの発生がほとんどなく、(c)はHの発生が継続しており、1秒間に数個以上の泡発生が見られた。24時間後の観察の結果、(a)のみHの発生が僅かに継続していた。72時間後(24時間バブリング後、水中で静置)にEDXによる分析を行った。その結果を図7に示す。図7に示されるように、(b)の空気バブリングを行ったものが最も酸素量が少なく15%以下である。(a)のバブリングなしのものと(c)のNバブリングのものは、50%程度の酸素量が測定され、酸化進んでいることが示された。
(第2、第3の実験の結論とまとめ)
Siウエハは、表面に安定な酸化膜が形成されている場合において、深部への酸化は抑制されており、表面に安定酸化膜が形成されない雰囲気(水中など)で新生面が形成され、その表面が水中に暴露されると酸化が進行し、表面は侵食された凹凸のある状態となる。また、切断スラッジにおいては、水中でスラッジ粉が生成される場合、時間の経過と共に水素発生を伴い酸化が進行する。スラッジ溶液中に空気バブリングすることにより水素発生は短時間で抑制され、酸化の程度も顕著に軽減される。表面に安定酸化膜が形成されたことにより深部への酸化が抑制される。Nバブリングは溶液中の溶存酸素量を低減する効果があると考えられたが、スラッジの酸化の程度を軽減させることはなかった。
(溶液量と空気の流入量との関係を検証)
溶液量と空気の流入量との関係を検証するために第4の実験を行った。多結晶Siインゴットにドリルで穴加工することにより、Si粉を生成し、そのSi粉の酸化状況を調査した。
15mm径のドリルで約10mmの深さに穴を開け、その15mm径の穴に水道水を注入し、その後穴の中心部に7mm径のドリルでさらに深部に穴を開けることにより、Si粉を水に濡れた状態で採取した。
採取したSi粉を水道水を200ml満たしたビーカに投入した。Si粉の重量は約2gである。水温は50℃に一定になるように、ホットプレートで加熱した。ビーカ底部に配置したホース先端より、空気を導入してバブリングを行った。溶液はスターラーで撹拌した。空気流量を調整することにより、水中の酸素気泡率P(O2)を2%、1%、0.5%、0.25%、0.1%、0.05%、0.02%、0.01%に変化させ、それぞれ30分間バブリングを行った。その後10分静置した後、Siの酸化によるH発生挙動を観察した。5秒間に1個以上の水素発生の泡滴がみられる場合には、酸化進行と判断した。
なお、上述したように酸素気泡率P(O)は、溶液Xl中に導入する酸素量Yml/分、またその導入された酸素気泡が存在する平均時間をt秒とすると、P(O)=Yt/600X(%)とする。
観察の結果、酸素気泡率P(O)値が0.02以上、すなわち、空気気泡率P(air)値が0.1以上の場合では酸化進行が抑制されていると判断できた(ただし、空気中の酸素の割合を1/5とする)。Nバブリング及びバブリングなしの場合は、30分+10分(静置)経過後いずれも酸化進行が確認できた。真空乾燥後、EDXによる分析をおこなった。図8にバブリング処理なしのEDX酸素濃度分析に対する相対酸素濃度結果を示す。酸素濃度(wt%)は、P(O)が0.1以上では処理なしの場合の酸素濃度に対して、約1/2以下のレベルであったが、P(O)が0.02以下では酸素濃度の低減は十分ではなかった。
(第4の実験の結論とまとめ)
以上のことから、酸素気泡率P(O)値が0.02(空気気泡率P(air)=0.1)以上となるように空気の流量等を調整することで、酸化の進行を効率よく抑えることができる。
(溶液量と温度との関係を検証)
上記第4の実験と同様の条件において、空気気泡率P(air)値を2(酸素気泡率P(O)=0.4)%に固定して、スラッジ溶液温度を20℃から90℃まで変化させて第5の実験をおこなった。またバブリング時間は1時間とした。50℃の場合を基準として、水中保持後のEDX分析による酸素濃度の比を図9に示す。65℃超においては、バブリングによる酸化抑制の効果が顕著に減少している。したがって、空気または酸素を含む気体によるバブリングは、65℃以下でおこなうことが好ましいことが明らかである。
なお、表面に上記の安定酸化膜が形成されたSi粉について、安定酸化膜の膜厚が10Å以上であることが好ましく、また、安定酸化膜の膜厚が、Si粉末の粒径の1/10以下であることが好ましい。
さらに、酸素成分を含む気体をSi粉末に確実に供給するためには、Siスラッジがある程度流動的に状態変化する必要がある。すなわち、水溶液に対するSiの濃度を20%以下に調整することが望ましい。また20%以上では、酸化反応による発熱による水温の局所的な温度上昇の可能性が高まり、内部への酸化速度を速める可能性がある。

Claims (5)

  1. 水又は水溶液中でケイ素(シリコン:Si)を加工する際に発生する前記Siの粉末を含むスラッジから前記Siを回収するスラッジ回収方法において、
    水又は水溶液中での前記Siの加工により発生する前記粉末の新生面に水又は水溶液中の酸素気泡率が0.02%以上となるような酸素(O)を含む気体を供給し、供給された前記気体に含まれる酸素(O)と前記Siとが反応して生成されるSiO安定酸化膜を形成する安定酸化膜形成ステップを含むことを特徴とするスラッジ回収方法。
  2. 請求項1に記載のスラッジ回収方法において、
    前記水又は水溶液の温度が65℃以下であることを特徴とするスラッジ回収方法。
  3. 請求項2に記載のスラッジ回収方法において、
    前記水又は水溶液の温度が30℃より高いことを特徴とするスラッジ回収方法。
  4. 請求項1ないしのいずれかに記載のスラッジ回収方法において、
    前記Siの加工と同時に予めマイクロバブルを含む水又は水溶液を供給し、当該マイクロバブルの酸素成分と前記Siとを反応させてSiO 安定酸化膜を形成することを特徴とするスラッジ回収方法。
  5. 水又は水溶液中でケイ素(シリコン:Si)を加工する際に発生する前記Siの粉末を含むスラッジから前記Siの粉粒体を製造する粉粒体の製造方法において、
    水又は水溶液中での前記Siの加工により発生する前記粉末の新生面に、水又は水溶液中の酸素気泡率が0.02%以上となるような酸素(O )を含む気体を供給し、供給された酸素(O )と前記Siとが反応して生成されるSiO 安定酸化膜を形成する安定酸化膜形成ステップを含むことを特徴とする粉粒体の製造方法。
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