JP5289833B2 - 電子部品用シリコンの加工方法及び再生方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子部品用シリコンの加工方法及び加工して生じた加工屑を回収し、再生する電子部品用シリコンの再生方法に関し、特に、シリコンの加工及び加工屑の回収操作において、シリコン加工面及び/又は加工屑が含まれる溶液に酸化還元電位を変化させる気体又は前記気体が溶解している溶解水を添加する電子部品用シリコンの加工方法及び再生方法に関する。
現在、エネルギー源多様化の要求から太陽光発電が脚光を浴び、低価格発電装置の実用化に向け研究開発が盛んに行われている。この様な状況の中で、太陽電池材料としてシリコンは最も重要な材料であり、しかも動力用電力供給に使われる材料として重要視されている。
太陽電池の材料となりうるシリコンは、純度99.9999%以上で、比抵抗0.5〜10Ω・cm(シリコン中のB濃度に換算して0.2ppm以下)という高純度が要求されており、従来、半導体産業で用いられる高純度シリコン、又はIC用の基板を製造した時に発生する規格外品が利用されている。しかし、半導体用高純度シリコンは高価であり、また規格外品の発生量は少なく供給が不安定であり、太陽電池の原料となるシリコンが充分に確保できない問題があった。
今後、太陽電池の需要増大が予想され、太陽電池用シリコン原料の確保が重要な課題となっている。このようなことから、太陽電池用シリコンを安価に、かつ、安定して供給する方法が検討され、太陽電池を製造する際に廃棄されているシリコンを再利用する各種方法が提案されている。
そのような方法の1つとして、シリコンインゴットをスライスしてウェーハに加工する際に発生するシリコンスラッジから固形分を分離し、分離した固形分を粉末状又はペレット状に加工し、太陽電池用シリコン原料として再利用する方法や、太陽電池用シリコンを製造する際の各精製工程で発生する排ガス中の酸化物、破砕や切削で生ずるシリコンスラッジなどを回収して最適な工程へそれぞれ戻す方法が提案されているが、これらの方法により回収される加工屑の純度は依然として低いので、リサイクルが容易ではなかった。
その理由は、シリコンの機械加工は、鉄等の金属から成るワイヤーソーやダイシングブレードを用いて行われるためであり、この機械加工を行うと、ワイヤーソー等を構成する金属が微細片となって、加工屑に取り込まれ、排水に溶融してしまうためである。
よって、機械加工の際に発生する排水には、加工屑と共に、鉄等の金属も混入されており、この金属はイオンの状態又は粒状で排水に含まれている。結果として、上記除去方法を用いて排水の固液分離を行った後に得られる加工屑は、金属が混入していることとなり、上記した加工屑を溶融してインゴット(半導体塊)としても、そのインゴットには不要な金属が含まれるので、太陽電池の材料となるシリコンとしては適当ではなかった。
そこで、シリコンスラッジにおいて、加工屑を沈殿させた後でろ過し、得られた加工屑を溶融してシリコンインゴットを得る太陽電池用シリコンの製造方法(例えば、特許文献1参照。)や、シリコンインゴットを機械加工することにより発生する加工屑が混入された流体に酸性を示す物質を混入して、加工屑に付着した金属を加工屑から分離した後に、加工屑を溶融してシリコンインゴットを形成する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、上記では太陽電池用シリコンについて記載したが、これは、半導体用シリコンでも同様のことが言える。すなわち、シリコンインゴットのスライシングによるシリコンウェーハの作製、シリコンウェーハのダンシングによるシリコンチップの作製等におけるシリコン加工の際に生じる加工屑においても同様に適用できるものである。
例えば、回収する流体のpH調整を行い、第1のフィルターの表面に形成された被除去物からなる第2のフィルターに外力を与えて、被除去物の移動を容易にさせるようにしてシリコンを回収しようとする再利用方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
特開2002−293528号公報 特開2007−91563号公報 特許3773823号公報
しかしながら、このような方法によっても、不純物となる金属が、回収、再生操作の間に再利用されるシリコンと接触する可能性が高いため、シリコンと不純物が反応してしまい汚染される可能性があった。
また、回収の際に、シリコンスラッジからシリコン粉末を回収する場合において、シリコンスラッジを含む溶液に空気を導入して気泡を発生させるエアレーションという方法が用いられている。しかし、この工程自体が水中に酸素を供給するという微生物が繁殖し易い条件であるため、これら微生物が炭素源となり加工屑中のシリコンスラッジに炭素が混入し、回収用のシリコンが汚染されることもあった。なお、微生物は研磨工程などで混入する研磨油や界面活性剤などを養分として発生する。
このように不純物金属や炭素との化学反応によりシリコンが汚染されてしまうと、特許文献1乃至3に記載されているようなろ過や酸による溶解ではもはや除去することができず、それがシリコンの純度を低下させてしまっていた。
そこで、本発明の目的は、シリコンを回収、再生する工程において、シリコンが不純物金属や炭素と化学反応することを抑制し、これら不純物金属や炭素による汚染を低減させた電子部品用シリコンの再生方法を提供するものである。
本発明者らは上記問題点を解消するために鋭意検討した結果、シリコンの回収、再生工程において、シリコンの汚染を抑制することができる気体をシリコンを処理する溶液に供給することによってシリコンの不純物による汚染が抑制できることを見出し、本発明の再生方法を完成したものである。
さらに、この知見をシリコンの加工における加工面に適用することで、シリコン製品の汚染を抑制することにも応用することができることを見出し、本発明の加工方法を完成したものである。
すなわち、本発明の電子部品用シリコンの再生方法は、電子部品用シリコンのインゴットやウェーハを加工する加工工程と、加工して生じたシリコンスラッジから、シリコンを回収し、シリコンインゴットとして再生する再生工程とを具備する電子部品用シリコンの再生方法において、酸化還元電位を変化させる少なくとも一種類の気体を純水に溶解させた気体溶解水を、インゴット加工面、ウェーハ加工面、シリコンスラッジ又はシリコンスラッジ含有排液に供給することを特徴とするものである。
もっと言えば、本発明は、シリコンインゴットを加工して生じた加工屑や、シリコンウェーハ上に形成された電子回路のチップを切断するダイシング工程など、シリコンを加工する際に発生する切断屑のシリコンを含有するシリコンスラッジを回収し、再度電子部品用シリコンとして再生する電子部品用シリコンの再生方法において、切削屑が発生する切断時からシリコン研磨屑を固液分離する工程の一部又は全部に切削屑を含む溶液又は工程に用いる純水に対して、酸化還元電位を変化させる気体を添加し、工程内で混入する汚染物を分解又は混入する汚染物による汚染の防止を行いながらシリコンを回収することを特徴とするものである。
本発明の電子部品用シリコンの再生方法は、従来は廃棄されていたシリコンスラッジ(切削屑)を電子部品用のシリコン原料として再利用することに着目し、シリコンの汚染を低減させるための具体的な再利用方法について検討を重ねた結果なされたものである。
本発明は、電子部品用のシリコン、例えば、太陽電池用の単結晶又は多結晶のシリコンインゴット、半導体デバイス用のシリコンインゴット等のスライシング、チップ製造におけるシリコンウェーハ等のダイシングにより生じたシリコン屑を電子部品用のシリコンインゴットとして再利用できる技術である。これらのシリコンを機械加工する工程では、加工屑が混入された排水が排出されるが、この排水には金属からなる微粉(不純物)が混入したり、金属イオンが含有していたりする。また、微生物を炭素源として炭素により汚染される場合もあった。
本発明は、このシリコンの再生において、不純物となる金属や炭素によるシリコンの汚染を抑制し、純度が維持されたシリコンを回収、再生して、再度電子部品用のシリコンインゴットとして再利用しようとするものである。
本発明の電子部品用シリコンの加工方法は、電子部品用シリコンのインゴットやウェーハを加工する加工方法において、酸化還元電位を変化させる気体を純水に溶解させた気体溶解水を、インゴット加工面又はウェーハ加工面に供給することを特徴とするものである。
本発明の電子部品用シリコンの再生方法によれば、シリコンインゴットのスライシングやシリコンウェーハのダイシング等のシリコンを加工する際に生じる加工屑を、不純物金属、有機物、有機物を餌として発生した微生物等による汚染を抑制しながら純度の高いシリコンインゴットの原料として再生することができる。これにより、容易に電子部品用のシリコン原料を安価に安定して確保することができる。
また、本発明の電子部品用シリコンの加工方法によれば、シリコンインゴットのスライシングやシリコンウェーハのダイシング等のシリコンを加工する際に表出するシリコンの加工面に、不純物金属等による汚染を抑制しながら安定したシリコン製品を製造することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明についてさらに詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の電子部品用シリコンの再生方法について、シリコンインゴットの加工から始まり、シリコンを再生してシリコンインゴットとするまでの各工程を例示した工程図である。
ここで、本実施形態の電子部品用シリコンの再生方法は、シリコンを加工し(S1)、加工により生じた加工屑を加工液と共にシリコンスラッジとして回収する工程(S2)において、いずれかの工程にシリコンスラッジ溶液の酸化還元電位又は水素イオン濃度を変化させる気体(ガス)またはその気体(ガス)を溶解した純水を供給しながら行う(S3)。ここでは水素ガスをシリコンスラッジに供給して回収する場合を例に説明する。回収されたシリコンスラッジは、そこに含まれるシリコンを固液分離工程により再生用のシリコンとして分離する(S4)。
そして、加工液から分離された固形分を洗浄・乾燥し(S5)、シリコン酸化物の粉末を得る。得られたシリコン酸化物の粉末を溶融し(S6)、溶融したシリコンを型に流し込んで冷却、固化させ(S7)、シリコンインゴットとして再生する。
ここで、シリコンインゴットの加工(S1)は、従来用いられているワイヤーソーでシリコンインゴットをスライスすればよく、ここで用いられるワイヤーソーとしては、例えば、直径100〜180μm程度の鉄や鋼鉄製のワイヤーを用い、このワイヤーソーに沿って浮遊砥粒を流しながらスライスするものである。ここで、砥粒としては例えば、平均粒径が20〜40μm程度のダイヤモンド砥粒を用いることができる。
また、ワイヤーソーに、ダイヤモンド砥粒を固着させたものを用いることもでき、このようにした場合、シリコンスラッジに砥粒やワイヤーソーの磨耗粉などの不純物が混入するのを抑制できることが好ましい。これによれば、シリコンスラッジを回収後のろ過及び洗浄などに要する手間が大幅に削減される。
このシリコンの加工(S1)で用いられるシリコンとしては、例えば、長さが2mで直径が200mm〜400mm程度の円柱状のインゴットが典型的に用いられる。最初に、シリコンは、溶融したシリコンが入ったルツボから結晶が引き上げられて形成され、中央がほぼ円柱状で両端がつぼんだ形状と成っている。本工程に用いるためには、インゴットの両端部が切り落とされ、さらに、インゴットの径を所定の長さにするために、インゴットを回転させつつ外周部が研削されて、円柱状のインゴットが形成される。このとき、ウェーハ(板状体)は円板状に加工される。
また、ウェーハ(板状体)が矩形の板状に加工される場合は、ルツボから引き上げられたシリコンインゴットを、回転ではなく、単に四角柱を形成するように外側部分がスライスにより切り落とされて形成される。
ここで、円柱又は四角柱のインゴットをウェーハにスライスする方法としては、ワイヤーソー以外にピアノ線を用いる等の公知の方法を用いることができる。また、この工程の後に、各ウェーハの表面は機械研磨(ラッピング)されて鏡面平坦化される。
次に、シリコンスラッジの回収(S2)は、ステップS1のようなシリコンインゴットの切断等の加工により生じたシリコンの削り屑と、加工の際に供給される加工液とが混合されて生じたシリコンスラッジを回収するものである。このシリコンスラッジは、加工を継続している間、常に生じるものであり、加工工程を行いながら、この加工液と共にシリコンスラッジは回収される。
このとき、シリコンスラッジの回収は、加工液が水又は水溶性加工液であることが好ましい。その理由は、従来の方法ではワイヤーソーに沿って流される浮遊砥粒に切削油が含まれており、シリコンスラッジから切削油を除去するためには切削油の溶媒となる液体を添加して粘度を低下させる必要があったからである。
しかし、加工液が水又は水溶性加工液であれば、回収したシリコンスラッジに溶媒を加える必要が無くなり、シリコンと加工液との分離は遠心分離によって容易に行うことができる。このため、シリコンと加工液との分離に要する手間を従来よりも軽減することができる。
ここで用いる水溶性加工液は、具体的には水以外にフッ酸系水溶液、グリコール系水溶液、界面活性剤水溶液などを用いることができる。なお、上記ワイヤーソーと加工液を用いてシリコンインゴットをウェーハにスライスする際に使用する加工装置は、不純物元素の混入を防止するために他の加工に使用せず、この加工に専用されるものである。
なお、加工液として水あるいはフッ酸系水溶液を用いた場合には、後段の乾燥工程において有機溶剤による洗浄を省略して乾燥のみを行えば良く、好ましいものである。水溶性加工液を用いた場合には、乾燥させる前に有機溶剤による洗浄を行ってから乾燥させることとなる。
また、本実施形態においては、シリコンスラッジの回収(S2)と同時に、シリコンスラッジ溶液の酸化還元電位を変化させる気体の供給(S3)を行うものであり、このとき添加、溶解する気体としては、水素、一酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、ホルムアルデヒドなど還元性を呈するガスが挙げられ、水素ガスを添加することが好ましい。ここで、酸化還元電位を変化させるとは、酸化還元電位を低くすることを意味する。
また、シリコンの切断(S1)工程においてはワイヤーソーやカッターなどによる切断時に使用する純水に対して、純水の代わりにあらかじめ水素ガスを純水に添加した水素水を供給することもできる。水素水として供給する際に用いる純水は抵抗率が0.1MΩ・cmであることが好ましい。
シリコンスラッジ中には、加工屑と加工液の他に、ワイヤーソーやカッターを構成する金属や、ダイヤモンドカッターを用いた際には炭素が混入してしまう。例えば、鉄イオンが混在している場合には、シリコンと反応してSi−Feの結合を形成してしまうように、金属イオンとなって加工屑の表面に化学的に付着するため、両者の分離が困難となってしまう。このように付着する金属としては、例えばFe、Cu、Ni、Zn、Cr、Al、Na、Ca、K等が考えられる。また、炭素源が混入している場合にも、Si−Cの結合が生じるような化学反応が生じて汚染されてしまう。
そこで、本実施形態では、加工屑を含有するシリコンスラッジ溶液に水素ガスを添加して溶液を還元性雰囲気に制御することで、シリコンが金属や炭素と反応する前に、シリコンと水素とを反応させて保護することでシリコンの汚染を抑制しようとするものである。
水素ガス添加によるシリコンスラッジ溶液の酸化還元電位の制御は、加工直後からすぐ行うことが好ましく、後段の分離(S5)操作の直前までの間に行うことが好ましい。これは、加工直後から不純物の金属や炭素が混入する可能性があるため、シリコンとこれら不純物との接触の機会を可能な限り低減し、シリコンと水素を先に反応させてSi−H結合を形成させ、金属による汚染を抑制できるからである。また、このようにシリコン表面に水素終端を形成することで、それ以後は不純物との反応による汚染を防止することができる。なお、水素以外の還元性を有し、溶液の酸化還元電位を変化させる気体を用いた場合には、シリコンスラッジ中の雰囲気を還元性に保つことができ、シリコン表面のケイ素が不純物金属の電子を引き寄せて金属結合しようとする力を抑制することができ、やはり金属による汚染を抑制することができる。
したがって、水素ガスを添加して溶液の酸化還元電位を制御し、なおかつシリコン切削屑表面が水素終端で保護された後はガスの供給を止めてもよい。すなわち、水素の供給は、シリコンの回収(S2)のステップだけでもいいし、後段の固形分分離の工程(S4)まで行っても良いが、沈殿操作(S5)の直前まで必ず行わなければいけないわけではない。
このとき供給する水素は、切削屑を含む溶液の水素の濃度が0.1ppm以上になるよう供給すればよい。中でも水素含有濃度が0.5〜2.0ppmの範囲の濃度であることが好ましい。
また、水素に限らず純水に溶解した時に酸化還元電位を低くするような還元性を有する気体(ガス)が添加されたガス添加純水を用いたとき、その効果を高めるために溶液のゼータ電位を制御することや、pH調整などを行う上で、炭酸ガス、アンモニアガス、ハロゲン化水素ガス、硝酸ガスなどを添加してもよい。このとき、ゼータ電位は−60mV〜+60mV、pHは4〜12とすることが好ましい。
次に、固形分分離(S4)は、上記で回収したシリコンスラッジを水溶性加工液と共に容器に回収し、加工屑であるシリコンをシリコン酸化物とすることで粉末状にして沈殿させて回収を行うものである。
この工程をより詳しく説明すると、図2に示したように、まずは上記したように酸化によりシリコンを沈殿させ(S4−1)、この沈殿した酸化シリコンは通過するが、粗大な固形分を除去できるろ過膜等によりろ過して(S4−2)、透過して得られたシリコンスラッジを遠心分離し(S4−3)、加工液を除去することで固形分を分離する。
沈殿(S4−1)は、シリコンスラッジに空気を送り込んでシリコンと空気中の酸素とを気液接触させることでシリコンの加工屑表面を酸化させるものである。この酸化によりシリコン酸化物の薄膜を表面に形成させて、分散したままの微細なシリコンを増粒化させ、増粒化した加工屑を沈殿させて回収を行う。空気の導入は散気管等により行うことができる。
また、ろ過(S4−2)は、加工液のろ過が、5μm以上の不純物を捕集できるフィルターを用いて行えばよく、このようなフィルターを用いると、シリコンスラッジ中のシリコン酸化物の平均粒径は約1μm程度であるのに対してワイヤーソーから脱落する砥粒(脱落砥粒)や粗大な不純物金属の平均粒径は数十μmであるので、シリコンスラッジに混入した不純物をろ過によって容易に取り除くことができる。また、脱落砥粒や不純物金属がごく微量の場合には、ろ過工程は省略しても問題ない。
続いて、遠心分離(S4−3)は、砥粒等の粗大不純物が除去された固形分を遠心分離して加工液とシリコン酸化物の粉末に分離するものであり、従来公知の方法により行うことができる。このとき、本工程の前にワイヤーソーの磨耗によって混入した鉄などの不純物を除去するための酸浸漬工程を必要に応じて行うこともできる。
そして、分離されたシリコン酸化物の粉末は、洗浄・乾燥(S5)させることで、含有する加工液が除去される。分離されたシリコン粉末を有機溶剤で洗浄して水溶性加工液を除去してから乾燥させ、シリコン酸化物の粉末を得る。
次に、溶融させる(S6)ことで、酸化シリコンをシリコンとし、これを冷却固化させる(S7)ことでシリコンインゴットの原料となるシリコンを得ることができる。
ここで、溶融は、酸化シリコンの粉末を石英坩堝に入れ、真空を維持した雰囲気のもとで加熱・溶融して還元させ、シリコンとし、その後、溶融したシリコンを型に流し、徐冷して一方向凝固させることによりシリコンインゴットとする。最後に、得られたシリコンインゴットから不純物が凝集した上部を切断し、電子部品用シリコンインゴットとして再生される。
なお、ここで洗浄・乾燥したシリコン酸化物の粉末を溶融する工程は、シリコン酸化物の粉末に新しい金属シリコンインゴットを添加して行ってもよい。このようにすれば、再利用の目的で得られたシリコン酸化物の粉末が少量であっても、電子部品用のシリコン原料として用いることができる。このようにすることで、現在まで工業的に実用化されていなかったシリコンの再利用をより可能なものとすることができる。なお、シリコン酸化物の粉末と新しい金属シリコンインゴットとを混合する場合、その混合比率は1:2〜1:3程度が望ましい。
また、この発明による電子部品用シリコンの製造方法は、溶融する工程は真空を維持した雰囲気のもとで行ってもよい。また、上記真空を維持した雰囲気の代わりに、不活性ガスを充填した雰囲気のもとで行ってもよい。不活性ガスを充填した雰囲気としては、例えば、低圧のArガス雰囲気などを挙げることができる。これらの雰囲気中で溶融させることにより、溶融シリコン中の残留酸素を除去することができる。なお、溶融工程において、溶解炉内の温度は約1500℃程度が望ましく、残留酸素の除去を確実に行うためには、約1500℃で1時間以上保持することがさらに望ましい。
太陽電池として再利用される場合は、結晶系シリコン太陽電池又は非結晶系(アモルファモスシリコン)太陽電池として用いられる。結晶系シリコン太陽電池とは、単結晶シリコン又は多結晶シリコン(ポリシリコン)基板(板状体)を用いた太陽電池である。また、アモルファモスシリコン太陽電池は、ガラス等の基板の表面に薄膜状のアモルファモスシリコンを成長させる太陽電池が主流であるが、アモルファス基板として太陽電池を形成しても良い。
なお、以上はシリコンインゴットの加工に適用する場合について説明したが、シリコンウェーハを研磨もしくはダイシングしてシリコンチップを製造する際にも、同様にシリコンの加工屑が生じるため、同様に適用することができる。また、バックグライディングやCMP研磨にも適用できる。
すなわち、本発明は、加工によって生じたシリコンのベア表面を不純物による汚染が生じないようにする形態であればどのような場合にも応用でき、シリコンスラッジ又はシリコンスラッジ含有排液に、水素ガスを直接供給したり、水素ガスを純水に溶解した水素水を供給したりすることができる。また、水素水を供給する場合には、インゴット加工面、ウェーハ加工面等に直接供給しながら加工、回収の操作を行うこともでき、さらに、加工工程において、水素水を満たした槽を用意し、この中でインゴットやウェーハの加工を行うような場合も適用することができる。これは、他の還元性の気体や、次の第2の実施形態で説明する場合にも適用することができる。
(第2の実施形態)
この実施形態は、第1の実施形態と基本的な操作は共通であるため、その相違点についてのみ説明する。なお、ここでは、水素の供給(S−3)は実施してもしなくても良い。
本実施形態では、シリコンスラッジとして回収した加工屑を酸化して酸化シリコンの粉末として沈殿させる(S4−1)際に、オゾン、ハロゲン類、窒素酸化物、など水に溶解することで酸化還元電位を純水が持つ酸化還元電位(約+200mV)よりも高くするガスの供給を行うものであり、好ましくはオゾンガスを用いるものである。この操作により、シリコンスラッジ溶液は超純水よりも酸化力が高い水溶液になり、効率良く固液分離を行うことができる。以下、オゾンを用いた場合を例に説明する。
この沈殿の操作は、上記第1の実施形態でも説明したように、エアレーションにより行われるため、シリコンスラッジ中に空気を供給してシリコンを酸化するものである。ところが、空気を供給するとシリコンスラッジ中に存在する切削油や界面活性剤などの有機物を養分として好気性の微生物が繁殖し、この微生物を炭素源としてシリコンが汚染される場合がある。
そこで、この実施形態では、加工屑が混入したシリコンスラッジにオゾンを供給することで、微生物の繁殖を抑え、さらには滅菌させることができる。また、シリコンが炭素により汚染される前に、酸素と反応させてシリコン酸化物へと表面を改質し、金属化合物分子よりも比較的大きな微粒子などの物質の付着によるシリコンの汚染を抑制するものである。
オゾンの供給は、後段の沈殿(S5)操作において行うことが好ましい。この沈殿(S5)操作においては、空気によるシリコンの酸化によりシリコン酸化物(SiOx)を研磨屑表面に生成させて沈殿させる工程であるが、このとき、シリコンスラッジに空気を送り込んで酸化させることで、好気条件となるため、細菌や微生物等の好気性生物が繁殖する可能性が高くなる。微生物が繁殖してしまうと、これが炭素源となってシリコンを汚染する可能性が考えられるが、オゾンを供給することで、オゾンの殺菌効果により、菌類の繁殖が抑えられることに加え、シリコンスラッジ中の有機物を無機炭素にまで分解し、さらには、オゾンの酸化作用によりシリコンを炭素汚染よりも早く酸化させてシリコンの汚染を防止することもできる。
このときの沈殿操作では、オゾンの供給を切削屑溶液に直接溶解方式で添加しても良いが、オゾンは強い酸化作用を有しているためオゾンを予め純水に溶解させたオゾン水を添加してもよい。オゾン水を添加して処理できる場合は、直接溶解方式で添加した場合に発生する余剰ガスの処理が必要なくなるので好ましい。ここで用いる純水としては、比抵抗0.1MΩ・cm以上のものであることが好ましい。
このとき供給するオゾンは、切削屑溶液あるいはオゾン水のオゾンの濃度が1ppm以上のものを言う。中でも5〜60ppmの範囲の濃度であることが好ましい。
また、オゾン水に限らず、純水に溶解した時に酸化還元電位を高くするような酸化性を有する気体(ガス)が添加された気体溶解水の効果を高めるために溶液のゼータ電位を制御することや、pH調整などを行う上で、炭酸ガス、アンモニアガス、ハロゲン化水素ガス、硝酸ガスなどを添加してもよい。このとき、ゼータ電位はシリコン削り屑の凝集、増粒効果を高める程度であればよく具体的には−2mV〜+2mV、導電性は 0.1MΩ・cm〜15MΩ・cm、pHは4〜8とすることが好ましい。
なお、この実施形態においては、第1の実施形態における還元性ガス(水素)の供給(S3)は行っても行わなくてもどちらでも良いが、より汚染を防止した純度の高いシリコンを回収することができることから、純水に溶解した時に酸化還元電位を低くするような還元性を有するガス又はそのガスが溶解した気体溶解水の添加も併用して行ったほうが良い。
また、ここではオゾンの供給を沈殿操作で行う場合を説明したが、加工直後のシリコンスラッジの回収操作を開始してすぐに行うこともできる。これは、水素の供給と同様に、加工直後からシリコンと不純物との接触の機会を可能な限り低減し、シリコンとオゾンとを先に反応させてSi−O結合を形成し、それ以後は不純物との反応による汚染を防止することができるためである。
なお、オゾンの供給は、通常、水素の供給と同時に行うことなく、水素とオゾンの両方を供給する場合には、いずれか一方の供給が終了してから他方の供給を行うことが好ましい。最も好ましい形態としては、シリコンスラッジを回収するスラッジ回収工程では水素を供給し、回収したシリコンスラッジから固形分分離を行う際、特に沈殿工程でオゾンを供給してシリコンの再生を行う方法が挙げられる。この水素とオゾンの関係は、還元性を有するガスが添加された工程と酸化性を有するガスが添加されたガス添加工程との関係にそのまま適用することができる。
また、水素によるシリコン表面の水素終端を促進させるために、水素が添加された溶液を使用する槽に超音波発振板を設けて超音波を印加することで、水素終端がより促進される。
また、シリコンスラッジと溶液とのゼータ電位を制御することや、純水の導電性を確保するために炭酸ガス、アンモニアガス、ハロゲン化水素ガス、硝酸ガスなどを水素添加工程又はオゾン添加工程に添加してもよい。このとき、ゼータ電位は−60mV〜+60mV、導電性は 0.1MΩ・cm〜15MΩ・cm、pHは4〜12とすることが好ましい。
実施形態1,2において、切削屑溶液又は純水に水素ガスを添加する方法としては、原料となる水素ガスを水素ボンベから供給したり、電気分解装置から発生する水素ガスを添加したりする方法があるが、水素ガス供給を単独で行う場合は水素ガスボンベから供給すればよい。一方、オゾンガス供給を単独で行う場合はオゾンガスボンベ、放電式オゾン発生器、UV式オゾン発生器などオゾンガス単独で供給できる装置を用いてオゾンガスを供給すればよい。
また、水素水とオゾン水を併用する場合は、水の電気分解装置を用いることで陰極又は陽極から水素ガスとオゾンガスが同時に発生するため、それぞれのガスを別々に研磨屑溶液あるいは純水に添加する方法を適用できる。もちろん、上記した水素ガス単独、オゾンガス単独で供給する方法を組み合わせて併用するようにすることもでき、生産現場の実情に合わせてこれらガスの供給形態を選択すればよい。
なお、本実施形態では、例えば、水素ガス及びオゾンガスの供給は電気分解装置(野村マイクロ・サイエンス社製、商品名:ノムレクソン)を用いて実施することができる。また、純水にこれらガスの添加を行う場合は、ガス溶解膜、エジェクター、アスピレーター、マイクロバブラー、バブリング、ガス吸収塔などを用いて行うことができる。本実施形態では、例えば、ガス溶解膜(ゴアッテックス社製、商品名:ディゾルブオゾネーションモジュール)を用いて実施することができる。
なお、いずれの実施形態においても、水分を10%以上含有するシリコンスラッジを処理する工程にガスを直接添加する場合において、切削屑溶液にガス添加純水を供給する方法も採用できる。
この方法によれば、バブリングやマイクロバブラー方式の場合では水に溶け残ったガスは溶液外へ排出されるため、爆発や発火、人体への被害に影響を与えるために十分な排気設備が必要となることに対し、水溶液から揮発する少量のガス排気設備があれば十分である。実施形態に合わせてバブリングなどのガス直接添加やガス溶解純水の添加の方法を採用することができる。尚、ガスを溶解すべき純水の温度は加工工程の処理温度が一般的に15℃〜30℃である為、これに準ずるが、必要に応じてガスの溶解度を高める為に温度を例えば1〜14℃としたり、溶解度を高める為にガスや排水の圧力を0.05〜1.0MPaに高めることもできる。
なお、切削屑あるいは純水の水素イオン濃度を変化させる操作においては、上記ガス添加方法に加えて、塩酸、硝酸、アンモニア水溶液などの液体状のものも用いることができる。
以上説明したように、インゴット加工から発生する加工屑は、金属粉や金属イオンを除けば、実質そのまま溶かして再度インゴットに利用できる。近年、温暖化防止のために益々電力の削減がうたわれる中、シリコンの原石から高純度のシリコンにするまでには、膨大なエネルギーを使っている。そのため、本発明のように汚染を防止しながら効率的にシリコンを回収、再生すれば、このシリコンの原石から高純度のシリコンを得るよりも少ないエネルギーでシリコンを得て再利用できるため、使用エネルギーの削減が可能となる。
(第3の実施形態)
上記第1及び第2の実施形態では、加工によって生じたシリコンのベア表面を不純物による汚染が生じないようにして、回収するシリコンの汚染を抑制する場合について説明した。そのときに、気体溶解水をインゴット加工面、ウェーハ加工面等に直接供給しながら加工、回収の操作を行うこともでき、さらに、加工工程において、気体溶解水を満たした槽を用意し、この中でインゴットやウェーハの加工を行うような場合も適用することができることを説明している。
このように加工面に気体溶解水を供給する場合には、回収する側のシリコンだけではなく、シリコン製品についての汚染を抑制することもできる。そして、この加工面に供給して安定したシリコン製品を製造する場合には、上記した再生方法に限られることがなく、シリコンを加工する方法を含むものであれば特に限定されずに適用することができる。
このとき、供給する酸化還元電位を変化させる気体としては、水素、オゾン等を用いることができ、既に説明したようにシリコンの不純物金属等による汚染を抑制することができる。ここで、酸化還元電位を変化させる気体に加えて又はその代わりに純水の水素イオン濃度を変化させる気体を純水に溶解して、得られた気体溶解水をシリコンの加工面に供給することで切削屑等がシリコン製品の表面に付着することを防止することもできる。このとき、水素イオン濃度を変化させる気体としては、純水に溶解してイオンに解離することで水素イオン濃度を変化させるものであればよく、例えば、二酸化炭素、アンモニア等が挙げられる。このようにすることで、純水の導電性を向上させ、切削屑等がシリコン製品の表面に付着するのを防止する効果が高い点で好ましいものである。尚、ガスを溶解すべき純水の温度は加工工程の処理温度が一般的に15℃〜30℃である為、これに準ずるが、必要に応じてガスの溶解度を高める為に温度を例えば1〜14℃としたり、溶解度を高める為にガスや純水の圧力を0.05〜1.0MPaに高めることもできる。
以下、本発明について、実施例を参照しながら、さらに詳細に説明する。
(試料の分析)
太陽電池用シリコンインゴットをワイヤーソーでカットしてシリコンウェーハを作成する際に生じたシリコンの加工屑を回収し、含水率が3%になるまで乾燥したサンプル5gを50%フッ酸+10%硝酸に溶解させ、溶解液中の金属量をIPC−MS(パーキンエルマー社製、商品名:DRC−II)にて測定した。その結果を表1に示した。
Figure 0005289833
この結果から、シリコンの削り屑には、シリコンインゴット加工時に混入する微量の金属が含まれていることがわかった。
(実施例1)
上記試料の分析において、シリコンインゴットの切断時に発生した研磨屑粉末5gを、2%フッ酸(HF)溶液200mLに加えて3時間浸漬し、ベアSi表面を析出させた。これを0.5ppm濃度の水素水により10mL/minで30分間洗浄した。なお、このときの水素水のpHは7.2であった。
次いで、水素水で洗浄した削り屑に、水素水を用いてCr、Fe、Niを各100ppmの濃度で含有するように調整した水素水溶液(Cr:硝酸クロム、Fe:硫酸第1鉄、Ni:硝酸ニッケルを使用)を25mL/minの条件で通液して接触させ、その後0.5ppm水素水にて25mL/minで5分間洗浄した。以上の操作は常温、常圧で行った。
上記処理された削り屑を、130℃で10時間乾燥後、SEM−EDX(日本電子データム社製、商品名:JSM−T330)で金属の含有量を測定し、その結果を図4に示した。
(実施例2)
実施例1と同様に水素水を用いる場合において、硝酸ガスを添加して水素水のpHを2に調整した以外は実施例1と同様の操作により削り屑を処理した。
そして、同様の操作により、乾燥後、SEM−EDXで金属の含有量を測定し、その結果を図4に示した。
(比較例1)
ベアSi表面析出させた際に、水素水の代わりに未脱気の純水を用い15mL/minで20分間洗浄し、さらに、水素水の代わりに未脱気の純水を用いてCr、Fe、Niを各100ppmの濃度で含有するように調整した純水溶液を通液し、その後、純水にて25mL/minで5分間洗浄した。すなわち、水素水の代わりに未脱気の純水を用いた以外は、実施例1と同様の操作により削り屑を処理した。
そして、同様の操作により、乾燥後、SEM−EDXで金属の含有量を測定し、その結果を図4に示した。
図4に示したとおり、比較例1においては金属汚染後の研磨屑にはFe、Cu、Znの含有が認められた。これに対して実施例1及び2では、Cu、Znのみ含有が認められた。Cu、Znについては、Ni、Fe、Crをそれぞれ100ppm含む金属溶液で汚染させる以前から既にサンプルに含有されているため、そのまま検出された。金属汚染を受ける前のサンプルにおいて、FeについてはICP−MSの分析結果からは0.39ppmの含有が認められているが、SEM−EDX測定においては検出限界以下のため検出されなかった。比較例1においてはSEM−EDX測定において検出限界以下であったFeが検出されるほどのFeの付着が認められたが、実施例1及び2においてはFeの付着は認められなかった。さらに実施例2においてはもともと含有されていたCuやZnも微量ながら減少した。この結果から水素添加で酸化還元電位を制御したことによる金属付着防止効果と、硝酸添加による金属除去効果を確認することができた。
(実施例3)
太陽電池用シリコンインゴットの削り屑20gにオゾン濃度が35ppmのオゾン水3Lを加え、ガラス瓶内に封入した。これを24時間放置した時の生菌数及びTOC濃度を測定し、その結果を表2に示した。なお、このときのオゾン水のpHは5.6であった。以上の操作は常温、常圧で行った。
(実施例4)
実施例3で使用したオゾン水に、さらにアンモニアガスを添加してpHを11にしたオゾン水を3L用いた以外は実施例3と同様の操作により、24時間放置後の生菌数及びTOC濃度を測定し、その結果を表2に示した。
(実施例5)
実施例3で使用したオゾン水に代えて、純水3Lを用いて10wt%のオゾンガスを5分間バブリングし、バブリングを終えたサンプルをガラス瓶内に封入した。これを24時間放置した時の生菌数およびTOC濃度を測定し、その結果を表2に示した。このときのオゾン水のpHは実施例3と同じ5.6であった。
(比較例2)
オゾン水に代えて、純水を3L用いた以外は実施例3と同様の操作により、24時間放置後の生菌数及びTOC濃度を測定し、その結果を表2に示した。
Figure 0005289833
表2より、比較例2においては処理前と比較して生菌数が増大し、TOCが若干減少した。これは、溶液内に存在した生菌が実験途中でも活動中であり、TOCを若干消費して、菌体数が増加したことが原因と言える。これでは溶液中の炭素量が減少したことにはならず、却って悪影響を及ぼす要因となる。
しかし、実施例3においては生菌数は44%減少し、TOC濃度も81%減少したことから、インゴット切削屑から炭素源を除去することに成功したと言える。さらに、オゾン水にアンモニアガスを添加することで生菌数はさらに減少し、67%の生菌数減少が見られた。
実施例4においては、オゾン水がアルカリ性で多量のラジカルが発生したことによって微生物の細胞膜又は遺伝子などを破壊する効果が高まり、より高い殺菌効果が得られたと考えられる。さらにアルカリ性雰囲気下において微生物が死滅することも殺菌効果を助長している。このとき、純水の水素イオン濃度を変化させる操作においては、アンモニア水溶液などの液体状のものも用いることができる。
実施例5においては、オゾンガスをバブリングしながらシリコンの削り屑を処理したが、バブリング方式でも微生物が48%減少し、TOCも89%減少していた。ガスを添加することと同時に微生物や有機物を分解することができるため、工程が簡略化されるものの、やはりバブリング中に未溶解のオゾンガスが反応容器外に多く排出されたため、十分な換気設備の確保が必要だった。
なお、生菌数は、寒天培地にサンプルを1ml滴下して得られた生菌数をカウントする方法で測定した。TOCは島津製作所社製、商品名:TOC−5000を用いて測定した
以上のように、高純度の塊を大量の電力で形成し、これを機械加工して板状体にする場合、大量の加工屑が発生するが、この加工屑には金属や炭素により汚染され、再利用が困難な場合があった。ところが、本発明により不純物による汚染を抑制することができ、シリコンの再利用を効率的に行うことが可能となった。よって、本発明は、資源を有効利用可能とし、エネルギー消費をも減らすことができる有用なものである。
また、太陽電池用のシリコンとして再生し、石油に頼った発電を減らすことができることから、環境保護の上でも有用な技術である。
本発明の第1の実施形態を示すフローチャートである。 第1の実施形態における沈殿操作を説明するフローチャートである。 本発明の第2の実施形態を示すフローチャートである。 実施例1及び2並びに比較例1における金属汚染の度合いを示したグラフである。

Claims (14)

  1. 電子部品用シリコンのインゴットやウェーハを加工する加工工程と、加工して生じたシリコンスラッジから、シリコンを回収し、シリコンインゴットとして再生する再生工程とを具備する電子部品用シリコンの再生方法において、酸化還元電位を変化させる気体として水素又はオゾンを純水に溶解させた気体溶解水を、インゴット加工面、ウェーハ加工面、シリコンスラッジ又はシリコンスラッジ含有排液に供給することを特徴とする電子部品用シリコンの再生方法。
  2. 電子部品用シリコンのインゴットやウェーハを加工する加工工程と、加工して生じたシリコンスラッジから、シリコンを回収し、シリコンインゴットとして再生する再生工程とを具備する電子部品用シリコンの再生方法において、酸化還元電位を変化させる気体として水素又はオゾンを純水に溶解させた気体溶解水に満たされた槽の中で、前記インゴットやウェーハの加工を行うことを特徴とする電子部品用シリコンの再生方法。
  3. 電子部品用シリコンのインゴットやウェーハを加工する加工工程と、加工して生じたシリコンスラッジから、シリコンを回収し、シリコンインゴットとして再生する再生工程とを具備する電子部品用シリコンの再生方法において、酸化還元電位を変化させる気体として水素又はオゾンをシリコンスラッジ含有排液に供給することを特徴とする電子部品用シリコンの再生方法。
  4. 前記加工工程が、シリコンインゴットをスライスサーやワイヤーソーにて切断する工程、シリコンウェーハをダイサーにて切断する工程又はシリコンウェーハを研磨する工程であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の電子部品用シリコンの再生方法。
  5. 前記酸化還元電位を変化させる気体が溶解している気体溶解水として、気体をバブリング、吸収塔若しくは溶解膜を用いて純水に添加して得られた気体溶解水又は水を電解して気体を発生させて得られた気体溶解水を供給することを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品用シリコンの再生方法。
  6. 前記酸化還元電位を変化させる気体の供給方法として、気体をバブリングや吸収塔、溶解膜を用いて供給することを特徴とする請求項3記載の電子部品用シリコンの再生方法。
  7. 前記酸化還元電位を変化させる気体を溶解させた気体溶解水に、さらに純水の水素イオン濃度を変化させる物質を添加することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の電部品用シリコンの再生方法。
  8. 前記電子部品用シリコンの再生方法が、シリコンを加工する加工工程と、前記加工工程で生じたシリコンスラッジ又はシリコンスラッジ排液を回収するスラッジ回収工程と、前記回収工程で回収されたシリコンを固形分として分離する分離工程と、分離したシリコンを洗浄した後、乾燥する洗浄・乾燥工程と、乾燥させたシリコンを溶融してシリコン溶融物とする溶融工程と、溶融したシリコン溶融物を固化させてシリコンインゴットとする固化工程と、からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の電子部品用シリコンの再生方法。
  9. 前記電子部品用シリコンが太陽電池用シリコンであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の電子部品用シリコンの再生方法。
  10. 電子部品用シリコンのインゴットやウェーハを加工する加工方法において、酸化還元電位を変化させる気体として水素又はオゾンを純水に溶解させた気体溶解水を、インゴット加工面又はウェーハ加工面に供給することを特徴とする電子部品用シリコンの加工方法。
  11. 電子部品用シリコンのインゴットやウェーハを加工する加工方法において、酸化還元電位を変化させる気体として水素又はオゾンを純水に溶解させた気体溶解水に満たされた槽の中で、前記インゴットやウェーハの加工を行うことを特徴とする電子部品用シリコンの加工方法。
  12. 前記加工方法が、シリコンインゴットをスライスサーやワイヤーソーにて切断する工程、シリコンウェーハをダイサーにて切断する工程又はシリコンウェーハを研磨する工程により行われることを特徴とする請求項10又は11記載の電子部品用シリコンの加工方法。
  13. 前記酸化還元電位を変化させる気体が溶解している気体溶解水として、気体をバブリング、吸収塔若しくは溶解膜を用いて純水に添加して得られた気体溶解水又は水を電解して気体を発生させて得られた気体溶解水を供給することを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項記載の電子部品用シリコンの加工方法。
  14. 前記酸化還元電位を変化させる気体を溶解させた気体溶解水に、さらに純水の水素イオン濃度を変化させる物質を添加することを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項記載の電部品用シリコンの加工方法。
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