JP2010173890A - シリコンスラッジ回収方法およびシリコン加工装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のシリコンスラッジ回収方法は、シリコン塊を機械加工するときに生じるシリコンスラッジからシリコン塊を再生するためのシリコンスラッジ回収方法であって、被加工シリコン塊の電気抵抗率または不純物の濃度を予め測定する測定工程と、所望の測定値を有するシリコン塊を選別する工程と、選別されたシリコン塊より生じるシリコンスラッジを回収する回収工程とを備える。
【選択図】図1
Description
また、特に近年、太陽電池の生産量は増加の一途をたどっており、原料シリコンの需要も急激な伸びが見られる。このため太陽電池用シリコンの不足が顕在化している。
そこで従来、上記の切断又は研磨といったシリコンウェハの製造時に発生する廃液からシリコンを回収する方法が例えば特許文献1、特許文献2などで提案されてきた。
また、シリコンの抵抗率と、ホウ素及びリンの濃度の間には、非特許文献1に開示されているような相関関係がある。なお、図4は、非特許文献1で開示されたシリコンの抵抗率と、ホウ素及びリンの濃度との関係を示したグラフである。図4を見ると、ホウ素及びリンの濃度が大きくなるとシリコンの抵抗率は、小さくなる。シリコン太陽電池を製造する際、ホウ素、リンが適量入ることは必要であるが、過剰に入ることにより、太陽電池の出力が低下する、出力劣化が発生する等の不具合が発生する。従って、ホウ素及びリンが過剰に含まれることが回収したシリコンの再利用を難しくしている。
また、リンの除去方法は一般に、溶融シリコンを高真空中で保持し、シリコンとリンの蒸気圧の差を利用してリンを蒸発させる方法が用いられる。
(a)粗製ケイ素を、ケイ酸カルシウムと1544℃以上の温度で溶融混合し、ケイ素中のホウ素をスラグ中に移行させる、
(b)工程(a)で得られた混合液を不活性ガス雰囲気中で静置し、下層のスラグ層と上層の溶融ケイ素層とに分離した後、温度を1410〜1544℃として、スラグを凝固させる、
という工程からなるホウ素除去方法について公開されている。
また、特許文献5では、真空ポンプを具備した減圧容器内に、シリコンを収容するるつぼと、るつぼを加熱する加熱装置を少なくとも設置してなるシリコンの脱リン装置について公開されている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低コストでホウ素及びリンの濃度が小さいシリコンを回収するためのシリコンスラッジ回収方法及び本シリコンスラッジ回収方法に好ましく使用できるシリコン加工装置を提供する。
また、本発明は、本シリコンスラッジ回収方法により得られたシリコンスラッジを用いる不純物除去方法および太陽電池用多結晶シリコン製造方法も提供する。
そしてさらなる研究の結果、本発明者らは、(1)のオイル、切断刃などから混入したホウ素およびリンは、得られたシリコンスラッジを熱処理、蒸留、酸洗浄、アルカリ洗浄、有機洗浄(有機溶媒や有機溶媒を原料とする溶剤による洗浄)、水洗のいずれかで処理することにより、除去することが可能であることを見出した。
なお、図4に示したように、シリコンの抵抗率とホウ素及びリンの濃度の間には、相関関係が有り、シリコンの抵抗率を測定することによりシリコンに含まれるホウ素又はリンの濃度を知ることができる。
シリコン塊は、単結晶または多結晶であり、機械加工することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコンインゴット、シリコンウェハなどである。
現在、それぞれの用途に応じて様々な不純物を持つシリコン塊が、切削、切断、研磨、ウェハスライスなどの機械加工の対象となっている。例えば、太陽電池用シリコン塊の電気抵抗率としては、多結晶のp型0.5Ωcm以上、単結晶のp型0.5Ωcm以上、n型の0.5Ωcmのものが一般的に用いられる。IC用シリコンとしては、フラッシュ用ならば0.01Ωcm程度の低抵抗のもの、ロジック用ならば10Ωcm程度の高抵抗のものというように、用途により低抵抗なものから高抵抗なものまで様々なものが用いられる。
なお、シリコン塊の電気抵抗率は、不純物であるB(ホウ素)、P(リン)の濃度が大きくなるにつれ小さくなる傾向があり、特に太陽電池用や半導体シリコン用に使用されている、金属不純物を概ね1重量ppm以下しか含まない高純度のシリコン塊の抵抗率と、B(ホウ素)、P(リン)の濃度との間には図4のような相関関係がある。
シリコンスラッジは、シリコン塊の機械加工、例えばシリコン塊の円筒研削、切断、裏面研磨、ウェハスライスなどにより生じるシリコン粒子を含む廃液から加工液などの液体成分と分離したものであれば、特に限定されない。また、シリコンスラッジは、シリコン粒子のほかに、例えば、水、オイル及び砥粒を含んでもよく、また、シリコン塊の機械加工に使用した切断刃、ワイヤ、研磨ホイール又は加工装置構造材などより生じた金属含有物を含んでもよい。
また、シリコンスラッジは、シリコン塊の機械加工に使用したオイル、切断刃、ワイヤ、研磨ホイール又は加工装置構造材などより生じたホウ素又はリンの含有物を含んでいてもよい。
図1は、本発明の第1実施形態のシリコン加工装置の概略図である。
第1実施形態のシリコン加工装置は、測定部5、第1加工部6、第1分離部7、第1回収部8及び第2回収部9を備える。
測定部5は、機械加工するシリコン塊1(被加工シリコン塊)の抵抗率あるいはシリコン塊1に含まれるホウ素及びリンの濃度を測定する部分であれば、特に限定されない。測定部5は、機械加工するシリコン塊1を直接測定するものであっても、シリコン塊1の一部を分離して測定するものであってもよい。
測定部5での測定方法は、特に限定されないが、例えば、抵抗率測定のためには四探針の接触測定型の抵抗率測定装置などが適用可能であり、不純物濃度測定にはICP質量分析計が適用可能である。
測定工程では、シリコン塊1の抵抗率またはシリコン塊1に含まれる不純物、例えばホウ素及びリンの濃度を測定する。
選別工程では、測定工程の測定結果に基づき測定工程で測定したシリコン塊から所望の測定値を有するシリコン塊を選別する。
測定工程でシリコン塊1の抵抗率を測定する場合であって、シリコン塊を電気抵抗率で選別する場合、例えば0.1Ωcm以上1Ωcm以下(例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9及び1Ωcmのうちいずれか2つの間の範囲)のいずれか1つの電気抵抗率以上のシリコン塊を選別することができる。また、上記の選別されなかったシリコン塊を上記の要件を満たしたシリコン塊と別に選別することもできる。例えば、抵抗率が0.1Ωcm以上の要件を満たすシリコン塊1と要件を満たさないシリコン塊1とを分類、選別することができる。望ましくは0.5Ωcm以上の要件を満たすシリコン塊1と要件を満たさないシリコン塊1とを分類、選別することができる。抵抗率が大きいものは、シリコン塊に含まれるホウ素およびリンの濃度が小さいからである。特に0.1Ωcm以上のシリコン塊1の機械加工から回収されるシリコンスラッジは、ホウ素及びリンの濃度の影響が少ない用途に利用することができるからである。また、0.5Ωcm以上のシリコン塊の機械加工から回収されるシリコンスラッジは、さらに利用することができる用途が広がるからである。また、これらの機械加工から回収されるシリコンスラッジからリン及びホウ素を除去する工程において低コスト化することができるからである。
なお、本発明において選別とは、測定工程における測定結果に基づきシリコン塊を一定の要件を満たすものと満たさないものに分類することをいい、一定の要件は、1つであってもよく、複数であってもよい。要件が複数の場合、シリコン塊を3つ以上に選別することもできる。要件が複数の場合、電気抵抗率が複数の一定の範囲のシリコン塊に分類することができる。
第1加工部6は、加工液を使用しシリコン塊1を機械加工することができれば特に限定されないが、例えば、研磨装置、研削装置、バンドソー、ワイヤソーなどである。また、第1加工部のシリコン塊1の機械加工では、砥粒を使用することもできる。
第1加工工程において、シリコン塊1は、例えば、水・オイル(例えば鉱物油、グリコール系の水溶性オイルなど)などの加工液、シリコンカーバイト・シリコンナイトライド・ダイヤモンド・ジルコニアなどの砥粒を使用して、切断刃・ワイヤ・研磨ホイール・バンドソーなどにより機械加工することができる。このシリコン塊1の機械加工により、例えば、シリコン塊1が削られることにより生じる加工粉、加工屑であるシリコン粒子、砥粒およびシリコン塊の機械加工に使用した切断刃、ワイヤ、研磨ホイール又は加工装置構造材などより生じた金属含有物(例えば、切断刃の欠損部、スライス用ワイヤの剥離片など)が加工液に混入した廃液2が生じる。
第1分離部7は、第1加工部6から生じるシリコン粒子を含む廃液2をシリコンスラッジ3と加工液とに分離することができるものであれば特に限定されないが、例えば、フィルタープレス装置、ろ過装置、遠心分離機、蒸留装置のうち少なくとも1つまたは2つ以上を組み合わせたものである。
第1回収部8及び第2回収部9は、第1分離部7で分離されたシリコンスラッジを回収できるものであれば、特に限定されない。
また、第1回収工程では、測定工程でホウ素及びリンの濃度を測定した場合、選別工程でホウ素の濃度の要件およびリンの濃度の要件を共に満たすと判断されたシリコン塊1の機械加工により生じた廃液2から分離したシリコンスラッジ3を第1回収部8に回収する。
また、第1回収工程では、測定工程で抵抗率並びにホウ素及びリンの濃度を測定した場合、選別工程で抵抗率の要件ホウ素の濃度の要件およびリンの濃度の要件を共に満たすと判断されたシリコン塊1の機械加工により生じた廃液2から分離したシリコンスラッジ3を第1回収部8に回収することができる。
また、第2回収工程では、測定工程でホウ素及びリンの濃度を測定した場合、選別工程でホウ素の濃度の要件又はリンの濃度の要件を満たさないと判断されたシリコン塊1の機械加工により生じた廃液2から分離したシリコンスラッジ3を第2回収部9に回収する。
また、第2回収工程では、測定工程で抵抗率並びにホウ素及びリンの濃度を測定した場合、選別工程で抵抗率の要件、ホウ素の濃度の要件およびリンの濃度の要件のうち少なくとも1つを満たさないと判断されたシリコン塊1の機械加工により生じた廃液2から分離したシリコンスラッジ3を第2回収部9に回収することができる。
また、第2回収部9に回収されたシリコンスラッジ3は、産業廃棄物として適正に処理を行うか、又は別の用途として利用することができる。
なお、第1実施形態では、第1回収部と第2回収部に回収する実施形態を例示しているが、選別工程で複数の要件で選別した場合には、さらに第3回収部、第4回収部など複数の回収部にそれぞれ選別されたシリコン塊から生じたシリコンスラッジを回収することもできる。
図2は、第2実施形態のシリコン加工装置の概略図である。
第2実施形態のシリコン加工装置は、測定部5、第1加工部6、第2加工部11、第1分離部7、第2分離部12、第1回収部8及び第2回収部9を備える。
また、第2実施形態のシリコンスラッジ回収方法は、測定工程、選別工程、測定工程の測定結果が要件を満たすシリコン塊を機械加工する第1加工工程、測定工程の測定結果が要件を満たさないシリコン塊を機械加工する第2加工工程、第1分離工程、第2分離工程、第1回収工程及び第2回収工程を備える。
第2実施形態の測定工程および測定部は、「3−1」の記載と同様である。
第2実施形態の選別工程は、「3−2」の記載と同様である。
第2実施形態と第1実施形態の第1加工工程および第1加工部は類似しており、「3−3」の記載は、以下の記載に矛盾しない限り第2実施形態の第1加工工程および第1加工部にも当てはまる。
また、第1加工工程は、測定工程でホウ素及びリンの濃度を測定した場合、選別工程でホウ素の濃度の要件およびリンの濃度の要件を共に満たすと判断されたシリコン塊1について加工液を使用し第1加工部で機械加工する。
また、第1加工工程は、測定工程で抵抗率並びにホウ素及びリンの濃度を測定した場合、選別工程で抵抗率の要件、ホウ素の濃度の要件およびリンの濃度の要件を共に満たすと判断されたシリコン塊1について加工液を使用し第1加工部で機械加工する。
第2加工部11は、加工液を使用しシリコン塊1を機械加工することができれば特に限定されないが、例えば、研磨装置、研削装置、バンドソー、ワイヤソーなどである。
また、第2加工工程は、測定工程でホウ素及びリンの濃度を測定した場合、選別工程でホウ素の濃度の要件またはリンの濃度の要件を満たさないと判断されたシリコン塊1について加工液を使用し第2加工部で機械加工する。
第2加工工程において、シリコン塊1は、例えば、水・オイルなどの加工液、シリコンカーバイト・シリコンナイトライド・ダイヤモンドなどの砥粒を使用して、切断刃・ワイヤ・研磨ホイールなどにより機械加工される。このシリコン塊の機械加工により、例えば、シリコン塊が削られることにより生じる加工粉、加工屑であるシリコン粒子、砥粒およびシリコン塊の機械加工に使用した切断刃、ワイヤ、研磨ホイール又は加工装置構造材より生じた金属含有物などが加工液に混入した廃液が生じる。
なお、第2実施形態では、第1加工部と第2加工部での加工を例示しているが、選別工程での選別する要件が複数ある場合には、さらに第3加工部、第4加工部など複数の加工部でそれぞれ選別されたシリコン塊を加工してもよい。
第1分離部7および第2分離部12は、それぞれ第1加工部6および第2加工部11から生じるシリコン粒子を含む廃液2をシリコンスラッジ3と加工液とに分離することができるものであれば特に限定されないが、例えば、フィルタープレス装置、ろ過装置、遠心分離機、蒸留装置のうち少なくとも1つまたは2つ以上を組み合わせたものである。
第1回収部8及び第2回収部9は、それぞれ第1分離部7及び第2分離部12で分離されたシリコンスラッジ3を回収できるものであれば、特に限定されない。
本実施形態の不純物除去方法は、測定工程での測定結果に基づき選別工程において選別された所望のシリコン塊から生じた前記シリコン粒子を含む前記シリコンスラッジを熱処理、蒸留、酸溶液洗浄、アルカリ溶液洗浄、有機溶剤洗浄および水洗のうち少なくとも1つで処理することにより加工液あるいは前記機械加工で生じた金属含有物を除去する。
この不純物除去方法によって鉄粉やオイルに含まれるB、Pに汚染されていないシリコン粒子を含む固形分を得ることができる。
(1)100〜400℃程度の加熱を行い、オイル、水分などの液分を除去する。
(2)200℃、10Torrの雰囲気下で真空蒸留を行い、オイル、水分などの液分を除去する。
(3)塩酸、硫酸、フッ酸、クエン酸などの酸溶液を用いて、金属不純物、オイル、汚れを除去する。例えば、塩酸とシリコンスラッジを3:1で混合して金属を溶解させる。その後、フィルタープレス、遠心分離機でシリコンスラッジを回収する。
(4)希釈した苛性ソーダ等のアルカリ溶液を用いて、金属不純物、オイル、汚れを除去する。例えば、pH9程度となるように水中に苛性ソーダを微量溶解し、その後にシリコンスラッジを3:1で混合して汚れを除去する。その後、フィルタープレス、遠心分離機でシリコンスラッジを回収する。
(5)イソプロピルアルコール、アセトンなどの有機溶剤で洗浄し、オイル等の有機成分を除去する。例えば、イソプロピルアルコールとシリコンスラッジを3:1で混合して、有機成分を除去する。その後、フィルタープレス、遠心分離機でシリコンスラッジを回収する。
(6)純水、イオン交換水などを用いて汚れを除去する。例えば、純水とシリコンスラッジを10:1で混合して超音波を印加する。その後、フィルタープレス、遠心分離機でシリコンスラッジを回収する。
本実施形態の太陽電池用多結晶シリコン製造方法は、本発明の不純物除去方法により得られた前記シリコン粒子を含む固形分を融解し、その後凝固させる。
例えば、シリコン粒子を含む固形分を下記のように融解し、その後凝固させることにより太陽電池用多結晶シリコンを製造することができる。
(2)シリコンの融点以上の温度でシリコン粒子を含む固形分を融解した後、一方向凝固を行う。例えば、坩堝内にこの固形分を投入し、雰囲気溶融炉でシリコンの融点以上、例えば1600℃の温度をかけて融解させた後、坩堝を引き下げて下面から凝固させることにより、不純物を偏析させる。
(3)シリコンの融点以上の温度でシリコンスラッジを真空融解する。例えば、坩堝内にシリコンスラッジを投入し、雰囲気溶融炉でシリコンの融点以上、例えば1600℃の温度をかけて融解させた後、真空融解、例えば1Pa以下で処理することにより、表面酸化膜(SiOx)やリンなどの蒸気圧の低い不純物を除去する。
(4)シリコンの融点以上の温度でシリコンスラッジを融解後、固化して洗浄を行う。例えば、坩堝内にシリコンスラッジを投入し、雰囲気溶融炉でシリコンの融点以上、例えば1600℃の温度をかけることにより、シリコンスラッジを融解する。融解後、冷却することによりシリコンを凝固させ、シリコン塊を得る。その後、表面酸化膜(SiOx)をフッ酸、苛性ソーダなどを用いて洗浄する。洗浄後のシリコン塊を再融解し、真空融解および/または一方向凝固を行い、冷却し、シリコン塊を得る。洗浄を行うことにより、上記2、3の方法と比較して、融解時のSiOxの発生が抑制されるため、一方向凝固を行った場合には偏析の効果が十分に得られ、真空融解を行った場合には真空到達度が高くなる、という利点がある。
7−1.第1シリコンスラッジ回収実験
ある半導体シリコン研磨工場から回収したシリコンスラッジの不純物濃度の測定を行った。この結果を表1に示す。この半導体シリコン研磨工場の研磨装置は研磨液に水を使用しており、砥粒、鉄粉、オイル等の不純物をほとんど含まないシリコンスラッジが回収できるものであった。
表1より、この半導体シリコン研磨工場より回収したシリコンスラッジの不純物濃度はホウ素が20重量ppmと非常に高いことがわかった。これは、0.01Ωcm程度の低抵抗率のシリコンから10Ωcm程度の高抵抗率のシリコンの機械加工から発生した様々なシリコンスラッジが混在し、平均された結果、ホウ素濃度が高くなったと考えられる。
したがって、このシリコンスラッジに対して酸などによる洗浄を行い、融解してシリコン塊を得ても、そのままでは太陽電池用シリコンとして使用することは困難であった。
表2より、このようにして得たシリコンスラッジの不純物濃度はホウ素、リンとも低いことがわかった。
したがって、このようなシリコンスラッジを融解凝固してシリコン塊を得れば、太陽電池用シリコンとして比較的容易に使用できる(ただし、シリコンスラッジは融解前に酸などによって洗浄することが好ましい)。
次に、ある太陽電池用シリコンウェハのスライス工場において、スライスするシリコン塊の抵抗率を制限したシリコンスラッジを回収する実験を行った。
すなわち、シリコン塊の機械加工前にシリコン塊の抵抗率の測定を行い、この測定結果に基づき機械加工するシリコン塊の抵抗率を0.5Ωcm以上10Ωcm以下と規定した。このシリコン塊を機械加工することにより得られたシリコンスラッジのみを回収した。
なお、このスライス工場は、加工液としてプロピレングリコールを主成分とした水溶性オイルを使用したマルチワイヤソー装置でウェハをスライスしている。
この結果を表3に示す。
そこで、上記スライス工場から回収したシリコンスラッジを調べたところ、シリコン以外に、砥粒(シリコンカーバイト)、鉄粉(スライス用ワイヤの剥離片)、オイル(鉱物油、グリコール系の水溶性オイル)が含まれていた。
これら、シリコン以外の混入物における不純物濃度を測定した結果を表4に示す。砥粒(シリコンカーバイト、シリコンナイトライド、ダイヤモンド)にはB、Pが含まれないが、鉄粉、オイルにはB、Pが含まれることがわかった。
7−3−1.第3シリコンスラッジ回収実験
次に、シリコンウェハを測定部で抵抗率の測定後、測定部での測定した抵抗率によりシリコンウェハを分類し、それを異なる加工部で機械加工を行い、それぞれの加工部からシリコンスラッジを回収する実験を行った。
図3は、効果実証実験におけるシリコン加工装置、洗浄装置および雰囲気溶融炉の概略図である。
測定部5の測定結果に基づき、p型の0.5Ωcm以上、または、n型0.5Ωcm以上の抵抗率を有するシリコン塊1は第1加工部6を用いて研磨を行った。シリコン塊1の研磨を行った際に発生した廃液2は第1分離部7である第1フィルタープレスを用いてシリコンスラッジ3と加工液に分離され、シリコンスラッジ3を第1回収部8に回収した。
次に、第1回収部8に回収したシリコンスラッジ3を、洗浄装置16で洗浄により不純物の除去を行った。洗浄条件としては、市販の塩酸(35重量%)とシリコンスラッジ3を3:1の重量比で混合し、攪拌や超音波を用いて2時間分散する方法で行った。
その後、洗浄水のpHが5以上になるまで水洗を行い、乾燥機を用いて水分を除去した。
次に、不純物除去実験により得られたシリコン粒子を含む固形分から太陽電池用多結晶シリコンを製造する実験を行った。
まず、不純物除去実験により得られたシリコン粒子を含む固形分を雰囲気溶融炉19内のカーボン坩堝17に投入した。カーボン坩堝の内寸はΦ400mm、高さ300mmとした。
溶湯中に固形分を追装し、カーボン坩堝17を満タンにした。カーボン坩堝17がシリコン溶湯で満タンになった後、10mm/hでカーボン坩堝17を降下させ、カーボン坩堝17の下面からシリコンを徐々に冷却して固化させた。固化が完了した後に、カーボン坩堝17を分解してシリコン塊18を取り出した。取り出したシリコンはΦ400mm、高さ280mmであった。
取り出したシリコン塊の最下面からそれぞれの高さの部分のシリコン塊の抵抗率、不純物濃度を表7に示す。
また、最上面(表面)に近いほど、不純物濃度が高くなっていくことがわかった。これは、B、P、Fe、Cの偏析に起因するものと考えられる。
また、高さ10mmから270mmの範囲では、B濃度は0.2重量ppm以下、P濃度は0.2重量ppm以下、Fe濃度は0.1重量ppm以下、C濃度は10重量ppm以下となることがわかった。この範囲のシリコン塊は、ポリシリコン(後述)など純度の高いシリコンと混合する必要は無く、使用率100%で太陽電池用シリコンとして使用可能であると考えられる。
このようなシリコン塊を270kg製造し、一方向凝固により太陽電池用の多結晶シリコンインゴットとした。これから太陽電池用シリコンウェハを作成し、太陽電池を作製した。このときの出力特性を表8に示す。このように、比較的高出力でばらつきも小さい太陽電池を得ることができた。
次に、第1加工部と第2加工部で機械加工するシリコン塊の分類要件を変更して第1シリコン回収実験と同様の回収工程を行った。具体的には分類要件を0.1Ωcmとした。
次に、測定部5の測定結果に基づき、p型の0.1Ωcm以上、または、n型0.1Ωcm以上の抵抗率を有するシリコン塊1は第1加工部6を用いて研磨を行った。シリコン塊1の研磨を行った際に発生した廃液2は第1分離部7である第1フィルタープレスを用いてシリコンスラッジ3と加工液に分離され、シリコンスラッジ3を第1回収部8に回収した。
取り出したシリコン塊の最下面からそれぞれの高さの部分のシリコン塊の抵抗率、不純物濃度を表9に示す。
この範囲のシリコン塊を100%使用した太陽電池においては短絡電流が低い、光劣化による出力低下が大きいなどの問題があるが、ポリシリコン(後述)のような高純度シリコンに対して混合することにより使用可能である。
ここで言うポリシリコンとは、シーメンス法で製造された高純度シリコンであり、各種不純物濃度は総計で0.01〜10ppbとなっている。したがって、ホウ素、リンの不純物濃度はこれ以上となることはない。
すなわち、本発明により得られるシリコン塊とポリシリコンとを用い、混合後のBの濃度が0.2重量ppm以下、P濃度が0.2重量ppm以下となるように混合すればよい。
また、前記ではポリシリコンとしたが、B、P濃度が低いものであれば、るつぼ残、単結晶のトップテールなどの端材を用い、これらと本実験により得られるシリコン塊を混合してもよい。
表10を見ると比較的高出力でばらつきも小さい太陽電池を得ることがわかった。
Claims (9)
- シリコン塊を機械加工するときに生じるシリコンスラッジからシリコン塊を再生するためのシリコンスラッジ回収方法であって、
被加工シリコン塊の電気抵抗率または不純物の濃度を予め測定する測定工程と、
所望の測定値を有するシリコン塊を選別する工程と、
選別されたシリコン塊より生じるシリコンスラッジを回収する回収工程とを備えるシリコンスラッジ回収方法。 - 前記所望の測定値を有するシリコン塊は、0.1Ωcm以上の電気抵抗率を有する請求項1に記載の方法。
- 前記所望の測定値を有するシリコン塊は、0.5Ωcm以上の電気抵抗率を有する請求項1に記載の方法。
- 前記不純物は、ホウ素およびリンであり、
前記所望の測定値を有するシリコン塊は、ホウ素の濃度が1重量ppm以下でありかつリンの濃度が1重量ppm以下である請求項1に記載の方法。 - 前記不純物は、ホウ素およびリンであり、
前記所望の測定値を有するシリコン塊は、ホウ素の濃度が0.2重量ppm以下でありかつリンの濃度が0.2重量ppm以下である請求項1に記載の方法。 - 請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法により回収した前記シリコンスラッジを熱処理、蒸留、酸溶液洗浄、アルカリ溶液洗浄、有機溶剤洗浄および水洗のうち少なくとも1つで処理することにより前記機械加工で生じた金属含有物を除去する不純物除去方法。
- 請求項6に記載の方法により得られた固形分を融解し、その後凝固させる太陽電池用多結晶シリコン製造方法。
- シリコン塊の電気抵抗率又は前記シリコン塊に含まれる不純物の濃度を測定する測定部と、
前記測定部で測定したシリコン塊の機械加工をする加工部と、
前記加工部で生じる前記シリコンスラッジを前記測定部での測定結果に応じて回収する回収部とを備えるシリコン加工装置。 - 前記回収部は、所望の測定値を有する前記シリコン塊より生じるシリコンスラッジを回収する請求項8に記載の装置。
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