JP6248546B2 - 昇華型熱転写シート - Google Patents

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Description

本発明は、昇華型熱転写シートに関する。
簡便な印刷方法として、種々の熱転写記録方法が広く使用されている。各熱転写記録方法では、連続した基材上に、例えば、イエロー、マゼンダ及びシアン(必要に応じてブラック)の色材層を面順次に繰り返し多数設けた熱転写シートが主に使用されている。熱転写記録方法は、加熱によって色材層が溶融軟化し、熱転写受像シート上に移行して画像を形成する熱溶融型記録方法と、加熱によって色材層中の染料を被転写体上に移行して画像を形成する昇華型記録方法とに大別される。中でも、昇華型記録方法は、昇華性染料を色材としているため中間調の再現性や階調性に優れており、原稿通りのフルカラー画像を受像シート上に鮮明に表現することができるので、デジタルカメラ、ビデオ、コンピューター等のカラー画像形成に応用されている。その画像は、銀塩写真に匹敵する高品質なものである。
昇華型記録方法に用いられる昇華型熱転写シートは、一般的に、所定の巻径に巻き回された状態で保管されるところ、色材層に含まれる色材がブリード等により色材層の表面に局在化した状態で存在している場合には、当該昇華性染料が、熱転写シートの背面層側に移行(所謂キック)しやすくなる。そして、当該背面層側に移行した昇華性染料が、再び、色材層側に再移行(所謂バック)した場合、特に、色相が異なる各色の色材層が面順次に設けられた熱転写シートにおいて、背面層側に移行した昇華性染料が、当該昇華性染料とは色相が異なる他の色材層に移行した場合には、当該他の色材層を用いた画像形成時に発色特性の低下を引き起こす。また、色材層の保存性が低い場合には、地汚れの発生を引き起こす。
このような状況下、キックの発生を防止するための熱転写シートについての種々の検討がなされており、例えば、特許文献1には、基材の一方の面に染料層が設けられ、基材の他方の面に背面層が設けられた熱転写シートにおいて、染料層に、インドアニリン系の染料と、ポリビニルアセタール樹脂A、及びポリビニルアセタール樹脂B(特許文献1における一般式(1)で示されるポリビニルアセタール樹脂)を含有せしめた熱転写シートが提案されている。この熱転写シートによれば、熱転写シートの保存中に、背面層へ染料が移行することを防止できるとされている。しかしながら、特許文献1に提案がされている熱転写シートでは、染料層に含有される染料種、及びバインダー樹脂種が、所定の成分に限定されることから、材料選択の幅が狭いといった問題が内在する。
また、昇華型熱転写シートにおける色材層は、一般的に、溶媒中に昇華性染料を溶解してなる塗工液を用いて形成される。この方法で形成された色材層では、色材層中に昇華性染料が分子レベルで存在しており、色材層における昇華性染料の熱移行性は高いものとなっている。色材層における昇華性染料の熱移行性の向上は、高濃度の画像形成時においては、特に問題となることはないが、低階調領域や、中階調領域の印画時など高濃度の画像形成を所望しない場合においても、その熱移行性の高さから、高濃度の画像が形成されてしまう場合も多く、低階調領域や中階調領域の印画時に形成される画像の濃度が安定しない問題がある。換言すれば、高階調領域の印画時に印加されるエネルギーよりも低いエネルギーを印加した場合であっても、濃度の高い画像が形成されるまで昇華性染料が熱移行してしまう場合も多く、比較的低いエネルギーを印加した時に形成される画像濃度の安定性に欠ける。
低階調領域や中階調領域の印画時に形成される画像濃度の安定性を向上させるための1つの方法としては、例えば、背面層の厚みを厚くして、背面層側に印加された熱エネルギーを色材層に伝えにくくする、すなわち、背面層を厚くして、熱エネルギーをあえてロスさせる方法を挙げることができる。この方法によれば、色材層にかかる熱エネルギーを抑えることができ、低階調領域や中階調領域の印画時に形成される画像の濃度を安定させることができると考えられる。しかしながら、この方法では、高階調領域の印画時に形成される画像の濃度も低くなるといった弊害が生ずることとなる。つまり、溶媒中に昇華性染料を溶解してなる塗工液を用いて形成される色材層を備える熱転写シートでは、(1)高階調領域の印画時に形成される画像の濃度を向上させることと、(2)低階調領域や、中階調領域の印画時に形成される画像の濃度を安定させること、の双方の要求を満たすことが困難となる。現在のところ、キックや地汚れの発生を防止しつつも、上記(1)、(2)の要求を両立することができる昇華型熱転写シートについての提案はされていない。
特開2009−286060号公報
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、色材層に含有される色材に特段の制限を受けることなく、キックや、地汚れの発生を防止でき、低階調領域、中階調領域の印画時に形成される画像濃度の安定性に優れるとともに、高階調領域の印画時において高濃度の画像を形成することができる熱転写シートを提供することを主たる課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、基材の一方の面に色材層が設けられた昇華型熱転写シートであって、前記基材と前記色材層との間には、染料プライマー層が設けられ、前記色材層は、所定の溶媒と、昇華性染料と、下記の特定方法により、当該所定の溶媒に分散可能であると特定される色材を含有しており、前記所定の溶媒には、1つ、又は複数の溶媒が含まれ、前記所定の溶媒が複数である場合、前記色材は、当該複数の溶媒の全てに対し分散可能であると特定される色材であり、前記色材が、下記一般式(2)で示される色材であり、前記染料プライマー層は、無機顔料微粒子を含有していることを特徴とする。
(特定方法)
所定の溶媒に、目的とする色材を2w/v%の量となるように添加し、50℃にて1時間加熱撹拌する。次いで、得られた液を25℃にて60時間放置した後に、目的とする色材の析出の有無を目視で確認する。このときに、目的とする色材の析出を目視で確認できなかった場合には、目的とする色材は、所定の溶媒に溶解可能な色材であると特定する。一方、目的とする色材の析出を目視で確認できた場合には、目的とする色材は、所定の溶媒に分散可能な色材であると特定する。所定の溶媒が複数である場合、それぞれについて行う。
Figure 0006248546
(一般式(2)におけるR 1 〜R 5 は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはその誘導体又はスルホン酸基(−SO 3 H)、又はスルホンアミド基で置換させたスルホン化誘導基を表す。)
また、前記昇華性染料が、下記の特定方法により、前記所定の溶媒に溶解可能であると特定される昇華性染料であり、前記所定の溶媒が複数である場合、前記昇華性染料は、当該複数の溶媒の少なくとも1つに対し溶解可能であると特定される昇華性染料であってもよい。
(特定方法)
所定の溶媒に、目的とする昇華性染料を2w/v%の量となるように添加し、50℃にて1時間加熱撹拌する。次いで、得られた液を25℃にて60時間放置した後に、目的とする昇華性染料の析出の有無を目視で確認する。このときに、目的とする昇華性染料の析出を目視で確認できなかった場合には、目的とする昇華性染料は、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料であると特定する。一方、目的とする昇華性染料の析出を目視で確認できた場合には、目的とする昇華性染料は、所定の溶媒に分散可能な昇華性染料であると特定する。所定の溶媒が複数である場合、それぞれについて行う。
また、上記課題を解決するための本発明は、基材の一方の面に色材層が設けられた昇華型熱転写シートであって、前記色材層は、基材側から、第1の色材層、第2の色材層がこの順で積層された積層構造を呈し、前記基材と前記色材層との間には、染料プライマー層が設けられ、前記第1の色材層は、第1の溶媒と、下記の特定方法により、当該第1の溶媒に溶解可能であると特定される昇華性染料を含有しており、前記第1の溶媒には、1つ、又は複数の溶媒が含まれ、前記第1の溶媒に前記複数の溶媒が含まれる場合、前記昇華性染料は、当該複数の溶媒の少なくとも1つに対し溶解可能であると特定される昇華性染料であり、前記第2の色材層は、第2の溶媒と、下記の特定方法により、当該第2の溶媒に分散可能であると特定される色材を含有しており、前記第2の溶媒には、1つ、又は複数の溶媒が含まれ、前記第2の溶媒に前記複数の溶媒が含まれる場合、前記色材は、当該複数の溶媒の全てに対し分散可能であると特定される色材であり、前記色材が、下記一般式(2)で示される色材であり、前記染料プライマー層は、無機顔料微粒子を含有していることを特徴とする。
(特定方法)
第1の溶媒に、目的とする昇華性染料を2w/v%の量となるように添加し、50℃にて1時間加熱撹拌する。次いで、得られた液を25℃にて60時間放置した後に、目的とする昇華性染料の析出の有無を目視で確認する。このときに、目的とする昇華性染料の析出を目視で確認できなかった場合には、目的とする昇華性染料は、第1の溶媒に溶解可能な昇華性染料であると特定する。一方、目的とする昇華性染料の析出を目視で確認できた場合には、目的とする昇華性染料は、第1の溶媒に分散可能な昇華性染料であると特定する。第1の溶媒が複数である場合、それぞれについて行う。
第2の溶媒に、目的とする色材を2w/v%の量となるように添加し、50℃にて1時間加熱撹拌する。次いで、得られた液を25℃にて60時間放置した後に、目的とする色材の析出の有無を目視で確認する。このときに、目的とする色材の析出を目視で確認できなかった場合には、目的とする色材は、第2の溶媒に溶解可能な色材であると特定する。一方、目的とする色材の析出を目視で確認できた場合には、目的とする色材は、第2の溶媒に分散可能な色材であると特定する。第2の溶媒が複数である場合、それぞれについて行う。
Figure 0006248546
(一般式(2)におけるR 1 〜R 5 は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはその誘導体又はスルホン酸基(−SO 3 H)、又はスルホンアミド基で置換させたスルホン化誘導基を表す。)
本発明の熱転写シートによれば、色材層に含有される色材に特段の制限を受けることなく、キックや、地汚れの発生を防止でき、低階調領域、中階調領域の印画時に形成される画像濃度の安定性に優れるとともに、高階調領域の印画時において高濃度の画像を形成することができる。
本発明の第1実施形態の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。 本発明の第2実施形態の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。 本発明の第3実施形態の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。 比較の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
<<第1実施形態の昇華型熱転写シート>>
第1実施形態の昇華型熱転写シート100(以下、第1実施形態の熱転写シートと言う場合がある。)は、図1に示すように、基材1の一方の面上に、染料プライマー層3、色材層2がこの順で設けられた構成をとる。基材1、染料プライマー層3、色材層2は、本発明の熱転写シート100における必須の構成である。第1実施形態の昇華型熱転写シートは、サーマルヘッド等の加熱手段を用いて、背面層側に熱を印加することで色材層中の色材を被転写体上に移行して画像を形成する昇華型記録方法に用いられる熱転写シートである。第2実施形態、及び第3実施形態の昇華型熱転写シートについても同様である。図1は、第1実施形態の熱転写シート100の部分概略断面図である。なお、以下で説明する各図では、色材層に含有される色材、或いは昇華性染料を誇張して示している。
第1実施形態の熱転写シート100は、基材1の一方の面上に、染料プライマー層3、色材層2がこの順で設けられ、色材層2は、所定の溶媒と、色材10xとを含有している。そして、第1実施形態の熱転写シート100は、色材層2に含まれる色材10xが、所定の溶媒に分散可能な色材であり、染料プライマー層3が、無機顔料微粒子を含有していることを特徴とする。この特徴を有する第1実施形態の熱転写シートによれば、色材層に含有される色材に特段の制限を受けることなく、キックや、地汚れの発生を防止でき、低階調領域、中階調領域の印画時に形成される画像濃度の安定性に優れるとともに、高階調領域の印画時において高濃度の画像を形成することができる。
第1実施形態の熱転写シートの優位性を説明するにあたり、図4に示すように、基材1の一方の面上に設けられる色材層2Cが、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yのみを含有している熱転写シート100Xを比較の例として挙げて説明する。なお、図4は、比較の熱転写シートの一例を示す部分概略断面図である。
溶媒に溶解可能な昇華性染料は、通常、分子量が低く、また単分子であることから、図4に示すように、昇華性染料を溶媒中に溶解した塗工液を用いて形成された色材層2Cにおいて、昇華性染料10yは、色材層2Cの界面に局在化した状態で存在している。熱転写シートは、一般的に小巻状態で保管され、当該小巻状態においては、色材層と背面層とは直接に接触することから、色材層2Cにおいて昇華性染料10yが、図4に示す状態で存在している場合には、熱転写シートを小巻状態で保管した際等に、昇華性染料10yは、基材1の背面層5側に移行しやすくなる。つまり、単純に、基材1上に、所定の溶媒中に昇華性染料10yを溶解した塗工液を用いて形成された色材層2Cが設けられている場合には、キックや、地汚れの発生を防止することができない。
一方で、分子量が高い昇華性染料を用いることにより、昇華性染料の界面への局在化を低減できたとしても、分子量の高い昇華性染料と、バインダーとの親和性が不十分であると、キックや地汚れの発生を防止することが困難となる。つまり、昇華性染料の界面への局在化を防止するという点では分子量が高い昇華性染料が好ましく、またキックや地汚れの発生を防止するという点ではバインダーとの親和性が高い昇華性染料が好ましいが、双方を両立する昇華性染料は限られており、材料選定の幅が制限される。
昇華型記録方式によって形成される画像の濃度は、色材層に含まれる色材の熱移行性と密接的な関係があると考えられている。ここで、図4に示すように、色材層2Cが、昇華性染料10yを溶媒中に溶解してなる塗工液を用いて形成されたものである場合には、当該昇華性染料10yは、色材層中に分子レベルで存在することとなり、昇華性染料の熱移行性は高くなる。換言すれば、画像形成時における発色感度が高くなる。昇華性染料の熱移行性を高めた場合には、濃度の高い画像形成が可能となる一方で、高濃度の画像形成を所望しない低階調領域や、中階調領域の印画時においても、その熱移行性の高さから、高濃度の画像が形成されてしまう場合も多く、低階調領域や、中階調領域の印画時に形成される画像濃度の安定性に欠けるといった問題がある。
そこで、第1実施形態の熱転写シート100は、基材1の一方の面上に設けられる色材層2が、所定の溶媒と、色材10xとを含有しており、当該色材10xが、所定の溶媒に分散可能な色材であることを特徴とする。換言すれば、基材1の一方の面上に、所定の溶媒中に色材10xが分散されてなる塗工液を用いて形成された色材層2が設けられていることを特徴とする。
所定の溶媒と、当該所定の溶媒に分散可能な色材10xを含有する色材層2によれば、図1に示すように、当該色材層2中に、色材10xを均一に分散した状態で存在させることができ、昇華性染料が界面へ局在化することに起因して生じ得るキックや地汚れの発生を防止できる。また、当該色材層2中において、色材10xは一定の粒子径をもった状態で存在している。色材層2中における色材10xの上記存在状態により、各階調の印画時における色材10xの熱移行性を抑えることができ、色材層2に印加された熱エネルギーに応じた正確な濃度での画像形成が可能となる。つまり、第1実施形態の熱転写シートによれば、上記色材層2の存在により、低階調領域や、中階調領域の印画時に、所望しない高濃度の画像が形成されてしまうことを防止でき、低階調領域や、中階調領域の印画時に形成される画像濃度の安定性を向上させることができる。
ところで、第1実施形態の熱転写シートの色材層2に含有されている色材の熱移行性は、色材層中の存在形態から、上記で説明したように、比較の熱転写シートの色材層に含有されている昇華性染料の熱移行性よりも低いものとなっている。したがって、単純に、第1実施形態の熱転写シートの色材層と、比較の熱転写シートの色材層とを比較すると、高階調領域の印画時に形成される画像の濃度は、比較の熱転写シートの色材層を用いた方が高くなる。
そこで、第1実施形態の熱転写シート100は、上記特徴の色材層2とともに、基材1と色材層2との間に設けられる染料プライマー層3が、無機顔料微粒子を含有していることを更なる特徴とする。無機顔料微粒子を含有する染料プライマー層3を、基材1と色材層2との間に設けることで、基材1の他方の面側に印加された熱エネルギーを無駄なく色材層2に伝えることができ、高階調領域の印画時において、高濃度の画像を形成することが可能となる。なお、染料プライマー層3を設けて、熱エネルギー損失を抑えた場合であっても、第1実施形態の熱転写シートの色材層2に含有されている色材10xの熱移行性自体に変動は生じないことから、低階調領域や、中階調領域の印画時に形成される画像の濃度の安定性を損なうことはない。
つまり、第1実施形態の熱転写シートは、上記特徴の色材層2により、キックや地汚れの発生を防止しつつも、低階調領域や中階調領域の印画時に形成される画像濃度の安定性を向上せしめ、染料プライマー層3により、高階調領域の印画時において形成される画像の濃度を向上せしめている点を特徴とする。なお、以下で説明する、第2実施形態、及び第3実施形態の熱転写シートにおいても、同様の作用効果を奏することができる。以下、第1実施形態の熱転写シート100の各構成について具体的に説明する。
(基材)
基材1は、ある程度の耐熱性と強度を有するものであれば特に限定されることはなく、従来公知の材料を適宜選択して用いることができる。このような基材1として、例えば、0.5μm〜50μm、好ましくは1μm〜10μm程度の厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等が挙げられる。更に、これらの材料はそれぞれ単独でも使用できるが、他の材料と組み合わせた積層体として使用してもよい。
基材1は、色材層2が形成される側の面に接着処理が施されていても良い。接着処理を施すことで、基材1と色材層2、或いは基材1と色材層2との間に設けられる任意の層との密着性を向上させることができる。
接着処理としては、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、プライマー処理、グラフト化処理等公知の樹脂表面改質技術をそのまま適用することができる。また、それらの処理を2種以上併用することもできる。
(第1実施形態の色材層)
第1実施形態の熱転写シート100では、基材1の一方の面に設けられる色材層2に、バインダー樹脂、所定の溶媒、及び当該所定の溶媒に分散可能な色材が含有されている。
「バインダー樹脂」
色材層2に含有されているバインダー樹脂について限定はなく、例えば、エチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、エチルヒドロキシセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、セルロース系、ビニル系、アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の樹脂が、耐熱性、色材の熱移行性等の点において好ましい。バインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。
「所定の溶媒」
色材層2には、後述する色材10xを分散可能な溶媒が含有されている。色材層2に含まれる所定の溶媒とは、色材10xを分散させることができる溶媒を意味する。つまり、所定の溶媒について特に限定はなく、色材層2中に含有される色材10xとの関係に応じて適宜選択することができる。溶媒の一例としては、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、エタノール等の有機溶剤や、水等を挙げることができる。所定の溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。
なお、本実施形態の熱転写シートでは、色材層2に所定の溶媒が含有されていることを必須の条件としているが、これは、色材層2に、所定の溶媒を積極的に含有させることを趣旨とするものではなく、色材層2に含まれている所定の溶媒は、色材層2中に含まれる残留溶媒を意味する。色材層中に含まれる残留溶媒の特定方法については後述する。
「所定の溶媒に分散可能な色材」
第1実施形態の色材層2には、上記所定の溶媒に分散可能な色材10xが含有されている。本願明細書で言う色材とは、昇華性染料、及び顔料を含む概念である。所定の溶媒に分散可能な色材10xについても特に限定はなく、上記所定の溶媒の種別に応じて適宜選択することができる。具体的には、色材層2に含まれている上記所定の溶媒に分散可能な色材10xであれば、いかなる色材であってもよい。なお、ここで言う分散可能な色材とは、所定の溶媒に溶解不能な色材を意味し、色材の分散性能について特に限定はない。例えば、色材層2を形成するための色材層用塗工液として、溶媒、色材とともに、当該色材の分散性能を向上させるための分散剤を含有する塗工液を用いて、色材層2中における、色材の分散性を向上させることもできる。つまり、結果として、色材層2中に色材10xが分散された状態で存在していればよい。
上記所定の溶媒に分散可能な色材10xとしては、例えば、以下に例示する昇華性染料や、顔料の中から、塗工液中に含まれる溶媒に応じて適宜選択することができる。具体的には、所定の溶媒を選択し、次いで、以下に例示する昇華性染料や、顔料の中から、当該所定の溶媒に分散可能な色材を選択すればよい。
一例としての昇華性染料としては、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、チアゾール系染料、メロシアニン染料、ピラゾロン染料、ピラゾロンメチン、ピリドンメチン等のメチン系染料、インドアニリン系染料、インドナフトール系染料、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、ピラゾロンアゾメチン、ピラゾロトリアゾールアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系染料、キサンテン系染料、オキサジン系染料、ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等のシアノスチレン系染料、チアジン系染料、アジン系染料、アクリジン系染料、ベンゼンアゾ系染料、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、チアゾールアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系染料、スピロピラン系染料、インドリノスピロピラン系染料、フルオラン系染料、ローダミンラクタム系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、アミノピラゾール系染料、ピラゾロトリアゾール系染料、ジシアノスチリル、トリシアノスチリル等のスチリル系染料等が挙げられる。
具体的には、C.I.(Color index)ディスパースイエロー51,3,54,79,60,23,7,141,201,231、C.I.ディスパースブルー24,56,14,301,334,165,19,72,87,287,154,26,354、C.I.ディスパースレッド135,146,59,1,73,60,167、C.I.ディスパースオレンジ149、C.I.ディスパースバイオレット4,13,26,36,56,31、C.I.ソルベントイエロー56,14,16,29,93、C.I.ソルベントブルー70,35,63,36,50,49,111,105,97,11、C.I.ソルベントレッド135,81,18,25,19,23,24,143,146,182、C.I.ソルベントバイオレット13、C.I.ソルベントブラック3、C.I.ソルベントグリーン3等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(1)で示されるキノフタロン染料は、耐光性を有し、輝度が高い特徴を有する点で、所定の溶媒に溶解可能な色材10x、或いは所定の溶媒に分散可能な昇華性染料10yとして好ましく使用可能である。
Figure 0006248546
一般式(1)におけるXは水素原子、又はハロゲン原子を表し、R1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはその誘導体、又はアルキル基、若しくはベンゼン環を含む総炭素数6〜10のアシル基を表す。なお、一般式(1)において、X、R1が共に水素原子のキノフタロン染料は、ディスパースイエロー54である。また、一般式(1)において、XがBr、R1が水素原子のキノフタロン染料は、ディスパースイエロー64である。
昇華性染料は市販品をそのまま用いることもでき、例えばイエロー染料としてフォロンブリリアントイエローS−6GL(サンド社製、ディスパースイエロー231)、マクロレックスイエロー6G(バイエル社製、ディスパースイエロー201)、マゼンタ染料としてMS−RED−G(三井東圧化学株式会社製、ディスパースレッド60)、マクロレックスレッドバイオレットR(バイエル社製、ディスパースバイオレット26)、シアン染料はカヤセットブルー714(日本化薬株式会社製、ソルベントブルー63)、フォロンブリリアントブルーS−R(サンド社製、ディスパースブルー354)、ワクソリンブルーAP−FW(ICI社製、ソルベントブルー36)等を挙げることができる。
所定の溶媒に分散可能な昇華性染料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いることもできる。また、所定の溶媒に分散可能な色材として、昇華性染料と、顔料とを併用することもできる。また、2種以上の顔料を組合せて用いることもできる。なお、第1実施形態の色材層2は、当該色材層2に含有されている全ての溶媒に対し、分散可能な色材が1種以上含有していることを条件とする。換言すれば、色材層2に含有されている全ての溶媒に対し、溶解不能な色材10xが含有されていることを条件とする。所定の溶媒に分散可能な色材10xとともに、色材層2に所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yが含有されている実施形態については、後述する第2実施形態の熱転写シートで説明する。
所定の溶媒に分散可能な色材10xとして顔料を用いる場合には、公知の有機または無機の顔料を適宜選択すればよい。顔料は、十分な着色濃度を有し、光、熱等により変色、退色しないものが好ましい。顔料の色としては、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックに限定されるものではなく、種々の色の着色剤を使用することができる。
顔料の一例としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン・ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、金属錯体系顔料などが挙げられる。これらの有機顔料の中でも特にC.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントレッド122およびC.I.ピグメントバイオレット19などが、輝度が高く好ましい。また、下記一般式(2)で示される顔料は、第1実施形態の色材層2を形成するために用いられる色材層用塗工液中における分散性が高く、色材層用塗工液の安定性を高めることができ、また、キックや、地汚れの発生をより効果的に防止可能な点で、所定の溶媒に分散可能な色材として好ましく使用可能である。
Figure 0006248546
一般式(2)におけるR1〜R5は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはその誘導体又はスルホン酸基(−SO3H)、又はスルホンアミド基で置換させたスルホン化誘導基を表す。
上記一般式(2)で示される顔料の好ましい形態は、R1〜R5が、少なくとも1つのスルホン酸基(−SO3H)、又はスルホンアミド基で置換させたスルホン化誘導基を有する。さらに、スルホン酸基の一部、若しくは全部がアミンやアンモニウムヒドロキシド、クロリド、ブロミド等や、金属等によって塩形成され、スルホン酸塩となっていてもよい。
以下、具体的な溶媒を例に挙げ、色材層2を形成するための塗工液中に含まれる色材の一例について説明する。なお、色材層2に含有される所定の溶媒、及び当該所定の溶媒に分散可能な色材は、この組合せに限定されるものではない。
所定の溶媒がメチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒である場合;
メチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒に分散可能な色材としては、例えば、上記で例示した顔料や、上記で例示した昇華性染料、例えば、ディスパースイエロー54等を使用することができる。
また、色材層2中には、分散剤が含有されていてもよい。つまり、分散剤を含む塗工液を用いて形成された色材層2であってもよい。分散剤としては、ポリエーテル系分散剤、アクリル系ブロック型ポリマー分散剤、グラフト型ポリマー分散剤等を挙げることができる。これ以外にも、分散剤として、有機顔料にスルホン化物等の処理をした誘導体等を挙げることができる。処理方法としては、ロジン処理の他、酸性基処理、塩基性処理、顔料誘導体処理などの表面処理法を挙げることができる。以下、ポリエーテル系分散剤、アクリル系ブロック型ポリマー分散剤、グラフト型ポリマーの分散剤を総称して「特定の分散剤」と言う場合がある。
ポリエーテル系分散剤としては、例えばポリエーテル系カルボン酸、ポリエーテル系リン酸、ポリエーテル系フェノール等が挙げられる。上記ポリエーテル系分散剤は、市販品では楠本化成社製の商品名 DISPARLON DA234、DISPARLON DA325、ソルスパース20000(ルーブリゾール(株)社製)等を挙げることができる。
グラフト型ポリマー分散剤は、複数の塩基性基などの官能基を有する幹ポリマー1分子に、2分子以上の枝ポリマーがグラフト結合した構造のポリマーをいい、例えば、幹ポリマー部がポリアリルアミン、枝ポリマー部がε−カプロラクトンの開環重合体で構成されるポリマーが挙げられる。上記グラフト型ポリマーの分散剤としては、アジスパーPB821、PB88−IP、アジスパーPB822、アジスパーPB823、アジスパーPB824、アジスパーPB827、アジスパーPB880、アジスパーPB881(味の素ファインテクノ株式会社製)等を挙げることができる。
アクリル系ブロック型ポリマー分散剤としては、そのポリマーの主鎖構造が、例えばメタクリル系樹脂、アクリル系樹脂等であるものが挙げられ、特に3級アミノ基を有するメタクリル系、アクリル系のブロック型ポリマー分散剤が好ましい。このブロック型ポリマー分散剤の重量平均分子量Mwは、500〜20000の範囲内であることが好ましく、1000〜15000の範囲内であることがより好ましく、3000〜12000の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲内であることにより、色材を均一に分散させる分散初期の色材に対する濡れ性と分散安定性を両立することが可能となる。本発明の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。上記の3級アミノ基を有するメタクリル系、アクリル系のブロック型ポリマー分散剤は、例えば、ビックケミー社製のDisperbyk2000、Disperbyk−2001、BYK−LPN6919、BYK−LPN21116、BYK−LPN21324等が挙げることができる。
所定の溶媒に分散可能な色材10xを分散させるための分散剤は、数多く存在するが、色材層2に、上記「特定の分散剤」を含有せしめることで、所定の溶媒に分散可能な色材10xの分散安定性を高く維持することができる。なお、色材層2が、上記「特定の分散剤」以外の分散剤を含有している場合、或いは分散剤を含有していない場合には、上記「特定の分散剤」を含有する色材層2と比較して、キックや地汚れの防止性能、耐光性、形成される印画物の印画品質等が低くなる傾向にある。上記「特定の分散剤」は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。分散剤の含有量は、色材100質量部に対して、通常、100質量部以下、好ましくは0.5〜100質量部、さらに好ましくは1〜70質量部、特に好ましくは10〜50質量部である。この場合、分散剤の含有量が100質量部を超えると、鮮明性等が損なわれる恐れがある。また一方で、分散剤の含有量が少なすぎると、分散剤としての機能が十分に発揮できなくなる場合がある。なお、このことは、色材層2に分散剤が含まれることを必須の条件とするものではなく、上記で説明したように、所定の溶媒と、当該所定の溶媒に分散可能な色材10xを含む色材層2であれば、分散剤の存在によらず、キックや、地汚れの発生を防止することができる。
「所定の溶媒に対する色材の分散性の特定方法」
色材層2中に含まれている色材が、所定の溶媒に分散可能である否かは、以下の方法により判断することができる。所定の溶媒に、目的とする色材を2w/v%の量となるように添加し、50℃にて1時間加熱撹拌する。次いで、得られた液を25℃にて60時間放置した後に、目的とする色材の析出の有無を目視で確認する。このときに、目的とする色材の析出を目視で確認できなかった場合には、目的とする色材は、所定の溶媒に溶解可能な色材であると判断することができる。一方、目的とする色材の析出を目視で確認できた場合には、目的とする色材は、所定の溶媒に溶解不能、換言すれば分散可能な色材であると判断することができる。昇華性染料についても同様の方法により、判断することができる。
「色材、残留溶媒の特定方法」
対象とする熱転写シート(以下、対象熱転写シートという)が、第1実施形態の熱転写シートの発明特定事項を充足するものであるか否かは、例えば、以下の方法により判別可能である。まず、対象熱転写シートの色材層を分析して当該色材層に含まれている色材成分を特定する。色材成分の特定方法としては、核磁気共鳴分光法、IRスペクトル法等の従来公知の分析方法を用いて特定することができる。
次いで、当該色材層に残留している溶媒の種別を特定する。溶媒の種別の特定方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー法を用いて特定することができる。ガスクロマトグラフィー法による溶媒の種別の特定には、例えば、島津製作所製のガスクロマトグラフィー GC14−A等を使用することができる。なお、対象熱転写シートの基材や、背面層、或いは任意の層中に含有されている溶媒を排除すべく、溶媒の種別の特定においては、対象熱転写シートの色材層に対応する層についての特定を行う必要がある。具体的には、ガスクロマトグラフィー法を用いて溶媒の種別の特定を行う場合には、対象熱転写シートの色材層に対応する層の一部分のみを採取して分析を行うことが重要である。
そして上記で特定された色材成分の少なくとも1種が、上記で特定された溶媒に溶解可能な色材成分である場合には、対象熱転写シートは、第1実施形態の熱転写シートの発明特定事項を充足しているものと判別できる。特定された色材成分が、特定された溶媒に溶解可能、或いは分散可能なものであるかは、上記「所定の溶媒に対する色材の分散性の特定方法」を用いて特定することができる。
色材層2中には、必須の成分であるバインダー樹脂、所定の溶媒、当該所定の溶媒に分散可能な色材10xとともに、他の任意の成分、例えば、熱転写受像シートの受容層との離型性を向上させるための離型剤、帯電防止剤、受容層との滑性を制御するための有機または無機フィラー等が含有されていてもよい。例えば、色材層2に離型剤を含有せしめることで、画像形成時における色材層2と受容層との離型性を向上させることができる。なお、受容層側で離型性の対策がとられている場合には、色材層2には離型剤が含有されていることを特に要しない。このことは、後述する第2実施形態の色材層2についても同様である。
離型剤としては、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)、弗素系やリン酸エステル系の界面活性剤等を挙げることができる。色材層2中における離型剤の含有量について特に限定はないが、色材層2に含まれるバインダー樹脂の固形分総量に対し、0.1質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内で離型剤を含有させることで、受容層に離型剤が含有されていない場合であっても、色材層2と受容層との離型性を十分に満足させることができる。
第1実施形態の色材層2の形成方法について特に限定はないが、バインダー樹脂、溶媒、当該溶媒に分散可能な色材10x、さらには、分散剤や、離型剤等必要に応じて添加される任意の成分を用い、溶媒中に色材10xを分散させた色材層用塗工液を調製し、当該色材層用塗工液を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の手段を用い基材上に塗工・乾燥することで形成することができる。色材層の厚みについても特に限定はないが、0.2μm〜10μm程度であることが好ましい。
(染料プライマー層)
図1に示すように、基材1と色材層2との間には、染料プライマー層3が設けられている。染料プライマー層3は、第1実施形態、及び後述する第2実施形態、及び第3実施形態の熱転写シート100における必須の構成である。
染料プライマー層3は、無機顔料微粒子を含有していることを特徴とする。この特徴を有する染料プライマー層3を、基材1と色材層2との間に設けることで、基材の他方の面側に印加された熱エネルギーを無駄なく染料層に伝えることができ、高階調領域の印画時に形成される画像の濃度を向上させることができる。具体的には、図4で示される比較の熱転写シートと同等、或いはこれ以上の高濃度の画像を形成することができる。また、染料プライマー層3を設けることで、基材1と色材層2との密着性を向上させることができ、画像形成時に、熱転写受像シートの受容層と色材層2とが貼りつき、色材層2が層ごと取られてしまう異常転写の発生も防止することができる。
上記特徴の染料プライマー層3により、高濃度の画像形成が可能となるメカニズムは、現在のところ必ずしも明らかにはなっていないが、無機顔料微粒子が有する良好な熱伝導性によるものと推察される。具体的には、無機顔料微粒子を含有する染料プライマー層3を、基材1と色材層2との間に設けることで、(i)基材1の他方の面側に印加された熱エネルギーを無駄なく色材層2に伝えることができ、また、(ii)画像形成時に色材層2から染料プライマー層3側への色材10xの移行を防止し、熱転写受像シートの受容層側への色材10xの熱移行を効率よく行うことができることによるものと推察される。そして、(i)、(ii)の推定メカニズム等により、高階調領域の印画時に形成される画像の濃度の向上が図られているものと考えられる。
無機顔料微粒子について特に限定はなく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、擬ベーマナイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等を挙げることができる。中でも、コロイダルシリカ、アルミナゾルが好適である。これは、コロイダルシリカや、アルミナゾルの熱伝導性が、他の無機顔料微粒子と比較して高いことによる。無機顔料超微粒子の大きさについて特に限定はないが、一次平均粒径で100nm以下、好ましくは50nm以下である。
染料プライマー層3に含まれる無機顔料微粒子を保持するためのバインダー樹脂については特に限定はなく、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂等が挙げられる。
染料プライマー層3の厚みについて特に限定はないが、0.01μm以上1μm以下の範囲内であることが好ましい。
染料プライマー層は、上記で例示した無機顔料超微粒子、バインダー樹脂を適当な溶媒に溶解或いは分散した染料プライマー層用塗工液を、グラビアコーティング法、ロールコート法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の従来から公知の形成手段により、基材1上に塗工・乾燥して形成することができる。
(背面層)
図1に示すように基材1の他方の面上には、任意の背面層5が設けられていてもよい。背面層5を構成するバインダー樹脂について特に限定はなく、従来公知の熱可塑性樹脂等を適宜選択して形成することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルクロリド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂、これらのシリコーン変性物等が挙げられる。
また、背面層5は、サーマルヘッドとの滑り性を向上させるための滑剤が含有されていることが好ましい。なお、滑剤は、背面層5における任意の構成である。滑剤としては、例えば、リン酸エステル、脂肪酸エステル、金属石鹸、Wax、グラファイトパウダー、フッ素変性グラフトポリマー、フッ素変性ブロックポリマー、シリコーンオイル、シリコーン変性グラフトポリマー、シリコーン変性ブロックポリマー等のシリコーン重合体等を適宜選択して用いることができる。上記滑剤成分の中でも、本発明では、リン酸エステル、脂肪酸エステル、金属石鹸、Waxを特に好適に使用することができる。
金属石鹸としては、例えば、アルキルリン酸エステルの多価金属塩、脂肪酸の多価金属塩、アルキルカルボン酸の金属塩等が挙げられ、プラスチック用添加剤として公知のものを使用することができる。本発明ではステアリン酸亜鉛および/またはステアリルリン酸亜鉛が好ましく使用できる。
リン酸エステルとしては、例えば、(1)炭素数6〜20の飽和又は不飽和高級アルコールのリン酸モノエステル又はジエステル、(2)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテルのリン酸モノエステル又はジエステル、(3)上記飽和又は不飽和高級アルコールのアルキレンオキシド付加物(平均付加モル数1〜8)のリン酸モノエステル又はジエステル、(4)炭素数8〜12のアルキル基を有するアルキルフェノール又はアルキルナフトールのリン酸モノエステル又はジエステル等が挙げられる。上記(1)及び(3)における飽和又は不飽和高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。上記(3)におけるアルキルフェノールとしては、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、ジフェニルフェノール等が挙げられる。
背面層5の形成方法について特に限定はなく、バインダー樹脂、必要に応じて添加される滑剤等を適当な溶媒に溶解または分散した塗工液を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の塗工手段を用いて基材1上に塗工し、乾燥することで形成することができる。塗工液の調製に用いられる溶媒としては、例えば、水、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコール、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。
背面層5の厚みについて特に限定はないが、0.1μm以上2μm以下の範囲内であることが好ましい。
(背面プライマー層)
また、基材1と背面層5との間に背面プライマー層(図示しない)が設けられていてもよい。背面プライマー層は、基材1と、背面層5との密着性を向上させるために設けられる層であり、任意の層である。背面プライマー層としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。また、適宜導電性を付与するための導電材を含有させてもよい。例えば、スルホン化ポリアニリン、カーボン粒子、銀粒子、金粒子等が挙げられる。
背面プライマー層の厚みについて特に限定はないが、0.01μm以上0.2μm以下の範囲内であることが好ましい。
<<第2実施形態の昇華型熱転写シート>>
次に、第2実施形態の熱転写シートについて説明する。第2実施形態の熱転写シート100は、図2に示すように、基材1の一方の面上に、染料プライマー層3、色材層2がこの順で設けられた構成をとり、色材層2が、所定の溶媒、当該所定の溶媒に分散可能な色材10xとともに、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yを含有し、染料プライマー層3が無機顔料微粒子を含有している点を特徴とする。つまり、第2実施形態の熱転写シートは、色材層2が、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yをさらに含有している点においてのみ上記第1実施形態の熱転写シートと相違する。以下、相違点を中心に説明する。また、特に断りがない限り、第2実施形態の熱転写シートの各構成は、上記第1実施形態の熱転写シートで説明したものをそのまま用いることができ、詳細な説明は省略する。図2は、第2実施形態の熱転写シートの一例を示す部分概略断面図である。
(第2実施形態の色材層)
第2実施形態の熱転写シートでは、基材1の一方の面に設けられる色材層2に、バインダー樹脂、所定の溶媒、当該所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料、及び当該所定の溶媒に分散可能な色材が含有されている。換言すれば、第2実施形態の熱転写シートは、基材1の一方の面上に、バインダー樹脂、所定の溶媒、当該所定の溶媒に分散可能な色材10x、当該所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yを含む色材層用塗工液を用いて形成された色材層2が設けられている。
第2実施形態の熱転写シートによれば、第1実施形態の熱転写シートと同様に、キックや地汚れの発生を防止でき、かつ、所定の溶媒に分散可能な色材10xの存在により、低階調領域や、中階調領域の印画時に形成される画像濃度の安定性を向上させることができる。また、第1実施形態の熱転写シート100と同様に、基材1と色材層2との間には、無機顔料微粒子を含有する染料プライマー層3が設けられていることから、高階調領域の印画時に高濃度の画像を形成することができる。また、画像形成時における異常転写の発生を防止することもできる。
第2実施形態の熱転写シートが、第1実施形態の熱転写シートと同様に、キックや地汚れを防止することができる詳細なメカニズムは現在のところ必ずしも明らかとはなっていないが、第2実施形態の熱転写シートでは、色材層2中における、昇華性染料10yの界面への局在化が抑制され、これにより、キックや地汚れの発生を防止できているものと推察される。具体的には、所定の溶媒に分散可能な色材10xが、昇華性染料10yの色材層2の界面への局在化を抑制する役割として機能し、第2実施形態の熱転写シートでは、色材層2中に、昇華性染料10yを分散した状態で存在させることができているものと推察される。
色材層2に含有されている色材10xが、昇華性染料10yの界面への局在化を抑制する役割として機能する理由としては、昇華性染料10yと、色材10xとの親和性を挙げることができる。図4に示すように、従来であれば、所定の溶媒に昇華性染料10yが溶解されてなる色材層用塗工液を用いて色材層2Cを形成した場合には、当該昇華性染料10yは、自由界面に向かって局在化する。しかしながら、第2実施形態の熱転写シートでは、色材層2を形成するための色材層用塗工液中に色材10xが分散されていることから、色材10xと、昇華性染料10yとの親和性により、当該色材層用塗工液を用いて形成される第2実施形態の色材層2においては、昇華性染料10yを、分散状態で存在している色材10xの周辺に存在させることができると推察される。これにより、図2に示すように、第2実施形態の熱転写シートでは、昇華性染料10yの界面への局在化が抑制され、昇華性染料10yを色材層2中に分散した状態で存在させることができ、キックや地汚れの発生を防止できていると考えられる。
また、色材層2には、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料が含有されている、換言すれば、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料を溶解した色材層用塗工液を用いて形成されることから、第2実施形態の色材層2中に昇華性染料を分子レベルで存在させることができ、無機顔料微粒子を含有する染料プライマー層3と、色材層2中に分子レベルで存在している昇華性染料10yが有する高い熱移行性との相乗効果により、高階調領域の印画時において、より濃度の高い画像の形成が可能となる。また、第2実施形態の熱転写シートにおいても、色材層2には、所定の溶媒に分散可能な色材10xが含有されていることから、図4に示すように、色材層2Cが、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yのみを含有している場合と比較して、低階調領域や、中階調領域の印画時に形成される画像濃度の安定性を向上させることができる。
「所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料」
所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料について特に限定はなく、第2実施形態の色材層に含有されている所定の溶媒の種別に応じて適宜選択することができる。具体的には、第2実施形態の色材層2に含有されている溶媒に溶解可能な昇華性染料であれば、いかなる昇華性染料であってもよい。例えば、第2実施形態の色材層2に含有されている溶媒に応じて、第1実施形態の熱転写シートで説明した昇華性染料を適宜選択して用いることができる。第2実施形態の色材層2に含有されている昇華性染料が、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料であるか否かは、上記第1実施形態の熱転写シートの「所定の溶媒に対する色材の分散性の特定方法」により判断することができる。以下、所定の溶媒が、メチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒である場合を例に挙げ、当該所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料の一例について説明する。
所定の溶媒がメチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒である場合;
メチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒に溶解可能な昇華性染料としては、例えば、ディスパースイエロー201等を使用することができる。また、上記第1実施形態の熱転写シートで説明したように、メチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒に分散可能な色材としては、例えば、上記で例示した顔料や、上記で例示した昇華性染料、例えば、ディスパースイエロー54等を挙げることができる。したがって、バインダー樹脂、メチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒、溶解可能な昇華性染料として、ディスパースイエロー201、分散可能な色材として、顔料、或いはディスパースイエロー54を含む塗工液を調製し、当該塗工液を用いることで、所定の溶媒、当該所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10y、当該溶媒に分散可能な色材を含む第2実施形態の色材層2を得ることができる。
第1実施形態の色材層2と同様、第2実施形態の色材層には、2以上の溶媒が含有されていてもよいが、第2実施形態の色材層2には、当該2以上の溶媒に対して分散可能な、換言すれば溶解不能な色材10xが含有されており、2以上の溶媒のうちの少なくとも1種の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yが含有されていることを必須の条件とする。
第2実施形態の色材層2中に含まれる所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yと、所定の溶媒に分散可能な色材10xとの含有比率についても特に限定はなく、色材層2に要求される機能、例えば、耐光性や、濃度特性等に応じて適宜設定することができる。
対象とする熱転写シート(以下、対象熱転写シートという)が、第2実施形態の熱転写シートの発明特定事項を充足するものであるか否かは、第1実施形態の色材層において説明した「色材、残留溶媒の特定方法」を適宜用いて判別可能である。具体的には、色材層の分析において、色材層に含まれる色材成分が1種のみである場合には、対象熱転写シートは、第2実施形態の熱転写シートの発明特定事項を充足していないと判別できる。一方で、対象熱転写シートの色材層に2種以上の色材成分が特定された場合には、次いで、当該色材層に残留している溶媒の種別を特定する。
そして上記で特定された2種以上の色材成分の少なくとも1種が、上記で特定された溶媒に溶解可能な色材成分であり、かつ2種以上の色材成分の少なくとも1種が、特定された溶媒に分散可能な色材成分である場合には、対象熱転写シートは、第2実施形態の熱転写シートの発明特定事項を充足しているものと判別できる。なお、対象熱転写シートの色材層に2種以上の溶媒が特定された場合には、色材成分の少なくとも1種が、特定された溶媒のうち少なくとも1つの溶媒に溶解可能なものであり、色材成分の少なくとも1種が、特定された全ての溶媒に溶解不能である場合には、対象となる熱転写シートが、第2実施形態の熱転写シートの発明特定事項を充足しているものと判別できる。
所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yをさらに含有している以外は、全て第1実施形態の色材層と同様であり、第2実施形態の色材層2に含有されている所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料以外の具体的な説明は省略する。
第2実施形態の色材層2の形成方法について特に限定はないが、バインダー樹脂、溶媒、当該溶媒に分散可能な色材10x、当該溶媒に溶解可能な昇華性染料10y、さらには、第1実施形態の色材層2で説明した分散剤や、離型剤等必要に応じて添加される任意の成分を用い、溶媒中に昇華性染料を溶解させ、かつ色材10xを分散させた色材層用塗工液を調製し、当該色材層用塗工液を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の手段を用い基材上に塗工・乾燥することで形成することができる。第2実施形態の色材層2の厚みについても特に限定はなく、第1実施形態の色材層2と同様に、0.2μm〜10μm程度であることが好ましい。
<<第3実施形態の昇華型熱転写シート>>
次に、第3実施形態の熱転写シートについて説明する。第3実施形態の熱転写シート100は、図3に示すように基材1上に、色材層2が設けられた熱転写シートであって、当該色材層2は、基材側から、染料プライマー層3、第1の色材層2A、第2の色材層2Bがこの順で積層された積層構造を呈し、第1の色材層2Aは、第1の溶媒と、当該第1の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yを含有しており、第2の色材層2Bは、第2の溶媒と、当該第2の溶媒に分散可能な色材10xを含有していることを特徴とする。また、上記第1実施形態、第2実施形態の熱転写シートと同様、染料プライマー層3は、無機顔料微粒子を含有していることを特徴とする。
上記特徴の色材層2を備える第3実施形態の熱転写シートによれば、第2の色材層2Bが、第1の色材層2Aにおいて界面へ局在化している昇華性染料を塞ぐ蓋としての役割を機能し、キックや地汚れの発生を防止できる。
具体的には、上記で説明したように、所定の溶媒と、当該所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料を含有し、所定の溶媒に分散可能な色材を含有しない色材層2Cを備える比較の熱転写シートでは、昇華性染料が界面に局在化した状態で存在しており(図4参照)、キックや地汚れが発生しやすい状況となっている。つまり、基材1上に、第1の色材層2Aのみが設けられた熱転写シートを製造した場合には、キックや地汚れを防止することができない。
第3実施形態の熱転写シートでは、第1の色材層2A単独では補うことができないキックや地汚れの発生を、第1の色材層2A上に別の層を形成することによって防止している。具体的には、本実施形態では、第1の色材層2A上に、第2の溶媒と、当該第2の溶媒に分散可能な色材10xを含有する第2の色材層2Bが設けられている。上記第1実施形態の熱転写シートで説明したように、所定の溶媒と、当該所定の溶媒に分散可能な色材10xを含有する色材層によれば、当該色材層中において色材10xは均一に分散しており(図1参照)、第2の色材層2Bの存在によってキックや地汚れの発生を防止することができる。つまり、第2の色材層2Bは、第1の色材層2Aの界面に局在化した昇華性染料を塞ぐ蓋としての役割を果たしている。なお、第1の色材層2Aは、図4の色材層2Cと同じ構成をとることができる。
また、第3実施形態の熱転写シートは、所定の溶媒と、当該所定の溶媒に分散可能な色材10xを含有する第2の色材層2Bを有することから、上記第1実施形態の熱転写シートで説明した理由と同様の理由により、低階調領域、中階調領域の印画時に形成される画像濃度の安定性を向上させることができる。つまり、第2の色材層2Bは、低階調領域、中階調領域の印画時に形成される画像濃度の安定性を向上させる役割を果たしている。
また、図3に示すように、基材1と色材層2との間には、無機顔料微粒子を含有する染料プライマー層3が設けられているとともに、当該染料プライマー層3と、上記第2の色材層2Bとの間には、所定の溶媒と、当該所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yを含有する第1の色材層2Aが設けられている。したがって、第1の色材層2Aに含有されている所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yと、無機顔料微粒子を含有する染料プライマー層3との相乗効果により、高階調領域の印画時において、より濃度の高い画像形成が可能となる。以下、第1の色材層2A、第2の色材層2Bについて説明する。なお、必須の構成である染料プライマー層3、各任意の層については、第1実施形態の熱転写シート100で説明したものをそのまま用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。
(第1の色材層)
基材1の一方の面上に設けられる第1の色材層2Aは、バインダー樹脂と、第1の溶媒と、第1の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yとを含有している。
第1の色材層2Aに含有されているバインダー樹脂について特に限定はなく、第1の溶媒に溶解可能な昇華性染料の種別に応じて適宜選択することができる。例えば、上記第1実施形態の熱転写シートの色材層2で説明したバインダー樹脂を挙げることができる。以下で説明する第2塗工液に含まれるバインダー樹脂についても同様である。
「昇華性染料」
第1の色材層2Aに含有されている昇華性染料10yについて特に限定はなく、当該第1の色材層2Aに含有されている第1の溶媒に応じて適宜選択することができる。具体的には、第1の溶媒に溶解可能であるとの条件を満たす昇華性染料であればよい。このような、昇華性染料としては、例えば、第2実施形態の熱転写シートで説明した「所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料」を挙げることができる。第1の色材層中2Aには、所定の溶媒に溶解可能な2種以上の昇華性染料が含まれていてもよい。
「第1の溶媒」
第1の溶媒は、上記昇華性染料を溶解することができるものであれば特に限定はなく、従来公知の溶媒の中から適宜選択して用いることができる。第1の色材層2Aには、2種以上の溶媒が含まれていてもよいが、少なくとも1種の溶媒が、第1の色材層2Aに含有されている少なくとも1種の昇華性染料を溶解可能な溶媒であることを条件とする。
第1の色材層2Aには、第1の溶媒に分散可能な色材が含有されていてもよい。つまり、第1の色材層2Aを、上記第2実施形態の熱転写シートで説明した色材層2(図2参照)と同じ構成としてもよい。また、第1塗工液中には、上記バインダー樹脂、第1の溶媒、昇華性染料以外に、任意の成分が含有されていてもよい。任意の成分としては、上記第1実施形態の熱転写シートの色材層2で説明したものを適宜選択して用いることができる。
第1の色材層の形成方法について特に限定はないが、溶媒中に昇華性染料を溶解させた第1塗工液を調製し、当該第1塗工液を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の手段を用い基材1上に塗工・乾燥することで形成することができる。第1の色材層の厚みについても特に限定はないが、0.1μm〜5μm程度であることが好ましい。
(第2の色材層)
第1の色材層2A上に設けられる第2の色材層2Bは、バインダー樹脂と、第2の溶媒と、第2の溶媒に分散可能な色材10xとを含有している。
第2の色材層は、上記第1実施形態の熱転写シートで説明した色材層(図1参照)や、第2実施形態の熱転写シートで説明した色材層(図2参照)をそのまま用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。
なお、第3実施形態では、第1の色材層2Aに第1の溶媒が含まれ、第2の色材層2Bに第2の溶媒が含まれていることを必須の条件としているが、上記第1実施形態、或いは第2実施形態の熱転写シート同様に、第1の溶媒、第2の溶媒は、それぞれ、第1の色材層2A、第2の色材層2Bへの積極的な含有を目的とするものではなく、第1の溶媒は、第1の色材層2Aに含まれる残留溶媒であり、第2の溶媒は、第2の色材層2Bに含まれる残留溶媒である。具体的には、第1の色材層2A中に残留している第1の溶媒が、当該第1の色材層に含まれる昇華性染料を溶解可能な溶媒であり、第2の色材層2B中に残留している第2の溶媒が、当該第2の色材層2Bに含まれる色材を分散可能な溶媒である場合には、本実施形態の熱転写シートは、上記第1実施形態、及び第2実施形態の熱転写シートと同じ作用効果を奏することができる。
第1の色材層2Aにおける昇華性染料、第2の色材層2Bにおける色材の溶解・分散条件が上記の関係を満たすものであれば、第1の色材層2Aに残留している第1の溶媒と、第2の色材層2Bに残留している第2の溶媒は共通する残留溶媒であってもよい。この場合、第1の色材層2Aには、当該共通する溶媒に溶解可能な昇華性染料が少なくとも1種含まれていることを条件とする。また、第2の色材層2Bには、共通する溶媒に分散可能な色材が少なくとも1種含まれていることを条件とする。また、第1の色材層2Aに含まれる昇華性染料と、第2の色材層2Bに含まれる色材は同一の色材であってもよい。この場合、第1の色材層2Aには、同一の色材を溶解可能な第1の溶媒が残留しており、第2の色材層2Bには、同一の色材を分散可能な第2の溶媒が残留していることを条件とする。
対象熱転写シートが、第3実施形態の熱転写シートの発明特定事項を充足するものであるか否かは、それぞれの層中に含まれる溶媒と、色材成分との関係により判別できる。具体的には、対象熱転写シートにおける色材層が積層構成を呈していない場合には、対象熱転写シートは、第3実施形態の熱転写シートの発明特定事項を充足していないと判別できる。一方で、対象熱転写シートの色材層が積層構成を呈している場合には、基材に近い色材層に含まれる溶媒と、色材成分を特定する。このとき、色材成分が、特定された溶媒に溶解可能な色材成分である場合には、第1の色材層の構成を有していると判別できる。次いで、基材から遠い色材層に含まれる溶媒と、色材成分を特定する。このとき、色材成分が、特定された溶媒に分散可能な色材成分である場合には、第2の色材層の構成を有していると判別でき、第1の色材層、及び第2の色材層と同じ構成の層が積層されている場合には、対象熱転写シートが、第3実施形態の熱転写シートの発明特定事項を充足しているものと判別できる。色材成分、及び溶媒の特定は、上記第1実施形態で説明した方法をそのまま用いることができる。また、特定された色材成分が、特定された溶媒に溶解可能、或いは分散可能なものであるかは、上記第1実施形態の製造方法で説明した「所定の溶媒に対する色材の分散性の特定方法」を用いて特定することができる。
また、第3実施形態の熱転写シートは、上記第1実施形態、及び第2実施形態の熱転写シートと同様に、基材1と第1の色材層2Aとの間に、染料プライマー層が設けられていてもよい。また、基材1と背面層5との間に、背面プライマー層が設けられていてもよい。
以上、本発明の熱転写シート100について具体的に説明を行ったが、本発明の趣旨を妨げない範囲で各種の変形態様をとることができる。例えば、図1〜図3に示す構成において、基材1の同一面上に色材層2と、図示しない転写性保護層を面順次に設けた一体型の熱転写シートとしてもよい。また、基材1の同一面上に色相の異なる色材層が面順次に設けられていてもよい。例えば、基材1上に、イエロー色材層、マゼンタ色材層、シアン色材層が面順次に設けられていてもよい。この場合、面順次に設けられた色材層のうちの少なくとも1つが、上記で説明した第1実施形態、第2実施形態、或いは第3実施形態の熱転写シートで説明した色材層2であればよい。また、全ての色材層が、第1実施形態、第2実施形態、或いは第3実施形態で説明した色材層2であってもよい。また、各実施形態の熱転写シートを組合せた構成とすることもできる。
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。また、特に断りがない限り、「部」及び「%」は固形分の値を示している。
(実施例1)
基材として、厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、当該基材の一方の面に、下記組成の背面層用塗工液を、塗工量が固形分換算で0.5g/m2となるように塗工し、乾燥させることで背面層を形成した。次いで、基材の他方の面上に、下記組成の染料プライマー層用塗工液1を、塗工量が固形分換算で0.1g/m2となるように塗工し、乾燥させることでプライマー層を形成した。次いで、プライマー層上に、下記の方法で作製した色材層用塗工液1を、塗工量が固形分換算で1.0g/m2となるように塗工し、乾燥させることで色材層を形成することで実施例1の熱転写シートを得た。
以下の色材層用塗工液に含まれる昇華性染料、或いは色材がトルエン/メチルエチルケトン混合溶媒に溶解可能、或いは分散可能であるかは、予め以下の方法により判断した。
トルエン/メチルエチルケトン=1/1混合溶媒を用い、昇華性染料、或いは色材の濃度が2w/v%の量となるように添加し、50℃にて1時間加熱撹拌した。次いで、得られた液を25℃にて60時間放置した後に、昇華性染料、或いは色材の析出の有無を目視で確認した。確認の結果、昇華性染料、或いは色材の析出がない場合は、溶解可能な昇華性染料、或いは色材と判断し、析出が見られた場合は分散可能な昇華性染料、或いは色材と判断した。
上記の判断により、色材層用塗工液1、及び以下の色材層用塗工液2に含まれる「ディスパースイエロー201」は、トルエン/メチルエチルケトン混合溶媒に溶解可能な昇華性染料であり、色材層用塗工液1、及び以下の色材層用塗工液3に含まれる「ディスパースイエロー54」は、トルエン/メチルエチルケトン混合溶媒に分散可能な色材であると判断された。また、以下の色材層用塗工液4中に含まれる下記一般式(4)で示される染料は、トルエン/メチルエチルケトン混合溶媒に溶解可能な昇華性染料であると判断された。なお、下記一般式(3)で示される「C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体」は、トルエン/メチルエチルケトン混合溶媒に分散可能な色材であり、「ディスパースイエロー54」の分散性を向上させるための分散剤としても機能している。
<背面層用塗工液>
・ポリビニルアセタール樹脂 60.8部
(エスレックKS−1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート 4.2部
(バーノックD750 大日本インキ化学工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛 10部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・ステアリン酸亜鉛 10部
(SZ−PF 堺化学工業(株))
・タルク 5部
(ミクロエースP−3 日本タルク工業(株))
・ポリエチレンワックス 10部
(ポリエチレンワックス3000 東洋アドレ(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 100部
<染料プライマー層用塗工液1>
・ポリビニルピロリドン樹脂 3部
(K−90 ISP社)
・アルミナゾル(平均1次粒子径10×100nm、固形分10%) 30部
(アルミナゾル200 日産化学工業(株))
・水 50部
・IPA(イソプロピルアルコール) 17部
(色材層用塗工液1の作製)
下記色材層用塗工液1の組成のとおり、色材、分散剤、バインダー樹脂、ポリエチレンワックス、溶剤、及び粒径2.0mmジルコニアビーズ250質量部をガラス瓶に入れ密閉し、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いで前記ジルコニアビーズを取り除いてから、粒径0.1mmのジルコニアビーズ250質量部をガラス瓶に入れ、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて24時間分散を行い、色材層用塗工液1を作製した。
<色材層用塗工液1>
・ディスパースイエロー201 2.72部
・ディスパースイエロー54 2.3部
・下記一般式(3)で示される顔料 0.42部
(C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体)
・アクリル系ブロック型ポリマー分散剤 1.7部
(BYK−LPN21116 重量平均分子量8000 ビックケミー社)
・ポリビニルアセトアセタール樹脂 2.05部
(KS−5 積水化学工業(株))
・ポリエチレンワックス(粒径 5μm ) 0.09部
・トルエン 33部
・メチルエチルケトン 33部
Figure 0006248546
(実施例2)
染料プライマー層用塗工液1を下記組成の染料プライマー層用塗工液2に変更した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例2の熱転写シートを得た。
<染料プライマー層用塗工液2>
・ウレタン樹脂(固形分35%) 10部
(F−2850D 第一工業製薬(株))
・アルミナゾル(平均1次粒子径10×100nm、固形分10%) 15部
(アルミナゾル200 日産化学工業(株))
・水 37.5部
・IPA(イソプロピルアルコール) 37.5部
(実施例3)
色材層用塗工液1を下記組成の色材層用塗工液2に変更した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例3の熱転写シートを得た。
<色材層用塗工液2>
・ディスパースイエロー54 3.31部
・上記一般式(3)で示される顔料 0.20部
(C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体)
・アクリル系ブロック型ポリマー分散剤 1.19部
(BYK−LPN21116 重量平均分子量8000 ビックケミー社)
・ポリビニルアセタール樹脂 1.44部
(KS−5 積水化学工業(株))
・トルエン 33部
・メチルエチルケトン 33部
(実施例4)
実施例1の色材層用塗工液1にかえて、下記の方法で作製した色材層用塗工液3を、塗工量が固形分換算で0.5g/m2となるように染料プライマー層上に塗工し、乾燥させることで第1の色材層を形成し、当該第1の色材層上に、上記組成の色材層用塗工液2を、塗工量が固形分換算で0.5g/m2となるように塗工し、乾燥させることで第2の色材層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、第1の色材層と第2の色材層とが積層されてなる色材層が設けられた実施例4の熱転写シートを得た。なお、色材層用塗工液2は、上記色材層用塗工液1と同様の作製方法により作製した。
(色材層用塗工液3の作製)
下記色材層用塗工液3の組成のとおり、色材、バインダー樹脂、ポリエチレンワックス及び溶剤をガラス瓶に入れ密閉し、50℃で1時間加熱後、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて30分振とうし、色材層用塗工液3を作製した。
<色材層用塗工液3>
・ディスパースイエロー201 3.51部
・ポリビニルアセトアセタール樹脂 2.63部
(KS−5 積水化学工業(株))
・ポリエチレンワックス 0.06部
(粒径 5μm )
・トルエン 33部
・メチルエチルケトン 33部
(実施例5)
色材層用塗工液1のディスパースイエロー201(2.3部)を、下記一般式(4)で示される昇華性染料(2.3部)に変更した色材層用塗工液4を用いた以外は全て実施例1と同様にして、実施例5の熱転写シートを得た。
Figure 0006248546
(実施例6)
染料プライマー層用塗工液1を下記組成の染料プライマー層用塗工液3に変更した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例6の熱転写シートを得た。
<染料プライマー層用塗工液3>
・ポリビニルアルコール 3部
(PVA−203 株式会社クラレ)
・アルミナゾル(平均1次粒子径10×100nm、固形分10%) 15部
(アルミナゾル200 日産化学工業(株))
・水 37.5部
・メタノール 37.5部
(比較例1)
染料プライマー層用塗工液1を、下記組成の染料プライマー層用塗工液Aに変更した以外は全て実施例1と同様にして、比較例1の熱転写シートを得た。
<染料プライマー層用塗工液A>
・ポリビニルピロリドン樹脂 3部
(K−90 ISP社)
・水 50部
・イソプロピルアルコール 17部
(比較例2)
色材層用塗工液1を、上記組成の色材層用塗工液3に変更した以外は、全て実施例1と同様にして比較例2の熱転写シートを得た。
(最高濃度評価)
テストプリンターを用いて、各実施例、及び比較例の各熱転写シートと、下記条件で作製した熱転写受像シートを組み合わせて、下記印画条件で、イエローの階調パターンを印画した。最高濃度の評価は、最大エネルギーをかけたときの濃度を測定し、以下の評価基準に基づいて行った。反射濃度は、分光測定器(グレタグマクベス社製 spectrolino)により測定した。評価結果を表1に示す。
(印画条件)
・サーマルヘッド:F3598(東芝ホクト電子株式会社製)
・発熱体平均抵抗値:5176(Ω)
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印画電力:0.12(W/dot)
・1ライン周期:2(msec.)
・パルスDuty:85%
・印画開始温度:35.5(℃)
「評価基準」
○:濃度が2.1以上である。
△:濃度が2.0以上2.1未満である。
×:濃度が2.0未満である。
(濃度安定性評価)
テストプリンターを用いて、各実施例、及び比較例の各熱転写シートと、下記条件で作製した熱転写受像シートを組み合わせて、上記最高濃度の評価と同じ印画条件で、イエロー階調パターンを印画した。濃度安定性の評価は、60%エネルギーをかけたときのハイライト部の濃度を測定し、以下の評価基準に基づいて行った。反射濃度は、分光測定器(グレタグマクベス社製、spectrolino)により測定した。評価結果を表1に示す。
「評価基準」
○:濃度が0.6未満である。
△:濃度が0.6以上0.8未満である。
×:濃度が0.8以上である。
(熱転写受像シートの作成)
多孔質ポリエチレンフィルム(トヨパール−SS P4255 東洋紡績(株)製 厚さ35μm)からなる多孔質フィルム層上に、下記組成の中間層用塗工液、受容層用塗工液をグラビアリバースコート方式で、順次塗布、乾燥して、中間層、受容層を形成した。その中間層、受容層の設けられた面と反対面の多孔質ポリエチレンフィルムに、下記組成の接着層用塗工液を用いて、グラビアリバースロールコート方式で塗布、乾燥して、接着層を形成し、RC原紙(155g/m2、厚さ151μm)(三菱製紙(株))と貼り合わせ熱転写受像シートを作製した。上記の各々の塗工量は、全て固形分で、中間層は1.5g/m2、受容層は5.0g/m2、接着層は5g/m2であった。
<中間層用塗工液>
・ポリエステル樹脂 50部
(ポリエスターWR−905 日本合成化学工業(株))
・酸化チタン 20部
(TCA888 (株)トーケムプロダクツ)
・蛍光増白剤 1.2部
(ユビテックスBAC チバ・スペシャリティーケミカルズ(株))
・水/イソプロピルアルコール=1/1 28.8部
<受容層用塗工液>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 60部
(ソルバインC 日信化学工業(株))
・エポキシ変性シリコーン 1.2部
(X−22−3000T 信越化学工業(株))
・メチルスチル変性シリコーン 0.6部
(X−24−510 信越化学工業(株))
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 5部
<接着層用塗工液>
・ウレタン樹脂 30部
(タケラックA−969V 三井武田ケミカル(株))
・イソシアネート 10部
(タケネートA−5 三井武田ケミカル(株))
・酢酸エチル 100部
(保存性評価1(キック評価))
熱転写シートの保存性を判断するために背面層へのキック(汚染性)を評価した。キックの評価は、各実施例、及び比較例の熱転写シートの色材層面と、背面層面とを重ね合わせて20kg/cm2の荷重を加え40℃90%RHの環境に98時間保存し、背面層面への色材の移行性を評価した。移行性の評価は、保存前後の背面層面を、分光測定器(グレタグマクベス社 spectrolino)により測定し、下記式で色差(ΔE*ab)を求めることにより行ない、下記の評価基準に基づいてキックの評価を行った。評価結果を表1に併せて示す。なお、各実施例、及び比較例の熱転写シートの色材層と重ね合わせる背面層は、上記各実施例、及び比較例の熱転写シートで作製した背面層と同じものを使用した。
色差ΔE*ab=((Δa*2+(Δb*21/2
CIE1976 La**表色系(JIS Z8729(1980))参照
Δa*=a*(保存後)−a*(保存前)
Δb*=b*(保存後)−b*(保存前)
なお、a*及びb*は、CIE1976L***表色系に基づくものであり、a*及びb*は、知覚明度指数を表す。
また、ΔE*abの値が小さいほど、汚染性が少ない、換言すれば、キックの度合が少ないことを示す。
「評価基準」
○・・・ΔE*abが10未満である。
△・・・ΔE*abが10以上15未満である。
×・・・ΔE*abが15以上である。
(保存性評価2(地汚れ評価))
熱転写シートの保存性を判断するために印画物の地汚れを評価した。評価は、各実施例、及び比較例の熱転写シートを50℃80%RHの環境に60時間保存したものと、保存していないものを準備し、所定の受像紙で印画し、それぞれの印画物のエネルギーをかけていない白地の部分について、分光測定器(グレタグマクベス社 spectrolino)により測定し、下記式で色差(ΔE*ab)を求めることにより行ない、下記の評価基準に基づいて地汚れの評価を行った。評価結果を表1に併せて示す。
色差ΔE*ab=((Δa*2+(Δb*21/2
CIE1976 La**表色系(JIS Z8729(1980))参照
Δa*=a*(保存後)−a*(保存前)
Δb*=b*(保存後)−b*(保存前)
なお、a*及びb*は、CIE1976L***表色系に基づくものであり、a*及びb*は、知覚明度指数を表す。
また、ΔE*abの値が小さいほど、高温・高湿環境下における染料析出が少なく、保存性が高いことを示す。
「評価基準」
○・・・ΔE*abが0.2未満である。
△・・・ΔE*abが0.2以上0.3未満である。
×・・・ΔE*abが0.3以上である。
Figure 0006248546
1・・・基材
2・・・色材層
2A・・・第1の色材層
2B・・・第2の色材層
5・・・背面層
10x・・・所定の溶媒に分散可能な色材
10y・・・所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料
100・・・熱転写シート
100X・・・比較の熱転写シート

Claims (3)

  1. 基材の一方の面に色材層が設けられた昇華型熱転写シートであって、
    前記基材と前記色材層との間には、染料プライマー層が設けられ、
    前記色材層は、所定の溶媒と、昇華性染料と、下記の特定方法により、当該所定の溶媒に分散可能であると特定される色材を含有しており、
    前記所定の溶媒には、1つ、又は複数の溶媒が含まれ、前記所定の溶媒が複数である場合、前記色材は、当該複数の溶媒の全てに対し分散可能であると特定される色材であり、
    前記色材が、下記一般式(2)で示される色材であり、
    前記染料プライマー層は、無機顔料微粒子を含有していることを特徴とする昇華型熱転写シート。
    (特定方法)
    所定の溶媒に、目的とする色材を2w/v%の量となるように添加し、50℃にて1時間加熱撹拌する。次いで、得られた液を25℃にて60時間放置した後に、目的とする色材の析出の有無を目視で確認する。このときに、目的とする色材の析出を目視で確認できなかった場合には、目的とする色材は、所定の溶媒に溶解可能な色材であると特定する。一方、目的とする色材の析出を目視で確認できた場合には、目的とする色材は、所定の溶媒に分散可能な色材であると特定する。所定の溶媒が複数である場合、それぞれについて行う。
    Figure 0006248546
    (一般式(2)におけるR1〜R5は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはその誘導体又はスルホン酸基(−SO3H)、又はスルホンアミド基で置換させたスルホン化誘導基を表す。)
  2. 前記昇華性染料が、下記の特定方法により、前記所定の溶媒に溶解可能であると特定される昇華性染料であり
    前記所定の溶媒が複数である場合、前記昇華性染料は、当該複数の溶媒の少なくとも1つに対し溶解可能であると特定される昇華性染料であることを特徴とする請求項1に記載の昇華型熱転写シート。
    (特定方法)
    所定の溶媒に、目的とする昇華性染料を2w/v%の量となるように添加し、50℃にて1時間加熱撹拌する。次いで、得られた液を25℃にて60時間放置した後に、目的とする昇華性染料の析出の有無を目視で確認する。このときに、目的とする昇華性染料の析出を目視で確認できなかった場合には、目的とする昇華性染料は、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料であると特定する。一方、目的とする昇華性染料の析出を目視で確認できた場合には、目的とする昇華性染料は、所定の溶媒に分散可能な昇華性染料であると特定する。所定の溶媒が複数である場合、それぞれについて行う。
  3. 基材の一方の面に色材層が設けられた昇華型熱転写シートであって、
    前記色材層は、基材側から、第1の色材層、第2の色材層がこの順で積層された積層構造を呈し、
    前記基材と前記色材層との間には、染料プライマー層が設けられ、
    前記第1の色材層は、第1の溶媒と、下記の特定方法により、当該第1の溶媒に溶解可能であると特定される昇華性染料を含有しており、
    前記第1の溶媒には、1つ、又は複数の溶媒が含まれ、前記第1の溶媒に前記複数の溶媒が含まれる場合、前記昇華性染料は、当該複数の溶媒の少なくとも1つに対し溶解可能であると特定される昇華性染料であり、
    前記第2の色材層は、第2の溶媒と、下記の特定方法により、当該第2の溶媒に分散可能であると特定される色材を含有しており、
    前記第2の溶媒には、1つ、又は複数の溶媒が含まれ、前記第2の溶媒に前記複数の溶媒が含まれる場合、前記色材は、当該複数の溶媒の全てに対し分散可能であると特定される色材であり、
    前記色材が、下記一般式(2)で示される色材であり、
    前記染料プライマー層は、無機顔料微粒子を含有していることを特徴とする昇華型熱転写シート。
    (特定方法)
    第1の溶媒に、目的とする昇華性染料を2w/v%の量となるように添加し、50℃にて1時間加熱撹拌する。次いで、得られた液を25℃にて60時間放置した後に、目的とする昇華性染料の析出の有無を目視で確認する。このときに、目的とする昇華性染料の析出を目視で確認できなかった場合には、目的とする昇華性染料は、第1の溶媒に溶解可能な昇華性染料であると特定する。一方、目的とする昇華性染料の析出を目視で確認できた場合には、目的とする昇華性染料は、第1の溶媒に分散可能な昇華性染料であると特定する。第1の溶媒が複数である場合、それぞれについて行う。
    第2の溶媒に、目的とする色材を2w/v%の量となるように添加し、50℃にて1時間加熱撹拌する。次いで、得られた液を25℃にて60時間放置した後に、目的とする色材の析出の有無を目視で確認する。このときに、目的とする色材の析出を目視で確認できなかった場合には、目的とする色材は、第2の溶媒に溶解可能な色材であると特定する。一方、目的とする色材の析出を目視で確認できた場合には、目的とする色材は、第2の溶媒に分散可能な色材であると特定する。第2の溶媒が複数である場合、それぞれについて行う。
    Figure 0006248546
    (一般式(2)におけるR1〜R5は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはその誘導体又はスルホン酸基(−SO3H)、又はスルホンアミド基で置換させたスルホン化誘導基を表す。)
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