架設材が遊間の中心から変位したときには、前記のようにチューブの下面側に作用する幅方向両側の張力に差が生じるため、チューブの幅方向中心に関して片側の張力が過大になったときにチューブが破断する可能性がある。
本発明は上記背景より、上部構造間等の橋軸方向の相対変位の発生に拘わらず、遊間に張架される架設材を常に遊間の幅方向の中心に位置させることを可能にする架設材の支持装置を提案するものである。
請求項1に記載の発明の橋梁の遊間における架設材の支持装置は、橋軸方向に隣接する上部構造間、もしくは隣接する上部構造と下部構造間に形成される遊間に前記上部構造の幅方向に張力を与えられた状態で架設される架設材を支持する支持装置であり、
前記隣接する各上部構造の、もしくは隣接する上部構造と下部構造の、前記架設材の架設方向を向く面にそれぞれ固定される定着部材と、
この両定着部材間に跨り、前記両定着部材に対して橋軸方向に相対移動自在に、前記両定着部材に直接、もしくは間接的に常に接触したまま、前記両定着部材に前記架設材の架設側へ係止した状態で前記架設材を直接、もしくは間接的に受ける受け部材と、
この受け部材と前記各定着部材との間に、前記受け部材と前記各定着部材との間で圧縮力を負担し、復元力を発揮した状態で配置され、前記受け部材を前記架設材側へ押圧する付勢部材とを備え、前記受け部材の両側に位置する両付勢部材の復元力は等しい状態にあることを構成要件とする。
上部構造間、もしくは上部構造と下部構造間に形成される遊間は橋軸方向に形成されるため、遊間の幅方向は橋軸方向に一致する。また上部構造間、もしくは上部構造と下部構造間(以下、上部構造間等)の相対変位の内、架設材の架設位置に影響する相対変位は遊間の幅方向であるため、上部構造間等の相対変位の方向も橋軸方向に一致する。「架設材の架設位置に影響する相対変位」は架設材の断面上の中心が遊間の幅方向中心からずれる方向の相対変位を言う。上部構造は桁と床版を含み、下部構造は橋脚と橋台を含む。「上部構造の幅方向」は主に橋軸直角方向を指すが、床版が例えば平行四辺形状の場合には短辺方向を指す。
架設材は上部構造の幅方向に架設されるが、この架設材の架設方向は遊間の長さ方向でもある。請求項1における「架設材の架設方向を向く面」とは、主に架設材の架設方向に直交する面(架設材の材軸に直交する面)を指すが、架設材は図12−(a)に示すように水平に対して傾斜した状態で(勾配を持って)架設される場合の他、張力が与えられながらも懸垂曲線状に架設される場合もあることから、架設材の架設方向に直交する面に対して傾斜した面も含む。
請求項1では支持装置を構成し、組になる2本の定着部材が「架設材の架設方向を向く面」に固定されることで、定着部材は架設材に与えられている張力を面で負担しながら、上部構造、もしくは下部構造(以下、上部構造等)に伝達する状態になるため、定着部材は架設材から上部構造等に密着した状態を維持しようとする力を受ける。請求項1では2本の定着部材が「架設材の架設方向を向く面」に固定されることから、請求項1の支持装置は各定着部材が固定される、隣接する上部構造等の各固定(接合)面が互いに平行であるか、同一面内にある場合に対応する。
隣接する上部構造等の固定面が平行でありながら、同一面内にない場合には上部構造の幅方向中心に近い側の、いずれかの固定面と定着部材との間にフィラープレート等を介在させることで、上部構造幅方向の段差を解消させた状態で両定着部材を同一面内に配置することが可能である。よって上部構造等の固定(接合)面が互いに平行であるか、同一面内であれば、各定着部材の固定が可能であるため、支持装置は隣接する上部構造間、もしくは隣接する上部構造と下部構造間に設置される。
受け部材は各上部構造等に固定された両定着部材間に跨り、両定着部材に橋軸方向に相対移動自在に接触しながら、架設材の架設方向に係止する。この状態で受け部材に架設材が接続されることにより架設材の張力を負担しながら、上部構造間、もしくは上部構造と下部構造間の橋軸方向の相対変位に伴い、両定着部材に対して橋軸方向に相対移動する。請求項1における「受け部材が定着部材に直接、もしくは間接的に接触する」とは、受け部材が定着部材に直接、接触する場合と、受け部材と定着部材との間に相対移動を生じさせ易くするための低摩擦材等の支承材が介在する場合があることを言う。
受け部材は両定着部材に支持された状態では架設材の張力を負担しているため、両定着部材との間で架設材の架設方向に圧縮力を及ぼし合った状態で両定着部材に接触して安定する。受け部材は両定着部材に接触した状態を維持することで、架設材からの張力を両側の定着部材に分担させる働きをするから、図1に示すように両側の定着部材2、2に跨る長さ、すなわち遊間9の幅より大きい長さを持つ。受け部材3が架設材5から受けた張力は両側の定着部材2、2に分担されるが、受け部材3両側の付勢部材4、4の復元力が平衡すれば、受け部材3の長さ方向の中心は両定着部材2、2の端部間(遊間9)の中心に一致しようとする。
受け部材3の中心が遊間9の中心に一致すれば、受け部材3が負担する張力が両定着部材2、2に均等に分担され、受け部材3が両定着部材2、2から等しい反力を受けるため、受け部材3と各定着部材2との間の圧縮力が等しくなる。受け部材3と各定着部材2との間に生ずる圧縮力が等しければ、受け部材3と各定着部材2との間の摩擦力も等しくなるため、両側の付勢部材4、4の復元力が等しいことで、受け部材3の長さ方向の中心が両定着部材2、2の端部間の中心に一致する状態になる。
受け部材3は各定着部材2との間で圧縮力(圧力)を及ぼし合った状態で両定着部材2、2に接触することで、定着部材2との橋軸方向の相対移動時には接触面において接触したまま摺動(滑動)するか、転動する。「受け部材3が架設材5を直接、もしくは間接的に受ける」とは、架設材5が直接、受け部材3の一部である定着部34に接続される場合と、架設材5が受け部材3とは別体の定着材(定着部34)に定着(接続)された状態で、定着材が受け部材3に接続(接合)される場合があることを言う。
付勢部材4、4は受け部材3と各定着部材2との間に配置され、上部構造7、7間等に相対変位が生じていない平常状態で受け部材3と各定着部材2との間で、相対変位方向(遊間9幅方向)の圧縮力を負担し、復元力を発揮した状態に置かれる。付勢部材4の復元力は受け部材3と各定着部材2に作用し、受け部材3と定着部材2を押圧し、受け部材3は各定着部材2側に位置する付勢部材4から対向する定着部材2側を向く反力を受けた状態になる。受け部材3は両側の付勢部材4、4から架設材5側へ押圧される。定着部材2は上部構造7等に固定されているため、付勢部材4の定着部材2側の端部は定着部材2に接続されることで、定着部材2(上部構造7等)に固定された状態になるのに対し、付勢部材4の受け部材3側の端部は定着部材2に対して移動し得る状態にある。
ここで、受け部材3の両側に位置する両付勢部材4、4の復元力が等しい状態にあることで、受け部材3の両側に作用する反力が等しく、平衡するため、2本の定着部材2、2間距離(遊間9の幅)の変化、すなわち隣接する上部構造7、7間等の相対変位に拘わらず、受け部材3の中心は常に両定着部材2、2の端部間の中心に位置した状態で安定しようとする。
図1に示すように両定着部材2、2の遊間9側の端部が上部構造7等の端面に揃えられていれば、両定着部材2、2の端部間の中心は遊間9の幅方向の中心であり、受け部材3の中心は受け部材3に係止している両付勢部材4、4の端部間の中心であるため、受け部材3の中心に架設材5の断面上の中心が一致していれば、架設材5の断面上の中心が遊間9の幅方向の中心に位置することになる。但し、両定着部材2、2の遊間9側の端部は必ずしも上部構造7等の端面に揃えられる必要はなく、架設材5の断面上の中心は受け部材3の中心に一致している必要もない。
付勢部材4には主にコイルスプリングが使用されるが、皿ばね、輪ばね等も使用可能であり、ばねの種類は問われない。受け部材3両側の付勢部材4、4の復元力が等しい状態は、両付勢部材4、4にばね定数が等しいばねを使用することで得られる。
これらのばねは軸方向を受け部材3と定着部材2との間の相対移動方向に向けた状態で受け部材3と定着部材2間に配置され、軸方向の端部においてそれぞれに接続される。付勢部材4は軸方向の端部において受け部材3と定着部材2に接続されていることで、受け部材3が跨る上部構造7、7間等に上部構造7の幅方向に相対変位が生じたときには、付勢部材4が変形することにより追従する。受け部材3は架設材5からの張力を受けていることで、常に両定着部材2、2に接触した状態に保たれるため、上部構造7の幅方向の相対変位時に受け部材3の軸方向が定着部材2の軸方向に対して傾斜した状態になっても受け部材3が両定着部材2、2に接触した状態は維持される。
架設材5は例えば受け部材3に対し、架設材5の材軸に直交する任意の軸の回りに回転自在に受け部材3に接続(定着)されることにより(請求項2)、上部構造7、7間等に上部構造7の幅方向に相対変位が生じたときも、上部構造7の幅方向に架設された状態を維持することが可能になる。「架設材5の材軸に直交する任意の軸」とは、架設材5の材軸に直交する断面内を通る任意の方向の軸線を言う。架設材5が任意の軸の回りに回転自在に受け部材3に定着されることは、例えば図2に示すように架設材5先端部(端部)の受け部材3への定着面が球面状に形成され、架設材5が挿通する受け部材3の挿通孔34aが架設材5の断面積より大きい面積を持つことで可能になる。
この場合、受け部材3が跨る定着部材2、2間に上部構造7の幅方向の相対変位が生じたときには、受け部材3が両定着部材2、2に対して傾斜しようとするが、架設材5が材軸に直交する任意の軸の回りに回転自在に受け部材3に接続されていることで、架設材5の軸線が相対変位前の架設材5の架設方向を向こうとするため、受け部材3の定着部材2に対する傾斜に伴って架設材5の軸線が平常時の架設材5の架設方向に対して傾斜することはない。架設材5に平常時の架設状態からの傾斜が生じないことで、架設材5の受け部材3への定着部(接続部)が無理な力を受けることが回避され、架設材5の破断が防止される。
請求項3に記載の発明の橋梁の遊間における架設材の支持装置は、橋軸方向に隣接する上部構造間、もしくは隣接する上部構造と下部構造間に形成される遊間に前記上部構造の幅方向に張力を与えられた状態で架設される架設材を支持する支持装置であり、
前記隣接する上部構造の内、もしくは隣接する上部構造と下部構造の内、一方の、前記架設材の架設方向を向く面に固定される支持定着部材と、他方の、橋軸方向を向く面に固定され、前記支持定着部材に対して橋軸方向に相対移動自在に、前記支持定着部材に直接、もしくは間接的に常に接触する可動定着部材と、
前記可動定着部材に対して橋軸方向に相対移動自在に、前記可動定着部材に直接、もしくは間接的に常に接触したまま、前記可動定着部材に前記架設材の架設側へ係止した状態で前記架設材を直接、もしくは間接的に受ける受け部材と、
この受け部材と前記支持定着部材との間、及び前記受け部材と前記可動定着部材との間に、それぞれの間で圧縮力を負担し、復元力を発揮した状態で配置され、前記受け部材を前記支持定着部材と前記可動定着部材が対向する側へ押圧する付勢部材とを備え、前記受け部材の両側に位置する両付勢部材の復元力は等しい状態にあることを構成要件とする。
請求項3では隣接する上部構造7、7の内、もしくは隣接する上部構造7と下部構造8の内、一方の上部構造7、もしくは下部構造8の、架設材5の架設方向を向く面に支持定着部材11が固定され、他方の上部構造7、もしくは下部構造8の、橋軸方向を向く面に可動定着部材12が固定される。支持定着部材11と可動定着部材12が固定される側が上部構造7であるか下部構造8であるかは問われず、両定着部材11、12が共に上部構造7、7に固定される場合と、図6に示すように一方の定着部材11(12)が上部構造7に、他方の定着部材12(11)が下部構造8に固定される場合がある。
「架設材5の架設方向を向く面」は前記のように主に架設材5の架設方向に直交する面であるが、上部構造7等の幅方向両側の面を指し、橋軸方向に平行な面でもある。但し、上部構造7等の側面は上部構造7の上面に直交でない場合もあるから、架設材5の架設方向に直交する面に対して傾斜した面も含む。
支持定着部材11は請求項1における定着部材2と同じく架設材5の架設方向を向く面に固定されるが、可動定着部材12は橋軸方向を向く面に固定されることから、受け部材13を支持定着部材11と可動定着部材12に跨って配置するために、可動定着部材12は支持定着部材11に対して橋軸方向に相対移動自在に配置される。支持定着部材11の固定面と可動定着部材12の固定面は互いに直交する方向等、交差する方向を向くことになる。「橋軸方向を向く面」は主に橋軸方向に直交する面であるが、橋軸方向に直交する面に対して傾斜した面も含む。
請求項1では受け部材3を支持する両定着部材2、2が上部構造7等の互いに平行な面か同一面に固定されるため、受け部材3に遊間9の幅より大きい長さを持たせることができた。これに対し、請求項3では支持定着部材11の固定面と可動定着部材12の固定面が互いに交差する方向を向くことから、可動定着部材12を上部構造7、もしくは下部構造8の、橋軸方向を向く面に固定したときに、可動定着部材12は必然的にその固定面から支持定着部材11側へ張り出す状態になるため、受け部材13に遊間9の幅より大きい長さを持たせることができない。
そこで、受け部材13を支持定着部材11と可動定着部材12のいずれか一方にのみ接触させるとすれば、支持定着部材11と可動定着部材12のいずれか一方を他方側へ張り出させることが必要になる。但し、架設材5の架設方向を向く面に固定される支持定着部材11を橋軸方向を向く面に固定される可動定着部材12側へ張り出させるとすれば、遊間9の幅を狭め、上部構造7、7間等の橋軸方向の相対変位を阻害することになるため、図6に示すように可動定着部材12を支持定着部材11側へ張り出させる形にならざるを得ない。
可動定着部材12を支持定着部材11側へ張り出させるとすれば、可動定着部材12は支持定着部材11に長さ方向の一部区間で、上部構造7の幅方向外側から重なることになるため、受け部材13は支持定着部材11に重なる可動定着部材12に直接、もしくは間接的に接触し、架設材5の張力の作用方向には可動定着部材12に支持される形になる。請求項3では受け部材13は可動定着部材12との間で圧縮力を及ぼし合った状態で可動定着部材12に接触することで、可動定着部材12との橋軸方向の相対移動時には接触面において接触したまま摺動するか、転動する。
受け部材13が可動定着部材12に支持されることに伴い、受け部材13が負担する架設材5の張力を可動定着部材12と支持定着部材11に分担させるために、上部構造7、7間等の相対変位に拘わらず、常に可動定着部材12が支持定着部材11に接触する必要がある。この関係で、可動定着部材12は支持定着部材11に両定着部材11、12間の相対変位量を見込んだ区間に亘って重なり、架設材5の張力の作用方向に支持定着部材11に支持される状態になる。受け部材13は直接的には可動定着部材12に支持されるが、受け部材13から可動定着部材12に伝達された架設材5の張力は可動定着部材12から支持定着部材11に、両者の重なり区間を通じて伝達されるため、架設材5の張力は可動定着部材12と支持定着部材11に分担される。
図6に示すように付勢部材14、14は受け部材13と可動定着部材12間、及び受け部材13と支持定着部材11間に配置されるが、受け部材13が、支持定着部材11に重なる可動定着部材12に接触している関係で、支持定着部材11の、受け部材13との間に配置される付勢部材14が係止する係止部112は受け部材13と橋軸方向(遊間9の幅方向)に対向する位置に形成される。受け部材13は可動定着部材12に接触しているため、支持定着部材11の係止部112は可動定着部材12を上部構造7の幅方向に挟む位置に形成され、可動定着部材13は支持定着部材11の本体部(固定部111)と係止部112に挟まれ、支持定着部材11に保持された状態になる(請求項4)。
請求項4では可動定着部材12が支持定着部材11に保持された状態にあることで、上部構造7の幅方向の相対変位が生じたときにも可動定着部材12と支持定着部材11の分離が阻止され、可動定着部材12の支持定着部材11からの浮き上がりが防止されるため、付勢部材14の受け部材13、または定着部材11、12からの離脱も回避される。可動定着部材12の浮き上がりが防止されることで、可動定着部材12に支持されている受け部材13の浮き上がりに伴う架設材5への過大な張力の作用も回避される。
請求項3では受け部材13の両側に配置される付勢部材14、14の復元力が平衡することで、図6−(a)、図7に示すように両側の付勢部材14、14が係止する受け部材13の係止部132の中心は可動定着部材12の係止部(固定部121)と支持定着部材11の係止部112との間の中心に位置する。この場合の可動定着部材12の係止部(固定部121)と支持定着部材11の係止部112間の中心(受け部材13の係止部132の中心)は遊間9の中心ではないため、受け部材13に接続される架設材5の中心が遊間9の中心に一致するよう、受け部材13への架設材5の接続位置が調整される。
具体的には図6−(a)に示すように可動定着部材12の係止部(固定部121)の中心と受け部材13の係止部132の中心との間の距離をL1、遊間9の幅をL0とし、可動定着部材12の係止部(固定部121)の厚さをt1としたとき、受け部材13の係止部132の中心と架設材5の中心との間の距離L2がL2=L1−(L0−t1)/2となる位置に架設材5の中心が位置するように受け部材13への架設材5の接続位置が決められる。受け部材13に係止する付勢部材14、14の復元力が平衡しているとき、可動定着部材12の係止部(固定部121)の中心と受け部材13の係止部132の中心との間の距離L1は支持定着部材11の係止部112の中心と受け部材13の係止部132の中心との間の距離に等しい。
請求項3においても受け部材13の係止部132と可動定着部材12の係止部(固定部121)との間、及び受け部材13の係止部132と支持定着部材11の係止部112との間に配置される付勢部材14、14は平常状態で受け部材13と各定着部材11、12との間で圧縮力を負担し、復元力を発揮した状態にある。
付勢部材14、14の復元力は受け部材13と各定着部材11、12に作用し、受け部材13と定着部材11、12を押圧し、受け部材13は両付勢部材14、14から各定着部材11、12の係止部112、121間の中心を向く反力を受けた状態になり、受け部材13は各定着部材11、12の係止部112、121間の中心に位置する。各付勢部材14の定着部材11、12側の端部は定着部材11、12(上部構造7等)に固定された状態になるのに対し、受け部材13側の端部は各定着部材11、12に対して移動し得るため、受け部材13は両付勢部材14、14からの反力を受けて各定着部材11、12に対して相対移動し得る状態にある。
ここで、受け部材13の両側に位置する両付勢部材14、14の復元力が等しい状態にあることで、受け部材13の両側に作用する反力が等しく、平衡するため、支持定着部材11と可動定着部材12間距離の変化、すなわち隣接する上部構造7、7間等の相対変位に拘わらず、受け部材13の中心は常に両定着部材11、12の係止部112、121間の中心に位置した状態で安定しようとする。受け部材13に接続される架設材5の中心は受け部材13の中心が両定着部材11、12の係止部112、121間の中心に位置したときに遊間9の中心に位置するように設定されるため、上部構造7、7間等の相対変位に拘わらず、架設材5の断面上の中心が遊間9の幅方向の中心に位置することになる。
請求項3においても架設材5が受け部材13に対し、架設材5の材軸に直交する任意の軸の回りに回転自在に受け部材13に接続(定着)されていれば(請求項5)、上部構造7、7間等に上部構造7の幅方向に相対変位が生じたときも、架設材5は上部構造7の幅方向に架設された状態を維持することが可能である。「架設材5の材軸に直交する任意の軸」は請求項1の場合と同様、架設材5の材軸に直交する断面内を通る任意の方向の軸線を言う。
この場合、受け部材13が接触している可動定着部材12と支持定着部材11間に上部構造7の幅方向の相対変位が生じたときに、受け部材13がいずれかの定着部材11、12に対して傾斜しようとするが、架設材5が任意の軸の回りに回転自在に受け部材13に接続されていることで、架設材5の軸線は相対変位前の架設材5の架設方向を向こうとするため、受け部材13の傾斜に伴って架設材5の軸線が架設材5の架設方向に対して傾斜することはない。上部構造7の幅方向の相対変位に拘わらず、架設材5に傾斜が生じないことで、架設材5の受け部材13への定着部(接続部)が無理な力を受けることはなく、架設材5の破断が防止される。
請求項1では隣接する上部構造等の、架設材の架設方向を向く面のそれぞれに定着部材を固定し、両定着部材間に架設材を受ける受け部材を橋軸方向に相対移動自在に配置すると共に、受け部材と各定着部材間に付勢部材を配置し、両付勢部材の復元力を等しくするため、受け部材の両側に作用する反力を等しい状態に保つことができる。この結果、隣接する上部構造間等の相対変位に拘わらず、受け部材の中心を常に両定着部材の端部間の中心に位置した状態で安定させることができるため、架設材の断面上の中心を遊間の幅方向の中心に一致させることが可能になる。
請求項3では隣接する上部構造等の内、一方の架設材の架設方向を向く面に支持定着部材を固定し、他方の橋軸方向を向く面に可動定着部材を固定し、両定着部材間に架設材を受ける受け部材を橋軸方向に相対移動自在に配置すると共に、受け部材と各定着部材間に付勢部材を配置し、両付勢部材の復元力を等しくするため、受け部材の両側に作用する反力を等しい状態に保つことができる。この結果、隣接する上部構造間等の相対変位に拘わらず、受け部材の中心を常に両定着部材の端部間の中心に位置した状態で安定させることができるため、受け部材に接続される架設材の中心が遊間の中心に一致するよう、受け部材への架設材の接続位置を調整しておくことで、架設材の断面上の中心を遊間の幅方向の中心に一致させることが可能になる。
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は橋軸方向に隣接する上部構造7、7間、もしくは隣接する上部構造7と下部構造8間に形成される遊間9に上部構造7の幅方向に張力を与えられた状態で架設される架設材5を支持する支持装置1の構成例と設置例を示す。
図1に示す支持装置1は支持装置1が跨る上部構造7、7における、もしくは上部構造7と下部構造8における支持装置1の設置面(固定面)が互いに平行であるか、同一面内にある場合に使用される。図1−(a)は上部構造7の平面(図12−(a)の上部構造7を上から見た様子)を、(b)は(a)のa−a線の方向に見た様子を示している。図2は図1−(b)のb−b線の断面を示し、図3は架設材5の軸方向両端部に配置される支持装置1、1と架設材5の関係を示している。架設材5にはワイヤ、PC鋼線、鉄筋等、張力を負担し得る材料が使用される。
支持装置1は隣接する両上部構造7、7の、もしくは隣接する上部構造7と下部構造8の、架設材5の架設方向を向く面(以下、架設方向面)に固定される定着部材2、2と、両定着部材2、2間に跨り、両定着部材2、2に対して橋軸方向に相対移動自在に配置され、架設材5を受ける受け部材3と、受け部材3と各定着部材2との間に配置され、受け部材3を架設材5側へ押圧する付勢部材4、4を構成要素とする。
受け部材3には架設材5が直接、もしくは間接的に接続され、受け部材3は両定着部材2、2には架設材5の架設側へ係止した状態にある。付勢部材4は受け部材3と各定着部材2との間で圧縮力を負担し、受け部材3側へ復元力を発揮した状態で配置される。上部構造7、7間等に橋軸方向の相対変位が生じていない平常時には受け部材3の両側に位置する両付勢部材4、4の復元力は等しい状態にあり、受け部材3の長さ方向の中心(架設材5の断面上の中心)は遊間9の幅方向中心に位置し、中立位置にある。付勢部材4には主にコイルスプリングが使用され、付勢部材4は軸方向を受け部材3と定着部材2の長さ方向(橋軸方向)に向けて配置される。
図1は両定着部材2、2が隣接する上部構造7、7の架設方向面に固定された例を示しているが、いずれか一方の定着部材2が上部構造7の架設方向面に固定され、他方の定着部材2が下部構造8の架設方向面に固定される場合もある。図1は支持装置1を隣接する上部構造7、7間に設置した様子を示しているため、以下では支持装置1が跨る上部構造7、7間、もしくは上部構造7と下部構造8間を上部構造7、7間に代表させる。上部構造7は主に桁、もしくは床版であり、下部構造8は主に橋脚、もしくは橋台である。
受け部材3は両定着部材2、2に直接、接触するか、四フッ化エチレンシート(PTFE)その他の低摩擦材等の滑り材、あるいはローラ等の転がり材等の支承材6を介して間接的に接触する。上部構造7、7間の橋軸方向の相対変位時に、あるいは相対変位後に、中立位置から変位している受け部材3の長さ方向の中心をその両側に位置する付勢部材4、4の復元力によって早期に中立位置に復帰させる上では、両側の付勢部材4、4の復元力を短時間で平衡させるために、受け部材3と定着部材2との間の摩擦力は小さい方がよい。
定着部材2は図1〜図3に示すように上部構造7等の架設方向面に重なって固定される板状等の固定部21と、付勢部材4の、受け部材3の反対側の一端が係止した状態で接続される板状等の係止部22を持つ。固定部21には図4に示すように基本的に定着部材2が上部構造7に固定されるためのボルト、アンカーボルト、あと施工アンカー等のアンカー23が挿通するための挿通孔2aが形成され、固定部21は例えばアンカー23が挿通孔2aを挿通し、上部構造7等の躯体(コンクリート)中に埋設されることにより上部構造7等に固定される。係止部22の背面側(付勢部材4の反対側)には付勢部材4の反力を受けることによる係止部22の転倒、もしくは変形を防止するためのリブ24が突設される。リブ24は係止部22の背面と固定部21の表面間に跨って溶接等により双方に接合される。
図面では上部構造7が既存の躯体である前提で、図1−(a)に示すようにアンカー23に金属拡張系のあと施工アンカーを使用しているが、アンカー23の種類、形態は問われず、上部構造7は新設の場合もある。上部構造7はまた、鉄筋コンクリート造に限らず、鋼製の場合もある。上部構造7が新設の鉄筋コンクリート造の場合には上部構造7の構築時に上部構造7に定着されるアンカーボルト等のアンカー23により定着部材2、2が固定される。上部構造7が鋼製の場合、アンカー23にはボルト等が使用されるが、固定部21が溶接等により直接、固定される場合にはアンカー23と挿通孔2aは不要になる。アンカー23は固定部21の挿通孔2aを挿通し、上部構造7の躯体(コンクリート)中に埋設されることにより定着部材2を上部構造7の架設方向面に固定する。
固定部21の表面は受け部材3が接触しながら、長さ方向に移動する移動面になる。この移動面は具体的には摺動面(滑動面)、もしくは転動面になる。移動面には受け部材3の摺動(滑動)を生じさせ易くするための上記支承材6が接着、もしくは付着、あるいは設置等させられる。図面では図2に示すように固定部21の表面に支承材6の配置領域を区画する凸部21a、21aを突設し、この凸部21a、21a間に支承材6を敷設し、接着している。
固定部21表面の、幅方向両側には図4に示すように固定部21の表面側に配置される受け部材3の定着部材2に対する相対移動を案内しながら、受け部材3の幅方向への移動を拘束すると共に、各定着部材2と受け部材3との間に配置される付勢部材4の収縮時の幅方向への変形(座屈)を拘束するための板状等の案内部25、25が突設される。定着部材2は全体的には固定部21と案内部25、25から溝形の断面形状に、あるいは溝形に近い断面形状に形成される。
受け部材3の本体部30は長さ方向両側の定着部材2、2に沿って定着部材2の長さ方向に相対移動可能となるために、定着部材2の固定部21の表面上を摺動等しながら、案内部25、25に幅方向の移動が拘束され、保持されるよう、定着部材2に内接し得る溝形の断面形状、あるいは後述の接触部31と共に溝形の断面形状をし、長さ方向には相対移動時にいずれの定着部材2、2からも離脱しないだけの長さを持つ。受け部材3の長さには遊間9の幅に定着部材2に対する相対移動量を見込んだ距離を加えた大きさが与えられる。本体部30は図5−(d)に示すように少なくとも定着部材2の案内部25、25に幅方向に対向し、案内部25、25と共に付勢部材4の幅方向への変形(座屈)を拘束しながら、伸縮を案内する板状等の案内部3a、3aを持つ。
本体部30の長さ方向両側の背面側(定着部材2側)には図2に示すように平常時に両定着部材2、2の各固定部21の表面に接触した状態を維持し、各固定部21、21に沿って摺動等するための板状等の接触部31、31が形成、もしくは固定され、この各接触部31の背面側に固定部21に直接、もしくは間接的に接触し、摺動(滑動)を生じさせ易くするための支承材32が接着、もしくは付着等させられる。接触部31は図5−(c)、(d)に示すように本体部30(案内部3a、3a)の背面側に溶接等により固定される。接触部31の背面と固定部21との間に支承材6が介在する場合、支承材32は固定部21に間接的に接触する状態になる。この場合、本体部30は図5−(d)に示すように受け部材3の幅方向に対向する2枚の案内部3a、3aと両案内部3a、3a間に跨り、案内部3a、3aの定着部材2側に一体化する接触部31から溝形の断面形状に形成される。
本体部30の長さ方向中央部には受け部材3の長さ方向両側に配置される付勢部材4、4の架設材5寄りの端部が架設材5側へ係止しながら、接続される板状等の2枚の係止部33、33が受け部材3の長さ方向に互いに対向した状態で本体部30に固定され、各付勢部材4の架設材5側の端部はこの係止部33に係止しながら接続される。対向する係止部33、33間の部分には遊間9に架設される架設材5が受け部材3を貫通して定着されることから、係止部33、33間には架設材5が定着されるための板状等の定着部34が配置され、係止部33、33に固定される。
定着部34の表面は架設材5の材軸方向を向き、架設材5の材軸に直交する面をなす。定着部34を架設材5の架設方向に見たときの中央部には架設材5が挿通する挿通孔34aが形成される。挿通孔34aは図2に示すように架設材5が定着部34に対して任意の方向に傾斜し得るよう、架設材5の断面積より大きく形成される。
定着部34に定着される架設材5の張力は定着部34に一体化する係止部33、33で負担され、係止部33、33から本体部30に伝達されることと、架設材5が受け部材3を上部構造7の幅方向に貫通することから、図面では図5−(d)、(e)に示すように係止部33、33と定着部34を、係止部33、33の側面間に配置される連結部35、35と共に受け部36として箱形に組み立てた上で、本体部30に溶接等により一体化させている。
具体的には図5−(d)に示すように溝形状に形成される本体部30、30を受け部材3の長さ方向に2分割し、この2分割された本体部30、30を、受け部材3の長さ方向に見たときの受け部36の長さ(連結部35の幅)分、互いに間隔を置いて配置し、本体部30、30間に箱形の受け部36を配置し、両本体部30、30に溶接等により一体化させている。この場合、受け部材3は長さ方向両側の本体部30、30と受け部36から構成される。図面では定着部材2と受け部材3の本体部30、及び受け部36を複数枚のプレートを組み立てることにより形成しているが、定着部材2と受け部材3の形成方法と形態は任意である。
架設材5は定着部34に形成された挿通孔34aを挿通し、張力を与えられた状態で、定着部34の表面側へ突出した端部区間(定着区間)の定着部34寄りの部分においてナット37等により定着部34に定着される。架設材5の端部区間は例えば架設材5の端部に、周面に雄ねじが切られたスリーブを圧着することにより形成される。架設材5の張力は定着部34から係止部33と連結部35を通じて本体部30、30に伝達され、本体部30、30から定着部材2、2に伝達され、上部構造7等に負担される。架設材5の張力は受け部材3を両定着部材2、2に密着させ、保持させる力として利用される。
各付勢部材4の定着部材2側の端部は定着部材2の係止部22に接続され、受け部材3側の端部は受け部材3の係止部33に接続される。付勢部材4端部の接続方法は問われないが、図面では図1−(b)、図2に示すように係止部22、33の付勢部材4側にコイルスプリングの付勢部材4に内接可能な板状の接続部22a、33aを固定し、接続部22a、33aに付勢部材4を嵌合(力嵌め)等させることにより一体的に接続している。図面では受け部材3の接続部33aを係止部33を貫通するボルト(ねじ)33bにより係止部33に接続している。係止部33にはボルト33bが挿通する挿通孔33cが形成される。
図面ではまた、定着部材2の係止部22に付勢部材4の反対側から螺入するボルト22bの、係止部22から受け部材3側へ突出した先端部に接続部22aを接続しておくことで、ボルト22bの係止部22への螺入深さ(螺入位置)の調整により、付勢部材4の復元力の微調整が行えるようにしている。係止部22にはボルト22bが挿通する挿通孔22cが形成される。付勢部材4の復元力の微調整は受け部材3の接続部33aの挿通孔33cを挿通する上記ボルト33bを挿通孔33cに螺入させ、その螺入深さを調整することによっても可能である。
受け部材3の両側に配置された付勢部材4、4の復元力は静止している限り、常に等しい状態にあり、前記のように上部構造7、7間に相対変位が生じていないときには、受け部材3の長さ方向の中心は遊間9の中心に位置し、架設材5の断面上の中心が遊間9の中心に一致している。両付勢部材4、4の復元力が等しく保たれることは具体的には両付勢部材4、4のばね定数が等しく、自然長が等しい場合に、各付勢部材4の両係止部22、33間での収縮量が等しくなるように設定されることで得られ、結果として受け部材3に長さ方向両側から作用する付勢部材4、4の復元力が平衡する。
支持装置1が跨る定着部材2、2間に遊間9の幅方向の相対変位が生じたときには、両付勢部材4、4が軸方向に伸縮(振動)するが、相対変位の終息に伴い、付勢部材4、4が静止したときに平衡状態に復帰するため、受け部材3の中心が遊間9の中心に位置する状態に復帰する。
定着部材2、2間に上部構造7の幅方向の相対変位が生じたときには、受け部材3が各定着部材2に対して傾斜することが想定されるが、受け部材3は架設材5からの張力を受けて両定着部材2、2に密着(接触)した状態を維持し、両側の付勢部材4、4からの復元力を受けて両定着部材2、2に跨った状態を維持しようとするため、相対変位の終息に伴い、平常時の状態に復帰する。
受け部材3が定着部材2に対して傾斜したときには、架設材5の受け部材3への定着部分(端部区間)が強制的な曲げ変形を受ける可能性があるが、図面では受け部材3の定着部材2に対する傾斜時にも架設材5の定着部分に曲げモーメントを作用させないよう、架設材5を架設材5の材軸に直交する面内の任意の軸回りに回転自在に受け部材3の定着部34に定着させている。具体的には架設材5を受け部材3の定着部34に定着しているナット37の定着部34側に、定着部34側に球面を有する座金38を配置すると共に、座金38の定着部34側に、座金38側に球面を有する受け座39を配置し、定着部34に固定している。併せて定着部34の挿通孔34aに架設材5の断面積より大きい面積を与えている。受け座39は定着部34に固定されるため、図2に示すように受け座39に形成される架設材5挿通用の挿通孔は定着部34の挿通孔34aと同じく架設材5の断面積より大きめに形成される。
この場合、受け部材3が定着部材2に対して傾斜しようとするとき、座金38が架設材5の端部区間及びナット37と共に、受け座39に対して架設材5の材軸に直交する面内の任意の軸回りに回転しようとするため、架設材5の軸線は常に相対変位前の架設方向を向いた状態に保たれる。
図6は隣接する上部構造7、7の内、もしくは隣接する上部構造7と下部構造8の内、一方の設置面(固定面)と他方の設置面(固定面)が互いに直交する方向等、交差する方向を向く場合に対応する支持装置10の構成例と設置例を示す。図6−(a)は上部構造7の平面を、(b)は(a)のa−a線の方向に見た様子を示している。図6は架設材5の軸方向両端部に配置される支持装置1、1と架設材5の関係を示している。図7は図6−(b)のb−b線の断面を示し、図8は架設材5の軸方向両端部に配置される支持装置10、10と架設材5の関係を示している。
図6に示す支持装置10は隣接する上部構造7、7の内、もしくは隣接する上部構造7と下部構造8の内、一方の架設材5の架設方向を向く面(架設方向面)に固定される支持定着部材11と、他方の橋軸方向を向く面(以下、橋軸方向面)に固定され、支持定着部材11に対して橋軸方向に相対移動自在に配置され、架設材5の張力の作用方向に支持定着部材11に支持される可動定着部材12と、可動定着部材12に直接、もしくは間接的に接触した状態で、可動定着部材12に対して橋軸方向に相対移動自在に配置され、架設材5の張力の作用方向に可動定着部材12に支持される受け部材13と、受け部材13の長さ方向(相対移動方向)両側に配置される付勢部材14、14を構成要素とする。
図6は支持定着部材11が上部構造7の架設方向面に固定され、可動定着部材12が下部構造8の橋軸方向面に固定された例を示しているが、支持定着部材11が下部構造8の架設方向面に固定され、可動定着部材12が上部構造7の橋軸方向面に固定されることもある。以下では支持装置10が跨る上部構造7、7間、もしくは上部構造7と下部構造8間を上部構造7と下部構造8間に代表させる。
受け部材13は図1の例と同じく、可動定着部材12に架設材5の架設側へ係止した状態で架設材5を直接、もしくは間接的に受け、付勢部材14、14は受け部材13と支持定着部材11との間、及び受け部材13と可動定着部材12との間に、それぞれの間で圧縮力を負担し、復元力を発揮した状態で配置され、受け部材13を押圧する。受け部材13の長さ方向両側に位置する両付勢部材14、14の復元力は等しい状態にある。
支持定着部材11は図1の例と同じく、上部構造7等の架設方向面に固定されることから、基本的には上部構造7等に固定される固定部111と、付勢部材14の、受け部材13の反対側の一端が係止した状態で接続される板状等の係止部112を有する。但し、図6の例では可動定着部材12が支持定着部材11に沿って移動自在に支持され、受け部材13が可動定着部材12に移動自在に支持されることから、係止部112は可動定着部材12を固定部111との間に挟む位置に配置され、可動定着部材12は架設材5の架設方向(上部構造7の幅方向)に固定部111と係止部112とに挟持される形になる。
係止部112は可動定着部材12の厚さ分、詳しくは後述の支持部122の厚さ(高さ)分、固定部111の表面から受け部材13側へ距離を置いた位置に配置される。支持定着部材11の固定部111には基本的にアンカー123が挿通するための挿通孔11aが形成され、固定部111は例えばアンカー123が挿通孔11aを挿通し、上部構造7の躯体(コンクリート)中に埋設されることにより上部構造7等に固定される。上部構造7が鋼製の場合で、上部構造7への固定部111の固定にアンカー123が使用されない場合には、挿通孔11aは形成されないこともある。可動定着部材12(支持部122)の厚さ方向(高さ方向)は上部構造7の幅方向、あるいは架設材5の架設方向である。
係止部112を固定部111の表面から距離を置いた位置に配置する関係で、固定部111の表面には図9−(b)に示すように上部構造7の床版を厚さ方向に見たときの、可動定着部材12の幅に相当する間隔を置き、間隔保持部113、113が並列して固定され、この並列する間隔保持部113、113の上に、係止部112を支持する支持部114が固定される。支持部114は固定部111と共に、可動定着部材12を可動定着部材12の厚さ方向、もしくは高さ方向(架設材5の架設方向)に保持(挟持)する。係止部112は支持部114の表面側に、可動定着部材12が固定される上部構造7、もしくは下部構造8の橋軸方向面に対向した状態で固定される。係止部112の受け部材13の反対側の面には係止部112の転倒、変形を防止するためのリブ115が突設される。
固定部111の表面には図6−(a)、図7に示すように固定部111に対する可動定着部材12の相対移動を生じさせ易くするための支承材15が接着等させられるが、可動定着部材12は固定部111と支持部114に挟まれるため、支持部114の背面側(可動定着部材12側)にも支承材15が接着等させられる。支持部114の支承材15は支持部114の背面に形成、もしくは固定される接触部116に接着等させられる。固定部111の表面に接着等させられる支承材15の接着(配置)領域は固定部111に形成、もしくは突設される凸部117によって区画される。
可動定着部材12は上部構造7、もしくは下部構造8の橋軸方向面に固定される固定部121と、固定部121から支持定着部材11側へ張り出して固定部121に溶接等により一体化し、受け部材13を支持する支持部122を持つ。固定部121にはアンカー123が挿通するための挿通孔12aが形成され、支持部122は支持定着部材11の固定部111に対して支持定着部材11の長さ方向(橋軸方向)に相対移動自在に、固定部111に直接、もしくは間接的に接触した状態に支持定着部材11に支持される。支持部122の背面(支持定着部材11側の面)と固定部111の表面(可動定着部材12側の面)との間に前記した支承材15が介在する場合、支持部122は固定部111に間接的に接触した状態になる。
支持部122は支持定着部材11の固定部111と支持部114に挟まれることにより架設材5の架設方向に保持(挟持)される。固定部121は支持定着部材11の係止部112と可動定着部材12の長さ方向(付勢部材14の軸方向)に対向し、後述の受け部材13の係止部132とも対向する状態になることから、固定部121は可動定着部材12と受け部材13との間に介在する付勢部材14の一端が係止しながら、接続されるための係止部を兼ねる。
可動定着部材12の支持部122の背面(支持定着部材11側の面)には支持定着部材11の固定部111に対する相対移動を生じ易くするための支承材15が接着等させられ、支持部122の表面(受け部材13側の面)には支持部114に対する相対移動を生じ易くするためと、支持部122に支持される受け部材13の相対移動を生じ易くするための支承材15が接着等させられる。支持部122の背面と表面に接着等させられる支承材15の接着(配置)領域は支持部122の背面と表面に形成、もしくは突設される凸部124によって区画される。
可動定着部材12の支持部122には架設材5が接続(定着)される受け部材13が可動定着部材12の長さ方向に相対移動自在に支持されることから、支持部122には受け部材13に定着されている架設材5が挿通し、架設材5の接触を防止するための挿通孔12bが形成される。挿通孔12bは図10−(a)に示すように支持部122の長さ方向に、支持部122に対する受け部材13の相対移動量を見込んだ長さを持つ長孔状に、架設材5の架設方向に貫通して形成される。支持部122も基本的には複数枚のプレートを組み立てることにより形成されるが、支持部122の形成方法と形態も任意である。
受け部材13は可動定着部材12の支持部122に直接、もしくは間接的に接触しながら、架設材5の架設方向に支持され、架設材5を支持する板状の定着部131と、定着部131の表面側(可動定着部材12の反対側)に突設され、付勢部材14、14が係止した状態で接続される係止部132を持ち、定着部131の一部に架設材5が定着される。定着部131には架設材5が貫通する挿通孔131aが形成される。係止部132の厚さ方向両面に付勢部材14、14が係止しているときの両付勢部材14、14の復元力は平衡するため、係止部132の転倒は生じにくい状態にあるが、図面では安全のために図11に示すように係止部132の片面に係止部132の転倒、もしくは変形を防止するためのリブ132aを突設している。
受け部材13の定着部131の背面(可動定着部材12側の面)には受け部材13の可動定着部材12に対する相対移動を生じ易くするための支承材15が接着等させられる。定着部131背面の支承材15は支持定着部材11の支持部114背面の支承材15と同様、定着部131の背面に形成、もしくは固定される接触部138に接着等させられる。
図6−(a)に示すように遊間9の幅方向には定着部131の挿通孔131aの中心は架設材5の断面上の中心であるため、架設材5の中心が遊間9の中心に一致するように、受け部材13の係止部132の中心から挿通孔131aの中心までの距離L2はL2=L1−(L0−t1)/2の関係を満たすように設定される。
図1に示す例と同様に、支持定着部材11と可動定着部材12との間に上部構造7の幅方向の相対変位が生じたときに受け部材13の定着部131に定着されている架設材5が強制的な曲げ変形を受けないよう、図6の例においても架設材5を架設材5の材軸に直交する面内の任意の軸の回りに回転自在に定着部131に定着させている。
ここでも架設材5を定着部131に定着しているナット133の定着部131側に、定着部131側に球面を有する座金134を配置すると共に、座金134の定着部131側に、座金134側に球面を有する受け座135を配置し、定着部131の挿通孔131aに架設材5の断面積より大きい面積を与えている。この場合も受け座135は定着部131に固定されるため、図7に示すように受け座135に形成される架設材5挿通用の挿通孔は架設材5の断面積より大きめに形成される。
図面ではまた、図11に示すように定着部131の表面側(架設材5の端部区間側)に受け座135の底面側の一部が納まる版状の溝131bを形成し、図7に示すように溝131bに受け座135の厚さ方向の一部を嵌合させることにより受け座135と定着部131との一体性を確保し、受け座135の定着部131からの離脱を防止している。
付勢部材14は受け部材13の係止部132と可動定着部材12の固定部121との間と、受け部材13の係止部132と支持定着部材11の係止部112との間に配置され、軸方向の両端部において係止部132と固定部121、及び係止部132と係止部112に一体的に接続される。
この例においても付勢部材14の軸方向の一端が接続される係止部112と係止部132の少なくともいずれか一方、及び係止部132と固定部121の少なくともいずれか一方に、例えば各係止部112、132と固定部121に螺入するボルト119、137、126を付属させておくことで、ボルト119、126、137の係止部112、132、固定部121への螺入深さの調整により付勢部材14の復元力の微調整をすることは可能である。各ボルト119、126、137は付勢部材14の端部が嵌合する接続部118、136、125に螺合して係止部112、132、固定部121に螺入する。受け部材13の係止部132には厚さ方向の両面側からボルト137が螺入、あるいは挿通するため、図11に示すように厚さ方向に貫通する挿通孔132bが形成される。
定着部131の幅方向両側の背面側(支持部122側))には図6−(a)に示すように受け部材13の支持部122に対する相対移動時の幅方向の移動を拘束し、受け部材13の支持部122からの離脱を防止するための案内部139、139が形成、もしくは突設される。
図12−(a)は従来の要領で架設材5を上部構造7の幅方向両端間に架設した状況を示しているが、架設材5の架設状態は本発明においても同様になる。(b)は(a)のx−x線の断面を示している。