橋脚間、もしくは橋脚と橋台間等、橋梁の隣接する下部構造間に架設される橋桁が橋軸方向に対向する橋桁間、または橋桁と下部構造間には、車輪等の落下を防止する上で、動荷重による橋桁の撓み、温度変化等による橋桁の伸縮に関係なく、両者間の間隙(遊間)を埋める必要がある。この必要から、橋桁等間の間隙(遊間)にはその大きさの変化に追従しながら、車両等の上載荷重を支持可能な支持装置としての伸縮装置が設置される(特許文献1〜5)。
伸縮装置は舗装路面に露出した状態で設置される露出形式(特許文献3〜5)と、舗装材料中に埋設され、路面に露出しない埋設形式(特許文献1、2)とに大別される。いずれの形式においても上記した橋桁等間の遊間には舗装材料が充填されることで空隙が埋められるから、前者の露出形式は舗装材料の節減が図られることもあって、主として遊間が大きい橋桁等間に適用され、後者の埋設形式は遊間が小さい橋桁等間に適用されることが多い。遊間が大きいか小さいかは、遊間上を通過する車輪の径が遊間より大きいか否かが目安になる。
遊間が小さい橋桁等間においては、伸縮装置自体が小規模で済み、伸縮装置の上に舗装材料を充填(敷設)するだけで遊間を埋めることができるため、遊間での舗装路面の連続性を確保し易い上、伸縮装置を露出させないことによる伸縮装置自身の安定性と車両の走行安定性が高い利点がある。
一方、遊間が大きい橋桁等間において舗装材料の節減を図るために、露出形式の伸縮装置を採用する場合には、車両の車輪が伸縮装置を踏むことで、車輪(タイヤ)に抵抗を与え、車両の走行安定性を低下させる可能性がある。この他、伸縮装置の露出部分からの雨水の浸入による貯留により耐久性が低下することもあれば、常に外気に暴露されることによる劣化により寿命が低下することもある。
遊間が大きい場合に、埋設形式の伸縮装置を採用する場合には、一定領域内での舗装材料の使用量が多くなる関係で、舗装材料が弾性限界を超え易くなるため、ひび割れを発生させ易くなることも想定されるが、遊間が大きくなれば、後述のように一箇所の遊間において、1個の伸縮装置の伸縮のみでは遊間の変化に追従させることができなくなる可能性があり、この点が伸縮装置設置上の課題になる。
埋設形式(埋設型)の伸縮装置は橋桁等の端面間において端面側に形成される切欠き内に完全に納まり、遊間を跨いで橋桁等間に設置されるが、橋桁等間の相対移動に追従する必要から、伸縮装置自体が橋桁の対向する方向に伸縮自在な、あるいは相対移動自在な形態を有している(特許文献1、2)。
埋設型の伸縮装置は特許文献1のように橋桁等が対向する方向の両端部分において対向する橋桁等のそれぞれに固定(定着)され、この固定(定着)部分の中間に位置する部分が伸縮自在な形状をするか、特許文献2のように固定部分が互いに相対移動可能な状態に置かれるかのいずれかの形態になる。これらの場合、固定部分間の伸縮自在な量、または固定部分間の相対移動可能な量は伸縮装置自体の規模によって決まるため、単一の伸縮装置が追従可能な遊間の大きさには限界がある。
埋設型の伸縮装置は上記の通り、対向する橋桁等の側の上面側に形成される切欠き内に納まるが(図5参照)、例えば遊間の長さが1個の伸縮装置が跨ることが可能な程度の大きさであっても、伸縮装置の伸縮可能な量、または相対移動可能な量を超えていれば、橋桁等間に伸縮装置を設置することができない。平常状態にある伸縮装置が遊間の両側の橋桁等間に跨った状態で設置されることができたとしても、例えば収縮しきったときの伸縮装置の長さが遊間の大きさ未満であれば、収縮時に伸縮装置が遊間に落下する可能性がある。
また図5に示すように対向する橋桁等の端面間距離L1が単一の伸縮装置(長さ:L2)が跨る程度の大きさでありながら、少なくともいずれかの橋桁等の上面側に形成される切欠き2の橋軸方向の長さが大きく、対向する橋桁等の切欠き2の内周面間距離L3が単一の伸縮装置L2が跨りきれない程度の大きさである場合には、単一の、あるいは複数個の伸縮装置を単に設置するのみでは遊間の大きさの変化に追従することができない。橋軸方向の長さが大きいいずれか一方の橋桁等の切欠き上では伸縮装置が載る橋桁等自体が相対移動することがないため、伸縮装置を伸縮させることができないことによる。
ここで言う「対向する橋桁等の端面間距離」は切欠き部分より下の部分における遊間(図5におけるA1)の距離L1を指す。この距離が伸縮装置の長さL2より小さいものの、切欠き2の内周面間距離L3が伸縮装置の長さL2の数倍になる場合には、いずれか一方の橋桁等の切欠き部分に複数個の伸縮装置を直列に配列することが必要になると考えられる。図5では従来の伸縮装置に相当する部材を符号6で示しているが、従来の伸縮装置に相当する部材6が橋軸方向に複数個、間隔を置きながら、直列に配列することで、切欠き部分における遊間を埋めている。図5に示す本発明の部材(可動版)6は複数個、直列に配列することで、それを支持する滑動部材5と共に伸縮装置4を構成している。
しかしながら、図5における単一の部材6に相当する従来の伸縮装置の場合、軸方向に伸縮自在な伸縮装置を複数個、直列に配列させても、各伸縮装置の軸方向両端の支点(伸縮装置が載る橋桁等自体)が軸方向に相対移動自在な状態に支持されていなければ、伸縮装置が機能(伸縮)することができないため、対向する橋桁等の切欠きの内周面間に複数個の伸縮装置を配置しても、遊間の変化に伸縮装置を追従させることはできないことになる。伸縮装置自体が軸方向に伸縮自在であっても、その軸方向の両端部が載る部分間に相対移動が生じる状態で、伸縮装置が支持されていなければ、伸縮装置に軸方向の相対移動を生じさせることができないからである。
図5で言えば、切欠き2、2を有し、L3の長さを持つ遊間にL2の長さを持つ伸縮装置6が切欠き2内に直接(直に)設置された場合、軸方向に隣接する伸縮装置6、6が互いに連係されていない限り、橋桁1、1等の相対移動に追従して相対移動を生じることができる伸縮装置6は、隣接する橋桁1、1等に跨る最も右側に位置する伸縮装置6のみであり、一方の橋桁1等の切欠き2内に単純に納まっている伸縮装置6は橋桁1、1等の相対移動に起因して相対移動を生じることはできない。
一方、例えば図5において遊間の長さがL1だけ、あるいはL2だけである場合のように遊間が小さい橋桁等間、対向する橋桁等間の遊間に実質的に切欠きが形成されない区間には、伸縮装置を構成する複数個の環状のビームを隣接する橋桁等に支持させた状態で橋軸方向に直列に配列させることが可能である(特許文献6、特許文献7参照)。
請求項1に記載の発明の橋梁用伸縮装置は、橋梁の隣接する下部構造間に架設され、橋軸方向に対向する橋桁間、または橋桁と前記下部構造間の遊間を埋め、連続させる伸縮装置において、
前記橋桁の幅方向に並列し、対向する前記橋桁間、または前記橋桁と前記下部構造間に跨って設置され、軸方向の一端部においてその側の前記橋桁、または前記下部構造に定着され、他端部においてその側の前記橋桁、または前記下部構造に対して橋面内で相対移動自在に支持される複数本の滑動部材と、
前記橋桁の幅方向に並列する複数本の滑動部材に跨り、対向する前記橋桁間、または前記橋桁と前記下部構造間に直列に配置され、前記滑動部材に、その滑動部材に対して橋軸方向に相対移動自在に支持される複数個の可動版とを備え、
橋軸方向に対向する前記可動版間、及び前記可動版と前記橋桁間、もしくは前記可動版と前記下部構造間に、両者間の橋軸方向の分離を制限する連結部材が架設されると共に、両者間の衝突を防止し、少なくとも橋軸方向に圧縮力を受けたときに復元力を発揮する緩衝材が介在しており、
前記連結部材は前記対向する可動版、及び可動版と橋桁、もしくは可動版と下部構造のそれぞれに形成された空洞部間に、各空洞部に対して軸方向に相対移動自在に架設され、この各空洞部内に位置する前記連結部材の係止部を挟んだ両側に前記緩衝材が介在していることを構成要件とする。
橋桁の端面、または橋桁を構成する桁部材の端面は必ずしも橋軸方向に直交する方向(橋軸直角方向)に平行な面をなすとは限らず、橋軸直角方向に対して傾斜していることもある。例えば橋桁が平面上、平行四辺形状をする場合もあるが、その場合には、橋桁の幅方向が橋軸方向に直交する方向(橋軸直角方向)にはならない。
下部構造は橋脚と橋台、及び図1に示す踏掛板を含み、橋桁は隣接する下部構造間に架設され、下部構造上で橋軸方向に対向する。可動版は橋軸方向に対向する橋桁間、または橋桁と下部構造との間(以下、橋桁等間)の遊間を埋めるための基本的な構成要素になるため、原則として橋桁、または橋桁を構成する桁部材(以下、桁部材等)の幅に対応した大きさの幅を有する。
可動版は桁部材等の幅に対応した大きさの幅を有することから、可動版を支持する滑動部材は橋桁の幅方向に並列し、並列する複数本の滑動部材が可動版を支持する。図5に示すように1個(1枚)の可動版6の長さL2は隣接する橋桁1、1等間の遊間L1より大きく、可動版6は複数個(複数枚)、直列に配列することで、切欠き2の遊間L3を埋めるため、単独で車両の荷重支持能力を持つ。
「可動版6が桁部材等の幅に対応した大きさの幅を有する」とは、例えば1個(1枚)の可動版6が桁部材等の幅と同等程度の幅を有するか、幅方向に複数個(複数枚)の可動版6が配列したときに、その集合した複数個(複数枚)の可動版6の幅の合計が桁部材等の幅と同等程度の幅を有することを言う。
滑動部材5は複数個(複数枚)の可動版6が集合した状態で跨る、対向する橋桁等間(橋桁間、または橋桁と下部構造間)に跨って設置される。滑動部材5は軸方向の一端部においてその側の橋桁1、または下部構造30(以下、橋桁等)に定着され、他端部においてその側の橋桁1等に橋面内で相対移動自在に支持される。伸縮装置4は複数個(複数枚)の可動版6から構成されるため、可動版6は橋軸方向に互いに間隔を置いて配置され、複数個の可動版6は橋軸方向に互いに間隔を置いて配置された状態で滑動部材5に支持される。
滑動部材5は一端部において橋桁1等に定着されることで、その側の橋桁1等に支持されたまま、他端部においてはその側の橋桁1等の、一端部側の橋桁1等に対する相対移動に伴い、その側の橋桁1等に水平面内等、橋面内で任意の方向に相対移動(スライド)自在に支持される。「橋面内」とは、橋面である橋桁1の上面が水平面をなした状態で橋桁1が下部構造30、30間に架設されている場合での水平面内のことを言い、橋面が水平に対して傾斜している場合にはその傾斜した面内を言う。
滑動部材5が一端部において橋桁1等に支持されることは、例えば滑動部材5の橋軸方向の一端部を高さ方向に貫通するアンカー(ストッパ)が滑動部材5を支持する橋桁1等に定着されることで実現される。滑動部材5が他端部においてその側の橋桁1等に相対移動(スライド)自在に支持されることは、例えば図5中、右側の橋桁1に破線で示すように滑動部材5の他端側の端部がその側の橋桁1等の内部(空洞部)に軸方向に相対移動自在に差し込まれる(挿入される)ことで実現される。
滑動部材5の他端側の端部が橋桁1等の内部(空洞部)に差し込まれることで、対向する橋桁1、1等間の遊間への可動版6と滑動部材5の落下を防止しながら、滑動部材5が支持する複数個の可動版6の内、その橋桁1等の側に位置する可動版6の端面と橋桁1等との間のクリアランス(空隙)を適度な大きさ、すなわち可動版6の、滑動部材5(橋桁等)に対する相対移動量を見込んだ適切な大きさに設定することが可能になる。
例えば滑動部材5の他方側の端部がその側の橋桁1等の内部(空洞部3)に差し込まれることなく、橋桁1等から露出した状態にあるとすれば、滑動部材5を橋桁1等に対して相対移動させるために、滑動部材5の前記他方側の端面と橋桁1等との間に滑動部材5が相対移動するのに十分なクリアランスを確保しておくことが必要である。その上で、その側の端部に位置する可動版6の端面と橋桁1等との間にもクリアランスを確保する必要があるから、可動版6の端面と橋桁1等との間のクリアランスが過大になるため、クリアランスへの舗装材13の充填量が増大することになる。
これに対し、本発明では滑動部材5の前記他方側の端部を橋桁1等の内部に挿入することで、滑動部材5を橋桁1等に対して相対移動自在に支持させながらも、その側の可動版6を橋桁1等の側に寄せることができるため、その可動版6の端面と橋桁1等との間のクリアランス(図5におけるC)を最適な、あるいは最小の大きさに設定し、舗装材13の充填量を適量に抑えることが可能である。
滑動部材5が軸方向の一端部においてその側の橋桁1等に定着され、他端部においてその側の橋桁1等に対してスライド自在に支持されることで、滑動部材5は対向する橋桁1等間の相対移動時にも橋桁1等から水平力を受けない状態に置かれる。滑動部材5はそれが支持される橋桁1等の上面上に直接、載置されることもあるが、摩擦力の低減のために橋桁1等の上面に固定されるステンレスシート、PTFEシート等の滑り材に支持されることもある。滑動部材5の橋桁幅方向の並列数は1本の滑動部材5の支持能力と可動版6の幅によって決まる。
滑動部材自体が対向する橋桁等間に跨る長さを有し、他端においてその側の橋桁等にスライド自在に支持されることで、遊間の大きさが変化しても滑動部材が両橋桁等に支持された状態は保たれ、仮に遊間が拡大しても滑動部材や可動版が橋桁等間に落下することはない。対向する橋桁等間に相対移動が生じ、遊間の大きさが変化するときには、滑動部材は一端部においてその側の橋桁等に支持されたまま、他端部においてその側の橋桁等に対して相対移動(スライド)することにより橋桁等間の相対移動に追従する。
伸縮装置は複数個(複数枚)の可動版を有するため、可動版は互いに橋軸方向に間隔を置きながら、対向する橋桁等間に配置され、橋桁の幅方向に並列する複数本の滑動部材に、滑動部材に対して橋軸方向に相対移動自在に支持される。複数個の可動版は橋軸方向に互いに間隔(空隙)を置いて配置されることで、滑動部材に支持されたまま、両橋桁等に対しても、各隣接する可動版がそれぞれ対向する方向に互いに相対移動可能になる。
前記の通り、可動版は桁部材等の幅に対応した大きさの幅を有するため、橋桁の幅方向に並列して配置される複数本の滑動部材に支持されることで、安定した状態で対向する橋桁等に支持される。
例えば複数個の可動版が橋桁等の上に直接、載置される場合には、橋桁等間に相対移動が生じても全可動版が橋桁等に対して相対移動することができる状態にはならず、対向する橋桁等間に跨る可動版が橋桁等間の相対移動に伴って相対移動できるに留まる。これに対し、本発明では対向する橋桁等間に橋軸方向に間隔を置いて(直列に)配列する複数個(複数枚)の可動版が橋桁等に支持された滑動部材に支持された状態にあることで、全可動版が滑動部材に対して橋軸方向に相対移動可能であるため、橋桁等に対しても、各可動版は隣接する可動版に接触するまでの範囲で橋軸方向に自由に相対移動可能になる。
従っていずれか一方側の橋桁等の上に複数個の可動版が設置されていても、可動版が橋桁等に滑動部材を介して間接的に支持された状態にあることで、橋桁等自体が相対移動を生じなくても可動版は滑動部材に対して相対移動可能であるから、橋桁等に対して相対移動することが可能になる。
対向する橋桁1、1等間の切欠き2、2内においては、図5に示すように橋軸方向の間隔(空隙)は対向する可動版6、6間の他、可動版6と橋桁1等との間にも確保されるため、間隔は対向する橋桁1、1等間に可動版6の数+1個分、形成される。従って可動版6が滑動部材5に支持された平常時の状態では、対向する可動版6、6間等に間隔が確保されたときに伸縮装置4は最長(最大)になり、全間隔が閉じたときに最短(最小)になる。
橋軸方向に対向する橋桁等間の遊間に直列に配列する複数個の可動版が橋桁等間の遊間を埋めることと、各隣接する可動版が対向する方向に互いに相対移動可能であることで、可動版が橋桁等間の遊間の大きさに関係なく、遊間の変化に追従しながら遊間を埋めることができるため、可動版の配列数の調整(設定)により任意の大きさの遊間に対応することが可能である。結果として、遊間が1個の伸縮装置(可動版)の相対変形可能な量、あるいは相対移動可能な量を超えている場合にも、1個(1枚)の、もしくは複数個(複数枚)の可動版を配列させることで、遊間に可動版(伸縮装置)を設置することが可能になる。
可動版は橋軸方向に互いに間隔(距離)を置いた状態で橋桁等間の遊間に配列することで、遊間を埋める。可動版はまた、間隔を置いた範囲で橋軸方向に互いに相対移動自在であることで、橋桁等間の相対移動に起因して発生し、対向する可動版と下部構造との間の空隙の大きさの変化に追従するが、伸縮装置は複数個(複数枚)の可動版を有するため、対向する可動版間の空隙の大きさの変化にも追従する。
図5、図2に示すように橋軸方向に対向する可動版6、6間、及び可動版6と橋桁1間、もしくは可動版6と下部構造30(31、32)間に、両者間の橋軸方向の分離を制限する連結部材9が架設されると共に、両者間の衝突を防止し、少なくとも橋軸方向に圧縮力を受けたときに復元力を発揮する緩衝材11が介在し、橋軸方向に対向する可動版6と橋桁1間、または下部構造30、30間、及び可動版6、6間の相対移動可能な量(距離)が連結部材9と緩衝材11によって制限される。
緩衝材11は少なくとも圧縮力を受けて収縮したときに復元力を発揮するから、「ばね材」とも言い換えられる。「少なくとも収縮時」とは、緩衝材11が収縮時にのみ復元力を発揮する場合と、収縮時と伸長時に復元力を発揮する場合がある意味であり、緩衝材11が伸長時に復元力を発揮することは、その軸方向の一端が連結部材9の係止部9bに連結され、他端が空洞部6c(1a)の内周面に連結されている場合(請求項3)に起こる。
連結部材9は対向する各可動版6、6に形成された空洞部6c、6c間、または対向する可動版6と橋桁1等に形成された空洞部6c、1a間に、各空洞部6c、1aに対して軸方向に相対移動自在に架設される。連結部材9の、各空洞部6c、1a内に位置する範囲に、緩衝材11が係止する係止部9bが形成され、空洞部6c、1a内における係止部9bを挟んだ両側に緩衝材11、11が位置する。
可動版6と橋桁1等に形成された空洞部6c(1a)内に連結部材9の係止部9bが納まり、係止部9bを挟んだ両側に緩衝材11、11が配置されることで、緩衝材11は対向する可動版6、6間、及び可動版6と橋桁1等間の距離が拡大する向きの相対移動時と縮小する向きの相対移動時のいずれのときにも機能し、復元力を発揮する。
空洞部6c(1a)内の両側の緩衝材11、11が収縮も伸長もしていない平常状態である図3−(a)の状態から、図3−(b)に示すように対向する可動版6、6間、及び可動版6と橋桁1等間の距離が縮小する(隣接する可動版6、6同士が互いに接近する)向きの相対移動が生じたときには、各空洞部6c(1a)内で、対向する可動版6、6の端面(対向する端面)側の反対側に位置する緩衝材11、11が係止部9bと空洞部6c(1a)内の内周面から圧縮力を受けて橋軸方向に収縮することにより隣接する可動版6、6同士、及び可動版6と橋桁1等との接触(衝突)を回避し、両者の接触による衝撃を緩和する。
このとき、橋軸方向に収縮する緩衝材11、11が連結部材9の係止部9bを対向する可動版6の端面(対向する端面)側へ押すため、連結部材9に軸方向の圧縮力を作用させる。可動版6、6同士、及び可動版6と橋桁1等同士が接近することによる両者間の接触(衝突)は図5に示すように両者の端面間に介在させられる緩衝材10によって回避され、接触があったときには衝撃が緩和される。
図3−(a)の状態から、あるいは図3−(b)の状態から図3−(c)に示すように対向する可動版6、6間、及び可動版6と橋桁1等間の距離が拡大する(隣接する可動版6、6同士が互いに遠ざかる)向きの相対移動が生じたときには、各空洞部6c(1a)間に跨る連結部材9が軸方向の引張力を負担することにより可動版6、6同士の分離を回避する。
このとき、各空洞部6c(1a)内で、係止部9bに関して対向する可動版6、6の端面側に位置する緩衝材11、11が係止部9bと空洞部6c(1a)内の内周面から圧縮力を受けて橋軸方向に収縮することにより反力によって連結部材9の係止部9bに引張力を伝達すると同時に、空洞部6c(1a)の内周面と連結部材9の係止部9bとの接触による衝撃を緩和する。
対向する可動版6、6間等の距離が縮小するときの相対移動時にも、拡大するときの相対移動時にも、連結部材9の軸方向両端部が跨る空洞部6c(1a)内に位置する緩衝材11が圧縮力を負担しながら収縮することで、対向する可動版6、6間、及び可動版6と橋桁1等間の相対移動量が各空洞部6c(1a)内の緩衝材11の収縮量として分散して表れるため、全可動版6、6間、及び可動版6と橋桁1等間の相対移動量がほぼ均等になる。この結果、特定の可動版6、もしくは橋桁1等に荷重(応力)が集中し、これらに損傷を与える可能性がなくなる。
対向する可動版6、6間等の相対移動量が、各空洞部6c(1a)内に配置された緩衝材11の収縮量として分散することで、下部構造30、30間、あるいは橋桁1と下部構造30間の相対移動量が各対向する可動版6、6間の相対移動量に分散し、特定の可動版6間等に過大な相対移動量が生ずることもなくなる。
この結果、橋桁1と下部構造30間、及び対向する可動版6、6間の空隙に充填される舗装材13の伸縮変形(伸び変形と縮み変形)が伸縮装置4の全体(全対向する可動版間の変形)に分散され、特定の可動版6、6間の舗装材13に集中することがなくなるため、舗装材13の、圧縮を受けることによる圧壊と引張を受けることによる亀裂の発生も回避、あるいは抑制されることになる。
また橋軸方向に配列する複数個(複数枚)の可動版が互いに相対移動自在でありながら、滑動部材に支持されたまま、連結部材と緩衝材によって衝突と分離が回避されていることで、複数個(複数枚)の可動版を備える伸縮装置は1個の可動版が移動可能な量の複数倍の距離の相対移動に追従する能力を保有する。
対向する可動版間等の距離が縮小するときと拡大するときのいずれのときにも、全可動版間の相対移動量が均等になる状態は請求項2に記載のように、連結部材の係止部が位置する空洞部内に配置されている緩衝材の内、対向する可動版間、または可動版と橋桁間、もしくは可動版と下部構造間(可動版と橋桁等間)の対向する端面(対向する可動版間等の中心線)側に位置する緩衝材の復元力が互いに等しく、反対側に位置する緩衝材の復元力が互いに等しいことによって得られる。「復元力が等しい」とは、少なくとも収縮時に復元力を発揮するばねとしてのばね定数が等しいことを言う。
請求項2では対向する可動版6、6間等の距離が縮小するときの相対移動時には、図3−(b)に示すように対向する可動版6、6間、または可動版6と橋桁1等間の対向する端面(一点鎖線で示す中心線)の反対側(端面から遠い側)に位置する緩衝材11が圧縮力を受けるから、対向する端面を挟んだ両側の緩衝材11、11の復元力が互いに等しいことで、全可動版6、6間、及び可動版6と橋桁1等間の相対移動量が実質的に完全に均等になる状態が得られる。
同様に対向する可動版6、6間等の距離が拡大するときの相対移動時には、図3−(c)に示すように対向する可動版6、6間、または可動版6と橋桁1等間の対向する端面側(中心線側)に位置する緩衝材11が圧縮力を受けるから、対向する端面を挟んだ両側の緩衝材11、11の復元力が互いに等しいことで、全可動版6、6間、及び可動版6と橋桁1間の相対移動量が完全に均等になる状態が得られる。
特に請求項3に記載のように連結部材9の係止部9bを挟んで両側に位置する緩衝材11、11の橋軸方向の一方の端部が連結部材9の係止部9bに連結され、他方の端部が空洞部6c(1a)の内周面に連結されている場合には、図4−(a)〜(c)に示すように緩衝材11は対向する可動版6、6間等の距離が縮小するときの相対移動時(収縮時)にも、拡大するときの相対移動時(伸長時)にも復元力を発揮する状態になるため、連結部材9の係止部9bを挟んだ両側の緩衝材11、11の復元力を常に有効に利用することが可能になる。
請求項3では対向する可動版6、6間等の距離が縮小するときの相対移動時(収縮時)には、図4−(b)に示すように連結部材9の係止部9bに関して前記対向する端面(中心線)の反対側に位置する緩衝材11が圧縮力を受けて復元力を発揮するときに、対向する端面(中心線)側に位置する緩衝材11が引張力を受けることにより復元力を発揮する。逆に対向する可動版6、6間等の距離が拡大するときの相対移動時(伸長時)には、連結部材9の係止部9bに関して前記対向する端面(中心線)側に位置する緩衝材11が圧縮力を受けて復元力を発揮するときに、中心線の反対側に位置する緩衝材11が引張力を受けることにより復元力を発揮する。
対向する可動版間等の距離が縮小するときと拡大するときのいずれのときにも、地震時には対向する可動版間等の距離が縮小する状態と拡大する状態が交互に繰り返されるから、請求項3では緩衝材が係止部を挟んだ片側でのみ、復元力を発揮する場合の2倍の大きさの復元力が得られるため、相対移動時の衝撃緩和効果と相対移動後の原位置への復帰効果が高まる。
橋軸方向に対向する橋桁1、1等間に鉛直方向の相対移動が生じたときに、可動版6が滑動部材5に対して上向きに相対移動し、滑動部材5から抜け出す事態が想定される場合には、可動版6は図6、図7に示すように滑動部材5に、鉛直方向上向きに係止可能、あるいは係合可能な状態に置かれる。
可動版6が滑動部材5に上向きに係止可能な状態は、例えば図6、図7に示すように可動版6の下面側に、橋軸方向に連続し、滑動部材5が可動版6に対して下向きに係止(係合)可能な断面形状を有する挿通孔6aを形成し、この挿通孔6aに滑動部材5を挿通させることによって実現される。例えば滑動部材5がH形鋼、I形鋼等の鋼材であれば、挿通孔6aはH形鋼等の少なくとも成方向上側のフランジが納まる形状に形成される。滑動部材5が可動版6に対して下向きに係止することは、可動版6が滑動部材5に対して上向きに係止することである。
可動版が滑動部材に上向きに係止可能な状態に置かれることで、橋桁等間に生ずる鉛直方向の相対移動時における可動版の滑動部材からの抜け出しが阻止されるため、可動版の抜け出しに対する安定性が確保される。
橋軸方向に対向する可動版6、6間及び可動版6と橋桁1等間には、図1、図5に示すように両者間の空隙を埋め、両者間への雨水の浸入を防止するための、あるいは可動版6上に敷設される舗装材13を受けるための埋設材12が介在させられる。埋設材12が介在させられる可動版6、6間等の空隙は橋桁1、1等間の橋軸方向を含む相対移動時に縮小することがあるから、埋設材12には圧縮力を受けて収縮可能なゴム、合成樹脂材等の弾性体、弾塑性体の他、アスファルト等の粘弾性体等の材料が使用される。
この場合、橋軸方向に対向する可動版6、6間及び可動版6と橋桁1等間に埋設材12が介在させられることで、可動版6が直接、車輪を受けることができるため、可動版6と橋桁1間、または下部構造30、30間等の空隙(遊間)が埋設材12で埋められた伸縮装置4はそのまま露出型伸縮装置として使用状態に置かれることも可能である。但し、可動版6が露出することによる走行安定性の低下、伸縮装置4の耐久性の低下が問題視される場合には、全可動版6を包囲する領域の、可動版6上に舗装材13が設置され、可動版6とその下に位置する滑動部材5が暴露から保護される。
対向する橋桁等間に橋軸方向に直列に配置される複数個の可動版を、橋桁等に支持された滑動部材に支持された状態にすることで、可動版を滑動部材に対して橋軸方向に相対移動可能な状態にするため、橋桁等に対しても、可動版は橋桁等、または隣接する可動版に接触するまでの範囲で橋軸方向に自由に相対移動可能になる。
直列に配置される複数個の可動版が橋桁等間の遊間を埋め、橋軸方向に相対移動可能であることで、可動版が橋桁等間の遊間の大きさに関係なく、遊間の変化に追従しながら遊間を埋めることができる。この結果、可動版の配列数の調整(設定)により任意の大きさの遊間に対応することができるため、遊間の大きさが1個の伸縮装置(可動版)の相対変形可能な量、あるいは相対移動可能な量を超えている場合にも、1個、もしくは複数個の可動版を配列させることで、遊間に可動版(伸縮装置)を設置することが可能になる。
また橋軸方向に対向する可動版間、及び可動版と橋桁等との間に、両者間の橋軸方向の分離を制限する連結部材と共に、両者間の衝突を防止し、圧縮力を受けたときに復元力を発揮する緩衝材を介在させるため、緩衝材に、対向する可動版間、及び可動版と橋桁等間の距離が拡大する向きの相対移動時と縮小する向きの相対移動時のいずれのときにも復元力を発揮させることができる。
この結果、対向する可動版間等の距離が縮小するときの相対移動時にも、拡大するときの相対移動時にも、連結部材の軸方向両端部が跨る空洞部内に位置する緩衝材が圧縮力を負担しながら収縮することで、対向する可動版間、及び可動版と橋桁等間の相対移動量が各空洞部内の緩衝材の収縮量として分散するため、全可動版間、及び可動版と橋桁等間の相対移動量をほぼ均等にすることができ、特定の可動版、もしくは橋桁等に荷重が集中し、これらに損傷を与えることがない。
同時に橋桁と下部構造間、及び対向する可動版間の空隙に充填される舗装材の伸縮変形が伸縮装置の全体(全対向する可動版間の変形)に分散され、特定の可動版間の舗装材に集中することがなくなるため、舗装材の、圧縮を受けることによる圧壊と引張を受けることによる亀裂の発生も回避、あるいは抑制される。
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は橋梁の隣接する橋台31、または図示しない橋脚等の下部構造30、30間に架設され、橋軸方向に対向する橋桁(橋体)1、1間、または橋桁1と下部構造30間の遊間を埋め、連続させる伸縮装置4の構成例と設置例を示している。図1では下部構造30としての橋台31の地盤側に踏掛板32が橋台31と地盤とに跨って設置される場合に、踏掛板32と橋桁1に形成されている切欠き2に伸縮装置4を配置し、その上に舗装材13を充填している様子を示している。橋桁1は橋台31や橋脚の上に設置された積層ゴム支承、弾性滑り支承、滑り支承等の免震支承その他の支承33に支持される。
伸縮装置4は図1に示す伸縮装置4の詳細例を示した図5のy−y線断面図である図6、及びその斜視図である図7に示すように橋桁1の幅方向に並列し、対向する橋桁1、1間、または橋桁1と下部構造30間(以下、橋桁等間)に跨り、両者間の遊間A2(L3の長さ)を形成する切欠き2、2内に設置される複数本の滑動部材5と、橋桁1の幅方向に並列する複数本の滑動部材5に跨り、対向する橋桁等間の切欠き2、2内に直列に配置され、滑動部材5に、その滑動部材5に対して橋軸方向に相対移動自在に支持される複数個(複数枚)の可動版6とを備える。橋軸方向は滑動部材5の軸方向でもある。図5は特に切欠き2、2を有する、対向する橋桁1、1間の遊間A2に伸縮装置4を設置した場合の例を示している。
複数個の可動版6は橋軸方向に互いに間隔を置いて配置される。本発明の伸縮装置4は橋軸方向に複数個(複数枚)の可動版6を直列に配列させることにより対向する橋桁等間の遊間に介在させられるから、橋桁等間の遊間が複数個の可動版6が直列に配列した状態で納まる大きさを有する遊間が設置対象となる。
具体的には図5に示すように下部構造30、30間に架設された状態にある、対向する橋桁1、1の端面間の遊間A1の距離L1が1個(1枚)の可動版6の長さ(橋軸方向の長さ)L2より小さく、橋桁1、1の対向する端面側の上面に形成される切欠き2、2の対向する面間に形成される遊間A2の距離L3が複数個の可動版6を直列に配列させたときの、その複数個(n個)の可動版6の長さL2の和(n×L2)より大きい場合の橋桁等間が伸縮装置4の設置対象になる。図5は切欠き2、2の遊間A2に4個(4枚)の可動版6が配列した場合を示しているが、遊間A2には2個(2枚)以上の可動版6が配列すればよく、枚数に制限はない。
連続する切欠き2、2が形成する遊間A2に複数個の可動版6が直列に配列する場合、遊間A2の大きさL3は複数個の可動版6の長さL2の合計(n×L2)と、隣接する可動版6、6間の空隙(遊間)Bの合計、すなわち空隙Bの大きさがL4であるとしたときの空隙Bの合計((n−1)×L4)、及び可動版6と切欠き2、2内における橋桁1端面との間の空隙(遊間)Cの合計、すなわち空隙Cの大きさがL5であるとしたときの空隙Cの合計(2×L5)の和(n×L2+(n−1)×L4+2×L5)になる(L3=n×L2+(n−1)×L4+2×L5)。
滑動部材5は図5に示すように対向する橋桁等間に跨って設置され、軸方向(橋軸方向)の一端部においてその側の橋桁1、または下部構造30(以下、橋桁1等)に定着され、他端部においてその側の橋桁1等に対して橋面内で相対移動自在に支持される。
滑動部材5の軸方向の一端部は例えば図5に示すように滑動部材5を鉛直方向、もしくは成方向に貫通するアンカー等の拘束材7が橋桁1等(橋桁1、または下部構造30)に埋設されることにより橋桁1等に定着される。あるいは橋桁1等に定着される拘束材7が滑動部材5を橋桁1等側へ押さえ込み、滑動部材5を橋桁1等に保持することにより橋桁1等に定着される。
滑動部材5がH形鋼、T形鋼の他、C形鋼を背中合わせに接合した組立型のC形鋼等、橋桁1等に重なるフランジを有する鋼材である場合には、そのフランジを拘束材7が貫通する、または押さえ込むことになる。拘束材7は例えばあと施工アンカー式に橋桁1等にねじ込まれることにより、または軸部がねじ込まれるときに先端部分が拡径することにより、あるいは穿設された削孔に挿入され、モルタル等の充填材が充填されることにより橋桁1等に定着されるが、橋桁1等への定着方法は問われない。
滑動部材5は対向する橋桁1、1等間の相対移動に伴い、橋桁1等に対して橋軸方向に自由に相対移動可能になるよう、図1、図5に示すように橋桁1等上には滑動部材5との間の摩擦係数の小さい面状(シート状)、もしくは点状の滑り材8を介して設置される。滑り材8は少なくとも滑動部材5が跨る両橋桁1等上、すなわち滑動部材5の長さ方向の両端部の下に設置され、滑動部材5の長さに応じてその長さ方向の中間部の下にも設置される。
滑動部材5の軸方向の他端部は例えば図5に示すようにその側の橋桁1等の切欠き2に面した側が開放した状態で形成された空洞部3に、橋軸方向に相対移動可能に挿入されることにより橋桁1等に対して橋面内で相対移動自在に支持される。空洞部3の奥側の端面と滑動部材5の空洞部3側の端面との間には両者間に接近する向きの相対移動が生じようとしたときに、その相対移動を許容するための十分なクリアランスが確保される。
伸縮装置4を構成する複数個の可動版6は橋桁1の幅方向に並列する複数本の滑動部材5に跨り、対向する橋桁1、1等間に、橋軸方向に互いに間隔を置きながら滑動部材5上に載置され、支持される。橋軸方向に対向する可動版6、6間には両者間の相対移動時の衝突を回避するためのクリアランス(空隙B)が確保され、伸縮装置4の橋軸方向の端部に位置する可動版6とその側の橋桁1等との間には互いの相対移動時の衝突を回避するためのクリアランス(空隙C)が確保される。
可動版6が橋桁1の幅方向に並列する複数本の滑動部材5に支持された状態では、可動版6は滑動部材5から鉛直方向上向きに抜け出さないよう、図6、図7に示すように滑動部材5に上向きに係止可能な状態に置かれる。可動版6の下面側には複数本の滑動部材5が挿通する複数個の挿通孔6aが形成され、可動版6は各挿通孔6a内に滑動部材5がその軸方向に挿通することにより、滑動部材5からの抜け出しが阻止された状態で、複数本の滑動部材5に、その軸方向に相対移動自在に支持される。複数個の可動版6は現場において、または現場への搬入前の段階で、その挿通孔6aに滑動部材5を挿通させることにより滑動部材5に支持された状態になる。
滑動部材5の、挿通孔6aに挿通する部分には滑動部材5が上向きに係合する被係止部5aが形成され、挿通孔6aの、被係止部5aに対応した位置には被係止部5aに係合する係止部6bが形成される。図示するように滑動部材5が例えばH形鋼、I形鋼、組立型のC形鋼等、フランジを有する断面形状をしていれば、上側のフランジが被係止部5aになる。可動版6の挿通孔6aは滑動部材5の断面形状に倣い、滑動部材5の上側のフランジである被係止部5aを含む部分を包囲する形状をし、被係止部5aの下に位置する部分が係止部6bになる。
伸縮装置4を構成する複数個の可動版6の内、橋軸方向の端部に位置する可動版6と橋桁1等との間、及び対向する可動版6、6間には、図1、図5に示すように両者間の橋軸方向の分離を制限するための連結部材9が架設されると共に、両者間の衝突を防止し、少なくとも橋軸方向に圧縮力を受けたときに復元力を発揮する緩衝材11が介在する。
連結部材9は図5に示すように対向する可動版6と橋桁1等との間、及び可動版6、6間に跨って配置され、図6に示すように可動版6の断面内において滑動部材5が挿通する部分以外の部分に配置される。連結部材9はその両端部が跨る可動版6と橋桁1等(可動版6、6)に形成された空洞部6c、1a(6c、6c)間に、各空洞部6c、1aに対して軸方向に相対移動自在に架設され、この各空洞部6c、1a内に位置する連結部材9の係止部9bを挟んだ両側に緩衝材11、11が介在する。
連結部材9は対向する可動版6と橋桁1等の双方に形成された空洞部6c、1a、及び対向する可動版6、6の双方に形成された空洞部6c、6cに跨り、可動版6と橋桁1等の双方に対して軸方向に相対移動自在に配置される。連結部材9は図2、図3、図4に示すように空洞部6c、1a(6c、6c)間に跨る軸部9aと、軸部9aの軸方向の両端部に、空洞部6c、1aの端部に、軸方向引張力を負担するときに係合する係止部9b、9bを有する形状をする。この係止部9b、9bが係合する空洞部6c、1aの端部が被係合部6d、1bになる。
連結部材9は両端部の係止部9b、9bが空洞部6c、1a(6c、6c)内に納まるように、可動版6に対してその厚さ方向に平行移動させられることにより、可動版6と橋桁1等との間、及び可動版6、6間に架設された状態になる。
図2は図1のx−x線の矢視図であるが、ここでは空洞部6c(1a)内で係止部9bを挟んで両側に位置する緩衝材11、11の係止部9b側の端部が係止部9bに連結され、その反対側の端部が空洞部6c(1a)内周面から距離を置いて分離している様子を示している。図2に示す状態の場合、連結されていない側の緩衝材11の端部と空洞部6c(1a)内周面との間のクリアランスの範囲では、緩衝材11と空洞部6c(1a)内周面が接近する向きの相対移動時には緩衝材11が復元力を発揮せず、クリアランスがなくなった時点以降に緩衝材11が復元力を発揮する。
図3−(a)は対向する可動版6、6の空洞部6c、6c間に連結部材9が跨り、係止部9b、9bが空洞部6c、6c内で軸部9aの軸方向のいずれの向きにも移動可能な状態にあるときの様子を示す。この状態のとき、対向する可動版6、6の端面間の空隙(遊間)BにはL4の距離が確保されている。両空洞部6c内では係止部9bが図中、右側にも左側にも可動版6に対して相対移動可能な空隙(クリアランス)が確保されており、この係止部9bを挟んだ両側の空隙のそれぞれに緩衝材11、11が配置される。
緩衝材11が圧縮力を受けたときにのみ復元力を発揮する場合には、緩衝材11の、可動版6、6が対向する方向の端部はそれぞれの側である係止部9bと空洞部6cの内周面に必ずしも連結される必要はないが、引張力を受けたときにも緩衝材11に復元力を発揮させる上では、図4に示すように緩衝材11の両端部がそれぞれの側に連結される。
緩衝材11には主に図示するようなコイルスプリングの他、板ばね、皿ばね、輪ばね等のばねが使用される。コイルスプリングや皿ばね、輪ばね等のばねは軸方向が、可動版6、6が対向する方向(連結部材9の軸方向)を向いて配置される。緩衝材11は少なくとも収縮時に復元力を発揮すればよいため、緩衝材11にはまた、合成ゴム、合成樹脂等の弾性体も使用される。
軸方向が連結部材9の軸方向を向いた状態で空洞部6c内に配置される緩衝材(ばね)11は連結部材9の軸部9aを座屈防止用のガイドにし、空洞部6c(1a)の内周面と連結部材9の係止部9bに挟まれた状態で空洞部6c(1a)内に配置される。連結部材9の係止部9bに関し、可動版6、6が互いに対向する端面(中心線)から遠い側にも軸部9aが空洞部6cの内周面に向かって突出し、その側に位置する緩衝材11はその軸部9aをガイドとして配置される。係止部9bから、中心線から遠い側の空洞部6c内周面側へ突出する軸部9aは図3−(a)に示す平常時での係止部9bから空洞部6c内周面までの長さより、その側に配置される緩衝材11に、圧縮時に見込まれる収縮量分、短くなっている。
図3−(a)〜(c)は緩衝材11の軸方向両端部が空洞部6cの内周面と係止部9bに連結されていない場合の配置状態を示している。この場合、係止部9bの両側に位置する緩衝材11、11はいずれも、軸方向の引張力を負担しない状態にあるため、空洞部6cの内周面と係止部9bから圧縮力を受けたときにのみ復元力を発揮する。
緩衝材11が軸方向引張力を負担しない状態は緩衝材11の軸方向両端部の内、少なくともいずれか一方の端部がその側に位置する空洞部6c内周面か係止部9bに連結されていなければ得られるため、他方の端部はその側の空洞部6c内周面か係止部9bに連結されていることもある。図3では(b)に示すように可動版6、6が互いに対向する端面(中心線)側に位置する緩衝材11と、(c)に示すように端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11が共に係止部9bに連結されている。緩衝材11の端部が係止部9bに連結された状態は係合や埋設、あるいは留め具を用いた固定等の手段によって得られる。
図3−(b)は対向する可動版6、6が互いに接近する向きに(相対)移動したときの様子を、図3−(c)は互いに遠ざかる向きに(相対)移動したときの様子を示している。対向する可動版6、6が互いに接近する状態は双方が互いの対向する端面(中心線)寄りに一様に移動する場合と、一方が他方に対して移動する場合に生ずる。互いに遠ざかる状態も同様である。
図3−(b)は可動版6、6の接近によって対向する端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11が圧縮力を負担して復元力を発揮している状態にある。可動版6、6の接近によって端面(中心線)に近い側の空洞部6cの内周面が係止部9bに関して端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11から遠ざかり、緩衝材11から離れるため、端面(中心線)側に位置する緩衝材11、11が引張力を負担しない状態になる。図3−(c)は(b)とは逆に、対向する端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11、11が圧縮力を負担して復元力を発揮し、端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11が引張力を負担しない状態にある。
可動版6、6が互いに接近するときには、係止部9bに関し、互いの対向する端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11の軸方向のばね定数(復元力)が同一であれば、図3−(b)に示すように可動版6、6は中心線に関して一様に移動する。同様に可動版6、6が互いに遠ざかるときには、係止部9bに関し、互いの対向する端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11、11の軸方向のばね定数(復元力)が同一であれば、図3−(c)に示すように可動版6、6は中心線に関して一様に移動する。
互いの対向する端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11の軸方向のばね定数が同一であることは、伸縮装置4を構成する全可動版6、6内の、端面(中心線)から遠い側に位置する全緩衝材11のばね定数が同一であることであり、近い側に位置する緩衝材11、11の軸方向のばね定数が同一であることは、全可動版6、6内の、端面(中心線)から近い側に位置する全緩衝材11のばね定数が同一であることである。
少なくとも端面(中心線)から遠い側に位置する全緩衝材11のばね定数が同一であり、端面(中心線)から近い側に位置する全緩衝材11のばね定数が同一であることで、可動版6、6が互いに接近するときにも、遠ざかるときにも、中心線に関して各可動版6の移動量が同一、もしくはほぼ同一になるため、全可動版6、6間の空隙(遊間)Bが均等になる状態が得られる。この結果、特定の可動版6に荷重(応力)が集中する事態と、それに起因する可動版6への損傷の発生が回避されることになる。
全可動版6、6間の空隙(遊間)Bが均等になることで、特定の可動版6、6間等に過大な相対移動量が生ずることがないため、対向する可動版6、6間、及び可動版6と橋桁1等(下部構造30を含む)との間に充填される舗装材13の伸縮変形が伸縮装置4の全体(全対向する可動版6、6間等の変形)に分散される。結果として特定の可動版6、6間の舗装材13に変形が集中することがないため、舗装材13の圧壊と亀裂の発生が回避される。
特に各空洞部6c内の係止部9bの両側に位置する緩衝材11、11のばね定数が等しければ、全可動版6内の全緩衝材11のばね定数が同一であることになるため、対向する可動版6、6が接近するときと、遠ざかるときのいずれのときにも、図3−(a)に示す平常状態からの対向する可動版6、6間の相対移動量が同一、もしくはほぼ同一になる。この場合、全可動版6に使用される緩衝材11に同一(寸法)のばねを使用することができるため、材料の効率化と製作コストの削減が図られることにもなる。
可動版6、6が互いに接近した図3−(b)は上記のように端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11が圧縮力を負担して収縮し、復元力を発揮している状態にあり、端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11、11は圧縮力も引張力も負担していない状態にある。このとき、端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11が圧縮力を負担することで、その反力が係止部9bに伝達されるため、連結部材9が圧縮力を負担した状態になる。連結部材9が圧縮力を負担することで、可動版6、6同士の接触(衝突)が回避される。
可動版6、6が互いに接近するときに、万一、双方の端面が接触する可能性がある場合には、図5に示すように両端面の少なくともいずれか一方に接着(付着)、塗布、あるいは接合等される緩衝材10が他方に接触することにより接触(衝突)が回避されるか、接触時の衝撃が緩和される。
図3−(b)では端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11の係止部9b側の端部が係止部9bに連結されているように見えているが、係止部9bとそれに対向する空洞部6cの内周面との間の距離が増大するときに、その区間に存在する緩衝材11が引張力を負担しない状態は少なくとも一方の端部が連結されていないことで得られるため、端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11の係止部9b側の端部が係止部9bに連結されていないことも、両端部が連結されていないこともある。
同様に可動版6、6が互いに遠ざかった図3−(c)は端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11、11が圧縮力を負担して収縮し、復元力を発揮している状態にあり、端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11は圧縮力も引張力も負担していない状態にある。このとき、端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11、11が圧縮力を負担することで、その反力が係止部9bに伝達されるため、連結部材9が引張力を負担した状態になる。連結部材9が引張力を負担することで、可動版6、6間の分離が回避される。
図3−(c)でも端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11の係止部9b側の端部が係止部9bに連結されているように見えているが、その緩衝材11の係止部9b側の端部が係止部9bに連結されていないことも、両端部が連結されていないこともある。
図4−(a)〜(c)は緩衝材11の軸方向両端部が空洞部6cの内周面と係止部9bに連結されている場合の配置状態を示している。緩衝材11の端部が空洞部6c内周面と係止部9bに連結された状態は係合や埋設、あるいは留め具を用いた固定等の手段によって得られる。この場合、係止部9bの両側に位置する緩衝材11、11はいずれも、軸方向の圧縮力と引張力を負担する状態にあるため、空洞部6c内で係止部9bがいずれの向きに移動しても復元力を発揮する。
図4−(b)は対向する可動版6、6が互いに接近する向きに(相対)移動したときの様子を、図4−(c)は互いに遠ざかる向きに(相対)移動したときの様子を示している。対向する可動版6、6が互いに接近する状態は双方が互いの対向する端面(中心線)寄りに一様に移動する場合と、一方が他方に対して移動する場合に生ずる。互いに遠ざかる状態も同様である。
図4−(b)は可動版6、6の対向する端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11が圧縮力を負担して復元力を発揮し、端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11、11が引張力を負担して復元力を発揮した状態にある。図4−(c)は端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11、11が圧縮力を負担して復元力を発揮し、端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11が引張力を負担して復元力を発揮した状態にある。
図4の場合にも、可動版6、6が互いに接近するときには、係止部9bに関し、互いの対向する端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11の軸方向のばね定数(復元力)が同一であれば、図4−(b)に示すように中心線に関して一様に移動する。同様に可動版6、6が互いに遠ざかるときには、係止部9bに関し、互いの対向する端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11、11の軸方向のばね定数(復元力)が同一であれば、図4−(c)に示すように中心線に関して一様に移動する。
図4の場合にも、少なくとも端面(中心線)から遠い側に位置する全緩衝材11のばね定数が同一であり、端面(中心線)から近い側に位置する全緩衝材11のばね定数が同一であることで、可動版6、6が互いに接近するときにも、遠ざかるときにも、中心線に関して各可動版6の移動量が同一、もしくはほぼ同一になるため、全可動版6、6間の空隙(遊間)Bが均等になる状態が得られる。この結果、特定の可動版6に荷重(応力)が集中する事態と、それに起因する可動版6への損傷の発生が回避されることになる。
特に係止部9bの両側に位置する緩衝材11、11のばね定数が等しければ、全可動版6内の全緩衝材11のばね定数が同一であることになるため、対向する可動版6、6が接近するときと遠ざかるときのいずれのときにも、図4−(a)に示す平常状態からの対向する可動版6、6間の相対移動量が同一、もしくはほぼ同一になる。この場合、全可動版6に使用される緩衝材11に同一(寸法)のばねを使用することができ、材料の効率化と製作コストの削減が図られることにもなる。
可動版6、6が互いに接近した図4−(b)は上記のように端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11が圧縮力を負担して収縮し、復元力を発揮している状態にあり、端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11、11が引張力を負担して伸長し、復元力を発揮している状態にある。この場合、端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11が圧縮力を負担し、端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11、11が引張力を負担することで、それぞれの反力が係止部9bに伝達されるため、連結部材9が圧縮力を負担した状態になる。連結部材9が圧縮力を負担することで、可動版6、6間の接触(衝突)が回避される。
同様に可動版6、6が互いに遠ざかった図4−(c)は端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11、11が圧縮力を負担して収縮し、復元力を発揮している状態にあり、端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11が引張力を負担して伸長し、復元力を発揮している状態にある。この場合も、端面(中心線)に近い側に位置する緩衝材11、11が圧縮力を負担し、端面(中心線)から遠い側に位置する緩衝材11、11が引張力を負担することで、それぞれの反力が係止部9bに伝達されるため、連結部材9が引張力を負担した状態になる。連結部材9が引張力を負担することで、可動版6、6間の分離が回避される。
橋軸方向に対向する可動版6と橋桁1等との間、及び対向する可動版6、6間には図5に示すようにそれぞれの間の空隙B、Cを埋める埋設材12が介在させられる。埋設材12にはゴム、合成樹脂材、アスファルト等、圧縮力を負担して収縮した後、原形に復元する弾性を有する弾性体、弾塑性体、粘弾性体、あるいは圧縮力を負担して収縮した状態になる塑性体等が使用されるが、接触(衝突)時の衝撃を緩和する機能と雨水の浸透を抑制する性質を有する材料であればよい。
全可動版6を包囲する領域の、可動版6上には車両の走行安定性、及び可動版6とその下に位置する滑動部材5の暴露からの保護により伸縮装置4の耐久性の向上を図り、伸縮装置4の区間とそれ以外の区間での連続性を確保するために、図5に示すように舗装材13が設置される。舗装材13には主として骨材にアスファルト系バインダーとゴムチップ等の弾性を有する材料を混合させ、車両の通過時に適度に収縮し、通過後に復元する性質を有する弾性舗装材が使用される。