JP2010053527A - 構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】想定外地震が発生した場合でも崩壊を防止することができる構造物を提供する。
【解決手段】構造物1の自重を負担するための一次部材5を分割すると共に、それら分割した一次部材5の間に摩擦ダンパー8を設け、その摩擦ダンパー8は、一次部材5の一方に接続された筒体と、一次部材5の他方に接続されたピストンと、筒体内に充填され固化した充填材と、充填材に係合し、かつ筒体とピストンとを相対移動させる力が初動耐力P0に達したときに充填材を体積膨張させるためのジベル部と、ピストンにおける筒体内の挿入部分に設けられ、体積膨張に反発する筒体により上記粒状化した充填材が押し付けられる摩擦面とを備えたものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、土木構造物や建築構造物などの構造物の耐震構造に関するものである。
橋梁やビルなどの構造物では、耐震性を高めるために耐震構造が設けられている。このような耐震構造として、特許文献1には、橋梁の道路床組が弾性支承装置を介して主構造に支持された橋梁の耐震補強方法が提案されている。
また、他の耐震構造として、例えば、トラス橋の対傾構に制振ダンパーを設けたものがある(図9参照)。
図9に示すように、トラス橋91は、支承92と、その支承92により支持され橋軸直角方向に離間する一対の主構93と、それら主構93の上弦材94を相互に各々連結する横構95と、その横構95と各主構93の下弦材96とを連結する一対の対傾構97とを備える。各対傾構97には、座屈拘束型の制振ダンパー98が介設される。
その座屈拘束型の制振ダンパー98は、対傾構97に接続された低降伏点鋼材を鋼製の拘束管内に収容して構成され、その拘束管により低降伏点鋼材の座屈を防止しつつ、低降伏点鋼を弾塑性変形させてエネルギーを吸収するようにしている。
この図9の耐震構造では、通常時は、トラス橋91にかかる鉛直方向の死荷重および活荷重Pv(図9において白矢印で示す)を主構93により負担させ、対傾構97には死活荷重Pvを負担させないようにしている。
一方、地震発生時には、トラス橋91にかかる横方向の荷重Ph(図9において黒矢印で示す)を、対傾構97を介して制振ダンパー98に入力し、その制振ダンパー98を弾塑性変形させて、地震による振動のエネルギーを吸収するようにしている。
このように、図9の耐震構造は、制振ダンパー98の弾塑性変形により地震のエネルギーを吸収する機構であることから、制振ダンパー98は容易に歪み、塑性変形するようになっている。
そのため、制振ダンパー98は、死活荷重Pvを負担する必要のない対傾構97などの二次部材に適用され、死活荷重Pvを支える一次部材である主構93には適用されていなかった。
つまり、図9の耐震構造では、地震時に一次部材(主構93)を許容できる範囲(例えば、弾性変形する範囲)で振動させつつ、その振動のエネルギーを二次部材(対傾構97)の制振ダンパー98で吸収するようにしていた。
特開2005−299078号公報
しかしながら、図9の耐震構造は、想定外に加速度の大きい地震時に十分に機能しない虞があった。
すなわち、トラス橋91の設計時に想定した地震よりも強い地震(以下、想定外地震という)が発生したときには、その想定外地震による振動のエネルギーを制振ダンパー98で吸収しきれない可能性があり、その吸収しきれなかった振動により一次部材である主構93が塑性変形してしまい、トラス橋91に致命的な損傷が生じる虞があった。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、想定外地震が発生した場合でも崩壊を防止することができる構造物を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明は、構造物自体の重量を負担するための一次部材と上記構造物自体の重量を負担する必要がない二次部材とで構成された構造物において、上記一次部材を分割すると共に、それら分割した一次部材の間に、摩擦ダンパーを設け、その摩擦ダンパーは、上記分割された一次部材の一方に接続された筒体と、その筒体内に軸方向に移動可能に挿入され上記分割された一次部材の他方に接続されたピストンと、上記筒体内に充填され固化した充填材と、上記ピストンに設けられ固化した充填材に係合し、かつ上記筒体と上記ピストンとを相対移動させる力が所定の初動耐力に達したときに上記充填材を壊し粒状化させて体積膨張させるためのジベル部と、上記ピストンにおける筒体内の挿入部分に設けられ、体積膨張に反発する上記筒体により上記粒状化した充填材が押し付けられる摩擦面とを備えたものである。
好ましくは、上記摩擦ダンパーの上記所定の初動耐力は、上記摩擦ダンパーが、設計時に想定した最大の強さの地震の発生時に上記構造物自体の重量を負担し、かつ想定した強さを超える地震の発生時にダンパーとして作動するように設定されたものである。
好ましくは、上記摩擦ダンパーは、地震による荷重が作用したときに上記一次部材において最も大きな力が生じる箇所に設置されるものである。
好ましくは、上記構造物は、トラス橋であり、そのトラス橋は、上記一次部材をなす上弦材、下弦材、鉛直材および斜材でトラス構造が形成された主構を備え、その主構の上弦材、下弦材、鉛直材および斜材のいずれかに上記摩擦ダンパーが設けられたものである。
本発明によれば、想定外地震が発生した場合に構造物の崩壊を防止することができるという優れた効果を発揮するものである。
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
本実施形態に係る構造物は、例えば、トラス橋などの耐震構造を有するトラス構造物である。
まず、図1および図2に基づき本実施形態のトラス橋を説明する。以下の説明において、図1および図2の左右方向がトラス橋の橋軸方向であり、図1の上下方向が鉛直方向であり、図2の上下方向が橋軸直角方向である。
トラス橋1は、例えば鋼製の道路橋(上路トラスト橋)であり、図1に示すように、道路を形成するための上部工2と、その上部工2を支持する下部工3とを備える。
下部工3は、橋軸方向に沿って間隔を隔てて配置された橋台31(または橋脚)を備え、それら橋台31の間に上部工2が掛け渡される。
上部工2は、車両が通行する舗装および床版21と、その舗装および床版21を支持する一対の主構22、22と、その主構22と橋台31との間に設けられ主構22からの荷重を橋台31に伝達する支承23と、主構22、22を相互に繋ぐ上支材24、下支材25、下横構26および対傾構27とを備える。
主構22、22は、橋軸直角方向に離間して平行に設けられる。各主構22は、トラス構造(図例では、ハウトラス構造)を有し、橋軸方向に延びる上弦材4と、その上弦材4の下方に離間して設けられ橋軸方向に延びる下弦材5と、それら上弦材4と下弦材5とを繋ぎ上下方向に延びる複数の鉛直材6と、上弦材4と下弦材5とを繋ぎ橋軸方向に傾斜する複数の斜材7とを備える。
上弦材4と下弦材5とは、ほぼ平行に配置され、各々橋軸方向に沿って直線状に延びる。上弦材4には、図示しない床組が組み付けられ、その床組により床版21が支持される。
下弦材5は、両端部が支承23により支持される。詳しくは後述するが、支承23近傍の下弦材5には、摩擦ダンパー8が設けられる。
鉛直材6は、橋軸方向に沿って所定間隔を隔てて配置される。鉛直材6は、上端が上弦材4に連結され下端が下弦材5に連結される。鉛直材6は、例えば、上弦材4および下弦材5に、図示しないガセットを介して取り付けられる。
斜材7は、橋軸方向に沿って所定間隔を隔てて設けられる。斜材7は、隣接する2つ鉛直材6、6の一方の上端と他方の下端とを繋ぐように、上弦材4および下弦材5に連結される。斜材7は、例えば、鉛直材6と共に上記ガセットを介して上弦材4および下弦材5に取り付けられる。
上支材24は、両主構22、22の上弦材4を相互に繋ぎ、橋軸直角方向に延びると共に両端が上弦材4、4に各々連結される。下支材25は、両主構22、22の下弦材5を繋ぎ、橋軸直角方向に延びると共に両端が下弦材5に各々連結される。これら上支材24および下支材25は、橋軸方向に沿って間隔を隔てて複数設けられ、図例では鉛直材6と同じ橋軸方向の位置に各々配置される。
図2に示すように、下横構26は、下支材25を介して両主構22、22の下弦材5を繋ぐものであり、各下弦材5から下支材25の中間部まで延びる一対の横構部材261、261を有する。その横構部材261は、一端が、下弦材5における下支材25の連結部分に連結され、他端が、その下支材25に隣接する他の下支材25の中間部に連結される。
図1に戻り、対傾構27は、上支材24を介して両主構22、22の下弦材5を繋ぐものであり、各下弦材5から上支材24まで延びる一対の対傾構部材271、271を有する。その対傾構部材271は、一端が、下弦材5における鉛直材6の連結部分に連結され、他端が、上支材24の中間部に連結される。図例の対傾構部材271は、鉛直材6と同じ橋軸方向の位置に各々配置される。
以上のトラス橋1の上部工2を構成する部材のうち、上弦材4、下弦材5、鉛直材6、斜材7は、トラス橋1(上部工2)自体の重量(自重)を負担するための一次部材(主要部材ともいう)である。他方、上支材24、下支材25、下横構26および対傾構27は、トラス橋1の自重を負担する必要がない二次部材である。
なお、一次部材とは、例えば、「主要な構造部分を構成する部材」(社団法人 日本道路協会、道路橋示方書・同解説 鋼橋編)、あるいは「仮にそれらの部材の一部分が破壊すれば、列車の運行に直接支障をきたしたり橋桁全体の崩壊に結びつくような部材」(運輸省鉄道局 鉄道総合研究所、鉄道構造物等設計標準・同解説 鋼・合成構造物)をいう。
また、二次部材とは、例えば、「一次部材以外の部材」(道路橋示方書・同解説 鋼橋編)、あるいは「仮にそれらの部材の一部分が破壊しても列車の運行に直接支障しないような部材」(鉄道構造物等設計標準・同解説 鋼・合成構造物)をいう。
本実施形態では、一次部材である上弦材4、下弦材5、鉛直材6および斜材7は、トラス橋1の自重による死荷重と、トラス橋1を通行する車両などによる活荷重とを負担するように強度などが設計される。
それら死活荷重は、図1において黒矢印で示すように、鉛直方向下向きの荷重Pvであり、一次部材(上弦材4、下弦材5、鉛直材6および斜材7)に対しては、軸力(軸方向の引張力または軸方向の圧縮力)として作用する。
他方、二次部材である上支材24、下支材25、下横構26および対傾構27は、死活荷重(鉛直荷重)Pvを負担する部材として設計されておらず、例えば、横荷重Ph(橋軸直角方向の荷重、図2において白矢印で示す)である風荷重を負担するように設計される。
ここで、横荷重Phとしては、風荷重の他に地震による地震荷重があり、その地震荷重に対する耐震性を向上させるために、本実施形態では、一次部材である主構22の上弦材4、下弦材5、鉛直材6および斜材7のいずれかに摩擦ダンパー8が設けられる。
より具体的には、図例のトラス橋1は、下弦材5が、支承23の支持箇所の近傍にて軸方向(長手方向)に2つに分割され、それら分割された下弦材5の間に、摩擦ダンパー8が設けられる。分割された下弦材5の一方の部材(図1の左側の部材)を第1分割部材51、他方の部材(図1の右側の部材)を第2分割部材52という。
次に、図3から図7に基づき摩擦ダンパー8の概略構造について説明する。
その摩擦ダンパー8は、通常時および想定した強さの地震の発生時には、下弦材5から入力される力に対して弾性的挙動を示し、一次部材として働く。他方、想定した強さを超える大規模な地震(想定外地震)の発生時に下弦材5から入力される力が所定の初動耐力P0を超えたときは、軸方向に塑性変形して想定外地震によるエネルギーを吸収する。
図3に示すように、摩擦ダンパー8は、下弦材5の第1分割部材51に接続された筒体81と、その筒体81内に軸方向に移動可能に挿入され第2分割部材52に接続されたピストン82と、筒体81を一端側(図3では右端側)から閉塞すると共にピストン82が挿通する挿通孔831(図6参照)が形成されたスリットダイヤフラム83と、筒体81を他端側(図3では左端側)から閉塞する拘束ダイヤフラム84と、筒体81内における拘束ダイヤフラム84とスリットダイヤフラム83との間に充填され固化した充填材をなすコンクリート85と、ピストン82に設けられて固化したコンクリート85に係合し、かつ筒体81とピストン82とを相対移動させる力が所定の初動耐力P0に達したときに係合するコンクリート85を壊し粒状化させて体積膨張させるためのジベル部をなすジベル孔86と、ピストン82における筒体81内の挿入部分に設けられ、体積膨張に反発する筒体81により上記粒状化したコンクリート85が押し付けられる摩擦面87とを備える。
図4に示すように、筒体81は、円筒形状を有し断面円形で軸方向に延びる。筒体81は、鋼管などから形成される。筒体81は、軸方向が下弦材5の軸方向に一致するように配置される。
拘束ダイヤフラム84は、筒体81の一端から筒体81の内部側に軸方向に所定間隔を隔てて設けられる。図5に示すように、拘束ダイヤフラム84は、円板状に形成され筒体81の内周面に接合される。拘束ダイヤフラム84には、筒体81と第1分割部材51とを接合するための部材連結部841が形成される。その部材連結部841は、断面十字状で拘束ダイヤフラム84から第1分割部材51まで延び、先端部が添接板542を介して第1分割部材51に接合される。
スリットダイヤフラム83は、拘束ダイヤフラム84と同様に、筒体81の他端(図1の右端)から軸方向内側(図1の左側)に所定間隔を隔てて設けられる。図6に示すように、スリットダイヤフラム83は、円板状に形成され、筒体81の内周面に接合される。スリットダイヤフラム83には、ピストン82が挿通する挿通孔831が形成され、その挿通孔831は、ピストン82を筒体81の軸方向に移動可能、かつ回転不能に案内する。
それら拘束ダイヤフラム84とスリットダイヤフラム83との間の筒体81内には、ピストン82を軸方向に案内するガイドダイヤフラム88が設けられる。そのガイドダイヤフラム88は、図7に示すように、円板状に形成され、筒体81の内周面に固定される。ガイドダイヤフラム88には、ピストン82が挿通するガイド孔881と、コンクリート85を筒体81内に充填するための連通孔882とが形成される。
図3に戻り、ピストン82は、筒体81の軸方向に沿って延び、一端が筒体81内の拘束ダイヤフラム84の近傍まで挿入され、他端が筒体81から突出して第2分割部材52に接合される。図例では、ピストン82の端部が、筒体81の部材連結部841と同様に、添接板822を介して第2分割部材52に接合される。
ピストン82は、断面十字形で軸方向に延び、互いに直交する4つのフランジ821を有する。そのフランジ821の表面および裏面は、筒体81の軸方向に沿って延び、それら表面および裏面が摩擦面87をなす。
また、ピストン82のフランジ821には、筒体81内のコンクリート85と係合するジベル孔86が形成され、そのジベル孔86によりピストン82が筒体81内に係止される。ジベル孔86は、軸方向に沿って間隔を隔てて複数形成される。
この摩擦ダンパー8では、筒体81に第1分割部材51からの軸方向の荷重が作用し、ピストン82に第2分割部材52から軸方向の荷重が作用する。
それら作用する軸方向の荷重(引張力または圧縮力)が所定の初動耐力P0未満のときは、筒体81内のコンクリート85とピストン82のジベル孔86とが係合して摩擦ダンパー8は弾性的な挙動を示す。このとき摩擦ダンパー8は、図8に示すように、荷重Pに変形量(伸長量または収縮量)δが比例する。
他方、作用する荷重が初動耐力P0に達すると、ピストン82のジベル孔86により筒体81内のコンクリート85が壊されて粒状化し、ピストン82が軸方向に移動する。その移動するピストン82には、粒状化したコンクリート85からの摩擦力が作用する。このとき摩擦ダンパー8は、図8に示すように、荷重Pが初動耐力P0にて一定に持続されつつ、変形量δのみが増大する。
ここで、摩擦力の発生機構についてより詳細に説明すると、コンクリート85が壊されて粒状化すると、その粒状化したコンクリート85のダイレイタンシー(体積膨張)がピストン82のジベル孔86の近傍にて生じる。このダイレイタンシーによる膨張力に反発して、筒体81、拘束ダイヤフラム84およびスリットダイヤフラム83は、コンクリート85およびそのコンクリート85を介してピストン82に締め付ける。その締め付けにより、ジベル孔86近傍のコンクリート85がピストン82の摩擦面87に押し付けられ、その摩擦面87の摩擦抵抗が増大して強い摩擦力が発生する。この摩擦力は、ピストン82の移動量に関係なく一定となる。
摩擦ダンパー8では、ジベル孔86の数が多いほど、また径が大きいほど、初動耐力P0が大きくなる。このため摩擦ダンパー8は、ジベル孔86の数や大きさ(径)などを適宜設定することで、初動耐力P0を、高い自由度で、かつ従来の制振ダンパー(例えば図9の座屈拘束型の制振ダンパー)に比べて大きな耐力に設定できるようになっている。また、摩擦ダンパー8は、筒体81およびピストン82の軸方向長さと拘束ダイヤフラム84の軸方向位置とを適宜設定することで、摩擦ダンパー8の変形量(ピストン82のストローク長)を、高い自由度で、かつ従来の制振ダンパーに比べて大きな変形量に設定できるようになっている。
次に、本実施形態の構造物における摩擦ダンパー8の設置位置について説明する。
本実施形態の摩擦ダンパー8は、想定した最大の強さの地震による荷重(以下、最大地震荷重という)がトラス橋1(上部工2)に作用したときに上部工2の一次部材4−7において最も大きな力(圧縮方向または引張方向の荷重や応力)が作用する箇所に設置される。すなわち、地震荷重により破損する可能性が最も高い箇所に設置される。
本実施形態では、まず、摩擦ダンパー8を設置していないトラス橋1に対して構造解析を行い、最大地震荷重が作用するときの一次部材の荷重分布を求める。その求められた荷重分布から、荷重の最大値(最大荷重)と、その最大荷重が生じる一次部材(キーメンバー)の箇所とを求める。この構造解析により求められた最大荷重の発生箇所に相応する、実際のトラス橋1の箇所に摩擦ダンパー8を配置する。なお、荷重の代わりに応力を使用するようにしてもよい。
構造解析は、電子計算機による数値シミュレーションなどにより行われる。その数値シミュレーションは、例えば有限要素法などを用いた動的解析であり、摩擦ダンパー8を設置していないトラス橋1をモデル化し、そのモデルに、最大地震荷重を動的な荷重(時間変化する荷重)として作用させて、荷重分布を求める。
最大地震荷重としては、所謂レベル2地震動による荷重が考えられる。レベル2地震動は、構造物の耐震設計に用いる入力地震動で、現在から将来にわたって当該地点で考えられる最大級の強さをもつ地震動である。
図例のトラス橋1では、レベル2地震動による地震荷重がトラス橋1に作用したときに最大荷重が生じる一次部材が、支承23に最も近い鉛直材6とその鉛直材6に隣接する鉛直材6との間の下弦材5であり、その下弦材5に摩擦ダンパー8が設置される。
また、摩擦ダンパー8の初動耐力P0は、摩擦ダンパー8が、トラス橋1の設計時に想定した最大の強さの地震の発生時にトラス橋1の自重を負担し、かつ想定した強さを超える地震の発生時にダンパーとして作動するように設定される。
例えば、摩擦ダンパー8の初動耐力P0は、構造解析により求められた最大荷重よりも僅かに大きな値に設定される。また、一次部材4−7の耐力は、摩擦ダンパー8の初動耐力P0を最大値とした荷重分布が生じたときに、致命的な損傷(例えば、塑性変形や座屈など)が発生しない大きさに設定される。
次に、本実施形態の作用を説明する。
まず、通常時には、摩擦ダンパー8は一次部材として機能しており、その摩擦ダンパー8や他の一次部材(上弦材4、下弦材5、鉛直材6および斜材7)により、上部工2の自重による死荷重および床版21からの活荷重が支持される。また、設計上想定される強さ(レベル2地震動以下の強さ)の地震が発生したときは、摩擦ダンパー8に作用する荷重が初動耐力P0に達することがなく、摩擦ダンパー8は一次部材として機能する。
一方、レベル2地震動を超える強さの想定外地震が発生して、摩擦ダンパー8に作用する荷重が初動耐力P0を超えたときは、摩擦ダンパー8はダンパーとして機能する。
ここで上述したように、本実施形態では摩擦ダンパー8を、地震時に最大荷重が生じる箇所に設置している。そのため、摩擦ダンパー8は、上弦材4、下弦材5、鉛直材6および斜材7に塑性変形を生じさせるような大きな力が作用するよりも前に、ダンパーとして機能し始める。さらに、摩擦ダンパー8は、ダンパーとして機能するときに、作用する荷重を初動耐力P0で一定に保持する。
このように最大荷重(つまり、荷重分布の最大値)が初動耐力P0に制限されると、荷重分布の値も全体的に制限され、一次部材(上弦材4、下弦材5、鉛直材6および斜材7)に作用する荷重が制限されることになる。
つまり、想定外地震が発生すると、トラス橋1の様々な一次部材(上弦材4、下弦材5、鉛直材6および斜材7)に、設計で想定した力以上の力が発生する可能性があるが、本実施形態では、特定の部材(図例では、下弦材5に介設された摩擦ダンパー8)にダンパー機能を持たせることで、摩擦ダンパー8に作用する初動耐力P0以上の力が、一次部材(上弦材4、下弦材5、鉛直材6および斜材7)に働かない。
その結果、想定外地震が発生しても、上弦材4、下弦材5、鉛直材6および斜材7の致命的な破損を防止でき、トラス橋1の崩壊を確実に防止することができる。
このように、本実施形態では、初動耐力P0(ダンパー機能を示す前の弾性的挙動を示す状態での耐力)の大きい摩擦ダンパー8を、地震時に発生する水平力(横荷重Ph)の影響を受けやすい立体的なトラス橋1の一次部材として用いることで、想定外地震において、摩擦ダンパー8以外の部材の破壊を防ぐことができる。
また、摩擦ダンパー8は、限界荷重を超えても耐力が急激に低下せずに初動耐力P0を持続することから、この摩擦ダンパー8を用いる構造物によれば、想定外地震が発生した場合に、トラス橋1が脆性的に一気に崩壊してしまうのを防止することができる。
また、本実施形態では、想定外地震の発生時に、一次部材4−7が破壊されるよりも先に摩擦ダンパー8がダンパーとして機能し始めるので、一次部材4−7を確実に保護することができる。このように、摩擦ダンパー8は、一次部材4−7を保護する所謂ヒューズ(荷重ヒューズ)として働く。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、様々な変形例や応用例が考えられるものである。
例えば、上述の実施形態では、トラス橋を対象としたが、これに限定されず、様々な構造物を対象することができる。例えば、構造物は、トラス鉄塔などのトラス橋以外のトラス構造物や、トラス構造物以外にも、地震時に発生する水平力の影響を受けやすい立体的な橋梁(アーチ橋など)やビルなどが考えられる。例えば、構造物がビルである場合には、一次部材をなす柱や梁に摩擦ダンパーが設けられる。なお、構造物は、一次部材に軸力のみが作用するものが好ましい。
その他にも、摩擦ダンパーの充填材は、コンクリートに限定されず、モルタル、エポキシ樹脂などでもよい。
図1は、本発明の一実施形態に係る構造物の概略斜視図である。 図2は、図1のII方向矢視図である。 図3は、本実施形態の摩擦ダンパーの概略断面図である。 図4は、本実施形態に係る摩擦ダンパーの筒体の概略断面図である。 図5は、図4のV−V線断面図である。 図6は、図4のVI−VI線断面図である。 図7は、図4のVII−VII線断面図である。 図8は、本実施形態の摩擦ダンパーにおける荷重と伸びの関係を説明するための図である。 図9は、従来の構造物の概略斜視図である。
符号の説明
1 トラス橋(構造物)
4 上弦材
5 下弦材
6 鉛直材
7 斜材
8 摩擦ダンパー
81 筒体
82 ピストン
85 コンクリート(充填材)
86 ジベル孔(ジベル部)
87 摩擦面

Claims (4)

  1. 構造物自体の重量を負担するための一次部材と上記構造物自体の重量を負担する必要がない二次部材とで構成された構造物において、
    上記一次部材を分割すると共に、それら分割した一次部材の間に、摩擦ダンパーを設け、
    その摩擦ダンパーは、上記分割された一次部材の一方に接続された筒体と、その筒体内に軸方向に移動可能に挿入され上記分割された一次部材の他方に接続されたピストンと、上記筒体内に充填され固化した充填材と、上記ピストンに設けられ固化した充填材に係合し、かつ上記筒体と上記ピストンとを相対移動させる力が所定の初動耐力に達したときに上記充填材を壊し粒状化させて体積膨張させるためのジベル部と、上記ピストンにおける筒体内の挿入部分に設けられ、体積膨張に反発する上記筒体により上記粒状化した充填材が押し付けられる摩擦面とを備えたことを特徴とする構造物。
  2. 上記摩擦ダンパーの上記所定の初動耐力は、設計時に想定した最大の強さの地震の発生時に上記摩擦ダンパーが上記構造物自体の重量を負担し、かつ想定した強さを超える地震の発生時に上記摩擦ダンパーがダンパーとして作動するように設定された請求項1記載の構造物。
  3. 上記摩擦ダンパーは、地震による荷重が作用したときに上記一次部材において最も大きな力が生じる箇所に設置される請求項1または2記載の構造物。
  4. 上記一次部材をなす上弦材、下弦材、鉛直材および斜材でトラス構造が形成された主構を備え、その主構の上弦材、下弦材、鉛直材および斜材のいずれかに上記摩擦ダンパーが設けられたトラス橋である請求項1から3いずれかに記載の構造物。
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