JP6245605B2 - α,β‐不飽和カルボニル化合物の製造法 - Google Patents

α,β‐不飽和カルボニル化合物の製造法 Download PDF

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本発明は、各種有機化学製品の原料或いは中間体として広範囲に利用が期待されるα,β‐不飽和カルボニル化合物類の製造方法に関する。より詳細には、アリルアルコール類を、環境に負荷をかけず、効率よく、α,β‐不飽和カルボニル化合物へと変換する方法に関する。
従来、第一級アリルアルコール類や第二級アリルアルコール類を酸化してα,β‐不飽和カルボニル化合物を製造する方法としては、ヘキサン溶媒中での二酸化マンガン(非特許文献1)、水酸化ナトリウム水溶液やベンゼンを溶媒とする過酸化ニッケル(非特許文献2)、リン酸溶媒中での酸化銀(非特許文献3)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)溶媒中での三酸化クロム(非特許文献4)、水酸化カリウム水溶液およびt‐ブチルアルコールを溶媒とする鉄酸カリウム(非特許文献5)、セレン化合物を促進剤とするベンゼン溶媒中の過酸化‐t‐ブチル(非特許文献6)、またはベンゼン溶媒中での過マンガン酸バリウム等(非特許文献7)を酸化剤として用いる方法が知られている。しかしながら、これらの方法は、毒性の高い副生物の発生、酸化剤の腐食性等の点で環境に与える負荷が大きく、工業的に優れた方法とは言い難い。
これに対して、鉄などの第一遷移周期金属を触媒とし、酸素や過酸化水素を酸化剤とする方法は、安価で腐食性がなく、反応後の副生物は無害な水であるために環境負荷が小さく、工業的に利用するのに優れた方法ということができる。
酸素を酸化剤として用い、第一級アリルアルコール類や第二級アリルアルコール類からα,β‐不飽和カルボニル化合物を製造する方法としては、酸化コバルト触媒を用いる反応 (非特許文献8)が知られているが、この方法は有毒なベンゼンを溶媒として使用し、また基質に対して2当量以上の触媒を用いる必要がある。2,2,6,6‐テトラメチル‐1‐ピペリジニルオキシフリーラジカル(TEMPO)存在下、塩化銅触媒によって第一級アリルアルコール類や第二級アリルアルコール類の酸化反応が進行することも知られている(非特許文献9)が、毒性のある銅を触媒として使用する必要がある。また、TEMPOと亜硝酸ナトリウム存在下、塩化鉄を触媒として酸素による第一級アリルアルコール類や第二級アリルアルコール類の酸化反応が進行することが報告されている(非特許文献10)が、この方法ではハロゲンを含む溶媒と毒性のある亜硝酸ナトリウムを使用しなければならない。
一方、過酸化水素を酸化剤として用い、第一級アリルアルコール類や第二級アリルアルコール類からα,β‐不飽和カルボニル化合物を製造する方法としては、バナジウムを含むモレキュラーシーブ触媒を用いるα,β‐不飽和カルボニル化合物生成反応(非特許文献11)が報告されている。しかしながら、この反応では、副生成物としてエポキシド類が生成する上、極性溶媒としてアセトニトリルを使用する必要があり、さらには目的生成物であるα,β‐不飽和カルボニル化合物の収率の更なる向上が求められていた。また、有機溶媒を使用せずに過酸化水素を酸化剤として2‐ペンテン‐1‐オールの酸化反応から2‐ペンテナールが生成する反応が報告されている(非特許文献12)が、エポキシ化も同時に進行しており、α,β‐不飽和カルボニル化合物が選択的に得られる手法ではない。鉄化合物を触媒とした第一級あるいは第二級アリルアルコール類の過酸化水素による酸化反応としては、塩化鉄とピコリン酸誘導体を触媒とする方法が知られているが、この方法は、炭酸ナトリウムの添加を必要とするほか、溶媒として塩化メチレンを用いる方法であるため、環境調和性に優れた方法とは言いがたい(非特許文献13)。また、1,10‐フェナントロリンを配位子とした鉄錯体を用いる方法(非特許文献14)や、硝酸鉄とトリメシン酸からなる高分子錯体を触媒とする方法(非特許文献15)が知られているが、いずれも事前に触媒を調製、精製する煩雑な操作が必要となる。
したがって、環境調和型の酸化剤を用い、安価な金属を触媒として、複雑な錯体の合成を必要とせず簡便に、第一級アリルアルコール類や第二級アリルアルコール類からα,β‐不飽和カルボニル化合物を効率的に製造する方法の開発が強く望まれている。
特開2011−241200号公報
J.Org.Chem.,19,1608−1616(1954) J.Org.Chem.,27,1597−1601(1962) TetrahedronLett.,4193−4198(1967) Synthesis,394−396(1976) Chem.Lett.,1397−1398(1978) J.Org.Chem.,47,837−842(1982) Bull.Chem.Soc.Jpn.,56,914−917(1983) J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,19,634−635(1970) J.Am.Chem.Soc.,133,16901−16910(2011) Chem.Commun.,5322−5324(2005) Synlett,289−298(1995) Chem.Commun.,325−326(1998) Adv.Syn.Catal.,353,3023−3030(2011) Eur.J.Inorg.Chem.,4479−4485(2012) Inorg.Chim.Acta,391,75−82(2012)
本発明は、上述の従来技術の問題点を克服することを目的とするものであり、温和な反応条件下で、アリルアルコール類からα,β‐不飽和カルボニル化合物を高収率で得ることができるとともに、環境や人体への影響・毒性が極めて小さい、簡便で効率的なα,β‐不飽和カルボニル化合物の新規な製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、酸化剤を過酸化水素とし、酢酸鉄化合物と2‐ピコリン酸および6‐メチル‐2‐ピコリン酸を組み合わせた触媒、または、酢酸鉄化合物と6‐メチル‐2‐ピコリン酸を組み合わせた触媒を用い、過酸化水素とアリルアルコール類を均一に可溶な溶媒中で反応を行うことで、室温で、アリルアルコール類から対応するα,β‐不飽和カルボニル化合物が高収率で安全かつ迅速に製造できることを見いだした。本発明は、当該知見に基づいて完成されたものである。
本発明者らは、先に、鉄化合物にピリジンカルボン酸類やイミダゾールカルボン酸類を組み合わせ、反応系に加えるだけで、反応液中にて活性な鉄錯体を発生させることができ、この触媒系を用いることで、過酸化水素を酸化剤とし、スチレン類からスチレンオキシドを合成する反応を高効率で進行させることができることを見出した(特許文献1)が、今回、この触媒系により、アリルアルコール類から高効率でα,β‐不飽和カルボニル化合物を製造することができることを見出したものである。
アリルアルコール類の過酸化水素による酸化反応においては、上述のとおり、エポキシド類が副生し、α,β‐不飽和カルボニル化合物を高い収率で得ることが難しいことが知られている。本願発明において、エポキシドの合成反応を進行させる特許文献1に記載の触媒系により、α,β‐不飽和カルボニル化合物の合成が高効率で進行することは、驚くべきことである。
本出願は、具体的には、以下の発明を提供する。
〈1〉アリルアルコール類と過酸化水素とを反応させて、アルコール部位をカルボニル化することにより対応するα,β‐不飽和カルボニル化合物を製造する方法であって、反応触媒として水または有機溶媒に可溶な鉄(II)もしくは鉄(III)塩と2‐ピコリン酸および6‐炭素数1〜4のアルキル‐2‐ピコリン酸から選択される少なくとも1種のピコリン酸類とを1:1〜1:4の比率で共存させて使用することを特徴とする、α,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
〈2〉前記鉄(II)もしくは鉄(III)塩として、酢酸鉄(II)もしくは塩基性酢酸鉄(III)を用いることを特徴とする、〈1〉に記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
〈3〉前記ピコリン酸類として、2‐ピコリン酸および6‐メチル‐2‐ピコリン酸を1:1〜1:3の比率で混合して使用することを特徴とする、〈1〉または〈2〉に記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
〈4〉反応触媒が以下の式(2)で示す錯体を形成することを特徴とする、〈3〉に記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
Figure 0006245605
〈5〉前記ピコリン酸類として、6‐メチル‐2‐ピコリン酸のみを用いることを特徴とする、〈1〉または〈2〉に記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
〈6〉反応触媒が以下の式(3)で示す錯体を形成することを特徴とする、〈5〉に記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
Figure 0006245605
〈7〉アリルアルコール類が第一級アリルアルコール類であり、α,β‐不飽和カルボニル化合物が、α,β‐不飽和アルデヒドであることを特徴とする〈1〉〜〈6〉のいずれかに記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
〈8〉アリルアルコール類が第二級アリルアルコール類であり、α,β‐不飽和カルボニル化合物が、α,β‐不飽和ケトンであることを特徴とする〈1〉〜〈6〉のいずれかに記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
〈9〉以下の式(2)または(3)で示す錯体からなる、アリルアルコール類と過酸化水素とを反応させてα,β‐不飽和カルボニル化合物を製造する反応用の触媒。
Figure 0006245605
Figure 0006245605
本発明により提供されるα,β‐不飽和カルボニル化合物は、ポリマー・医薬品・香料・甘味料等の原料として幅広く利用されるものである。本発明によれば、対応するアリルアルコール類を原料とし、安価な過酸化水素及び触媒を用いて、それらα,β‐不飽和カルボニル化合物を安価・安全、かつ環境に与える負荷を最小限に抑えながら、迅速に製造することができる。したがって、本発明は工業的に多大な効果をもたらす発明ということができる。
本発明の鉄錯体の単結晶X線構造解析図。
本発明のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法は、アリルアルコール類と過酸化水素水溶液とを、水または有機溶媒に可溶な鉄(II)もしくは鉄(III)塩と2‐ピコリン酸および6位に炭素数1〜4のアルキル基が置換した‐2‐ピコリン酸から選択される少なくとも1種のピコリン酸類とを混合した触媒の存在下で、過酸化水素とアリルアルコール類を均一に可溶な溶媒を使用して、反応させることを特徴とする。
本発明の方法により、アリルアルコール類が第一級アリルアルコール類である場合は対応するα,β‐不飽和アルデヒドが、第二級アリルアルコール類である場合は対応するα,β‐不飽和ケトンが、それぞれ生成物として得られる。
触媒として、酢酸鉄化合物と6‐メチル‐2‐ピコリン酸を混合した触媒を用いる場合は、第一級アリルアルコールから特に高い収率でα,β‐不飽和アルデヒドが得られ、酢酸鉄化合物と2‐ピコリン酸および6‐メチル‐2‐ピコリン酸を混合した触媒の存在下では、第二級アリルアルコールから特に高い収率でα,β‐不飽和ケトンが得られる。
本発明の製造法において反応基質として用いられるアリルアルコール類は、以下の一般式(1)で示される。
Figure 0006245605
上記式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立して同一又は相異なり、例えば水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、アシル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基又はアシロキシ基等を示す。R1〜R4のうちいずれかが連結して環状構造を成していても良い。
上記アリルアルコール類の具体例としては、桂皮アルコール、クロチルアルコール、3‐メチル‐2‐ブテン‐1‐オール、trans‐2‐ヘキセン‐1‐オール、trans‐2‐オクテン‐1‐オール、ゲラニオール、ファルネソール等の第一級アリルアルコール、および、1,3‐ジフェニル‐2‐プロペン‐1‐オール、3‐オクテン‐2‐オール、2‐シクロヘキセノール等の第二級アリルアルコールがあげられる。
本発明の製造法において酸化剤として用いられる過酸化水素水溶液の濃度には特に制限はなく、濃度に応じてアリルアルコール類への反応は生起するが、一般的には1〜80%、好ましくは20〜60%の範囲から選ばれる。
本発明の製造法において用いられる過酸化水素水溶液の使用量に制限はなく、使用量に応じてアリルアルコール類への反応は生起するが、一般的にはアリルアルコール類に対して0.5〜5.0当量、好ましくは0.9〜3.0当量、さらに好ましくは1.0〜2.0当量の範囲から選ばれる。
本発明の製造法において用いられる鉄塩は、水または有機溶媒中で鉄(II)もしくは鉄(III)カチオンを生成する塩であり、例えば無水酢酸鉄(II)、塩化鉄(II)四水和物、無水塩化鉄(II)、塩基性酢酸鉄(III)、硝酸鉄(III)九水和物、硫酸鉄(III)水和物、過塩素酸鉄(III)水和物、無水塩化鉄(III)等が挙げられるが、無水酢酸鉄(II)や塩基性酢酸鉄(III)が好ましい。これらは単独で使用しても、2種以上を混合使用してもよい。これらは必要に応じて少量の水に溶かし、その後溶媒に加えることもできる。その使用量は基質のアリルアルコール類に対して0.0001〜20モル%、好ましくは0.01〜10モル%の範囲から選ばれる。
本発明の製造法において用いられるピコリン酸類は、2‐ピコリン酸、および6位に炭素数1〜4のアルキル基が置換した‐2‐ピコリン酸、すなわち、6‐メチル‐2‐ピコリン酸、6‐エチル‐2‐ピコリン酸、6‐プロピル‐2‐ピコリン酸、6‐ブチル‐2‐ピコリン酸であり、これらのうち、好ましくは2‐ピコリン酸、6‐メチル‐2‐ピコリン酸、6‐エチル‐2‐ピコリン酸から選ばれる。これらは単独で使用しても、2種以上を混合使用してもよい。その使用量は基質のアリルアルコール類に対して0.0001〜20モル%、好ましくは0.01〜10モル%の範囲から選ばれる。
過酸化水素水とアリルアルコール類を均一に可溶な溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t‐ブチルアルコール、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン等が挙げられるが、特にメタノールまたはアセトニトリルが望ましい。これらは単独で使用しても、2種以上を混合使用してもよい。その使用量は基質のアリルアルコール類に対して重量比0.1〜1000倍、好ましくは1〜100倍の範囲から選ばれる。
上記鉄(II)もしくは鉄(III)塩と上記ピコリン酸類は、反応液中で鉄錯体を形成し、これにより、過酸化水素とアリルアルコール類との反応について触媒として機能していると考えられる。
例えば、ピコリン酸類として2‐ピコリン酸および6‐メチル‐2‐ピコリン酸とを1:1〜1:3の比率で使用する場合は、反応液中では以下の式(2)で示される鉄錯体が形成されている。この式(2)で示される錯体をあらかじめ合成し、これを触媒として用いることもできる。
Figure 0006245605
また、上記ピコリン酸類として6‐メチル‐2‐ピコリン酸のみを用いる場合には、以下の式(3)で示される鉄錯体が形成されている。この式(3)で示される錯体をあらかじめ合成し、これを触媒として用いることもできる。
Figure 0006245605
本発明においては、上記触媒を用いることにより、アリルアルコール類の過酸化水素による酸化反応を効果的に実施することができ、対応するα,β‐不飽和カルボニル化合物を高収率で製造することができる。本発明の方法は、反応操作が簡便で、環境や人体への影響・毒性が小さく、環境に対する負荷を軽減する効果も有し、本発明によって、安全かつ迅速にα,β‐不飽和カルボニル化合物を得ることができる。
本発明の製造法における圧力、温度の反応条件には、特に制約はないが、通常、反応は−40〜80℃、好ましくは0〜40℃の温度範囲で行われる。反応圧力は常圧、加圧、減圧のいずれでも良いが、常圧で行うことが望ましい。
本発明の製造法における反応時間は、用いる触媒の量や反応温度等により左右され、一概に定めることはできないが、通常は0.5〜180分の範囲で、好ましくは2〜60分の範囲で行われる。
本発明の製造法により得られるα,β‐不飽和カルボニル化合物としては、例えば、桂皮アルデヒド、クロトンアルデヒド、3‐メチル‐2‐ブテナール、trans‐2‐ヘキセナール、trans‐2‐オクテナール、シトラール、ファルネサール、カルコン、3‐オクテン‐2‐オン、2‐シクロヘキセノンなどが例示される。
本発明の一実施態様は、反応器に鉄化合物及びピリジンカルボン酸類、溶媒、および過酸化水素水を入れて混合し、さらにアリルアルコール類を加えて所定の温度で反応を行うものである。反応終了後、溶媒を溜去し、蒸留、クロマト分離、再結晶や昇華等の通常の方法によって、得られたα,β‐不飽和カルボニル化合物を取り出すことができる。必要に応じ、反応終了後に有機溶媒を追添し、有機層と水層に分離した後、有機層のみを分離して濃縮してもよい。また、必要に応じ、チオ硫酸ナトリウム水溶液等で残留する過酸化水素を分解してもよい。
一方、工業的に安定な生産を行うことを考慮すると、触媒と基質を最初に反応器に仕込み、反応温度を極力一定に保ちつつ、過酸化水素については反応で消費されているのを確認しながら、徐々に加えていく方法が好ましい。このような方法によれば、反応器内で過酸化水素が異常分解して酸素ガスが発生したとしても、過酸化水素の蓄積量が少なく、圧力上昇を最小限に留めることができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
実施例1 [触媒の調製、単離]
三角フラスコに無水酢酸鉄(II)(アルドリッチ製)3.48g(0.02mol)、2−ピコリン酸(東京化成工業(株)製)2.47g(0.02mol)、6‐メチル‐2‐ピコリン酸(東京化成工業(株)製)2.74g(0.02mol)、アセトニトリル(和光純薬工業(株)製)を入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら40℃に加温した。反応液を濾過し、室温で一晩放置することにより鉄錯体の黄色結晶が得られた。錯体の構造は元素分析と単結晶X線構造解析により決定した。X線構造解析により決定された錯体の構造(ORTEP図)は図1に示すとおりである。元素分析はThermo Fisher Scientific社製のFlash2000で行った。単結晶X線構造解析はBruker社製のAPEXII回折計により行った。
結晶データ:MW450.21,pale yellow,0.20×0.08×0.05mm3,monoclinic,a=29.653(12)Å,b=8.330(4)Å,c=15.191(6)Å,β=90.896(4),V=3752(3)Å3,C 2/c,Z=8,ρcalcd=1.594gcm-3,R=0.0499(wR2=0.1158 for all data),GOF=1.060
元素分析:理論値C 53.36;H 3.58;N 9.33. 測定値 C 53.35;H 3.42;N 9.29.
実施例2 [触媒の調整法、単離]
三角フラスコに無水酢酸鉄(II)(アルドリッチ製)3.48g(0.02mol)、6‐メチル‐2‐ピコリン酸(東京化成工業(株)製)2.74g(0.02mol)、アセトニトリル(和光純薬工業(株)製)を入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら40℃に加温した。反応液を濾過し、室温で一晩放置することにより鉄錯体の黄色結晶が得られた。錯体の構造は元素分析により決定した。
元素分析:理論値C 54.33;H 3.91;N 9.05. 測定値C 54.14;H 3.91;N 9.09.
実施例3
300mLのフラスコに、無水酢酸鉄(II)(ALDRICH製)0.087g(0.50mmol)、6‐メチル‐2‐ピコリン酸(東京化成工業(株)製)0.069g(0.50mmol)、アセトニトリル(和光純薬工業(株)製)を入れ、50℃にてマグネチックスターラーで撹拌した。10分後、ろ過して得たろ液を、滴下ロートを備えた500mLのフラスコに移した。この混合物に桂皮アルコール13.40g(100mmol)を加え、25℃で撹拌しながら、35%過酸化水素水溶液11.0g(125mmol)を滴下した。滴下終了後、5分間、攪拌を継続した。この後、酢酸エチルおよび飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を追加したのち有機層を分離した。
この有機層を濃縮した後、減圧蒸留にて生成物を単離した結果、桂皮アルデヒドが10.78g(81.6mmol)得られ、収率は82%であった。
なお、収率は生成物の重量を元に、以下の計算式により計算した。
収率(%)=(蒸留にて得られた生成物のモル数/使用した原料のモル数)×100
比較例1
6−メチル−2−ピコリン酸を加えなかった以外は実施例3と同様の条件で反応を行なった。その結果、桂皮アルコールの転化率は0%であり、ガスクロマトグラフィーで桂皮アルデヒドは検出されなかった。
比較例2
アセトニトリルを加えなかった以外は実施例3と同様の条件で反応を行なった。その結果、桂皮アルコールの転化率は0%であり、ガスクロマトグラフィーで桂皮アルデヒドは検出されなかった。
実施例4
試験管に無水酢酸鉄(II)(ALDRICHI製)0.0087g(0.050mmol)、6‐メチル‐2‐ピコリン酸(東京化成工業(株)製)0.020g(0.15mmol)、アセトニトリル(和光純薬工業(株)製)を入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら50℃に加温した。30分撹拌を継続し、反応液を室温まで冷却した後、ろ過して、ろ液を試験管に移した。この混合物にtrans‐2‐オクテン‐1‐オール(0.140g、1.00mmol)を加え、温度を25℃とした後、35%過酸化水素水溶液0.0424g(1.25mol)を滴下した。滴下終了後、5分間攪拌を継続した。
この反応液を分析した結果、trans‐2‐オクテン‐1‐オールの転化率は94%、trans‐2‐オクテナールへの選択率は76%であった。
実施例5
試験管に無水酢酸鉄(II)(ALDRICHI製)0.0087g(0.050mmol)、2‐ピコリン酸(東京化成工業(株)製)0.0061g(0.050mmol)、6‐メチル‐2‐ピコリン酸(東京化成工業(株)製)0.0068g(0.050mmol)、アセトニトリル(和光純薬工業(株)製)を入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら50℃に加温した。30分撹拌を継続し、反応液を室温まで冷却した後、ろ過して、ろ液を試験管に移した。この混合物に2‐シクロヘキセノール(0.103g、1.00mmol)を加え、温度を25℃とした後、35%過酸化水素水溶液0.0424g(1.25mmol)を滴下した。滴下終了後、5分間攪拌を継続した。
この反応液を分析した結果、2‐シクロヘキセノールの転化率は97%、2‐シクロヘキセノンへの選択率は98%であった。
なお、実施例4、5において、転化率、選択率はガスクロマトグラフィーにより分析した結果を元に、以下の計算式により計算した。
転化率(%)= (1−残存した原料のモル数/使用した原料のモル数)×100
選択率(%)={(目的化合物のモル数/使用した原料のモル数)×10000}/転化率(%)
以下の実施例6においても同様である。
実施例6
Trans‐2‐オクテン‐1‐オール及び2‐シクロヘキセノールに替えて以下の表−1に示す各種第一級アリルアルコールおよび第二級アリルアルコールを基質として用い、触媒成分のモル比を表−1に示すとおりとしたほかは、実施例4及び実施例5と同様にカルボニル化反応を行った。結果を併せて表−1に示す。
Figure 0006245605

Claims (9)

  1. 以下の一般式(1)で示されるアリルアルコール類と過酸化水素とを反応させて、アルコール部位をカルボニル化することにより対応するα,β‐不飽和カルボニル化合物を製造する方法であって、反応触媒として水または有機溶媒に可溶な鉄(II)もしくは鉄(III)塩と2‐ピコリン酸および6‐炭素数1〜4のアルキル‐2‐ピコリン酸から選択される少なくとも1種のピコリン酸類とを1:1〜1:4の鉄塩:ピコリン酸類の比率で共存させて、過酸化水素とアリルアルコール類を均一に可溶な溶媒中で使用することを特徴とする、α,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
    Figure 0006245605
    (上記式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立して同一又は相異なり、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、アシル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基又はアシロキシ基を示す。R1〜R4のうちいずれかが連結して環状構造を成していても良い。)
  2. 前記鉄(II)もしくは鉄(III)塩として、酢酸鉄(II)もしくは塩基性酢酸鉄(III)を用いることを特徴とする、請求項1に記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
  3. 前記ピコリン酸類として、2‐ピコリン酸および6‐メチル‐2‐ピコリン酸を1:1〜1:3の比率で混合して使用することを特徴とする、請求項1または2に記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
  4. 反応触媒が以下の式(2)で示す錯体を形成することを特徴とする、請求項3に記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
    Figure 0006245605
  5. 前記ピコリン酸類として、6‐メチル‐2‐ピコリン酸のみを用いることを特徴とする、請求項1または2に記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
  6. 反応触媒が以下の式(3)で示す錯体を形成することを特徴とする、請求項5に記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
    Figure 0006245605
  7. アリルアルコール類が第一級アリルアルコール類であり、α,β‐不飽和カルボニル化合物が、α,β‐不飽和アルデヒドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
  8. アリルアルコール類が第二級アリルアルコール類であり、α,β‐不飽和カルボニル化合物が、α,β‐不飽和ケトンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法。
  9. 以下の式(2)または(3)で示す錯体からなる、以下の一般式(1)で示されるアリルアルコール類と過酸化水素とを反応させてα,β‐不飽和カルボニル化合物を製造する反応用の触媒。
    Figure 0006245605
    Figure 0006245605
    Figure 0006245605
    (上記式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立して同一又は相異なり、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、アシル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基又はアシロキシ基を示す。R1〜R4のうちいずれかが連結して環状構造を成していても良い。)
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