JP6244052B1 - 燃料電池スタック - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池からマニホールドへのリーク電流を抑制可能な燃料電池スタックを提供する。【解決手段】燃料電池スタック100は、導電性材料によって構成される天板203に形成された挿入孔202を有するマニホールドと、挿入孔202に端部が挿入される燃料電池とを備える。燃料電池は、多孔支持基板20と、発電部10と、多孔支持基板20の外表面を覆う緻密シール層11とを有する。緻密シール層11のうち最大電界強度を示す領域は、緻密シール層11のうちマニホールドの挿入孔202と対向する対向領域11Aから離れている。【選択図】図5

Description

本発明は、燃料電池スタックに関するものである。
燃料電池スタックは、複数の燃料電池セルと、導電性材料によって構成されるマニホールドとを備える(特許文献1)。各燃料電池の基端部は、マニホールドの挿入孔に挿入された状態で接合材によって固定される。
各燃料電池は、絶縁性の多孔支持基板と、多孔支持基板上に配置される複数の発電部と、多孔支持基板の外表面を覆う緻密シール層とを備える燃料電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の緻密シール層は、発電部の電解質層と同じ材料(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))によって構成されている。
特開2015−164094号公報
しかしながら、燃料電池からマニホールドに微弱なリーク電流が流れる場合があるという問題がある。本発明者等が鋭意検討した結果、燃料電池とマニホールドとの隙間に大きな電界強度が生じることがリーク電流の原因であるという知見を得た。リーク電流が流れる理由は、以下のとおりである。
特許文献1に記載の緻密シール層は、電解質層と同じ材料によって構成されているため、マイナス電荷の酸化物イオンを流すことができる。従って、緻密シール層のうちマニホールドに近接する領域において電位が大きくなりやすく、燃料電池の基端部とマニホールドとの狭小な隙間に大きな電界強度が生じる。そのため、当該隙間における電界強度が過剰に大きくなると、緻密シール層からマニホールドへ接合材を介してリーク電流が流れる。
本発明は、上述の新たな知見に基づいてなされたものであり、燃料電池からマニホールドへのリーク電流を抑制可能な燃料電池スタックを提供することにある。
本発明に係る燃料電池スタックは、導電性材料によって構成される天板に形成された挿入孔を有するマニホールドと、挿入孔に端部が挿入される燃料電池とを備える。燃料電池は、内部にガス流路を有する絶縁性の多孔支持基板と、多孔支持基板上に配置される発電部と、多孔支持基板の外表面を覆う緻密シール層とを有する。緻密シール層のうち最大電界強度を示す領域は、緻密シール層のうちマニホールドの挿入孔と対向する対向領域から離れている。
本発明によれば、燃料電池からマニホールドへのリーク電流を抑制可能な燃料電池スタックを提供することができる。
第1実施形態に係る燃料電池スタックの斜視図 第1実施形態に係る燃料電池スタックの断面図 第1実施形態に係る燃料マニホールドの斜視図 第1実施形態に係る燃料電池の斜視図 図2の部分拡大図 第1実施形態に係る緻密シール層における電界強度のシミュレーション結果 第2実施形態に係る燃料電池の斜視図 第2実施形態に係る燃料電池スタックの拡大断面図 第2実施形態に係る緻密シール層における電界強度のシミュレーション結果
1.第1実施形態
(燃料電池スタック100)
図1は、燃料電池スタック100の斜視図である。図2は、燃料電池スタック100の断面図である。図3は、マニホールド200の斜視図である。図4は、燃料電池300の斜視図である。燃料電池スタック100は、マニホールド200と燃料電池300とを備える。
(マニホールド200)
マニホールド200は、図3に示すように、燃料ガスを各燃料電池300に供給するように構成されている。マニホールド200は、中空状であり、内部空間を有する。燃料ガスは、導入管201を介してマニホールド200の内部空間に供給される。マニホールド200は、天板203と、マニホールド本体204とを有する。
天板203は、複数の挿入孔202を有する。各挿入孔202は、マニホールド200の内部空間と外部空間に連通する。各挿入孔202には、各燃料電池300が挿入される。挿入孔202と燃料電池300との間には、狭小な隙間が設けられる。天板203は、導電性材料によって構成される。天板203は、金属材料によって構成することができる。金属材料としては、例えばステンレス等を用いることができる。
マニホールド本体204は、上方が開口した直方体状に形成される。マニホールド本体204の上方は、天板203によって封止される。マニホールド本体204は、導電性を有していてもよいし、導電性を有していなくてもよい。
(燃料電池300の概要)
各燃料電池300の基端部は、マニホールド200の各挿入孔202に挿入される。燃料電池300の外周には空気が供給される。燃料電池300は、挿入孔202に挿入された状態で、接合材101によって固定される。
接合材101は、燃料電池300とマニホールド200との間の狭小な隙間に充填される。接合材101は、電子伝導性の低い材料によって構成されることが好ましい。接合材101は、例えば、結晶化ガラス、非晶質ガラス、ろう材、又はセラミックス等によって構成することができる。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO−B系、SiO−CaO系、又はSiO−MgO系が挙げられる。
各燃料電池300は、いわゆる横縞型の固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である。燃料電池300は、図4に示すように、複数の発電部10と、緻密シール層11と、多孔支持基板20とを有する。
複数の発電部10は、多孔支持基板20上に配置される。各発電部10は、多孔支持基板20の両方の主面に配置されているが、多孔支持基板20の片方の主面のみに配置されていてもよい。各発電部10は、燃料電池300の長手方向(図中、x方向)において、互いに間隔をあけて配置される。
図2に示すように、隣接する2つの燃料電池300において、一方の燃料電池300のマニホールド200に最も近い発電部10は、集電部材301を介して、他方の燃料電池300のマニホールド200に最も近い発電部10と電気的に接続される。また、各燃料電池300において、一方の主面に配置されマニホールド200から最も離れた発電部10は、集電部材302を介して、他方の主面に配置されマニホールド200から最も離れた発電部10と電気的に接続される。
集電部材301と集電部材302は、酸化物セラミックスの焼成体、貴金属系材料(Pt、Au、Ag)又は卑金属系材料(Ni、Ni基合金、Niとセラミックスのコンポジット)によって構成することができる。酸化物セラミックスとしては、例えば、ペロブスカイト酸化物やスピネル酸化物などが挙げられる。ペロブスカイト酸化物としては、例えば、(La,Sr)MnOや(La,Sr)(Co,Fe)O等が挙げられる。スピネル酸化物としては、例えば、(Mn,Co)や(Mn,Fe)等が挙げられる。
図4に示すように、緻密シール層11は、多孔支持基板20の外表面を覆う。緻密シール層11は、多孔支持基板20の外表面のうち複数の発電部10が配置された領域を除く全面を覆っている。本実施形態において、多孔支持基板20の外表面には、一対の主面(すなわち、両板面)と一対の側面が含まれる。
図4に示すように、多孔支持基板20は、平板状に形成される。多孔支持基板20は、燃料ガスを流すための6本のガス流路21を内部に有する。各ガス流路21は、燃料電池300の長手方向に沿って延びる。ガス流路21の本数及びサイズは適宜変更可能である。
(燃料電池300の詳細)
図5は、図2の部分拡大図である。
多孔支持基板20は、複数の第1凹部22を有する。複数の第1凹部22は、多孔支持基板20の両方の主面に形成される。
多孔支持基板20は、電子伝導性を有さない絶縁性の多孔質材料によって構成される。多孔支持基板20は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、MgO(酸化ニッケル)とYSZ(イットリア安定化ジルコニア)の複合材料、MgO(酸化ニッケル)とY(イットリア)の複合材料、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)の複合材料などによって構成することができる。多孔支持基板20の気孔率は、20%以上60%以下とすることができる。
多孔支持基板20における遷移金属の含有率は3000ppm以下であり、多孔支持基板20は、遷移金属を含有していないことが特に好ましい。遷移金属としては、例えば、Ni、Fe、Co、及びこれらの酸化物が挙げられる。遷移金属の含有率は、多孔支持基板の一部を破断して溶液に溶かし、ICP発光分光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)により得た。ICP発光分光分析装置は島津製作所社製、ICPE-9000を用いた。多孔支持基板20が複数種の遷移金属を含有する場合、遷移金属の含有率とは、複数種の遷移金属それぞれの含有率の合計である。多孔支持基板20が遷移金属を酸化物の形態で含有する場合、運転中の還元雰囲気において、遷移金属酸化物の少なくとも一部は遷移金属に還元される。
各発電部10は、燃料極4と電解質層5と空気極6と反応防止層7を有する。燃料極4は、電子伝導性を有する多孔質材料によって構成することができる。燃料極4は、燃料極集電層41と燃料極活性層42とを有する。燃料極集電層41は、第1凹部22内に配置される。各燃料極集電層41は、第2凹部41a及び第3凹部41bを有する。燃料極活性層42は、第2凹部41a内に配置される。
燃料極集電層41は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)の複合材料、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)の複合材料、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)の複合材料などによって構成することができる。燃料極集電層41の厚さは、例えば、50〜500μm程度とすることができる。
燃料極活性層42は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(イットリア安定化ジルコニア)の複合材料、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)の複合材料などによって構成することができる。燃料極活性層42の厚さは、例えば、5〜30μmとすることができる。
電解質層5は、燃料極4上に配置される。電解質層5は、あるインターコネクタ31から他のインターコネクタ31まで長手方向に延びる。従って、燃料電池300の長手方向において、電解質層5とインターコネクタ31とが交互に配置される。電解質層5とインターコネクタ31は、多孔支持基板20側の燃料ガスと空気極6側の空気との混合を防止するガスバリア性を発揮する。また、電解質層5の外縁は、緻密シール層11に接続される。
電解質層5の気孔率は、20%未満が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましい。電解質層5の厚さは、例えば、3〜50μm程度とすることができる。
電解質層5は、酸化物イオン伝導性が電子伝導性より高い緻密材料によって構成される。電解質層5は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)やLSGM(ランタンガレート)などによって構成することができる。
反応防止層7は、電解質層5と空気極6の間に介挿される。反応防止層7は、電解質層5内のYSZと空気極6内のSrとが反応して電解質層5と空気極6との界面に電気抵抗の大きい反応層が形成されることを抑制する。
反応防止層7は、緻密材料によって構成される。反応防止層7は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)によって構成することができる。反応防止層7の厚さは、例えば、3〜50μm程度とすることができる。反応防止層7の気孔率は、20%未満が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましい。反応防止層7は、電解質層5とともに上述のガスバリア性を発揮する。
空気極6は、反応防止層7上に配置される。空気極6は、電子伝導性を有する多孔質材料によって構成される。空気極6は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)などによって構成することができる。空気極6の厚さは、例えば、10〜100μmとすることができる。
電気的接続部30は、隣り合う2つの発電部10同士を電気的に接続する。本実施形態において、電気的接続部30は、隣り合う発電部10同士を直列に接続しているが、並列に接続していてもよい。
電気的接続部30は、インターコネクタ31及び空気極集電層32を有する。インターコネクタ31は、第3凹部41b内に配置される。インターコネクタ31は、電子伝導性を有する緻密材料によって構成される。インターコネクタ31は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)や(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)によって構成することができる。インターコネクタ31の気孔率は、20%未満が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましい。インターコネクタ31の厚さは、例えば、10〜100μmとすることができる。
空気極集電層32は、隣り合う発電部10のインターコネクタ31と空気極6との間を延びるように配置される。空気極集電層32は、電子伝導性を有する多孔質材料によって構成される。空気極集電層32は、例えば、LSCF、LSC、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)などによって構成することができる。空気極集電層32の厚さは、例えば、50〜500μm程度とすることができる。
緻密シール層11は、多孔支持基板20の外表面を覆う。図5では、緻密シール層11が、多孔支持基板20の両主面それぞれのうちマニホールド200側の基端部を覆っている様子が図示されているが、緻密シール層11は、多孔支持基板20の主面のうち複数の発電部10が配置された領域を除いた全面を覆っている。緻密シール層11は、マニホールド200の挿入孔202と対向する対向領域11Aを含む。緻密シール層11の厚さは特に制限されないが、例えば、3〜50μm程度とすることができる。
緻密シール層11は、発電部10の側面に接触する。本実施形態において、緻密シール層11は、発電部10の電解質層5に接続される。緻密シール層11の気孔率は、20%未満が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましい。緻密シール層11は、多孔支持基板20側の燃料ガスと緻密シール層11の外周の空気との混合を防止するガスバリア性を発揮する。本実施形態において、緻密シール層11は、電解質層5、反応防止層7及びインターコネクタ31とともにガスバリア層として機能する。
緻密シール層11は、電解質層5の構成材料よりも電気抵抗の高い緻密材料によって構成される。緻密シール層11は、例えば、結晶化ガラス、スピネル酸化物、MgO(マグネシア)、Al(アルミナ)、Y(イットリア)から選択される少なくとも1種によって構成することができる。
(緻密シール層11における電界強度)
本実施形態において、多孔支持基板20における遷移金属の含有率は3000ppm以下であり、緻密シール層11は電気抵抗の高い緻密材料によって構成されている。
従って、多孔支持基板20が遷移金属を過剰に含有する場合や、電解質層5に使用される材料で緻密シール層11を構成する場合などに比べて、燃料電池300の内部(具体的には、多孔支持基板20や緻密シール層11の内部)をマイナス電荷の酸化物イオンが流れることを抑えることができる。従って、燃料電池スタック100の運転時において、緻密シール層11のうちマニホールド200に近接する領域における電位が大きくなりにくく、燃料電池300の端部とマニホールド200との狭小な隙間に大きな電界強度が生じにくい。そのため、緻密シール層11のうち最大電界強度が発生する領域を、マニホールド200と対向する対向領域11Aから離すことができる。その結果、緻密シール層11からマニホールド200へリーク電流が流れることを抑制できる。
ここで、図6(a)は、電解質層と同じYSZで緻密シール層を構成した場合における電界強度のシミュレーション結果である。図6(a)から明らかなように、緻密シール層のうちマニホールドの挿入孔と対向する領域において最大電界強度が発生している。
一方、図6(b)は、多孔支持基板における遷移金属の含有率は3000ppm以下であり、かつ、結晶化ガラスで緻密シール層を構成した場合における電界強度のシミュレーション結果である。図6(b)から明らかなように、緻密シール層のうち発電部(具体的には、電解質層)との境界付近において最大電界強度が発生しており、マニホールドの挿入孔と対向する領域から離れていることが分かる。このように、緻密シール層のうち最大電界強度を示す領域が対向領域から離れているため、緻密シール層からマニホールドへのリーク電流を抑制することができる。
(燃料電池スタック100の製造方法)
次に、燃料電池スタック100の製造方法について説明する。
多孔支持基板20の材料粉末に造孔材とバインダーを添加して調製した坏土を押出成形することによって、6本のガス流路21と複数の第1凹部22を有する多孔支持基板20の成形体を形成する。
次に、燃料極集電層41の材料をペースト化して、多孔支持基板20の成形体の各第1凹部22に充填することによって、第2凹部41a及び第3凹部41bを有する燃料極集電層41の成形体を形成する。
次に、インターコネクタ31の材料をペースト化して、燃料極集電層41の成形体の第3凹部41bに充填することによって、インターコネクタ31の成形体を形成する。
次に、燃料極活性層42の材料をペースト化して、燃料極集電層41の成形体の第2凹部41aに充填することによって、燃料極活性層42の成形体を形成する。
次に、電解質層5の材料をペースト化して、燃料極活性層42の成形体上に印刷することによって、電解質層5の成形体を形成する。
次に、電解質層5の成形体上に反応防止層7の材料をディップ成形することによって、反応防止層7の成形体を形成する。
次に、多孔支持基板20、燃料極4、インターコネクタ31、電解質層5及び反応防止層7の成形体を共焼成(1300〜1600℃、2〜20時間)する。
次に、緻密シール層11の材料をペースト化して、多孔支持基板20の外表面のうち露出している領域に印刷することによって、緻密シール層11の成形体を形成する。そして、緻密シール層11の成形体を焼成(1300〜1500℃、1〜10時間)する。
次に、空気極6の材料をペースト化して、電解質層5上に印刷することによって、空気極6の成形体を形成する。続いて、空気極集電層32の材料をペースト化して空気極6の成形体上に印刷することによって、空気極集電層32の成形体を形成する。
次に、空気極7及び空気極集電層8の成形体を焼成(900〜1100℃、1〜20時間)する。
次に、マニホールド200を準備する。そして、集電部材301及び第2接合材102によって各燃料電池300を互いに接続する。この段階において第2接合材102は熱処理されておらず、各燃料電池300は互いに仮止めされた状態である。
次に、各燃料電池300の下端部をマニホールド200の各挿入孔202に挿入して、燃料電池300と挿入孔202の隙間に第1接合材101を充填する。続いて、第1接合材101及び第2接合材102を熱処理することによって固化させる。
2.第2実施形態
第2実施形態に係る燃料電池スタック110の構成について説明する。第2実施形態に係る燃料電池スタック110は、緻密シール層11に代えて緻密シール層12を備えている点において、第1実施形態に係る燃料電池スタック100と相違している。従って、以下においては、当該相違点について主に説明する。
図7は、燃料電池300の斜視図である。図8は、燃料電池スタック110の拡大断面図である。燃料電池300は、緻密シール層12を備える。緻密シール層12は、多孔支持基板20の外表面を覆う。緻密シール層12は、第1部分121と、第2部分122と、第3部分123とを有する。
第1部分121は、対向領域12Aと発電部10との間に配置される。対向領域12Aは、燃料電池300がマニホールド200の挿入孔202に挿入された際に、挿入孔202の内周面と対向する領域である。第1部分121は、燃料電池300の長手方向において、対向領域12Aから離れている。
本実施形態において、第1部分121は、多孔支持基板20の軸心AXを中心とする周方向において連続的に延びる。第1部分121は、多孔支持基板20を周回するように環状に形成されている。
図8に示すように、多孔支持基板20の軸心と平行な方向(すなわち、長手方向)において、第1部分121の幅W1は、発電部10と対向領域12Aとの間隔W2の10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。発電部10と対向領域12Aとの間隔W2は、燃料電池300の長手方向における発電部10とマニホールド200の挿入孔202との間隔に等しい。
第1部分121は、電解質層5の構成材料よりも電気抵抗の高い緻密材料によって構成される。緻密シール層11は、例えば、結晶化ガラス、スピネル酸化物、MgO(マグネシア)、Al(アルミナ)、Y(イットリア)から選択される少なくとも1種によって構成することができる。
第2部分122は、第1部分121の外側に接続される。第2部分122は、対向領域12Aを含む。第2部分122は、第1部分121を挟んで、発電部10と反対側に配置される。第3部分123は、第1部分121の内側に接続される。第3部分123は、多孔支持基板20の外表面の大部分を覆っている。第3部分123は、各発電部10の電解質層5と一体的に形成される。第3部分123は、各発電部10の電解質層5を外側に延ばすことによって形成されている。第2部分122と第3部分123は、電解質層5に用いることのできる材料によって構成される。
(緻密シール層12における電界強度)
本実施形態において、多孔支持基板20における遷移金属の含有率は3000ppm以下であり、緻密シール層12は対向領域12Aと発電部10の間に配置された第1部分121を含む。第1部分121は、電気抵抗の高い緻密材料によって構成される。
従って、多孔支持基板20が遷移金属を過剰に含有する場合や、電解質層5に使用される材料によって緻密シール層12全体が構成される場合に比べて、燃料電池300の内部(具体的には、多孔支持基板20や緻密シール層11の内部)をマイナス電荷の酸化物イオンが流れることを抑えることができる。従って、燃料電池スタック100の運転時において、緻密シール層12のうちマニホールド200に近接する領域における電位が大きくなりにくく、燃料電池300の端部とマニホールド200との狭小な隙間に大きな電界強度が生じにくい。そのため、緻密シール層12のうち最大電界強度が発生する領域を、マニホールド200の挿入孔202と対向する対向領域12Aから離すことができる。その結果、緻密シール層12からマニホールド200へリーク電流が流れることを抑制できる。
ここで、図9(a)は、電解質層と同じYSZで緻密シール層全体を構成した場合における電界強度のシミュレーション結果である。図9(a)から明らかなように、緻密シール層のうちマニホールドの挿入孔と対向する対向領域において最大電界強度が発生している。
一方、図9(b)は、多孔支持基板における遷移金属の含有率は3000ppm以下であり、かつ、結晶化ガラスで構成される第1部分を含む緻密シール層を形成した場合における電界強度のシミュレーション結果である。図9(b)から明らかなように、緻密シール層のうち第1部分と第3部分との境界付近において最大電界強度が発生しており、対向領域からは離れていることが分かる。このように、緻密シール層のうち最大電界強度の発生する領域が対向領域から離れているため、緻密シール層からマニホールドへのリーク電流を抑制することができる。
(燃料電池スタック100の製造方法)
次に、燃料電池スタック100の製造方法について説明する。
多孔支持基板20の材料粉末に造孔材とバインダーを添加して調製した坏土を押出成形することによって、6本のガス流路21と複数の第1凹部22を有する多孔支持基板20の成形体を形成する。
次に、燃料極集電層41の材料をペースト化して、多孔支持基板20の成形体の各第1凹部22に充填することによって、第2凹部41a及び第3凹部41bを有する燃料極集電層41の成形体を形成する。
次に、インターコネクタ31の材料をペースト化して、燃料極集電層41の成形体の第3凹部41bに充填することによって、インターコネクタ31の成形体を形成する。
次に、燃料極活性層42の材料をペースト化して、燃料極集電層41の成形体の第2凹部41aに充填することによって、燃料極活性層42の成形体を形成する。
次に、電解質層5の材料をペースト化して、燃料極活性層42の成形体上及び多孔支持基板20の外表面全面に印刷することによって、電解質層5の成形体と緻密シール層12のうち第2部分122及び第3部分123の成形体とを一体的に形成する。
次に、電解質層5の成形体上に反応防止層7の材料をディップ成形することによって、反応防止層7の成形体を形成する。
次に、多孔支持基板20、燃料極4、インターコネクタ31、電解質層5、反応防止層7及び緻密シール層12の第2部分122及び第3部分123の成形体を共焼成(1300〜1600℃、2〜20時間)する。
次に、緻密シール層12の第2部分122と第3部分123の間に第1部分121のペースト材料を配置することによって、第1部分121の成形体を形成する。そして、第1部分121の成形体を焼成(1300〜1500℃、1〜10時間)する。
次に、空気極6の材料をペースト化して、電解質層5上に印刷することによって、空気極6の成形体を形成する。続いて、空気極集電層32の材料をペースト化して空気極6の成形体上に印刷することによって、空気極集電層32の成形体を形成する。
次に、空気極7及び空気極集電層8の成形体を焼成(900〜1100℃、1〜20時間)する。
次に、マニホールド200を準備する。そして、集電部材301及び第2接合材102によって各燃料電池300を互いに接続する。この段階において第2接合材102は焼成されておらず、各燃料電池300は互いに仮止めされた状態である。
次に、各燃料電池300の下端部をマニホールド200の各挿入孔202に挿入して、燃料電池300と挿入孔202の隙間に第1接合材101を充填する。続いて、第1接合材101及び第2接合材102を熱処理することによって固化させる。
(変形例)
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記第1及び第2実施形態において、マニホールド200の構成について、図3を参照しながら説明したが、マニホールド200の構成は適宜変更可能である。マニホールド200は、燃料電池300を挿入するための挿入孔202を有していればよい。
上記第1及び第2実施形態において、燃料電池300の構成について、図4及び図5を参照しながら説明したが、燃料電池300の構成は適宜変更可能である。燃料電池300は、燃料極4、電解質層5及び空気極6を有する発電部10を少なくとも1つ備えていればよい。
上記第1及び第2実施形態において、燃料電池300の多孔支持基板20は、平板状に形成されることとしたが、これに限られるものではない。例えば、多孔支持基板20は、円筒状に形成されていてもよい。
上記第2実施形態において、緻密シール層12の第3部分123は、発電部10の電解質層5と一体的に形成されることとしたが、電解質層5とは別に形成されていてもよい。この場合、緻密シール層12の第3部分123は、電解質層5と同じ材料によって構成されてもよいし、電解質層5とは異なる材料によって構成されてもよい。
上記第2実施形態において、緻密シール層12の第2部分122は、電解質層5に用いることのできる材料によって構成されることとしたが、これに限られるものではない。第2部分122は、電解質層5と異なる材料によって構成されてもよいし、第3部分123と異なる材料によって構成されてもよい。
上記第2実施形態において、緻密シール層12の第1部分121は、周方向において連続的に延びることとしたが、これに限られるものではない。第1部分121は、周方向において断続的に延びていてもよい。すなわち、第1部分121は、破線上又は点線状に形成されていてもよい。また、第1部分121は、周方向において延びていなくてもよい。すなわち、第1部分121は、第2部分122の対向領域12Aから離れた位置にスポット的に配置されていてもよい。
上記第2実施形態において、緻密シール層12の第1部分121は、環状に1本だけ形成されることとしたが、環状に複数本形成されていてもよい。
上記第2実施形態において、緻密シール層12の第1部分121の成形体は、緻密シール層12の第2部分122及び第3部分123の成形体を焼成した後に、単独で焼成することとしたが、これに限られるものではない。例えば、緻密シール層12の第1部分121の成形体は、緻密シール層12の第2部分122及び第3部分123の成形体と共焼成してもよい。
10 発電部
11,12 緻密シール層
11A,12A 対向領域
121 第1部分
122 第2部分
20 多孔支持基板
100 :燃料電池スタック
200 :マニホールド
300 :燃料電池

Claims (6)

  1. 導電性材料によって構成される天板に形成された挿入孔を有するマニホールドと、
    前記挿入孔に端部が挿入される燃料電池と、
    を備え、
    前記燃料電池は、
    内部にガス流路を有する絶縁性の多孔支持基板と、
    前記多孔支持基板上に配置される発電部と、
    前記多孔支持基板の外表面を覆う緻密シール層と、
    を有し、
    前記緻密シール層のうち最大電界強度を示す領域は、前記緻密シール層のうち前記マニホールドの前記挿入孔と対向する対向領域から離れており、
    前記多孔支持基板における遷移金属の含有率は、3000ppm以下である、
    燃料電池スタック。
  2. 前記発電部は、前記緻密シール層に接続される電解質層を含み、
    前記緻密シール層は、前記電解質層に接続される、
    請求項1に記載の燃料電池スタック。
  3. 前記緻密シール層は、結晶化ガラス、スピネル酸化物、MgO、Al、Yから選択される少なくとも1種によって構成される、
    請求項に記載の燃料電池スタック。
  4. 導電性材料によって構成される天板に形成された挿入孔を有するマニホールドと、
    前記挿入孔に端部が挿入される燃料電池と、
    を備え、
    前記燃料電池は、
    内部にガス流路を有する絶縁性の多孔支持基板と、
    前記多孔支持基板上に配置される発電部と、
    前記多孔支持基板の外表面を覆う緻密シール層と、
    を有し、
    前記緻密シール層のうち最大電界強度を示す領域は、前記緻密シール層のうち前記マニホールドの前記挿入孔と対向する対向領域から離れ、
    前記発電部は、前記緻密シール層に接続される電解質層を含み、
    前記緻密シール層は、前記電解質層に接続されており、
    前記緻密シール層は、前記対向領域と前記発電部の間に配置される第1部分と、前記第1部分に接続され、前記対向領域を含む第2部分とを有し、
    前記第1部分は、結晶化ガラス、スピネル酸化物、MgO、Al、Yから選択される少なくとも1種によって構成される、
    燃料電池スタック。
  5. 前記多孔支持基板は、所定の軸心に沿って延びる平板状に形成されており、
    前記第1部分は、前記軸心を中心とする周方向において、断続的又は連続的に延びる、
    請求項に記載の燃料電池スタック。
  6. 前記軸心に平行な方向において、前記第1部分の幅は、前記発電部と前記対向領域との間隔の10%以上である、
    請求項に記載の燃料電池スタック。
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