JP6243695B2 - リチウムイオン二次電池電解液保管容器用フェライト系ステンレス鋼および該ステンレス鋼を用いたリチウムイオン二次電池電解液保管容器 - Google Patents

リチウムイオン二次電池電解液保管容器用フェライト系ステンレス鋼および該ステンレス鋼を用いたリチウムイオン二次電池電解液保管容器 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池電解液保管容器向けの金属材料に関する。電解液の取扱いにおいて、液こぼれが起こった場合でも、十分な耐食性を有するフェライト系ステンレス鋼を提供するものである。
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、メモリー効果も小さいことから、携帯電話やハイブリッドカーを含めた電気自動車に用いられている。リチウムイオン二次電池の電解液は、エチレンカーボネート(EC)やジエチルカーボネート(DEC)などの有機溶媒に、電解質として6弗化リン酸リチウム(LiPF)を加えたものを主成分とする。なお6弗化リン酸リチウムは、空気中の酸素や水蒸気と反応し、弗酸を生じるため、電解液が空気と接触すると、腐食性が増すことが知られている。
電解液の保管や輸送に用いる容器(以下、「電解液保管容器」と称する。)として、かつては樹脂容器が用いられることもあったが、現在では、密閉性、耐久性に優れるステンレス鋼製の容器が主流となっている。
容器の素材としては、SUS304、SUS316などのオーステナイト系ステンレス鋼が一般的に用いられている。オーステナイト系ステンレス鋼は耐食性が高いため、電解液の取扱いにおいて液がこぼれて空気と接触し、電解液の腐食性が増した場合であっても容器の使用に支障を生じるような腐食は起こりにくい。
一方、近年のリチウムイオン二次電池の生産量増加とともに、電解液保管容器のコストダウンの要求が高くなってきた。したがって、容器の大型化や形状の最適化、製造方法の改善が行われると同時に、素材の見直しが検討されている。
オーステナイト系ステンレス鋼よりも安価な鋼種として、フェライト系ステンレス鋼がある。しかし、一般的にフェライト系ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼に比較して耐食性が劣ると考えられており、これまで使用されていなかった。そのため、空気と接触して腐食性が増した電解液に対する耐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼が望まれていた。
リチウムイオン二次電池用途のフェライト系ステンレス鋼として、特許文献1に開示される技術が知られている。これは、リチウムイオン二次電池ケースとしてフェライト系ステンレス鋼を用いる技術であり、内面にポリプロピレンフィルムを付着させることを特徴としている。リチウムイオン二次電池ケースでは電解液が漏洩した際の耐食性までは要求されていないため、このような技術で十分であった。しかし電解液保管容器の場合は、電解液がこぼれることも想定しなければならず、特許文献1に開示される技術では十分な耐食性が得られなかった。
なお、耐食性の他に、電解液容器の品質向上のための要素として、内面の清浄性がある。金属粉のようなパーティクルが電解液に混入すると、電池の性能を低下させる場合があり、対策として容器内面に酸洗、電解研磨を施している。従って、フェライト系ステンレス鋼を用いた電解液容器の品質向上のため、フェライト系ステンレス鋼に適した酸洗、電解研磨条件を把握することが好ましい。
特開2011−102423号公報
上記状況を踏まえ、本発明は、リチウムイオン二次電池の電解液保管容器のための耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
さらに、得られたフェライト系ステンレス鋼から製造されたリチウムイオン二次電池の電解液保管容器の耐食性向上のための、最適の酸洗もしくは電解研磨条件を検討し、当該最適な条件で施術されたステンレス鋼製リチウムイオン二次電池電解液保管容器もまた提供する。
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討の結果、特定の構成を有するフェライト系ステンレス鋼が、リチウムイオン二次電池の電解液で使用される6弗化リン酸リチウムを含む溶液に対して著しい耐食性を示すことを見出した。
つまり、本発明は、電池の電解質で使用されるC:0.02質量%以下、Si:0.80質量%以下、Mn:0.80質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.010質量%以下、Cr:16.0〜35.0質量%、N:0.025質量%以下、Al:0.003〜0.20質量%、Nb:0.80質量%以下、Ti:0.60質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、さらに(Ti+Nb)≧7×(C+N)であるリチウムイオン二次電池電解液保管容器用フェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
さらに、上記フェライト系ステンレス鋼製リチウム二次電池電解液保管容器、さらに該容器の品質向上のための最適な酸洗または電解研磨条件を提供し、係る条件下で処理を施したリチウム二次電池電解液保管容器も提供する。
本発明により、空気と接触して腐食性が増したリチウムイオン二次電池電解液に対する耐食性が極めて良好なフェライト系ステンレス鋼が得られる。特に、リチウムイオン二次電池電解液に対する耐食性試験の結果が極めて良好であり、該鋼板を用いて製造された電解液保管容器は長期間使用することができる。
Cr含有量と最大侵食深さの関係を示す図である。●は本発明鋼No.1−9、×はCr含有量が本発明の範囲を外れる比較鋼No.10およびNo.11、△はAl含有量が本発明の範囲を外れる比較鋼No.12およびNo.13を表す。
本発明のフェライト系ステンレス鋼を構成する各合金元素について範囲選定理由について説明する。
C:0.02質量%以下、N:0.025質量%以下
C、Nはステンレス鋼中に不可避的に含まれる元素である。C含有量およびN含有量を低減すると、炭化物、窒化物の生成が少なくなり、溶接性および溶接部の耐食性が向上する。しかし、低減のためには精錬時間が長くなり、ステンレス鋼製造のコスト上昇を招くため、Cは0.020質量%まで、Nは0.025質量%までの含有を許容することにした。
Si:0.80質量%以下
Siはステンレス鋼の脱酸剤として添加される。しかし、過剰のSi含有はフェライト相を硬質化させ、加工性や靭性を劣化させる要因となることから、本発明においては上限を0.80質量%とする。
Mn:0.80質量%以下
Mnはステンレス鋼に不純物として含まれているSと結合し、化学的に不安定な硫化物であるMnSを形成して耐食性を低下させる。したがってMn含有量は低いほど好ましく、本発明においては、0.80質量%を上限とする。
P:0.04質量%以下
Pは、母材およびろう付け部の靭性を損なうので低い方が望ましい。ただし、含Cr鋼の溶製において精錬による脱Pは困難であることから、P含有量を極低化するには原料の厳選などに過剰なコスト増を伴う。したがって本発明では一般的なフェライト系ステンレス鋼と同様に、0.04質量%までのP含有を許容する。
S:0.010質量%以下
Sは、MnSを形成し、酸洗や電解研磨によってMnS周辺にピットが生じやすくなる。したがって、S含有量は低いほど好ましく、本発明では0.010質量%以下に規定される。
Cr:16.0〜35.0質量%
Crは、不動態皮膜の主要構成元素であり、耐食性の向上をもたらす。電解液が空気と接触しない場合であれば、特許文献1に開示されているとおり、10質量%以上含有すれば良い。しかし、作業時の液こぼれ等によって大気に触れ、腐食性が増した場合には、Crを16.0質量%以上含有しなければ、耐食性を示すことができない。一方、Cr含有量が多くなるとC、Nの低減が難しくなり、機械的性質や靭性を損ね、かつコストを増大させる要因となる。したがって本発明ではCr含有量を16.0〜35質量%とする。
Mo:2.5質量%以下
Moは耐食性を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて添加される。過度の添加は加工性を損ね、かつコストを増大させる要因となる。したがって、添加する場合、本発明ではMo含有量を2.5質量%以下とする。なお、所望の効果を期待するためには、好ましくはMo含有量を0.02質量%以上とする。
Ni:2.0質量%以下
Niは耐食性を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて添加される。オーステナイト形成元素であり、過度に添加すると、フェライト単相組織を維持できなくなる。したがって、添加する場合、本発明ではNi含有量を2.0質量%以下とする。なお、所望の効果を期待するためには、好ましくはNi含有量を0.02質量%以上とする。
Cu:2.0質量%以下
Cuは耐食性を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて添加される。オーステナイト形成元素であり、過度に添加すると、フェライト単相組織を維持できなくなる。したがって、添加する場合、本発明ではCu含有量を2.0質量%以下とする。なお、所望の効果を期待するために、好ましくはCu含有量を0.02質量%以上とする。
Al:0.003〜0.20質量%
Alは電解液に対する耐食性を高めるために有効な成分である。Alが電解液中の6弗化リン酸リチウムと反応して安定な弗化物を形成し、Crを主体とする不動態皮膜とともに、耐食性を高めていると考えられる。その効果を発現するためには、0.003質量%以上の添加が必要である。しかし過剰のAl含有はフェライト相を硬質化させ、加工性や靭性を劣化させる要因となることから、本発明においてはAl量の上限は0.20質量%とする。
Nb:0.80質量%以下
NbはC、Nを固定し、加工性および耐食性を向上させる元素である。しかし、過剰のNb含有は、ステンレス鋼が硬質化し、加工性を損なうことから、本発明ではNb量の上限を0.80質量%とする。
Ti:0.60質量%以下
TiはNbと同様に、C、Nを固定し、加工性および耐食性を向上させる元素である。しかし、過剰のNb含有は、ステンレス鋼が硬質化し、加工性を損なうことから、本発明ではTi量の上限を0.60質量%とする。
(Ti+Nb)≧7×(C+N)
TiおよびNbはC、Nを固定する目的で添加するものであるから、C、N量に応じた適量を添加する必要がある。本発明では、TiとNbをあわせて、7×(C+N)以上の添加を必要とする。
以下に耐食性試験条件の選定理由を示す。
試験片形状
フェライト系ステンレス鋼は、乾湿繰り返し環境において、隙間腐食が進行しやすいことが知られている。したがって本発明においては、15mm×15mm×板厚1mmの小片および40mm×40mm×板厚1mmの大片をスポット溶接し、隙間を有する試験片を用いることとする。
電解液組成
リチウムイオン二次電池用の電解液としては種々の組成のものが開発されている。とはいえ、電解液の腐食性は、電解液が空気と触れ、6弗化リン酸リチウムと酸素あるいは水蒸気が反応して弗酸を形成することで生じるものであることから、本発明では、6弗化リン酸リチウムの濃度のみを規定し、その濃度を1mol/リットルとする。そのような電解液100マイクロリットルを試験片の隙間部に滴下する。
乾湿繰り返し条件
上述の通り、腐食性は電解液が空気と触れることで生じることから、試験は大気中で行う必要がある。また、乾燥と湿潤を繰り返すと、乾燥から湿潤および湿潤から乾燥に移行する際に、電解液中に生じた弗酸の濃度が高くなり、腐食性が増すことから、試験は乾湿を繰り返す方法とした。夏場の気温を想定し、試験温度は50℃とし、湿度は、種々検討した結果、最も腐食度が高かった相対湿度85%とした。以上より、乾湿繰り返し条件は、50℃、相対湿度85%で3時間、50℃、相対湿度30%で1時間保持する過程を1サイクルとし、100サイクル繰り返すこととする。
本発明のリチウムイオン二次電池電解液保管容器は、鋼板表面に存在するパーティクルを除去するために、その内面を酸洗浄もしくは電解研磨することが好ましい。
酸洗は、不動態皮膜を破壊した上で、Hイオンの還元作用によってステンレス鋼を溶解させることによって行うものである。
弗酸:0.5質量%以上、硝酸:5質量%以上
硝酸はHの供給源として、5質量%以上添加する必要がある。ただし、硝酸には不動態を破壊する作用がないため、硝酸を用いる場合は合わせて0.5質量%以上の弗酸を用いる必要がある。なお、弗酸を過剰に添加するとFeイオンと反応してFeFとして沈殿し、むしろ効果が低くなることがあるため弗酸濃度は5質量%以下であることが好ましい。硝酸は過剰に添加しても添加量に見合う効果の上昇は見込めず、コストの上昇を招くのみであるため、硝酸は15質量%以下であることが好ましい。
塩酸:5質量%以上
塩酸はHイオンの供給源であり、さらにClイオンによる不動態皮膜の破壊作用があることから、単独添加で5質量%以上添加すれば良い。なお、塩酸は過剰に添加しても添加量に見合う効果の上昇は見込めず、コストの上昇を招くのみであるため、塩酸濃度は15質量%以下であることが好ましい。
硫酸:10質量%以上
硫酸はHイオンの供給源であり、不動態皮膜を破壊する作用はあるが、塩酸に比べるとその作用は小さいことから、10質量%以上が必要である。なお、硫酸は過剰に添加しても添加量に見合う効果の上昇は見込めず、コストの上昇を招くのみであるため、硫酸濃度は25質量%以下であることが好ましい。
上述した組成の酸洗液を電解液保管容器の内部に注入、あるいは酸洗液を満たした槽に、電解液保管容器を浸漬し、1分以上保持することにより、ステンレス鋼表面が溶解し、それに伴って表面の付着物が除去される。温度は常温でかまわないが、必要に応じて80℃まで加温しても良い。
また、酸洗浄に要する時間は、酸洗液の酸の濃度や温度に依存するが所望の表面粗さが得られる時間であれば特に制限されない。しかし、通常は、1〜10分、好ましくは1〜5分である。
電解研磨は、電流を流すことでステンレス鋼を電気化学的に溶解させる方法である。特にリン酸を用いると、ステンレス鋼の表面に電気抵抗の高い液膜が形成され、平滑な表面性状を得ることができるものである。
具体的に、下記の溶液を満たした槽に電極を入れ、電解液保管容器を浸漬し、電流密度20〜500mA/cmで、1分以上保持することにより、ステンレス鋼表面が溶解し、それに伴って表面の付着物が除去される。槽の溶液の温度は常温でかまわないが、必要に応じて80℃まで加温しても良い。
また、電解研磨に要する時間は、電流密度や電解研磨に使用する溶液の酸の濃度に依存するが、所望の表面粗さが得られる時間であれば特に制限されない。しかし、通常1〜10分、好ましくは1〜5分である。
リン酸:10質量%以上
リン酸水溶液中で電解研磨を行う場合、リン酸濃度は10質量%以上にする必要がある。これよりも低い濃度の場合は、ステンレス鋼表面に電気抵抗の高い液膜を形成することができず、平滑な表面性状を得ることができない。なお、リン酸は比較的広い濃度範囲で良好な表面性状が得られるが、極端に濃度を高くすることはコスト上昇を招くため、リン酸濃度は90質量%以下であることが好ましい。
硫酸:1質量%以上
リン酸水溶液に硫酸を添加すると、表面性状が向上することから、必要に応じて硫酸を加えても良い。効果を得るために必要な硫酸濃度は1質量%以上である。なお、硫酸は過剰に添加しても添加量に見合う効果の上昇は見込めず、コストの上昇を招くのみであるため、硫酸濃度は40質量%以下であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池電解液保管容器用フェライト系ステンレス鋼は、上記のように含有成分が制御されていれば、製造方法に制限はない。通常、フェライト系ステンレス鋼に施される熱延,冷延及び焼鈍等を組み合わせて所望板厚の鋼板とした後、適宜の加工手段を用いて所望の電解液保管容器を製造する。また、必要に応じて、容器内面を酸洗及び/又は電解研磨を施す。
本発明のリチウムイオン二次電池電解液保管容器が収容する電解液は、電解質塩を溶媒に溶かしたものが挙げられる。ここで、電解質塩としては、特に制限されない。具体的には、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiSbF、LiAlCl、Li10Cl10、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)等の有機酸陰イオン塩などが挙げられる。これらの電解質塩は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等が挙げられるがこれに限定されない。以上の溶媒を1種もしくは2種以上使用することができる。
表1に示す成分組成のフェライト系ステンレス鋼を、真空溶製によって30kgインゴットを作成した。インゴットから40mm厚みの熱延用ブロックを採取し、1230℃の電気炉内に2h保持した後、熱間圧延にて板厚3mmの熱延板を作成した。熱延板を1050℃で焼鈍し、弗酸1.1質量%及び硝酸7.0質量%含む酸洗液を用いて、液温30℃で5分間の酸洗によって酸化スケールを除去した後、冷間圧延にて板厚1.0mmの冷延板とした。冷延板を結晶粒径が20〜40μmになるよう、950〜1050℃で焼鈍し、酸洗によって酸化スケールを除去して発明鋼No.1〜9、比較鋼No.10〜13を得た。
試験例1
表1に示す板厚1.0mmのフェライト系ステンレス鋼を用い、本発明で規定するとおり、15mm×15mmの小片と40mm×40mmの大片をスポット溶接した。スポット溶接の径はφ5mmのものを用いた。電解液は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1で混合した溶媒に、1mol/リットルの6弗化リン酸リチウムを加えたものを用いた。電解液100マイクロリットルを試験片の隙間部に滴下し、その後、50℃、相対湿度85%で3時間、50℃、相対湿度30%で1時間保持する過程を100サイクル繰り返した。
Figure 0006243695
試験後の試験片のスポット溶接部に穴を開けて小片と大片を離し、硝酸を用いて除銹を行った後、光学顕微鏡を用いた焦点深度法によって侵食深さを測定した。各鋼種について4検体ずつの試験を行い、各鋼種の最大侵食深さを求めた。その結果を表1および図1に示す。
Cr含有量が多いほど、最大侵食深さが小さくなる傾向を示した。特にCr含有量が16質量%以上になると最大侵食深さは大幅に減少し、ほとんどの鋼種の最大侵食深さが0.2mm以下であった。ただし、Al含有量が0.003質量%未満の場合は、Cr量が16質量%以上であっても、最大侵食深さが0.2mmを超えていた。
板厚2mmの発明鋼1〜3および比較鋼10〜12を用い、現在、リチウムイオン二次電池の電解液保管容器として一般的に用いられている形態の容器を作製し、電解液製造所と電池製造所間の電解液の輸送、保管容器として1年間使用した。なお電解液製造所では、容器外面に付着した電解液を洗浄するが、電池製造所において付着した電解液は洗浄せずに放置した。従って、電池製造所から電解液製造所に戻るまでの期間で腐食が進行する状況である。
1年経過後に、発明鋼No.1〜No.3、比較鋼No.10〜No.12で作製したそれぞれの容器を解体し、腐食状況を調査したところ、発明鋼No.1〜No.3の最大侵食深さはNo.1,2が0.05mm、No.3が0.03mmであった。使用年数に比例して侵食が深くなると想定すると、板厚貫通に至るのは40年後以上であり、本用途での耐用年数としては満足できるものである。一方、比較鋼の侵食深さはNo.10が0.70mm、No.11が0.65mm、No.12が0.50mmであった。板厚貫通まで、2.8〜4年と推察され、耐用年数としては満足できる水準ではなかった。
試験例2
発明鋼1の組成を有し、酸洗を行わなかったこと以外は上記製法と同じ条件で処理された鋼板を用いて、電解液容器を作製し、内面に種々の酸洗および電解研磨を施した。電解液の品質への影響を確認するため、電解液容器に電解液を1週間入れておき、その電解液を用いてリチウムイオン電池を作製し、充放電特性について調査した。
充放電試験は、1Aで4Vまでの充電、1時間の休止、1Aで3Vまでの放電、1時間の休止を1サイクルとし、500サイクルまで継続した。1サイクルにおける容量を基準に、500サイクル後の容量の比率を求め、充放電特性とした。
表2に電解液容器内面の酸洗条件と、その容器で保管した電解液を用いたリチウムイオン電池の充放電特性の関係を示す。本発明の好ましい範囲の酸洗条件では、充放電特性80〜82%が得られた。一方、本発明の好ましい範囲外の酸洗条件では、充放電特性が77%であり、電池性能の低下が早かった。
Figure 0006243695
表3に電解液容器内面の電解研磨条件と、その容器で保管した電解液を用いたリチウムイオン電池の充放電特性の関係を示す。本発明の好ましい範囲の電解研磨条件では、充放電特性80〜82%が得られた。一方、本発明の好ましい範囲外の電解研磨条件では、充放電特性が77%であり、電池性能の低下が早かった。
Figure 0006243695
以上のように、本発明範囲の成分を有するフェライト系ステンレス鋼を用いることで、また任意に酸洗浄や電解研磨を施すことで、安価なフェライト系ステンレス鋼をリチウムイオン電池の電解液保管容器に用いることができる。

Claims (5)

  1. C:0.02質量%以下、Si:0.58質量%以下、Mn:0.33質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.010質量%以下、Cr:16.0〜35.0質量%、N:0.025質量%以下、Al:0.004〜0.20質量%、Nb:0.43質量%以下、Ti:0.60質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、さらに(Ti+Nb)≧7×(C+N)である、リチウムイオン二次電池電解液保管容器用フェライト系ステンレス鋼であって、15mm×15mmの小片および40mm×40mmの大片をスポット溶接したものを試験片として用い、その隙間部に電解質として6弗化リン酸リチウム1mol/リットルを含む電解液100マイクロリットルを滴下し、その状態で、温度50℃、相対湿度85%の湿潤環境に3時間、50℃、相対湿度30%の乾燥環境に1時間保持するサイクルを100サイクル繰り返す耐食性試験において、最大侵食深さが0.2mm以下である、該フェライト系ステンレス鋼
  2. Mo:2.5質量%以下、Ni:2.0質量%以下、Cu:2.0質量%以下のいずれかの1種または2種以上を更に含む、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池電解液保管容器用フェライト系ステンレス鋼。
  3. 請求項1又は2に記載されるフェライト系ステンレス鋼によって製造されるリチウムイオン二次電池電解液保管容器。
  4. 容器内面に、酸洗及び/または電解研磨を施した、請求項3に記載のリチウムイオン二次電池電解液保管容器の製造方法であって、
    前記酸洗において、酸洗液として、弗酸0.5質量%以上および硝酸5質量%以上含む水溶液、塩酸5質量%以上を含む水溶液、または硫酸10質量%以上を含む水溶液を用い、1分以上の酸洗を施すことを含み
    前記電解研磨において、リン酸10質量%以上含む水溶液または、リン酸10質量%以上と硫酸1質量%以上を含む水溶液を用い、表面の平均電流密度として20mA/cm以上の電流を30秒以上通電する電解研磨を施すことを含む
    前記リチウムイオン二次電池電解液保管容器の製造方法
  5. 容器内面に、酸洗を施した後、電解研磨を施すことを含む、請求項4に記載のリチウムイオン二次電池電解液保管容器の製造方法
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