以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
[検体塗抹装置の概要]
図1を参照して、本実施形態による検体塗抹装置100の概要について説明する。
検体塗抹装置100は、スライドガラス10に対して、検体を塗抹するための装置である。検体は、被検体(被験者)から採取した生体試料であり、たとえば血液や細胞などである。
図1に示すように、検体塗抹装置100は、第1スライドガラス供給部11を備える。また、検体塗抹装置100は、スライドガラス搬送部20と、処理部30とを備える。スライドガラス搬送部20は、スライドガラス10を保持するスライドガラス保持部21を含む。また、検体塗抹装置100は、第2スライドガラス供給部12を備えていてもよい。図1に示す構成例では、検体塗抹装置100は、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12を備える。なお、スライドガラス保持部21による保持は、スライドガラス10が動かないよう固定した状態にすることである。たとえば、保持する方法として、挟み込んで固定される把持を含む。また、把持する際の力を付与する方法は、バネによる弾性力に限らず、たとえば、他の弾性力によるもの、重力によるもの、流体の圧力によるものなどを含む。また、保持する方法として、吸着されて固定されることを含む。また、他の方法により保持してもよい。
スライドガラス10は、たとえば、長方形形状を有する板状部材である。スライドガラス10は、たとえば、検体が塗抹される塗抹領域と、検体情報などの各種の情報を表示するための印刷領域とを有する。塗抹領域は、たとえば、長手方向の中央部に、長手方向に延びる所定の範囲で形成される。印刷領域は、たとえば、長手方向の一端部に塗抹領域から離間して形成される。印刷領域は、たとえば樹脂材などを用いてスライドガラス10がコーティングされることにより、印刷可能とする処理が施された部位である。印刷領域には、検体番号、日付、バーコードまたは2次元コードなどが印刷できる。
第1スライドガラス供給部11は、塗抹前(処理前)のスライドガラス10を1枚ずつ供給する。また、第1スライドガラス供給部11は、スライドガラス10を複数収納できる。第1スライドガラス供給部11は、第1スライドガラス供給位置111において、スライドガラス搬送部20に対して、スライドガラス10を受け渡す。第1スライドガラス供給位置111は、第1スライドガラス供給部11に隣接して配置されている。
第2スライドガラス供給部12は、塗抹前(処理前)のスライドガラス10を1枚ずつ供給する。また、第2スライドガラス供給部12は、スライドガラス10を複数収納できる。第2スライドガラス供給部12は、第2スライドガラス供給位置121において、スライドガラス搬送部20に対して、スライドガラス10を受け渡す。第2スライドガラス供給位置121は、第2スライドガラス供給部12に隣接して配置されている。また、第2スライドガラス供給位置121は、第1スライドガラス供給位置111とは異なる位置である。
スライドガラス搬送部20は、第1スライドガラス供給位置111に移動できる。また、スライドガラス搬送部20は、第2スライドガラス供給位置121に移動できる。また、スライドガラス搬送部20は、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12からスライドガラス10を1枚受け取る。つまり、スライドガラス搬送部20は、第1スライドガラス供給部11から第1スライドガラス供給位置111においてスライドガラス10を受け取り可能である。また、スライドガラス搬送部20は、第2スライドガラス供給部12から第2スライドガラス供給位置121においてスライドガラスを受け取り可能である。また、スライドガラス搬送部20は、受け取ったスライドガラス10を搬送する。具体的には、スライドガラス搬送部20は、受け取ったスライドガラス10を上面に保持して搬送する。また、スライドガラス搬送部20は、スライドガラス保持部21により、スライドガラス10を保持する。また、スライドガラス搬送部20は、保持したスライドガラス10を処理部30に搬送する。
処理部30は、スライドガラス10に対して処理を行う。具体的には、処理部30は、スライドガラス搬送部20のスライドガラス保持部21により保持された状態のスライドガラス10に対して検体の塗抹のための処理を行う。処理部30は、たとえば、スライドガラス10に検体を塗抹する処理、スライドガラス10に情報を印刷する処理、スライドガラス10に付着した付着物を除去する処理のうち少なくとも1つの処理を行う。
以上の構成により、検体塗抹装置100では、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12から供給されるスライドガラス10を受け取ることと、処理部30にスライドガラス10を搬送することとを、共通のスライドガラス搬送部20により行うことができるので、スライドガラス搬送部の数が多くなるのを抑制できる。その結果、検体塗抹装置100の装置構成を簡素化できる。また、スライドガラス搬送部の数を減らすことができる分、検体塗抹装置100を小型化できる。また、スライドガラス10を受け渡す回数を減らすことができるので、スライドガラス10を受け渡す機構を減らすことができる。また、第1スライドガラス供給部11からスライドガラス搬送部20にスライドガラス10を受け渡す第1スライドガラス供給位置111と、第2スライドガラス供給部12からスライドガラス搬送部20にスライドガラス10を受け渡す第2スライドガラス供給位置121とを異なる位置に配置することにより、第1スライドガラス供給部11と第2スライドガラス供給部12との間にスライドガラス搬送部20を配置するためのスペースを設ける必要がない。また、スライドガラス10がスライドガラス搬送部20により保持された状態で、処理部30により処理を行うことができるので、処理部30による処理の際にスライドガラス10を移動させる移動機構を別途設ける必要がない。また、スライドガラス10を2次元的に搬送する場合に、複数の搬送部を設ける場合、移動方向を変える毎に搬送部を設ける必要があるのに対して、共通のスライドガラス搬送部20によりスライドガラス10を2次元的に搬送することができる。これらの結果、装置構成を簡素化し、検体塗抹装置100を小型化できる。
[塗抹標本作製装置の構成例]
以下、図2以降を参照して、図1に示した検体塗抹装置100を塗抹標本作製装置200の検体塗抹部に適用した構成例について説明する。塗抹標本作製装置200は、スライドガラス10に対して検体を塗抹する塗抹処理を行い、検体が塗抹されたスライドガラス10に対して、検体の染色処理を施すための装置である。検体は、たとえば血液である。
(全体構成)
図2を参照して、塗抹標本作製装置200の全体構成について説明する。
図1に示した第1スライドガラス供給部11と、第2スライドガラス供給部12と、スライドガラス搬送部20と、処理部30とを備える検体塗抹装置100は、図2の構成例では、塗抹標本作製装置200の塗抹部210に設けられている。図2の構成例では、塗抹部210は、第1スライドガラス供給部11と、第2スライドガラス供給部12と、スライドガラス搬送部20と、処理部30と、乾燥部40と、収容部50とを備える。処理部30は、付着物除去部31と、印刷部32と、検体塗抹部33とを含む。また、図2の構成例では、塗抹標本作製装置200は、さらに、染色部60と、乾燥部70と、保管部80とを備える。なお、以下では、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12のスライドガラス10の短辺方向をX方向とし、長辺方向をY方向とする。また、上下方向をZ方向とする。言い換えると、スライドガラス10は、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12に、塗抹面が水平になるように平置きで収納される。また、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12は、塗抹標本作製装置200のX方向とスライドガラス10の短辺方向とを一致させ、塗抹標本作製装置200のY方向とスライドガラス10の長辺方向を一致させて、スライドガラス10を保持する。
第1スライドガラス供給部11は、検体の塗抹前の未使用状態のスライドガラス10を多数収納している。具体的には、第1スライドガラス供給部11は、処理前のスライドガラス10を複数積層した状態で保持するための第1ケース部11aを含んでいる。つまり、第1スライドガラス供給部11は、複数のスライドガラス10を上下に積み重ねて保持することができる。第1スライドガラス供給部11は、塗抹前のスライドガラス10を、第1スライドガラス供給位置111において1枚ずつスライドガラス搬送部20に供給できる。スライドガラス10は、長方形形状を有している。
第2スライドガラス供給部12は、検体の塗抹前の未使用状態のスライドガラス10を多数収納している。具体的には、第2スライドガラス供給部12は、処理前のスライドガラス10を複数積層した状態で保持するための第2ケース部12aを含んでいる。つまり、第2スライドガラス供給部12は、複数のスライドガラス10を上下に積み重ねて保持することができる。第2スライドガラス供給部12は、塗抹前のスライドガラス10を、第2スライドガラス供給位置121において1枚ずつスライドガラス搬送部20に供給できる。なお、スライドガラス供給部は、3つ以上設けられていてもよい。
第1スライドガラス供給部11に収納されるスライドガラス10と、第2スライドガラス供給部12に収納されるスライドガラス10とは、同じ種類のスライドガラスであってもよい。この場合、同じ種類のスライドガラス10を多数使用する場合に、2つのスライドガラス供給部(第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12)から、スライドガラス10が供給されるので、スライドガラス10の補充作業の負担を軽減することが可能である。また、第1スライドガラス供給部11に収納されるスライドガラス10と、第2スライドガラス供給部12に収納されるスライドガラス10とは、互いに異なる種類のスライドガラスであってもよい。この場合、互いに異なる種類のスライドガラス10を使い分けて、塗抹標本を作製することが可能である。異なる種類のスライドガラスとは、たとえば、印刷領域が異なる色(たとえば、白色、黄色、青色など)に着色されたスライドガラスである。
第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12は、収容されるスライドガラス10の短辺方向に並んで配置されている。つまり、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12は、X方向に並んで配置されている。第1スライドガラス供給部11は、第2スライドガラス供給部12に対してX2方向側に配置されている。これにより、第1スライドガラス供給部11と第2スライドガラス供給部12とをスライドガラス10の長辺方向に並べて配置する場合と比べて、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12を配置する領域の形状が細長形状になるのを抑制することができる。その結果、塗抹標本作製装置200のY方向(奥行方向)の長さが大きくなるのを抑制することができる。
第1スライドガラス供給位置111は、第1スライドガラス供給部11に対して、スライドガラス10の長辺方向の一方側に配置されている。図2に示す構成例では、第1スライドガラス供給位置111は、第1スライドガラス供給部11に対して、塗抹標本作製装置200の背面方向側であるY2方向側に配置されている。つまり、第1スライドガラス供給部11は、塗抹標本作製装置200の前面側(Y1方向側)に配置される。また、スライドガラス10は、塗抹標本作製装置200の前面側から奥側に向かって供給される。これにより、第1スライドガラス供給部11が塗抹標本作製装置200の前面に配置されるので、第1スライドガラス供給部11に対する作業を容易に行うことができる。第1スライドガラス供給部11に対する作業は、たとえば、スライドガラス10の補充作業や、交換作業などを含む。
第2スライドガラス供給位置121は、第2スライドガラス供給部12に対して、スライドガラス10の長辺方向の一方側に配置されている。図2に示す構成例では、第2スライドガラス供給位置121は、第2スライドガラス供給部12に対して、塗抹標本作製装置200の背面方向側であるY2方向側に配置されている。つまり、第2スライドガラス供給部12は、塗抹標本作製装置200の前面側(Y1方向側)に配置される。また、スライドガラス10は、塗抹標本作製装置200の前面側から奥側に向かって供給される。これにより、第2スライドガラス供給部12が塗抹標本作製装置200の前面に配置されるので、第2スライドガラス供給部12に対する作業を容易に行うことができる。第2スライドガラス供給部12に対する作業は、たとえば、スライドガラス10の補充作業や、交換作業などを含む。
スライドガラス搬送部20は、スライドガラス10を上面に保持して搬送できる。具体的には、スライドガラス搬送部20は、保持したスライドガラス10を付着物除去部31、印刷部32および検体塗抹部33に搬送できる。また、スライドガラス搬送部20により保持されたスライドガラス10は、付着物除去部31、印刷部32および検体塗抹部33の各々において、スライドガラス10がスライドガラス搬送部20により保持された状態で、検体の塗抹のための処理が行われる。
スライドガラス搬送部20は、第1スライドガラス供給部11から第1スライドガラス供給位置111において、スライドガラス10を受け取ることが可能である。また、スライドガラス搬送部20は、第2スライドガラス供給部12から第2スライドガラス供給位置121において、スライドガラス10を受け取ることが可能である。また、スライドガラス搬送部20は、水平方向(XY方向)に移動可能である。また、スライドガラス搬送部20は、保持したスライドガラス10を上下方向(Z方向)に移動させることが可能である。
スライドガラス搬送部20は、受け取ったスライドガラス10を付着物除去部31、印刷部32および検体塗抹部33の順に搬送する。また、スライドガラス10は、検体塗抹部33において、スライドガラス搬送部20から乾燥部40に受け渡される。つまり、スライドガラス搬送部20は、保持したスライドガラス10を付着物除去部31に搬送する。また、スライドガラス搬送部20は、付着物除去部31により付着物が除去された後、保持したスライドガラス10を印刷部32に搬送する。また、スライドガラス搬送部20は、印刷部32により印刷が行われた後、保持したスライドガラス10を検体塗抹部33に搬送する。また、スライドガラス搬送部20は、検体塗抹部33により検体の塗抹が行われた後、スライドガラス10を乾燥部40に受け渡す。
付着物除去部31は、スライドガラス10の表面に付着した付着物を除去するために設けられている。また、付着物除去部31は、スライドガラス搬送部20の上面に保持された状態のスライドガラス10に対して付着物の除去処理を行う。たとえば、付着物除去部31は、図示しない圧力源に接続され、エアを吐出することによりスライドガラス10の塗抹領域および印刷領域の付着物を吹き飛ばすことができる。付着物は、たとえば、ガラス粉末やほこりなどの小さい異物である。また、付着物除去部31では、スライドガラス10を保持したスライドガラス搬送部20が下降した状態(図10参照)で、付着物除去部31からエアが吐出されて、スライドガラス10の上面の付着物が除去される。付着物除去部31によりスライドガラス10の付着物を除去することにより、スライドガラス10の印刷領域に情報を鮮明に印刷することができる。また、検体をスライドガラス10に塗抹する際に、検体に異物が混入するのを抑制することができる。また、図2の構成例では、付着物除去部31は、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12に対してY2方向に配置されている。
印刷部32は、スライドガラス10の印刷領域に、検体情報などの各種情報を印刷できる。また、印刷部32は、スライドガラス搬送部20の上面に保持された状態のスライドガラス10に対して印刷を行う。また、印刷部32では、スライドガラス10を保持したスライドガラス搬送部20が上昇した状態(図11参照)で、印刷部32の印刷ヘッドによりスライドガラス10の上方から印刷処理が行われる。印刷部32は、たとえば、熱転写プリンタやインクジェットプリンタなどの公知の印刷ヘッドを備える。図2の構成例では、印刷部32は、付着物除去部31に対してY2方向に配置されている。
検体塗抹部33は、スライドガラス10に検体を塗抹できる。具体的には、検体塗抹部33は、スライドガラス搬送部20の上面に保持された状態のスライドガラス10に対して検体の塗抹を行う。検体塗抹部33による塗抹処理は、スライドガラス10の表面の塗抹領域に、検体を塗りつける処理である。塗抹処理は、引きガラスなどの塗抹部材を用いた塗抹方法(いわゆるウェッジ法)や、その他の塗抹方法が採用できる。検体塗抹部33は、採用される塗抹方法に応じた塗抹機構により、塗抹処理を行う。また、検体塗抹部33は、図示しない検体吸引機構により検体を吸引して、スライドガラス10の塗抹領域に検体を滴下して検体を塗抹できる。また、検体塗抹部33では、スライドガラス10が検体塗抹部33の上下位置決め部材に当接するまでスライドガラス搬送部20が上昇した状態(図12参照)で、検体の塗抹処理が行われる。また、図2の構成例では、検体塗抹部33は、印刷部32に対してX1方向に配置されている。
乾燥部40は、検体が塗抹されたスライドガラス10をスライドガラス搬送部20から受け取り、スライドガラス10の塗抹領域に送風する機能を有する。乾燥部40は、ファンを含む。乾燥部40は、ファンによる送風により、スライドガラス10に塗抹された検体を乾燥させることができる。乾燥部40は、乾燥したスライドガラス10を収容部50に受け渡す。また、図2の構成例では、乾燥部40は、検体塗抹部33のY1方向に配置されている。
収容部50は、塗抹された検体が乾燥されたスライドガラス10を乾燥部40から受け取り、スライドガラス10を収容する。また、収容部50は、収容したスライドガラス10を染色部60に受け渡す。また、収容部50は、受け取ったスライドガラス10を垂直方向(Z方向)に立てた状態にして、収容する。図2に示す構成例では、収容部50は、塗抹標本作製装置200の前面側(Y1方向側)に配置される。これにより、収容部50に対する作業を容易に行うことができる。収容部50に対する作業は、たとえば、検体が塗抹されたスライドガラス10の回収、確認、設置などの作業を含む。また、図2の構成例では、収容部50は、乾燥部40のY1方向に配置されている。
染色部60は、検体塗抹部33による塗抹処理済みのスライドガラス10の検体に対して染色処理を行う。染色部60では、乾燥部40により乾燥された塗抹済みのスライドガラス10に対して、染色槽および洗浄槽において染色処理および洗浄処理がそれぞれ実施される。また、図2の構成例では、染色部60は、収容部50のY2方向に配置されている。
乾燥部70は、染色部60による染色済みのスライドガラス10を乾燥させる機能を有する。乾燥部70は、乾燥したスライドガラス10を保管部80に受け渡す。また、図2の構成例では、乾燥部70は、染色部60のY2方向に配置されている。
保管部80は、染色済みのスライドガラス10を保管する機能を有する。
このような構成によって、塗抹標本作製装置200は、スライドガラス10への印刷、検体の塗抹、染色の各処理を実施して塗抹標本を自動的に作製できる。
(スライドガラス搬送部の構成)
次に、図3〜図14を参照して、スライドガラス搬送部20の構成例を説明する。
図3および図4に示す構成例では、スライドガラス搬送部20は、スライドガラス保持部21を含む。スライドガラス保持部21は、把持部22と、載置部211と、当接部212と、移動規制部213と、切欠部214とを含む。把持部22は、押圧部材221と、開閉部222と、回動軸223と、バネ部材224とを含む。
スライドガラス保持部21は、スライドガラス10を保持することができる。具体的には、スライドガラス保持部21は、載置部211によりスライドガラス10を下側(Z2方向側)から支持する。また、スライドガラス保持部21は、当接部212および把持部22により、スライドガラス10を長手方向(Y方向)に挟み込んで保持する。これにより、スライドガラス保持部21に対して、スライドガラス10が移動しないように保持することができる。
載置部211は、水平方向(XY方向)に延びる板状に形成されている。載置部211の上面(Z1方向側の面)からは、当接部212および移動規制部213が上方に突出するように形成されている。当接部212は、スライドガラス保持部21のY2方向側に配置されている。つまり、当接部212は、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12からスライドガラス保持部21がスライドガラス10を受け取る際のスライドガラス10の進行方向側(Y2方向側)に配置されている。図3および図4に示す構成例では、当接部212は、スライドガラス保持部21のY2方向側の端部近傍に配置されている。これにより、スライドガラス10が当接部212に当接することにより、スライドガラス10のY2方向の移動が規制される。
移動規制部213は、スライドガラス保持部21のX方向の両側に一対設けられている。これにより、スライドガラス10のX方向の移動が規制される。つまり、移動規制部213は、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12からスライドガラス保持部21がスライドガラス10を受け取る方向と直交するX方向に一対設けられている。言い換えると、移動規制部213は、スライドガラス保持部21の保持するスライドガラス10の短辺方向に向かって対向するように一対設けられている。また、一対の移動規制部213は、スライドガラス10の短辺の長さよりも大きい間隔を隔てて、対向して配置されている。図3および図4に示す構成例では、移動規制部213は、スライドガラス保持部21のX1方向側の端部近傍とX2方向側の端部近傍とに配置されている。これにより、スライドガラス保持部21からスライドガラス10がX方向にはみ出すのを防止することができる。
切欠部214は、スライドガラス保持部21のX2方向側に設けられている。また、切欠部214は、スライドガラス保持部21のY方向における中央のY2方向寄りに形成されている。また、切欠部214は、X1方向に所定長さだけ延びるように形成されている。
把持部22は、スライドガラス保持部21のY1方向側に配置されている。つまり、把持部22は、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12からスライドガラス保持部21がスライドガラス10を受け取る際のスライドガラス10の進行方向とは反対方向側(Y1方向側)に配置されている。また、把持部22は、スライドガラス10を当接部212側に付勢して把持することができる。つまり、把持部22は、スライドガラス10をY2方向に付勢することができる。
具体的には、把持部22の押圧部材221がスライドガラス10のY1方向側に当接して、スライドガラス10をY2方向側に押圧することができる。また、把持部22は、回動軸223を中心に回動することができる。また、把持部22は、バネ部材224により、押圧部材221をY2方向側に引っ張っている。これにより、把持部22がスライドガラス10をY2方向に付勢することができる。また、把持部22は、開閉部222をY2方向側に押すことにより、バネ部材224の引張力に抗して回動軸223を中心に回動できる。
押圧部材221は、回動軸223に対して上側(Z1方向側)に配置されている。開閉部222は、回動軸223に対して下側(Z2方向側)に配置されている。回動軸223は、スライドガラス保持部21が保持するスライドガラス10の短辺方向と平行な方向(X方向)に延びている。
(スライドガラス搬送部の移動機構の構成)
図5および図6に示す構成例では、スライドガラス搬送部20は、第1移動機構23と、第2移動機構24と、第3移動機構25とを含む。第1移動機構23は、保持したスライドガラス10を第1方向であるX方向に移動させることができる。第2移動機構24は、保持したスライドガラス10を第2方向であるY方向に移動させることができる。第3移動機構25は、保持したスライドガラス10を上下方向であるZ方向に移動させることができる。これにより、スライドガラス搬送部20によりスライドガラス10を水平面内および上下方向に移動させることができるので、スライドガラス搬送部20によりスライドガラス10を容易に処理を行う処理部30に搬送することができる。
第1移動機構23は、ベース部231と、モータ232と、ベルト233とを含む。第2移動機構24は、モータ241と、一対のレール242と、ベルト243とを含む。第3移動機構25は、エアシリンダ251と、4つのバネ部材252と、移動規制部材253とを含む。
第1移動機構23のモータ232は、ベース部231上に配置されている。また、スライドガラス保持部21は、ベース部231の上方に配置され、図示しないX方向のレールに沿ってX方向に移動することができる。具体的には、モータ232の駆動によりベルト233が回転されて、スライドガラス保持部21がX方向に移動される。ベース部231は、第2移動機構24のレール242上をY方向に移動できる。
第2移動機構24は、ベース部231をY方向に移動させることにより、スライドガラス保持部21をY方向に移動させることができる。具体的には、モータ241の駆動によりベルト243が回転されて、スライドガラス保持部21がY方向に移動される。
第3移動機構25は、空気圧により駆動して、スライドガラス保持部21をZ方向に移動させることができる。エアシリンダ251は、上下方向(Z方向)に伸縮することができる。エアシリンダ251は、伸びることにより、スライドガラス保持部21を上方向(Z1方向)に移動させる。また、エアシリンダ251は、縮むことにより、スライドガラス保持部21を下方向(Z2方向)に移動させる。これにより、検体を吸引するための空気圧や、付着物を除去するための空気圧を利用して、スライドガラス保持部21を上下方向に移動させることができるので、スライドガラス保持部21を上下方向に移動させるためのモータを別途設ける必要がない。
バネ部材252は、スライドガラス保持部21の保持するスライドガラス10の長手方向(Y方向)に所定の間隔を隔てて2つ配置され、短手方向(X方向)に所定の間隔を隔てて2つ配置されている。つまり、4つのバネ部材252は、ひし形の頂点にそれぞれ配置されている。バネ部材252は、スライドガラス保持部21により保持されたスライドガラス10の姿勢を調整させる機能を有する。移動規制部材253は、エアシリンダ251により移動されるスライドガラス保持部21の上下方向の移動を規制することができる。
(スライドガラス搬送部の把持部の構成)
図7および図8を参照して、スライドガラス搬送部20の把持部22の構成について説明する。把持部22は、スライドガラス保持部21がスライドガラス10を受け渡す開放位置(図7参照)と、スライドガラス保持部21がスライドガラス10を把持する把持位置(図8参照)とに移動できる。具体的には、把持部22は、押圧部材221が回動されて、押圧部材221が載置部211よりも下方に退避する開放位置と、押圧部材221が回動されて、押圧部材221が載置部211よりも上方に突出する把持位置とに移動できる。これにより、スライドガラス保持部21からスライドガラス10を水平方向に移動させて受け渡すことができるので、スライドガラス10を上下方向に持ち上げるなどして移動させる場合と比べて、装置構成を簡素化することができる。なお、図7および図8に示す例では、第1スライドガラス供給部11からスライドガラス搬送部20がスライドガラス10を受け取る例を示している。なお、第2スライドガラス供給部12からスライドガラス搬送部20がスライドガラス10を受け取る場合も同様の構成である。
第1スライドガラス供給部11の下方には、スライドガラス10を搬出するための第1搬出部13aが設けられている。また、第2スライドガラス供給部12の下方には、スライドガラス10を搬出するための第2搬出部13bが設けられている。また、スライドガラス10の受け渡し位置には当て部材131が設けられている。スライドガラス搬送部20は、スライドガラス10の受け渡し位置に配置された当て部材131に把持部22を当接させるように移動することにより、把持部22を開放位置に移動させる。具体的には、スライドガラス保持部21は、第1スライドガラス供給部11のY2方向側の下方に配置された当て部材131に、把持部22の開閉部222を当接させて、開閉部222をY2方向側に押圧させる。つまり、スライドガラス保持部21がY1方向側に移動することにより、開閉部222を当て部材131に押し当てる。これにより、把持部22の押圧部材221が回動軸223を中心に回動されて、押圧部材221が下方に移動する。その結果、スライドガラス保持部21のY1方向側がスライドガラス10の水平移動が可能なように開放される。このように、スライドガラス保持部21をY1方向に移動させることにより、把持部22を開放位置に移動させることができるので、把持部22を開閉させるための専用の駆動部を別途設ける必要がない。その結果、装置構成を簡素化することができる。
把持部22が開放位置に位置した状態で、第1搬出部13aにより、スライドガラス10がY2方向に押し出されて、第1スライドガラス供給部11からスライドガラス搬送部20にスライドガラス10が供給される。つまり、第1搬出部13aは、第1スライドガラス供給部11から、第1スライドガラス供給位置111に位置するスライドガラス搬送部20にスライドガラスを搬出する。第1搬出部13aは、Y方向に移動することができる。また、第1搬出部13aは、第1スライドガラス供給部11の一番下のスライドガラス10をスライドガラス搬送部20に搬出する。なお、第2スライドガラス供給部12からスライドガラス搬送部20にスライドガラス10を搬出する場合、第2搬出部13bが、第2スライドガラス供給部12から、第2スライドガラス供給位置121に位置するスライドガラス搬送部20にスライドガラスを搬出する。第2搬出部13bは、Y方向に移動することができる。また、第2搬出部13bは、第2スライドガラス供給部12の一番下のスライドガラス10をスライドガラス搬送部20に搬出する。これにより、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12から、スライドガラス搬送部20にスライドガラス10を1枚ずつ供給することができる。
スライドガラス搬送部20は、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12からスライドガラス10を受け取った後、Y2方向に移動することにより、把持部22が把持位置に移動されて、スライドガラス10を把持する。具体的には、第1スライドガラス供給部11のY2方向側の下方に配置された当て部材131がら把持部22の開閉部222を離間させる。これにより、バネ部材224により、把持部22の押圧部材221が回動軸223を中心に回動されて、押圧部材221が上方に移動する。また、押圧部材221が、スライドガラス10をY2方向側に押圧する。その結果、スライドガラス保持部21にスライドガラス10が保持される。
(スライドガラス搬送部のX方向の位置決めの構成)
図9を参照して、スライドガラス搬送部20のX方向の位置決めの構成について説明する。スライドガラス搬送部20に保持されたスライドガラス10を押圧部26によりX1方向に押圧して、スライドガラス10をX1方向側の移動規制部213に当接させる。これにより、スライドガラス搬送部20に対するX方向におけるスライドガラス10の位置決めが行われる。つまり、押圧部26は、スライドガラス搬送部20に保持されたスライドガラス10を一対の移動規制部213の一方側から押圧して、一対の移動規制部213の他方側に当接させることができる。押圧部26は、たとえば、プランジャーを含む。また、押圧部26は、スライドガラス搬送部20に保持されたスライドガラス10を、スライドガラス保持部21に設けられた切欠部214において押圧する。これにより、押圧部26が、X2方向側の移動規制部213に接触することなく、スライドガラス10をX方向に押圧することができる。押圧部26は、たとえば、印刷部32による印刷処理位置に配置されている。
(スライドガラス搬送部の上下方向の移動の構成)
図10〜図12を参照して、スライドガラス搬送部20の上下方向の移動の構成について説明する。スライドガラス搬送部20のスライドガラス保持部21は、第3移動機構25により、上下方向に移動される。スライドガラス保持部21の下方には、板状部材27が設けられている。板状部材27には、第3移動機構25のエアシリンダ251を通すための孔が形成されている。板状部材27は、スライドガラス保持部21と、移動規制部材253との間に配置されている。
図10に示すように、エアシリンダ251を下降させた場合、スライドガラス搬送部20のスライドガラス保持部21が下方に下げられた状態となる。この下降状態において、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12から、スライドガラス搬送部20に対してスライドガラス10が供給される。また、下降状態において、スライドガラス保持部21に保持されたスライドガラス10に対して、付着物除去部31による付着物除去処理が行われる。また、下降状態において、スライドガラス保持部21が水平方向(XY方向)に移動される。
図11に示すように、エアシリンダ251を上昇させた場合、移動規制部材253が板状部材27に当接することにより、スライドガラス保持部21の上昇位置が位置決めされる。これにより、スライドガラス10の上方に位置決めのための部材を配置しなくても、スライドガラス保持部21の上昇位置を位置決めすることが可能である。この移動規制部材253により位置決めされた上昇状態において、スライドガラス保持部21に保持されたスライドガラス10に対して、印刷部32により印刷処理が行われる。
図12に示すように、エアシリンダ251を上昇させた場合、スライドガラス保持部21の上方に配置された位置決め部材331に、スライドガラス保持部21に保持されたスライドガラス10が当接することにより、スライドガラス保持部21の上昇位置が位置決めされる。これにより、スライドガラス10の厚み(Z方向の長さ)にバラツキがある場合でも、スライドガラス10の上面を一定の高さに位置決めすることが可能である。この位置決め部材331により位置決めされた上昇状態において、スライドガラス保持部21に保持されたスライドガラス10に対して、検体塗抹部33により検体塗抹処理が行われる。
(スライドガラス搬送部と乾燥部と収容部とのスライドガラスの受け渡しの構成)
図13および図14を参照して、スライドガラス搬送部20と乾燥部40と収容部50とのスライドガラス10の受け渡しの構成について説明する。検体塗抹部33が配置されている位置に、検体が塗抹されたスライドガラス10をスライドガラス搬送部20から乾燥部40に搬出するための第3搬出部28が設けられている。これにより、スライドガラス搬送部20により搬送されたスライドガラス10を乾燥部40に容易に受け渡すことができる。第3搬出部28は、スライドガラス搬送部20から乾燥部40にスライドガラス10を押し出して受け渡すことができる。また、第3搬出部28は、乾燥部40から収容部50にスライドガラス10を押し出して受け渡すことができる。
具体的には、第3搬出部28は、Y方向に移動することができる。また、第3搬出部28は、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12からスライドガラス搬送部20がスライドガラス10を受け取る際のスライドガラス10の進行方向とは反対方向(Y1方向)にスライドガラス10を搬出する。そして、スライドガラス10がスライドガラス搬送部20から乾燥部40に受け渡される。これにより、乾燥部40と、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12とを、検体塗抹部33に対して同じ側(Y1方向側)に配置することができるので、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12と、検体塗抹部33と、乾燥部40とを、Y2方向に向かって順に並べる場合と異なり、塗抹標本作製装置200のY方向の大きさが大きくなるのを抑制することができる。
また、第3搬出部28は、第1押出部281と、第2押出部282と、第3押出部283と、当て部材284とを含む。第1押出部281は、検体塗抹部33に位置するスライドガラス搬送部20から乾燥部40にスライドガラス10を搬出することができる。具体的には、第1押出部281は、Y1方向に移動することにより、スライドガラス搬送部20のスライドガラス10を乾燥部40に向かって押すことができる。また、第1押出部281は、Y2方向に移動することにより、次のスライドガラス10を搬送する位置に戻る。第2押出部282は、乾燥部40のスライドガラス10を収容部50に搬出することができる。具体的には、第2押出部282は、上昇した状態で、Y1方向に移動することにより、乾燥部40のスライドガラス10を収容部50に向かって押すことができる。また、第2押出部282は、下降した状態で、Y2方向に移動することにより、次のスライドガラス10を搬送する位置に戻る。
第3押出部283は、収容部50をY1方向に押し出して、収容部50を回動させることができる。具体的には、収容部50は、回動軸51を中心に回動することができる。また、乾燥部40から収容部50にスライドガラス10を搬出する場合、収容部50は、水平方向に延びる姿勢となるように回動される。つまり、収容部50は、第3押出部283に押されることにより、水平方向に延びる姿勢になる。そして、収容部50は、水平姿勢でスライドガラス10を受け取ると、垂直方向に延びる姿勢となるように回動される。つまり、収容部50は、第3押出部283がY2方向に退避することにより、重力により垂直方向に延びる姿勢になる。これにより、水平方向の姿勢のスライドガラス10を垂直方向の姿勢に立たせることができる。
第1押出部281と、第2押出部282と、第3押出部283とは、連動してY方向に移動される。つまり、1つの駆動部により、第1押出部281と、第2押出部282と、第3押出部283とが移動される。つまり、検体塗抹部33に位置するスライドガラス搬送部20から乾燥部40にスライドガラス10を搬出する動作と、乾燥部40から収容部50にスライドガラス10を搬出する動作とを容易に同時に行うことができる。
当て部材284は、スライドガラス搬送部20の把持部22が当接されることにより、把持部22を開放位置に移動させることができる。
(塗抹標本作製装置の塗抹標本作製動作)
図15を参照して、塗抹標本作製装置200の塗抹標本作製動作について説明する。
まず、図15のステップS1において、検体の吸引処理が行われる。つまり、設定された検体容器から塗抹処理のための検体が吸引される。ステップS1の処理と並行して、ステップS2において、スライドガラス10が付着物除去部31に搬送される。具体的には、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12からスライドガラス搬送部20にスライドガラス10が供給される。そして、スライドガラス搬送部20により保持されたスライドガラス10が付着物除去部31に搬送される。ステップS3において、付着物除去部31により、スライドガラス搬送部20により保持されたスライドガラス10の付着物除去処理が行われる。
ステップS4において、スライドガラス10が印刷部32に搬送される。具体的には、スライドガラス搬送部20により保持されたスライドガラス10が印刷部32に搬送される。ステップS5において、印刷部32により、スライドガラス搬送部20により保持されたスライドガラス10に対して検体情報の印刷が行われる。
ステップS6において、スライドガラス10が検体塗抹部33に搬送される。具体的には、スライドガラス搬送部20により保持されたスライドガラス10が検体塗抹部33に搬送される。ステップS7において、検体塗抹部33により、スライドガラス搬送部20により保持されたスライドガラス10に対して検体塗抹処理が行われる。
ステップS8において、スライドガラス10が乾燥部40に搬送される。具体的には、第3搬出部28により、スライドガラス搬送部20からスライドガラス10が乾燥部40に受け渡される。ステップS9において、乾燥部40により、スライドガラス10に塗抹された検体に対して乾燥処理が行われる。
ステップS10において、スライドガラス10が収容部50に搬送される。具体的には、第3搬出部28により、乾燥部40からスライドガラス10が収容部50に受け渡される。ステップS11において、スライドガラス10が染色部60に搬送される。具体的には、収容部50からスライドガラス10が染色部60に受け渡される。ステップS12において、染色部60により、スライドガラス10に塗抹された検体に対して染色処理が行われる。
ステップS13において、スライドガラス10が乾燥部70に搬送される。具体的には、染色部60からスライドガラス10が乾燥部70に受け渡される。ステップS14において、乾燥部70により、スライドガラス10に塗抹され染色された検体に対して乾燥処理が行われる。これにより、スライドガラス10に塗抹標本が作製される。
ステップS15において、スライドガラス10が保管部80に搬送される。具体的には、乾燥部70からスライドガラス10が保管部80に受け渡される。そして、塗抹標本が作製されたスライドガラス10が保管部80に保管される。その後、塗抹標本作製処理が終了される。
[搬出部の概要]
図16〜図19を参照して、本実施形態による検体塗抹装置の搬出部の概要について説明する。
搬出部13は、スライドガラス供給部からスライドガラス搬送部にスライドガラス10を搬出することができる。
図16に示すように、搬出部13は、押出部材130を含む。押出部材130は、押出当接部132aと、傾斜部132bとを含む。スライドガラス供給部は、スライドガラス10を支持する支持部を有し、支持部上に複数のスライドガラス10を上方に積層して保持する。押出部材130は、スライドガラス供給部の支持部により支持されたスライドガラス10の下端に対して上方(Z1方向)に突出している。言い換えると、押出部材130は、積層されたスライドガラス10のうち最下のスライドガラス10の下面(Z2方向の面)に対して上方に突出している。また、押出部材130は、 所定方向(Y2方向)にスライドガラス10を押し出すことができる。押出当接部132aは、押出部材130の所定方向側(Y2方向側)に配置されている。また、押出当接部132aは、スライドガラス10を搬出する際に、スライドガラス10に当接する。傾斜部132bは、押出部材130の所定方向と反対方向側(Y1方向側)の上端に配置されている。また、傾斜部132bは、所定方向と反対方向側(Y1方向側)に向かって下方に傾斜している。
詳しくは、図17に示すように、搬出部13は、第1搬出部13aおよび第2搬出部13bを含む。第1搬出部13aは、第1スライドガラス供給部11から、第1スライドガラス供給位置111に位置するスライドガラス搬送部20にスライドガラス10を搬出できる。第2搬出部13bは、第2スライドガラス供給部12から、第2スライドガラス供給位置121に位置するスライドガラス搬送部20にスライドガラス10を搬出できる。つまり、搬出部13は、スライドガラス供給部からスライドガラス10を搬出する。なお、第1搬出部13aおよび第2搬出部13bは同様の構成である。搬出部13は、押出部材130と、駆動部130aとを含む。押出部材130は、爪部132を含む。爪部132は、押出当接部132aと、傾斜部132bとを含む。
押出部材130は、第1スライドガラス供給部11の支持部11bまたは第2スライドガラス供給部12の支持部12bにより支持されたスライドガラス10の下端に対して上方(Z1方向)に突出している。つまり、押出部材130は、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12に積層されたスライドガラス10のうち最下のスライドガラス10の下面に対して上方(Z1方向)に突出している。なお、支持部11bは、第1スライドガラス供給部11に設けられ、スライドガラス10を下方から支持する。また、支持部12bは、第2スライドガラス供給部12に設けられ、スライドガラス10を下方から支持する。押出部材130は、第3方向(Y2方向(所定方向))にスライドガラス10を押し出すことができる。第1スライドガラス供給部11の支持部11bおよび第2スライドガラス供給部12の支持部12bは、Y方向に延びるように形成されている。支持部11bおよび12bは、スライドガラス10を下方から支持することが可能であれば、平板状に形成されていてもよいし、レール状に形成されていてもよい。第1スライドガラス供給部11は、第1ケース部11aを用いてスライドガラス10を保持している。なお、第1スライドガラス供給部11は、第1ケース部11aを有していなくてもよい。第2スライドガラス供給部12は、第2ケース部12aを用いてスライドガラス10を保持している。なお、第2スライドガラス供給部12は、第2ケース部12aを有していなくてもよい。
駆動部130aは、押出部材130を第3方向と平行な方向(Y方向)に往復移動させることができる。たとえば、駆動部130aは、モータと、ベルトと、プーリとを含み、ベルトプーリ機構により押出部材130を第3方向と平行な方向に移動させてもよい。また、駆動部130aは、リニアモータ機構により押出部材130を第3方向と平行な方向に移動させてもよい。
爪部132は、1つの押出部材130に一対設けられている。一対の爪部132は、水平方向において第3方向と直交する方向(X方向)に沿って平行に配列されている。なお、一対の爪部132は、互いに同様の構成である。また、爪部132は、1つの押出部材130に1つ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。爪部132は、第3方向の端部(Y2方向側の端部)に押出当接部132aが設けられている。また、爪部132は、第3方向と反対方向側(Y1方向側)に傾斜部132bが設けられている。爪部132は、支持部11bまたは12bにより支持されたスライドガラス10の下端に対して所定の距離L1(図19参照)だけ上方(Z1方向)に突出している。たとえば、爪部132の押出当接部132aは、支持部11bまたは12bにより支持されたスライドガラス10の下端に対して、スライドガラス10の厚みよりも小さい距離だけ上方に突出している。好ましくは、爪部132の押出当接部132aは、支持部11bまた12bにより支持されたスライドガラス10の下端に対して、スライドガラス10の厚みの1/3以上の距離だけ上方に突出している。さらに好ましくは、爪部132の押出当接部132aは、支持部11bまた12bにより支持されたスライドガラス10の下端に対して、スライドガラス10の厚みの1/2以上の距離だけ上方に突出している。
爪部132の傾斜部132bは、第3方向と反対方向側(Y1方向)に向かって下方(Z2方向)に傾斜している。つまり、傾斜部132bは、スライドガラス10が搬出される方向とは反対方向(Y1方向)に向かって下方に傾斜している。傾斜部132bは、爪部132の上端から、少なくとも積層されたスライドガラス10のうち最下のスライドガラス10の下面までの間において傾斜している。好ましくは、傾斜部132bは、爪部132の上端から、積層されたスライドガラス10のうち最下のスライドガラス10の下面よりも下方の位置までの間において傾斜している。つまり、押出部材130をY1方向に移動させた場合に、スライドガラス10が傾斜部132bに乗り上げて、押出部材130の支持部11bまたは12bにより支持されたスライドガラス10の下端からの突出分だけ、スライドガラス10が上方に移動される。
以上の構成により、搬出部13の押出部材130を第3方向(Y2方向)に移動させることにより、押出当接部132aがスライドガラス10の端面に当接して、スライドガラス10を搬出することができる。また、搬出部13の押出部材130を第3方向と反対方向(Y1方向)に移動させることにより、傾斜部132bにスライドガラス10を乗り上げさせることができるので、押出部材130を戻す際に、押出部材130を下方に退避させる必要がない。これにより、押出部材130を上下方向に移動させる機構を設ける必要がないので、装置構成を簡素化できるとともに、検体塗抹装置100を小型化できる。
図17に示すように、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12には、スライドガラス10が第3方向と平行な方向(Y方向)に長手方向を有するように配置可能に構成されている。また、押出部材130は、第3方向と平行な方向(Y方向)において往復移動することにより、順次スライドガラス10を搬出することができる。つまり、図17に示す例においては、押出部材130を上下方向に移動させる機構は設けられていないので、装置構成を簡素化することができる。
また、検体塗抹装置100には、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12にスライドガラス10が保持されているか否かを検知するスライドガラス検知部14が設けられている。これにより、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12にスライドガラス10が収納されているか否かを容易に判断することができるので、スライドガラス10が収納されていない場合に、スライドガラス10の補充を促したり、検体塗抹処理を一時中断させることができる。
スライドガラス検知部14は、センサ141と、検知レバー142とを含む。センサ141は、たとえば、光の透過/遮蔽を検知する光センサを含む。検知レバー142は、回動軸142aと、スライドガラス当接部142bと、遮蔽部142cとを含む。また、検知レバー142は、スライドガラス10の有無により、回動されて、センサ141の光の検知状態を変化させる。センサ141は、第1ケース部11aまたは第2ケース部12aに対してY1方向に配置されている。これにより、センサ141がスライドガラス10の下方に配置されないので、スライドガラス10に付着したガラス粉などがセンサ141に落下して付着するのを抑制することができる。その結果、センサ141による誤検知を抑制することができる。
搬出部13は、スライドガラス検知部14の検知結果に基づいて、スライドガラス10が第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12に保持されている場合に、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12のスライドガラス10を1枚ずつ搬出する。これにより、スライドガラス10が第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12に保持されていない場合に、搬出部13が駆動されるのを抑制することができる。また、スライドガラス検知部14の検知結果に基づいて、スライドガラス10が第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12に保持されている場合に、スライドガラス10の搬出と並行して、検体吸引機構により検体が吸引される。つまり、スライドガラス10が第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12に収納されていない場合には、検体は吸引されない。
また、検体塗抹装置100には、スライドガラス検知部14の検知結果に基づいて、状態を表示する表示部15が設けられている。表示部15は、たとえば、光により状態を表示する。表示部15は、LED素子を含んでいてもよい。表示部15は、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12にスライドガラス10が収納されている状態と、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12にスライドガラス10が収納されていない状態と、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12にスライドガラス10が収納されており順次スライドガラス10が搬出される状態とを識別可能に表示する。たとえば、表示部15は、状態に応じて光の色や、点灯、点滅などの状態を変化させて表示する。
図18に示すように、第1スライドガラス供給部11の支持部11bおよび第2スライドガラス供給部12の支持部12bには、それぞれ、押出部材130の一対の爪部132を通過させる細長形状の開口部11cおよび12cが設けられている。開口部11cおよび12cは、一対の爪部132の本数に合わせて、それぞれ、一対設けられている。つまり、爪部132は、開口部11cおよび12cを介して、積層されたスライドガラス10のうち最下のスライドガラス10の下面から上方に突出している。また、一対の開口部11cおよび12cの間には、それぞれ、支持部11bおよび12bが配置されている。これにより、開口部11cおよび12cのX方向の幅が大きくなるのを抑制することができるので、スライドガラス10が開口部11cまたは12cから入り込んで落下するのを抑制することができる。
また、検体塗抹装置100には、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12の第3方向側(Y2方向側)に配置され、搬出されるスライドガラス10の上方(Z1方向)を覆う案内部材16が設けられている。案内部材16は、水平部161と、傾斜部162とを含む。ここで、スライドガラス搬送部20は、スライドガラス10を受け取りやすいように、支持部11bまたは12bよりも低い位置において、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12からスライドガラス10を受け取る。案内部材16は、スライドガラス10がスライドガラス搬送部20に受け渡される際に、スライドガラス10のY2方向側の端部が下がることに起因して、Y1方向側の端部が浮き上がることを抑制している。これにより、スライドガラス10の搬出中に、押出部材130の押出当接部132aがスライドガラス10から離れるのを抑制することができるので、スライドガラス10を確実に搬出することができる。水平部161は、スライドガラス10の搬出時の浮き上がりを抑制する。傾斜部162は、スライドガラス10の搬出時に、案内部材16と支持部11bまたは12bとの間16a(図17参照)にスライドガラス10を導く。傾斜部162は、Y1方向に沿って、上方に傾斜している。
図19に示すように、第1スライドガラス供給部11は、第3方向と反対方向側(Y1方向側)に上下方向に延びる壁部11dを含む。第2スライドガラス供給部12は、第3方向と反対方向側(Y1方向側)に上下方向に延びる壁部12dを含む。壁部11dおよび12dの下方部分には、水平方向においてスライドガラス10の幅W1より小さく、押出部材130の幅W2よりも大きい幅W3を有する切り欠き11eおよび12eがそれぞれ設けられている。これにより、押出部材130をY1方向に戻す際に、スライドガラス10が壁部11dまたは12dに当接されてY1方向への移動が規制されるので、スライドガラス10を押出部材130の傾斜部132bに沿って、上方に持ち上げることができる。つまり、押出部材130をスライドガラス10の下方に挿入することができる。また、押出部材130の幅W2を水平方向に大きくすることができるので、スライドガラス10をバランスよく確実に押し出すことができる。
また、押出部材130は、第1スライドガラス供給部11および第2スライドガラス供給部12に積層されたスライドガラス10のうち最下のスライドガラス10の下面に対して、所定の距離L1上方に突出している。たとえば、押出部材130は、積層されたスライドガラス10のうち最下のスライドガラス10の下面に対して、0.5mm以上0.8mm以下上方に突出している。スライドガラス10は、1mm程度の厚みを有する。押出部材130を0.8mm以下の突出量で上方に突出させることにより、スライドガラス10を2枚押し出すことを抑制することができる。押出部材130を0.5mm以上の突出量で上方に突出させることにより、1枚のスライドガラス10を確実に押し出すことができる。
(搬出部の搬出動作)
図20を参照して、搬出部13の搬出動作について説明する。
図20の(A)に示すように、押出部材130の押出当接部132aが、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12の一番下に配置されたスライドガラス10のY1方向側の端面に当接する。そして、図20の(B)に示すように、押出部材130がY2方向に移動されることにより、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12の一番下に配置されたスライドガラス10がスライドガラス搬送部20に向けて搬出される。
図20の(C)に示すように、スライドガラス10をスライドガラス搬送部20に搬送後、押出部材130がY1方向に戻される。この際、押出部材130の傾斜部132bが第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12の一番下に配置されたスライドガラス10に当接し、スライドガラス10を押し上げながら、押出部材130がY1方向に移動される。
図20の(D)に示すように、押出部材130が第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12のスライドガラス10よりY1方向側に移動されると、押し上げられていたスライドガラス10が下げられる。これにより、次のスライドガラス10を搬出する準備が整う。図20の(A)〜(D)の動作が繰り返されて、順次スライドガラス10が搬出される。
(スライドガラス検知部の検知動作)
図21を参照して、スライドガラス検知部14のスライドガラス10の検知動作について説明する。
図21の(A)に示すように、スライドガラス10がない場合、スライドガラス検知部14の検知レバー142は、スライドガラス当接部142bがスライドガラス10に押されない。これにより、遮蔽部142cによりセンサ141の光を遮蔽する。センサ141により光を検知しない場合、スライドガラス検知部14は、スライドガラス10がないことを検知する。
図21の(B)に示すように、スライドガラス10がある場合、スライドガラス検知部14の検知レバー142は、スライドガラス当接部142bがスライドガラス10に押される。これにより、検知レバー142が回動されて、遮蔽部142cによりセンサ141の光を遮蔽しない。これにより、センサ141により光を検知する。センサ141により光を検知する場合、スライドガラス検知部14は、スライドガラス10があることを検知する。このように、スライドガラス10が検知レバー142を押圧することにより、スライドガラス10を検知する機械式の検知を行うので、確実にスライドガラス10の検知を行うことができる。
(スライドガラス供給状態表示処理)
図22を参照して、検体塗抹装置100のスライドガラス供給状態表示処理について説明する。
図22のステップS21において、スライドガラス検知部14によるスライドガラス10の収納検知結果が取得される。ステップS22において、スライドガラス10の収納が検知されたか否かが判断される。収納が検知されれば、ステップS23に進み、収納が検知されなければ、ステップS26に進む。
ステップS23において、検体塗抹装置100が動作中か否かが判断される。具体的には、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12からスライドガラス10が順次搬出されているか否かが判断される。動作中であれば、ステップS25に進み、動作中でなければ、ステップS24に進む。
ステップS24において、表示部15に緑色のライトが点灯されて表示される。つまり、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12にスライドガラス10が収納されており、検体の塗抹処理が可能であるスタンバイ状態が通知される。その後、スライドガラス供給状態表示処理が終了される。
ステップS25において、表示部15に黄色のライトが点滅されて表示される。つまり、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12にスライドガラス10が収納されており、かつ、検体塗抹処理が実行中である状態が通知される。その後、スライドガラス供給状態表示処理が終了される。
ステップS26において、表示部15に赤色のライトが点灯されて表示される。つまり、第1スライドガラス供給部11または第2スライドガラス供給部12にスライドガラス10が収納されておらず、検体の塗抹処理ができない状態が通知される。その後、スライドガラス供給状態表示処理が終了される。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、図23に示す変形例のように、搬出部の押圧部材の搬出方向後端(Y1方向端)を長く形成し、次のスライドガラス10を押圧部材の上面で支えながら、スライドガラス10をスライドガラス供給位置まで押し出すようにしてもよい。これにより、次のスライドガラス10が押圧部材よりも下がることがないので、容易に押圧部材をスライドガラス10の下方に滑り込ませて戻すことが可能である。
また、搬出部の押圧部材がスライドガラスを押し出す際に、次のスライドガラスを下から支持するジャッキ機構を設けてもよい。これにより、次のスライドガラスがジャッキ機構により支持されるので、容易に押圧部材をスライドガラスの下方に滑り込ませて戻すことが可能である。